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2017年5月4日(木)
中国『金正恩攻略術』 核実験…その時何が?

ゲスト

朱建榮
東洋学園大学教授
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
小原凡司
東京財団政策研究調整ディレクター兼研究員

朝鮮半島『異常事態』 中国と北朝鮮の亀裂
秋元キャスター
「核、ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、対話から制裁へアメリカと歩調を合わせつつある中国。一方で、長年手を携えてきた中国と北朝鮮が、名指しで中傷しあうまでに亀裂を深めています。今夜は緊迫した朝鮮半島情勢を、中国の視点から徹底検証します。まず昨日、北朝鮮が『中朝関係の根本を否定して親善の伝統を抹殺しようとしている。命同然の核と引き換えにしてまで懇願しない』と中国を名指しで批判しまして、これに対して中国メディアが『非理性的な考えに陥っている北朝鮮と口げんかに付き合うつもりはない。新たな核実験をすれば中国は前例のない厳しい措置をとる』と反論をしています」
反町キャスター
「ここまで中朝関係がこじれる、悪化するということ、北京はある程度予測して今があるのか、ないしは、たとえば、金正恩さん、3代目になったところあたりに何かボタンの掛け違いがあったのか、どこからこのように状況が悪化していったのか?どう見たらいいのですか?」
朱教授
「いくつかの要素が重なったと思いますけれども、1つは、金正恩委員長のやり方が中国から見ればもう既に危険の水域に入った、このままですると、大変なことで、中国自身も火傷をする、巻き込まれていったりすると。2番目は、中国の習近平主席が全権を握って、外交で何とかしないといけない。第3はちょうどトランプ政権ができて何かしようと、米中関係といった中で、アメリカからは『北朝鮮問題は試金石だ』と言われていて、中国もちょうど北朝鮮問題をなんとかしないといけないという時に、現在、米中の思惑が一致したということ。結果的に北朝鮮がこれまでそれほど怖くないというのは、根本的には大国同士が喧嘩し、冷戦のような構造で、その中では怖くないわけですね。本当にアメリカが攻めてきたら、中国は言わなくても、最終的にアメリカから中国・ロシアが守ってくれると。ところが、今回初めてアメリカ、中国が手を握る可能性が出てきた、おそらく北朝鮮としてもここまで怒り出したというのは、心にこたえたものがあったからでしょう」
反町キャスター
「怒っているということはそれだけ怖がっていると理解した方がいい?」
朱教授
「少なくとも怒っている、すごく中国に怒っている、関係諸国にも怒っているということではないかなと思います」
反町キャスター
「あと一問だけ。そうすると、朱さん、中国から見た時に北朝鮮の重要性というのはここ十数年、ないしはここ近年ですね、中国の経済力とか、軍事力がグッと増してくる中、中国から見た時の北朝鮮の重要性というのはかつてより高くない、かつてより下がっている、だから、いわば突っ放した姿勢を北に対してとれる、こういう理解でいいのですか?」
朱教授
「ただの経済的要因ではないと思います。1つは、かつて、いわゆる共産社会主義陣営、イデオロギーで、社会主義国同士で一緒に西側陣営と戦った、そのことは中国から見れば冷戦以後もう薄れてきた。第2、いわゆる中国にとって安全保障の緩衝地帯、屏風というのが現在の軍事技術ではもうそれはかつてのような重みがないというのもそうですが、なによりも3つ目、北朝鮮自身の現在の暴れるようなやり方ですと、中国にとって脅威ではないかと、その認識がここ2、3年、急に台頭してきたと思います」
反町キャスター
「宮家さん、いかがですか?中国の圧力は、北にちゃんと染みている、効果が上がっているかどうか、どう見ていますか?」
宮家氏
「まずこの問題を考える時に中国・北朝鮮ももちろん大事ですけれども、これは米中露の世界でまず見ていかなければいけないと思っているんですね。最初に言わせていただきたいのですが。この米中露の力関係が変わってきているんですよ、この10年、20年で。中国がある程度強くなっている、その中で、それでもアメリカとの関係はいろいろあったけれども、あまり動かなかった、しかし、トランプ政権ができて、戦略的忍耐が変わって、過去20年間機能しなかったということなのですが、その通りだと私は思うので。そこで戦略的に中国が何を考えているかと言うと、おそらく1972年にできあがった中国にとっては最も理想的な戦略環境、すなわち米中・日中の関係が改善して、経済的な発展に向かうことができるようになって、改革・開放をやって豊かになった。この1972年の戦略環境というものが、朝鮮半島で変なことが起きて、ヒビが入るのではないか、もしくは変わってしまうのではないか、これは1番大きな恐れだと思う、中国にとって。その観点で言うと、これまではバッファーとして、先ほど、緩衝地帯というお話がありましたけれど、バッファーとしての効果はもちろんありましたし、条約もあったかもしれません、しかしながら何だかんだ言っても、今、北朝鮮をもし失ってしまった場合、そうしたらどうなるか。これはいつも言うことですけれども、統一・自由・民主・市場経済、潜在的に反中で米軍が駐留し、核技術を持つかもしれない朝鮮半島国家ができるわけですよね。これは中国にとってすごく大きな脅威ですよ。それが嫌だから、どんなに北朝鮮が核兵器を開発しても、そこは黙認せざるを得なかった、潰すわけにいかなかった。しかし、最近の状況を見ていると、今申し上げたように、中国の戦略的な利益が、脅かされるような可能性が出てくると、バッファーという価値から、むしろお荷物になっていく、もしくは何らかの形で中国にとって理想的な戦略環境にある東アジアにおいて変化していく可能性を、おそらく私だって感じ取るのだから、もちろん、中国・北京は感じ取っているはずです。そこでどうしたもんかというところで、扱い方を、患者に例えれば、これまでは生命維持装置があって、点滴もやって、栄養もちゃんとやっていたわけです、だけど、だんだん減らしても、生命維持装置を外すわけにはいかないわけですよね、一応今回も生命維持装置はまだ外してないのだけれども、たとえば、ブドウ糖の点滴を減らしてみたりとか、何かしているんですよ、おそらく。だからこそ患者の方からすればウワーッと、大変だとショックが起きているから、ああいう形で反応が出てくる、これは当たり前ですけれども。問題は現在ある程度減らしていることはいいのだけれども、では、本当に生命維持装置を外せるのか、外せないのかとなった時に、これはすごく難しい判断です、1つ間違えたら1972年からの環境が壊れてしまう可能性があるわけですから。そうすると、私がもし中国であれば戦略的に見て、朝鮮半島の将来をどのような形になるべきかについて、それを中国とアメリカ、もしくは中国とロシア、もしくは米中露でもいいです、何らかの形のコンセンサスが最小限ないと、中国は簡単に北を見捨てるわけにはいかないですよ、それができているのか、できていないのかというのをこれから議論したいと思います」
反町キャスター
「できていないのにカール・ビンソンを派遣したり、パイプを締めたりしますか?」
宮家氏
「だから、トランプ政権の、過去20年間の政策に対する反省であり、同時に特にオバマ外交は嫌ですから、オバマさんがやったこと、すなわち戦略的忍耐ではない反対のやり方をしている。しかし、これまでの発言を見ている限りは、非常にアメリカも戦略的に考えていると思います。だけども、結局、最後のところは中国がどのように動くのかがポイントの1つですけれども、それについてまだ米中でどのくらい議論ができているのかは知らないけれども、およそ中国がこの程度しか動けないということはまだコンセンサスができている状況ではないと思います」
反町キャスター
「小原さん、いかがですか?どう感じていますか?」
小原氏
「バッファー・ゾーンとしての北朝鮮の重要性というのは、中国は注意深く見ていると思いますし、実は北朝鮮もそれをわかっているから、中国の足元を見てきたところはあるんです。地図を見ればわかるのですけれども、北朝鮮がもし統一されてしまって、アメリカによる国が、先ほど、宮家さんがおしゃっているようにできてしまったとしたら、北京までの距離はほとんどないです。国境を接している、陸上で接している国というのは海で挟まれているのとは、また全然違う圧迫感があるんですね。これは中国としては許容できないのではないかと、このあたりのせめぎ合いがこれから行われていくのだろうと思います」
中国が恐れる『シナリオ』
秋元キャスター
「さて、朝鮮半島情勢をめぐる状況で、中国が抱える懸念。朱さんの話をもとに番組でまとめました。間接的な懸念に対しては『アメリカの北朝鮮に対する攻撃』、『核ドミノ』というのがあります。一方、直接的懸念というのもありまして『難民の流入』『核実験による中国東北部の汚染』、さらに『核の実用兵器化』というものがあるのですが」
反町キャスター
「難民の懸念、放射能汚染の懸念、中国がここにきて、前からあったのだろうと思うのですけれども、ここにきて言い出している、懸念を抱いている、この2つの懸念をどう感じますか?」
宮家氏
「1つずつは正しいと思うけれど、それが最も大きな理由ではないですよね。何度も申し上げますけれど、この地域のことを考える時は米中露の戦略的な関係ということを申し上げたでしょう。この地図で見ると、だいたいここらへん、この地域は東北三省と言われているかもしれないけれど、一昔前は、清の時代の、前の時代、明の時代の時は女真族というのが住んでいまして、満州族とも言うけれども、このへんには後金というのが、後ろの金と書いて、後金という国ができて、それが清王朝になっていくんですね。つまり、ここは中華ではなかったんですよ、中国ではなかった」
反町キャスター
「それは千何百年、もっとずっと昔の話ですよね?」
宮家氏
「ずっと昔から清の時代まで」
反町キャスター
「それが現在の中国の政治体制の基本的な要素として考えなくてはいけないほどのもの?」
宮家氏
「どこまで大きな問題かは別として、たとえば、中国の国内にいる満州、満族と言われる人達は、それはもうほんの僅かしかいません。ですから、人数的にはむしろ朝鮮族の方が多いかもしれない。だけど、この地域は決して北京から見て完全にコントロールできている地域ではなく、歴史的には。私がもし北京のリーダーであれば、北朝鮮の問題がガタガタして、東北三省の部分についてこれが不安定になるということは、それがすぐにひっくり返るということではないですよ、それは国内の安定を考えるうえでも特に今年が党大会、5年に1度の党大会で再選をしなければいけないわけでしょう。その意味では、この問題が国内でガタガタしていても困るので、そこはおそらく我々と、彼らはおそらくあの地域を別の見方で、我々とは別の見方で見ているはずですよ、だからこそ朝鮮族も嫌だし、満族の動きも嫌だし、そういうことがないようにこの地域を安定しておきたいというのはおそらく戦略的な発想だと思うんです。昔は満族があって、華北があって、中国の北部、それから、日本がいたわけでしょう。現在、朝鮮半島の周りにいるのはロシアと中国とアメリカですよ。そういう形で置き換えていくと、この朝鮮半島の安定というものと、その周辺にいる国々との関係というのは極めて重要な関係があるということです」
反町キャスター
「小原さん、いかがですか?」
小原氏
「宮家さんがおっしゃる通りだと思うんですね。実はそれが北朝鮮からの難民というか、避難民が流れ込むのを恐れている理由、中国としては最大の懸念だと思います。だた、困った人達が入ってくるだけということではなくて、たとえば、軍人だとか、あるいは政府から逃げてくるような人間がその地域に入って、ただでさえ北京のコントロールが十分効かないような他の民族の人達が多く住んでいるところに、そういうものができた時の中国国内の状況というのは、北京は考えたくないと思います。まさにそんな状況は起こしたくないのだと思うので、そのためにたぶんあとで出てくるかもしれないのですが、人民解放軍の部隊を中朝国境に張りつける、これは北朝鮮に攻め込むためではなくて、入ってくるのを防ぐためですね」
朱教授
「おっしゃる通りで、難民対策というところはたぶん重要だと思いますけれども、これまでの10年間くらい鉄条網を国境線に敷いて、それから、これまでは主に武装警察を張りつけていたのですけれども、でも、どうも武装警察が一部既になにか実際にそういうところで完璧に、現在、北朝鮮と中国の間の地下貿易、闇ルートとかを止めてないとか、そういうようなところも言われているので、今回の正規軍という意味ではどんな事態にも備えるのだというような姿勢は示していると思うんですね」
秋元キャスター
「さて、朝鮮半島情勢を巡って中国が抱える懸念、『核の実用兵器化』というのもあるのですけれど、朱さん、核、ミサイル開発は金正日時代から進められてきたと思うのですけれど、現在の金正恩委員長が進めている核、ミサイルというのは、金正日時代とどう違うのでしょう?」
朱教授
「正直言って私はその点についてこれまであまり知らなかったのですが、この間、中国の北朝鮮問題の専門家、南京大学の朱鋒教授、それが香港フェニックス…たぶん一緒に出演されたこともあるかもしれませんけれども、彼がこの点をもうはっきりと述べて、私もびっくりしたのですけれども、要するに、1つは、金正日前指導者の段階では核は開発するのですけれど、核さえあれば他の国から簡単には攻め込まれないので、これが抑止力になればいいと。そのようなことだったのに対し、現在の金正恩委員長はこれをさらに使える核兵器にミサイル特にICBM(大陸間弾道ミサイル)などにつけて他の国に対して、あるいは韓国との統一、あるいは他の国への脅しに使うと、それだったら、本当に危険になって、これまでと違ったという部分。と言うことは、使えるようになるということは、他の国に対して使えるということは、中国に対しても使えるということですね」
反町キャスター
「北朝鮮のミサイルが中国に向かっているという、向かう可能性があると、北京は現在、それを恐れているのですか?」
朱教授
「それを、まさにこれまで、そのような話は本当かなと言われていても、少なくとも自信を持っては答えられなかったのですが、先月の29日、北朝鮮で、これが中部からミサイルで、それを北東、北北東方向に向かって発射して、50kmの先のところで、空中で爆発したと、失敗とされているのですけれど。中国の多くの専門家がはっきり言っているのは、これは明らかに中国に対しての一種の不快感ないし、脅しをかけているようなもの。なぜならこの方向というのが北北東、その方向というのは中国の延辺と集安というところに向かっていると」
反町キャスター
「北北東、だって、このへんが確か打ち上げ場所だったと思うのですが、こちらでしょう?」
朱教授
「そうです。それはその通りです」
反町キャスター
「こちらの向き、そうか、このへんを狙っているという意味は何ですか?」
朱教授
「もちろん、本当に現時点で中国に落とすことはないのですけれども、しかし、それが今回のミサイル、他の方向に、それ以外で撃てないためかどうかはわからないですけれども、中国の方向に向かって撃てるというようなことは中国から見れば、それはもう昨日の北朝鮮の、中央通信の中国批判の論説と合わせてみれば、中国に対して極めて不快感を持っているのと、その話の最後には『小さく見るな』と、最後のところが『中朝関係のこれまでの基盤ということを壊すことによる危険な行動がもたらす深刻な効果を中国は覚悟せよ』と書いているんですよ」
反町キャスター
「この間の、70kmまで上がって、失敗して爆発したというあのミサイル実験は、中国から見たらこれまでとは違う異質な実験だったのですか?」
小原氏
「これは中国の中でもいろんな意見があると思いますけれど、北京がそこまでの警戒感を持っているとはちょっと考えにくいと思います。中国から見れば、北朝鮮というのはあくまで、属国とまでは言わないまでも、中国の支援があって初めて生きているような国だと。国境を接していることの強み、これは圧倒的に中国は強いですから、そこを北朝鮮が無視するはずはないだろうという考えはあるだろうと思います。ただ、北朝鮮が核兵器を放棄しないという2つ大きな理由は、1つは現在、朱さんもおっしゃった金正日氏、あるいは金日成氏が始めてきたこの方針を金正恩委員長が勝手に変えることはほぼ不可能だということですね。もう1つは、もちろん、大国に対して唯一のバーゲニングパワーだと思っているということがあると思いますけれども。実は2012年にもいろいろなミサイルを並べた軍事パレードをやりました。この時はミサイルの先端の部分、核弾頭の部分ですけれども、いろんな形がついてるんです、と言うことは、まだ核弾頭は開発できていないと。でも、今回はキャニスターで隠していて、中が見えなかったということはありますが、飛ばしているミサイル等を見るとだんだん弾頭の形が少しずつ同じような形になってきているのではないかと。と言うことは、昨年初めの頃に北朝鮮が核弾頭という言葉を初めて使い始めて、そういった海外の分析等も見ながら、そういったものを似せてきているのだということも言えると思いますけれども、ただ技術が高くなってきていることは間違いがない」
朱教授
「現在の北朝鮮が本当に核ミサイルを中国に対して使う、あるいは韓国に対して使うということは、正直言って自滅を意味して、自殺行為で、それは実際にはあり得ないことですけれども、ただ、これをカードとして中国の話を聞かないよというような話で、これははっきりと対中外交の1つのカードに、中国の話は絶対に聞かないと。それが昨日の中央通信の話になってくる。これがアメリカに対して我々が中国を守ってやっているというようなところ、我々が感謝されなければならない、その認識と、中国はあなた達を我々がサポートしているのではないかと。日本を含めて、そう見ているのですけれど、そこの認識のギャップというのが今回、むしろ露呈して、北朝鮮は必ずしも自分は属国、自分は中国の話を聞かないといけないということはない、いざという時に我々はこういうカードも持っているのだと、そのようなことを、むしろ今回見せつけられたのではないかなと」
中国が描く『シナリオ』
秋元キャスター
「中国がこれまでと一転して、北朝鮮への制裁に前向きになった背景というのをどう見ていますか?」
宮家氏
「先ほど申し上げた通りです。これはバッファーからお荷物になったということです。と言うことは、何を意味するかと言うと、これで北朝鮮を潰そうということをまず考えているわけではないですよ。そこまで踏み切れていないはずです。それができるにはアメリカと握らなければ絶対にできませんから」
反町キャスター
「中国側に1番いい決着、ゴール地点は何ですか?」
宮家氏
「それは、金正恩氏のような人のいない朝鮮民主主義自民共和国がこれまで通り存続することですよ」
朱教授
「これまではっきりしなかったので、統一はどうなのかということ、いろいろとあったのですけれども。ただ、統一について中国が望んでいないというより、韓国の方に言わせれば、大国の日本、アメリカ含め、皆、望んでいない。そこを自分にとっての1つのバッファー・ゾーンと考えているのではないかという話を聞いたことがあるのですけど。最近このことで見ると、習近平さんが今回の訪米で1つの話がその後、中国で大きく報道されているのですけれど、米中は友好にするのに1千の理由があっても、米中関係を悪くする理由は1つもないというような表現で、ちょっと大袈裟ですけれども、言いたいのは米中の協力、アメリカの協力をもって中国は今後発展をしていく。もちろん、それは中国の平和的台頭というところで、いろいろと思惑があると思うのですけれども、少なくともアメリカといろいろと協力をしていく、それを考えれば、北朝鮮の核を根本的に変えるということが、北朝鮮の核というものの存在は中国の国家戦略に比べれば重要度が下がっている。最近の環球時報の社説を見ていて、私も正直言って、これまでの中国と違うなと思ったのは、北朝鮮の体制、核さえ放棄すれば、我々が守るのだと。核の傘も提供するのだと。そういう中で面白い表現を使っているのは、アメリカがあなた達の体制を覆すというようなことを考えているかもしれないけれども、我々は考えていない。ですから、核さえ放棄すれば、友好国として存続するし、我々は経済支援もする。そういう意味で、現在の考えというのは、核のない北朝鮮の存続というのが中国の場合、当面1つの目標として…」
宮家氏
「ただ、北朝鮮は中国を全然信用してないんですよ。中国も北朝鮮のことをあまり信用していないから、それだけ言ったって、ああ、そうですか、とはいかないよね」
反町キャスター
「北朝鮮が主体的に、自分の国が生き残るために、核とミサイルを放棄しなければいけないと、中国から言われたから、中国と仲良くするためではなくて、国の生き残りとしてそれを選択しなければいけないと判断するのかどうか?」
宮家氏
「私が金正恩氏だったら、サダム・フセインは持っていなかったじゃない、だから、やられちゃったじゃない。カダフィは途中まではやろうとしたけれども、途中で諦めたじゃない。だから、やられちゃったじゃないですか。我々は持っていなければダメでしょうと、こう思いますよ。彼らがこれを放棄するなんてバカなことを考えてはいけないと、その通りだと思います、私が彼だったら。ただそれはあの国の破滅になるんですよ。それはわかっているけれども、あの人達の判断からすれば、核兵器を持たなかったら、すぐやられると思っている」
秋元キャスター
「北朝鮮にどういう可能性があるのかということですが」
宮家氏
「まず限定的(武力行使)と大規模な(武力行使)の区別はどうやってやるのでしょうね。限定的な武力行使もすぐ大規模な武力攻撃になり得ると思っているんですよ。なぜかと言うと、金正恩さんという人は良い意味でも、悪い意味でもウサマ・ビン・ラーディンではないです。ウサマ・ビン・ラーディンのようにイスラマバードの郊外の大邸宅で、周りに誰もいないところで、ネイビーシールズが行って、捕まえて、殺してしまったと。そんなことが北朝鮮でできるわけがないですよ。まず北朝鮮は報復能力がある。そもそも相当の警備をして、防衛を固めているはずですよ。地下のものすごく深いところにいるはずです。どうやって場所を特定するのですか。まずそれが難しい。もしやって失敗したら、反撃がある。その反撃はおそらく半端ではないでしょう。もしかしたら休戦協定が破られるかもしれない。1953年の休戦協定ですよ。もう64年ですよ、今年。あれにサインしたのは、朝鮮人民軍と中国の自由軍の司令と、朝鮮国連軍の司令官ですよ。そうすると、その休戦協定が破られたら、大規模な武力行使にならざるを得なくなる可能性だってあるわけです。逆に言うと、限定的な武力行使をするということは最悪の場合に大規模な戦争になることを覚悟してやらなければならない。そうでなければ、あまりにも無責任な武力行使になると思います」
反町キャスター
「あるとしたら?核・ミサイルを放棄し、体制維持しかない?」
宮家氏
「まずないですね、私は。今後と言っても、近い将来で言えば、両方ともあまりないと思います。ただ、ないと言い切る自信はない」
反町キャスター
「今後の可能性としてはどういう展開になるだろうと想像されるのですか?」
宮家氏
「まず政策は変わりました。戦略的忍耐はありません。従って、融和政策はありません。場合によっては武力を使うことを含めて、全てのオプションがテーブルに乗っている。これを言い続けるわけですよね。しかしながら実際にやることは中国の立場をよく考えながら、アメリカの圧力でやったなんて言わせたら、かわいそうだから、特に今年は。だから、よく話をして、中国に対しても気を使いながら発言していますよ。そのうえで、中国に対して自発的に、北朝鮮に対する制裁と同じ効果を、実質的には取引というものを減らしていくということを経済的に積み上げていって、それで北朝鮮が(核を)放棄すると言い出すのを待つのでしょう。ただ、それがないとなると、おそらく現在のような状態が長く続く可能性が高いと思っています。その先は、アメリカの本土に届く核ミサイル、ICBMがオペレーショナルになるのであれば、その前の段階で、これはアメリカにとってはもう地球の反対側の、東アジアの安全保障の問題だけでなくて、アメリカ本土の安全保障の問題になる。従って、これまでとは違う発想で対応するはずです」
反町キャスター
「つまり、ソウルも、日本も、アメリカが諦める時ですよね?」
宮家氏
「いや、諦めるというのではなくて、もしそうなった場合には、仮定の話をしてもしょうがないけれど、それはアメリカから言えば、韓国さん、日本さん、これからやるよと、だから、一緒についてきてねという話になるんです。そうならないようにしなくてはいけない」
秋元キャスター
「北朝鮮の今後の可能性の中に、金正恩委員長の亡命というシナリオも考えられるのですが」
小原氏
「ここで亡命という話が出てきているのをみると、中国はなんらかの形で金正恩氏のすげ替えということは考えている。あるいはそう言った情報が出ているのではないかと思います。ただ、亡命と言ったってどこに行くのか。亡命政権ができること自体、中国は喜ばないと思いますから。それにもまして金正恩氏が受け入れるはずがない。現在でも北京に行かないのは暗殺されるかもしれないと思っているから。そうすると、金正恩氏は動かないだろう。と言うことは、クーデーター。これはアメリカもたぶん考えていると思います。大規模な軍事攻撃になることも予想しているでしょうから。それで東京やソウルが狙われる可能性もある。そんなことよりも北朝鮮の中で収まる、トップのすげ替えが行われれば、それに越したことはない。中国と北朝鮮、政治的にはパイプが細くなっていると言われていますけれど、軍も関係があるわけですし、核施設とか、ミサイルの発射実験などに関しては、数年前まで中国からの代表団というのは、特別な地域にまでちゃんと入れてもらっていたと言われているんです。それがここ2、3年は他の外国の記者に公開する時に、中国の代表団もそこから先に入れないと中国は怒っている、ただ、それまでに得ている情報というのが少なからずあるわけですから、それをアメリカが、核施設だとか、核の弾頭が置いてある場所があるとすれば、それを制圧に行く時には中国とアメリカで情報の共有が行われるかもしれないと思います」
朱教授
「斬首作戦というのは、小説としては痛快ですけれども、現実的に北朝鮮は長年、ファミリーの偉大な指導者、息子、孫というところを受け継がれてきた中で、他の人が上に立っても正直言って安定した体制は、少なくとも一時的にはちょっと難しいわけですね。北朝鮮はまさに、中国が自分に取って代わる駒を据えるのを恐れて、数か月前に兄の殺害を行ったわけですから、そういうような状況を北朝鮮がすごく恐れている。おそらく中国はいろいろ考えたうえで、金正恩委員長にもっと冷静に考えてもらって、普通の説得では彼には通用しませんよ、いろんなことを見せつけて、このままでは国の崩壊だと、ソフトランディングする、核を放棄するということを選ぶか。もちろん、それはすぐのことではないですけれども、彼らにアメリカとの関係の樹立、各国による北朝鮮への経済支援など、パッケージを含めて、それを示す必要があるのですけれども、現実に北朝鮮の首脳を簡単に変える、それは解決にならないというのは、結局いろいろなシナリオを考えたうえで、最後には今の首領様に改心してもらう以外ない。もちろん、簡単には改心はしません。それは各国の協力、冷徹な事実を見せることではないかなと思います」
『日中連携』のあり方
秋元キャスター
「日本が北朝鮮に対して中国と連携、協力する可能性があるのかどうか?」
朱教授
「現在、米中の協力で初めて、少なくとも情勢を動かし始めた、ということで見れば、考えてみれば、北朝鮮問題の根底にあるのはこれまでどうして数十年間、残ってきたのか、冷戦体制があって、そういう時に日米韓協調叫ぶということは、1番喜ぶのは北朝鮮です。それで中国と対立すれば、北朝鮮の存続価値があるわけですから、そういう意味で、現在の米中の協力というのは、日本を含めて、第1に、一緒に北朝鮮の核放棄をめぐってチームワークを組んで協力すること。第2に、その工程にあるのは、東アジアの冷戦構造、それを超えるために、たとえば、6者協議という枠組みが機能しなくても5者にして、あるいはさらにこれを東アジア全体の安全保障の枠組みをつくっていく。そういう意味では、今こそ日米中、韓国も含めて、協力をしなければいけない。その時に、自分だけの力とかいう、その思考から脱却しないといけない。そのままですと、北朝鮮の問題の解決にならない。そういうところは中国も米中がせっかく接近しているので、これまでだったら、日米というのを中国はどこか2者択一、アメリカを利用して日本に圧力、日本を利用して…。最近は米中が接近して。習近平さんはこれまでの指導者と違って大きいことを考えているので、一帯一路を含めて。北東アジアでも日本を巻き込んで、一緒に新しい平和安全保障の少なくとも対話というところにもっていって、少なくともまずは北朝鮮問題を1つの焦点に一緒に協力してやっていく。そこにこれまでの数十年を乗り越えるというようなことで、このようなことを日本ももうちょっと発想を転換しなければならないのではないか」
宮家氏
「私はちょっと意見が違うのですが、朱さんが米中協力というのに注目されるのは結構なのですが、私は、実態は必ずしもそうではないと思っていて、現在の状況は米中露のパワーシフトの関係が動いてくる中で、朝鮮半島にもしかしたら力の空白ができるかもしれないわけで、その時にどのようにして朝鮮半島を獲るかということですよ、どの国が。そのゲームがもう始まったということです。トランプさんが意識したかどうかは別として。ですから、現在の段階ではおっしゃる通り協力しているように見えるのだけれども、これは思惑が一致しているからです。しかし、米中の朝鮮半島を巡る戦略的な利益というのは同じではないですよ。むしろ相反が大きいです。私は、米中の、なんらかの最低限のコンセンサスが必要だと言っている。だけど、それがないですよ。と言うことは、現在は協力しているように見えるかもしれないけれども、この次の段階で動いた時には、米中は戦略的な問題で必ず衝突するはずです、朝鮮半島をどうするかというところで。そのことも含めて、協力とおっしゃるなら結構だけれども、実はそんなに甘いものではないと私は思います」
朱建榮 東洋学園大学教授の提言 『米中日協力の契機に』
朱教授
「私はいつも前向きですけれども、北朝鮮という、核開発の脅威を巡って、関係諸国が共通認識を持ち、動き始めたということで、その勢いを止めてはいけない。もっと共通項を増やしていって、たとえば、北東アジアの安全保障を巡る各国、日中米露が参加した安全対話で枠組みをつくっていく。場合によってはシーレーン、海で安全を巡っていろいろ協力すること。日中韓の3国の安全対話を含め、いろいろな可能性を考えていく可能性が出てきたと。それを推進しなければいけないと思います」
宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言 『米・中・露間のPower Gameの一部』
宮家氏
「米中露のパワーゲームが動いている、その一部と考えなければいけない。特に潜在的な敗者というのは言い過ぎだけれど、被害を受ける可能性があるのは中国ですから。中国の戦略的な利益というものをよく見据えたうえで。ロシアは北東アジア、彼らから言えば極東地域において、自分達の発言力、影響力を確保したい、もしくは回復したいと思っているはずですから、ロシアの動きも見過ごすことはできないと思います」
小原凡司 東京財団政策研究調整ディレクター兼研究員の提言 『同盟国としての役割と東南アジア等への働きかけを』
小原氏
「まず日本はアメリカの同盟国としての役割をしっかり果たすことと、それを示していくことが大事。これは根幹だと思います。この北朝鮮を巡る問題も米中露の大国間のパワーゲームとして行われているわけです。日本は、そこに主たるアクターとして参加できないにしても、実は北朝鮮を支持しているのは中国であり、ロシアだけではなくて、東南アジア等の国も北朝鮮とは関係がある。こうしたところに、なかなかアメリカの手が届かないところに、日本がまだできることがあるのではないか。そうしたことで日本は存在感を出していけると思います」