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2017年3月31日(金)
甘利明×元通産審議官 日米通商『激突』秘話

ゲスト

甘利明
前TPP担当大臣 自由民主党衆議院議員
黒田眞
元通商産業審議官

『タフ・ネゴシエーター』が語る 『日米半導体交渉』秘話
松村キャスター
「本日のゲスト黒田さんが携わった日米半導体交渉とそこから得られた日米通商交渉の教訓について聞いていこうと思います。黒田さんは1955年に、通産省、現在の経産省に入省します。入省以来、通商畑を歩きまして1986年6月から1988年6月、通商産業審議官を務め、日米半導体交渉に携わりました。遠慮なくものを言う交渉ぶりから、タフ・ネゴシエーターですとか、アンチテーゼの黒田、暴言官僚等の異名もあったということですが、黒田さん、これらの異名、当時はどのように受け止めていましたか?」
黒田氏
「本当にアメリカの人は酷いことを言うなと思いましたけれども。目立っていると新聞がインタビューにくるんですよ。私は当時できるだけそういう人と会おうと思ったものですから。それでつい本音みたいなことを言ったのが、そういうことを言われる原因になったかもしれないのですが、渡辺美智雄、当時の大臣から『君、悪名は無名に勝るよ。誰も覚えてくれないよりは悪口でも覚えてもらった方がいいことがあるよ』と言われて、そんなものかなと思いましたけれども」
反町キャスター
「アメリカのメディアとのインタビューにおいてはどんな話をされたのですか?どんなことを言って騒ぎになったのですか?」
黒田氏
「いや、メディアとの間での話は騒ぎにはならないですよね。アメリカと交渉をした時にスーパーコンピューターというのが非常に大事だと。日本は買ってくれと。ところが、大学はすごく割引があって売りにくい何とかならないかという。自分の方は大きなコンピューター会社は平気なのですけれども、クレイとか、やや特化した会社があって、それが潰れると困るんだと言うんですよ。困ると言ったってどうしようもない。あなた方で面倒を見たらいいので、ヨーロッパなら国有化でもするのではないかと言ったら、酷いことを言うやつだと言って。それをまた、それを面白おかしくストーリーにして電報を打った人がいまして、ここの交渉者達、アメリカ側。また、それは議会で発表されて、それで新聞に出たんです。そうしたら、当時おられたワシントンの特派員、日本の新聞の方々が暴言官僚と言う。僕はそんなことはないよと、真相を全て明らかにすると本に書きましたけど、誰もあまり読んでいただけなかったのではないかと思うんです」
反町キャスター
「それは、結局、評判と言いますか、それが広がることによって、交渉するにあたって、事前に良いポジションに立って自分が相手に臨めるような雰囲気になるものですか?それとも周囲の圧迫感が強まってちょっと手足が動きにくくなる、どういう感じになるのですか?」
黒田氏
「あまりどちらでもないですね。普通、平常心ですよ。向こうが言いたいことを言うのですから、こちらも言いたいこと言うという姿勢で臨むと」
反町キャスター
「甘利さん、1988年まで黒田さんは通産審議官を努めたのですけれど、(甘利さんは)1989年に経産省の政務次官になられています。黒田さんの動きをどう見ていたのですか?」
甘利議員
「一言で言えば、伝説のタフ・ネゴシエーターですね。私もアメリカとは相当やり合いましたけれども、現在のアメリカと当時のアメリカとは全然違いますよ。当時のアメリカは強大なアメリカです。昔、日本が新しい経済体制に向かうとか、入っていく時になかなか認めてくれなかった。その時に、アメリカは自分の輸入枠を増やして、日本を入れてくれたという、その度量があったわけですよ、余裕綽々。そのアメリカが、強大なアメリカがかなり焦ってきたわけですから。日本への圧力が半端じゃないです。おそらく当時、若手官僚で、現在議員になっている人達がたくさんいますけれども、当時を振り返れば、もう屈辱の歴史という、こうやりなさいと、協力を求めているわけではない、通告しているのだという態度から始まっている交渉ですから。そういう中で日本の主張をして、跳ね返すというのは並みの胆力ではないと思いますよ」
反町キャスター
「そういう時代だったのですか?」
黒田氏
「そうですね。もう1つ、日本の勢いが非常に強かったですね。だから、すごく目立って、ナンバー2を叩けと言いますか、おっかけて来るやつはできるだけ、叩こうと。そういう精神には満ち満ちていました、向こう側が」
松村キャスター
「ここで黒田さんが日米交渉に携わった時代の半導体の世界シェアを見ていきます。1980年にアメリカ製の半導体の世界シェアは6割弱、日本は3割弱でした。大きな隔たりがありましたが、1980年代前半、日本は一気にシェアを拡大していきます。1986年には、日本はアメリカを抜いて、世界のトップに立つのですが、当時のアメリカは巨額の貿易赤字を抱えていて、日本製の安価な半導体がアメリカに輸出されていたことと、日本国内で9割以上が日本製の半導体で外国製が少ないこと、これがアメリカから問題視されていたのですが、アメリカが日本の半導体を問題視する背景にはナンバー2を叩けと、そういうのもありますか?」
黒田氏
「自分達が始めたものをあとから追っかけてきた日本が追い越したということがまず気に入らないわけですが、同時に世界ではアメリカのものが当然売れているわけです。向こうの方が先に走っているわけですから。ところが、日本にはさっぱり入り込めないと。これはどうしたことだろうかというのが彼らの発想です。繊維から始まって、自動車とか、鉄鋼、これは日本からの輸出がドーンと出て、向こうが困ったという話だった。半導体はちょっと違って、日本に入れないのはなぜだろうかという輸入問題という形で出てきたというところが非常に特色のあるというのか」
反町キャスター
「そうすると、アメリカ側は日本にアメリカ製の半導体が入れない理由というのは、自国の製品の性能とか、コストの問題ではなく、日本に問題があると、こういう…。何を、どうしろと言ってきたのですか?」
黒田氏
「あの頃の半導体は内製ですよ。自分の中でつくって、自分の製に組み込んでいるような格好で、それはアメリカなんかも同じなので、IBMとか。そういう会社は皆、外へは売っていなかったですね。むしろ小さな会社しか売っていなかったものですから、日本の方が少し微細加工技術においてうまかったのではないですか」
『日米半導体交渉』の教訓
松村キャスター
「1980年代に入って日本の半導体が急速に伸びてきたと話をしましたが、黒田さんが交渉の末、1986年9月に日米半導体協定が締結されます。ポイントは、日本製半導体のダンピング輸出防止、日本における外国製半導体シェア拡大。付属文書、サイドレターには、日本政府は外国製半導体の日本市場シェアが20%を超える期待を認識し実現を歓迎する、こういうものが添えられていました。黒田さん、付属文書の文言に関して、日本とアメリカで受け止め方に違いがあったのでしょうか?」
黒田氏
「はい。アメリカは世界の状況から見て日本の3割ぐらいマーケットを取ってもいいと言っているやつを、俺は収めてきたんで2割よこさないかと。こういう話だったんですね。ヤイターさんという当時の代表が見えまして、迎え撃つ我が方は渡辺美智雄通産大臣です。料理屋で週末に数時間、議論をされたと言うんですよ。何と言われても日本側として20%買いましょうと言えるわけがない。言えっこないわけです。だけど、向こうが繰り返し繰り返し言うので、それは努力をしなさいよと俺達も然るべく応援はするよと。もしできればいいねというようなことを言って、後のいろいろな話によると、ヤイターさんが、渡辺さんの目を見たら、これは約束したように受けと止めていたなどという、いい加減なことを言って、実に何が起ったかと言うと、それを種にして日本が然るべき約束を守っていないという、翌年の早々ですよ。9月に協定ができて、1月頃にそういうことを言ってきて、それで最終的に、これも東芝ですが、ラップトップコンピューターとか、電動工具とか、いくつかのものについて、日本からの輸入について100%の制裁関税というか、そういうものをかける。100%だから輸入禁止に近いですね。というような暴挙を敢えてなしたわけですよ。我が方はとんでもない話だといって、GATT(関税貿易一般協定)に持ち込むべきだというような議論を随分としたのですけれど。他方、日本もGATTとか、何とか言われると、農業でいろいろな保護がありまして、ちょっと弱みもあるものだから、あまり事を荒立てない方がいいのではないかというようなことで、激しい報復合戦にはならなかったのですけれども、ただ、その時の経験で、こちらが非常に良心的にというか、シェアが20%を超えるというあなた方の期待は認識しましたと、実現できればいいですねと、こう書いてあるわけでしょう。ところが、20という数字を取ったということで、そういう報復的制裁関税をかけてきたということで、教訓はその後、絶対に数字の話をしてはいかんと。あいつらにあとで何と悪用されるかわからないというので、自動車なんかをはじめ、随分苦労されたわけですが、そこで一切その後、日本はこういう数字の話はしないという固い決意で、これは今日も受け継がれていると思うのですけれども」
反町キャスター
「半導体協定第2次に行く前に、甘利さん、今の話、TPPをやっている時に数字は入れないという気持ちでフロマンさんと向き合っていたのですか?」
甘利議員
「数字というか、関税で具体的にありますからね。そういう、要するに、今のお話は努力目標みたいなことに、漠としたものに確定したものを入れると、コミットしたことになってしまうという」
反町キャスター
「この場合、20%を超える期待を認識し、実現を歓迎する。これは日本語で見ると、どう考えても20という数字が入っていると向こうは喜んでしまう?」
甘利議員
「20だけ捉えてしまうということですよね。約束できないものに数字を入れるなという話だと思うんですね。私は関税交渉をやっているので、具体的な数字はありますから、これは入れざるを得ないですけれども。アメリカとやってみてつくづくわかったことは、よその国と違って、あなたのところはこれだけね、うちはこれだけね、間を取って、ここでどうという感じの収め方というのは絶対にできないですよ」
反町キャスター
「足して2で割れない?」
甘利議員
「割れない、割れない。絶対にできないです。足して2で、ここでと言うと、今日はここまでにしようと。明日からはここからまたスタートしようとなりますから。だから、とにかく期限がくるまで、5分前まで交渉をするという国ですから。それを踏まえていないとと大変なことになる。今日まとまって良かったと言ったら、明日またそこからと。昨日はここまでで終わったから、今日はここからスタートしようとなっちゃうわけですよ」
反町キャスター
「ずっとやっていましたものね」
甘利議員
「だから、これはかなりストレスが溜まる仕事で」
松村キャスター
「結果、1991年には第2次日米半導体協定が締結されますが、先ほどのサイドレター、20%を超える期待が明文化されて、盛り込まれたということですが、黒田さん、これが正式に盛り込まれたことで半導体産業にはどういう影響が?」
黒田氏
「いや、まったくないですよ。要するに、サイドレターという形でみっともないから、協定本文から脇に置いておこうというか、機密扱いにした、非公表にしたんですよ。そこで相手につけ込まれたので。私が辞めてからですが、後輩達がこれを書いてしまおうと、本文にその通り、まったく文書は違わないですよ。しかし、これは約束ではないぞと言って、むしろもともとのサイドレターには、そんな意味はまったくないということを、明らかにするべく明文化したんです」
反町キャスター
「1991年の第2次半導体協定以降、アメリカからの日本に対する半導体の輸出というのは増えているのですか?」
黒田氏
「どうでしょう。あまり増えていないかもしれませんね」
反町キャスター
「増えていないですよね。要するに、明文化しようとしまいとアメリカが思ったような展開には少なくとも半導体に関してはならなかった?」
黒田氏
「まあ、ならなかったのかもしれませんね」
『日米TPP交渉』の教訓
松村キャスター
「1970年から始まった繊維交渉。自動車摩擦は1970年代から1990年代まで度々日米間で交渉が行われました。1980年代はアメリカが財政と貿易の双子の赤字に苦しみ、ジャパンバッシングという言葉も使われた貿易摩擦が激しさを増した時代でしたね。牛肉、オレンジ、スーパーコンピューター、黒田さんが携わった半導体など、様々な品目で交渉が行われました。構造問題協議では貿易不均衡の是正を目的に日米双方の構造的な問題について話し合われました。甘利さんが携わったTPPは多国間ですが、日米間の交渉が大きな焦点になりまして、交渉が難航しましたが、2015年10月に大筋合意をされ、昨年2月署名されました。TPPの主な項目、日本の輸入に関してはコメ、麦などの関税は維持。牛肉は16年かけて削減。豚肉は10年間で一部撤廃。乳製品はバター、脱脂粉乳は維持。チーズなどは撤廃。輸出に関してはアメリカの乗用車への関税を25年かけて、段階的に撤廃。自動車部品、こちらは25年目で撤廃。その他に投資ですとか、知的財産、金融サービス、国有企業、政府調達など、貿易以外のルールについても合意をしました。あらためて甘利さんに聞きたいのですけれども、このTPPの合意内容をどう見ていますか?どう評価していますか?」
甘利議員
「この間アメリカに行って、それから日本に来て2回、フロマンさんと会ったのですけれども、この合意内容は、アメリカはほとんど満足しているのだと、関係者はという話をしていましたね。コメを除いてと余計なことを言っていましたけれど。良い合意結果だと受け止めていると。ですから、上下両院議員とか、シンクタンクもありましたけれども、この合意をまったく無にしてしまうのはアメリカにとって損だなという感じが随分ありましたね。ただ、それと大統領の面子とどうすり合わせをするのだろうかというような感じですね」
黒田氏
「おっしゃられた通りだと思いますね。ですから、本当はアメリカとしてももう少し冷静であればTPPを成立させた方がよっぽどアメリカの利益にもなったと思うんですけれども。何を思ったのかトランプさんが最初の公約実施で、永久に離脱をすると叫んでしまいましたから。ちょっと修復には時間がかかるのかなという気が率直に言ってしますね。しかし、最近聞いた話では、甘利大臣がおっしゃられたように良い結果が取れているではないかと。農産物もおコメは別かもしれないけれども、相当良いものが取れているのでもったいないと。だから、TPPを復活させようではないかというようなことを、牛肉、肉の団体の委員さんが言っているという話を聞いたりしまして、どこでトランプ大統領の振り上げた拳が収められるのかというのは、なかなか容易ではないと思いますけれども、どうなのでしょう。ですから、選挙、中間選挙を睨んで、どういうポジションをとるのが、アメリカというか、トランプ陣営にとって有利かということをいつも計算しておられるのではないでしょうか」
『トランプ時代』の通商戦略
反町キャスター
「甘利さん、いかがですか?アメリカに行かれた時、実は良かったんだよという話。フロマンさんがおっしゃったのはわかるにしても、アメリカ全体の印象として再評価というのは大きなうねりになる期待感はあるのですか?」
甘利議員
「これは時間がかかるし、丸ごとというのはなかなか難しいという意見が多かったですね。トランプ大統領がどうやってこれを新たなものにつなげていくかというのは少し時間を置かなければいけないと。その中で意外だったのは、アメリカ抜きの11か国でやった場合には、アメリカ政府は相当ナーバスになるのではないかと思っていたんですよ。そうしたらアメリカは11か国で先行して成立させたっていいんだよと。その方がアメリカのビジネス界がアメリカも参加すべきだという背中を押すことになるから。その選択肢は完全にアリだということをアメリカで言う人にいたんですよね」
反町キャスター
「アメリカは自国の政策決定に外圧を使うのですか?そう見えるんですよね」
甘利議員
「そうですよね。一方で、この間のAPEC(アジア太平洋経済協力)の会合の時に、TPP大臣会合ありましたよね、チリで。その時には様子を見たんですね。最初は11か国やるべきだと言ってたメキシコが、例の壁のつくる、向こうの剣幕にビビりあがって11か国でやるのにはあまり乗りたくないと。これ以上アメリカを怒らせたくないからみたいな話が中南米からは出たようですね」
反町キャスター
「近いところは少し怖いわけですね?」
甘利議員
「ええ、あの勢いにかなり臆しているのではないですかね」
反町キャスター
「黒田さん、いかがですか?アメリカ抜きのTPP。もともと日本とアメリカが参加の条件ですよね、どう見ていますか?」
黒田氏
「もちろん、そうですよ。そこは改正をしないとどうにもならないのですけれど。日本はやや慎重な態度をとっていると私も聞いていますが、私はいいと思うんです。そのアメリカ抜き11か国で、イレブンでというのがあり得ると思っているんですよ。と言うのは、いろんな知的所有権とか、電子商取引とか、新しい分野についてルールをまとめることができましたから。それはアメリカにとっても決して悪い話ではないし、FTAという狭い自由貿易協定だけでなく、経済連携協定と幅広い分野についてこういう合意ができているということはいいことだし、いま、大臣が言われたような形でアメリカの中にもイレブンでいいではないかということであるならば、是非そのへんは総理にも申し上げて、11か国のTPPというものをつくり早く作りあげて、アメリカさん、早くいらっしゃいよ、待っているよと言ったらどうでしょうか」
日米『2国間交渉』の展望
松村キャスター
「トランプ大統領は『TPPを離脱する代わりに雇用と産業をアメリカに取り戻す、公平な2国間貿易協定の交渉を進めていく』。ライトハイザー氏は『農業分野の市場拡大は日本が第1の標的になる』と発言しています。甘利さん、アメリカはどういった出方をしてくると思いますか?」
甘利議員
「ライトハイザーという人は昔の、黒田さんの頃の、USTR(米通商代表部)の次席責任者ですよね。ですから、自分としてはモノの摩擦をうまく仕切ったという、おそらく成功体験があると思うんですね。それをそのまま三十数年経って、持ってくることについてちょっと心配しています。と言うのは、おそらく農業関係のアメリカのおじさん方がTPPでうまく日本の市場にアクセスできると思ったらTPPが棚上げになってしまった。ですから、せめて農業分野だけでももう1回、ちゃんとやってよというプレッシャーをかけていますよね。これに応えようと、オレは昔かなりやったのだという感じで腕まくりをされていますから。ただ、2国間のFTAから逃げるわけではないですけれども、当時1980年代と現在を比べると、アメリカの産業形態も、日米の通商形態も、うんと変わっているんです。経済も通商もサービス化しているんです。アメリカの強い部分というのはIT(情報技術)からサービス、投資とか、金融、保険ですとか、R&Dとか、知財とか、そういうところに、電子商取引とかに、だんだんシフトしているんです。それが稼ぎ頭になっているんです。モノの部分は、モノづくりはアメリカ経済の中の1割ぐらいしかないはずです。その部分の成功体験の人が全体像を語るとちょっと間違った方向に行ってしまわないかと。現在の実態を正確に理解してアメリカはなぜ赤字なのかと。アメリカの現在の貿易を分析するとおもしろいことがわかるのは対先進国貿易はモノで赤字で、モノ以外のサービスとか、投資とか、そういう取引では黒字を稼いで、こちらの赤字を減らすんです。ところが、新興国、中国に対してはモノで赤字、それ以外でもっと赤字。アメリカは本来のポテンシャルを対中国で発揮できていないんです。なぜかと言うとルールです。たとえば、保険サービスとか、金融サービスとか、資本取引とか、知財のルールがちゃんとできていなから、アメリカはポテンシャルを発揮すべきところで発揮できていない。先進国はそうなっていくんですよ。モノの比率からサービス比率が増えていって、そこで投資だとか、知財とか、R&Dという比率がドンドン増えていくんです、先進国に進むに従って。ずっと昔も現在もモノづくりが全部という国はないです。アメリカが進化をしているということをアメリカ自身が知らなければいけないです。進化していく稼ぎ頭の部分で稼げていないのは原因が何か。ルールなのではないかと。だから、ルールをちゃんとアジアに展開していき、稼ぐところで稼げる体質にしていかないと、貿易摩擦というのか、経常収支の赤字は改善できないと」
反町キャスター
「そうすると、アメリカとFTAの話をする、2国間で通商協議をするというのは、意味があるのですか?」
甘利議員
「日米で、TPPでつくったようなルールをどうやって日米で協力して、アジアに展開していくかということを作戦を練ればいいですよ」
黒田氏
「日本は豪州との間で、日豪FTAというのがあって、関税を下げているんです。豪州牛肉は安いですね、関税が。アメリカの人から見るととんでもない話だと。非常においしい日本のマーケットで、競争相手の豪州に下駄をはかせているというか、有利のポジションを与えているとは何だと。だから、なんとしてでもそこを回復してくれと。これはどうも、私の見る限りでは、日米間で2国間協定を結んでほしいという強い気持ちがアメリカから出てくる、大きなきっかけになるのかなという気がするんですね」
甘利議員
「TPPの合意内容を、アメリカの関係者が良い合意内容だったよと、すごく。あれを実施すれば、アメリカにとってもいいのにもったいないねという。農産品を含めての話です。だから、乳製品のおじさんがなんとかしてと言うのはかなり強い力になりますから。この協議もやるのですけれども、それだけに焦点がいって、それ以外が忘れられてしまうというのでは困る。これはちゃんと議論をしますよと。良い方向に出るように努力をするでしょう。だけど、そこは入口の話で、もっと大きな宝の山にどうやっていきますかということですね。それから、アメリカのラストベルトの製造業というのも1980年代の自動車摩擦の感覚のまま、メキシコに行くのならここにつくれと言っても、旧来型製造業はアメリカは競争力を持てないですよ、人件費が高いから。たとえば、メキシコで成り立っている製造業をそのままラストベルトに持ってきて、じゃあ人件費をどうしますか。メキシコ人と同じ給料でいいですねと。冗談じゃないよ、2倍払えと。2倍払ってこの産業はペイするのですかということになりますから。製造業を立地させるのであれば、日米で組んで、進化系のものをもってこなければいけませんよと。たとえば、自動車で言っても、未来型の自動車とか、あるいは自動運転システムを含めた自動車産業とか、そういうものを立地させて、競争力を持った次世代製造業の立地ならまだわかるのですが、昔の製造業を強制的に持ってきて、競争力は大丈夫ですかと。賃金を高く払え、利益を確保しろ、輸出を伸ばせ、これはなかなか成り立ちませんよ」
『保護主義』にどう対峙?
松村キャスター
「ドイツで開かれたG20、財務大臣・主要銀行総裁会議の共同声明ですが、ポイントは、経済に対する貿易の貢献の強化、過度の世界的な不均衡を縮小とあります。昨年までの声明にあった保護主義に対抗するという文言はアメリカの反対で削除されました。今回のG20の対応をどう見ていますか?」
黒田氏
「保護主義に対抗するという言葉を落としたのはどうかと思いますけど。しかし、アメリカの代表としては、あれだけはっきりトランプさんが保護主義こそがと言っている時に、うちの大将の顔を潰さないでよと言われれば、皆さん、このぐらいは度量を持って引き受けてやろうかということで、そこだけを強調するのもいかがかと思いますが、保護主義的な動きが広まっていきそうだなという感じがありますね。だけど、その時は日本としてはちょっと過激かもしれないけれども、対抗措置というのか、WTO(世界貿易機関)のルールに反するようなことをしてくれば、これを咎めるという姿勢を維持した方が結果的にはいいのではないかなという気がするのですけれども」
反町キャスター
「世界における保護主義の潮流がさらに強くなると感じますか?」
黒田氏
「サプライチェーンができあがっている時に、そこをぶつぶつ切ろうという議論が普通の常識のある人からは起こってこないと私は期待したいですがね。(トランプ大統領は)思いつきを叫んでいるわけですから、まあまあということで、保護主義に対抗すると書くと余計にきますから、刺激剤はとりあえず目から見えないところに外しておくという大人の態度だと考えればいいのではないでしょうか」
甘利議員
「アメリカは波があって結構こうなったりするんです。だから、それがずっと続くわけではないですし、自由貿易体制が世界全体の富を拡大してきたというのは事実で、皆が共有できるものですから、おっしゃるように、大統領があれだけ拳を振り上げているのに多少は顔を立ててよということで、こういう表現になっているわけですから、これががんじ絡めになってどうにもならないわけではないと思います。EU(欧州連合)と日本とのEPAも首脳同士で本年中に妥結を目指すということは確認されています。ブレクジットがありますから、EUとしても明るい材料を加えていかなければならない、中の結束をはかるために。そういう意味では、促進剤になっているのだと思うんですよね。それからRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の評価というのはなかなか難しいですけれども、1つ間違えるとアメリカ外しになりますから、不透明なルールのまま、RCEPが完成してしまうということについては、日本は絶対反対すべきだと思います。RCEPの進捗と日米の経済協議、戦略協議と言ってもいいと思いますけれど、平仄をうまく合わせていって、日米のルールでの合意をうまくアジアにつなげていくということが1番努力を払わなければいけない部分だと思うのですけれども」
反町キャスター
「中国と組むのは危ないのですか?」
甘利議員
「いや、危ないというよりも、ルールが不透明でどうにでも大国の想いでなるという仕組みの中で、アメリカを外すということになると、そういう不透明なルールに対して日米でしっかりクレームをつけていかないといけない。それにアメリカが参画できないとなるとなかなか難しいですよと。だったら、RCEPはきちんとTPPルールが確定して、そのTPPルールでちゃんといくというのであれば、これは賛成してもいいですし、関税の自由化を、野心をうんと上げていくと。TPPそっくりとはいかないでしょうけれども、かなり近いところまで上げていくという質の高いものであれば、それはいいですよ。外に向けてだってアクセスができる余地がありますけれど、だけど、内にこもって外側の塀だけ高くして中はよくわからないということになったらフェアな取引ができませんから、そういう形でできあがってしまうのは絶対、阻止しなければいけないと思います」
甘利明 前TPP担当大臣の提言 『アジアのフロンティアを拓くルール戦略』
甘利議員
「どんなに力を持っている企業、産業でもルールがきちんと確立されていないところでは成果はあげられません。その前にブロックされてしまいますから。だから、先ほど申し上げたように、アジアにはこの十数年で、航空機で言えば1万5000機のニーズ、需要。インフラで言えば3000兆円近い需要。それから、LNGで言えば現在の3倍の需要があるんです。これはアメリカにとってだって、シェールガスを輸出していく先になっていくわけですから、スムーズにアクセスできるような、透明で公正なルールをつくることが1番大事です」
黒田眞 元通商産業審議官の提言 『丁寧な説明 説得への努力』
黒田氏
「交渉の過程でいろいろと主張しても、案外、相手に伝わっていないということがあるんですよ。ですから、説明は十分、丁寧にして、本当にわかったなと。わかったと言ったら、お前、言ってみろと、俺が言ったことをくらいやらないと。それと、説得への努力というのはなかなか説得されないかもしれない。しかし、説得への努力をすることで向こう側にいる、お国にいる人達に日本の言い分はこうだよというのが伝えられるような形で理屈を提案するという、説得への努力というのは、そういうつもりで書きました」