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2017年4月12日(水)
櫻井よしこ&森本敏が激変世界秩序を斬る!

ゲスト

森本敏
元防衛大臣 拓殖大学総長
櫻井よしこ
ジャーナリスト

米シリア攻撃と米中首脳会談
秋元キャスター
「今日はアメリカのシリア攻撃によって世界秩序がどう変わったのか、日本が備えるべき危機について話を聞いていきます。さて、今回のシリア攻撃ですけれど、北朝鮮の核ミサイル問題を大きな議題の1つとした米中首脳会談の最中に決行されました。シリア攻撃を巡るアメリカの主な動きをニューヨークタイムズはこのように報じています。今月4日、シリアで化学兵器の使用が疑われる攻撃がありました。それを受けて翌日5日にトランプ大統領はホワイトハウスでレッドラインを越えたと発言しました。6日、中国の習近平国家主席との夕食会の前の午後4時にトランプ大統領はシリアにミサイル攻撃命令を出しました。習国家主席との夕食会は午後6時30分から始まるわけですけど、その最中の午後7時40分にアメリカはシリアに巡航ミサイル、トマホーク59発を発射しました。午後8時半から40分ぐらいにミサイルは着弾したとみられています。このアメリカによるシリア攻撃をトランプ大統領が習国家主席に伝えたのは、夕食会の終盤だったということです。森本さん、このシリア攻撃というのが中国に対してどういうメッセージになったと見ていますか?」
森本氏
「たぶんこのオペレーション全体は国防長官とそれからNSC(国家安全保障会議)のマクマスター氏のわずかな軍人のスタッフで計画されて、それをホワイトハウスの中でたぶん補佐官がだいぶ議論したと思いますけれども、完全に大統領の側から見て、国防相とマクマスター氏の側に立ったのはクシュナー氏で、おそらくバノン氏は反対したと思うのですけれども。当然のことながら、それぞれの持っている人の信条とか、考え方というのは非常に大きな影響を与えたのだと思いますけれども。国防相リードで作成計画が実行されていくこのプロセスというのは、まさに今回の現在の政権というのは、ポリティカル・アポイントがすごく少なくて、軍人だけでオペレーションが、計画ができて実行ができるということなので、たぶんそれが米中首脳会談の1日目が終わったディナーのあとに相手に対して説明するというのが、中国に対しての1番良い牽制球だろうということは細かいタイミングはともかくとして、そういう結果になることは十分はかって行われたのではないかと思います。そう言う意味で、ロシアにとってこのオペレーションは非常に不快な作戦だったと思いますが、中国の方はもっと不快以上に完全に習金平氏が水を差されてメンツを失わせて、米中首脳会談に水をかけられた、外交的にすごい打撃を与えられた米中首脳会談になったと、それはちゃんと計算してやったのだろうなと思います。ティラーソン氏があとで説明していますけれども、習近平氏はトランプ大統領によってこの説明を受けたことに対して謝意を表明しつつも、化学兵器で無垢の人が亡くなったということに対して、今回の行動が行われたことを理解すると、その場で言ったとティラーソン国務長官はあとで説明しているのですけれども、中国外務省は別の説明をしているわけですよね。まさに中国らしいのですけれども、しかし、その不快感というのを中国に帰ってみるとそのままではどうも済まないなと、これはちゃんと釘を刺さなければいけないということで、おそらく帰ってから中国の政府の中で議論をして電話会談をやったのだと」
反町キャスター
「では、今日の電話会談は、その意味で言うと、修正?」
森本氏
「その時に何か理解して黙って受け入れた感じになって戻って来て、このままでいくと北朝鮮にキチッとした圧力をかけないといけないような宿題を持って帰ったような状態で帰ったので、それはダメですよと、ということをきちっと言わないとダメではないですかと周りが皆、言ったのだと思うんです。だから、中国の政府の中は不快感を持って習近平氏が帰ったのを迎え、アメリカの大統領にキチッと言っておかないと、釘刺ししておかないといけないと、そういう決断をおそらく中国政府はやったのだろうと思います。そういうことを全体として考えると、この1回の巡航ミサイルの攻撃でアメリカがロシアとの関係と中国との関係を決別するという完全に冷戦後にこの2つの国が力を行使して、国際秩序を乱して、国連安保理決議も通らないという。総理の言葉で言うと『力の行使によるステータスの変更』という平気で国際社会が黙認してきた、これに対してキチッとした、断固とした姿勢をトランプ大統領が示したという意味では、トランプ政権の始まりの時に、中国とか、ロシアが引き続き、軍事力を行使する、あるいは容認するという態度であれば完全に決別するぞというメッセージを、巡航ミサイルを撃つことによってやったんだと思うんです」
櫻井氏
「この首脳会議が開かれる前はどんな首脳会議になるのだろうと皆思っていたと思うんです。と言うのは、中国の方は非常に戦略的に詰めていくのだろうと、いろいろ激しいこと言われていたから、とりあえずトランプ大統領と良い関係を築きたい、その中国に対するある意味での、中国の新聞が書いていましたけれど、我々はリーセントな、妥当なリスペクト、尊敬の念というのをこちらに示してくれれば、それが1番大事だったのだみたいなことを書いているわけです。しかし、トランプ政権の方を見ると、閣僚級の人事は整っていても、副大臣級とか、もしくは局長級とか、部長級の人事がまだ空白が目立つわけですね。だから、ホワイトハウスでなぜやらないのというジョークのように、あまりビジネスで詰められると、アメリカの方の準備ができていないからとさえ言われていた中で、これはこの時期に首脳会談するのはちょっと早いのではという声すらあったわけですよ。アメリカ側の、事務局の方の準備が随分整っていないというので。ですから、首脳会談が始まる前は、もしかして中国の方が戦略的に攻めていく側かなという印象を持っていたのですけれども、森本さんがおっしゃったようにトマホーク59発でガラッと局面が変わってしまったわけですね。で、いろいろ議事録聞いてみると、あとで話題になると思いますけれども、北朝鮮のことなどでも、恐ろしいようなことが突きつけられているわけですね」
反町キャスター
「アメリカが中国に突きつけている?」
櫻井氏
「そうです。もちろん、中国がきちんと協調路線をとってくれなければ…」
反町キャスター
「この話ですね、独自の措置をとるというこの話」
櫻井氏
「これなのだけれども、その前に、たとえば、北朝鮮に対しての制裁を、中国がずっと制裁破りをしてきたというのが国際社会の常識ですね。それをちゃんとやりなさいと、やってほしいと、やらなければバンク・オブ・チャイナ、中国銀行に制裁を科すこともあるという話をしたと言われている。これはすごいことで、ブッシュ政権の時に中国が北朝鮮のためにいろんなマネーロンダリングしたり、お金をやったりということで、見逃していたわけですよね。その時にバンコ・デルタ・エイシャという本当に小さな、マカオにあるのですけれど、金融期機関に対してアメリカの決済させないぞというので、止めたことがありましたね。その時も実はバンク・オブ・チャイナ、中国銀行は国営、日本で言えば、日銀ですよね、中央銀行にやろうかという議論もその時あったのですけれど、でも、それはあまりにインパクトが大き過ぎて深刻な事態になりすぎちゃうというのでバンコ・デルタ・エイシャで止めたというのがあるんです。それを今度はバンク・オブ・チャイナの話が出たということは、中国に対して、大変なプレッシャーをかけているということですよ」
反町キャスター
「首脳会談でですよ。大統領が主席に対して? そういう意味ではなくて、もっと実務レベルの協議において?」
櫻井氏
「ティラーソン氏とか、そういうレベルでですよ。だから、そういう前提があって首脳会談になっているわけです。だから、アメリカが北朝鮮の核問題についてこだわっているということも明確に伝えているわけです。そのうえでシリアに対して実力行使をして見せた。しかも、見事に59発のうち、ロシアは23発しか当たっていないと言いましたが、アメリカは2発外れただけで、57発は全部当たったということをあとで発表しましたね。しかも、目標そのものは、AFPでしたか、どこかが、滑走路を撃ったと言うが、滑走路はまだ使っているよと、失敗したのではないかという質問を記者会見でティラーソン氏とか、マティス氏にするんです。ティラーソン氏が、我々は滑走路は狙っていないですと、最初から。あそこの空港の滑走路というのはすごく分厚いコンクリートでできていて、大砲で撃ってもあまりダメージがないのだと、ダメージがあってもすぐに修復できるような構造になっているので、我々は、燃料施設とか、格納庫とか、基地を基地としての機能を失わせるための攻撃をしたのだ。それでシリア空軍の約2割の戦力をそこで破壊してしまったと、戦闘機とかですね。だから、最初からきちんと狙うべきところを最初から見定めてやったわけです。そう思うと、これはすごく中国にとって、そして北朝鮮にとって何よりも大変な恐怖というか、トランプ政権はすごく乱暴に見えたけれど、先ほど、森本さんがおっしゃったように、軍人を中心に、私は軍人が多すぎるとは思っているのですけど。でも、この作戦に関しては非常に周到に計画して成功した、それは彼らにとってこのうえない恐怖だと思いますね」

北朝鮮と米国のレッドライン
秋元キャスター
「アメリカのティラーソン国務長官は、今週月曜にテレビ番組でシリア攻撃と北朝鮮対応の関係性を聞かれてこのように答えています。『あるものが他国の脅威となれば、どこかの時点で対抗措置を取ることになる』と発言し、シリア攻撃は北朝鮮への警告の意味が込められていたと強調しているわけですが、また、アメリカ軍が原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島周辺に向かわせるなど圧力を強めています」
反町理キャスター
「森本さん、いかがですか?どう見ていますか?」
森本氏
「北朝鮮とシリアと、これからの対応は少し性格が違うと思うのですが、シリアについてはレッドラインが何であるかはっきりしていて、それを越えたと言って、今回は実力行使したわけですが、北朝鮮の場合は、つまり、核実験やミサイルというのは類似の国連安保理決議がありますし、何度も違反しているから、もしそれがレッドラインだと言ったら、もう何回も越えてしまっているのけれども、僕はそうではないのだろうと思うんですね。つまり、アメリカは北朝鮮問題にまだレッドラインを示していないと思います。それでお互いに手を出したりしたら、お互いに破滅の状態までいきますから。北朝鮮ももし手を出したら、本気で体制が壊れるかもしれず、アメリカももし挑発行為をやって北朝鮮に何かしら実力行使をした場合、周辺国に及ぶ被害のことを考えると、その引金を引いた責任を全部アメリカが負うということになるので、できれば中国が北朝鮮に必要な説得をして、我々同盟国が持っている懸念というのが解消されるような方向に、中国が導いてくれれば1番ありがたいわけですね。それを中国には首脳会談で言いつつ、実際には周りに圧力をかけながら、中国が北朝鮮を説得しやすいような客観的な環境をつくろうとしているのではないかと思うんです」
反町理キャスター
「北朝鮮に対してレッドラインをアメリカは最後まで引かない?」
森本氏
「もちろん、レッドラインは国際法上のレッドラインというのがあって、これは、たとえば、アメリカが自衛権を行使しなければならないような時というのはレッドライン、それから、アメリカ艦船に対し弾道ミサイルが近寄ってくる、飛んでくる、あるいは日韓両方の米軍基地及び日韓両国に対する主権への侵害というような行為があったら、これはもうレッドラインところではないわけですから、自衛権を行使できる状態をつくるということですから。それと国連安保理決議との間に差があるわけです。まだ間隙があると思うんです。まだアメリカが示していないということは、レッドラインを示したら、それを実行しないと必ずいけないですから。従って、それは非常に慎重に手の内を見せないと思うんです。見せない方がむしろ北朝鮮を動かす方に良いと思っているに違いないと思うのですけれども、問題は北朝鮮がこの事態をミスカリキュレイトして、シリアの次は自分達だろうと思って、挑発行動に出るということにならないようにしないといけないので、相当周りで抑止を効かさないといけないという状態に置かれているのだろうと思います」
反町キャスター
「櫻井さんはレッドライン、北朝鮮に対してアメリカが引くかどうか、引くか引かないかをどう見ていますか?シリアには引いて、北には引かないところが、こちらとあちらでやることが同じなら、やればいいとは思いませんけれど、ダブルスタンダードにもちょっと見えたりもするのですけれど、ダメだという他のところにもちゃんと線を引いて越えたらアウトという、そんな外交というのをアメリカに期待するのは無理筋ですか?」
櫻井氏
「アメリカも自分の国益、それから、国際情勢を思いますよね。シリアの場合は、もちろん、ロシアとか、イランとか、ヒズボラとか、いろいろな勢力が関わっていますが、そして非常にややこしくて、これからの対応次第で泥沼に入っていく可能性もなきにしもあらずなのですけれども、北朝鮮を見ると、北朝鮮と中国というのは本当に憎みあいながらも、嫌いあいながらも、運命共同体みたいに、中国はここを絶対取られたくないわけですよね。だから、北朝鮮に対してのアメリカの行為というのは即、中国をすごく刺激しますよね。その意味で、中国のことを考える場合、アメリカはとっても慎重になるでしょうし、私はレッドラインを引くか引かないは別にして、そこのところは上手に戦略的に動けるようにアメリカは余裕を残しておくだろうと思いますね。ただ、核兵器が本当の意味で完成してしまって、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を本当の意味で完成させるようなところまでにはいかせないと私は思います」
反町キャスター
「それが、もしかしたら武力行使のトリガーになるかどうか?」
櫻井氏
「そこは1つの重要なポイントだと思っていますね」

朝鮮半島有事に日本は…
秋元キャスター
「もしアメリカが北朝鮮に何らかの攻撃を行った場合、北朝鮮の反撃ということについてですが、日本はどういう事態を、櫻井さん、想定していると思いますか?」
櫻井氏
「本当にアメリカが北朝鮮を攻撃して、北朝鮮が反撃するとなったら、これは大変なことですよ」
反町キャスター
「こちらに飛んできますよね?」
櫻井氏
「ソウルにも行くでしょうし、日本にも来るでしょうし、そのことを予想しないといけないですね。だから、北朝鮮がどのような能力を持っているのかということをきちんと見なければいけないわけで。北朝鮮が撃ってきたら迎撃するとアメリカは言いましたね。本当に迎撃ってできるのだろうか。飽和攻撃というのがあるでしょう、何発ものミサイルを同時にワーッとやって。いろいろ聞いてみたら、森本さん、元防衛大臣で軍事の専門家でいらっしゃるけれども、北朝鮮の能力でいうと、森本さん、現在だいたい4発くらいを同時に発射するのがせいぜいだというのですが、そうなのですか?もしそうだとしたら、それくらいは防げると言うんですよ。でも、それを超えて十何発とか、二十発とか、三十発とか、飽和攻撃になると、これはもう防ぎようがないというのが国際社会の常識ですね」
反町キャスター
「話しにくいですよね。ちょっと教えていただければ」
森本氏
「つまり、北朝鮮の弾道ミサイルそのものは、非常に種類の多い弾道ミサイルをいくつも開発して、そのいくつかが日本に届くわけですね。ノドン、あるいはノドンER、あるいはムスダンだとか、テポドンだとか、テポドンの派生というようなものは日本に届くのですけれども、その多くは、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)もそうですけれども、多くが移動式で、移動式のものというのはなかなか発見を事前にするというのが難しいので。従って、移動式のシステムが、先ほど、櫻井さんがおっしゃったように、同時に多数、ある特定の目標に撃ってこられた時に、我が方が持っているミサイル防衛のシステムで全部効率的に撃破できるかというと、なかなかそれは現実問題としては難しい面があって、どのぐらいが迎撃できるかというのは言えないですけれど、現実には難しいので。だからこそ我が国のミサイル防衛が、どこまでどのように効率的に対応できるかということを、日米でデータを持ち寄って、いろいろなシミュレーションをやって、評価をしながら、どこをどのように改善しないといけないかということを現在、政府の中でいろいろな議論を進めているところです」
反町キャスター
「実際に飛んで来た時に、それを抑える方法がなくて、ミサイルディフェンスによって撃ち漏らしたものが着弾しちゃうという、それに向けての国内の備えというのは、これは防衛省の話ではなくて、もしかして別な、警察とか、厚労省、そういうところの話だと?」
森本氏
「いや、そうではない。これは法執行機関ではできないです。だから、具体的に申し上げられにくいけれども、アメリカも空母機動部隊を持ってきているというのは、空母機動部隊に随伴する巡洋艦、あるいはミサイル駆逐艦、等数隻で、もし2個機動部隊入ってくるということになると、相当なミサイルを迎撃できるシステムを持っている日米の艦艇がそろうということになるんです。相当強い抑止を効かせることができる体制ができるわけです。それを現在、私の想像はどこのタイミングかを考え、アメリカは日米協力でこの地域の近海の抑止力を1番高いレベルにしようとしているのだろうかということは、ちょっと我々にはまだわからない」
反町キャスター
「情報公開しますかね?」
森本氏
「そんなことは情報公開する必要はないです。どうしてかと言うと空母機動部隊の周りには中国の艦艇がずっと張り付いていますから、それは然るべき情報は周りの国にもわかる。わかる人にはわかるということです」
秋元キャスター
「それがあるということで、私達は安心して大丈夫なのですか?」
森本氏
「いや、それは国家の防衛というのはベストの体制をとろうとしているわけですから、それは専門家におまかせになるしかない」
反町キャスター
「それは安心の状態なんですか?櫻井さん、違うでしょう?
櫻井子氏
「ご質問はすごく良いポイントをついてらっしゃると思うんです。日本の国民はもちろん、その国によって守られている、日米安保条約によって守られている。でも、私達は守られていて、安全はお水や空気のようにどこにでもあるのだわと思ってきたわけですね。だから、国の防衛がどこまで必要なのか、どれだけ大事なのかということを本当に戦後考えなかった非常にめずらしい国民ですよ。現在でも、朝鮮半島情勢こんなに緊迫しているんですよということの意識がどれだけ国民の間にあるか。ないと思うんです。私、今日も本当に(浅田)真央ちゃん大好きで、真央ちゃん大好きで、本当に記者会見聞いて私もうるうるしました。彼女には素晴らしい人生を送ってほしいと思いつつも、なぜこれがトップニュースなのだろうという思いはありましたね。これは平和の国の、平和の象徴だということを言う人もいるかもしれないけれども、実はもっと考えるべきことというのは、とりわけ国防について、すごく深刻なものがあるわけですから、安心というのではなくて、安心な暮らしをするために、私達は今ここで何を考えなければいけないだろうかという問題提起を皆がお互いにし合わないといけない、その時期だと思いますよ」

トランプ政権の意思決定
秋元キャスター
「ここからはシリア攻撃に踏み切ったトランプ政権の内部の変化ついて話を聞きます。こちらの写真ですが、アメリカ軍がシリアにミサイル攻撃を行った直後、トランプ大統領の別室の一室で報告を受けている時の様子ということですが、モニターの正面に座っているのがトランプ大統領ですね。硬い表情ですけれども、向かって右横にはティラーソン国務長官、国家安全保障担当のマクマスター大統領補佐官、娘婿で上級顧問のクシュナー氏の顔ぶれがあります。ちなみに、トランプ大統領の最有力側近と言われてきましたバノン上級顧問ですけれども、こちらにいらっしゃいますね。NSC、国家安全保障会議の常任メンバーから外されたとされていて、後ろの方に座っています。森本さん、この写真からどんな印象を持ちますか?」
森本氏
「2つですよね。1つは、大統領を支えるスタッフの力関係というのがこの2カ月で変化をしてきて、変化の1番大きな特徴はフリン氏の代わりに登用されたマクマスター大統領補佐官。実はマティス国防長官の事実上の、スタッフではありませんけれど、自分が指導してずっと抜擢をしてきた腹心の部下みたいな、そういう経歴を持っている大統領補佐官、元軍人が、NSCを事実上仕切っていて、相当多数の軍人がこの大統領補佐官の周りに集まっていて、NSCというのは軍人の集団みたいな状態ができているのですが、彼が大統領を支える非常に重要な役割をしている。その向こう側にいるクシュナー氏が、家族というか、身内であると言いながら、実際には中東政策を担当すると言われていたのですが、今や中国政策についてもクシュナー氏が大きな影響力を持っていると。つまり、事実上、対外政策について経験があると思わないのですが、大統領の信任が強く、発言力が強くなっているのがこの図から見て非常にはっきりとわかりますよね。だから、当初言われたようなバノン氏だとか、プリーバス氏といったスタッフがゆっくりと退いていって、これからは現実的な政策の路線になっていくと。バノン氏という人はもともと従来の国際秩序というものをできれば壊して新しいルール、新しい秩序をつくろうとしているという考え方に立っていた人だと言われているのですが、それが戻ってきつつあると。つまり、どういう形に戻っているかと言うと伝統的な共和党の保守主義に戻ってきつつあるということではないかなと」
櫻井氏
「軍人が多過ぎるのではないかという気がするんですね。今回のシリア攻撃は、非常に緻密に軍事的にうまくいっている。それはマティスさんとか、マクマスターさん、本当にベテランの軍人がいるからなのですけれども、では、その軍人の皆さん方があまりにも大きな比重を、このトランプ政権の中心で占めるとなった時、全体の戦略とか、国際政治というものをもっと総合的に見る人がいるのかしらと思うと、たとえば、クシュナーさんがいるわけです。クシュナーさんというのは娘婿であるということもあって、彼自身はハーバードを首席で卒業したというくらい頭の良い人なのだと思うのですけれども、36歳ですよ、不動産業です、お仕事はね。外交の経験もない、戦略ということについて本当にどれだけ知識が深いかもわからないわけで、それに対して周りの国々は不安感を感じないとしたら、そちらの方がおかしいわけで、不安を感じますよね。だから、先ほどから話題になっている、シリア攻撃はうまくいきましたと。でも、その先の世界戦略というものがなかなかまだ定まっていないのではないかと思うんです。北朝鮮に対してこんな強いことを言っている、それもどうなるのかちょっとわからないところがありますよね。だから、アメリカの今の断面で見ると伝統的な共和党の政策にちょっと戻って、力と話し合いというところに戻ってきていると思うのですが、これからこの複雑な世界、ロシアを相手にし、中国を相手にし、中東なんか見ると頭が痛くなるくらい複雑ですよ。これをどうやってマネージしていくかという戦略を考える人がこの中にいるのだろうか。ティラーソンさんは素晴らしいビジネスマンです。彼の経歴をずっと読みましたけれど、エクソンモービルにいた時の交渉の仕方はすごく見事なものですけれど、でも、ビジネスマンとしての交渉が国家の戦略という意味において本当に機能するかというと、するかもしれませんけれども、まったくイコールではないという可能性もありますから、そこは注意深く見なければいけないなと、ちょっと心配は心配です」
森本氏
「そうですよね。政治任命者の中であまりにディズグネート、指名されて承認を受けている人の人数が少な過ぎますよね。たかだか40人くらい、約ですけれど、約40人。本当は500人とか、600人いないとけないのに、なかなか指名されないから、承認の議会の審議、いわゆるヒアリングというのも行われないという状態で、国務省はティラーソン国務長官1人だけが承認を受けているということで、わずかなスタッフを連れて、外交をやっている、これは国務省としては異常な状態です。だから、外交政策というのはもっと、地域とイシューを担当する人が非常にたくさん集まって、政策チームができて、1つずつの地域国に対する対応、あるいは問題に対する対応というのが政策として練り上げられて、それがホワイトハウスの中に持ち込まれて、政策が決まっていくということでないといけないのですけれど、このままいくと何かマティス国防長官リードのトランプ政権みたいなことになりそうなので、うまくいけば良いと思いますが、しかし、国防政策だけで政権が動くわけではないので。今のところは大統領が出している大統領令と大統領書簡で政治が動いているような印象を受けるので、もう少したくさん共和党の中に英知を集めて政策チームができあがって、政権全体を支えるチームができてこないと、政権として長く政権を維持するということが難しくなると思いますね」
反町キャスター
「マクマスター氏、マティス氏、この2人の存在感が異様に大きい印象を持っていますか?」
森本氏
「私はそう思いますが」
反町キャスター
「人数的に言うと、他にまだいるんですよね?NSCは他にも」
森本氏
「NSCというのは本来、全体は、要するに、スタッフという秘書的な仕事をする人も含めれば、数百人はいるんです。すごい人数です、ホワイトハウスに入る限りでは。しかし、その中で大事なことは、議会の承認を必要としないです。だから、指名されたらそのまま仕事ができるということで、非常に便利ですね、議会の承認を必要としないですから。だから、そういう人の中で政策がつくられていくということになると、ものすごいホワイトハウスリードの政権になるということですよね」
反町理キャスター
「櫻井さん、そうした中で、世論調査、CBS。アメリカ軍のシリアへのミサイル攻撃についてCBSテレビの世論調査で支持が57%、不支持が36%。高いですよ。この支持率の高さに対して、支持率が低い低いと言われてきたトランプ政権が、これはウケたぞと。これはNSCで、軍人主導の政策決定でやった結果がこれでうまくいったのだからという、この流れになるかどうか、ここどう見ていますか?」
櫻井氏
「この57%、アメリカ国内の支持が高いとおっしゃいますけれども、国際社会の支持も高いですよ。これに反対したのはロシアとか、中国。中国はあからさまに反対していませんけれども、注文をつけましたね。だから、国際社会においても、アメリカ国内においても、アメリカは強いアメリカであってほしいし、その強さというものをアメリカの国益だけではなくて、世界益のために使ってほしいというのがどこかにあるわけですね。その意味で、私はこの57%は国際社会も共有しているものだと思うんです。トランプさん、これを見て、評価すると思います。自分がやったことは正しかったと。その時にそのまま突き進むかどうかというのはわからない。なぜなら戦略がまだないわけですから、大きな戦略が。先ほど、私、軍人が多過ぎると言いました。軍人が多過ぎるけれど、軍人がいることのセーフティーというもの、安全性というものもあるわけですね。軍人の人達は力を持っていて、戦う人々であるがために、いったん戦ったらどんなことになるかということを誰よりもよく知っていて、自分達が1番先に死ぬわけですよね。だから、彼らは意外なほどに慎重な面もあるんですよ。だから、そのところは、私はある意味、トランプ政権がすごく暴走するとは思わないですよ。だけども、心配なのはその上のもっと大きな戦略を持つ人がいないものだから、対症療法みたいにやってここで止まる、またやって止まるというふうになったら、アメリカはもたないと森本さんおっしゃった通り迷走が始まりますね。そこのところが、大きな図柄が見えてこないというのがすごく心配で、だけれども、トランプさんはこの支持率に気を良くするだろうと思いますね」
森本氏
「この数字はすごく面白いですね。2週間ほど前まで、支持が35%、不支持が59%だったんです。まったく逆転してるんです。だから、今度の決定というのは国内及び国際社会で強いリーダーシップをとる凄い一手だったんですね、59発の巡航ミサイル」
反町キャスター
「では、トランプ政権にては一石四丁ぐらいになっているわけですね?」
森本氏
「かなり米露関係、米中関係だけではなくて、国内政治、国際政治を考えると、これはすごいヒットですよね」

米露関係と日露交渉
秋元キャスター
「さて、アメリカのシリア攻撃を受けてロシアのプーチン大統領がこのように話しています。『大量破壊兵器疑惑を理由とした2003年のイラク攻撃を想起させる』と、イラク戦争を引き合いにアメリカを非難しています。また、ロシア外務省は、シリア領空での偶発的な衝突回避のために米露が結んだ覚書の履行停止を表明していますけれど、こうした中、今月27日から安倍総理がモスクワを訪問するということが報道されました。櫻井さん、この米露関係の悪化というのが日露関係にどう影響すると見ていますか?」
櫻井氏
「米露関係は悪化、表面的には言い合っているわけですから悪化しているのですけれども、本当に悪化させる余裕はプーチン大統領にはないと私は思いますよ。この前、地下鉄でテロが起きましたし、それから、反プーチンのデモが、私達はその実態をあまり知りませんけれども、万単位の人々が出ていますよね。ですから、プーチンさんの足元は私達が考える以上に厳しいと思いますね。そして経済はうまくいっていないと。中国との関係においても経済的なメリットはとれない。となると、ここでアメリカと決定的に対立して、やっていけることがあるのかと言うと、プーチンさんが本当に自分の足元を見て、自分の政権を長続きさせて、ロシアの利益を確保するとしたら、決定的な悪い関係にはなる余裕はないと思いますね。そうした中で安倍さん行かれるわけですけれども、安部さんもこの前、山口県にお呼びして、東京で会見をして、共同記者会見を見ると、プーチンさんの、たとえば、領土に関する考え方というのが非常に厳しいというのがわかりましたよね。1956年の日ソ共同宣言よりももっと後ろに下がってしまっている。安倍さんも期待はしたけれども、これはなかなか厳しいのだなとことを誰よりも実感しておられると思いますから、今回、モスクワに決まったのですか?モスクワに行かれても、これまでの安倍さんとは違う対応をするのではないかということを私は期待していますね」
反町キャスター
「より強く?」
櫻井氏
「より強く、それは安倍さんの気持ちとしては、知りませんよ、話したわけではありませんから、知りませんけれども、忖度という言葉が…、忖度すると、プーチン大統領の時代でなければ領土問題は解決できないという想いがあるからでしょうね。だから、その意味でのコミュニケーションというか、意思の疎通を保持しようとする最大限の努力はなさると思いますけれど、そうかと言って、すごく他国から非難されるような、安易な妥協はなさらないのではないかと思います」
秋元キャスター
「森本さん、どう見ていますか?」
森本氏
「現在プーチン氏が置かれている状態というのは内外厳しいと思うんですよね。来年に選挙を迎えるのに、国内で経済も悪いだけではなくて、ここで反プーチンの動きが国内に出てきたので、このままの状態で来年を迎えるということは到底できない。シリア情勢もこれまでリーダーシップをとって2年半、アサド政権を助けてシリア情勢をかなりロシアの方向で進めてきたのに、一挙に巡航ミサイル59発で状態が逆転して、アメリカにリーダーシップをとられるかもしれないという恐れさえ出てきたので、私は、プーチン大統領は起死回生の一手を、中東で打つのではないかというおそれを持っているわけですね。それで、それをやって内外のリーダーシップをとり戻す、国内の人気をとり戻す、ということをしないと、一方的にアメリカにやられているという状態でマイナスイメージが続くことは、プーチン氏としてなかなか受け入れがたいという状態にあると思うんですね。だから、我が総理は、ここはあまりプーチン氏を追い込まない方が良いと思います。むしろもう少し、たとえば、IS(イスラム国)作戦について協力的な対応を示す方法はないのか、あるいは国際社会の中で、たとえば、ヨーロッパとの協調というのをはかることはできないのかという、ロシアにもう少し国際協調の枠組みの中に溶け込むような、理解をしてもらう態度を示すということが総理の振る舞い方としては一番望ましいのではないかと。ここはアメリカと一緒になって、それみろ、という感じでロシアに力をかけるようなことはなさらないと思いますけれども、非常に気をつけないといけないと。プーチン氏はとにかく日本をできるだけ引きつけて、ここは追い込まれた自分の立場をもう1回とり戻そうとするに違いないと思うんです。それに乗っかったら危ないのだろうと思うんですね」

森本敏 元防衛大臣の提言 『同盟の強化と防衛力』
森本氏
「今日の同盟というのはかつてのような価値観を共有するというような考え方でなく、国益をどうやって共有していくかということが重要なので、いかなることがあってもアメリカにキチッと注文もし、利益を共有できる、最も信頼できる同盟国としての位置を日本は維持しておくということが日本の利益になると思うんです。そういう意味では、同盟を強化するためにまだまだ努力する面は多いと思いますし、そのためにも日本の防衛力をキチッとしておかないといけない。これからの日本が国際社会の中でより大きな利益を享受するために必要不可欠な手段だと思います」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言 『普通の民主主義国になる』
櫻井氏
「表現は違いますけれど、だいたい同じようなことで、普通の民主主義国になるという意味ですね。現在の日本は普通の民主主義国ではないわけです。憲法を見ても、防衛の根本的な考え方、専守防衛ということを見ても。ですから、きちんとした普通の民主主義の国としての軍事を持ち、その軍事はシビリアンコントールによってきちんと管理される。そのような形にするために憲法改正とか、自衛隊法の改正とか、防衛力の強化とか、そういったことを民主主義的にやるべきだと思っています」