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2017年4月24日(月)
一触即発『半島情勢』 金委員長の次の手とは

ゲスト

中谷元
前防衛大臣 自由民主党衆議院議員
礒﨑敦仁
慶應義塾大学准教授
神保謙
慶應義塾大学准教授
古川勝久
元国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員

止まらぬ『核・ミサイル』挑発 北朝鮮・金正恩体制の実情は
秋元キャスター
「朝鮮人民軍創建85年の記念日を明日に控え、米朝対立が緊迫の度合いを増しています。金正恩体制は、果たして6 回目の核実験を強行するのか。制裁強化も匂わせる中国の本音とは。日米はこの危機にどう連携していくべきなのか。今夜は緊迫する朝鮮半島情勢を専門家と共に読み解いていきます。(軍事パレードで崔龍海党副委員長は)『米国が一触即発の危険な戦争局面を作り出している。もし挑発を仕かけてきたら直ちに壊滅的な打撃を与える。我々は、全面戦争には全面戦争で、核戦争には核攻撃戦で反撃する用意がある』といった演説があったのですが、まずは礒﨑さん、これを聞く限り、北朝鮮は徹底抗戦の構えのようですけれども、この内情についてはどう分析されますか?」
礒﨑准教授
「この軍事パレードでの演説は、大変注目していまして、これは5年前、故金日成主席の生誕100周年の時同様に4月15日、演説があったのですが、この時は、金正恩氏が初めて公衆の前で、北朝鮮の国民、外信メディアの前で、初めて演説を行ったことで注目されたんですね。ですから、この5年後の今月15日も、金正恩氏が演説するかどうか注目していましたが彼はしなかった。ですから、北朝鮮なりに自制と申しますか、北朝鮮なりにですけれども、アメリカとの関係を睨みながら、トップが話すことをやめたという判断ですね。しかも崔竜海党副委員長、総政支局長の発言を見ますと、これよく見るとあくまでアメリカが攻撃してきたら我々は反撃するぞという文脈であって、いわゆる労働新聞とか、他の記事、朝鮮中央テレビが普段流しているような我々から先制攻撃をするぞという明確なトーンにはなっていないですね。そのへんはきちんと計算して、北朝鮮なりに4月15日の時点では自制したと私は考えています」
反町キャスター
「自制というのは、一瞬のものだと見ていますか?それともここまでに至るアメリカ側が高めている圧力が功を奏して、これはまずいなということで少し長期的な中長期的な点での政策変更をしつつあるのか、ここはどう見ていますか?」
礒﨑准教授
「功を奏しているかはもう少し見ないといけない。まさに明日の行事もありますので、まだもう少し見なくてはいけないですが、しかし、まずは1つ大きな枠組みというか、1つ大きな北朝鮮の展望として北朝鮮、金正恩委員長の言葉はもう神の言葉と一緒ですから、国内ではですね。金正恩氏が自ら4年前、2013年の3月になぜ北朝鮮は核を保有しなくてはいけないかを明確に語っているんですね。これは中東諸国の教訓であるというのが彼の言葉であり、当時の労働新聞を引きますとリビア情勢に関する記事が大変多く出ていましたから、リビアですね。核開発計画を持っていたカダフィ政権がそれをアメリカとイギリスとの交渉で放棄してしまったためにカダフィ政権はなくなってしまった。これが金正恩委員長自らの認識であると。だから、核は手放さない、手放せない、抑止のためにというのが考え方ですから、従って、北朝鮮は核開発を継続する、ミサイル開発を継続するという意思を明確にしているんですね。ですから、長くなってしまいましたが、これが一時的に止まっているのかどうかはちょっとわからない、私にはわからない。しかし、長期的には、中長期的には、彼らは続ける意思があるということですね」
中谷議員
「既にアメリカの尻尾を踏んでいるというか、無視し続けているんです。結局、時間稼ぎで現在、短期的にやめたとしても、また、これを続けると完成しちゃいますから、今度は、アメリカは本気であって、これはマティス氏も、マクマスター氏も、トランプ氏の言う『タイミングとしては叩くのは今だ』という方針で進んでいると思います」
反町キャスター
「中谷さん、そうすると、北朝鮮がアメリカ本土まで届く核ミサイルの開発を仮に今ここで多少ストップしたとしても、最終的には、ほとぼりが冷めたらまた必ず開発を続けるから、叩くのだったら現在しかないと、こういう趣旨の話ですよね?」
中谷議員
「だから、そういう段階ではないということですよね」

米トランプが睨む『一線』は…
秋元キャスター
「アメリカトランプ政権の戦略と今後の見通しを聞いていきたいと思います。これまでのトランプ政権の閣僚発言をあらためて見ます。ティラーソン国務長官は『アメリカの目的は、朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換ではない』と発言しています。一方で、スパイサー報道官は『大統領は北朝鮮に対してレッドラインを引かないだろう』と発言。来日したペンス副大統領は『平和は力によってのみ初めて達成される。全ての選択肢がテーブルの上にある』と発言しました。神保さん、これらの発言からアメリカの対北朝鮮戦略、一貫した姿勢とか、方向性とかは見えるのでしょうか?」
神保准教授
「この発言よく見てみると、言葉を変えればということですが、アメリカはそう簡単にレッドラインを引けないというのが1つ。2つ目は必ずしも全ての選択肢をテーブルの上に乗せたところで、結果として出口戦略をどこに定めているのですかということがよく見えないという点においては、一貫した北朝鮮戦略が確固としたものとしてあるとはまだ言えないというのが私の評価ですね」
反町キャスター
「レッドラインを引けない理由はなぜですか?」
神保准教授
「かつてと比べても北朝鮮の核、ミサイル能力は継続して開発が進んでいるということと、通常戦略を見ても、特に対韓国、ソウルに対する長距離火砲や多連装砲といった、これは古くからある兵器なのですけれど、これは常に砲撃体制にあるということを考えれば、アメリカが軍事オプションとして手を出した時の代償のコストというのは著しく大きいと。少なくともそういう脅しをかけることは十分可能なわけです。そう考えてみると、シリアにやったような、部分的なサージカルストライクのようなもので、何らかの形で制裁を加えることができるかと言うと、そう簡単ではないと。そうかと言って全面的な、地上軍を派遣するような、その覚悟がアメリカにあるのか、その大義名分は何かということも含めて考えると、アメリカにはレッドラインを引いて何か問題を先に進めるという明確な方程式が現在あまりない状態だと言えると思います」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、シリアに59発の巡航ミサイルを撃ち込んだ時とか、アフガニスタンの超大型爆弾とか、これは北朝鮮に対しての何らかのメッセージを含むものであるということ、ホワイツハウスの周辺からいっぱいそういう言葉が出てきているではないですか。でも、レッドラインとなっていないのであれば、何の脅しにもならない。シリアに落とした59発も、アフガンに落とした超大型爆弾も、見ろすごいぞということだけは言えても、線を引いてこれから先にいったら、これをやるぞということが言えないのであれば、何の北朝鮮に対するプレッシャーにもならないという。いかがですか?」
神保准教授
「かつてのアメリカ、冷戦時代を戦ったアメリカとソ連、あるいはNATO(北大西洋条約機構)とワルシャワ条約機構の中での対峙というのは、お互いが綿密に計算をした柔軟反応戦略と呼ばれる、1の脅威に対しては1の反撃力を、3に対しては3という形で、徐々にこうエスカレーションの段階を上がっていくというコミュニケーションによって、戦争を抑止していたわけですよね。ところが、現在のアメリカと北朝鮮の関係、軍事に詳しい専門家であればあるほど、アメリカはそう簡単に手が出せないということを言うわけですね。そうすると、現在おっしゃったようなシリアやアフガニスタンにおける、あのような軍事行動が何を意味するかと言うと、アメリカがもしかするとこのような合理性ではなくて、トランプ政権特有の、まさに非合理的な、感情的な反発さえ起こしかねないということを起こすということは、つまり、アメリカはどちらかと言うと暴発しかねない国だということなのだと。それをもちろん、わかっていて、トランプ政権もプレッシャーをかけていて、そのプレッシャーをかける、おそらく第一義的な目標がどこにあるのかというと、それは中国が本気で北朝鮮に制裁をかけないと、その次にあるオプションというのは、そういったものを含んでくるのだということに真実味を持たせるためのさまざまなシグナリングを現在展開していると」
中谷議員
「私はアメリカのレッドラインというのは、核実験とアメリカに到達するようなICBM(大陸間弾道ミサイル)の実用化実験、これだと思います。再三再四いろいろと警告していますけれども、一向に馬耳東風ですね。このままいきますとそれが実現してしまうと。そうすると、本当にアメリカや、わが国にとって、安全保障に関わる事態でありますので、叩くとしては現在しかないという結論で、現在対応していると思います」
反町キャスター
「本当に止めたいのだったら、核実験をやったら、それはレッドラインを越えたことになるぞということを言えばいいのではないですか。それを言わないというのは、先ほど、神保さんが言われたみたいに、越えた時に攻撃をしたらソウルが火の海になって、何十万人、何百万人という犠牲が出るから、逆に言うと、何十万人、何百万人という韓国の人達を人質に北がとっているから、北がグリップを握っているように見えますよ、この状況、いかがですか?」
中谷議員
「だから、短期的にこういう危機を脱するか、もしくは核、ミサイルを潰すか、どちらかだと思うんです。これは核、ミサイルを潰すということの方が大事だと思います」
反町キャスター
「そうすると、その時の、アメリカの判断というのは敢えて多少としか言いませんけれど、多少の犠牲に目を瞑ってでも北の核、ミサイル能力を叩きにいく判断というのは確実にアメリカの頭の中にはある、こういう理解でよろしいのですね?」
中谷議員
「基本的に朝鮮戦争が現在、休戦になっていまして、北朝鮮はまだ戦争の途上にあって、その中で自国の体制というのが3代目にきて、非常に危うくなっている。もう後ろに下がれないわけですから、これは進めるしかないですね。ところが、核、ミサイル、これが実現しますと、アメリカをはじめ、世界の脅威になってしまいますので、核、ミサイルを潰すしかないということは力による平和とアメリカも言っていますけれども、こういった非常に緊迫した事態の中で、核、ミサイルを止めさせるしかないと思います」
反町キャスター
「神保さん、現在の話、いかがですか?」
神保准教授
「いや、私はアメリカが仮に、核実験と、ICBMの実験をレッドラインに引いているとすると、大変な違和感を覚えるんですね。それはなぜかと言うと、日本や韓国といった同盟国から見れば、それらのレッドラインは遥か昔に越えられているわけですね。核実験をもう5回して、小型化も相当達成され、かつノドン、スカッドER、ムスダンといった多種多様な中距離ミサイルが我々を狙っているという点においては、アメリカのレッドラインを仮に越えませんでした、自制するという宣言をして、アメリカが引いていくと。それで何が解決したのということなのかということを考えると、結果として、戦略的脅威としてのICBMの開発をある程度フリーズしました、核実験ももうある程度しないと言いました、だけど、戦域、つまり、同盟国に対する脅威は継続しているという状態がレッドラインの意味なのですかということになると、結果としてアメリカファーストの北朝鮮政策としか言えないのではないでしょうかということにもなりかねないわけですね。従って、レッドラインを引くというのは、もちろん、中谷先生のおっしゃるような、相当の覚悟がある形で核とミサイルを潰していくという意味で言っているのだったら、それは一蓮托生でこれはやるということですけれど、仮にICBMと核実験だけに引かれているということに関して、日本は相当気をつけて対応しないといけないと思います」
中谷議員
「脅威というのは意図と能力です。北朝鮮としては公式にソウルを火の海とか、在日米軍とか、アメリカを、と言っていますから、それに、この前のパレードでしょう。パレードではかなりの兵器が披露され、現実に実験までやっているわけですから、そういった核能力、ミサイル、ICBM、これを持ったら本当に脅威が高まって、危険な状態になりますから、それは絶対にやめさせるということの方が大事だと思います」
反町キャスター
「でも、たとえば、中谷さん、今の話で北にアメリカがレッドライン、ないしはそれに準じるものとして、核実験とか、アメリカ本土に届くICBMだと、もし言っているとすれば、それは日本の防衛に対するアメリカの責任、これはアメリカに守ってくれという意味ではないですよ、ただし、要するに、日本の防衛に対するアメリカの責任というのは、そこに意識としてあるのかという疑問というのは、日本政府としてアメリカ側に提示するというのはおかしいことなのですか?どういうことですか?」
中谷議員
「これはまさに2年前に、私が大臣の時に、日米のガイドラインを結びまして、平時から有事に至るまでの日米協力ということで、あらゆる事態に、切れ目のない対応を日米でとるということでやっていますので、北朝鮮の核、ミサイル開発、これについては日本にとっては脅威の対象でありますので、こういう点で、日米でしっかり連携して協力するということです」

何を狙う? 金正恩体制は今…
反町キャスター
「礒﨑さん、いろいろと議論に出たアメリカの予測不可能性とか、諸々のトランプ政権の閣僚発言、北朝鮮はどう見ているのですか?」
礒﨑准教授
「予測不可能性はその通りで、本当にやるかもしれないと、トランプ政権が本当に北朝鮮を潰しにかかってくるかもしれないと思っているから…」
反町キャスター
「逆ですか、トランプ政権が北朝鮮を潰しにくるということですか?」
礒﨑准教授
「そういうことです。北朝鮮から潰す、北朝鮮から先制攻撃するというのは、もちろん、確率がゼロとは言いませんよ、しかし、これまで少なくとも70年間、自分達の体制を守ってくことに必死で、朝鮮戦争を除いては。挑発行為というものをしていたものの、アメリカ、もしくは日本、韓国に直接攻撃をしかけたら、アメリカに特に攻撃をしかけたら、自分達の体制が潰れるということをわかっているから、こう口だけで言ってきたわけですね。先ほど申し上げたように、2013年の時も、我々は口先だけだった過去とは違うとまで言ってるんですよ。でも、何もやらなかったんです。そこを考えた場合にもちろん、確率はゼロではないし、そこは気をつけなくてはいけないけれど、しかし、問題、情勢が緊張化してしまって、北朝鮮もそれに非常に強い口調で反論しているというのは、それはアメリカの政策が明らかに変わったからですよね」
反町キャスター
「アメリカの軍事的な緊張を高める現状について聞いていきます。神保さん、先週こういう話がありました。トランプ大統領がTwitterで『強力な艦艇を派遣した』と言っていて、原子力空母カール・ビンソンなる一連の機動隊軍を、朝鮮半島近海に送るのかと思っていたら、実は4月15日にはインドネシア・スンダ海峡を通過して、インド洋に向かっていた、こういう話があります。これは大統領と、いわゆるペンタゴンの間で、何らかの意思の不都合があったのか。どういう状況だと見たらいいのですか?」
神保准教授
「これはいろいろな説があるのですけれど、どうやら連絡のミス、もしくは情報の誤認というものが結構、トップレベルであったようだということらしいんですよね。確か4月の8日に太平洋軍がこのままオーストラリアに行って、合同演習して、港に停泊する予定だったカール・ビンソンを北に向かわせる、西太平洋に向かわせるという発表をし、その後マクマスター補佐官、マティス国防長官がそれぞれこれは非常にプルーデント、つまり、実際に影響を与える行動だと、トランプ大統領がベリーパワフルな艦隊を派遣したのだと言ったのですけれども、その3日後に、実はカール・ビンソンは逆の方向に向かっていたということですよね。結果論として見れば、長期的に考えれば、確かにカール・ビンソンは北側に行くのですけれども、その間、北朝鮮もいろいろな行事もあったことですし、強硬なメッセージと実際の軍事的な展開をセットにしてメッセージを送っていると多くの人が思っていたにも関わらず、それが切り離されていたということを考えると、アメリカの戦略的なメッセージの一貫性とか、統合性という点において少し問題があるなと。アメリカ国内で意識が共有されてないのだったら、どうやって北朝鮮に戦略的なメッセージを送っているのかという疑念を、不安がらせる事態であったことは言えると思います」
反町キャスター
「古川さん、どう見ていますか?」
古川氏
「今いろいろな形で空母機動部隊が派遣されていますけれども、結局、先ほどから議論にあります通り、これが戦術的な動きなのか、あるいは何らかの大きな戦略的な中の位置づけの話なのか、ここは非常に重要だと思います。空母機動部隊の戦力増強ですね、それによる外交的圧力のモメンターム、これはたぶん数か月も続くような話ではないですよね。ですから、時間との勝負であろうということが1つ。加えて、もし北朝鮮がそれにも関わらず、たとえば、中国に対する反発等もあって、核実験を敢えて強行するようなことがあった場合、どういう対応をするのかと。ここで何もしなければ、逆にこれだけ空母を派遣しても結局、あ、大丈夫だなと。新しいセーフティゾーンが北朝鮮にできかねませんので」
反町キャスター
「空母を2隻も周りをウロウロさせて、本当に核実験やらICBMの実験をやった時に、アメリカが何もしなかった時というのは、北はかえってタカをくくると、こういうことになるわけですね?」
古川氏
「実際に金正恩政権でどういう意思判断ができるのか、非常に不確実なところが多いですけれども、過去の実績を見ると、いわゆるレッドラインというものを引かれたら、それは北朝鮮にとっては越えるべきものですよね。2000年代もプルトニウム抽出は許さんと言われたら、はい、やりました、それで?という感じがパターンとしてあるので。本当に金正恩氏がこのようなパターンを踏襲するかわかりません。事実として空母部隊の派遣というのは、これは間違いなくプレッシャーになっていると思います。ただ、そのプレッシャーを限られた時間の中でどう外交的な成果に結びつけるのか、ここは単に軍事力の話だけでなく、また、おそらく中国に対するプレッシャーだけではなく、もう少し深い、アメリカとしての外交安保の統一した戦略がないと、なかなか思った方向、成果には結びつかないのかなという気はします」

北朝鮮暴走『後ろ盾』の影… 日米が探る中国制裁の本気度
秋元キャスター
「朝鮮半島情勢ですけれども、先行きを左右する中国の動きについて見ていきます。4月上旬に行われた米中首脳会談では、北朝鮮に対する制裁強化の方針で両国首脳に一定の合意が得られた、とされ、その後、両国の動きについてもトランプ大統領からは、中国はかなり前から『為替操作国』ではないという発言、貿易摩擦をいったん棚上げするメッセージがありました。さらに、中国が北朝鮮の石炭運搬船を追い返した。これは大きな一歩だと中国の対応を賞賛しています。一方、中国国内では、もし北朝鮮が再び核実験を行ったら、原油輸出規制などの制裁強化を国民は支持するという報道とか、北朝鮮に向かう国際便の運航停止などの動きも出ているわけですね。中谷さん、これまで北朝鮮への制裁に乗り気でなかったと言われる中国ですけれども、ここにきて本気で取り組むと思われますか?」
中谷議員
「環球時報という中国の共産党の新聞に、北朝鮮が自制しないと、中国が石油を止めるべきだと、こう出たんですね。そういう意味では、制裁に向かって何ができるかということを、真剣に考えているということと、北朝鮮の体制の変換まではやらないのだとアメリカも言っているわけですから、中国がどこまでやるのかということですが、せめて邪魔しないように、こういったものに協力させるよう、あらゆるルートで現在、米中間で協議していると思います」
反町キャスター
「神保さん、この米中接近と言っていいのですか?北朝鮮に対する米中の、国連の決議を見ても、中国の姿勢がちょっと変わってきたような印象がありますが、米中は現在、握りつつあるのですか?」
神保准教授
「アメリカ側が、先ほど出たように、あらゆるオプションがテーブルの上にある、と言いながら、アメリカ自体がとれるオプションは少ないというのも実態で、その他のオプションは結構、中国が握っているということだと思うんです。その最大の部分は、北朝鮮との最大の貿易関係がある中国が貿易や金融、労働者といった、そういった領域においてどこまで北朝鮮に意味のある、実効的な制裁をかけられるかというところがあるということが1つだと思います。中谷先生がおっしゃった環球時報はもう2つ面白いことを言っていて、1つは、2日前だったと思いますけれども、アメリカが軍事オプションを取った場合、それぞれの中国の立場を確認しようと言っていて、仮に米韓両軍が38度線を越えた場合、中国は軍事介入を辞さないだろうということを言っているわけです。仮に外科手術的な、サージカルオプションの場合は、中国は外交的手段によってこれに反対すると、アメリカと韓国は当然、北朝鮮の反撃を恐れなければならないだろうと言っているのですが、ある意味、これは、中国は外交でしか反対しないよと言っているようにもニュアンスとしてもとれるぐらい、北朝鮮にとっては不気味なメッセージになっていることは間違いない。3番目に、これも環球時報ばかりを引用するのもどうかと思いますが、北朝鮮は国際社会に統合して、核がない形で繁栄と体制維持を目指すべきだという建設的な提案もしていると。まさに硬軟織り交ぜて、何とかして北朝鮮にこの態度をあらためさせたいということを試みる、象徴ではないかと思いますね」
反町キャスター
「環球時報の話だけを聞いていると、中国は主体となるつもりはあまり感じられなくて、アメリカにその圧力がかかって何か事態が変化しても、私は横で見ていますよというようなメッセージになっちゃうのですか?それとも、中国は積極的に北朝鮮内部に働きかけて、あなた、変化しないと、と言う、そこまでの踏み込みなのか。中国の踏み込み具合はどう見ていますか?」
神保准教授
「中国側のおそらく考えているレッドラインというのがあって、たとえば、核実験による核関連物質が中国に流れ込むというのは許せないと。体制の崩壊によって、難民が国境に押し寄せるのもダメで、かつ米韓両軍がまさに38度線を上がってくるのも、これがそれぞれレッドラインとすると、なかなか中国にとって打つ手というのも限られてくるということなのだと思うんですね。体制保証をすると言っても、かつてのような中朝の同盟関係を再確認し、北朝鮮に核の傘を提供するなんてところまで踏み込めるかというと、一切そういうことは言ってないわけです。体制保証の中身もそんなに明らかではないという段階においてできることは、このままいくとライフラインにさえ関わるほどの経済制裁に発展しかねないですよということを、プレッシャーにしながら、何とかして行動を変えさせたいというところなのだと思いますね」
中谷議員
「そういうところで、今、中国の本気度を、アメリカは確かめている段階で、かつてバンク・デルタ・アジア、この金融制裁をしたらかなり困ったんですね、北朝鮮が。そういう意味では、この資金の手段と、先ほど、言った石油、これを実施すれば、かなり効果があると思います。それを今、中国は試されていると思いますよ」
反町キャスター
「中国が国際社会から試されている?君は北朝鮮に対してどれだけ責任を果たすつもりがあるのか、そういう意味で言っていますか?」
中谷議員
「ええ、かなりの影響力がありますからね。金と油だけでも相当効果があると思います」
反町キャスター
「礒﨑さん、北朝鮮は中国の変化というのは認識しているのですか?」
礒﨑准教授
「もちろん、認識していますよね、それは。中国との問題をどうやっていくかと、朝鮮半島の歴史全体として、中国との、そんな大きな話をする余裕は私自身もないのですけども、時間も。中国との扱いをどうするかは、金正日委員長も気を遣ってきたわけです。金正恩委員長も当然、気を遣っているわけですよね」

北朝鮮の『核』抑え込みは… 中国・ロシアの真意を読む
反町キャスター
「この間ちょっとニュースになって、我々も驚いたのですが、ウラジオストクと羅津の間で、ロシアと北朝鮮の間で、日本にも立ち寄れなくなっている万景峰号です、これを月6回ぐらいの往復で荷物や人を運ぶのではないかという話がありました。船会社が取材に対しては答えているということですけれども、これは、たとえば、現在、北朝鮮から見た時、中国からの圧力がきたので、それでロシアに活路を見いだそうとしている、そう見ていいのですか?」
礒﨑准教授
「単純な言い方をすれば、そういうことですよね。中国は圧倒的に経済、北朝鮮経済の対外経済としては非常に重要なところですが、中国との関係が経済的にうまくいかなくなる可能性あるとすれば、日本は現在、無理ですので、ロシアですとか、他の国を考えていかないといけない。ただ、それは、北朝鮮と中国はお互い様のところがあって、中国は中国で、同盟国で形式的に形だけでも同盟国であるにも関わらず、韓国と先に首脳会談をやったではないかとか、もう明らかに中朝関係というのは、目にも見える形で変化している。これは5年前、10年前、中国がここまで北朝鮮に対してやるとはちょっと想像できなかったですからね」

制裁の有効性と『日本の抜け穴』
秋元キャスター
「北朝鮮に対する制裁の話が出ましたけれども、どういう制裁が有効なのか。現状も含め、話を聞いていきますが、国連の枠組みとして、現在行っているものとして武器の輸出禁止、全貨物の検査、金融取引の規制。当局関係者の資産凍結・渡航禁止などがあります。北朝鮮からの輸入禁止となっているのが石炭などの鉱物資源、北朝鮮への輸出が禁止されているのが民生目的を除く航空燃料ということですけれども、この武器輸出禁止と貨物の検査について4月10日、自民党内の拉致問題対策本部からこのような追加制裁の提言が行われています。『汎用的な民生品が、核開発・ミサイル関係機器に転用されている実態に鑑み、貨物検査リストの品目以外も押収できるように措置を講じる』という提言がされているのですが、古川さん、民生品が核、ミサイル開発へ転用されているという、これは具体的にどういうケースなのでしょうか?」
古川氏
「先日の軍事パレードでもかなり新型のICBMを搭載した軍事車両が出ていました。あれは基本的に中国とか、あるいはロシアから、技術、デザイン、あるいは製品そのものを導入してつくったものです。もともと民生用ということで導入したものを自前で軍事用にする、あるいはこの銀河3号ロケットという…、これは2012年12月に打ち上げられたロケットの第1弾を、韓国海軍が回収したのですけれど、中身、特にミサイルの弾頭接合部分に多かったのですが、外国製品が結構使われています。全て見つかったのが、旧ソ連製の古いものもあるのですけれども、イギリス、あるいはアメリカ、あるいは韓国、中国等々、スイスも含め、輸出管理が比較的しっかりしている国々の製品が結局いろいろ中国や台湾を経て北朝鮮に流れ着いているという実態があります。発射映像もありますけれど、ロケットが上昇していくところを映していたカメラ、これは中国製のCCDカメラなのですが、オンラインで20ドルですから、約2000円で調達できると。つまり、普通であれば市販品で、私達はそういうロケットとか、原子力施設に使ってはいけない、我々の基準では。そういうものを北朝鮮は使うというのが現状です。ですから、現在の国連制裁のチャレンジというのは、こういうロケットの弾、1弾がそのままこう運ばれているというものではなくて、それが全部パーツに分解され、パーツまで分解されると、それは普通の市販品になりますので、それが輸送されている、これが非合法目的かどうかを見極めないといけない。そのためには調達に関わっている企業、個人は誰かということを見極めて、要は、我々がウォッチしているいわゆる仲介業者、あるいはミドルマンが、どこの国からどういうものを調達しているかということを、各国が協力して抑えていかないといけないです。これが結構、難しいです」
反町キャスター
「ただ、古川さん、先ほどの紹介した国連の制裁決議による主要項目の中で武器の輸出禁止とか、諸々こうあるけれども、たとえば、中国製のCCDカメラは禁輸対象になっているかと言うと、なっていないですよね、おそらく」
古川氏
「規制リストには入っていません」
反町キャスター
「英国産の圧力変換機やら、旧ソ連のやつは制裁の遥か前に輸入されているものでしょうから。こう考えると、国連の経済制裁というのは北朝鮮の核、ミサイルの開発の何ら歯止めになっていないということでよろしいのですか?」
古川氏
「まったくというわけではありません。北朝鮮にとってこういうアイテムを購入するのにコストはかかっていますし、手間もかかっています。つまり、やりにくくなっている、だけど、止まったわけではないというのが現状です」
反町キャスター
「北朝鮮の核、ミサイルを止める方法というのはないと聞こえます」
古川氏
「止めるというより、少なくともスローダウンさせる、制裁の目的というのは、もともとスローダウンです。制裁だけで、核計画、ミサイル計画を破棄した国というのはありません。制裁が常に軍事行動、あるいは外交的な戦略と一体となって初めて、イラクにしても、リビアにしても、一定の大量破壊兵器の廃棄に合意してきたわけでして、制裁はそもそもそんなに大きな目的を、それだけで成し得るものではありません」
反町キャスター
「そうすると、ここに書いてあるのは、旧ソ連とか、英国とか、中国となっていますけれども、日本の民間企業がつくっている民生、汎用品ですよ、それが今回のミサイルとは言いません、たとえば、38度線付近を飛んでいた北朝鮮製の無人機に日本製のカメラが使われていたというような情報もありましたですよね?諸々考えると、日本の民生機の技術が北の軍事技術に転用されている可能性は否定できないわけですよね?」
古川氏
「可能性ではなく、現実で、シリア向けの貨物、北朝鮮がシリアに向けて送り込んでいた貨物からも日本製の、たとえば、圧力計測器というのが見つかったりしていますし、これもかなり決め打ちで狙って、特定のルートを使って調達していたんです。あるいは日本製の漁船用のレーダーが現在、北朝鮮の海軍のレーダーに使われています」
反町キャスター
「漁船用のレーダー?別に魚群探知機ではなく、水面のレーダーですか?
古川氏
「そうですね」
反町キャスター
「海軍で使うような精度が高いものなのですか?」
古川氏
「いや、我々としては、それはしないですが、北朝鮮はそういうことをするわけですね。制約下、資源制約下で調達可能なものを、我々よりも低い目的であっても、ある一定の…」
反町キャスター
「漁船用のレーダーを北朝鮮に対して輸出できるのですか、現在?」
古川氏
「日本はできません」
反町キャスター
「1クッション置いて、どこかから経由していっているわけですね?」
古川氏
「この場合は、おそらく中国だろうと考えています。それ以外にも中国のルートもあれば、台湾のルートもあります。かつ東南アジアのルートもあります。今、日本のメーカー、アメリカのメーカーはかなり先端的な製品を東南アジアでつくっています。あそこにも北朝鮮人がかなり入り込んでいます。ですから、いろいろなところに調達のチャンネルがあるわけですね。ただ、いわゆるそういう調達ルートで関わる個人、企業というのは北朝鮮からしても一定の信頼度を確立した人間であるから、そういう人間をよく使うんです。ですから、各国で、北朝鮮人がどの企業に隠れているのか、たとえば、マレーシアの企業、タイの企業、中国の企業、普通に現地人とやりとりしていると思ったら実は北朝鮮人だったというのはあるんです。ですから、北朝鮮人がどの国のどの企業にどれだけ隠れているのかというのをまず把握できなければいけませんし、かつそれに協力している外国人の協力者、これも知られているネットワークがありますし、こういうものを丹念に追っていかなければいけない。ただ、ここで問題になりますのはまず情報の共有、国際的な情報共有、なかなかうまくいきません。インテリジェンス情報だということで、まったく出さない国もあります。ただ、ある程度、情報の共有の仕方を考えないと止めるものも止められませんし、中国からすれば、まさに先ほど、おっしゃった通り、カメラは別に禁輸品目ではない。結構、北朝鮮が輸入するのはほとんど禁輸品目でないものばかりですから、スルーするんですね。だけど、結局、軍事施設で出てきたり、兵器になったり、あるいはミサイルの中から発見されたりするので、こういう民生用のものをいかにして止めるかという、ここが最大のチャレンジです。これは昨年、安保理決議でも加盟国の義務になっているんです。それをやるためには、こういう北朝鮮の非合法調達に関わっているネットワーク、これのさらなる捜査と、あと情報共有、これがないとできません」
反町キャスター
「非合法調達という言葉を使われましたけど、民生品を2クッションか、1クッション置いて輸入して軍事転用するのは非合法調達という言い方でよろしいですか」
古川氏
「関わる個人、企業が、たとえば、北朝鮮の知られている武器密輸ネットワークのフロント企業である、ほとんどの場合はそういうものです。ですから、こういう場合はもちろん、国連制裁対象企業、フロント企業、あるいは代理人、関わっている全てを取り締まらなければいけないです。中国はここができないですよ」
反町キャスター
「できないのですか?やらないのですか?」
古川氏
「両方あるのですけれども、政治的な意思でできるのは、たとえば、石炭の輸入を一切やめろとか、こういうクリアな指示というのは通るのですが、現場で、たとえば、汎用品の調達に関わっている連中が、国連制裁違反企業として知られている連中かどうか、現場で判断が待たれる話になると途端にダメです。ですから、昨年、安保理決議が3月に通った時に、31隻、制裁対象企業の貨物船も指定リストに入ったのですけれど、うち8隻、中国企業が関わっていたんですね。中国の政府はちょっとよく理解せずに制裁に合意していたんですね。ですから、基本的な制裁履行のために必要な知識があまりないです。国際法をよくわかって、つまり、安保理決議を比較的よくわかっている中国の外務省は、国内であまり強くない。制裁を履行する立場にある関係当局、あるいは地方自治体というのが安保理決議なんてわかっていない。ですから、縦割りとか、省庁間の連携の悪さ、そこに加えて、腐敗であるとか、あるいは政治的な意思の欠如とか、かなり深刻な問題があると思います」
反町キャスター
「中谷さん、日本の民生品も北朝鮮のさまざまな軍事技術に転用される、兵器に転用されている。わが国的に水際で差し止める方法は具体的にどうなのですか?」
中谷氏
「4月の10日に自民党でこれを徹底するようなことで政府に意見を求めました。その中に、古川さんが言われたように、北朝鮮の貿易の仕組み、システム、そういうことを受け入れる機関があるんです。そういうことを情報収集して実態をしっかり把握できるように、情報収集。それから、それを徹底するためにあまり貿易管理体制がよろしくない国がありますので、そこに対して、外交ルートでしっかり対処してくれと要望するよう、政府に要求をしました。そういったことを通じて日本製品がそういった第3国を経由して、行き渡らないようにしますし、また、もう1つ、新たな国連決議が出ましたので、これを実行するように、近々閣議決定するそうです。こういったことでより法的にも、しっかり徹底するようにしています」

礒﨑敦仁 慶應義塾大学准教授の提言 『情報の精査』
礒﨑准教授
「情報が氾濫していますから、これを政府のみならず国民1人1人が北朝鮮問題、何が正しいのか、何が余計なことなのか、誇張され過ぎているかを考えていくべきだと思います」

神保謙 慶應義塾大学准教授の提言 『長期封じ込め』
神保准教授
「短期的な解決はたくさん難しいことがあるのですけれど、そうかと言って、北朝鮮を核保有国と認めて、交渉に応じるという選択もできない。だとすると、北朝鮮の戦略の基本である核兵器の開発が進んだとしても北朝鮮の戦略というのはうまくいかないのだという状況を、長期的にいかにつくっていけるか、それを認識させる時に初めて意味のある対応が生まれるのではないかと思います」

古川勝久 元国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員の提言 『対話+圧力+α』
古川氏
「プラスアルファのコンポーネントには、いろいろなこれからの具体的な有事、あるいは危機のことも想定して、実際に起こるか起こらないかは別にして、シナリオを考えて、具体的なプランをつくっていく必要があるだろうと。それと、軍事力ではない形で、いろいろな形でまだ北朝鮮の核施設とか、ミサイル施設を、機能を停止させる方法というのが、まだまだいろいろありますので、そういう非軍事的な手段を徹底して追求していくということを提言します」
秋元キャスター
「中谷さん、皆さんからの提言、いかがですか?」
中谷議員
「ご提言の通り、あらゆる対応で北朝鮮に接していかなければなりませんが、基本的には2002年に平壌宣言という拉致・核・ミサイルと国交正常化、これについて小泉総理(当時)が訪朝して結んでいますので、これを実現するために、こういった手段で、話しかけると同時に、もう1つ、物事を予測するより実際に起こることに対応しなければならないと思います。そういう意味で、2年前、私が大臣の時に平和安全法制が国会で成立したのですが、まさに邦人の救出とか、こういった重要影響事態とか、わが国の安全に関わるような場合にしっかり対応できるように、この法律に基づいた内容に従って、それをきちんと整備をし、また、ガイドラインで、日米で協力することによって抑止力を持っていくということでしっかり対応すべきだと思います」