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2017年4月13日(木)
キッシンジャー氏語る シリア攻撃&米中会談

ゲスト

ヘンリー・A・キッシンジャー
元米国務長官(VTR出演)
片山さつき
自由民主党政務調査会長代理 参議院議員
岡本行夫
外交評論家

キッシンジャー氏 独占取材 『シリア攻撃』と『北朝鮮』
反町キャスター
「キッシンジャーさんというと、ニクソン政権での国家安全保障問題担当補佐官、フォード政権で国務長官を務めた人物ですが、1971年、中国の周恩来首相と極秘会談、極秘訪中と僕らはよく言うのですけれども、世界を驚かせた米中正常化を実現した手腕、ソ連との戦略兵器制限交渉、ベトナム和平と、常にアメリカ外交の中心、真ん中を歩んでこられた方です。そのキッシンジャーさんに我々は今日未明、ニューヨークと中継をつないでインタビューを行いました。そのキッシンジャーさんの言葉から、日本外交の未来、日本の進むべき方向を占います」
秋元キャスター
「キッシンジャーさん、アメリカのシリア攻撃について聞いていきます。化学兵器を使用したとしてアメリカがシリア攻撃をしましたけれども、これについてどう見ていますか?」
キッシンジャー氏
「シリアに関しては、攻撃という言葉は、私は使いたくはありません。シリアはアメリカと合意をしていました。化学兵器に関しての合意があったんです。化学兵器に関して全てシリアから撤去するという合意がありました。それを使用しないという合意があったんです。それを2度と使わないという合意がありました。こうしたプロセスが進んでいたにもかかわらず、このような、現在のような状況に至っています。化学兵器はシリアに残っていました。それがどれくらいの量、規模になっているのかということはまだよくわかりませんが、明らかに民間人に対して化学兵器が使用された、それが確認されています。トランプ大統領がどう意思決定をしたかと言いますと、アメリカとシリアとの間にあった合意は破られたという判断をしたんです。アメリカとしてはこうした危険に対する罰則、化学兵器を使用したことに対する罰則を受けるべきだと考えたわけです。ですから、はたから見たらそれは攻撃に見られたかもしれませんが、それは合意を破ったことに対する罰則だったと私どもは考えています。シリアを攻撃するという段になれば、おそらくはこうした合意に対する違反事項があったからということが1番の理由だったと私は考えています」
反町キャスター
「罰則と言いました。武力行使とも言えると思うのですけれども、これはオバマ政権の時にレッドラインは引きながらもやらなかったことです。オバマ政権の時にやらなかった武力行使に踏み切ったトランプ大統領、トランプ政権ですが、ここは何を狙った武力行使だったのか、何を見せかったのか、ここはどう感じますか?」
キッシンジャー氏
「まず言わなければいけないことですが、シリアがこのタイミングで合意を破ったということ、これは1番の要因だった、問題だったと思います。オバマ政権との間での合意事項、また、前回の合意事項の中には、全ての化学兵器をシリアの国外に運び出すという合意がなされていました。シリアの国内に化学兵器は置かないという合意だったのです。もちろん、大統領が代われば、それなりのどういう行動をとるかということの判断が違ってくることは確かでしょう。オバマ大統領は、全ての化学兵器をシリアから撤去するという目的を挙げて、それを合意として達成しました。そのためには、その目的として化学兵器を使わせないということが1番の目的だったのです。トランプ大統領はこうした合意に対して今度は2度目の違反があったということに判断しました。そこではっきりと、これは合意を破ったことに対する罰則だという行動をしたということです。もちろん、こうしたオバマ大統領とトランプ大統領との間でいろんな考え方の違いはあったかとは思いますが、流れとしてはそう整理して構わないでしょう」
反町キャスター
「シリアに対する武力行使の意味ですけれども、これはシリアに対してだけではなく、現在、日本の近くにある北朝鮮に対して何らかのメッセージを狙ったものではないかという分析が我々の方ではあるのですけれど、シリアに対する武力行使というのは北朝鮮に対して何らかのメッセージを目指したものだったのかどうか。送ったとしたらどういうメッセージを送ったのか、いかがでしょうか?」
キッシンジャー氏
「こういった問題は現状までは、私の印象では別の件として扱われています。トランプ大統領、ティラーソン国務長官も、国防長官も繰り返し言っていますが、シリアに対する攻撃というのは1回きりのイベントであるということですね。特定のこの状況下、化学兵器を使用したという状況下に対する行動であるということです。しかし、それとはまた別に、シリアの問題の前にティラーソン国務長官、また、トランプ大統領ももう我慢しきれなくなっていると、北朝鮮が核の問題に関していろいろと行動を起こそうとしているということに関して。そして中国を招待して首脳会談を行ったわけです。北朝鮮の対応を話し合ったのです。また、強調していたのは、もし交渉によって解決ができない、中国その他の国々との交渉において解決できない場合はアメリカから一方的に攻撃する可能性があると示唆していたわけです。ただ、私の考えではシリアの危機、現在の問題が、特に北朝鮮に対する意図を狙ったものではないと私は考えます」
反町キャスター
「では、北朝鮮が今回のシリアに対するアメリカの武力行使をどう受け止めるかということを聞きたいと思います。北朝鮮は、たとえば、アメリカがシリアに対して武力行使をしました。巡航ミサイルを59発撃ちこみました。このアメリカの武力行使を北朝鮮はどう受け止めると想像されますか?」
キッシンジャー氏
「北朝鮮がこの状況を分析し、どういうリーダーに対応しているかということを考える際に、シリアの例から学ぶべきであるとも言えます。すなわちトランプ大統領は、非常に慎重に分析をして、その状況を分析した後、しかし、いったん意思決定をすると決定的な行動を起こすということは印象づけたと思います。従って、北朝鮮に対する具体的なメッセージがあるかどうかは別にしても、それが示唆されたかどうかはわかりませんが。しかし、明らかに北朝鮮はこの状況を分析しているはずです。どれくらいがリミットであるか。トランプ大統領にとっての我慢の限界がどこにあるかということはわかったと思います」
反町キャスター
「そうすると、現状においてはまだ同盟国への攻撃もないし、アメリカ本土に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を北朝鮮が開発できているという情報をまだ我々も手にしていません。そうすると、まだ北朝鮮はその線は越えていない、越えるとすればこれからだという、この理解でよろしいですね?」
キッシンジャー氏
「そうですね。アメリカは、北朝鮮がICBMの開発を終了して、導入・展開するまで待つことはできないわけです。従って、ある時点で一定の判断をしなければいけない。すなわちアメリカに向けて直接発射される可能性ができた時、すなわち搭載ができる可能性が非常に大きくなった時には限界だと思いますが、ただ、こうした議論に関する詳細を私も詳しく知りませんけれども、一般論で申し上げることしかできませんが」
反町キャスター
「オバマ大統領の時代に、北朝鮮に関する『戦略的忍耐』という言葉が使われました。その戦略的忍耐という言葉の背景にはキッシンジャーさんが言われたみたいな、アメリカ本土にまで届くICBMができることは許さないという、そういう意味が含まれていたとはあまり印象としては受けていないのですけれど、そこはどう考えますか?オバマ政権の時の戦略的忍耐とはいったい何だったのでしょうか?」
キッシンジャー氏
「現在、私どもが直面している問題というのはトランプ政権が抱えている問題です。オバマ政権に関してはその政権が直面していた時期も違います。その時には、まだ北朝鮮が核兵器を開発できるような、それから、また、ICBMを開発できるような能力はまだ持っていませんでした。ですから、ここに関しては、はっきりそうした基本的な脅威と、同盟国に対する脅威というのははっきりと分けて考えなければいけないと思います。たとえば、日本のようなアメリカの同盟国に対する脅威というのはアメリカ本土に対する攻撃と同じくらい深刻なものだと私どもは考えます。それに対してアメリカは何ができるか、そういう同盟国に対する脅威というのは、より私どもにとって明確な脅威になり得る。これまで北朝鮮が核実験、兵器の実験等で見せてきたことというのを考えても、また、北朝鮮が持っているこうした攻撃能力というのが周辺の同盟国に対してどのような脅威を及ぼすかということが1番の問題の本質だと思うんです。それを越えてはならないということを私どもは考えているんです」
反町キャスター
「北朝鮮に対する武力行使をするとなると、当然その政権の転覆、政権の交代もはからなくてはいけないし、大混乱が生じると我々は想像するのですけれども、その時の最終目的とはレジュームチェンジ、北朝鮮の政権を外す、除去する、それが目標になるということでよろしいですね?」
キッシンジャー氏
「それは必ずしも良いアイデアだと私は考えていないですね。目的の基本的なところまで今語ってしまうのは妙案ではないと思います。最低限考えないといけないのは、現在の北朝鮮がアメリカの同盟国及びアメリカを攻撃するという行為を絶対に阻止するというのが最低限の目的です。そのためには、核兵器の開発をさせないこと、ミサイルの開発をさせないことというのも入ってくるかもしれません。なぜかと言うと、それを阻止することによって、こうした危険性を回避することができるからです。政権が交代するということ、政権自体の交代というのがアメリカにとっての脅威に直接関係するものではないと考えています」
反町キャスター
「そうすると、武力行使と言っても、政権交代を目指すような大規模な武力行使ではなくて、あくまでも北朝鮮の核開発能力、ないしはミサイル能力を叩くだけの限定的な武力行使というのがまず最低限の、まずそこから始めると、そういうことを考えているということですね?」
キッシンジャー氏
「それに関しては私の方で憶測でものは申し上げたくないと思います。どれくらいの規模を考えているのか、また、どれぐらいの戦略的な目的を持っているかということを、私の方から憶測で話はするつもりはありません。ただ、現政権の見方としては、現在の北朝鮮の体制というのは非常に危険である。そうした中でとれるアクションというのは、この地域の中のその他の国からも支持されるものではなければいけないと思います。むやみに武力行使をすればいいということではないでしょう」
秋元キャスター
「ここまでの受け止めを、岡本さん、片山さんに聞きたいと思います。まずアメリカのシリア攻撃について、キッシンジャーさんはこのように話していました。『シリアへの武力行使は攻撃ではなく合意を破った懲罰だ。明らかに民間人への化学兵器使用が確認され、全ての化学兵器をシリア国外に出すという、アメリカとシリアの合意は破られた』と話されました。岡本さん、キッシンジャーさんは、まず攻撃ではなく合意を破った懲罰だと発言されていますが、この発言をどう見ますか?」
岡本氏
「化学兵器というのは酷いものです。僕の個人的な体験を言いますと、史上最も被害を出した毒ガス攻撃というのは、1988年にサダム・フセイン大統領がイラクでクルド族に対して使用した時でして、ハラブジャという町ですよ。そこで毒ガス攻撃をして5000人が死にました。それから、7000人がさらに負傷したんですね。犠牲者のほとんどは女性と子供ですよ。と言うのは、男達は山の中に入ってゲリラをやっていましたから、村に残っていた婦女子をやったんです。15年経ってから、ハラブジャに花束を捧げに行きました。いや、悲惨ですね、その後遺症が明らかに残っていると思われる人達がたくさんいましたよ。だから、我々にとっては毒ガスなんていうのは観念の世界でしかないけれど、実際にそういう場に遭遇してきている軍人とか、それを通じての欧米指導者達の毒ガスに対する嫌悪感、それから、核も含めた大量破壊兵器に非常に強いものがあります。だから、シリアがまたあれをやったということは非常にアクセプトしましたね。アメリカの説明によれば、たぶん本当だろうと思うのですけれども、シリアの飛行機が空軍基地から飛び立って、反体制派の町に毒ガス弾を落っことして、また同じところに帰ってきた。そこにはロシアもいるわけですね。だから、ロシアも知っていたに違いないと思っちゃいますね。だって、俺が責任を持ってシリアから毒ガス兵器を一掃させるから、だから、アメリカは攻撃するなと、こう言ったわけですね。ところが、同じところから飛び立って毒ガス攻撃をしている。それに対して英語でサージカルストライクと言います、サージカルというのは外科手術的な、だから、患部を切除するという意味ですよね、そういう攻撃をやった。軍人を含めて10人の犠牲者がシリア側に出ちゃった。しかし、約束、キッシンジャーさんが言っていたように、約束違反のまま、持っていた毒ガス兵器はあれで一応除去したことになっている。一方、それに対してロシアが火のついたような激しい批判をするわけですね。こんな暴虐行為だ、国際法違反だ。自分達は何をやっているのか、それはアサドの肩を持ってですよ、空軍機、ロシアの兵器の実験場とまで言われているところです。シリアでドンドン爆弾を落としてシリアの町を破壊し尽しているわけですね。そういうところのバランスも我々考えなければいけないと思います。だから懲罰的という意味で、キッシンジャーさんは言ったのでしょう」
反町キャスター
「キッシンジャーさんはインタビューでこう話されています。シリアへの武力行使と北朝鮮へのメッセージは別と考えるべきである、明らかに北朝鮮はこの状況を分析しているはずだ。トランプ大統領にとっての我慢の限界がわかったと思う。と言うような話をキッシンジャーさんはされたのですけれど、今回のキッシンジャーさんの発言を踏まえて、北朝鮮は何を学び、キチッとメッセージは伝わったのかどうか、どう感じになりますか?」
岡本氏
「両方は別だと、シリアと北朝鮮は。たぶんそれはその通りでしょう。ロシアへのメッセージという意味は考えたでしょう。アサド氏へのメッセージと共に。だけれども、北朝鮮は頭の中にその時はなくて、ただ、副次的な効果として、キッシンジャーさんが言ったようなことが出てきているのだと思いますよ。それを金正恩委員長はわかっているでしょう。要するに、アメリカ、今度の大統領は何をするかわからん奴だという意識で。だって、自分の住んでいるところだってああやってピンポイントでやってくる能力があるのだと、要するに、核兵器を使わなくたって自分が破壊されるということはわかるわけでしょう。これは非常に副次的な効果ではあるんですよ。うまいやり方だと思いますね。1986年だったかな、テロを起こしたということでリビアのカダフィー大佐をアメリカ軍は爆撃するんですよね。大統領がいるところを。ただ、情報をその前にどこかの国経由で流しているんですよ。たぶん、それは間違いないと思いますね。カダフィー大佐はそれを聞いて真っ青になって逃げだして、その後、アメリカがピンポイントでドーンと爆破しちゃった。もうカダフィー大佐はいつでも自分はアメリカにやられちまう位置にあるということで、すっかりおとなしくなったんですよ。本当に牙を抜かれたオオカミみたいになっちゃった。それがアメリカの中に成功体験としてあるのかもしれませんね。要するに、俺はいつでもお前をやっつけることができるんだぞと、リビアのカダフィー大佐をやった時よりももっと今度はさらに精巧ですよ。だって、バンカーの中を撃ち抜いて、中にあった化学兵器をやっているわけですからね。そういう意味では、金正恩委員長にもういい加減にせえよ、というメッセージは、それは伝わっていると思いますね」
反町キャスター
「片山さん、このキッシンジャーさんの発言、トランプ大統領にとっての我慢の限界が北にも伝わったのだろうと思うという話、どう感じていますか?」
片山議員
「一定以上の効果はあったと思いますし、当然、冷静な判断をしていれば考えると思います。ですから、大陸間弾道弾的な発射を行うという可能性は非常に減ったけれど、だからと言って、このまま一切何の発射も行わず、開発も止めるかどうかはまだこの時点ではわからないし、核がなくても他の弾頭はありますし、化学兵器という話も今日総理の国会答弁の中から仮定の問題として出たようですから、プレッシャーをかけ続けなければいけないと認識していますが、一般論として、やるぞ、やるぞという時に撃つ人はいないですよねということはあると思います」
反町キャスター
「岡本さんも、一定の線を越えた時に行くぞというこの話、その一定の線の話、こんな話がありました。アメリカに届くミサイル開発を終え、導入展開するまで待つことは、アメリカはできないと。一方、同盟国への脅威はアメリカ本土への攻撃と同等に深刻で北朝鮮はその一線を越えてはならないと。北朝鮮への武力攻撃は今話をしたことです。この北朝鮮に関して、キッシンジャーさんが話された、これを敢えてレッドラインと呼ばせていただきますけれども、これはどう感じますか?」
岡本氏
「要するに、レッドラインはどこですか、と聞いたのに対して、アメリカに届くミサイルを開発した時ですというのが彼の最初の答えです、それが本音ですよね。だけど、おい、いけねえと、建前があったと。同盟国がやられてもいいのかよと言われちゃいかんというので、いや、同盟国へ届くミサイルもダメだと言うので、だから、レッドラインがよくわからなくなってしまったんですね。だけど、本当に同盟国のことを考えるならば、北朝鮮は1994年にノドンミサイルを発射する実験を成功させているわけですね。それから、現在300基くらいのノドンミサイル、これは日本のほほ全域をカバーできるミサイルですよ。アメリカまでは飛んでいきませんけれども。その時、日本はアメリカに対し、これは深刻なものだ、深刻なものだと言ったのに、正直言ってアメリカは正面から、クリントン政権の時ですけれども、日本の安全保障上の懸念というのを日本と同じくらいには感じてくれていませんでしたね。だから、今そういうことを言うのなら、どうしてあの時からやってくれてなかったと。あの時の方が北朝鮮の核開発、ミサイル開発は止めやすかったんですよ。今になってテポドン2の改造型がアメリカに届くからと言って、アメリカは慌て始めているのでしょう。そういう言い方はしちゃいけないけど、遅きに失したけれど、それでもいいかと思いますよ」

『米中関係』と日本の『立ち位置』
秋元キャスター
「続いてキッシンジャーさんへのインタビューの中から米中関係、日米関係について話を聞いた部分ごらんください」
反町キャスター
「キッシンジャーさんから見て、今後目指すべき米中関係はどういった関係なのですか?対立?共存?競争関係なのか?どういう2国間関係をアメリカと中国は目指すべきだと考えていますか?」
キッシンジャー氏
「これに関してはいろいろな資料もこれまで目にしていますし、私は最初のアメリカの外交官として中国に派遣された人間ですから、それまでいろいろな資料も見て、また、いろいろな情報にも触れてきた、そういう私自身の経験もあります。中国とアメリカの間におけるいろいろな問題や課題というのはそれぞれの時期で全て、いつどの時期においても同じだったわけではありません。南シナ海の問題においても、当時と現在では状況が違います。ですから、こうした問題、課題というものは、お互いの進展の中で考えなければいけないと思うんです。つまり、お互いの国の、1番の利益というものを尊重しあうことが必要でしょう。お互いにものの考え方が違うということは当然あるはずでしょうが、基本的な戦略としては平和的にこうした両国の関係がお互いの目から見ても進んでいくようにすることが重要でしょう。もちろん、同盟国であれば、お互いに対話を進めていくということが何よりも重要だと思います。それが基本線でなければいけません」
秋元キャスター
「中国の南シナ海での基地建設についてはどう見ていますか?アメリカは今後どういう対応に出ると考えていますか?」
キッシンジャー氏
「280の島がそこにはあって、避けなければいけないのは、一方的な、一国主義的な行動によって緊張関係が高まってしまうということは、絶対に避けなければいけないと思うんです。これは私の個人的な希望ではありますけれど、解決策というのはお互いがお互いを律するということで、探していくということが1番だと思います。そのためには話し合いが1番だと思うんですね。どういう具体的な話し合いをすべきかということを私が逐一申し上げることはできませんけれども、私自身としては常にこうした話し合いを両国が行い、対立を解決していくというのが1番のやり方だと思います。その場合にはお互いの国がお互いを抑える、自制するということも必要でしょう」
秋元キャスター
「続いて今後の日米関係について聞きたいと思います。現在の日米関係、どう見ていますか?」
キッシンジャー氏
「日米関係は、私の印象では、非常に良いポイントにあると思います。以前、両国間の信頼関係という意味においても、その点において、これほど良好な関係の付き合い方は今ほどはなかったと思います。現在が最高の時期だと思います」
反町キャスター
「一方、日米関係とは別に安倍総理は日露関係の改善に非常に意欲的で、今月末にはロシアを訪問する予定です。こうした日本のロシアに対するアプローチをアメリカはどのように評価しますか?これはアメリカから見れば心配すべき状況ですか?」
キッシンジャー氏
「私自身は、安倍首相を個人的にも長年の間、知っていますけれども、また、彼のお父さんも知っていましたから。いずれにしても、並行して戦略的なアメリカに対する見解を持ち、また、明確に日本としては、北方領土の問題について大きな懸念を持っているということ、ロシアに対してです、そうしたこともよく理解しています。従って、安倍首相において、ロシアを訪問して話をすることは非常に自然なことだと思います。日本の国益にもかなうと思います。ただ日本がロシアとアメリカのさまざまな関係の問題について介入することはないと思います、そうするべきではないと思います」
反町キャスター
「日本とロシアが平和条約を結ぶ、北方領土問題を解決することはアメリカの国益にかなうことですか?それともアメリカから見れば、そこに懸念が生じることなのですか?」
キッシンジャー氏
「もちろん、北方領土の問題は日本にとっての大きな問題でありますし、もちろん、アメリカにとっては問題の程度はそれほど大きくないかもしれませんが、しかし、一般的には、アメリカとしては日本とこの問題について、ロシアと日本の関係が改善することは歓迎する立場にあります。国際制度の中で合意したルールに基づいて、各参加者が行動していくということになりますから」
反町キャスター
「ただ、現在の状況を見ると、G7外相会議でも、ロシアに対する圧力を強めるようにということで、G7各国の足並みが揃っています。そうした中で日本がロシアとの関係改善に突き進むこと、これはアメリカとしては歓迎できることですか?」
キッシンジャー氏
「もちろん、皆さんもよく理解してらっしゃると思いますが、私は、あくまで一米国市民として話をしているわけであって、アメリカの政治家ではありません。現在のアメリカの政権においてはさまざまな国との関係を、新しいトランプ政権が築いている、あるいは持っている中で、ロシアとの関係は他の国に比べるとあまりこれまで発展してこなかった関係であります。すなわち国内の議論があり、ロシアに対し、たとえば、ロシアに役割を持たせるべきか、持たせないかという議論が、いろいろとこれまで国内であったわけですね。しかし、アメリカとしては、ロシアとそれ以外の海外の国々との関係を見るというより、むしろ我々とロシアとの関係というものを考えていくべき時期であるかもしれません。むしろ非常によく理解し、特に安倍首相はよく理解をしていらっしゃる。トランプ大統領もそれを認識し、そういった形のフレームワークとして、たとえば、2国間関係がそういった国々ともいろんな形で対応していくということ。これは最終的にお互いに信頼できるようになり、そうすることによって同盟国の利害を損なうことがないということにつながると思います」

『米中関係』の行方
秋元キャスター
「キッシンジャーさんですが、南シナ海問題についてはこのように発言されました。南シナ海問題は米中両国が話し合いを行い、対立を解決していくことが1番。互いに自制することが必要ということなのですが。岡本さん、この互いに自制することが必要という、この発言どう思います?」
岡本氏
「南シナ海は、さあ、どこでレッドラインとアメリカが思ってくれるか。中国の拡張主義がこのまま進んできたら、全部中国が既に、250くらい島があるのですけれども、ほとんど中国が獲っちゃっているでしょう。次はスカボロー環礁だと思ってるんです。スカボロー環礁というのはクロワッサンみたいな格好をしていて、真ん中を土砂で埋めると3000m級の滑走路ができるんですね。2本くらいつくれるのではないですかね。そうすると、そこに中国が大量の土砂をこれから運び込むようなる。そうしたらもう中国がやりたいことを全て、誰からのチェックも受けずに、国際仲裁裁判所の決定も全部無視して、好き放題やっていいということにお墨付きを与えることになるから、そうはさせてはいけないから、その前にレッドラインだと思うのだけれども、アメリカはそう思ってくれるかどうか。レッドラインというのは、どうやってそれを阻止するかと言えば、結局、海上封鎖に近い格好で、中国の土砂運搬船の入域を阻むということしかないですけども、でも、アメリカはおそらくそこまでやらないでしょう。そうなると、いったい中国とはお互いに自制、お互いに対話と言っても、彼らも好き放題これまで通りにやってくるから非常に難しいですね。ただ、中国がこれまで新しい大国関係ということをさんざん言ってきているわけですね。それをアメリカはオバマ時代にはだいぶ譲りました。だけど、中国の言う新しい大国関係というのは何かと。あなたは私の核心的な利益を尊重してください、私もあなたの核心的利益を尊重しますから、とこういうことでしょう。私の核心的利益はこれこれこうこうという中に、南シナ海も入っているわけです、あとチベットとか、台湾とか。オバマさんはいったんそこまで譲っちゃったんですね、結局。それからずっと巻き返してきた、そのうえに現在のトランプ政策があって、現在のトランプ政策は中国に対して、中国を戸惑わせるぐらい強い出方をしていますよね。この間の安倍首相との共同声明だって、あれは非常に思い切ったことを言っていると思いますけれども、アメリカは日本を、核兵器を使ってでも、通常兵器を使ってでも、あらゆるやり方で日本を守ると。こんなに強いことを言った共同宣言なんてないですよ。1975年に、三木・フォードの間で共同新聞発表というのが同じような文言でありましたけれど、あれを正式の日米共同宣言という形で発表して、それは、中国は驚いていると思いますね、ひるんでいると思いますね。だから、少なくとも同盟国の利益というのは、トランプ政権は絶対に守っていくのだと、これだけは崩してほしくないし、それは今のところはその方向で行っているのではないですかね」

『日米関係』 今と未来
秋元キャスター
「日米関係についてキッシンジャーさんは次のように話をされました。日米関係は現在が最高の時期。一般的にアメリカは日露関係改善を歓迎する。日本は米露の問題に介入すべきではないという話だったのですが、岡本さん、キッシンジャーさんの日米関係は最高の時期だという発言。これはどう受け止めたらいいのでしょう?」
岡本氏
「視覚的には安倍さんとトランプさんがあれだけ仲良くやっているわけでしょう。だから、最高の時期だと、こう言うのでしょうね。現に日米関係が悪かったのはだいたい経済摩擦の時ですからね。それは、当時は日本が悪者ナンバー1だったけれど、現在は圧倒的に中国が悪者ナンバー1ですから、摩擦案件も少ないしね。そうすると、日米は基本的には対立する要素はないし、日本人に対して、アメリカは好きですか、好意的な感情を持っていますか?と聞くと、日本人の84%がイエスと答えるんですよね。これは実は世界の中で1番高い、そうか、ポーランドがちょっと高いですね。だけど、最もアメリカに対して好意を持っている同盟国ですよ、日本はね。だから、アメリカもそれをわかっているし、だから、基本的には日米は良くなるんですよね。それに共通の脅威が高まってくれば、北朝鮮と、それから、さらには中国ですね。日米というのは心配することはないと思っていますよ」
秋元キャスター
「片山さん、いかがですか?」
片山議員
「いや、日米関係というのは酸いも甘いも嚙み分けた、あらゆるいろんな摩擦案件を乗り越えた関係ですから、今さら新たな火種というのは何かが起きない限り生じないので、しかも、緊張関係に国際情勢がなると最大の同盟国として握るということがあるし、それから、私がキッシンジャーさんにお会いした時には、その時点では政権の中にロシアと非常に親しい、中国が嫌いだという論調が新たなトランプ政権では真っ盛りだった頃ですけれども。冷静に考えてアメリカの経済行動を見ると、ロシアと組むよりも中国と組んだ方が絶対にまだいいんですよ。それは最大の輸出品が、ある意味で、軍需産業を含めた、航空産業、宇宙産業、小麦、現在ロシアの方が小麦輸出国として大きいですからね。石油天然ガスですよね。それを考えると、中国はそうではないですから。中国を安い生産現場として使ってきたアメリカの利益は確かにあったので。トランプさんを囲む経済人の評議会が早速できたんですよ。オバマ政権とあまり変わらないメンバーで、ブラックストーンとか、JPモルガンとか、実際にゴールドマンとか、中国とも上手に商売をやってきた人達も入って、だんだん中和してきただろうし、その萌芽は1月の時点でもあったし、これは、ですから、余裕の発言で、日本も領土問題を抱えているのはわかるから、確かに正常ではないから、がんばってね、大変だろうけれどと。逆に日本は米露のさまざまな駆け引きとは関係ないでしょうというのは、関係なくいるべきでしょという意味でしょうね」
反町キャスター
「米露関係についてキッシンジャーさん、こう話されています。ロシアに役割を持たせるべきかどうか、これまでアメリカ国内で議論がありました。米露関係を考えていくべき時期であるかもしれないという話をキッシンジャーさんはされています。一方、ニュースでもやっているようにトランプ大統領が言っていますけれど、米露関係は史上最悪と、少なくとも大統領が現在言っている。史上最悪と言われる米露関係を目の当たりにしながらこういう言い方を、キッシンジャーさんのこの言葉どう受け止めたらいいのですか?」
岡本氏
「ロシアと中国とのバランスというのは、常にアメリカ外交の中であるわけですね。これまで中国との方に傾いていました、アメリカは。それで、ロシアは、それはこれまで最初からトランプ大統領が何度も何度もプーチンさんほど偉い奴はいないのだと散々言っていたように、中国には出発点では、台湾の主席に電話したり、1つの中国政策を見直すと言ってみたり、中国に対する強硬派をずらっと通商の正面に並べてみたり、相当、中国に対する姿勢が転換されてきていますよね。そうすると、それと相対的にロシアの役割がこれまでのように非難の対象だけにしておけばいい、制裁の対象だけにしておけばいいということではなく、ロシアにも何か建設的なエンゲージメントの役割を持たせるべきだというのが出てきていると思いますね。でも、今度のアサド、シリアに対する問題で、ロシアのアメリカへのもの言いがあまりにもきついから、トランプ大統領は自分が推し進めようと思っていたロシア路線というのを、これで挫折させられ、それで怒り心頭という面はあるのでしょうね」

シリア攻撃後の『世界』
反町キャスター
「片山さん、キッシンジャーさんと会った時に、キッシンジャーさんはロシアのこと何か話されていたのですか?」
片山氏
「核心的なことはちょっと言えないですけれども、現在のロシアの政治的な状況において、日本も領土問題と、非常に難しいだろうね、とは言っていましたよね。私は、米露関係を考えていくべき時期という、彼の発言は、この数か月後を見ているんですよね、常に。私と会った時には米中が最接近した時を見ていましたから、常に早いので。それでティラーソン国務長官が議会証言の時に、彼はロシアとのビジネスが長いし、要人とも皆、知っているわけですよ、いろいろな裏情報も含めて。それでロシアが現在、ある程度牙を剝いたように精鋭的になっている部分の1つの理由は、あれだけの大国だったところが地に落ちて、リーブルも暴落し、それが国内の不安定要因になって自分の居場所、スタンスを探しているのだという言い方をしていたんですね。ですから、それはある程度トランプ政権、トランプ大統領はディールの人ですから、全てはディールの人ですから、ロシアとのディールはこれまでちょっとあまくいき過ぎていて舐められたと、その部分をどこで直すかということを現在もうやっているので、最悪だと大統領が言っているのは話ができていると思いますね、裏で」

ヘンリー・A・キッシンジャー 元米国務長官の提言 『BE CONFIDENT(自信を持て)』
キッシンジャー氏
「全ての国、また、いわゆる先進国であれば、テクノロジーが新たなものまでいろいろな経験をしてきていると思うんです。テクノロジーが立ち上がってくる、ある国が栄えて、他の国がだんだんと衰退していく、そういうようなところを見てきた国ばかりだと思うんです。私自身、日本に対して考えていること。これは日本とのつながりは1951年から始まっています。その時から日本はいろんな変化を経験してきました。世界における日本の役割もいろいろと変わってきました。日本はこれだけのことができる国だということをこれまで示してきたのですから、将来に向けて日本の人々にもし提言するとすれば、もっと自信を持ってください。また、こうした同盟国に対しても自信を持って信頼関係を築いてください」