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2017年2月20日(月)
トランプ時代の製造業 脱日本主義の成長戦略

ゲスト

石野博
関西ペイント代表取締役社長
大山泰
フジテレビ解説委員(経済)

関西ペイント石野社長に問う 自動車塗料の競争優位性
秋元キャスター
「石野さんが社長を務められている関西ペイントについて見ていきたいと思うのですが、関西ペイントは1918年創業の総合塗料メーカーで、自動車用塗料を主軸に事業を展開されてきました。現在、日本のクルマの2台に1台は関西ペイントの塗料が使われているということです。近年は建築用塗料にも力を入れているということで、その他にも工業用塗料、船舶用の塗料など様々な分野の塗料を開発、製造、販売をされているんですね。まずはこちらの自動車用塗料について話を聞いていきます。石野さん、自動車用塗料と言いますと、消費者側からすると、車の性能の違いというのはすごく気になるのですけれども、塗料の違いというのはなかなかわかりづらいと思うのですが」
石野氏
「いや、この頃、昔に比べて色あせがしなくなったと思いませんか。それから、非常に目立つ色によって消費者がこの色を買いたいと思いませんか。それから、上から鳥の糞が落ちてきてもなかなか酸化しないとか、その意味では、美観と、それから、防錆能力ですか、格段に進歩をしていますよ、ということが言えると思います。それは皆さん、消費者があまり気がついていないのかなと思うんですけれども、結構メリットが出ていると思います」
反町キャスター
「見た目で言うと、よく色の深みとか、抽象的な言い方をするではないですか。どこかの車は色の深みが違うとか、このメーカーの車の色は何だかかんだとか、色に味わいがないよねみたいな。味わいとか、深みとかはメーカーからすると出しようがあるのですか?あれは塗り方によるのですか?それとも素材によるのですか?」
石野氏
「両方ですよね。クリアとか、あるいは顔料と光輝材、明るいやつをどう入れるか。それから、クリアを混ぜる。それをうまくちゃんと配列して深みが出るような形で色の屈折が入れば」
反町キャスター
「それは屈折率とか、いろんなものがあるわけですか?」
石野氏
「はい」
反町キャスター
「そうすると、深みという言葉に集約されているのだけれど、ちゃんとそこには科学的な、技術的な根拠があるわけですね」
石野氏
「皆さん、苦労しています。つくる方も苦労されています」
反町キャスター
「高級車の色には深みがあるというのは、それは良い塗料を使っているということなのですか?それとも重ね塗りとか、技術とかがあるのですか?」
石野氏
「いや、基本的には、塗料と塗る人の技術と両方だと思っています」
反町キャスター
「そこは自動車メーカーと話をしながらやっていくのですか?」
石野氏
「その通り。特に塗料というのは、実は建築用というのはそのまま塗って、そのまま乾かす。自動車用というのは量産ですから焼きつける。そうすると、いろんなものが入れて塗った段階では完成品ではなくて、焼いて、その間に反応がありますから。いろいろ反応をやるわけですね。そうすると、先ほど言った、いろいろな光輝材とか、並び方とか、いろいろ、あるいは中から泡が出る、いろんな問題が出るんです」
反町キャスター
「熱をかけることで?」
石野氏
「そういうことです。それは必ずしも完全ではなく、いかに完全に近づけたものを入れて、あるいはバクではないですけれど、いろんなものを徹底的に、不具合が出たら、すぐに解決をすると。ある意味、ソリューションビジネス、サービスビジネスでもあるんです。要するに、開発して良いものをつくると。もう1つ、何かあった時にはサービスでそれを徹底的に補正をする。この3つですね。それができないとダメなので、世界の自動車メーカートップ、おそらく5社しかないですね。それぐらいしか残っていないです。要するに、建築用はうん千、うん万とありますけど、自動車用の塗料メーカーは世界で5社です、だいたい。韓国に1社小さいのがありますけれども、グローバルに大きいのは5社だけです」
反町キャスター
「その5社のうち、日本のメーカーというのは何社ですか?」
石野氏
「2社です。アメリカが2社。それから、ヨーロッパが1社」
反町キャスター
「ヨーロッパと言えば、いろんな、フランス、ドイツ、いろんなところがあるけれども」
石野氏
「それは、昔は、たとえば、日本のメーカーは日本の塗料、それが現在、クロスで、グローバル化とはそういうことですけれども、いろんなところでいろんなメーカーを使いながら、自動車メーカーさんは、2社購買、3社購買しながら、競わせながら、我々も一生懸命にがんばって、だから、ウチもこれまでずっと日本メーカーさんに一緒にくっついてグローバル展開で。ここにきて、要するに、欧米メーカーさんのやつに入れ始めている」

『トランプ時代』の世界戦略
反町キャスター
「グローバルの話だけ1点させてください。世論調査をかけると今日発表になった世論調査、こういうのが出ています。トランプ政権のもと、経済面で日本に良い影響があると思いますかと、こういう話なのですが、悪い影響があるというのは55.9%も出ているのですけれど、関西ペイントとしては、トランプ大統領の経済政策。たとえば、NAFTAの問題とか、北米自由貿易協定の問題ですとか、保護主義だ、何だといろいろと言われる中で、自分のところのビジネスに、トランプ大統領の政策で何か影響が出てくると懸念される部分はありますか?」
石野氏
「それはありますね。トランプさんのやり方というのは、私自身はグローバル化がドンドン進んで、寡占、独占に近くなって。グローバル化というのは生産効率はすごくいいのですよ。ただし、独り獲りになる。その分配がうまくできていない。それの揺り戻しだと。ただ、それがトランプさんのやり方が正しいのかというとクエスチョン。ただ、その切り込みはあるべきかなと思っているんです。自分自身に跳ね返るかと言うと、本来、我々は、地産地消で全部やっている。だから、たとえば、メキシコにあって、アメリカで今度なかなか難しいと言っても、ウチは、実はメキシコでもやっている。アメリカでもやっている。日本でもやっている。日本からの輸出というのは、直接はあまりない。地産地消ですよ。塗料というのは輸出にあまり向かない。と言うのは、たとえば、チップだと小さくて高いから飛行機で飛ばしていいでしょう。ところが、水とか、それから、セメントだと重くて運送費が高い。塗料はキロ当たり単価がすごく安いです。その割には重いです。水とか、溶剤だから。だから、輸出に向かないです。だから、基本的にはそこでつくっていって、売っているんです。ただ、ウチのお客さん、自動車メーカーさんが、たとえば、日本から輸出している分が、これから、NAFTAではない2国間で、たとえば、数が減ってくると、ウチの日本の生産は減りますね。その代わりに、アメリカでウチは合弁先を持っていますから、そこではちゃんと儲かります、こういう話になる。だから、まったくないかと言ったら、あるけれども、そんなに大きいかと言ったら、そうでもないですよというのが我々のポジション」

『脱日本主義』のグローバル戦略
秋元キャスター
「ここから石野さんの経営哲学を聞いていきたいと思います。石野さんは、商社での勤務を経て、2003年の51歳の時に関西ペイントに入社されたということなのですが、入社に至ったきっかけというのはどういったものだったのでしょうか?」
石野氏
「商社の時に、自動車の製造から販売のお手伝いをしていて、タイ、フィリピンと渡り歩いていて、フィリピンで工場を持ちながら商品企画をし、それで販売をしていた。その時に実は元いた商社が関西ペイントと組んで、塗料を売りに来たんです。それはウチだけではなくて、他にも売りに来たのですけれども、別に親会社関係なしに、高いモノは高いと言って実は買わなかった。断ったんです。断ったのだけれども、いろいろ話をしていて、その時にいろんなことを、実はフィリピンだといろいろできるんですね。できると言ったらおかしいけれども、旧弊を否定しながらドンドンやっていたんですね。その話をしていたら是非来てくれということで、向こうの本部長は、関西ペイントの前の社長ですけれども、塗料は売れなかったけれども、石野を買えたからいいと。こういう話をされた経緯があって、行きました」
反町キャスター
「その時は三菱商事の立場でフィリピンにいて、フィリピンに自動車の組み立て工場を持っていたのですか?」
石野氏
「組み立てもして、もちろん、販売するためですけれど、組み立て工場を持っています」
反町キャスター
「ブランドは何のブランドですか?」
石野氏
「いすずのブランドです」
反町キャスター
「それで、つくった車をフィリピンとか、タイで売っていた?」
石野氏
「それはフィリピンで売っていた」
反町キャスター
「その車に塗ってくれという塗料を、三菱商事と関西ペイントが合同でチームを組んで、当然、向こうにしてみたら買うと思ってくるわけではないですか?」
石野氏
「そうですね」
反町キャスター
「同僚か、ないしは上司が、今度、車をつくっているのだろう?ウチは今度、塗料をやるから買ってくれと、断り切れないですよね?普通」
石野氏
「上司ですね。いや、そんなことは。ダメなものダメですよ。だって、競争力があるか、ないかの問題で、関西ペイントはその時、フィリピンは自動車産業が10万とか、できないから、ほとんどプレゼンスを持たずに、特化したもので、特化したものにやっていたんです。だから、売れないことはない。でも、いすずというのは商用車のメーカーで、そんなのは要らない、是々非々でやりますと。そこは塗料だけでなく、販売代理店も紹介があったけれども、やらないと」
反町キャスター
「三菱商事の上司が、関西ペイントと組んで来たと言ったのではないですか。そうしたら、その上司にしてみたら面子が潰されたと、僕は思っちゃうのですが、そんなことはないのですか?」
石野氏
「三菱商事はそんなことを言わないですね」
反町キャスター
「口では言わないけれども、だって、デリゲーションを組んできたのでしょう。買ってくれよと、当然、頼むよなと来た時に…」
石野氏
「いや、それは、私はその合弁に行ったら、合弁の利益を最善に考えるでしょう。それは三菱商事もそういう考え方だから。オファーはします。だけれど、良ければ使ったらと。良くなかったら、それはしようがないと」
反町キャスター
「そんなにあっさりと人間関係が単純に割り切れるものですか?そんなものでもないのですか?」
石野氏
「それでやってきました」

『後発企業』の世界戦略
反町キャスター
「いわゆる同じ会社の上司のオファーも蹴ってしまう様子を見て、当時の関西ペイントの一緒に来た方が、この人は、ということになって、その後、誘われたという理解でよろしいのですか?」
石野氏
「それよりもああいうところは自分で考えて、実は関西ペイント、レイトカマー、要するに、後発参入社とグローバルに言っているのですけれども、フィリピンでやった自動車も後発ですよ。トップメーカーが2社ぐらい、3社ぐらいいて、最後に入ってきた。そうすると、後発メーカーでどうやって結局、ビジネスモデルをつくれるのか、どうかだと思っているんです。つくれればできるんですね。つくれなくて、皆と同じ道を走っていたら、ずっと後発です。そうしたらボリューム負けする。名前負けする。いろいろなところで負けるんです。担いでいるメーカーも大きいメーカーではないからコストも高い。いろんなところで負けるのをどうやって新しいビジネスモデルで切り込めるかというのは一生懸命にやったんですよ。それを見てもらったのだと思いますよ」
反町キャスター
「そのビジネスモデルが当時の関西ペイントにはなかったのですか?」
石野氏
「いや、グローバル化をする時にその時の本部長はビジネスモデルを持っていたんです。それは自動車用で世界を頑張っていくのだと。ただし、グローバルになると、いろんなところで規模が大きくなるし、いろんな問題があるから、そういうことができる人間がほしいというので、来てくれということで」
反町キャスター
「それは、つまり、自動車用塗料の1本足打法ではなくて、2本足、3本足で立ちたいと、そういう意味ですか?」
石野氏
「いやいや、当時はそこまで考えていないですね。自動車用塗料でいいからと。だから、私を引っ張ってくれた人というのは上ですから後継者が要りますよね。そういうつもりだったと思います。それと単なる後継ではなく、ボリュームが増えた時にちゃんとやっていけるかと言うと、自分ではなくて、石野の方がそこのキャパがあると思われたと」
反町キャスター
「そこのキャパのそこがよくわからない。そこというのはどこですか?どういう部分なのですか?自身でなかなか話にくいところだと思いますが」
石野氏
「引っ張ってくれた人、すごく大尊敬している人で、その人がなぜ来てくれと言ったのかは、それは24時間いろいろ考えていろいろありますよ。でも、その人が言ったのは線路の上を走れる運転士はいる。線路を敷く人はなかなかいない。こう言ってもらったんですよ。それは嬉しいですよね。自分の実力を認めてもらっているから。なかなかそういうことを言える人はいない。だから、行ったんですよ」
反町キャスター
「現在、社長なので、自分の会社のカルチャーをなかなか悪く言えない部分もあると思うのですけれど、落下傘部隊と言っていいのか、進駐軍と言っていいのかはわからないですけれども、パカンと行ったわけではないですか」
石野氏
「いや、違うんです。その時に引っ張ってくれた人が言っていたのは、落下傘では何もできないねと。だから、ともかく急いでくれと。私はフィリピンでいろんなことがあって、なかなか抜けられなかったんです。本当に、やいのやいので、早く来てくれと。なぜと言ったら、中に入って8年、9年、10年やらないとわからないと。こう言われたんですよ。現在になってわかるんですけれども、だから、落下傘ではないです。進駐軍でもないです。単なる一部長からスタートしています」
大山解説委員
「社内では部長から、それだけ業務をやって、社長になったということで、いわゆる生え抜き以外の方の社長、中途採用の社長、そういうことで軋轢とか、抵抗とか、そういう風圧みたいなものは感じていることはあるのですか?」
石野氏
「私は意外と無頓着であまり感じなかったというか、良い会社で、あまりそういう抵抗感はなかったと感じでいます。ただ、そのやり方についてはあとで出るかもしれないですけれども、相当変えなくてはいけないなというのは感じました。ちょっと言うと関西ペイントの強みというのは徹底的にコミットし、お客さんファーストですけれども。品質ファーストで、お客さんファーストでもう徹底的にやるんですよ。だから、お客さんから見たらすごく安心の企業。でも、自分で目標設定、目標品質というのですけれども、目品という、目標品質とか、目標種を設定するくせがないですよ。だから、そこは変えないと、グローバルになった時に戦えないなとはすごく感じて、それは変えました」
秋元キャスター
「石野さんが掲げている社内の意識改革のキーワードがあります。品質至上主義の打破。日本がベストとは限らない。脱・自前主義、脱・日本主義という、このキーワード、これを掲げる狙いですね。どんなところにあるのでしょうか?」
石野氏
「3つとも関係してくるんですよ。グローバル企業として戦っていくためには品質至上主義、日本は日本そのものが品質至上主義。でも、海外に行くと当然、よく言うQCDというのがありますけれど。クオリティ、コスト、デリバリー、納期ですね。この3つが揃わないとダメですよね。品質ばかり言ってもしょうがないです。でも、どうしてもウチの社内でも、いろんなところで良い品質、安定納入、安定品質、安定供給という。これは、要するに、サプライ側としては素晴らしい。でも、コストが何で入っていないのと。これは面倒を見ていただけるという前提で話をしている。それはちゃんとやっていれば、必ず見返りがありますと、こういう暗黙の了解がある。でも、海外に行ったらそんなもの自分で決めなければいけない。その時に品質ばかりではなく、QCDを見なくてはいけないですよ。もう1つは、生産が特にそうですよ。日本がベストとは限らない。これは、実はどうしても日本というのは品質が素晴らしいよと。それから、製造は日本が素晴らしいよと、こう言って、ウチの中でも東南アジアとか、インドに行くと製造は日本の言うことを聞けと。こういう話になるんですよね。ところが、QCDでその場その場でその国の人達をどうアメとムチではないのですけれど、やっていくか。スタンダード化し、マニュアル化し、やっていくかとなっていくと、意外と日本だけではないと。それから、もっと言うと、実はモジュール化とか、いろいろありますよね。あの考え方はヨ-ロッパでドンドン進んでいて、日本は現在、取り入れていますよね。あれは10年ぐらいいろんなところで、どうやって効率良くつくるのかと。高生産性というのは、塗料は明らかにヨーロッパが進んでいた。そのへんのところを皆、勉強をしましょうよと。そのためには日本をベストと思っていたら、なかなか勉強をしない、まずコンセプト的に自分がベストだと思っていると、良いモノをなかなかとれない。目の前を通っても勉強をしないですよね。だから、それはやめようと。だから、日本のいいところがあれば、悪いところもある。ベストだから除外することはしないと。次の脱・自前主義、脱・日本主義もまさにそういうことですよね。自分だけではない、日本だけではない、人の良いところ。これは私が言っているのは、謙虚に学んで勇気を持って変革しようという、謙虚に学ぶと。昔の日本の明治なんかは皆、学んでいたではないですか。中国は盗んでいるから悪いと言っても、彼らは、本当はベスト、ベストを狙って勉強をしているではないですか。韓国だってそうです。日本もいろんなところでそうやりましょうよというのが、現在の考え方です。グローバルで、1人で行って戦うためにはそうやらないと、誰も守ってくれない。品質だけでは利益が出ない、そういうことです」

新興国市場への戦略
秋元キャスター
「グローバルに展開をしていくうえでの話を聞くにあたって建築用塗料の話を聞いていこうと思っています。関西ペイントの分野別の売上げ推移を見ていきますと、主軸の自動車用塗料はほぼ横ばいなのですが、一方で、建築用塗料というのが大変伸びているのですけれども、石野さん、建築用塗料の売上げが伸びたのはどういうきっかけなのでしょうか?」
石野氏
「世界を見ると、実は日本の中で建築用の塗料の占める割合は25%ぐらいです。ところが、世界で見ると50%に近い、日本とえらい違いです。自動車用塗料は世界で見ると6%ぐらいになる。日本で見ると20%ぐらいになる。かなりいびつです。自動車用塗料をがんばって売ればいいやと。ところが、世界にいくとそうではない。塗料というのは、コストが、原料コストが半分ですよ、売上げの。と言うことは、原料コストを下げないと勝てないです。原料コストを下げるためにボリュームが要るんです。いろいろな切り口があるんですよ。原料コストを下げるうちの大きな1つはボリューム感ですね。ボリュームをとろうと思ったら、海外に行かなくてはいけないよね。日本は伸びない。しかも、発展途上国ですよね、かつ建築用ですよねということで建築用に目をつけた。それと建築用は早く行かないとマーケットがとれない。自動車用塗料というのは、技術、コミットメント、サービス力で差別化がついているから、我々が後から行っても5社しかいないし、入っていけるんですね。建築用は差別化が難しいです。反町さん、お宅の塗料はどこですかと(聞いても)おそらく知らないですよね。わからないでしょう。誰も気にしていないんです。だから、ブランドがないです。差別化ができない。そこでどうやって買うのですかと言うと、経験値で皆これを使っていますとか、日本の場合、塗装屋さんが決めて、海外の場合、これがブランドです。10年、20年やるとあそこ安心だということで買える。だから、建築用が肝です。しかも、それをやるために早く行かなくてはいけないです。と言うのが我々の考えで、建築用をこれまで伸ばしました」
大山解説委員
「海外進出というか、グローバル展開していく多くの場合、関西ペイントさんはM&Aですよね?企業の買収・合併ですよね?そういう形でドンドン展開していったということでいいのですか?」
石野氏
「そういう意味で、建築に関して言えばそれに近いです。自動車用は申し上げたようにグリーンフィールドから自分でできる。建築は自分でやるとすごい時間がかかる。ブランドがないと言っても立っている場合が多い。そうすると、それを買った方が早い。時間を買う、それから、ノウハウを買う、人を買う。要するに、そこでやれる人を。日本から誰も知らないではないでしょう。何の知見もないところで、自分でやるんですかと。唯一違うのは、中近東は自分達で立ち上げている。これはパートナーと一緒にやっているやつ。これはあまりコンペターがいないから。ブランドが立っていないから自分でやったやつ。ブランドが立っているアフリカへ行ってみたら、実は誰もいないところへと行けというのが私の口癖だったんですよ。行ってみたらブランドがすごいのが立っていたと。では、それは買いだなと。しかも、安かったと。なぜ安いかと言うと、南アフリカというのは今もそうですけれども、成熟国に近くって、成長率が低いと。アフリカ全土で行くと、成長率が高い。そうすると南アフリカにいる人はマルチプと言うのですけれど、利益に対して何倍というのが低いです。と言うのは、そこしか見ていないからコンセプトギャップですよね。我々は、南アフリカはベースで、そこを買って全アフリカをカバーする基地にしようと思っているから、だから、安かったらいいじゃんというので、その成長はそんなものだよねと。こう思っていると。逆に西アフリカ、東アフリカを買いましょうというのがアフリカに行った理由です」
反町キャスター
「現地で売っているものが、別に南アフリカでも東アフリカでも売っているものというのは、関西ペイントというブランドで売っているわけではないですよね」
石野氏
「いや、違います」
反町キャスター
「そうすると、関西ペイントとしてのメリット。これは、結局はそこの利益ということになるんですよね」
石野氏
「利益と購買力、それから、ノウハウの展開、いろんなところにいろんな知見がある。この3つですよね。1番はお金でいけば当然、それは配当。それから、連結でいけば連結の積み重ね。それから、その他でいけば購買力。ボリュームが増えることで、それがメリット、まさに出ますよね」
反町キャスター
「関西ペイントの品質のクオリティを、南アフリカのペイントメーカーに要求はしない?」
石野氏
「しない、しません」
反町キャスター
「でも、人を派遣するのですよね?」
石野氏
「しません」
反町キャスター
「人を派遣しないのですか?資本提携だけですか?」
石野氏
「資本提携だけ。資本提携とか」
反町キャスター
「技術の供与とか、そういうのは?」
石野氏
「あり得ますよ。たとえば、自動車塗料は向こうでやっている、あるいは補修というのをやっている。防蝕をやっている。そうすると、ウチのやつがいいのがあるから、持っていきます。でも、向こうのいいやつもある。だから、持っていきます。それは互いにシェアをしますと。ベストプラクティス。商品だけではなくて、ビジネスプラクティスも違うんですよ。たとえば、日本だと建築屋さんと単に塗装屋さんという。ところが、向こうは、たとえば、ネイルのあれみたいにすごくディスプレイをするとか、いろんな売り方が、あるいは機関紙を出すとか、そういういろんなプロモーションの仕方をやっている。だから、そういうこところは学びましょうと。あるいは良い色を持っている。欧米的な、我々が言う中間色に近い色と言っているのですけれど、日本ではないような非常に良い色を持っている。それを持っていきましょうとか。だから、日本の方から持っていくばかりではなくて、お互いですよね」
秋元キャスター
「現地から学ぶものがあると言っていましたが、海外の地域の特性から生まれた製品というのもあるということですが」
石野氏
「これは虫よけと言って、実は殺虫剤から何から入っているペルメトリンという、実は住友化学さんがオリセットネットという有名なマラリア対策の開発。この中に入っているのですが、WHO(世界保健機関)も認めている材料を住友化学さんに実は縁があって、お願いしてもらって、それを南アフリカで展開したんです。何が起こるかと言うと塗った塗料と、塗らない塗料で、くっついた蚊が、吸いましたか、吸いませんかという、蚊よけのところは全然、吸っていなかったでしょう」
反町キャスター
「2つの部屋があって、それぞれの部屋の内側に、その虫よけの塗料と、普通の塗料と別々に塗って…」
石野氏
「壁に塗ったんです」
反町キャスター
「壁に塗って、その壁にくっついているわけですね?」
石野氏
「だいたい蚊はずっと飛べないです。9割ぐらいは壁に止まる、休む習性がある」
反町キャスター
「その落ち着いたところに手を入れるわけですね?」
石野氏
「そうです。左側は一般塗料ですから止まっていた蚊が飛びまわって手について、吸うんです。右側はウチの蚊よけ塗料ですから、それに止まった蚊は、たとえば、手にはあまりつかないのだけれども、ついても吸っていないです」
反町キャスター
「それは塗料に含まれている薬剤が、蚊の吸血能力を麻痺させるとか?」
石野氏
「そう。神経毒薬みたいなものです。止まったら、足から入って、脳をやって、それで麻痺させちゃうんです。これは我々だけではなくて、殺虫剤だって皆同じ考え方は一緒です、メカニズムは」
反町キャスター
「殺す目的の薬ではなくて、蚊に吸血させないように仕向ける薬?」
石野氏
「そうです。アメリカのEPA、environmental protection agencyからリクエストがあって、approvalを取れと言うので、取ろうとしています。すごく期待をされているんです」
反町キャスター
「それはアメリカは蚊の病気が心配なのですか?」
石野氏
「ジカ。だから、もともとこれはアフリカで、マラリア対策で開発させたんです。それを国際会議、我々はやっていますから、やっている時にマレーシアの連中がこれいいと言って、自分で、だから、ベストプラクティスを皆でシェアし合うから。早いですよ。それを持ってきて、それでデング熱用にやったんです。それを現在ジカ熱用に転用しようとしているんです」
反町キャスター
「一企業の活動の域を超えるような、それこそWHOだったり、様々な難民支援の一環かもしれないとか、そういうビジョンの中の商品みたいな、国際救援物資みたいな、イメージではないのですか?」
石野氏
「まったくその通りで、ウチは環境を標榜しているのですけれども、単に毒性がないと言うのではなくて、そういう皆の健康とか、それを守るという積極的な意味で、IPPF(国際家族計画連盟)という、実は赤十字と並ぶNGO(非政府組織)があるのですけれど、そこがウチとタイアップしてやっているんです。今回のアメリカのEPAもそうですし、政府がらみ。アフリカでも、政府が前回TICAD(アフリカ開発会議)で行ったのですけれど、すごく皆さんの関心は高い。ウチはちょっと余談ですけれど、もう1つ、漆喰塗料、漆喰を塗料化しているんですよ。漆喰って本来、左官ですけれども、塗料化しているんです。あれすごいのは結露しない、臭いを消す、加えて抗菌と言って、ウィルスを殺します。単に、バクテリアとか、カビとかを殺すのはいっぱいあります。でも、ウィルスを殺すというのはほとんどないです。ストロングペーハー、アルカリがすごく強く、AIDSもエボラも、SADSも、MARSもノロも、30分で99.6%殺すんです。これをアフリカのホスピス、AIDSホスピスに、外務省の援助で塗って、すごく感謝されているんです。そういう形でアフリカとか、そういうところに、ウチはドンドンと衛生、それから、環境に役に立つ企業になろうということで、現在大きいのはこの2つです」

日本企業グローバル展開の課題
反町キャスター
「社会的な意義の高いビジネスは儲かるのですか?」
石野氏
「やはり儲けないとダメなので、IPPFというのが、赤十字と同じようにNGOで、彼らの新しいコンセプトは、それを売りたいと。売ることによって、単なる寄付金だけではなくて、商売でそれを持続的にそれをやる。我々もできるだけお金は、暴利は貪らないけれど、適正な額を。競争力のある商品をつくって、そういうところに売っていただいて、皆の健康をよくしていきたいと、こういう考えです」

いま求められる『意識改革』
秋元キャスター
「日本の企業が既存の市場、既存の製品だけでなくて、あらたな成長の軸を求めるとしたら、どんなことが必要だと考えますか?」
石野氏
「一般論では、ちょっと難しいですね。自分の立ち位置、それから、アンテナを張って、そこでスタディをして、当たり前ですけど、自分の強みを活かして、どうやってそこを押していくかと、現在の商品でいいのか、差別化をどうするか。そういうことしか言えないと思いますよ。1番は、アンテナを張りながら、新しいことをやるのだという意識を持ってやれるかどうかということだと」
反町キャスター
「難しいですよね。過去の、そこに至るまでの成功体験を潰さなくてはいけないですよね?」
石野氏
「おっしゃる通り」
反町キャスター
「それは痛みを伴いますよね?」
石野氏
「そうですね。うちも海外に出して、自動車以外をやりだすと、本当に感じるんですよ、コストが2割、3割違うと。自分のせいではないと。あれは相手がディスカウントしてバカだと。うちの売り方がバカだとか、いろいろなバカがいっぱいつくんですよね。ところが、それを3か所、いろいろなところでつくるんですよ。そうすると、同じものをつくるのにマレーシアでも、韓国でも、中国でも皆、3割は負けていると。皆バカかあいつらはと言うと、そうではないでしょう。と言うところから始まって、ひょっとしたら自分達の仕様とか、つくり方とか、材料とか、違うのではないのと。違うのではないのというところから始まるんです。でも、なかなかそれは進まなくて、うちの中で1番進んだのは何かと言うと、グローバル会議をしょっちゅうやっているんです。ベストプラクティスは、目利きの人が実はうちにはいて、すごい人がいるらしい、1人。その人がい行って、ここ、ここ、ここと、アフリカ、インド、中東、東南アジア、いろいろなところに行って、お前のここがすごいね、お前のここがすごいね、というのを皆で発表しあうんですよ。そうすると、製造は製造で、お前のところはすごいよと、建築用塗料はここがすごいよと、こういう話をするんですよ。3年ぐらいかかるのですけれども、見ていて、なるほど、日本だけではないのだと。皆が話を聞いているとだんだんわかるんですよ。その会議を海外でやるのではなくて、日本で全部やらせているんです」
反町キャスター
「(日本に)集めるのですか?」
石野氏
「集める。海外の連中は20人ぐらい、日本人は30人ぐらいいる。関係がなくても座っておくと。要するに、自動車用塗料の人も、自動車補修も関係がなくて、製造の人でも技術の会議に出ているんですよ。そうすると、いろいろなところで日本がベストとは限らないねと。自分で腹落ちするんです。言われても腹落ちしないです。自分で見ていて、苦労しながら英語がだんだんわかってくるんです。言っていることはたいしたことはないのだから。皆同じ業界なのだから、わかるわけですよ。でも、なかなかこいつはすごいなとなってわかってくると認めるんですよ。多様性を認めだすんです。それが自然にできているんですよ。すごく変わってきつつあるんです。それはどうやって変えたのですかと、自分で変わりつつあるんです」
反町キャスター
「その状況に至るまで何年かかるのですか?」
石野氏
「3年かかりました」
反町キャスター
「グローバル会議は毎月ですか?」
石野氏
「年に1回とか、2回。でも、それは自動車用も、自動車補修も、工業用、建築用も、防蝕用もありますね。それぞれやりますという話です。それは事業部ですよね。それに対して技術、商品企画、製造、購買、管理系、それぞれのところでやりますよと。こういうように、それも自然発生的にできてきた。最初は購買とか、商品企画とか、マーケティングとかでやっていた。いや、自動車補修は自分でやるのだと、やりだしたんですよね。しょっちゅう、年にいろんなところでやりだしたんです」
大山解説委員
「2000億円から3000億円の日本の製造業の会社に話を聞くと、なかなか海外に行くぞと言うと、社内の中年以上の方に結構アレルギーが増えてしまってという話をよく聞くのですけれども。そういう感じはないのですか?」
石野氏
「ないですね。アレルギーは全然ないです。アレルギーはないのだけれど、海外の人材を活用しているんですよ。アレルギーはないのだけれども、海外の人材を活用しているんですよ。アレルギーがなければ、出ればいいのだけれども。本当はそうではなくて、現地の人間に任せておけば1番いいです。ウチは、インド以西は日本人のマネージメントはゼロです。インド、中東、トルコ、南アフリカ、今回買収したヨーロッパに日本人は出していないです。要らないです。ただ、インドは日本人の自動車屋さんのお客さんがいるから、エンジニアは出します。それから、生産の部隊の人も1人出します。必要に応じて出すので、日本人ではなくて、その場の人が1番わかっている、マネージメントはわかっている、ポイントがわかっている、そういう人に我々の考え方をわかってもらうのが1番いいです」
反町キャスター
「グループとしての一体感はどう維持するのですか?」
石野氏
「今のベストプラクティスです。そうすると、皆自分がやっていることを認めてもらえる。それから、数字的には購買のコストが下がる。大きいです。いろいろな商品がウチだけではなくて、南アフリカ、インドが持っているそれぞれを共有できるんですね。そうすると、競争力が上がっていく。1番大きいのは認めてもらうということ」

石野博 関西ペイント代表取締役社長の提言 『謙虚に学んで 勇気を以って 変革する』
石野氏
「学ぶ気持ちがないと学べない。いろいろなことがいっぱいある。そのためにはアンテナをよく張って、謙虚にいろんなことを学ぶ。それから、変えるというのは勇気が要る。だから、勇気をもって変える。ウチの社内で言っていることです。変革していくためには勇気をもってやりましょうと、そういうことです」
秋元キャスター
「アンテナを張るとは具体的にはどういうことをしたらいいのですか?」
石野氏
「ウチの場合は、情報をいろいろなところからとれるようになったんですけれど。もう1つは、そのつもりでないとダメなんですよ。極端に言うと、日本で製造というのはPDCAがあるのですが、PDCAで全部まわしていると、Plan、Do、Check、Actionですが、どうしてもこれまでの延長しかいかない傾向にあるんですよ。だから、私の場合、OAPDCAと言っているんですよ。Observation、Analysis、わざわざそれを入れてやりましょうと。結構、他の会社さんもそれを見ていて、入っているなと。同じことを考えているなと。Observeして、それでアンテナを張るということです。それを分析して、それからプランに入りましょうと」