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2017年4月19日(水)
英解散?EU離脱は? ▽ 日米経済対話を読む

ゲスト

西村康稔
自由民主党総裁特別補佐 筆頭副幹事長 衆議院議員
吉崎達彦
双日総合研究所チーフエコノミスト
細谷雄一
慶應義塾大学法学部教授(前半)


前編

英EU離脱めぐり総選挙へ なぜ今?イギリスの事情
秋元キャスター
「今夜前半はイギリスのメイ首相が発表しました国民にEU(欧州連合)離脱をめぐる交渉方針の信を問う総選挙について。後半は昨日の日米経済対話を踏まえて、アメリカの対日経済政策について考えます。昨日、イギリスのメイ首相が行いました緊急声明について聞いていきたいと思います。緊急声明のポイントですけれど、まず6月8日の総選挙実施を閣議で合意したと。イギリスはEUを離脱する、後戻りはできない、政府には欧州と新たな関係を交渉するための正しい計画がある。しかし、国家の重大な時を迎えて議会は団結すべきだが分裂をしている。反対派は政府の交渉力を弱める。総選挙実施を巡り投票を行うよう今月19日に下院に求めるといった内容なのですが、細谷さん、このメイ首相の緊急声明をどう受け止められますか?」
細谷教授
「これはサプライズの面と想定内の面が両方あったと思うんです。サプライズの面というのは、当然ながらメイ首相が3分の2の多数で解散するということは十分想定できたのですが、昨年来、何度聞かれても、メイ首相は解散しないと言っていたんですね。これは2011年に新しく固定任期法という形で、従来の日本のような首相が解散権を持てる形から、これができなくなる、5年間固定するという形になったんですね。それで結局メイ首相も少なくとも今解散する特別な事情はないということで2020年まで全うする、選挙はしないということを言っていたんです。ですから、そういった意味では、イギリスではUターンと報道されているのですけれども、突然ブレーキを踏んでUターンで戻っていると。なぜそれだったらこの半年ずっとやらないと言ってきたのかと批判が一方であるわけですね」
反町キャスター
「それは政治手法に対する批判であってEUを離脱するか、留まるべきかという、そこの議論のUターンではないですよね?」
細谷教授
「そうですね。それが、つまり、メイ首相の説明がなぜここでやる必要があるのかということに関してサプライズはあると。一方で、想定内というのは、これは第1に、圧倒的に現在、過去10年間で最も保守党と労働党の差が開いて、労働党が非常に現在弱いわけですね。弱いだけではなくて、党内でジェレミー・コービン氏という、かなり左派の指導者に対して中道派がもう反旗を翻しているわけです。党の分裂の危機もある。つまり、現在、非常に労働党が弱い。世論の支持という点でも比較的メイ首相の手腕に対して支持が高い。そういった意味で、政局的には極めて有利である。たとえば、元外務大臣だったウィリアム・ヘイグ氏はかつてからメイ首相は解散総選挙をするべきだとうことと、今がチャンスだということを言っていたわけですね。それに対してメイ首相は躊躇してなかなか決められなかったのですが、現在、非常に状況が良いということでおそらく決断したのだろうと思います」
反町キャスター
「ただ、聞くところでは、たとえば、保守党の中にも離脱すべきなのか、残留すべきなのか、ハードブレグジットとか、ソフトブレグジットとかの違い。保守党の中でもいろいろな意見があるという話で、そうではないのですか?」
細谷教授
「その通りです。白か黒かという形で残留か、あるいは離脱かということでは、昨年の国民投票、6月23日の結果をようやく半年以上経って、イギリス国民もこれはもうやむを得ない、受け入れなくてはいけないということで、当初残留派だった人達もだいぶ時間が経って落ち着いてきていると思うんです。問題はその間のグレーなんですね。つまり、どういうグレーにするかということで、ここに非常に幅があって、この2つですよね。ハードブレグジットとソフトブレグジットで当初、メイ首相もイギリス政府も想定していたのはソフトブレグジット、ノルウェー型です。つまり、関税同盟として単一市場にはアクセスする、だけれども、移民はコントロールするのでEUからは離脱する。ところが、これはEUの態度が非常に強硬で、つまみ食いは許さない。つまり、美味しいところだけとるのではなくて、4つの自由ですね、これはモノと金とサービスと人、これはセットだと、だから、移民だけのコントロールは認めないと言われて、ここでトゥスク大統領は、ブレグジット、ノーブレグジットか、ハードブレグジットかどちらかしかない。当然ながらイギリス経済にとってはノーブレグジットの方がダメージは少ないわけですけど、ハードブレグジットというのは非常にイギリス経済に対してダメージが大きいと言われていますから、それに対して1月にメイ首相がハードブレグジットでいくと言っちゃったんですね。これは比較的、保守党の中でも違和感があって昨年6月23日の国民投票は離脱するとは言ったけれど、もともとの想定はノルウェー型の、ある意味では、中にちゃんとアクセスできると言っていたではないか。なのに、勝手にメイ首相がソフトブレグジットからハードブレグジットに変えた。これは少なくとも民主的な正当性がないのだと、メイ首相はマニフェストを掲げて選挙を勝ったわけではないので、保守党の党内でも一部違和感がある。現在、保守党は過半数を5議席、一桁超えているだけですから、たとえば、10人グループがいて、反旗を翻したら議会を通らないです。これは離脱協定も将来のFTA(自由貿易協定)を決める将来協定も、議会できちんと多数決をとると言っていますから、そうすると10人、5人が反対しただけで通らなくなっちゃうわけですよね。ですから、メイ首相としては、むしろ反旗があるから、それを封じ込める、つまり、自分のやり方が正しいのかどうかを国民の信に問うんだ。ある意味では、小泉総理がやった2005年の郵政民営化の総選挙と似ているのですが、ここで国民が私に信任を与えたハードブレグジットでいくということに、信任を与えたということで、党内の反対派をおそらく封じ込めるという考えだと思いますね」
反町キャスター
「敵は野党ではないですね?」
細谷教授
「両方ですね」

世界経済、日本経済への影響
秋元キャスター
「吉崎さん、マーケットの反応どう見ましたか?」
吉崎氏
「イギリスという国は良くも悪くも市場メカニズムに純粋に反応するから落ちるとなったらストーンと落ちる、一時、1ポンド190円くらいだったのが130円まで下がる。でも、そうすると、モノが売れたり、観光客が増えたりするから、またちょっと景気が良くなるわけですよね。ああいうところを見ているとイギリスは懐深いな。だから、ヨーロッパはこれからむしろ大変かもしれないけれど、イギリス経済はそんな悪くないのではないのかなという感じがあったんです。ただ、今の話で本当にハートブレグジットになっていくということは、たとえば、イギリスに工場を置いている会社は、大陸向けの輸出が全部関税かかる。一方で、たとえば、商社はどうかと言うと、割とヨーロッパは、ロンドンにヘッドクォーター置いているところが多くて。そういうところは割と長く続くのではないかな、脱ロンドンみたいな動きはそんなに早くはないのかなという感じがします。ハブですよね、アフリカとか、いろいろなところに対しての。だから、その機能というのはなかなか捨てがたいので、結構そこは長持ちするのかなと思っています」
反町キャスター
「単一市場から出されても、ハブとしての機能というのは毀損されないという?」
吉崎氏
「なかなか時間かかるだろうと。新しいハブができるまでどうしても時間がかかるので。それと英語で通じるところというとあまり他にないんですよね」
反町キャスター
「そうすると、時間がかけるけれども、長期低落傾向は確実だと。たとえば、ポーンと出ると言った時に、一瞬ポンドが安くなった、その分輸出が伸びるということがあっても、短期的なカンフル剤であって、長期的に見れば、言葉が悪いけれども、ジリ貧になるのは見えているねと、そういう意味で言っているのですか?それとも長期的に見た時に、先ほど言った英国の懐深いというのは、長期的に見てもそこからまた基準点を超えて大きく伸びていく、そういう将来が見えているのかどうか、そこはどうですか?」
吉崎氏
「そこになってくると自信がないのですけども、私なんかが見ていると、より深い問題というのは、ユーロというか大陸側にあって、南欧の不良債権問題とか、いろいろな問題を見ていくと、ギリシャだってどう考えても片づいているようには思えなくて、そうすると、逆にイギリスみたいに、あんなふうに、えい、やっと出ていっちゃった方が良いのかなという感じがずっとあるんですよね」
反町キャスター
「もしかしたらイギリスが外れるというよりも、リスクを切り離したという見方ができるかもしれないという意味でしょう?」
吉崎氏
「何年か経ったら、そうなっているかもしれない」
反町キャスター
「細谷さん、半年とかのスパンではなくて長期的に見た時に、イギリスの経済にとって、どういう影響をもたらすのか、どう見ていますか?」
細谷教授
「かなり悪い影響だと思いますね。これは金融と製造業はかなり違うのですが、製造業に関して申し上げると、イギリスのメーカーは、主要なところはどこもヨーロッパ大陸とかなり深いサプライチェーンができていますから、イギリスで製造する、あるいは部品をつくるということが、関税がかかるとコストが高くなりますからイギリスでつくる立地条件の必要性はないですよね。つまり、移動するまでに、移動すると決めて1か月で工場ができるわけではないので、5年くらいのスパンで結局、移転をする、現在あるものは使っていくという形で、少しずつ移転するという形で。そう考えると、すぐにショックで大きな反動があるわけではないのですが、しかし、中長期的に考えれば、メイ首相も29日の、先月のスピーチでは、イギリス経済にとっては非常に厳しいことになるだろうということを言っているんですね。ですから、製造業は相当大きなダメージを受けると思います。一方で、今度、金融ということになると、これは情報と人ですから、いまだにロンドンには人と情報が集まっていますから、暫く強みは残ると思うんですね。だけども、ポンドとユーロの、過去20年くらいのシェアの大きさということを考えるとヨーロッパは世界最大のマーケットですから、このユーロの強みというのはこれから時間とともに大きくなってくると思うんです。逆に言うと、なぜメイ首相がこのタイミングで総選挙を決定したかと言うと、過去5年ぐらいのイギリスの緊縮政策による構造改革で、かなり現在、筋肉質で贅肉を落としているんです。ですから、これからあと数年は良い状況が続くと思うんです。問題はこれがもうちょっと長くなると間違いなく悪い、まず雇用が流出し、全体的に経済がスローダウンしてくるのはほぼ確実だと思いますので、そうすると、保守党の中からもかなり強い批判が上がってくると思うんですね。そのタイミングでの選挙は最悪ですから、ですから、現在とりあえずやっちゃえば5年もつわけですね。最悪のタイミングの2019年、2020年くらいの時に選挙をしないで済むというのはメイ首相にとって極めて大きい。逆に言うと、経済が悪くなるということを想定し、経済が良い今、やる方が有利だという発想があったのだと思いますね」
反町キャスター
「この選挙後の5年以内のビジョンですよね。そこから先、10年単位での将来を見た時というのは、先ほどの吉崎さんの話で言うと、ユーロ圏がへたっていくのとポンドがへたるのとどちらが速いのかみたいな、こんな話になってくる気もするのですが、細谷さん、どう見ていますか?」
細谷教授
「これは本当に5年以上先の話になってくるとまったくたぶん世界経済の流れというものが予測不可能になってくると思うんです。と言うのは、1つは大きな流れとしてグローバル化というのは続くと思うのですけれども。でも、民主主義がそれこそポスト・トゥルースという言葉もありますし、フェイク・ニュースという言葉もありますけれども、民主主義の質が現在劣化していると思うんです。民主主義の劣化ということで言うと、これからEUが1番怖いのは、同じようにこの流れが広がっていった時にイギリスが離脱して経済の状況が良いと、国家主権を回復して自分達で決定権限を持つと、これがうまくいくということになると、間違いなくこれはヨーロッパ大陸に伝染すると思うんです。現在のところはまだヨーロッパ大陸の選挙制度が比例代表ですから、連立でそれほど大きな変化はないのですが、しかしながら、本当に、先ほど、吉崎先生のおっしゃる通りで、現在、南欧の経済が非常に脆弱なところがありますから、中長期的に見ると、実はイギリス経済とヨーロッパ大陸、EUの経済を見た時にどちらもまったく違う種類の不安を抱えているということだと思いますね」

加盟国の反応と今後への影響
秋元キャスター
「さて、イギリスのメイ首相が6月にEU離脱の信を問う総選挙を行うと発表したわけですけれども、今後どういう影響が及ぶのかということを聞いていきます。今後の主なヨーロッパの政治日程ですけれども、今度の日曜日には極右や左派勢力の伸びが注目されています、フランスの大統領選挙が控えています。29日にはイギリスを除くEU首脳会議が開かれ、交渉方針を協議することになっています。5月にはイタリアでG7ですね。主要7か国首脳会議が開かれます。秋にはドイツ連邦議会の選挙がありますけれども、まずは日曜日に控えるフランス大統領選挙もEU離脱を問う国民投票を公約に掲げている右派の勢力が台頭するなど混戦となっているのですが」
反町キャスター
「フランス大統領選挙、1発目の結果が4月の23日に出て、それで決選投票にいくかどうかもわからないのですが、かなりの勢いで極端な意見が、力を、結果を得た場合、これが今度は6月8日のイギリスの総選挙、ここに影響するとか、ヨーロッパ各国においてドミノが起きるのではないか。この見通しは、細谷さん、いかがですか?」
細谷教授
「離脱するか、しないかということで言いますと、フランスは、フランス国民も自分達は相当、欧州統合で得をしているとわかっているので。これはあとから1973年に加盟して、ある意味では、非常に不利な状況で加盟せざるを得なかったイギリスと、最初から1950年にフランスが提案してもともと統合が始まったわけですから。たとえば、共通農業政策のようにフランスの利益となる仕組みがたくさん入ってるんですね。それはフランスもわかっていて、出ることが得ではないということはイギリスと違って国民にかなり浸透している」
反町キャスター
「では、ルペン氏はなぜ高い支持率を?」
細谷教授
「1つは、他の国や多くの国が比例代表制ですから、選挙によって極端な変化はあまりないですね。ところが、フランスの場合は大統領選挙ですから、その時の流れで決まるわけですよね。そうすると、大統領選挙でのこの演説、アメリカのトランプ氏もそうですが、大きく流れが変わる。これはポピュリズムという言葉でよく言われますが、EUを批判してフランスの偉大さを語るというのは、これはなかなか支持が得やすいですよね。ですから、ある意味では、非常に簡単な方法で、トランプ氏もまさにその方法でメキシコを批判して、日本を批判して、選挙に勝ったわけですが、ルペン氏も同じような形でEUを批判してフランスの偉大さを語る。これはなかなか選挙になると、それに反論するのは難しいと思うのですけれども」
反町キャスター
「西村さん、潮流、流れをどう見ていますか?」
西村議員
「先進国全体の課題として、まさに成熟した国家が、製造業がドンドン人件費の安いところに移っていく中で、中間層と言われる労働者層が劣化している、厳しい状況になっているというところが全世界の、先進国の共通の課題になってきているのだと思いますね。それから、ヨーロッパの場合、若者の失業率も非常に高かったわけですね、30%、40%、失業率があって。つまり、ちゃんとした仕事を働かずに、失業したままで何年も過ごして、その人達が40代、50代になって、社会を背負っていく立場になって、何の経験もなく本当にできるのかという長い間の積み重ねもまたあると思うんです。ここのところが全体の課題になっていますので、こういった層に対してすごくわかりやすい主張で、極右的な考え方で他を排除して、保護主義的で、フランスの栄光をもう一度と言えば、すごくウケるわけですけれども、それは解にはならないのだと思うんです。つまり、いくらそう言っても、貿易のせいで、通商のせいで、労働者にダメージを受けている割合というのは、これは経済学とか、いろいろな統計がありますが、非常に少なくて。テクノロジーがドンドン発展していきますので、ロボットだったり、コンピュータだったり、ここが労働者層、あるいは最近はホワイトカラーの職も奪うということになっていますので、これに対してどう対応するかということは、先進国全体で考えていかなければいけない課題だと思っています。一方、日本はもともと格差の少ない社会ですし、それから、安倍政権はもちろん、成長のためにいろいろなことをやっていますけれども、弱い立場の方々に配慮しながら、一億総活躍という形で、いろいろな予算が弱い立場の方にいっています。子育て支援とか、あるいは奨学金制度、給付型のものもつくったりしていますし、ここは目配りもしながらやっていますし、ジニ係数、格差を示す指数も上がっていないですね、むしろ低下をして横ばい、低下ということですから、そういう意味で、この連鎖が我々日本に及ぶとまでは私は思わないですし、もう一言言えば、民主党政権である意味、1回経験していると。あの時に、非常に国民に耳障りのいい政策を言ってという失敗がありますので、そういう意味では、1回経験していますから、政治は安定しなければいけないし、ちゃんと見極めないといけないと、国民は1回経験していることだと思います、ただ、長期政権になってくるといろいろな緩みも出てきますので、気を引き締めながら、政策を1つ1つ実行していくというのが大事だと思っています」
反町キャスター
「細谷さん、最後、おそらくヨーロッパの話を聞きたいのですけれど、ヨーロッパに広がるポピュリズムのこの流れというのは日本にどう来るのか、来ないのか、そこどう見ていますか?」
細谷教授
「私は、構造改革の反動だと思うんですね。新自由主義が1980年代に広がって。新自由主義というのは英米がある意味では最も先進的だったので、当然ながら、ダメージも大きいわけですよね。フランスも一定程度、新自由主義的な改革を行った。日本はどうかと言うと、すごく中途半端だったと思うんですね。構造改革をしなければ、経済成長というのはなかなか難しい部分もあると。新陳代謝をする。日本はある意味ごまかしながらやってきたところがあって、その分だけ、傷が深くなかったのだと思いますよ」
反町キャスター
「その分、借金が増えましたよね?」
細谷教授
「おっしゃる通りで、それを比較的うまくやったのがドイツですよね。ドイツは2000年代のシュレーダー政権下で、比較的、大胆な改革をしながら経済成長も維持したと。ドイツはヨーロッパの中では例外だと思っていまして、一方、構造改革をさぼった国もあるわけですよね。構造改革をさぼると、まだ生ぬるい、ぬるま湯に入っているので、エリートに対する批判、つまり、甘やかせてくれる分だけエリート批判が少ないわけですね。それに対してかなり厳しく切り捨てたイギリスやアメリカでは当然ながら反エリート、自分達を切り捨てたエリートに対する反エリートのポピュリズムがあがってくると。そうすると、今言った中でフランスは中間くらいだと思うんです。アメリカの大統領選挙と違うのは2回投票制。1回投票制だとルペン大統領誕生が十分あると思うのですけれども、2回投票制になると、相当程度に可能性が小さい。これも1つの知恵だと思うんですよね。極端な人物が大統領にならないようにする。それがヨーロッパに一定程度、ポピュリズムが、歯止めになる仕組みが、ヨーロッパにはいろいろあるのではないかと思いますね」


後編

米国の対日経済政策を読む 『経済対話』とペンス副大統領
秋元キャスター
「ここからは昨日行われました日米経済対話から、トランプ政権の本音、今後の日本の経済戦略について話を聞いていきます。昨日行われた日米経済対話の初会合ですけれども、まずは貿易及び投資のルールと課題に関する共通戦略。経済及び構造政策分野における協力。さらに相互の経済的利益及び雇用創出を促進するための協力となっているのですが、吉崎さん、今回の日米経済対話どう評価されますか?」
吉崎氏
「私の全般的な印象で言うと、日本というのは現状維持勢力ですよね、もともと。安保でも、経済でも。現在のポジションにそんな不満がなくて、ただ、これを脅かされると嫌だと。アメリカも安全保障で言うと完全に現状維持勢力、ただし、現在のアメリカは経済ではご不満ですね。反現状維持です。少なくともトランプ大統領はそう思っている。そういう中で日米が協力しようとすると、安保ではいいのだけれども、経済はどうやってまとめるのだろうと。幸いなことに現在、トランプ政権はほとんど、長官が決まっていても、その下の副長官は決まっていません、局長クラスは全然いません。こんな状態で深い話ができるわけがないので、とりあえず1回目はこんなところかなという感じで終わったのですけれども、これで徐々に中が詰まってくると、いよいよ細かい話をしなければいけなくなる。その1回目は入り口だけで終われて良かったのかなという、そんな印象ですね」
秋元キャスター
「西村さん、ペンス副大統領と会ったということですけれども」
西村議員
「はい。立ち話だけできたのですけれども、演説、講演でおっしゃっていたのも、日米の同盟関係の重要性であり、それから、日米のこれは経済関係も含めて、非常に協力関係があるということを強調されておられました。かつ日米で世界経済を引っ張っていくのだということも言われていますので、もともとインディアナ州知事でおられましたし、そこは日本企業がたくさんありますので、日米の経済関係よくわかったペンス副大統領が、窓口と言うか、アメリカ側の代表で、こちら側は麻生副総理ということで。お二人の間で非常に良い対話が、じっくり話ができたのだろうと思っています。いみじくも麻生副総理が言われたように、摩擦から協力へということですので、現時点、個別案件で細かく何か、現にアメリカ側は体制がまだできていませんので、そこまで話はいっていませんが、もちろん、これから個別のいろんな話も出てくるのだと思いますが、大きく言えば、日米が協力して、それぞれの経済をwin-winの関係を保ちながら世界経済を引っ張っていこうという姿勢が、私はすごく出ていたと思いますので。おそらくウマが合うであろう、麻生さんは面白いなと言ったとちょっと伝わってきたのですけれども、これは良い関係で、安部総理とトランプ大統領と同じように副大統領・副総理も良い関係でやってもらえれば、いろいろな関係が見えてくるのではないかと思います」
反町キャスター
「政治的な建てつけとしてなぜ副大統領と副総理でやるのかということですよ。それは、要するに、トランプ大統領は選挙戦の時も、選挙が終わったあとも、要するに、ジョブだ、ないしは経済を良くするのだとずっと言ってきたわけではないですか。その問題を、たとえば、大統領直轄の、大統領に対して直接、USTR(アメリカ合衆国通商代表部)が日米交渉をやって情報を上げる、財務省が日本の財務省とやって情報を上げる、総務省もやって情報を上げる。大統領、これはどうですかと言われた時、自分の選挙期間中に言ったことと比べたら、これはダメだ、いけ、と言わないようにするためにバッファーとして、バイス・バイスでこういう場をつくったのではないかという見立て。政治的な建てつけとしては、僕は良いアイデアだと思うのだけれども、いかがですか?」
西村議員
「日本的に言えば、トップ同士が角を突き合わせてガンガンやりあうよりは、トップの意向を忖度して、ここは。お互いにそれぞれの国を背負っているわけですから、国の利益を考えながらwin-winの関係になるように、しかも、分野がまたがりますので、いろいろおっしゃるように。そういう意味で、全体を見られる人という意味で、副大統領と副総理は非常に良い組み合わせだと思いますし、さらに言えば、ペンス副大統領は日本の経済、日本企業のこともよく知事としてご存知ですので、そういう意味で、我々としては非常に良い組み合わせで話が進められると思います。ただ、個別の話になるといろんな各省、各省の話が出てきますので、調整は出てくると思いますけれども、この副大統領・副総理でやってもらうというのは非常に良いと思いますね」
反町キャスター
「記者会見の時もペンスさんが言っていたのですけれども、そうするとこれから先、USTRが日本と話をする、商務省が日本と話を、財務省が日本と話をする、その報告が私のところに上がってくるという言い方を彼はした。つまり、そういった現場同士の話し合いが直にトランプさんにいくのではなく、1回、ペンスさんのところで止まる、要するに、もっとわかりやすく言うと、トランプさんがカッとしないで済むようになっている、こう思っていいのですか?」
西村議員
「そこはアメリカの中の話ですので、どういう意思決定の仕組みがあるか。我々としてはまさに経済対話は副大統領と副総理ですから、ここで全体を束ねてやってもらうと思っていますので、そういう意味で、個別案件はそれぞれの長官なりなんなりに下りるでしょうけれど、最終的にはこのレベルで、副大統領と副総理でやってもらうということですね」
反町キャスター
「いかがですか?建てつけについてはどう見ていますか?」
吉崎氏
「まさしくうまいやり方で。要は、前に米中戦略経済対話というのをやっていたのと同じパターンで、お互いのトップを傷つけちゃいけないから、国務長官と財務長官がアメリカ側、中国は副首相級とか、そのくらいで定期的に会合をやるという、これは1つの知恵だったと思うんです。今回、とにかくペンスさんというのは元インディアナ州知事で、インディアナ州というのはまさしく日本企業の牙城みたいなところですから、それもすごく良かったのだけれども、ただ、若干、私は誤算もあったと思うんです。と言うのは、それは3月に例のオバマケア廃止代替法案を出そうとして、ダメだったではないですか。あの時になぜ下院の共和党が説得しきれなかったかというと、いろいろなところに問題があるのだけれども、当然、下院議員を10年やっていたペンスさんもこれは説得しなければいけない立場だったわけです。結局うまくいかなかった。あの点でトランプさんから見たら、俺の信じたこの副大統領はイマイチではないか、となったことは、想像に難くなくて。たとえば、下院議長に向かって怒れるのかと言うと、彼にはまだがんばってもらわないといけない。そうすると、首席補佐官のプリーバスとか、ペンス副大統領に、もうちょっとしっかりやってくれよという感じがあったと思うんです。ですから、3月下旬以降、たぶんペンスさんの政権内の立場というのはちょっと下がっていると思うんです。今回ちょっと一連の報道を見ていて不思議だなと思ったのは、少し前に2回目の会合をインディアナ州で6月くらいにやるという報道があったんです。それが消えて、年内にやると変わった。つまり、あまりわがままなことをやっているとあとで大統領に何を思われるかわからないから、そこちょっと遠慮が出ているのではないか」
反町キャスター
「逆に言うと、トランプさんからの評価が多少厳しめになっていると、ペンスさんが感じているとするなら、大統領に喜んでもらえるような結果を出せなければいかんという、厳しく日本に出てくるリスク、リスクと言ったら悪いか、リスクですよね、出てくるのではないか、ここはいかがですか?」
吉崎氏
「それもあるし、今回、気づいたのは、商務長官のウィルバー・ロスさんが同じタイミングでやって来て、一緒にやればいいものを、わざと…」
反町キャスター
「なぜ別枠にしたと思いますか?」
吉崎氏
「いろいろちょっとあとで聞きたいのですけれど、1つは財務省と経産省の縄張り争いがあったかと思います。ただ、今回気をつけなければならないのはウィルバー・ロスさんというのはたぶん現在トランプさんから見て評価が高い人だと思うんですね。それがこの日米経済協議と同時のタイミングで日本へやって来て、世耕大臣に対してより具体的なテーマで話をして、こちらは次に6月にやろうという話になっているわけです。だから、ペンスさんに束ねた日米経済対話、これは非常にうまくいっているのだけれど、もう別のトラックがひょっとするとできつつあるかもしれなくて、そちらはよりダイレクトにくる可能性がある」
反町キャスター
「建てつけとしては、商務省と日本の経産省の話とかというのはペンスさんの会見の発言通りでいくと、内容というのは1回、日米経済対話に上がって、ペンスさんの手元に報告される形のような印象を受けたのですが、そうではなく、もしかしたら別トラック、同時に進む、そういう感じで見ています?」
吉崎氏
「その可能性も」
反町キャスター
「それはトランプさんの気持ち1つですよね。これはこれでやってくれと。だから、商務長官が日本と個別にだんだん穴を開けてくれるなら、進めてくれよと言ってしまう可能性がある?」
吉崎氏
「たとえば、今回の2国間協定も財務省よりは経産省ですよね。そうすると現在、この日米ハイレベル経済対話という、非常にうまい枠組みを日本側としてはつくったのだけれど、ファストトラックみたいなのがドンドンできちゃうかもしれないなという、どうですか?」
西村議員
「先ほど、出ていますけれども、この3つの分野で構成して、それぞれ協議を進めていこうという枠組みを今回決めたわけですので、ある意味、キックオフですので、そこで個別の議論に入るような、しかも、アメリカ側の体制がまだできていないわけですので、そういう意味で、今回はこの副大統領・副総理で全体の枠組み、キックオフをするということで、これは双方の意見がこれ一致している結果こうなっているのだと思いますので。今後どういう形で進めていくか、それぞれアメリカの体制を見なければいけませんし、日本側もその顔ぶれもどういう形になるか見ながら、進めていくことになりますから、大きな日米経済対話の枠組みの中でやる話と、そうではない細かいいろいろな話もあるかもしれませんから、それはそれで各省がやればいいので、この3つの大きな枠組みの中で、日米関係を、経済を良くしていくということだと思います」

2国間で? 通商交渉の行方
秋元キャスター
「今回の日米経済対話では2国間の貿易交渉になるのかが注目されましたけれども、ペンス副大統領は昨日の共同記者会見でこのように話しています。『アメリカにとってTPPは過去のもの、2国間交渉はアメリカの国益。将来的にはFTA交渉に行き着く可能性がある』と言っているのですが、吉崎さん、今回、日本はTPPを推進していますが、今後アメリカとは2国間の交渉になると見た方がいいのでしょうか?」
吉崎氏
「どうしてもやろうと言われたら、嫌とは言えないと思うんですね。ただ、その場合に、では、2国間でやりましょうと言った時に、どう具体的に、スクラッチで始めたら、時間がかかっちゃう。普通FTAは1年、2年、すぐかかりますけど、それをあんた達、望んでないでしょう。それだったらTPPをベースに考えたらどうでしょうという話はできると思うんですね」
反町キャスター
「今回、ペンス副大統領が日本へ来て、日米経済対話が始まった。そこから、これから先の日本の国際的な通商戦略というのは、アメリカと何でいくとはっきり言わない、同床異夢のように見えるのですけれど、話し合いはしましょう、もしかしたら2国間かもしれない、もしかしたらもう少しマルチの匂いがする可能性も完全に否定しないけれども、一応それも検討しようね。そう言いながら、アメリカ抜きのTPPというのも進めていて、アメリカに対して無言の圧力みたいな、こちらはバスが出ちゃうよというシグナルを見せながらアメリカにもTPPを勧めていく。こんな戦略ですか?日本の通商戦略は」
西村議員
「ざっくり言うと、加えて日EUもあります。それから、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)もあります。それからTPP11、11か国のやつ、これが全部アメリカ抜きですね。アメリカは取り残される、暗黙のプレッシャーがかかっていきます。日米でいろいろなことも議論していきます。その中には先ほど申し上げた関税の議論もありますが、むしろどうやって新しいルールを、日本にとってもアメリカにとっても大事な、公共入札をオープンにするとか、知的財産を守るとか、こういったところをどうやって広げていくかというのも当然、日米でやっていくことになりますので、そうすると、どこでどういう形になるかはまだ見えませんが、1つのものにドンドンなっていくと」
反町キャスター
「どういう形を目指しているのかわからないと話をしづらいですけれど、日本はどこを目指しているのですか?」
西村議員
「日本はアメリカも含めたルール、新しいルールのもと、広いエリアで協定ができることがもちろん、それが第一の目的です。ただ、そこにいくためにはアメリカ側がこれを理解してもらわないといけませんので、そのために日米もいろいろな議論をやっていきます。それから、TPP11、残りの11か国もバラバラにならないように守らないといけないし、さらに場合によっては、タイとか、インドネシア、手を挙げた国、関心を持っていた国がありますので、そういったところに輪を広げていくこともやる。RCEPもやる」
反町キャスター
「そこに中国が入ってきますよ」
西村議員
「いいですよ。中国が入ってきてもちろん良いし、我々としては高いレベルのものを中国に求めていくわけですから、中国が入ったからと言って低いレベルのもので我々が納得するわけではありませんので、これはASEAN(東南アジア諸国連合)は非常に熱心にやろうとしていますので、世界が保護主義に向かっているという中、ASEANは本当に自由貿易、世界でも最も成長するエリアを求めていますので、これも我々にとってある意味、推進力にしながらRCEPがある」
反町キャスター
「アメリカはいつまでそういうペースについてきてくれるのかという。来年11月の中間選挙までにある程度の成果をトランプ大統領は得たいはずですよね。たとえば、牛に限らずいろいろなもので。そういう時にアメリカ側が来年11月の中間選挙までに何らかの成果を求めてくるということ。これはすなわち2国間の交渉に入ることを意味するのではないのですか?日本はそれを拒否して、中間選挙に向けて、向こうがほしいと言っているものをあげずに、TPP11を進めて、早くこちらに来ないとダメだよとアメリカとの間でそれがやれるのですか?」
西村議員
「もちろん、短期的な成果を求めてくると思いますので、それは関税の交渉というのも1つ可能性としてはありますけれど、むしろ日本からの投資であるとか、すごく今日もペンス副大統領は評価されていました。それから、エネルギー、たとえば、シェールオイル、シェールガス。特にLNGは結構マーケットだぶついていますので、日本が大量に買うということはなかなか難しいかもしれませんけれど、アジアへのマーケットを日米で開いていくというのもあるでしょうし、あるいはサイバーセキュリティみたいなこともあるでしょう、協力もあるでしょうし、いろいろなことの成果は、アメリカ側にはあると思いますので、そういったことも示しながら。一方で、繰り返しになりますが、新しい21世紀のルール、高いレベルのルール、これは最終的に中国にも守ってほしいわけですし、国有企業の改革とか、知的財産の保護とか、投資の保護とか、こういうところも含めて話していけば、どこかで私はルールの面では、TPPなり、RCEPで我々が高いレベルを求めていくものとどこかで融合する。TPPがそのままの形ではなかなか難しいと思いますので、少し何か変えた形で、これは知恵を出していかなければいけませんけれども、これがどのタイミングになるのか、中間選挙にどれだけの成果を示して選挙に臨みたいと思うか、あるいは早くやろうと思えば、TPPでまとまったこの範囲なら我々は合意ができますので、とか」
反町キャスター
「ただ、牛のばら売りはしませんよね?牛だけ単品、できませんよね?」
西村議員
「もちろんです。アメリカも約束したことは守ってもらわないといけないし、そういったことのタイミングは、これから政治的ないろいろな判断の中であると思いますけれども。最終的にはできるだけ広いエリアで、この新しいルールが自由な貿易、公正な、まさにアメリカも言っている公正な貿易、通商のルールが広がっていくことを是非、日本としては中心になって進めていきたいと思っています」
秋元キャスター
「吉崎さん、今後の交渉において日本が気をつけなければならないことはどういうことがありますか?」
吉崎氏
「過度に忖度しないことでしょうね。つまり、アメリカにこんなことを言われるかもしれない、こんなことを言われるかもしれない、たとえば、トヨタさん、あなた少しこの計画このくらい減らしてちょうだいみたいなことを過度にアメリカに忖度して動いてしまうと、これは非常に良くない。個々の日本企業にとっても困る。私は先月ワシントンに行って、いろいろ向こうにいる日本の企業の人達と話をしてきたのですけれど、面白いなと思ったのは、我々もうここの国で商売しているのだから、アメリカ大統領に言われたら従うしかないでしょうと、そこは腹が座っているんです。でも、後ろから弾飛んでくるのは嫌だということを言っていて、なるほどなと。最後は国と国、日米交渉になるのだけど、でも、企業はもう腹を据えて何年も向こうでやっている人達がいて、その人達から見るとアメリカ市場でどうやってやっていくかを考えているわけなので。どこまでが日米交渉かというのがまたちょっと微妙なところが」
反町キャスター
「どういう意味ですか?どこまでと言うのは政府がどこまで関与すべきかということですか?」
吉崎氏
「そう、そこです」
反町キャスター
「そこは具体的にどこまでという業界別とか、企業別とか、踏み込んでほしいボーダーはまちまちですよね?」
吉崎氏
「昔だったら、それこそ業界団体ごとに、さじ加減で、あなた泣いて頂戴とか、あなたは守ってあげるとか、そういうことをやったのかもしれないけれども、そんな時代ではないのだろうなと。たとえば、昔よく聞いたと思うのですけれど、このままだと議会が納得しないみたいなことを殺し文句にして、いろいろ日米交渉になった歴史があったと思うのですけれど。どうでしょう、日本側は昔ほど言いなりにならなくて済むのではないですか。逆に言うと、アメリカ側もそんなに現在テコはないですよね。オーストラリアにこれだけだったら、うちはこうしろみたいなこと言ってくるかもしれないけれど、なんで?と居直れるところが昔と違ってあると思うんですね」