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2017年2月23日(木)
トランプ流の中東政策 米露接近で勢力地図は

ゲスト

佐藤正久
自由民主党参議院議員 前参議院外交防衛委員長
中島勇
公益財団法人中東調査会主席研究員
黒井文太郎
軍事ジャーナリスト

検証『トランプ流』中東政策 『戦略』か『場当たり』か
秋元キャスター
「トランプ大統領は、これまでに中東に関して、主にこのような政策を打ち出しているんですね。まず現在テルアビブにあります、在イスラエルアメリカ大使館をエルサレムに移転する方針を表明しました。一昨年7月のイラン核合意の見直しを示唆しています。さらに過激派組織イスラム国の掃討。こちらも大統領令に署名をして、掃討計画を30日以内に提出するように、マティス国防長官に指示をしています。イスラム圏7か国からの入国制限措置。これは、いったん連邦裁判所が差し止めをしたものの、今週中に新しい大統領令にトランプ大統領が署名すると見られています。トランプ大統領がこうした政策を打ち出す背景に、どういう中東戦略があるのか。アメリカの政治に詳しい2人に事前に聞きました。まずは笹川平和財団特任研究員の渡部恒雄さん。渡部さんは、トランプ大統領自身には中東戦略はなく、中東における経済的権益を強く感じていない。中東政策は案件ごと個別に向き合っており、整合性が取れていない。ブレーンの判断により、中東政策は変化する可能性があると。アメリカで取材しています産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんは、このように話されています。現段階で総合的・立体的な中東戦略はない。その柱となる政策は明確。トランプ大統領の価値観を具現化する中東への支援策などは表明していない。トランプ大統領に外交経験はなくても、一定の見識を持っていて、ディールメーカーのレッテルに惑わされるべきではないと。さらに政策は個人ではなくて、チームで動かすもの。今後、戦略は必ずでき上がってくるだろう、と話していました」
佐藤議員
「混乱しやすいのは、4つありますよね。米大使館のエルサレム移転とイランの核合意の見直しは、大統領になってからは言っていないですよ。上の2つは、大統領選挙の時に政策で出した2つで、(大統領に)なってから言っていないです、これは。しかし、下の2つは、大統領になってから実行したことで、イスラム国の掃討は、これはやると。30日以内に、2月28日までに計画を出せと。この2つは政策として出ているのですが、上の2つは出ていないです。ただ、そういう中でも、渡部先生からの指摘にあったように、整合が取れていないというのが、まさにイスラム国の掃討、これをやろうと思ったら、誰が考えてもイランとか、あるいはイラク、あるいはイランの影響のヒズボラ、ロシアと連携しないといけないわけです。連携する相手のイラクとか、イランを入国制限の対象にしているわけですから。普通に、本当にイスラム国(掃討)をやろうと思ったら協力するパートナーの国を怒らせているんです。ただ、政策の整合性が、ないと見えてしまう。だから、戦略があるかどうかという、それ以前に今打ち出した2つですら、整合は取れていないというような見方は、中東の現場からするとあって、現場にいるアメリカの兵隊さん、シリアやイラクにいて、イスラム国に対応している現場の兵隊さんからすれば、イラクとか、イランを敵対するような入国制限、これはマイナスですから」
黒井氏
「思いつきで言っていると。まず知識がないし、国内問題に比べ、あまり選挙戦中も重大なものとして言ってきていない。むしろメディアに、いろいろ突っ込まれてきたという方が多くて。ただ、大統領候補が海外の国際問題に対して、知識がちょっと弱いというのは、たとえば、州知事からなる人もいますから、それはよくあることですね。ただ、これまでと違うのは、州知事からなったリーダーというのはアメリカの国務省、国防総省、CIA(中央情報局)とか、軍とかに、優秀な、強大な情報をまとめるところがあって、いろいろなブリーフィングを聞いて、ブレーンがいるわけですね。トランプさんの場合、そういったブレーンが、例のロシアとのハッキングの問題とか、ヒラリー氏をどうとかという問題があったものですから、そういったものに対して閉ざしている。むしろ敵意を持って、最近ちょっと変わってきましたけれど。よくわからないのは一昨日、こちらの番組でやったと思うのですけれども、バノンさんとか、いわゆる偏ったニュースソースを信頼しちゃっていると。イスラム教に対する反感とか、アメリカは損をしているのではないかという思い込みというのをもとに思いつきで判断をしているという感じがしますよね。それに対して実際に動かそうと思ったら、いろんな省庁、軍から、いや、ちょっと待てよという話があって、それを主導してきたバノンさんと、フリンさんという人がいますけれども、ロシア問題で失脚しましたので、外のマティスさんもそうですけれども、そうした外の人達、自分から引き入れたのですけれども、どうやら自分が言っていることと違うことを言ってきているということで、たぶん自信をちょっとなくしていると。上の2つについて言わなくなったというのは、おそらくそういったことが関係していて…」
反町キャスター
「この間、ネタニヤフ首相と会った時とか、イスラエルとの親和性を高めたい雰囲気とか、そういうところが出ている部分というのはないのですか?」
黒井氏
「その前の日に、イスラエルのメディアとのインタビューでは、入植地をあまりやるなと、かなりイスラエルに対して釘をさすことを言っていますね。それはこれまでのトランプ氏だったら、いわゆるバノン系の話だけだったら、もうイケイケだと思うんですね」
反町キャスター
「多少ブレーキがかかってきている?」
黒井氏
「かかっていると思います」
反町キャスター
「中島さん、中東の、それぞれの国から見た時に、トランプ政権というのはどう見えるのですか?」
中島氏
「たぶんどういうふうに見えるということよりも、現在のアラブの国からすれば、イランに対してどう向かうかというのが非常に大きいと思いますから。このイラン核合意見直しというのを、まだ政権にはなって言っていませんけれども、湾岸の国はたぶん実際にどうするのだというのをすごく期待をしながら見ているというところがあると思いますね」
反町キャスター
「期待というの前向きにということですか?湾岸の国は、イランに強くなってほしくないと思っている国々からしてみれば、イランを叩いてほしいと言って期待をしていると、そういう意味ですよね?」
中島氏
「ええ」
反町キャスター
「ただ、それが、たとえば、イランに対して、イラン核合意を見直しと本気で動き出した時に、中東のパワーバランスがどう壊れていくのかというのは皆、心配をしないのですか?」
中島氏
「オバマ時代によく言われたのは、アメリカが中東から引いているという不安がありましたから、逆に言えば、トランプ政権が対イラン政策であれ、対イスラム国政策であれ、もう少し前に出てくるということであれば、アラブとしては歓迎すると思います」
反町キャスター
「アメリカの中東に関する積極関与は、アラブ各国は歓迎ですか?」
中島氏
「ええ。基本的に、アラブの国というのはアメリカに仕切ってほしいということがありますし、アメリカが1番好きというのもありますけれども、信頼できるということだと思います」
反町キャスター
「たとえば、シリアの時に大量破壊兵器を使うか使わないか。使ったら、レッドラインを超えたので行くぞ、と言っておきながら行かなかったオバマという大統領が以前いました。それに比べて、トランプさんというのは行くぞと言った時に、必ず来てくれるという期待感を持ってトランプ政権を見ているという、こんな意味ですか?」
中島氏
「オバマさんというのは、インテリなので、私から見ていてもオバマさんの説明というのは非常に詳しくて、非常に正確で、シリアについても爆撃しないというのは非常にわかりやすいと、理解できるのですけれども、他方、説明がいかに合理的であっても、アクションをとらない、決断をしないということになれば、結果として、オバマ政策の結果、アメリカの中東におけるプレゼンス、存在感が少し減少してきたということがありますから、あるアメリカ人が言ったのは、私に、自分はオバマ大好きだ、彼の言っていることは非常に合理的だと。だけれども、結果的にアメリカの中東における存在感というのは著しく低くなったという意味では、トランプさんが非常に荒っぽいロジックでもわかりやすい形で特定の政策を出せば、それはアラブの国にとっては、非常にわかりやすくて、かつ共感できる政策であれば、それは歓迎できると思います」

政権ブレーンはどう動く?
反町キャスター
「全体のトランプ政権における安全保障関係、外交関係の面子を見た時に、中東シフトが非常に色濃く見えるという、この印象論で聞きますけれど、そこはどう感じますか?」
中島氏
「まったく同感です。プラス、アメリカの中央軍は、中東を管轄していますから。かつ全体を見ていますから、たとえば、アメリカ国内の政治事情でいけば、イスラエルという国は非常に重要視するのですけれども、中央軍というのは基本的に全部を見ていますから、イスラエルも全体の中の1つという意味では中央軍にいた人達はバランスがとれているという意味では信頼できると思います」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、マティスさんとか、マクマスターさんら信頼できる経歴を持つ人達が入っている前提でありながら、先ほどの話にいくとトランプ政権の中東政策はバランスがとれていないし、何をやっているのだか方向性も見えないというのは、これはこのチームが機能していないからだと感じますか?」
中島氏
「もしくは方向性の違うテーマ、この場合で言うとアメリカ大使館のエルサレム移転ということと、イスラム国掃討という、ベクトルが違う話が出ていますから、全体の中でどう調整しているのかというのが見えてこないという意味では、誰が全体の方向性を決めてハンドリングをしているのかというのが現在の時点では見えていないと思うんですね」
佐藤議員
「7か国入国制限は、閣僚に関係なく、まさにケリー将軍が正面だけれど、彼にほとんど相談がなく、ホワイトハウスのバノン…」
反町キャスター
「入国制限と言ったら、国土安全保障長官がやるはずですものね。彼が外されて…」
佐藤議員
「これはホワイトハウスと閣僚というのはバラバラなので、権限をどこまで移すかというのが大事です。ただ、今回フリン氏が辞めて、マクマスターさんが入りましたね。これは非常に期待をしているんです。彼は本当に陸軍きっての戦略家と言われ、マケイン上院議員も極めて高い評価を持っている。この入国制限うまくいっていませんよね。これでバノンさんの力が、フリンさんが辞めたことによって若干、ホワイトハウスの中のバノンさんの力が弱くなって、こうなると、マクマスターさんとか、マティスさんとか、ティラーソンさん、彼らの発言というのを今度、大統領が聞きやすくなったという雰囲気は出ているのかなと期待しているんです、これから。このマクマスターさんとマティスさん、ティラーソンさん、このあたりが、中東政策をやってくれば、流れはちょっと変わってくるのかなと期待はしています」
反町キャスター
「たとえば、7か国に対する入国制限を主導したままこういう人達がいた、特にバノンさんだと言われている中で、今後、たとえば、中東政策について、誰の意見が、トランプ大統領の耳の大きく届くようになっていくのか?誰の意見が重用されるようになっていくのか?」
佐藤議員
「極めてこれから難しいところで、まさに私が見ているマクマスターさんとか、マティスさん、ティラーソンさん、彼らの意見と、バノンさんとか、そのへんの意見が力を持ってくるかと思います。下の4人(ティラーソン、マティス、ケリー、マクマスター)は現実主義者ですから、実際に現場を踏んでいますから。そこの意見とバノンさん、特に彼が連れてきたイデオロギー主義者。彼らとのせめぎ合いが、これから始まると思います」
黒井氏
「フリンさんとバノンさんでもって、反イスラム、親ロシアで動いてきたのですけれども、それに対して皆が反対だということで、フリンさんがいなくなりましたから、バノンさん対その他ですけれども、マクマスターさんというのは、完全にフリンさんと逆サイドの人ですから。中東政策もバノンさんと他の人達の発言力、影響力の戦いになるのですが、中東政策というよりはそれより先にロシア政策でたぶんバトルがあって、ロシア政策でトランプがどちらの話を聞くかによって、中東政策に波及してくると思います」

米大使館『エルサレム移転』の真意
秋元キャスター
「トランプ大統領の打ち出すアメリカ大使館のエルサレム移転について聞いていきます。あらためてエルサレムがどういう町なのかをおさらいしていきます。エルサレムですけれど、パレスチナ自治区とイスラエルの境界のあたり、そこに位置していまして、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれにとっての聖地であったため、帰属を巡って、昔から争いが起きていました。そうした中、1967年の第三次中東戦争で、イスラエルがエルサレムを占領して首都であることを宣言したのですけれども、国際社会がそれを認めず、アメリカを含む、ほとんどの国は経済の中心地でありますテルアビブに大使館を置いているのが現状です。そうした状況の中で、アメリカ大使館をエルサレムに移転しようということなのですが、これは今回、初めて浮上した話ではなくて、1995年にアメリカ議会が大使館移転を決議しています。しかし、歴代大統領がこれを拒否し続けていて事実上、凍結してきた問題ですけれど、これが現在また浮上しているという状況です」
佐藤議員
「第三次中東戦争でイスラエルがエルサレムを占領したのはエルサレムが2つあって、西と東があったんです。西エルサレムはイスラエルが持っていた。東エルサレムを獲っちゃった。それを併合したので、国際法違反だと。国連でもこれは認められないとなって、もともとエルサレムにあった24か国の大使館が、エルサレムからテルアビブに移ったと。だから、西の方は、それは問題がなかった。第三次中東戦争の結果も中島先生が詳しいと思いますけれども、東エルサレムが問題だったと。だから、今回、中東和平プロセスの1つの大事なポイント、東エルサレムの帰属問題が大きな問題になっていますから。だから、そういったいろんな経緯があるので、大使館をまたエルサレムに移すというのは国連との関係でもいろんな問題があるんですよ」
反町キャスター
「現状、東エルサレムというのはどういう状況になっているのですか?」
佐藤議員
「イスラエルが全部押えています」
反町キャスター
「その状況、東エルサレムにイスラエルの支配が続く限り、出て行った国々、テルアビブに移動した国々は当然、戻すことはないですよね?」
佐藤議員
「ないです」
秋元キャスター
「そもそもこうした問題を抱えている、エルサレムへの移転ということですけれど、中島さん、そういう状況にも関わらず、アメリカ議会が大使館のエルサレム移転というのを決議しているというのはどういう理由からなのでしょうか?」
中島氏
「中東の側からアメリカの政治を見ていますと、アメリカにおける中東の議論というのが2つありまして、1つは外交政策の中での中東の議論。もう1つは、純粋国内問題としての中東問題というのがありまして、これはアメリカの国内で議論する中東の議論があって、この大使館移転というのは、基本的にアメリカの内政の中で議論されている内政問題」
反町キャスター
「内政問題という中東問題。どういうことですか?」
中島氏
「たぶん1995年に議会が決めたのは、大使館を実際にテルアビブからエルサレムに移すということではなく、多くの議員が大使館を移した方がいいと思っていますということを国内に向けて発信したと」
佐藤議員
「選挙戦ですよ、自分の。ロビーに対して良い顔をするために議会がやったんですよ」
反町キャスター
「ユダヤロビーに対するごますりと言っては悪いけれど、そういうことですね?」
佐藤議員
「そう」
中島氏
「そういう意味で、議会が決めた時に、実際やるかどうかは大統領が決めると?」
佐藤議員
「1項目がその法案にあるんですよ」
反町キャスター
「決めるのは大統領であると、ただ、議会としてはそれをやってほしいと。具体的な場所も書かずに、移転したいと思っていますよと。我々はというところにおいて、政治的な力に対する、陳情に対する答えみたいなものを、そこに出そうとしたのではないか?」
中島氏
「ですから、大統領候補も選挙戦の時は私も移しますよと言うのですけれども、実際に大統領になると移さないという意味では、国内、内政の議論の時と、実際の外交をやる時にはまったく違う、別だという、1つのお約束という」
反町キャスター
「それを初めてトランプ大統領が壊そうとしている?」
中島氏
「そうです。それで、たぶん関係者はびっくりしたという、実際にやるのかと。やったらどうなるのだということで、周辺のアラブの国も含めて、ヨーロッパもそうですけれども、彼らがやらない方がいいと言っている時の言葉というのは非常に抽象的ですよ。何が起きるかわからないぞということですね。大変なことになるぞという非常に抽象的なことを言っていまして、その最大の理由というのが、東エルサレムにイスラム教の聖地があるということがありますから、変に大使館を動かすと宗教問題になっちゃうよと。その場合、イスラム教徒の中でどういうリアクションが起こるかわからないという非常に漠然としていますけれども、かなり強烈な不安感があって、その結果、アラブの国を含めて、やらないでくれと、何が起きるかわからないからやめてくれ」
反町キャスター
「わからないですね、皮膚感覚として東エルサレムも含めたエルサレムに大使館が移るということがイスラム教徒の気持ちを逆なでするという、そういう意味で言っている?」
中島氏
「そうです。ですから、佐藤先生がおっしゃったように、第三次中東戦争の時に東側を占領して、イスラエルは全体を現在イスラエルの領土とみなしていますから。国際社会の西側はイスラエルでいいよと。ただ、東側は和平交渉の結果を待ちましょうという時に、イスラエルが言っているのは西も東もイスラエルですという主張していますから。仮に大使館を動かすと、ある意味では、イスラエル側の主張を認めると」
反町キャスター
「大使館を西エルサレムに動かすのだったらという姑息な議論の対象にはならないのですか?」
中島氏
「それは仮に西に動かしても、アメリカは西に動かしましたと仮に言ったとしても、現在のイスラエルは、西も東も…」
反町キャスター
「エルサレムはエルサレムなのだと」
中島氏
「そうですね。ということであれば、ある意味で、東エルサレムの併合を認めたと、もし理解をされれば、それは聖地がありますから。宗教勢力の一部がどういう怒りを吹きだすかわからないという意味では、皆が怖がっていると言うんですね」
黒井氏
「トランプさんは本気で中東和平を動かしたいという熱意がそんなにないような気がしますよね。リップサービスをする人なので。選挙戦での票もあるのですけれども、言ってみたけれども、いろいろ問題もあるし、同じイスラエルの人とか、アメリカの中の、ユダヤの人の中にいろんな意見、反対意見もありますから、そこまでのリスクを得て何で自分がそこで中東和平を動かすのだという熱意までは感じないですね。とりあえず言ってみた。でも、なかなか面倒くさそうなので、とりあえず現在、火消しになっているということですね。目の前は、たとえば、7か国のビザの問題とか、いろいろな保護貿易の問題だとか、他の方に自分の注意はあちらに行っていますよね。もちろん、イスラエルは仲良くすれば自分の得点になりますし、とにかく世界の首脳で仲良しが少ないですから。こういう人は安倍さんも含めて、アピールしたいというところはありますけれども、中東問題、イスラムテロを抑えるというところまで一点集中突破でそれ以外のことに関してあまり熱意を持って…、ですから、そんなにエルサレムへの移転問題、最初からこれまで本気ではないのだろうなという気がします」

『2国家共存』と『中東和平』
秋元キャスター
「トランプ大統領が、先週15日に行われましたネタニヤフ首相との首脳会談のあとの共同会見でこういった発言をしているんですね。『2国家共存の原則についてはこだわらない。当事者同士が協議すべき』だと。この2国家共存というのが、そもそもパレスチナ国家を樹立し、イスラエルと和平共存を目指すという考え方ですけど、国連が主導して歴代アメリカ政権も支持してきたのですが、イスラエル、パレスチナ双方に反対勢力がいたため、実現への道筋はまだ見えていないというのが現状です。中島さん、このトランプ大統領の発言というのをどう見ていますか?」
中島氏
「トランプ大統領はたぶん自分が言っていることの意味をわかっていないと」
反町キャスター
「今日、そういう発言が多いですね、全体的に。わからないで口走っているというのがこんなにあっていいのですか?」
中島氏
「実はこの当事者同士、彼が言ったのは、国が1つでも、2つでもどっちでもいいよと。当事者同士が合意すれば、自分は支持するという言い方なのですけれど、1つ、1つを見ていくと、当事者同士が合意しないので、周りが現在、集まってきているんですね。ですから、当事者同士が合意をすれば、国際社会はどういう形であっても非常にハッピーなはずですけれども、それが実現していないという意味で、前オバマ政権も含めて、仲介していると意味では、非常に現状をよくわかっていないのかなという気がします」
佐藤議員
「この発言というのは共同記者会見で出たんです。記者の質問に対して、こういう答えが出た。こだわらないと。当事者同士が協議すべきという時に、ネタニヤフ首相が大笑いしているんです、まさかそんなことを言うと思わなかった」
反町キャスター
「喜びとか、驚きとかではなく、笑っちゃうぐらい的外れな発言だったという話?」
佐藤議員
「こんなことを言うとは思っていなかったので。彼としては、ネタニヤフの方は当事者同士で、2国間で解決をしたいという立場だし、パレスチナは国際社会を巻き込んだ形でやりたいという立場なので、2国間と言ってくれたし、こだわらないと言うので、吹いてしまった感じだと思いますね」
中島氏
「あと1つ、トランプさんは、国2つでもいいし、1つでもいいよという言い方をしていますから、彼からすると同じオプションですよ。ですから、同じ選択肢として当事者同士が、国が2つであろうが、1つであろうが話し合って合意しればいいという意味では、彼から見るとたぶんどちらであっても」
反町キャスター
「つまり、そういう話が出てくるということは中東和平にコミットするつもりが全然ないと聞こえちゃいます。そうでもないのですか?アメリカが積極的に関与をして何かをやろうと思っているのであれば…」
中島氏
「たぶん彼は、ちょっとこれは憶測ですけれど、自分の娘さんが非常に大事だと」
反町キャスター
「クシュナーの嫁、イヴァンカさんね」
中島氏
「その義理の息子であるクシュナーも非常に大切にしている。その大切な娘婿に、中東和平問題を担当させたいということは公式におっしゃっていますから。たぶん自分にとって非常に大切な義理の息子に何かをやらせるということであれば、それは義理のお父さんとしてはかなり本気で考えているという見方もできると思います」
反町キャスター
「この人(クシュナー氏)の中東和平に関する考え方というのは、これまで我々の前に手がかりとして出てきたものは?」
中島氏
「いや、現在のところは何もないですね。唯一あるのは、昨年の3月に彼がAPACという親ユダヤ、親イスラエル組織で演説をしたのですけれども、そのスピーチは彼が書いたと言われているのですけれど、それは候補者としてリップサービスを言っただけですから、政策ではないですよ。イスラエルに対してこういうことをやりますと、いろいろなことは言ったのですけれども、まだ政策ではないと」
佐藤議員
「クシュナーさんは背景が普通のユダヤの方と違って、お爺さんとお婆さん、これがポーランドの方で、まさにホロコーストから逃れるためにいろんなことをやった。虐殺された村で、まさに少女を埋めるための墓堀りもお婆さんがやったりとか、逃げるためにトンネルを掘ったとか、そういう中でお父さん、お母さんが苦しい中でアメリカに来て、大きな成功をやったと。だから、今回のイスラエルを何とかしたいという想いは、これはすごく自分の家族の想いであるようなことでもあるんです。イスラエルを何とかしたいと、中東について。他の人とはちょっと違った想いもあるので、たぶん真剣にやると思います」

イラン核合意『見直し』の行方
秋元キャスター
「続いて、イランの核合意見直しについて聞いていくのですけれども、そもそもイランの核合意というのはイランの核兵器開発を止めるために、2015年にイランと安保理常任理事国及びドイツの6か国が結んだ合意です。最長で15年間、核兵器が開発できない規模までイランの核開発を縮小すると言う事で、見返りにイランへの制裁を解除すると、こういったものなのですが、佐藤さん、安全保障の観点から見てイランの核合意、どういった意味があって、また見直しをするのにはどういうリスクがあるのでしょうか?」
佐藤議員
「これは1番、安全保障上の意味は、イランの核兵器開発を止めるとありますけれど、中東における核兵器の拡散を止めるというのが1番の目的であって、さらにこの核合意でイランがこちら側に来ることによって中東地域全体の安定にもつながる。さらにこれはまさに現在のロウハニ大統領のような穏健派が現在、力を持っているんです。国際社会の方に引っ張り込むことによって、穏健派、これを支援できると。つまり、経済政策を一部解除することによって経済が良くなる、国民生活が良くなることによって、強硬派の台頭を抑えることができるという狙いがあると思います。ただ、実際にこれは核合意で制裁を解除してですけれども。昨年の7月に行って、外務大臣とか、いろいろ会ったのですけれども、要は、今回の制裁解除は核だけあって、ミサイルとか、あるいはテロ、人権に対する制裁は続いているんですよ、アメリカの制裁が。残っているんですよ。なかなかドル建ての決済もできないし、ヨーロッパの企業もユーロ決済も、なかなかアメリカの制裁が残っていますので。企業が本当に制裁対象でないかどうか。これは核なのか、ミサイルなのか、わかりませんから非常に不満が多いと。そういう中で仮にこれを見直すと言っても、実際、意味がよくわからないのですけれども、TPPと一緒で。これは国連のエンドースメントを得ている、支持を。今回の合意と言うのは、アメリカとイランの2国間の合意ではなく、EU3プラス3という、まさにイギリス、フランス、ドイツのEU3か国と、アメリカ、中国、ロシアの6か国の合意ですから。アメリカだけが、俺がやめたと言って簡単にできるものではないし、国連も支持しているような合意ですから、それは簡単に見直すと言って、では、どうするのというのは実際的ではないし」
反町キャスター
「トランプさんがなぜこれを口走ったというのか、なぜ口にしたのか。背景、それを言わせた動機とは何だろう?」
佐藤議員
「イスラエルは、これに反対をしているんですよ。1つは、イスラエルは、この合意によってイランの経済が持ち直したら、将来10年後にまた核兵器を持つのではないかという懸念を持っているんです。また、トランプ自身もイランという国を警戒していて、今回の彼のスタッフもどちらかと言うとイランに厳しいスタッフだと思うのですけれども、イランという国がある意味、今回、オバマ政権が中東から力を失ったと。逆の形でイランの力が中東にドンドン出ているという思いもあるんです。あれだけ戦費を使ってイラクで多くの将兵も亡くし、戦費を使ったのに現在、実質、イランが後ろ盾になっているシリア政権がだいたい力を持っているではないかと。シリアについてもイランの影響があるヒズボラが一生懸命にやっているのではないかと。いろんな面でイラクにうまくやられていると思っているんですよ」
反町キャスター
「でも、イスラム国の掃討と言うのだったら、イラン革命防衛隊の力を借りなければ…」
佐藤議員
「当然、だから、おかしいです。政策がバラバラだというのはまさに革命防衛隊の力がなかったら無理なんです。まさにイランの革命防衛隊はこの制裁対象です」
反町キャスター
「その力を借りてイスラム国を掃討しようと、めちゃくちゃと言えば、めちゃくちゃなのだけれども、だから、そのわかっているからこそ最近、言わなくなってきたとなりますか?」
佐藤議員
「イスラム国掃討もありますけれど、イランの核合意は実際にこれで強硬派が出てきた場合、あるいはこれで合意見直しになったらもっと早く核を持つかもしれません。もっと中東が不安定になるかもしれません。いろんなことを考えたら、合意見直しというのは、普通はアメリカにとって得なものはないと思いますよ」
黒井氏
「反イランのスタッフが確かに多いですね。ただし、よく発言を聞くとこの破棄を支持している人は実は少ないんです。あとのことも考えますから、プロフェッショナルは。唯一、独走状態だった人はフリンさん、彼はとにかくイランをとにかく潰せと、革命防衛隊もテロ組織に指定するみたいなことを彼は言っていたんですね。そのぐらいイランが大嫌い、とにかく何でもやってしまえということですから、そういう人が何人かいて動いていたと。トランプさんもそういうことに心が揺れたところもあると思うのですけれど、よくよく見るとマティスさんを含め、反対派が多いですね。ただ、共和党の中にこの合意はイランに騙されているのではないかというような見方の人も多いですね。そういった人の意見を、トランプさんはこの問題に詳しくないですから、聞きながら決めあぐねているという状況だと思います」

『イスラム国』掃討への道
秋元キャスター
「イスラム国掃討について聞いていきます」
黒井氏
「ロシアとの関係が出てくるのですが、アメリカは、トランプさんは、ロシアと協力できるだろうと幻想を抱いているんですね。それはなぜかと言うと、ロシア側がそういう仕かけをしているのですけれども、ロシアの目的とアメリカの目的は全然違うので、アメリカはとにかくIS(イスラム国)を叩きたい。ロシアはシリアの反体制派を叩きたいということですから、ロシア側の狙いというのは、アメリカを引き込むことによって、反体制派を叩く時に無差別空爆をやって、昨年暮れ、アレッポで大変なことになって、国際的な世論では悪者にされているので、アメリカを引き込むことによって、そういったものから免責されたいというのが本音ですね。それに対してトランプ氏が何となく擦り寄ってきている。私の見方だとある種、騙されていると思うのですけれど、アメリカと連携してロシアがISに対して立ち上がるかと言うと、ロシアは別にISはどうでもいいわけです。だから、実際に動き始めて、実際に話し合いが始まった時点でトランプ氏はおそらく気がつくと思うんです。そんな話は違うではないかと。これまで協力してIS(の掃討)をやるというプランが具体的に動くかというと、動かないだろうなと」
反町キャスター
「イスラム国掃討とトランプ大統領が言った話も風前の灯になるのかもしれない?」
黒井氏
「ロシアとの連携はないのだけれども、トルコとの話し合いでトルコが出てくる可能性はあると思います。ただし、それで安定するかと言うとなかなか難しい」
反町キャスター
「大量の地上軍を派遣するわけにはいきませんよね?」
黒井氏
「それはないと思いますね。トランプさんの思いつきで喋っている案件は全部、こうあったらいいなという具体的なものはないですよね。ですから、それでおそらく国防総省は非常に困っていると思います。そんなことを言われても、では、どうするのかと」
佐藤議員
「1月28日、大統領令で国防省に30日以内にイスラム国の作戦をまとめろと言いましたから、普通にいけば、2月28日ですよね。どういうものが出てくるのか。実は2月16日にロシアの参謀総長とアメリカのランフォード統参議長がアゼルバイジャンで会ったんです。これはクリミア半島のロシアの併合以来、初めてです。上同士が仲良くしろと言っているから、一応会ったのでしょうけれども、そこでたぶんいろいろ話し合いをしていると思います。ただし、私が付き合っている軍人の話を聞いても、アメリカ軍の中には、ロシア軍は敵ですから、そういう意識がありますから。なかなか現在一緒に作戦ができるかというとそれはかなり難しいし、実際マティス国防長官もNATO国防相会議で、NATO諸国に言ったことは、ロシアはまず国際法を守れと、つまり、クリミア半島を含め、守れと。直ちにアメリカ軍とロシア軍が共同作戦するような、そういうことはあり得ないと明確に言っていますから。今回のイスラム国作戦も、連携と言っても実際に軍同士の連携ということはあり得ないと思います」
中島氏
「短期的に言えば、現在やらなければいけないのはシリアの内戦を抑えるということですから。イスラム国対策というのは、イスラム国を軍事的にどうのこうのという話ではなく、シリア、イラクの国内秩序をキチッと安定させるのが1番大事ですから、そういう意味では、シリアの内戦をなんとか政治的に収めて、その結果、シリア国内の秩序を回復させる。その結果、イスラム国を追い出すという意味で、アメリカとロシアがシリア停戦に働きかけるというのはあり得る」
佐藤議員
「国務長官もまずイスラム国を叩いてから、シリアが安定してから、アサド政権をどうするかを考えるべきだと発言していますから」
反町キャスター
「これまでと全然違う」
佐藤議員
「実際に私がアメリカ軍だったら、シリアの方にどういう形で関与するかという時、叩いたあとのことを考えますから。すごく前のめりにしてしまったら、そこの内政的コストをすごくかかりますから、そこは考えながらやらないと。地上軍を送り込んでやってしまえば、短期的には勝つと思いますよ、アメリカ軍ですから。そのあとラッカを含めた、あのあたりをアメリカが治安維持のコスト払うのと言ったら、えっーと言う人が多いです」

佐藤正久 自由民主党参議院議員の提言 『・エ・サ・イ・ト波及阻止 ・ポストISIL』
佐藤議員
「安倍総理は、イスラム国掃討のために日本は自衛隊を派遣しないと明言していますから、となると、イスラム国対応には直接関与できませんから、となると、我々はイスラム国の周辺にいるイラン、サウジアラビア、エジプト、トルコの方に波及しないような形の外交努力というものというのが1つ。もう1つは、ポストISIL。イスラム国掃討のあとに、どういう形で難民を含めた関与、特にイラクの治安部隊は相当疲弊していますから、その再建を含めて、治安の維持を含めた課題というのはあると思います」

中島勇 中東調査会主席研究員の提言 『常識で対応』
中島氏
「トランプさんはいろいろな変わったことを言いますので、ここは慌てず、常識で判断すると。それに対して常識的な対応をする。アメリカがある線を越えたり、外れた行動をした場合は、それは同盟国としてはっきり言うということではないかと思います」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏の提言 『"バカなふり"をやめる』
黒井氏
「バカなふりをやめる。中東だけではないのですけれども、安全保障に対してはニコニコして、何でも言うことを聞いて、ご機嫌をとるみたいなことをしていれば、負担とか、危険なものとか、そういう脅威からなんとか逃げられるということでこれまでやってきたわけですけれども、トランプ流の交渉というのはビジネス畑ですから、勝つか、負けるか、そういったことで逃がさないというのですか、もうちょっとやれよとシビアに何かあった時にはくるだろうということで、やめるというか、通用しなくなるのではないかと。そういった逃げ口上というのはなかなか難しくなってくる可能性があると思います」