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2017年4月26日(水)
政府は関与すべきか? 国益で考える東芝問題

ゲスト

上野賢一郎
自由民主党経済産業部会長 衆議院議員
近藤洋介
民進党衆議院議員 元経済産業副大臣
湯之上隆
微細加工研究所所長
寺門和夫
科学ジャーナリスト

『東芝メモリ』の価値
秋元キャスター
「今日は債務超過に陥り、経営再建を目指す東芝の問題を、国益という視点から救済の是非や国の関わり方について議論します。東芝が進める半導体メモリ事業の売却について聞いていきます。入札の現状がどうなっているかというのをまず見ていきますが、アメリカの原子力発電事業の巨額損失で債務超過に陥った東芝は上場維持のため、稼ぎ頭でありました半導体メモリ事業を東芝メモリとして分社し、来月売却に向けて2次入札が行われる予定です。3月末に締め切られた1次入札では10程度の陣営が参加しまして、4つの陣営が1次入札を通過しました。5月中旬に2次入札の締切りが控えていまして、激しい駆け引きを繰り広げているわけですが、1つはシャープを買収しました台湾の鴻海精密工業を中心とした陣営です、また、韓国の半導体大手SKハイニックスも応札しています。さらにアメリカの半導体大手のブロードコムを中心とする陣営、2次入札については、アメリカの投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツと日本の官民ファンド産業革新機構、政府系金融機関の日本政策投資銀行が共同で名乗りをあげるという報道があります。1次入札で応札していた東芝の半導体工場に共同投資をしていますアメリカのウエスタンデジタル、こちらもこの日米連合に合流を検討しているということなのですが、寺門さんから聞いていきます。東芝メモリの1次入札、10程度の陣営が応札したということですが、東芝メモリ、どのあたりが企業として魅力なのでしょうか?」
寺門氏
「特にフラッシュメモリと言われている部分で、よく最近言われますけれども、IoTという、インターネット・オブ・シングスという、モノのインターネットですね。つまり、これからいろいろなもの、身近なもの含めて、それにこういうメモリが使われて、それがインターネットで、通信で結びついていくという世界がこれから爆発的に伸びようとしている、その時、1つのコアになる技術ですよね。ですから、どこの企業にとっても、非常に興味がある、ほしい、そういった技術になるのではないかなと思っています」
秋元キャスター
「湯之上さん、どう見ていますか?この東芝メモリの魅力を」
湯之上氏
「2つ大きな市場があります。1つは、携帯電話でなくて、現在はスマホですね。年間15億台出荷されているスマートフォン、ここにフラッシュメモリが搭載されています。もう1つ、寺門さんがおっしゃったように、今後、飛躍的に大きくなる市場があります。これがデーターセンターです。ビッグデータという言葉をお聞きになるかと思うのですが、人類が生み出すデーター量が2年で倍の速度で増大しているんです。これを記憶させる、記憶させて、検索したり、あるいは演算したりして、これをビジネスに用いる、こういうことが今後行われていくわけです。従って、このデーターセンター、データーをストレージするための装置、これが非常にたくさん必要になるのですが、その装置にこのフラッシュメモリが必要ですね。従って、現在フラッシュメモリをつくれる陣営は4陣営あるのですが、この4陣営の将来というのは非常に重要なわけです。データーセンター用フラッシュメモリをつくれる、そこに東芝の存在意義があると思っています」
反町キャスター
「ちなみに、4陣営というのはバッと言っていただくと、どれ?」
湯之上氏
「韓国のサムスン電子、同じ韓国のSKハイニックス。アメリカのマイクロンとインテルのグループ、これは1つのグループです。東芝は、ウエスタンデジタルと共同で運営しています。この4陣営です」
反町キャスター
「そうすると、フラッシュメモリ、ビッグデータの集積か分析に必要とされるフラッシュメモリの技術を日本で将来性を持っているのは東芝だけ?他のメーカー、日本にもいろいろと半導体メーカーがあると勝手に思っているのですけれども、見込みがある、将来性があるのは東芝だけ?」
湯之上氏
「東芝1社しかありません」
反町キャスター
「そうすると、湯之上さんの立場からすると、東芝がこの半導体部門を、東芝メモリとして売却するというのをどう感じているのですか?」
湯之上氏
「東芝の中では常にこのフラッシュメモリが稼ぎ頭でした。2016年の上半期の業績で言うと、東芝の営業利益の7割以上をフラッシュが稼いでいるんです。ここに赤字体質の事業がぶら下がっているんです。たとえば、今回発覚した原子力、もう売っ払ってしまいましたけど、パソコンだとか、家電事業。このような赤字事業が全部ぶら下がっているんですよ。本来は、フラッシュメモリで稼いだお金は、全部フラッシュメモリに投資しなければいけない。そうしなければサムスンなどと戦えないのですが、東芝の中に赤字事業がたんまりあってフラッシュメモリの足を引っ張っていたということがあります。ですから、私は今回のケースで東芝メモリが売却されることになりましたけれど、もっと早く独立すべきだったと」
反町キャスター
「手かせ、足かせがとれたということになると、東芝メモリというのは、どこの国の企業がオーナーになるかは別ですよ、企業として将来性がこれからドンと高くなると、こういう意味で言っている?」
湯之上氏
「はい。もう足を引っ張るものがなくなって、自力で生きていくと。自分で稼いだお金は全部自分の投資にまわすことができる。これがあるべき姿だと思っています」
秋元キャスター
「そういう意味で言いますと、東芝メモリの売却額ですけれども、綱川社長は株式総会で少なくとも2兆円と発言されているわけですが、この2兆円という額というのは事業の価値に見合った額なのでしょうか?」
湯之上氏
「まったく低い額だと思います。最近の半導体企業の買収等を考えてみますと、皆さんの記憶にあるのはソフトバンクがイギリスのアーム社を3.3兆円で買いました。このアームという会社はどのくらいの売上高をあげていたかというと、1700億円くらいです。ですから、3.3兆円というのは1700億円で割ると18ぐらいになります。ですから、18年分の売上高でソフトバンクは買ったわけです。そのくらい魅力があったわけです。なぜかと言うと、アームという企業の設計情報が、あらゆる電子機器に搭載されている。2015年時点では145億個に搭載されていた。これが今、寺門さんがおっしゃったように、2020年にはネットにつながるデバイスが500億台ぐらいに膨れ上がろうとしているんです。このうち、少なくとも6割、多かったら8割ぐらいに、アームのプロセッサーの設計情報が使われるんです。1個使われると10円、アームに入ってくるんです。これが飛躍的に増えているんです。それから、IoTというのがあります。2020年には1兆個のセンサーが世界にばらまかれると言われているんです。少なく見積もって6割以上がアームのプロセッサーが使われます」
反町キャスター
「6000億? 6000億×10なのですか?」
湯之上氏
「そうです」
反町キャスター
「ほっといても、それで6兆円ではないですか?」
湯之上氏
「その通りです。だから、3.3兆円というのは決して高い額ではなくて、むしろ安い買い物をしたなと思っているんですね」
反町キャスター
「そうすると、今回の東芝というのは売上げは年間いくらなのですか?」
湯之上氏
「東芝のフラッシュメモリの前年度売上げが8166億円です」
反町キャスター
「約8200億円?」
湯之上氏
「そうですね」
反町キャスター
「売却が2兆円」
湯之上氏
「だとすると2・4年分にしかならんです。これはあまりにも安過ぎるんです。これを比較するとすると、2年前に、ウエスタンデジタルがサンディスクを買収しました。このサンディスクというのは、東芝とまったく同じ条件で工場を維持している。設備投資も半分ずつ、人員も半分ずつ出し、サンディスクはフラッシュメモリをつくっていたわけです。このウエスタンデジタルがサンディスクを買収した金額は、約190億ドルです。この時のレートに換算すると、2兆3000億円くらいになります。東芝の2兆円というのはそれよりも安いわけですよ」
反町キャスター
「たとえば、東芝の2・4倍というのを先ほどのソフトバンクが買収したアームと比較した時、アームが持っているほどの将来性、この企業は将来、打ち出の小槌だよというような期待度をもって東芝を見られるかどうか、ここはどうですか?」
湯之上氏
「まずフラッシュメモリの将来は非常に明るいです。これは今後2年間に、先ほど言った4陣営が、2年間の間にですよ、約10兆円を投資する予定ですね。それだけのフラッシュメモリの需要があるからです。ところが、なぜ2兆円という安値になっているのか。これは理由が2つあるんです。1つは、東芝は金がないと債務超過が回避できない、こういう事態になっていますから、買収する企業からすると、買収する企業から足元を見られているんですよ。彼らは金が必要なのだろうと、そんなところにたくさん金を出す気はない、こういうふうに足元を見られている。これが第1の理由です。第2の理由があります。よくフラッシュメモリのシェアの図が出てくるのですが、第1がサムスンの36%くらいです。第2の東芝が18%なのですが、一時期を切ってみると18%なのですが、これが6年前は約36%あったんですよ。だから、6年間の間でシェアが半分に落ちちゃったんです。だから、査定をする人がこういうデータをたぶん見ているのだと思いますが、東芝メモリのシェアは過去6年間で半分に落ちてしまいました、東芝メモリの将来性は明るくないではないかと見られている可能性がある。それが2兆円という安値につながっているのだと思います。しかし、社長としては2兆円と言ってはいけないです。10兆円ぐらいと言わないといけない。これいったん2兆円というのを出してしまうと…。これは大きな失言だと思っています」
秋元キャスター
「さて、東芝メモリの売却額、少なくとも2兆円という、ちょっと安いのではないかという湯之上さんの話がありましたけれども、上野さん、いかがですか?」
上野議員
「それが安いか高いかというのは、なかなか私の口からどうだということは申し上げにくいなと思います。いろんなケースがあると思うんです。先ほど、ソフトバンクのお話をされましたけれども、いろんなケースがどうかということ、それを関係者は全部考えてやっていると思いますし、そうした中で妥当な水準というのは出てくるのではないかと思います。特に先ほどお話がありましたけれども、これから10兆円の投資が必要だと、これから激しい競争をやってかなければいけない。そうした中で多額の投資が必要だと。これから相当、お金をつぎ込んでいかなければ、競争にも勝てないという状況があると思いますので、そうしたことも考慮される点かなと思います」
反町キャスター
「近藤さん、いかがですか?」
近藤議員
「債務超過に陥った東芝を再生させるためには半導体を売るべきではないですよ。東芝を再生させるのならば。だって、儲け頭を売ったら東芝が再生できるわけがないではないですか、これが第1点。売るのは愚の骨頂だということです。売るのだったら本当に高値で売らなければ意味がないわけです、第1に。私は専門家ではないですから、いくらかどうかはわかりません。ただ、感覚で言って、2兆円というのは50%の値段かなという感覚を持ちました、感覚で言えば。だから、株式の50%を2兆円で売るのかなというレベル感で持ちました。100パーセントを2兆円というのは相場観としては、あまりに安過ぎるなと、相場観の感覚です。いずれにせよ、東芝のことを考えるならば、本来なら稼ぎ頭を残さなければ、再生ははかれませんよということだと思いますね」
反町キャスター
「半導体部門を売るべきかどうかという話というのは、これは建てつけ論の話になるのですけれども、たとえば、政治が東芝に対して、何らか半導体部門を売る、売れ、売ればいい、売らない、売ってはいけないと言うのは、言える筋合いの話ではない?これは言えないですよね、民間企業の自主判断だから」
近藤議員
「言えません。ただ、はっきりしているのは、この動機が上場維持するために、そのためにそろばんを弾いているわけですけれど、そもそも上場維持というのがどれだけの意味があるのだということがあるわけですよ。だって、上場維持できるだけの果たして会社なのかと。これはちょっとまた別の話ですけれども」
反町キャスター
「東芝の企業としての問題?」
近藤議員
「コンプライアンスとしての問題。これは粉飾決算をしているわけですから、不適切な会計とか言っているけれど、実際は粉飾です。これは上場基準に抵触しているわけですから、これはまた別の話ですけれど。だから、そこはちょっと置いておいてほしい。でも、これ大事な話なんですよ。経営者はそもそもそこが間違っていないかというのはあります」

売却先の選定と『日の丸』
秋元キャスター
「東芝の半導体メモリ事業を分社化した東芝メモリの2回目の入札が5月中旬に予定されているのですが?」
反町キャスター
「1次入札と2次入札は、なぜ2次まであるのかとなる中で、1次入札においては日本の日の丸がどこにも見えてこないと。2次になると、もしかしたら政投銀とか、政府系の金融機関が入ってくるかもしれないと、産業革新機構も入ってくるかもしれないと、これはまだ未確定ですよ。そういう話も出てくる。つまり、もともと2次までやることが決まっていたのかどうか、そこは別にしても、2次までやって何をしたいのかと言うと、そこに日の丸を見たいのかどうかという建てつけ、これをどう見ていますか?」
上野議員
「日の丸が見たいかどうかよりも、それぞれ1次入札通過と書いてある4陣営、それぞれに課題があるのではないでしょうか。そうした課題をどうクリアしていくのか、先ほど、近藤さんからお話がありましたが、彼らの目的、東芝の目的は上場廃止を避けるということでありますから、そうなると時間がないわけですよね。ただ、一方、これから議論があるかもしれませんが、外為法の関係だったり、あるいは各国での独禁法の審査であったり、そうしたものが制約要因としてありますので、そうしたものをクリアして、スムーズに東芝として売却できる先はどこかというところで、それぞれ課題があったのではないかなと個人的にはそう思いますね」
反町キャスター
「つまり、1次入札、2次入札があるというのは、東芝の側からすれば、上場廃止を逃れるのに、要は、借金を返せるようなキャッシュがほしいというのが東芝側の理論ですよ。ところが、外から見ていると、議会も政府も含め、見ていると、そういう東芝が上場廃止になるかどうかという議論ではなくて、今まさに外為法と言われた、外為法というのはその意味で言うと、別に為替の話ではなくて、技術の流出、行った先で軍事転用されたりするリスクがあるかどうかということも含め、輸出統制のロジックですよね。輸出統制のロジックでもって、東芝の技術を見ているというのと、全然、視点が違うではないですか。視点が違う中で、今回、政策投資銀行とか、産業革新機構というのが入ってくるというのは見方によると、政府系金融機関が東芝の、上場廃止阻止を手助けしているようにも見えてしまうんですよ。そういう意味にはならないのですか?」
上野議員
「それは、それぞれの入札希望者の判断ですから当然、日本企業がそこに参入するというのはあり得ると思っています。外為法の関係ですが、外国為替と外国貿易に関しての規制ですので、当然、外国貿易について、いろいろな規制があるわけですね。東芝の場合には、いろいろ言われているのは、機密があるのではないかと。軍事転用可能な、重要な技術があるのではないかということが言われているので、それがまず本当にあるのかないのか、あった場合にその流出をどう防ぐのかということが議論の対象になるわけでありますから、そうしたことをこれから政府としては審査をしていくという形になるのだと思います」
反町キャスター
「なるほど、そうすると、巷で噂されている政策投資銀行やら産業革新機構でしたか、要するに、東芝の救済のチームに手を挙げるのかどうかというのは、東芝が外為法にひっかかるような機微技術を持っているのかどうか、海外の企業に買収されることによって東芝の技術が海外に流出することが強く懸念される時に、初めて政府系金融機関が手を挙げることが正当化される、こういう理解でよろしいですか?」
近藤議員
「そうです。おっしゃった通りです。ただ、大事なことは、反町さん、確かにそうなったら待ったがかかるのですが、結局、株式を過半数以上獲られてしまったら技術は流れるわけですね。流れますよね、それが相手の会社に。相手の会社がアメリカの企業だったら、アメリカに流れるし、台湾の企業だったら、台湾に流れると言うことですよね。問題は過半数を握っていれば、流れる度合いは減るけれども、でも、一定程度獲られたら流れることは間違いないですよ。だから、結局、流れちゃうんです。一定程度は流れる、流れるんですよ、一定程度。一定程度流れると思った方がいいと思うんです。ただ、問題は半導体の技術というのは日進月歩するわけ。だから、現在の技術は2年後、3年後には、古い技術になっちゃうということなのだと思うんですよ。だから、大事なことは、我々はたぶん、上野さんもそうだと思うのですけれども、僕らが守らなければいけないのは雇用と技術ですよ。正確に言うと技術力でしょう。だから、雇用と技術力であって、2、3年後の技術力を守らなければいけないのであって、要するに、それは日本国内における雇用と技術力だから、古い技術を守ったって意味はないわけです。だから、技術に投資できる、日本国内に技術投資さえしてくれればいいですよ。だから、あまり外為法のことで、やらないよりはやった方がいいけれども、意味がないのかなという気もしているんですよ」
上野議員
「ちょっとそこは、私は相当違うのですが、外為法は、それが軍事転用されてしまって、それが日本の安全に大きな影響を与えることをストップしようという趣旨ですね。それが新しいか、古いかというのは関係ないです。それが本当に軍事転用可能かどうか、そうした機微技術かどうかというのは、厳しく、あるのかどうかとまずやらなければいけないですし、それがどれだけ転用可能性があるのか、あるいはそこにどういう資金が流れているのか、あるいはそこにどういう企業群が関与しているか、あるいはどういった、仮に外国政府の意思がそこにあるのであれば、それがどういった意思なのかということを見極めながら、国の安全を守っていくということなので、技術を守るということではなく、国の安全を守るために必要なのが今回の外為法だと」
反町キャスター
「そうすると、現在の東芝が持っている技術が本当に機微技術にあたるのかどうか、唯一無二とは言いませんけれども、光り輝く技術なのかどうかという検証が非常に重要になってくるわけではないですか?」
上野議員
「なります」

『東芝メモリ』への国の関与
秋元キャスター
「5月中旬の2次入札に、アメリカの投資ファンドと共同で参加するとされています、日本の官民ファンド・産業革新機構と政府系金融機関・日本政策投資銀行なのですが、1つ懸念されていることがあるのですね。それが産業革新機構の趣旨にかなうのかといういうことなのですが、産業革新機構というのは官民共同出資の投資ファンドでありまして、産業や組織の壁を超えた『オープンイノベーション』の考えに基づいて、新たな付加価値を創出する革新性を有する事業に対し支援を行うのが目的になっています。世耕経産大臣は、産業革新機構の出資について、今月21日の閣議後の記者会見で『趣旨にかなった案件であれば、制度上、支援を行うことができる』と発言しているのですが」
反町キャスター
「上野さん、いかがですか?産業革新機構が関与すること?」
上野議員
「産業革新機構が支援をする場合、いくつかの要件があります。成長性、革新性、社会ニーズに対応とか、いろいろあるのですが、そうした…」
反町キャスター
「もともと産業再生機構というのが昔ありました。産業再生機構は、要するに、いろいろなことがあって経済の上下動の中で行き詰った企業に対して再生の支援をするという救済スキームだったはずですよ。それに対する評判がいろいろあったので、産業革新機構という名前に変え、今度は再生ではなく、オープンイノベーション、将来性がある企業に対してテコ入れする機構なのだよと看板の掛け替えをしたと思っていましたけれども、そこは理解、一緒でよろしいですよね?その看板から見た時に、東芝へのテコ入れというのはどうなのですか?」
上野議員
「先ほど、申し上げたように、成長性、革新性については、間違いなく東芝というのは、その条件に合致するだろうと思います。ですから、是非検討を進めていただきたいのですが、ただ、先ほど、近藤さんおっしゃったことも一理ありまして、本来なら、日本企業がもっと元気であれば、ドンドン手を挙げて、東芝の技術を活かした形で、再編を行うということが望ましいのだろうと思います。ただ、そうでないのであれば産業革新機構というところにがんばっていただくということが大事だと思いますし、先ほど、申し上げたように東芝の上場廃止ということを前提に考えれば、外為法のクリア、これは異論がありますが、あるいは独禁法の問題を考えれば、有力な選択肢ではないかなと思います」
反町キャスター
「たとえば、政投銀や産業革新機構が出資した金が東芝メモリの今後の事業開発、新規投資、設備投資に使われるというなら、これなら、ちょっとどうかなと思いながらも、イノベーションにつながるだろうと、僕も理解する部分は多少ありますよ。ただ、政投銀とか、その他の政府系金融機関から入れた金が、東芝メモリを素通りして、東芝本体の方の借金返しに使われるとすれば、これは本来、このオープンイノベーションの考え方とはまったく違う使い方に金が使われていませんかと、ここはいかがですか?」
上野議員
「そこはいろいろな議論が必要だと思いますね」
反町キャスター
「使い方の話です」
上野議員
「使い方が単に赤字の穴埋めに終わるのであればね…」
反町キャスター
「今回の金はそういう意味の金でしょう?東芝メモリの設備投資に使われますか?」
上野議員
「東芝メモリを国内で再生させると…」
反町キャスター
「再生の必要はないでしょう?優良企業なのだから」
上野議員
「優良企業なので、再生をさせたいと」
反町キャスター
「うーん?どうですか?」
湯之上氏
「東芝メモリは自己完結していて、別に再生する必要はありません」
反町キャスター
「ですよね。必要ないんですよ」
上野議員
「東芝メモリは、それ単体でいけるわけですね」
反町キャスター
「だから、東芝メモリに入れた金が、東芝メモリ以外の金、事業の体質改善とか、借金返しに使われるというのは、産業革新機構の本来の建てつけと違いませんかというのが、僕の質問です」
上野議員
「そこのところをしっかりと見ていかないといけないのはもちろん、そうです」
近藤議員
「これは結局、あまりに日本のメインバンクが情けないから、メインバンクの代わりの役を産革機構が正直言ってしぶしぶ乗り出したというのが、真相だと想像します。あくまで想像です。かつてだったら日本興業銀行という銀行が産業を再生する、テコ入れをして建て直す役割を果たしたはずです。民間金融機関でありながら。そういう銀行、要するに、バンカーですから、民間でありながら、だけど、中期、長期の視点でお金を投資すると、まさに投資銀行としての役割を果たしていたんです。そういう視点のバンカー達、銀行家が現在ほとんどいなくて、足元のことしか考えなくなったから、誰もついてこないのではないですか?彼ら銀行家の理屈で言えば、預金者の預金を保護しなければいけないから、早く自分達の貸出金を回収したいという想いがあるのかもしれないけれども、他方、銀行家の責任として、東芝に対してお金を貸し付けてきたのだから、その責任もあるわけですよ、その経営に関わってきた。だけど、自分達の債権だけを保全したいという、やや無責任なという人達ばっかりだから、その代わりを、ちょっとかなり善意に解釈すれば、産革機構が担っていると僕は思っているんです」
寺門氏
「もうちょっと一般論的に言うと、国の基幹の技術であって将来、非常に可能性の高い技術、半導体もそうですけれども、たとえば、バイオだとか、宇宙だとか、他にもいろいろあると思います。こういったものについて、一般論ですよこれ、いろいろな問題がある時に、ある程度、国がサポートするというのは、基本的にあると思うんです。ただ、その時、問題は国からのお金があればいいと企業は考えるのではなくて、企業は企業で死ぬ気でやる、それに対して国がサポートするという。企業の側に気概がないとうまくいかないですね。今回のこの件について見ていると、なかなかそういった枠組みになっていない気がする。当面の課題を解決しようとするだけであって、本当に、いわゆるテクノロジーの発展、イノベーションにつながっていく形で、国が仮にサポートしたとしても、それが使われていくかというところがちょっと疑問である。これから議論しないといけないところだと思いますね」
反町キャスター
「湯之上さん、表を使って、政策投資銀行や産業革新機構が半導体業界に関与すること、プラスになるか、マイナスになるかという話の延長線上で、政府ないし、政府の関与がどういう意味を持っているのか、説明いただけますか?」
湯之上氏
「1980年代の中旬頃は日本の半導体産業というのは世界の5割を超えていました。私はこの頃、日立に入社したのですけれども、ところが、そこから右肩下がりに、日本のシェアは落ちていくんです。シェアの低下を止めようとして、経済産業省が主導となって、国家プロジェクト、コンソーシアム、合弁会社をかくのごとくたくさんつくったんですね」
反町キャスター
「これが皆、そうなのですね?」
湯之上氏
「その通りです」
反町キャスター
「これはいくつ?1、2、3、4、いいや…」
湯之上氏
「数えなくていいです、山のように。結果として見ると、たとえば、1つの国家プロジェクトができますと、半導体企業は十数人の社員を出向させるんです。ですから、十個できたら、百数十人が出ていくわけです」
反町キャスター
「それは強制的に召し上げられるのですか?」
湯之上氏
「その通りです。従って、本体はドンドンやせ細ると。だから、私がこの図を書いて思うのは、シェアが落ちるから、それを止めるために国家プロジェクトやコンソーシアムをつくっていく、本来はそうなのだけれども、国家プロジェクトやコンソーシアムをつくるからシェアが落ちているんだ、こう見えるんですよ」
反町キャスター
「超LSI技術研究組合、これが日本が最初につくった、いわゆる国家プロジェクトですよね?うまくいったのではないのですか?」
湯之上氏
「これはうまくいきました。これは製造装置、半導体の製造装置に関する開発を主導としてやって、製造装置が半導体の製造、特にDRAMというメモリに非常に役に立ったと。だから、このように成長することができたわけです。ところが、次、落ち始めてきてつくったもの、特に大きな『あすか』というものがありますね。あすかプロジェクト。これが最も大きな国家プロジェクトだったのですけれども、私も日立の最後の時に出向で参加したのですが、目的は日本半導体産業の復権と定められました。ところが、復権とは何ですかと、シェアの向上ですか?技術の向上ですか?売上高の向上ですか?それに誰も何も答えられないですよ。私はあすかプロジェクトのプロジェクト長にも、社長にも質問に行ったのですが、お前のような技術者は技術開発をしていればいい、と誰も答えられない」
反町キャスター
「運営方針に口を挟むなということですね?」
湯之上氏
「そうです。結果的に、あすかプロジェクトは5年単位のものを2回やったのですけれども、その社長が最後、退任する時に『最後まで日本半導体産業の復権の意味がわからなかった』と言っているんですよ。わからずに社長を10年続けているわけですよ。これが経産省主導とする国家プロジェクトとか、コンソーシアムの実態ですよ」
反町キャスター
「湯之上さん、表から言えることは、要するに、政府が関与することによって日本の半導体のシェアというのはずっと減ってきたと、こういう歴史から見ると、何にもしない方がいいのですか?」
湯之上氏
「しないでいただきたかったですね」
反町キャスター
「いただきたかった」
湯之上氏
「日本半導体産業というのは病気になったと思うんですよ、病気。過剰技術で過剰品質をつくるという病気になった。これは詳しく説明しませんが。病気になったら、普通、人は医者に行くでしょう。そこで診断を受けるわけです。処方箋、薬をもらうとか、あるいは酷い場合は手術も受けるわけです。これは政府の診断が間違っていた。間違っていたから、ことごとく処方箋が外れた」
反町キャスター
「それは家電業界とかで日本の家電製品というのはオーバースペックでもっとシンプルなものを求めている市場に対し、そこに中国、韓国の電機が入っていったので…というこの話とまったく同じ?」
湯之上氏
「まったく同じです」
上野議員
「たとえば、このアメリカの場合、日本に抜かれたけれども、その後、逆転をしているということですね」
反町キャスター
「このSEMATECHという。SEMATECHというのは日本の超LSI技術研究組合のコピーとは言いません、アイデアをもらったようなものですよね?」
湯之上氏
「似たようなものです」
反町キャスター
「一発やっただけで、アメリカはビョ~ンと戻って、その後、テコ入れはしていないのですか?」
湯之上氏
「いや、しています」
反町キャスター
「では、日本と同じように細かく、細かく入れているのですか?」
湯之上氏
「ただし、それが有効に機能しているから、こうなったわけです」
反町キャスター
「アメリカは有効に機能して、なぜ日本は有効に機能しないのですか?」
湯之上氏
「たとえば、先ほどのあすかプロジェクトに例を移しますと、ここでは13社の半導体の会社が参画しました。たとえば、最先端を行っていたのは、東芝とか、NECとかですよ。このあすかプロジェクトのターゲットをどこにするかというのは、13社の合議で決めたんです。すると、最先端を行っているところは、そんな古い技術はもう要らない、興味ないと。ところが、2番手、3番手グループにしてみるとそんな先の技術はとても使う気がないと。非常に中途半端なところにいっちゃったわけです。誰も見向きもしない技術を、日本が税金を投じて、あるいは民間企業から何百人も人を集めて、役に立たないことをやり続けたんですよ。それがこの結果ですよ」
反町キャスター
「いかがですか?」
上野議員
「官主導で、ある業界を全面的にバックアップして、それで成長力を極めて高くするという、そういう時代ではもはやないですね。ですから、アメリカもいろいろな支援をしています、それが効果的なのでしょう。ただ、1番大事なのは、アメリカの企業、たとえば、インテルでしたら、悪いところはドンドンやめますよね。DRAMとか、やめていると思うんですね。そういった思い切った選択と集中ができていた。ただ、日本企業はそこまでできなかったというのが大きなところだと思うんです。それから、先ほどの過剰技術、品質の話、まさにその通りだと思うんです、オーバースペック。ですから、モノをつくることにこだわり過ぎて、オーバースペックになって、一方で、モノを売るマーケティングとか、企画、あるいはアライアンスとか、そういった部分で日本企業に実力が残念ながらなかったということが言えると思うんです。経産省、通産省を守るわけではないですけど、いろいろがんばってやったけれども、あまり効果がないのなら、反省して、何がダメで、アメリカがうまくいっているのなら、そこをもっと勉強して、こういう支援をしようと、あるいは難しいことはやらないと、経産省自体も選択と集中をやってもらって、やる必要があるのではないかなと思います」

半導体メモリ事業売却の行方
秋元キャスター
「結局、この東芝メモリ、東芝のためには、国益という観点から見ると、どこに売るのが1番いいのかということですけれども、湯之上さん、いかがですか?」
湯之上氏
「誰の視点で見るかによって変わるのですけれども、私の視点は東芝の本体の視点でもない、東芝メモリの幹部の視点でもない、東芝メモリの技術者の視点です。小池都知事がよく言うなんとかファーストで言うと、東芝メモリ技術者ファーストです。この技術者があってこその技術なわけです。技術者にとって1番いいのはどこか、4つの中で、最悪なのはウエスタンデジタルです。ウエスタンデジタルだけだったらいいのですけれど、背後にKKRだの、産業革新機構だの、日本政策投資銀行だの、こんなのがついてくるから、これは非常に最悪のケースです。次に嫌なのはSKハイニックスです。これは同業他社で、東芝とウエスタンデジタルが共同でつくっている、開発しているものについて構造も製造方法も違いますから、わやくちゃになります、これは。そうすると、鴻海とブロードコムが残るのですが、これはフラッシュメモリにまったく関与していませんからくちゃくちゃになることはないです。この中で唯一挙げるのならば、鴻海で、それはメモリビジネスの本質を考えるとここが最適だということが言えると思うんですね。メモリビジネスの本質が何かと言うと一種の博打ですよ」
反町キャスター
「博打?」
湯之上氏
「はい。1度に5000億円とか、1兆円の投資を、えい、や、とやるわけです。これは市況を読んで、今ここだなというタイミングで決断しなければいけないですよ。サムスン電子がかくも巨大に、メモリのチャンピオンになれたのはイ・ゴンヒという博打の天才がいたんです。意識不明で倒れちゃっているのですけれども。イ・ゴンヒの博徒の才能がサムスン電子をこのように成長させたと思うんですね。そうすると、鴻海のテリー・ゴウというのは、博徒の才能があるように僕には見えるんですね」
反町キャスター
「なるほど」
湯之上氏
「一方、ウエスタンデジタルが買うと烏合の衆になっちゃうんですよ、これは」
反町キャスター
「いろいろな寄せ集めになるから」
湯之上氏
「だから、1兆円の投資をするなんてことが決められない組織になるわけです。だから、これが最悪だと思っています」
秋元キャスター
「寺門さん、どう見ていますか?」
寺門氏
「私は、日本の国益とか、先ほどからのお話の続きをさせていただくと、これは日本に何らかの形で残ってほしいと思っています。海外の企業に買われた場合には、当面はいいかもしれないけれども、将来、技術者がリストラされたり、それから、部門自体がなくなったりということは先の将来あり得る。そうなると、日本がここまでつくってきた技術自体がなくなってしまうということになります。ですから、この産業革新機構、いろいろな議論はあるかもしれません。これがいいのかどうかもちょっと僕はわからないですが、何らかの形で日本に実態が残るような、そういったことを考えてほしいなと思います」
秋元キャスター
「上野さん、どう見ていますか?」
上野議員
「技術者の視点から見れば、大量の資金で思い切った研究ができる、いいのは当たり前です。私は政治家として、大事なのは日本の成長だと思っています。日本の成長は技術を日本でしっかりと守り、育てることができる。それから、地域の雇用も守れる、地域の経済も守れる、世界の中で日本が成長していける、そういうことを考えると、日本系のなんらかの形がそれなりに関与できるという仕組みが大事ではないかなと思います」
秋元キャスター
「近藤さん、いかがですか?」
近藤議員
「私にはどこがいいかというのはわかりません。ただ、私の立場からすると、守るべきは雇用と技術力、その観点から判断してもらいたいと思いますが、はっきりしているのは、今日は原発の話はできませんでしたけれども、赤字になった原因は原発なわけですね。2年前から粉飾が明らかになって、原発による粉飾、また、インフラ事業でも粉飾決算を繰り返していた、これをごまかすためにさらに原発事業で大きな買い物をし、泥沼に入っていったわけですね。この背景には原発輸出がある意味で、経産省、首相官邸も含めて、東芝は政府に頼りすぎた部分が明らかにあるんです。そういうことも含めて、なぜここまで、従業員数17万人、5兆円を超える天下の東芝がこのようになってしまったのかというのはちゃんと分析しなければいけないし、その1つの背景には、粉飾決算をきちんと粉飾としてケジメをつけなかったということが大きな要因です。だって50億円の粉飾で、ホリエモン、堀江さんは2年半の実刑判決ですよ。2000億円の粉飾でずっと経営者がまだいるというのは、日本のマーケットとしてもおかしいですよ。そこも含めて、日本が法治国家としてちゃんとした国なのだというケジメをつけなければいけません。そこから東芝の再生が始まる。そうしなければ、日本という国が信用を失う。そこから東芝メモリも半導体も含め、日本の東芝という素晴らしい会社が本当に再生するのだろうと思いますから、政府はそのケジメを、当局はつけるべき。それが最初の第一歩だと本当に思います」
反町キャスター
「そのケジメをつける、たとえば、経営陣に対して、ある程度の責任をとらせるとか、そういうことをやったあとに、たとえば、借金の問題。要するに、東芝の話を聞いていると、今もうキャッシュがないと上場できなくなっちゃうんだよ、と」
近藤議員
「上場廃止して何が悪いのですか?だって、上場廃止して困るのは株主だって言うけれども、2年前からこの状態なのですから、これはそういうことなんですよ。要するに、そのことを、責任を経営者は問われなければいけないですよ、そういうものですよ。ですから、上場廃止をしたうえで、敢えて言います。そこから復活するということが大事ですし、業績はあの日立製作所だって7000億円の赤字を出して、現在復活しているんですよ。この東芝はおそらく1兆円の赤字ですよ。だけども、もう1回結集すれば、生き返ると思います。それだけの可能性がまだあると思うんですよ。いい加減なことは言えないけれど、責任をうやむやにしたままではいくらやったって、また新たな粉飾が生まれるだけという不信感しか出てこないということですね」
反町キャスター
「上野さん、ケジメ論について、どういう気持ちで見ていますか?」
上野議員
「粉飾かどうかというのは、これからいろいろな判断あると思いますが、経営として粉飾決算が、それが十分解決してない形で、今回いろいろな問題が噴出していると。折角のドル箱を切り出さなければいけない。昨年の医療分野も同じですけれども、経営として失敗をされているので、然るべき判断をされるのではないですか。そう思いますね」

湯之上隆 微細加工研究所所長の提言 『メモリとは、マグロ』
湯之上氏
「メモリとはマグロである。これはどういう意味かと言いますとマグロというのは一生泳ぎ続けていけないといけない生き物です。泳ぎ続けることによって酸素を取り入れてやっと呼吸が成立しているわけです。メモリも同じです。投資を一瞬でも止めたら、死が待っているんです。東芝メモリについては推進力を止めないところに買ってもらわないとすぐ死に至るわけです。そういう意味で、マグロなんです。マグロとして成長させてくれるところに買ってもらいたい」

科学ジャーナリスト 寺門和夫氏の提言 『日の丸技術が残る方策を』
寺門氏
「日本の技術を将来のために何らかの形で残していただきたいと思っています」

近藤洋介 民進党衆議院議員の提言 『法治国家の回復』
近藤議員
「法治国家の回復。先ほど、言った通りです。ルールをしっかり守って、企業も統治をしてもらいたい、以上です」

上野賢一郎 自由民主党経済産業部会長の提言 『我が国の成長』
上野議員
「わが国の成長という観点を踏まえ、これからしっかり注視していかなければいけないと思っています」