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2017年3月7日(火)
金正男氏殺害事件の闇 石井一氏が語る北朝鮮

ゲスト

石井一
元自治大臣 元日朝議員連盟会長
五味洋治
東京新聞編集委員
平井久志
ジャーナリスト 立命館大学客員教授

石井一元自治相が語る 金正男氏との『会食約束』
秋元キャスター
「金日成主席の孫にあたるのが先日、マカオで殺害された金正男氏ですが、石井さんは金正男氏が殺された2週間後の3月1日、正男氏と会食をされる予定になっていたそうですが、石井さん、この会食というのはどういう経緯で?」
石井氏
「それは間に私が親しい長年の友人の、韓国出身の非常に有力な実業家がいまして、前々から私に正男氏と会ったらどうですかと言ってきたんですよ。簡単に申し上げますと、2つ理由があって、1つは私と金正男氏とは思想がよく似ていると言うんですよ。南北統一をしなければ、そして日朝の国交を正常化しなければ、現在のような関係というものは清算できないということを私は現役時代からずっと主張してきたのですが、正男氏も同じような考え方を持っていたというのが1つ。それからもう1つは、私は金日成主席と5回、6回、膝を付きあわせて話をした間柄なのですが、ものすごく正男氏を愛していたんですね。孫をかわいがっていたんですよ」
反町キャスター
「それはただ単におじいちゃんが孫をかわいがるとか、そういうレベルではないのですか?」
石井氏
「たとえば、私が釣り道具をお土産に持って行ったんですよ。金日成主席はすごく喜びましたよね。これは朝鮮総連の連中がアドバイスしてきまして、あの主席にお土産を買っていくなら、あれを買いなさいというので、私は(釣りを)しませんので、高かったですね、15万円から20万円ぐらいしました。そんな釣り具があるのかと。しかし、1番高いのを買ってこいと。ところが、誰かが、金日成主席閣下は釣りと狩りが好きだと。それで釣りをする時、孫と一緒にやるのが1番楽しみだというのをどこかに書いてあったのですが」
反町キャスター
「どなたかが書いたのですか?」
平井氏
「カーターさんが核危機の時に訪朝しましたね。その時、カーターさんが、あなた、趣味は何かと言われた時に、そういうことを」
反町キャスター
「カーター・金日成会談で?」
平井氏
「はい。そういうことを金日成主席が語っているんですね」
石井氏
「孫というのは、正男氏を指しているんですよ。現在の正恩氏は生まれた赤ん坊かお腹の中にいた、そういう時代ですからね。そうなると、主席の思い出、彼にとって、おじいさんですが、の話ができる日本の現在、生存している人間はいないんですよね、ほとんど。私がそういう関係でしたからね。この金日成氏は偉大な人だったなと、僕はこういう印象を持っているし、こうだよと。あなた釣りしたらしいけれども、何の魚を釣ったのだと、そういう話をすれば非常に意気投合しますよね。間に立っている人間が盛んに進めてきたために、そのうち会おうという気持ちをずっと持っていたのですが、たまたま仲介者と2月2日に食事をしたんですよ。そうすると向こうがいよいよどうですかと。石井先生、正男氏と会われたらでどうですかと言うから、いいよと。いつでもいいけれども、私は、2月はちょっと日程が詰まっているから、3月にしてくれるかと。いっぺん聞いてみますと、すぐに携帯電話にかけたんです、その場で。暫くしたら携帯電話がつながった。韓国語で、石井先生が横にいると、食事に行くと言っているが、あなたは会うかと言ったら、電話の向こうから、喜んでお会いすると、どこで会うかと。なのでマカオで会おうと。3月なら行けると言っておられると。3月1日ならいいだろうと。場所はどこだと。場所はフランス料理屋とか、何とかいろいろやっていましたが、すし屋で会おうと、マカオの。それはあとで聞いたのですが、キントミすしと言いまして、正男氏が経営しているとか、出資しているとか、言いましたけれども、ここに6時と。それならその前の日か、当日、石井先生に入ってもらいますよと。その時に会いましょうねと言って、電話を切ったわけですよ。ところが、10日後にあの事件、暗殺が起こったわけですね。私はその時、すごい機会を失ってしまったなと。それから、私は3月と言わずにすぐに会おうと言えば、直ちにセットされていたわけですからね、どこであれ」
反町キャスター
「もしかしたらクアラルンプールに行っていなかったかもしれない?」
石井氏
「行っていなかったのかもしれないし、あるいはクアラルンプールにいたのかもしれない。そこは確認していませんけれども、彼は自由自在に動いていましたから。ただ、その時に初めて、この人物がこの世にいなくなったということは、日朝の関係だけでなく、朝鮮半島、北東アジアの将来のためにかけがえない人材を失ったのではないかと。しまったことしたなと。すれ違ったなと。こう思ったんですよ」
反町キャスター
「金正男さんはなぜ石井さんというか、日本の政治家と言ってもいいかもしれませんが、金正男さんの今回の石井さんとなぜ会おうという気になったのか。」
五味氏
「私は彼と3回会っています。その時には北朝鮮の政治とか、核開発とか、そういう話をしたのですけれども、彼は、表向きは政治には関心がない。自分は指導者になるつもりはないし、向かないと言っているのですが、一方で、北朝鮮と南北関係、日朝関係についてかなり詳しいですね、調べている、知識がある。自分が一応、金正日さんの長男ですし、故国を出てたいぶ経ちますけれども、長男としての責任感みたいなのを感じて、何とか祖国に協力をしたい。人々がもうちょっとよく生活できるために何とかできないかという接点をずっと探っていたのではないかと思うんです。今回も昔のことを、日朝関係が好転した時期を知っている石井先生に会って、何か自分ができること、つなげることをやってみたいなと。この5年間ぐらい彼は全然、出てこなかったんですけれども、表舞台に。きっと何か心境の変化があって…」
反町キャスター
「政治に対するモチベーションが、何かなければ、石井さんとは会おうという気にはならないだろうと。こういう意味ですか?」
五味氏
「そうですね。もともと持っていましたし、ここの数年は、金正恩さんに遠慮をしてと、言いますか、表舞台に出てこなかったのですけれど。何か心境の変化があったのではないか。だから、先ほど、石井先生がおっしゃったみたいに本当に残念です。それが本当に実現をして、何か接点ができて日本との関係改善に、日本は拉致問題を巡って問題が膠着してしまっていて、家族の方達も高齢化をしているわけですね。何とか接点ができなかったかなと。本当に残念です」
反町キャスター
「平井さんいかがですか?どう感じますか?」
平井氏
「日朝関係を膠着状態から少し動かしたいという意識はあったのではないのかという気持ちと、それと、非常に金日成主席にかわいがられた人ですから、ところが、自分の幼少期のイメージで第3者が見た金日成主席とは違う姿があるでしょうから、そういうことを、話を聞きたいという意識もあったのではないでしょうか」
反町キャスター
「在りし日の国家主席たる金日成という人間の話を聞ける、数少ない人」
平井氏
「自分が幼少の時ですからおそらくそんなに記憶はないでしょうし、金日成主席という人は首脳会談をやっているのに、孫がご飯を食べるから主席邸に来いと、首脳会談を中断していくこともあるんですよ。生まれる前までは正妻のお子さんではなかったので、非常に激怒したのですが、実際に会ったら溺愛したんですよね。そういうエピソードがいっぱいあるのですけれども、ところが本人は小さい時ですから、自己意識が形成する前の話ですから、それをちゃんとした大人が、主席をどう見ていたのかなということを聞きたかったという意識はあるのではないかなという気がしますけれども」

金正男氏殺害事件の闇
秋元キャスター
「先ほどの話、続きを聞いていきますけれども、五味さん、なぜ金正男氏は殺害されたと思いますか?」
五味氏
「正直言って、現在でもどうしてこのタイミングで、彼が殺害されたのか。よくわからないところがあるのですが、敢えて考えると、金正男さんは一応、金ファミリーの血筋を引いていて、その一員で長男ですね。現在は国とは縁が切れていますけれども、もしかして将来、誰かと力を合わせて自分の存在を危うくするかもしれないと、そう考えた可能性はあるかもしれないですね。それで亡きものに」
反町キャスター
「いわゆる亡命政府とか言われる、そのことですか?臨時政府とか」
五味氏
「そうですね。あとは、また海外からいろんな発言をするとか。韓国に亡命するという説は、私はちょっと信じ難いのですが、彼のいろいろな動きが非常に気になって、それだったら殺害してしまおうと疑心暗鬼になったと。でも、実は、彼はそういう政治力はなかった人なので、そういう人まで殺害しようとなると、金正恩の疑心暗鬼の度合というのが頂点に達していて、これから国内でも粛清とかね。また考えたくないですけれども、そういう暗殺の試みが行われるのかなという、非常に将来が心配になりますよ、あの国の」
平井氏
「金日成主席の血を引く人ですから、最初に聞いた時に信じられなかったですね。だけど、ちょうど昨年、党大会をやって、国内の権力基盤を固めていると。これから自分の偶像化というか、人民から尊敬されるという、偶像化の神話をつくろうとしている時期だと思うんですね。そうなってくると白兎の血統言われている金日成主席の血統の自分より優秀な血筋の人がいるということに対するそういう存在を許さないという」
反町キャスター
「優秀な血筋というのは、この場合でいうと長男だという、そこの部分?」
平井氏
「そこの部分ですね」
反町キャスター
「母親が違うとかではなくて?」
平井氏
「なくてね。これはお母さんの問題で言えば、金正男さんは南から来たお母さんだし、金正恩さんのお母さんは日本から来た方で、そういう意味では、北朝鮮の社会の中ではどちらかと言うと高く評価されていない階層にあたるのですけれど、北朝鮮にはまだ儒教的な精神が非常に強いですから、そういう意味で、長男という立場は高い地位にあるので、そういうものに対する不安感みたいなものが響いたかなという気がします。だから、偶像化作業という自分が直面をしている課題ですね。それをやろうとした時に、そういう人物がいるということに対する不安や疑心というのが大きくなったのかなと。それはおっしゃったように精神構造は正常ではないと思いますよ。なぜかと言うと、自分自身のつくっているイデオロギーを自分で壊すのですから。それは白兎山の血統というのは神聖なものだと言いながら、彼に実績があって指導者になったわけではなくて、金正日総書記の息子だからなれたわけでしょう。そういうことを、同じ血を引く人を殺してしまえば、自分をつくっている白兎の血統のイデオロギーというものを自分で崩すことになるんですよね。冷静に考えれば、それはやってはいけないことですから。それをやってしまったという気がしますね」
秋元キャスター
「ただ、北朝鮮内では金正男氏は知られていなかったんですよね?」
平井氏
「一般の方には知られていないと思いますね」
秋元キャスター
「それでも暗殺しなければいけない存在?」
平井氏
「逆に、こういうことをやっちゃったら、今後、脱北者の人達とか、韓国の人達は、この情報を北朝鮮に入れると思いますよ。それは今後、長期的には非常に彼にとってのマイナスの要因になってくると思います」
秋元キャスター
「石井さん、どう見ていますか?なぜ殺害されたのか」
石井氏
「それは3年前に、あの国のナンバー2がやられましたね。張成沢さんというのは金正日氏の妹の旦那です。おそらく最も信頼するべき、頼るべきおじさんでしょう。その人を粛清してしまったんですよね。銃殺をし、見る影もなく。あの頃から金正恩氏の異常性というものが出てきた。しかし、それ以上ターゲットにしなければいかんのは金正男氏だったのではないですか。刻々とその時期を狙っていた。金正男氏を、もう少し身を大切にしておればいいと思うのですが、このロイヤルファミリーのトップが亡くなったということは、よく亡命政権なんて言われますが、私は亡命政権でなくても、近い将来ですが、南北統一がもし仮に果たされて北と南が代表を出すという場合に、それで北からの金正恩氏は南が受け入れないですけれども、これまでの業績等々から考えて、金正男氏は、南にも自由主義国家にも、受け入れられる1人だったと思うんですね。しかも、血統的にはナンバー1ですよね、白兎のロイヤルファミリーではね。だから、そういうことを考えるとかけがえのない存在であった。しかし、言葉を返せば、金正恩氏から考えたら最も早く抹殺しなければ、その危険が迫ってくると。結果から見て、そういう1つの流れがあったような気がするんですよ」

『長男』金正男氏 知られざる人物像
秋元キャスター
「五味さんは7年間、金正男氏とのメールのやり取りをされていて、2011年には世界で初めて長時間の単独インタビューされているのですけれど、金正男氏とやり取りをするようになったきっかけはどういったきっかけだったのでしょうか?」
五味氏
「最初のきっかけは、私が北京支局に勤めていた時に別の仕事がありまして、北京の国際空港で、北朝鮮の代表団の人達を待っていた時に、他の記者さんもいて、その時に偶然彼が出てきたんですね。到着ロビーに出てきた。それで追いかけて、金正男さんですか、と聞いたら、そうですとあっさり認めて、それで皆で取り囲んで、いま北朝鮮はどうなっているのですか、お父さんはどんな様子ですかとか、その当時、奥さん、コ・ヨウインさんが亡くなったと噂があったので、何か聞いていますかと、30分ぐらいかな、取り囲んで聞いたのですが、彼は、知らない、知らない、と言って。我々も諦めて、名刺を渡して別れたんですね。その年の暮れに彼の名前でメールがきて、金正男という人のメールで、名前でメールが来て、あの時の彼だと。本物ではないかというので、私達がいろいろ報道をして、彼が表に出てきて、いろいろなことをやり取りしたんですよ、メールで。ただ、それは1週間ぐらいで終わってしまったんです。その後、2010年になって、また、私のところにメールがきて、何か質問があれば答えますよと、突然きたわけですね」
反町キャスター
「それは、五味さんにだけ?」
五味氏
「いや、最近の報道を見ていると私だけではなくて、当時、知り合いだった北京に勤務をしていた日本人の記者に連絡してきたみたいですね」
反町キャスター
「と言うことは、その時点で金正男氏としては何か発信したい気持ちがあったということですか?」
五味氏
「そうだったんですよね。それが何かと言うと、たぶんその当時、金正恩さんが後継者としてだんだん出てきたんですね。だから、そのことについて何か言いたかった。私の前にはテレビ局のインタビューも受けていますけれど、3代世襲はおかしいのではないかと。でも、決めたならしょうがないけれども、常識に合わないとか。あとは経済をもうちょっと活性化してほしい。国民がよく食べられるように、努力をすべきだとか。金正恩氏には会ったことはなかったけれど」
反町キャスター
「体制批判ではないですか?」
五味氏
「非常にソフトな形で言っていました」
反町キャスター
「自分が本当だったら、直系で正当なる後継者、血筋から言えば。正当なる後継者。たまたま中国にいるけれど、誰か別の人が後継者になる話になっている中で、現在の国の状況は、俺から見たら、こうなのだと、こういう話ですよね?」
五味氏
「そうですよね。だから、彼も胸の中にあるものがあって、それで韓国の記者と会えば言葉はすごく通じるのですが、韓国の場合だと複雑な政治問題になりやすいですね。韓国の記者には国家保安法というのがあって、北朝鮮の人と直接接してはいけないというのもあるし。日本では彼の知名度が高いですし、報道に取り上げて大きいニュースになりますし。日本の記者を選んで連絡をしたと思うんですね。私はそのメールを受けてから何回もやり取りをして、是非、直接会いましょうよということになって、2011年1月にマカオで、直接会いに行ったんですね。出てきてくれるとは思っていなかったので、来なかったら、観光旅行しようなんて気軽なつもりで行ったのですが、彼がタクシーで降りてきて、いいですよと、質問に答えますよ、と言って、ちょっと心を決めている感じでしたね」
反町キャスター
「心を決めているとは、どういう意味ですか?」
五味氏
「何かを喋ろうと」
反町キャスター
「その時のインタビューで決めている部分は何だったのですか?」
五味氏
「北朝鮮の体制、金正恩さんになって少し不安があると。だから、先ほど申し上げたような、たとえば、3代世襲について、少しこれは常識に合わないものだとか。あとは経済の活性化、改革開放しかないとか、そういうことを私に対して言っていました」
反町キャスター
「石井さん、今の話を聞いていると金正男さんはある程度、腹を固めていたのではないか」
石井氏
「表向きは政治に関与しないとか、言われながら、この五味さんに対しても本来、金正男サイドからメールを送ってきて、質問に答えますよ、とは言いませんよね。よほど外国で生活をし、自由の社会を見ていて、北の現況を憂いておったのは確かですよ。それを誰かに話をしたいというようなところから、私を選んだのかもしれません」

『日朝』打開の糸口は 遠のく国交正常化
秋元キャスター
「1990年の金丸訪朝団の時というのは、国交正常化というのはどこまで近づいたのでしょうか?」
石井氏
「金丸さんというのはやや右翼的な人でしたから、社会党の田邊さんという人に誘われ、それで嫌々付き合って行ったようなものですよね、最初は。ところが、帰りがけに、金日成首席が正常化の話し合いに着きましょうと提案したんですよ。驚いたんですね。こんなことがあっていいのかと。かろうじて会談があって、田邊さんを外して、妙香山というところに2人でこもって話をしたりしたのですけれども、政治家同士の話より複雑な賠償の問題もあるから、政府間同士でテーブルに着きましょうと。しかし、1年ぐらいの間にその話し合いを終えて、富士山の麓にでも、金丸というのはおめでたい人ですから地元の山梨で調印式でもやりましょうと。そういう話まで近づいていったんですよ。ところが、帰ってきて見え方が事実化したらボシャッといってもうたんですよ」
反町キャスター
「なぜ?」
石井氏
「アメリカが反対したでしょう。1番、そういうのは。勝手なことをするな。現在、北朝鮮のようなものと正常化のような話をしてどうするか。もちろん、日本の右翼の連中にしたって皆、そういう気持ちですけれども。たとえば、田中角栄という人が日中(国交正常化)を断行した時には国内は大変で、反対の嵐だったですよ。しかし、田中がどう言いましたか。毛沢東とか周恩来という、こういう自国の民を治めた人がいる時にやらないと、こういう大きなことはできないと。戦前、戦中にどれだけの蛮行を中国で行ったのかと。現在しかないと言ったんですよ。それと同じですよ」
反町キャスター
「金日成主席が存命の時に」
石井氏
「そう。言うことを聞くんですから、いかなることがあってもやると言ったら、その場で決まったのですが、しかし、そのことによってロッキードでアメリカから政治家として殺され、金丸もこういうことに手を染めたということで、アメリカから殺されたという証言があるんですよ。日本には追従外交と自主外交というのがあります。日本とアメリカというのは置かれている立場が違うのですから、ただ、残念なことに日本はアメリカの傘の下にありますから、かなりアメリカの意見を尊重しなければいけませんけれども、北朝鮮と日本との位置と、米国の位置、それから、歴史的、文化的過去のつながりというか、立ち位置が違うでしょう。それを同じようにやっていたらおかしな関係になりますよ」
五味氏
「日本に交渉を持ち出す時は、北朝鮮は追い詰められているんですね。南北関係とか、対米関係で。日本からは自分達が頭を下げなくても、正々堂々と支援を受けられる。でも、最後にとって置きたいものですけれども、どうも追い詰められていくと日本に接近すると。だから、金丸さんの時にはそういう状況だったんですね」
石井氏
「1965年に日韓基本条約を結んで南と日本とは植民地の支配を処理したわけですよ。有償3億ドル、無償2億ドルという、当時巨額なお金を出して、それを契機に韓国はすごい発展と言いますか、成長し現在のような国に変わったと。同じ虐げられた民族で北に住んでいるだけで、国交がないだけで放置しているではないかと。これは永遠に我々の借りですよ、残念ながら。これはいつか処理しなければいかん話ですよ。それは御両人が言われるように、北は経済的に苦しかったし、金日成氏はこの時にこそ、あの借金を返済してもらおうと、そういう気持ちも心の中にあったと思うんですね」
反町キャスター
「たとえば日中国交正常化の頃の、中国の首脳部の日本に対するものの見方とか、鄧小平氏の日本に対する褒め方とか、似ているような言葉が当時の主席から出ていた?」
石井氏
「その通りですよ。それと、北朝鮮の唯一の財源というのは、在日朝鮮人です。現在のアメリカとメキシコの壁なんていう話ですが、それよりもっと深い。日本国の中に朝鮮半島の人々が過去歴史的にこの100年間貢献をし、日本で稼いでいる外貨というのものが、北に流れてなんとかかろうじて食いつなげている国ですよね。そういう意味では、金日成という人は鋭い感覚を持っていましたから、あと残されている国は日本だとこういう思い入れがあったんですよ」
秋元キャスター
「2002年の小泉首相(当時)の訪朝というのはどう評価されますか?」
石井氏
「この時もまた、小泉訪朝もなかなかリーダーシップを持っている首相だな、この時機が国交回復のいい機会だと向こうは思ったと思うんですよ。拉致に振り回されて、拉致で潰されたということになっちゃっているんですよ、この時は。おそらく小泉氏が電撃訪問したのは拉致の対象になっていた13人を自分が持って帰る形で誘われたと思うんですよ。行ってみたら、8人死亡、5人だけ返そうと、こういう結果になりましたよね。それは彼にとっては驚くべき事実で、にわかに信じ難かった。それを受け入れたわけですが、金正日が正式に拉致をやったということを認めて、謝罪をして、もちろんそれを日本が認めたわけではないのですが、平壌宣言というものに署名をして、帰ってきたわけでしょう。従って、そこが歩み寄った時機だったのですけれども、それが拉致によって、最終的に、ぐちゃぐちゃになっちゃったというのが、悲しむべき歴史の結果だと思いますね」
反町キャスター
「日朝平壌宣言、小泉訪朝、このタイミングというのは金丸訪朝に匹敵する良いチャンス、タイミングだったのですか?」
平井氏
「だと思いますけれども、懸案になっている拉致問題の比重が、金丸さんの時代はそんなにまだ大きくなっていない時期、そういう意味で、拉致問題というのが足かせ、日朝国交正常化の障害としてあったというのが1番大きな違いだと思いますね」
反町キャスター
「小泉氏には拉致問題が頭にあって、その後の流れをどうつくるかというところが、合意文章のニュアンスだったではないですか?」
平井氏
「そうですね。でも、小泉氏の頭の中には国交正常化はあったと思いますよ」
反町キャスター
「うまくいかなかった理由は、石井さんは拉致に振り回されたと言っていますが、そこはどうですか?」
平井氏
「それはそうだと思いますね。これほど大きなリアクションが出るとは北朝鮮側も、小泉氏も両方とも予測していなかったと思いますよ」
石井氏
「いかに不服であっても日本側はそれを認めて、日本で同時期に亡くなられた全員の家族を1つ1つ呼んで、その人に対して、横田めぐみさんはいついつこういう形で自殺をして亡くなられたとなっていますよと、誰々はどうです、誰々はどうですということを通告したんです。北にしてみればようやくトゲを抜いて、主席が謝った。妄動主義、冒険主義のもとに跳ね上がりの工作員がやったから、これを全部処罰したと。お許しくださいとやったのに、日本に帰ってきてまだ終わっていないと騒いだわけですから。向こうからしてみれば日本というのは何なのだと。謝って解決したから、次へ行こうと思っているのに逆になっちゃったと。そこがこの拉致問題の悲しい現実ですよ」
反町キャスター
「では石井さんの気持ちとしては、北の発表、言い分をそのまま1回信じて、正常化に向かうしかなかった。他にまだ生きているかもしれないというところは?」
石井氏
「それはこの国をもっと知らなければ、皆さん、いかんと思うのですけれども、この国の常識と、こちらの常識というのは全然違うのであって、正常化すれば、あの国にドンドン入っていけるのですから、わが国の警察も入っていけるのですから、本当にどこがどうだったかというのは調べられるんですよ。現在のように離れているからそういうことができないです。拉致に関する両国の主張が180度違うのは、日本の世論というのは、拉致の家族が帰ってきていないではないかと言いますが、両政府がテーブルに着いたって何も進展もないでしょう。北からはもう出すものはないですよ。小泉元首相に対しての発言が向こうの最終的な通告ですよね。ところが、それを日本はその後、認めていないという状態で対立をしているのですけれども。たとえば、遺骨の問題だとか、その時の病名は何だとか言うけれど、そんなもの求めたって出てこないですよ。そういう国ではないのですから。そういう不毛の対立をこの拉致によって続けているんですよ。私も横田めぐみさんの立場を見ても、拉致被害者家族の心境を見てもかわいそうですよ。しかし、敢えて批判を招くことを覚悟して言えば、政府が何とか連れて帰りますよ、交渉していますよと言っても、この問題は解決しないですよ。北朝鮮から見れば、こんなものはとっくに解決済みだと。日本はなぜそこまでしつこく言うのと。前に行こうではないかという気持ちがあるのですけれども、これが障害になってしまって、どうにもならぬという状態で、まだなお続いているというのは、両国の大変な不幸の現実ですよ」
反町キャスター
「日本の政治家が、北朝鮮の発表を我々受け止めなければいけない。発表をされている限りにおいて、この人とこの人は亡くなっているんですと。この前提で日朝のことを考え直しましょうと、現在の首相、過去の首相は言えますか?」
石井氏
「それは言えないかもわかりませんが、それなら、もう1つ、別の知恵を出して、自らの手で、あるいは警察権で、それを調査するということをやったら、向こうから出てくる報告というものは信用できないものも多いということですから。ただ、敢えて申し上げますと、金正日主席が正式に謝罪したのに、向こうも間違っていたとは言えませんよ。これは厳粛な事実として、残念ながら受け止めなければいけないのではないですか。それを日本政府が未だに探してやるということであれば、これは日本政府が、私から言わせれば、怠慢で拉致被害者家族泣かせですよ。世論を間違った方向へリードしていると思えるんですよ。北朝鮮を弁護しているわけではないですよ。現実をもうちょっと直視して考えていかなければいけないわけであって、私はそういう意味では、その後拉致の特別委員会をつくってみたり、拉致担当大臣を置いてみたり、毎年毎年どれだけの予算を使っているか知りませんけれど、ああいうことをやっていて解決すればいいですよ。ネバーリターン、絶対に現在の首相では解決しない。変化球を投げなければいかん」

石井一 元自治大臣の提言 『北風と太陽』
石井氏
「現在、北風を吹かせて、さらにきつい暴風雨みたいなものを吹かせているわけですけれども、それをやればやるほど向こうは頑なになります。核の開発が激化しますし、 そうして経済制裁だ、国連の決議だと、そんなものはもろともしませんよ。これだけ自由主義社会から孤立し、彼らから言えばいじめられてきたと。昔、竹槍で米軍に対抗しようとした、それよりももっと強い闘争心というのを持っていますよ。もう少し温かみ、妥協するというのではないですが、現在のような形では北の問題というのは解決しません」

五味洋治 東京新聞編集委員の提言 『日米韓+中国の協調』
五味氏
「北朝鮮の情勢はミサイルが4発、発射されたことを見ても次元の違う脅威になってきたと認識が一致していると思いますね。そこで日米韓は協調していこうということですが、中国も一緒にやらないとこれは無理ですね。中国が北朝鮮の後ろ盾でいますから、この4か国が足並みを合わせない限り問題は解決しないので、是非、安倍首相にそういうイニシアティブをとっていただきたいと思います」

ジャーナリスト 平井久志氏の提言 『米朝の特異なキャラへの不安』
平井氏
「提言ではないですけれども、今回の暗殺事件を見ても、金正恩氏という指導者に不安を感じるんですね。そこにアメリカが対北朝鮮政策のシーリングをやっていますけれども、軍事的オプションも除外しないという意見も出ていますから。ただ、そういう手段をとった場合、北朝鮮がどういう対応をとってくるかということも極めて不安。非常に特異なキャラクター同士の衝突ということが我々に大きな災難をもたらす可能性があるので、それは避けなくてはいけないのではないかなと思います」