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2017年3月1日(水)
検証トランプ議会演説 通商政策と日本の対応

ゲスト

城内実
元外務副大臣 自由民主党衆議院議員
中林美恵子
早稲田大学准教授
吉崎達彦
双日総合研究所チーフエコノミスト

トランプ大統領議会演説 演説の意義と予算編成
秋元キャスター
「トランプ大統領の初めての議会演説ですけれども、アメリカの精神を再生させるという話から始まり、歴史的税制改革、移民制度の見直し、1兆ドルのインフラ投資、いわゆるオバマケアに代わる医療保険制度、さらに国防費増額などに言及しました。中林さん、就任後初めての議会演説、最初の議会演説というのは大統領にとってどういう意味のある場なのでしょうか?」
中林准教授
「特に今回は大統領に就任して初めての議会での演説ということでトランプ大統領のイメージを位置づけるのにとても重要な演説だったと思います。これでだいたいアメリカの骨太の方針と言われるような、つまり、あまりにも細かくはないけれど、アメリカはどっちに向っていくのか。現在どういう状況にアメリカは、世界の中でもそうですし、アメリカ国内のこともそうですけれど、状況に置かれているのかということを国民や議会に説明し、今後の自分の方針について、皆に協力を求めていくという、言ってみれば、トランプ政権がこれから本当に始動するうえでの幕が開いたという、幕開けの日ですね」
秋元キャスター
「イメージを位置づけるのに重要な場だったと言うことでしたけれども、そのイメージづくりという意味では成功したのですか?」
中林准教授
「今回、トランプ大統領は相当、策を練ったと思います。1週間も2週間も前から準備を重ねていき、スピーチライターにもちろん、書かせましたけれど、本人も目を通し、他の補佐官の側近達も目を通し、きちんとやってきました。あまりにも不規則発言だとか、暴言だとか、クローズアップされていましたから、今回しっかりとやろうということを目指したはずです。いわゆる私達、見る方を揺さぶっているんですね。また、何かをやってくれるのではないかと思っていた人達は、あら、違うのではないかという衝撃を受けたと思うんですよ。でも、その衝撃がトランプ大統領のウリですから。今回180度変える方向で衝撃を与えたかったのではないかと思います。冒頭公民権の話から入りました。今月は黒人の月であるというところから始まって、ギャラリーと言われる、参観して、お客様で、ゲストで呼んでいる人達のところに黒人の方がいらっしゃったりし、非常にこれまでのトランプさんとは違うスタートから始まったというところだけでも随分、方向性を変える意図が始めからあったというのは見てとれますね。しっかり原稿も読んでいましたし、随分イメージチェンジをはかったと。ただ、それが本当に成功をしたかどうか。また、これからも見なければいけませんけれども」
城内議員
「この演説の中で、共和党と民主党と一緒に連帯してやりましょうということも発言したと聞いているんですね。従いまして、トランプさんは、しかも、挑発的な赤いネクタイでなく、ブルーのネクタイをして非常に落ち着いた言い方で喋っておられましたよね」
反町キャスター
「それは、ネクタイの色は気になりますか?赤というと非常に戦闘的な感じに?」
城内議員
「気になります。戦闘的でチャレンジングな感じがします。ブルーというのは、落ち着いて、融和、共存共栄的なものを感じさせます。そこも含めて、言い方とか、ネクタイの色とか、喋り方、そういうものがこれまでとはかなり変わっているなという印象を受けますけれども」
吉崎氏
「一般教書演説におけるお作法みたいなものがあるわけですけれど、そのお作法を非常に忠実になぞっていますね。たとえば、ゲストに、ちょっと紹介したい人を呼んできて、あそこにこういう人が来ているけれども、実はね、というのを皆に知らしめると。そうすると、共和党と民主党が皆、拍手をしなければいけないとか。あるいは歴代大統領の名前を出す。今回はアイゼンハワーとリンカーンの名前を出しました。両方とも共和党の大統領ですが、一方、松明が我々の手に渡されたというのも、これはケネディが大統領就任演説で使った言葉ですから、民主党側の言葉も使っている。それから、びっくりしたのは真実、自由、正義のためにとか。そんなこと、あなた、これまで言ったようなことがないような、まるで大統領みたいなことを言うようになってきた。でも、本当に1か月間大統領をやっていると本当にこの人が大統領に見えてきたなと、最後にもう1度アメリカを信じようというセリフで最後締めるのですけれど。これは何年か前に他の人が言ったと思うぐらい良くできているんです。今回そういう大統領の議会演説の文法をすごくきれいにやってのけたので、この人はこんなこともできるんだというのが、私の中にとっては最大の驚きでしたね」

『歴史的な税制改革』
秋元キャスター
「今日の議会演説で言及された経済政策について聞いていきます。トランプ大統領、税制について現在アメリカの企業は世界でどこよりも高い税金がかけられている。我々の経済チームはアメリカ企業が競争力を持ち、どこでも繁栄できるような歴史的な税制改革をつくっていると発言をしました。トランプ大統領はこれまで、大幅な法人税減税を主張してきました。具体的にもどういうものが出てくると思いますか?」
吉崎氏
「アメリカの法人税はだいたい35%ぐらいですけれども、これをトランプさんは15%にすると言っていて、さすがにそれは苦しいだろうと。そこでBAT(国境税調整)。要するに、企業の輸出取引は非課税なのだけれど、輸入取引には課税する、そういう新しい税金を導入することによって、そうすると、増税分を原資にして、20%とか、25%ぐらいに下げられるかなという、そういう計算を周りで一生懸命にしていたわけです。それを入れれば、果たして、それはWTO(世界貿易機関)違反になるか、ならないかとか。それをやった時にどういう効果が出るのかというと、たぶん輸入取引に課税されるということになると企業は、たとえば、サプライチェーン、海外につくっているところが国内に戻そうとしますよね。あるいは結局、それによって輸入材は上がるわけですけれど、それは消費者が負担すると。消費者が負担するのですけれども、おそらくそういう新しい税金を導入するとドル高になるんですね。ドル高になれば、輸入商品の値上がりも吸収できるのではないか」
反町キャスター
「相殺されるのですか?」
吉崎氏
「ええ。これは意外と良い案だよなという話になって。それはもともと、下院のライアン議長が言い出したこと。ただ、トランプさん、ちょっと難しくてわからなかったらしくて結局、入らなかったですね」
反町キャスター
「ただ、吉崎さん、その話、たとえば、WTOにという話。国境税というのが違法であるということになっても、WTOに持っていかれても、これは結論が出るまで、2年、3年かかる。それだったら、中間選挙、次の4年後の選挙まではこれで凌げるという判断はアリですか?」
吉崎氏
「BATという言い方が、1つ面白いのですが、VATというのがありますね。Value Added Taxとか、日本の消費税もそうですけれども、我々もごく自然に消費税は、輸出には非課税で輸入には課税なわけですよ。それってずるくないかと言われると。いや、確かにそうなのだけれども、それはWTOルールでも良くなっているんです。だから、詰めた議論をしていくと、なぜそちらは良くて、こちらはダメなんだよ、と言うと。いや、たまたま、そういう決まりでやっているからで、お宅も消費税を入れたどうですかと。そんなことにもなりかねない話なので、真面目にこれを議論をし出すと結構、簡単には片がつかない話ですね」
反町キャスター
「法人税の減税というのは、アメリカ経済のテコ入れにつながるのですか?僕は、この番組でよく法人税の減税の議論をやる中で、アメリカの法人税というのはどう考えても、ヨーロッパから見ても高いのだと。高いけれども、対米投資というのが非常に活発に行われていると。なぜかと言うと、法人税というのは別に企業や投資を引き込むためのハードルにはなっていない。他の環境が優れていれば税金があろうとなかろうとは言わないまでも、35%だろうと、来るものは来るのだということで、アメリカを僕らは理解していた部分というのがあるのですけれども、下げれば劇的にビジネス環境というのは好転するのですか?」
吉崎氏
「アメリカの超大企業、それこそアップルみたいなところはいろんなテクニックを使って、事実上あまり払っていないというのが現実はあるのだと思います。ただ、普通の中小企業から見たら、それは35%ものが20%になったら、15%ラッキーという話になるので、それは効果が大きいと思います。中小零細企業ほど効果はあると思います」
城内議員
「企業は課税を回避するためにタックスヘイブンとかに持っていきますよね。でも、アメリカの法人税が下がれば海外の利益を場合によっては国内に、アメリカに持って来るという選択肢もあると思うので、私は法人税の引き下げというのは十分効果があると思うんです。ただ、法人税の引き下げによった利益が一部の経営者と株主に裨益されるのでは、目的は達成されなくて、それが所得として再分配されるとか。要するに、中間層の所得が上がるような形にしていかないと、トランプさんの目指しているところに到達はできないと思います」
反町キャスター
「そのためには、要するに、所得税や法人税を下げるのだけれども、貰った分とその分、海外からの所得移転分をきちんと抑えて、捕捉したうえで政府が吸い上げて、それを再分配しなくてはいけないわけではないですか。その話は今回、出ていないですよ」
城内議員
「まさに制度設計を、よく議論をしてやっていくということではないですかね」
反町キャスター
「中林さん、苦しんでいる中間層からのトランプ大統領に対する期待感に応える方法としては、これでだいたい出きった感じがしますか?本当に効果があるのかどうか、どう見ていますか。
中林准教授
「実際に効果があるかどうかというよりも中間所得者層で特にトランプさんを支持したような人達は、必ずしも再分配をしてくださいとは思っていないですね。自分達は自立の精神を持っているアメリカの伝統的な価値を大事にする共和党側の人間だと思っているわけですから。再分配なんてとんでもないという考えを持っているわけですね、もともと。ですから、もうちょっとプライドを持っているわけですね」
反町キャスター
「難しいですよね。プライドを持っていながら、所得が減っている人達に対して、どういう…」
中林准教授
「だからこそ減税するのですけれど、もともと税金をたくさん払っていない人達だったら、いくら減税をしてもそんなに絶大な効果というのは言えないと思うんですよね。さらに言えば、インフラ投資をした時に、工事がすぐに始まれば、それは土木のお仕事とかはありますけれども、それが社会全体に広がるにはタイムラグが生じるんです。インフラ投資というのは半年、1年、もしかしたら10年とか、それぐらい時間がかかっている間にもう次の中間選挙になってしまいますから。トランプ大統領がすぐに成果を誇示したい場合は、それだけではおそらく不可能ですね。それから、安全保障関係でも、また、インフラと似たようにお金をたくさん投資しますと言っていますけれども、これも時間がかかっていくんですね。そうすると、どうしても法人税減税とか、それから、海外に留保をしているアメリカの大企業のお金をアメリカに持ってくる時に税金をかけませんよとか、そういった何らかの方法をとらないといけなくなると思うんです」
反町キャスター
「追加的に、また、別のそういう措置を」
中林准教授
「はい。それでいろんな措置が、議会の中でうごめいていまして、いろんな試算をしています。大統領がこれまで選挙中に言ったことを全部メモして、それを足し算したシンクタンクがあるのですけれども、3兆ドルから、7兆ドルかかると言われているんですね、実現には。彼が言ったことを全部メモして全部足し合わせると、計算の仕方にもよりますけれども、幅がありますが、ただすごくお金がかかると。下院ではライアンさんが現在、Border Adjustment TaxということでBAT(国境税調整)と言っていますけれど、これを一生懸命に推進しようと、彼はしているのですが、ただ、何分にもその理由として、そういうふうにしてお金があるところを見せ、使うところにそれを持っていくということをしたいわけですよね。ところが、あまりにもたくさんの方針とか、政策をトランプさんは言っているものですから。それを実現しようと思うととんでもなくお金がかかる。下院は現在24議席の差で共和党が多く獲っているから24人ぐらいは反対してもギリギリ過半数でいけるのですけれども、ところが、House Freedom Focusという、共和党の財政均衡というものを推していこうするグループがあるんです。何人いるのかというと30人です。その30人が一丸となって、財政均衡をしっかりしろと、つまりは、財源を見つけてこいという話になると、下院でも過半数が通らないというような状況が次々生まれてくるんですね。これをどういうふうにして説明をしていくかというところで、ライアンさんの知恵を絞った結果が、先ほどのBATです。これをムニューチン財務長官とかは必ずしも全部受け入れようとはしていないです。違うアイデアをトランプ政権の中で持っている人達がいるので、ここをどういうふうにして埋めていくのかというのがまだ見えていなくて。見えていないからこそ今日の演説で言えなかったのだと思うんです。言いたかったとしても、言えなかったという部分もあったと思うんです」
反町キャスター
「財源について何かアテがあると見ていますか?」
吉崎氏
「いや、そこはないと思います。むしろ景気回復によって増収、上げ潮的な発想だと思いますよ、そこは」
中林准教授
「トランプさん本人は上げ潮を信じたいだろうなと思いますけれど、だから、議会内ではそれを許さないぞという人達がいるところが問題です。そこで財源を見つけてこなければいけないのですけれども、財源探しは議会さんやってくださいと、そんな感覚ではないかと思うんです。もう自分ではちょっと無理と」
吉崎氏
「だけど、今回、よきにはからえという感じを私は受けますね。俺は、そこまでは言わないからと」
反町キャスター
「議会はそんなに言われたことを聞く組織なのですか?」
中林准教授
「そんなことはないですけれど、そういう人達ばかりではないので。ただし、今回、共和党で全部占めている議会、ここは苦節8年、オバマ政権の時にとにかく、減税もそうですけれども、何もかも我慢をしてきたわけです。それを実現したいと思った時に、どうしても財政赤字が出てしまう場合は、それをもしかしたらよしとするかもしれない。そのためには様々な法律的な手続きが必要になってくるんですよ。2011年に裁量的経費、軍事と、そうでないもの。これにキャップをかけているんです。これはすごいキャップで、ドンドン裁量的な経費を減らすようにできていて、ほとんど現実的ではないです。なぜ現実的でないものにしたかと言うと、ちゃんと議会の両方の政党が話し合って決めなさいねと。両方が話し合って財政赤字を減らすという意向を示すために敢えて高いハードルを設けているんですね。これがちゃんと話し合いできないと本当に2011年の、いわゆる一律カットみたいなものが効いてきてしまうんです。ですから、何がなんでもこれは民主党側の意向も入れながら話し合いをしていかなければいけないという部分が出てくるんですね。その時に歳出を増やすというのは比較的に合意をしやすいですね」
反町キャスター
「先ほど、共和党の中の財政均衡派30人という話が出ましたけれども、もしかしたら財政均衡派を外しても、民主党の中からこの賛成が出てくる可能性がある?」
中林准教授
「それを願う可能性もあるかもしれません。ただ、それはライアン議長、トランプ大統領のような政治経験のない方が大統領になる初めての経験だと思うんですね。彼自身が、共和党の中までちゃんとまとめていく苦労をしているわけです。前下院議長も共和党がまとめられなくて、辞めたわけですよ。そういった前例もありますから、今回ライアン議長がどういうふうにまとめていくかというのが、本当に地獄の沙汰だと思います。でもやらなければいけない」
反町キャスター
「吉崎さん、たとえば、大統領がどういう握り方をするのかにもよるのですけれど、アメリカの予算が固まった時に財政赤字というのが出てきたと。大量の赤字国債を発行して防衛費やら何やらいろいろ埋めるために発行しているということになった時にマーケットはどういう反応を示すのですか?」
吉崎氏
「アメリカの国債というのは債務上限というのがありまして、それは今ないことになっているんです。本当はこの金額までにしなければいけないのだけれども、それを超えているんですね。その超えている部分というのは3月16日になると、また、復活するんです。要するに、大統領選挙の特別バージョンでとりあえずこのルールは暫く見ないことにしましょうというのが、今月15日までです。もうすぐ終わっちゃうんです。そうすると、16日を過ぎたら、また債務上限問題というのが復活するんです。そうすると、どうするかというと、アメリカの財務省がいろいろ手練手管で、よそからお金を持ってきて、大丈夫、大丈夫と言って延命措置をするんです。この延命措置が半年ぐらい続くんです。9月ぐらいにまた本当にきわきわのこれで連邦政府にお金がありませんという時がくるんです。これがないと、来週、年金を配れません、みたいな時が来るので、それが本当のデッドラインです」
中林准教授
「デフォルトということが起り得る可能性があります。それはマーケットにとって不安定要素になるので、悪いことですね」
反町キャスター
「たとえば、トランプ大統領がそういう予算をつくるぞとわかった時点で、言われたような、アメリカの、いわゆる公的な金が底をつくのではないかという懸念が、マーケットに。先読み先読みと反応するではないですか?」
吉崎氏
「それは2011年の夏に実際、それをやって。皆、怖い思いをして、それで先ほど、中林さんが言われた財政調整の強制削減のメカニズムというのが一種の罰ゲームでできたわけです。下手するともう一遍、そこへ行くので、それだけはやめましょうねと。お互い、そこまで突っ張り合うのはやめようねというのが、3月以降に働いてくれることを期待するしかない」
反町キャスター
「6兆円の防衛費増額とか、減税をしますよとか、諸々言うことは言っているけれども、それをやる原資が見つからない限りは、もしかしたら1回止める可能性が出てくるわけですね?」
吉崎氏
「そうです。防衛費の6兆円の増額というのは環境予算とか、他を削って出す」
反町キャスター
「あれだってそんなに金額ないですよ。環境予算6兆円もないではないですか。そういう意味で言うと、どこからか原資を持ってこないと、財源をあてないと、もしかしたら今日言ったことの半分も実現できないままの予算になる可能性もある?」
吉崎氏
「はい」
反町キャスター
「そういうことでよろしいのですね?」
中林准教授
「そうですね。あり得ると思いますよ」

保護主義的な貿易政策
秋元キャスター
「トランプ大統領は議会演説の中で、貿易について、このように言及をしています。現在アメリカ製品を国外に出荷する時、他の多くの国は、我々に高い関税を払わせている。しかし、海外企業が製品をアメリカに送る時、我々はほぼ何も課さない。私は、自由貿易を強く信じているが、それは公平な貿易でなくてはならないと発言をしています。城内さん、このトランプ大統領の発言というのをどう見ましたか?」
城内議員
「これはまさに日本も同じく自由で公正な貿易という大原則をとっているわけで、日米首脳会談でも、その点でトランプ大統領と安倍総理の見解が一致したわけであります。これまでトランプ大統領、どちらかと言うと中国と日本を一緒に見ていたという。おそらく貿易赤字の大半は日本と中国だと思っていたのですけれども、実際の数字を見て、半分弱が中国、1割そこそこが日本とドイツという実態を見て、日米首脳会談後、ほとんど言わなくなりましたよね、為替介入。これははっきり言うと、中国とは言っていませんが、私は大部分、中国に対するメッセージではないかと思っているんです。日本の場合はほぼ関税ゼロですから。むしろ自動車はアメリカに日本車を輸出しようとすると2.5%かかるし、アメリカに走っている車はMade in Japanではなく、トヨタであってもMade in USAであってアメリカの雇用を創出している。そういうことをしっかり大統領は認識していますので。むしろ中国との米中経済関係を今後まさに大統領がおっしゃったフリー&フェアトレード、自由かつ公正な貿易の原則で、バチバチぶつかるのではないかと思いますね」
反町キャスター
「城内さん、公正と言いましたけれど、ウチは公平と書いてあるのですけれども、公正と公平、ちょっとニュアンスが違いますよね?」
城内議員
「公平と言うと、平等というのではなくて、ルール、共通のルールに則って、フェアというのですか、お互いを。だから、努力しない人も、努力をした人も一緒に公平ではなくて」
反町キャスター
「結果平等みたいなイメージになっちゃう?」
城内議員
「そう。そのルール、共通のルールで努力した人がウィナーになることもあるし、努力をしていない人がルーザーになることがあっても、A国は、勝手に、非常に自分に都合の良いルールでやって、B国はいわゆる世界共通のルールではダメよということです」
反町キャスター
「でも、トランプ大統領の言っていることは矛盾しているところがないですか?公正な貿易だと言うのだったら、別に輸入する時に新たに税をかけるとか、そういうのではない、止めてほしいとか。そういうことにはならないのですか。ここの言っていることと、先ほど言っていることとは違うのではないかなと。矛盾をいちいち指摘してもしょうがないのですが」
城内議員
「ある程度は、そこはアメリカ第一主義ですから。都合の良い、自分達の価値観でお前は公正だと。ファイアという感じですね。そういう決めつけをされないように日本としては、日本の立場で言いますと、日本については本当に自由、公正で、むしろ、アメリカの方が一部、フェアではないではないのというぐらいで、矛先はよその国に」
反町キャスター
「今回の首脳会談の結果、麻生さんとペンスさんの間で日米の経済対話というのが始まると、スキームが決まったではないですか」
城内議員
「これは非常に良いことだと思います。と言うのは、ペンスさんというのは、下院議員を6期やっていますよね。アメリカの議会におられた方です。トランプさんは、前回もちょっと話をさせていただきましたけれども、不動産業者ですから、瞬間、瞬間の取引で、勝った、負けたと。中長期的なWin-Winよりも瞬間芸であって」
反町キャスター
「ポイントで勝った、負けたという感じだ」
城内議員
「大統領選挙も中間層一点に絞って、クリントさんとのコントラストをバッチと出して、それで勝ったわけですね。ただ、そこはペンスさんとか、他の閣僚がしっかり補佐をして、正しい方向に持っていくということが私は大事ではないかと思っています」
反町キャスター
「中林さん、この発言の結果、アメリカが経済対話において、日本に対してどういう、これはフェアではないと言ってくる部分がそんなにありますか?」
中林准教授
「これはトランプさんに限らず、日米貿易摩擦の頃、歴代のアメリカ大統領が言ってきたことで、まさに公平ばかりを追求してきましたよね。と言うのは、自動車で、ベンチマークとか、数量目標とか、結局、貿易赤字がいくらかあるから…」
反町キャスター
「そう、結果を求めてきたんですよ」
中林准教授
「結果を求めてきたんです。結果が良くないから日本はアンフェアだという言い方をされて、長年やってきたんです。未だに言っているのかというぐらいの感じですよね。公正という意味では、日本はしっかりルールに則っていますから、今さら言われることではないと思うんです。でも、城内先生がおっしゃったように中国を見ていると思うんです。そういう意味では、逆に、日本がそこで公正な部分をしっかり言っておかないと、日本の頭越しに中国と不動産の交渉のように、それはおいしいから、やっちゃいましょうみたいな、いわゆる公平な。だから、トランプさんのフェアはおそらく日本語にちゃんと訳せば、公正なはずなのに、おそらく間違って公平と訳したのは正しいかもしれないですね。結果を求めているのかもしれません」
反町キャスター
「アメリカにとっておいしいという意味ですよね、ただ単に」
中林准教授
「そういうことですよね」
吉崎氏
「だいたいフェアトレードみたいなこと言われるのは、どちらかと言うと民主党ですよね。共和党はフリートレード、民主党はフェアトレード。ただ、フェアという言葉は、また人によってちょっと受け止め方が違って、たとえば、貧しい国からコーヒー豆を買う時は普通の料金より上乗せするのがフェアだとか、いろんな言い方をするのだけれど、誰にとってのフェアかという話になってきて、俺は損していると思っている人は、これがフェアだと言っても納得してくれなかったりする。そういう危うさがある物言いだと思います。ただ、私も割と長いこと日米関係を見てきて、正直言いますけれども、今ほど日本側がやましいものがない時はない。過去は、過去で20年前に、それはいろいろ言われて、日本の系列取引というのは輸入障壁ではないかと言われると、いや、そんなつもりはないのだと。これは文化だとか、いろいろ言いながら、言っているけれども、では、系列会社からよそよりも高い値段で部品買うのは、これはおかしいよなと、心の底では思っているわけです。でも、そういうことは現在、さすがになくなっていて、その手の不合理な話はかなりなくなって、我々も普通のドンドン普通の資本主義になっているので、現在だったら別に何か変にこそこそする必要なかったと」
反町キャスター
「このロジックで、トランプさんがもし中国を意識してこういうことを言っているとしたら、米中の経済的な対話、協議、どういう展開をすると見ていますか?」
吉崎氏
「米中だとすごく取引できる範囲が広いわけですよね。だって、北朝鮮の核とか、ミサイルの問題も含めてディールができちゃうわけです、あるいはテロ対策とか、すごく広い、経済もある、安全保障もある。グローバル、たとえば、CO2(二酸化炭素)の排出、それぞれに、反対要因と協力要因と中間要因みたいなのがあって、AIIB(アジアインフラ投資銀行)をどうしますか、アメリカは、というと、9つぐらいのマスがあって、どんな取引をするのかわかったものではないというのがあって、日本からは9つぐらいあるマスのうちたぶん2つか3つぐらいしか見えなくて。それは、たとえば、常任理事国同士でどのようなディールをしているかなんていうのはなかなか我々には見えないですよね」
反町キャスター
「経済だけではなく、いろんなところで押し引きがある中でとばっちりが、日本に落ちてくるという可能性というのは、僕は心配をしているだけなのですけれど、どういうとばっちり、我々は警戒しなければいけなのですか?米中がひそかに握った結果という話です」
吉崎氏
「たとえば、東シナ海でアメリカは口を出さないから、代わりに人民元の問題はこうします、そういうのをやられると大変困る」
反町キャスター
「城内さん、どうですか?米中の握り」
城内議員
「ただ、私は比較的楽観的で、安全保障と経済というのは、現在のトランプさんでさえ、国防長官はマティスさんですし、ペンス副大統領もいらっしゃいますね。そこは分けて別扱いするのではないかと思うんです。むしろ怖いのは、中国がアメリカの国債をもっと買ってやるからとか、そういうのだと、ふらふらとくる可能性が多少、貿易不均衡に目をつぶるか、みたいな話になって。その分、日本がちょっとがんばれみたいなふうにならなければいいなと思いますけれど。日本は非常に優等生ですから何も言われる筋合いはまったくないですけれどもね。そこらへんがちょっと気になるところですよね」
反町キャスター
「吉崎さん、あと1点、今日のトランプ大統領のこの発言を見ていると、ここからTPPを拒否するロジックがどう出てくるのですか?」
吉崎氏
「いや、これがおもしろくて。では、仮にペンスさんと麻生さんの間で、日米FTA(自由貿易協定)の話をしましょうかということになります。そうするとたぶんアメリカの畜産農家が突きあげてくると思うんですね。オーストラリアの関税、ドンドン下がり始めているけれども、アメリカの牛肉は下がらない、早くしろという話になる。そうすると、日米でFTAをやります、1年、2年、3年ぐらい軽くかかります。そんなことするのだったら、あなたがこの瞬間、TPPにサインをしてくれれば、一気に片づく話ですという、こういう話をこれからしていかなければいけない。だって明らかにもったいない話ですよね、時間が」
城内議員
「私もそう思います。避けるべきは、私はもともと与党にいながら、TPPには比較的慎重だったのですが、ある意味、形を変えた日米FTA。ただ日米FTAよりはましですよね。日本とアメリカでぶつかってしまうと、安全保障もありますし、切り離して考えようとしても押し込められる可能性があります。吉崎さんがおっしゃったように、時間がかかりますよね。また、1からやっていくと、これは半年なんかで絶対にできませんからね」
反町キャスター
「でも、時間がかかって困るのは向こうで、こちらではないですよ」
城内議員
「そうなんですよ。ですから、私が半分、冗談で言っているのはトランプさん待ってくださいと、あなたの意見も入れますと。名前もTPTPP、トランプ・パシフィック・パートナーシップみたいな。ほとんど見たら、99.8%前とは変わらない。でも、ちょっと向こうの顔を立てて、ちょっとだけこれで勘弁してくださいと。あなたの顔を立てました、みたいな。名前を変える必要はないですけれども。そういう現実的な路線に持っていけるのではないのかなと、私は思います」

政権と議会の今後
秋元キャスター
「来年の中間選挙を見据えてトランプ政権は今後、アメリカ議会とどのように向き合っていくのでしょうか?」
中林准教授
「最高裁判事だって承認するのではなく、現在委員会で公聴会をしていたりしています。これを本会議でさらに1週間から2週間は議論するかと思うのですけれども、そうすると、500人以上いる大統領の指名職というのが、まだほんのちょっとしか。20人ぐらいウェイティングリスト。まだ十何人かしか決まっていないというところで、すごく列が並んでいて議会はそれだけでも忙しいぐらい、上院が。ですから、大統領が何かしようとしてスパスパ出してきても、あるいはリクエストを出してきても、なかなか議会は対応できない状況ではないかなと思いますので、トランプ大統領はとても気短だと思いますが、この状況で何を言い出すかはわかりませんので、その短気をどうやって引き延ばしながら、やっている感、動いている感を出していくか、議会も大統領に気を使いながら。苦節8年、トランプ大統領になるまで、オバマ政権の間ずっと我慢してきたわけですから、共和党はある意味、外から入ってきたトランプ大統領のような、保守本流でない人を受け入れるのは大変つらい部分もありますけれども、しかしながら、苦節8年の後にようやく誕生した共和党政権ですから、これまでできなかった政策をトランプ大統領と一緒になって、これから差し込んでいくという作業に入ってきますから」
反町キャスター
「ただ、まだ国務副長官が決まってないですよね?この状況、日本の外務副大臣が向こうに行っても話し相手がいない。現象面で見ると、議会が大統領に、ホワイトハウスに嫌がらせしているようにも見えるのですが、そういうものではないのですか?」
中林准教授
「現在、共和党が多数を占めているから、本来であれば、スパスパ通るはずです。2013年にハリー・リード上院内総務が院内のルールを変えてしまって、こういった大統領の指名でも閣僚とか、過半数で通るとしてしまったんですね。もともと過半数ですが永久に潰せることができる。100人いる上院議員のうち、60人が賛成しないと止められないということで、いろいろなものが廃案になり、承認ができなくなったんです。今回、フィリバスターをかけられないようになっていますから、トランプさんが指名する閣僚はスイスイ通るだろうと予測があったのですが、民主党側も指名された人の人格だとか、たとえば、教育長官もそうですよね、本当にふさわしい人かどうか。それから、これまで指名された人が取り下げたというケースもありましたよね。移民の中でも違法な人たちを採用していた過去があるとか、いろんなことを根堀り葉掘り調べて、公聴会でもしっかり時間がかかってしまうような状況だし、さらには民主党の議員達が総出で欠席してしまうことで投票ができなくなってしまうような新しい手も採用しながら、あの手、この手で引き延ばしをしているんです。さらには共和党の中にも反対にまわってしまう共和党の議員も出てきてしまって、そうすると、どうしても票がとれないということでだんだん長くなっちゃう…。議会に対する認識がこれまで甘かったと思うんですね。過半数で通るはずだから今回は好きな人を選ぼうと甘い予測があったのだと思います。そんなに簡単なことではないということがようやくわかってきて、今後ますますトランプ政権は議会の難しさに直面していくと思うんですね。そこで学びながら、もしかしたらトランプ大統領は豹変して、議会の人達と握手して、すごくいい人になって話を転がそうという手段に出て、サプライズで度肝を抜かしてくれるかもしれないし、それは本当に読めない人なのでわからないけれど、そうかと言って反トランプの人達は上院にも下院にもたくさんいるんです。口にチャックして我慢している人達が相当いますので、どこでそれが噴出すかわからない爆弾のところもちょっとあるんですね。ここがいずれ出てくる可能性もあります。だから、私達は気を緩めて、今回の演説が良かったから、大統領らしくできたので、はい、万歳というわけにはいかないと思います」
吉崎氏
「共和党の中でも保守本流で、この人だったら皆が拍手で迎えるような人を皆、外しているというのがあるんです。そういうまっとうな人達はこれまでトランプさんに対してネガティブな発言をしているので、現在ホワイトハウスは全部チェックして、あいつは昨年の4月にこんなことを言っているよとか、というのがあるので、それで通らないというものあります。だから、経営者と軍人が多くなっている。また経営者の方はたくさん資産を持っているので、それをチェックしなければいけないので時間がかかるとか、こういう問題も今回はあります」
城内議員
「まだ、政権が発足して経っていないのですけれど、これがズルズル続くのはアメリカ政権にとっても大きな痛手だと思います。ペンスさんという副大統領は下院議員を6期やっているんですよね。プリーバスさんは共和党の全国委員長もやっていますし、こういった穏健なまともな方もいますので、こういう方が、どちらかと言うと反トランプ共和党保守主流派との接着剤となって、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、徐々に。何と言っても共和党の大統領ですからね。トランプさんのいい意味の和解のパフォーマンスをしっかりやるということではないですかね」

中林美恵子 早稲田大学准教授の提言 『振り回されない』
中林准教授
「今日の大統領の演説を聞いてもそうですけど、本当に大統領らしくなってみたり、単なるやんちゃになってみたり、とてつもない暴言を吐いてみたり、いろいろなことをなさいますので、今日はまさに典型的に違うトランプ大統領を見ることができた日と思いますから、それに安心してはいけないし、一喜一憂せず、軸足を私達なりにしっかり持ってトランプ大統領と対峙していく必要があるのだろうなと思います」

吉崎達彦 双日総合研究所チーフエコノミストの提言 『ニッポン・ファースト』
吉崎氏
「向こうがアメリカ・ファーストだったら、こちらはニッポン・ファースト。でないとドンドン振り回されて、気がついたらアメリカの雇用が増えるように日本のお金を使いましょうとか、それはまずいだろうと。我々にとって1番大事なのは、日本のことであって、今回トランプさんが私は地球を代表するのではなく、アメリカを代表しているのだということを言っているのですけれど、あれは他の国もそうですから。譲らなさ過ぎぬように困った時はニッポン・ファースト、この原則に立ち返る、これが大事かと思います」

城内実 元外務副大臣の提言 『一喜一憂しない トランプ大統領とり込め』
城内議員
「振り回されずに一喜一憂しないと。淡々とトランプ大統領と向き合うと。大事なのはトランプ大統領に喧嘩を売るのではなくて、取り込んで、東アジアの安全保障環境は厳しいですから、日米同盟、今こそまさに揺るぎない絆がないと大変なことになりますので、トランプ大統領にはっきりダメなことはダメ、いいものはいいと言える、首脳同士、あるいは麻生副総理とペンス副大統領との関係とか、人間関係をしっかり絆を構築していくことではないかと思います」