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2017年2月15日(水)
金正男氏『毒殺』の闇 ▽ 論戦…トランプ経済

ゲスト

佐藤正久
自由民主党副幹事長 参議院議員(前半)
武貞秀士
拓殖大学特任教授(前半)
平井久志
ジャーナリスト(前半)
片山さつき
自由民主党政務調査会長代理 参議院議員(後半)
野口悠紀雄
早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問(後半)
浜矩子
同志社大学大学院ビジネス研究科教授(後半)


前編

緊急検証『金正男氏殺害』 その時何が起きたのか?
秋元キャスター
「武貞さん、今回の金正男氏の暗殺。これは誰が、何のためにやったと見ていますか?」
武貞特任教授
「もし北の行ったことであると仮定すれば、こういうタイミングで、こういったことを敢行しなければならない、南と北の最近のせめぎ合い。たくさんの人が中国の北朝鮮レストランから脱北して韓国に行った。ロンドンの北朝鮮外交官がおそらく韓国側のいろいろな説得と言っていいか、工作と言っていいか。そういったものの前で、韓国に行くというようなせめぎ合いの中で、そういった韓国側の積極的な働きかけに、金正男さんがその網にかかった結果、非常に北朝鮮が、それは困るね、ということでこれは少し積極的な策を講じなければならないと、出た可能性が私はあると思いますね」
反町キャスター
「積極的な策というのは、つまり、暗殺をしたという意味ですね?」
武貞特任教授
「この世にいては困るという判断を下したという可能性はあるでしょうけど」
反町キャスター
「つまり、金正男さんは南、韓国からのアプローチに応える形で、経済的な理由、動機、なのかはわからないですけれど、韓国からのアプローチに靡きつつあるという、そこが暗殺のトリガーになってしまったと。そう見ているということですか?」
武貞特任教授
「可能性はあります。特に金正男さんは最近、資金が枯渇していて北朝鮮からの送金もほとんど途絶えたと言われていますし、ホテルに泊まっても、百何十万円かのホテル代を払うことができずに退去を命じられた。お金に非常に困っていて、旅行も非常に質素な、簡素な、家族と一緒にというのも控えていたぐらいで、韓国にしてみればこれは北朝鮮の面子を崩すために、金正男さん、もう少し韓国に良いことを発言してくださいよと。北朝鮮批判の発言をしてくださいよと。韓国側としては働きかける絶好のチャンス、絶好の機会ですよね。そうされたら、こういうタイミングで非常に困るのは北朝鮮ですよね。こういった南と北とのせめぎ合い、この1、2年、非常に熾烈になってきましたよね。その時に、微妙な立場に置かれてしまったのが金正男さんだった。だから、権力抗争とか、北朝鮮の体制の弱みというものを非常に気にした北朝鮮の指導者がどうしてもこの邪魔者は消さなければならない。将来の亡命政権のリーダーになるかもしれない人を消さなければならないというのは、これは韓国の人達がつくった小説ではないですか」
平井氏
「僕が非常に当惑したのは、今回の殺害で、北朝鮮にあまりプラスになることというのは、ないですよね。北朝鮮はいろんな粛清を随分やってきましたけれども、金日成主席の家系につながる人については殺していないですよね。それは、白頭の血統という、そのことが政権を支える1つのイデオロギーですから。金日成主席の血統に対して危害を加えるというのは、1つの国家的なイデオロギーに反しますから。ですから、過去にもいろんな闘争はありますけれども、殺すということはなかった。そういう意味では、非常に驚いたんですね。しかも、明日は金正日総書記の誕生日でしょう。ちょうど金正恩さんという人は、これから自分を偶像化、人民に自分を崇拝するシステムをつくっていかなければいけない。そうすると、先ほど言った、その根拠、白頭の血統だということになるわけですね。ですから、同じ、しかも、長男であるという嫡流を消すということが、人民の最高指導者に対する忠誠にプラスになるのだろうかと思うと、あまりなるようには思えないですよね」
反町キャスター
「北朝鮮が暗殺する理由がない?」
平井氏
「それと、しかも、金正男さんは、最近自分がむしろメディアに出ることも避け、言動にも注意していましたし、国内で彼を支える勢力というものがなくなってたわけで、敢えてここで国際的な非難を被る、暗殺という一種のテロですね、をやるという理由が非常に考えにくいという」
反町キャスター
「武貞さんが言われた事実上、韓国に接近し過ぎる、それを北が嫌ってやってしまった、この見立てはどうですか?」
平井氏
「過去にインタビューで、韓国の記者が、韓国亡命の意思があるのかという質問をした時に、言下に何を言っているのだ、みたいな答え方をしていて。生理的にそれを受けつけないというリアクションを彼はしているんです。そういうことを考えるとちょっと考えにくい。ただ、もし金正恩さんが殺害をするとすれば、1つあり得るとすれば、要するに、張成沢さん、粛清ということで極めてこだわっているわけですね。現在でも張成沢さんの業績を全部否定するようなことをやって、叔父さんを殺したことに対する、執着心がありますので。金正男さんという人は、ご存知のように張成沢さんとその夫人の金高英さんによって支えられてきて、それが送金を受け取っていたと言われているので、そのラインというものはあったわけですよね。だから、そういう中で、張成沢さんの流れと何か我々の知らないような何かコネクションのようなものがあったのかなというぐらいしか、私はちょっと思い浮かばないですよね。このことによって金日成主席の、直系の孫を殺してしまったわけですから。そういうことがすぐには北朝鮮の人達にはわからないでしょうけれども。長い時間が経てば一般の国民も主席のお孫さんが殺されたということは、北朝鮮の成り立っているイデオロギーというものに、ひびを入れさせることになるのではないかなと思いますね」
反町キャスター
「敢えてそのリスクを取ったということは、それをきちんと北朝鮮国民がもし知るにあたっても、それはしょうがないよね、排除されてもと、そういう後づけでもいいから、その理由はつけなければいけないわけではないですか」
平井氏
「そうですね」
反町キャスター
「後づけでもいいとは言いませんが、後づけになるかもしれないけれど、北朝鮮の国民がそれなら排除されても仕方ないとする理由というのは何が考えられますか?」
平井氏
「それがわからないのは、張成沢さんの場合こういう悪いことをしたのだと発表をしたんですね。今度の場合は、おそらく沈黙を守ると思います。彼はこんなに悪いことをしたのだという発表があるとはちょっと考えられない」
佐藤議員
「平井先生に見方に近いですけれど、外務省の説明でも現在、北朝鮮はまさに明日の、金正日の誕生日のお祝いムードですごく盛り上がっているという時に、本当に、直系の、まさに白頭山直系の長男を殺すということは、これがばれたら盛り下がっちゃうわけですよ。実際に韓国の国防軍が国境にスピーカーがありますよね。あれを使って明日から、金正恩氏が兄貴を殺したということを放送すると言うんですよ。タイミングを合わせて、明日。これは誰が考えたって、北朝鮮にとって、儒教社会でしょう、儒教社会で長男を殺すということは極めてマイナスです。しかも、白頭山の直系を殺すということはお祝いムードに水を注すわけですから。このタイミングは非常にまずいし、しかも、韓国の方は現在、大統領選の動きがありますね。こういう暗殺があれば韓国の中の保守層が勢いを増す可能性があります。だから、あまりタイミングとしてはよろしくないという時に、なぜこのタイミングでやったのかと。非常に私も最初、聞いて疑問を感じました。可能性はいろいろある。これはわかりませんが、指導者というのは猜疑心がどうしてもあるわけです。自分が絶対的な力を持っていたとしても。特に現在ドローンで自分が暗殺されるかもしれないと、いろんな猜疑心があったという話が聞こえてくるので、そういう中で万が一、本当、可能性はごくわずかですけれども、そういう中で特に兄弟というのは仲がいい場合と仲が悪い場合があるではないですか。特にお母さんが違っていて、どちらかと言うと、お父さんは長男をずっと可愛がっていて、自分達3人兄弟は別な扱いをされてきたというところも背景に遠因があるのかどうか、という話も言う人はいます。よくわかりません。そのぐらい今回の暗殺の理由というのが極めて薄い感じがします」

金正恩氏の思惑と北朝鮮の行方
秋元キャスター
「今後、北朝鮮はどういった動きを見せるのか?2011年に金正恩体制が発足したあと、それまで政権の中枢を担ってきた幹部達が次々と処刑をされてきました。韓国聯合ニュースによりますと、大きな衝撃を与えましたのは、2013年に金正恩氏の叔父でナンバー2と見られていました張成沢氏が処刑されたことでした。その後も、2015年4月には当時、北朝鮮人民軍のナンバー2の玄永哲人民武力相が反逆罪で処刑されています。その翌月に崔英健副首相も処刑されています。昨年、副首相でありました金勇進氏が処刑されています。金正恩体制になって処刑された幹部、2012年に3人、2013年にはおよそ30人、2014年にはおよそ40人、2015年におよそ60人とされているのですが、平井さん、今後もこういった恐怖政治というのは続くと見ていますか?」
平井氏
「昨年、党大会がありましたから体制の整備が整ったということでありますから、少しは安定するのではないのかなという気がしますけれども、ごく最近でも国家安全保安部長が解任され、大将から3ランクぐらい下がった。それは粛清とまではちょっと言えないようなので、降格で終わっているので、そういう自分の起用した人達でも地位を上げ下げして、そういうことで権力を強化していくという作業、だから、常に固定したメンバーで、安定していくということはないかもしれないのだけれども、これまでの5年間で起こったほど、酷い起伏はなくなっていくのではないのかなという気はしますけれどもね。ただ、そういういろんな幹部、用兵の術を使って権力維持をする努力はするだろうと思いますね」
反町キャスター
「武貞さん、30人、40人、60人と、幹部がいなくなるのではないかと心配する気はないですけれども、これは、要するに、これだけの人数を毎年、毎年、処刑していくということは政権が、金正恩体制が強化されていると見た方がいいのか。不安定さが増していると見た方がいいのか、どちらですか?」
武貞特任教授
「強化されているんですね。軍人を2、3週間ですぐに昇任させたり、降格させたり、非常に幹部の五指に入る人を更迭する、また、復活させる、チェ・リョンヘ国家体育指導委員会委員長がいますけれども、ベスト5の1人に復活しましたけれども、簡単に幹部とか、あるいは自分の家族の一員であった叔父の張成沢さんの粛清をするといったようなことまでしてしまう。我々にとって驚きで、軍人がすぐに少将から1つ上に3週間で上がるなんて考えられないですよね」
佐藤議員
「ありませんね」
武貞特任教授
「そこまで人事を、全て決定して、すぐに動かすぐらいの権力を掌握してしまったのが金正恩委員長だと見れば、このめまぐるしい更迭・昇任・降格・復活・あるいは粛清という謎が解けると思いますよね。これは権力抗争の結果ではない。ただ、それが長期的に見て内部的な不安につながるかもしれない。それは、可能性はありますね。将来の問題として」
反町キャスター
「昇進した人だって、俺が3日後、どうなるんだと思いますよ」
武貞特任教授
「そうですね」
佐藤議員
「要は、ナンバー2がいない。ナンバー1だけですよ。ナンバー2をつくらないんですよ」
反町キャスター
「グルグル回すと、そういう意味ですね?」
佐藤議員
「2011年に金正日が亡くなった時、その棺を運んだ車、10人ぐらいが周りにいたのですけれども、金正恩を含めて。そのうち、だいたい7人は殺されていると。ほとんど軍人です。生き残っているのは金正恩と文民の2人ぐらいだけで。そのぐらい軍に対しての脅し、締めつけはすごく、つまり、ナンバー2を絶対つくらないというのが、彼の手法で、独裁体制はドンドン強化されているという方向にあると思います。ただ、先ほど、言ったように、韓国の大統領選挙がありますから。これが北に近い、親北の候補が勝つというための工作は間違いなくやっています。そういうことを考えると極端な動きというのは、2016年よりはやりづらい。うまく静かな感じで野党が勝つという方向を」
反町キャスター
「その状況は終わっていませんか?ここまで派手にやっちゃったら」
佐藤議員
「昨年はミサイルを20発以上撃っているんですよ。昨年と比べたら、まだまだ静かだし」
反町キャスター
「核・ミサイルに関しては、ですよ」
佐藤議員
「今回のミサイルについても確かに技術は上がっています。でも、今回、あれ1発です。抑制的な感じはある。ただ、次の3月、4月は米韓合同軍事演習がありますから。その時は何らかの対応をとらないと、彼の面子がありますから。そのへんの動きは何かあるにせよ。私は、2016年よりは、今年はある程度抑制的な動きをするのではないのかなと。たぶん中国も、北朝鮮の方にあまり派手にやるなよということは、メッセージぐらいは送ると思いますよ」
秋元キャスター
「これまでの北朝鮮を巡る動きですけれども、元日に金正恩委員長が、新年の辞の話で、大陸間弾道ミサイル、ICBMの発射試験が既に最終段階にあると明らかにしました。また、今月に入って、12日に弾道ミサイルが1発発射されています。13日、金正男氏が殺害され、さらに明日、故金正日総書記の誕生日にあたるということですけれど、平井さん、今後、北朝鮮はどういった動きに出てくると見ていますか?」
平井氏
「今年は、あまり大きな、党大会みたいな政治行事はないでんすね。それで8月に白頭山偉人称賛大会という金日成主席、金日成総書記を称える、海外から人を呼んで、そういう大会を計画しているんです。金正恩さんの偶像化作業の滑り出しというか、そういうことをやって本当の偶像化ということにいき着くためには、彼の伝記が出ないとダメなので。年齢であるとか、出生地であるとか、お母さんの問題であるとか。どういう成長過程を通ってきたかというと、人民に崇拝させるようなストーリーをつくらなければいけないので、そういうものの出発。国内的にはそういう年ですし、外交の面では、先ほどもおっしゃったように韓国の大統領選がありますし、トランプ政権にどういう対抗軸をつくっていくのか。トランプさんというものを北朝鮮も読めなくて困っていると思いますから、そういう意味では、ある意味では、チャンスであり、危機であるんですね」
反町キャスター
「軍事的な挑発行動というのはやるのですか?今年も。昨年並みに」
平井氏
「それほどはやらないと思います。佐藤先生がおっしゃったように。ただ、3月、4月の米韓合同軍事演習に何もしないということもないのではないか」
反町キャスター
「3月、4月は韓国大統領の弾劾のプロセスを考えると非常に重要な時期にかかる可能性はありますよね。この時期にいろんなことをやって、軍事的な、北は軍事的な脅威があるぞと、韓国国民にある意味、アピールすることが、結果的に自分達に強く敵対する大統領をまた立ててしまうという政治的な判断、それを北がするのか、しないのか、どう思いますか?」
平井氏
「すると思います。ですから、南の政治情勢と、今回も高く撃つロックテッドで、500kmに制限したりしているので、日本列島を頭越しで飛ばすようなことは逆にしないで」
反町キャスター
「それは配慮の結果なのですか?」
平井氏
「それは、隣国でも発表されていますから。そういう、おそらく南の政治状況にどこまでであれば、決定的な自分達のマイナスになるかということを見積もりながらも、しかし、これを何の対応もとらないという可能性は低いと思いますので、ほどほどの抑制した、挑発というのですか、そういうことをとる可能性が1番高いのではないのかという気がします」
反町キャスター
「武貞さん、今年の北朝鮮、軍事的な挑発行動、と敢えて申し上げますと、核だ、ミサイルだというのはどういう展開をすると見ていますか?」
武貞特任教授
「韓国の内政を見ながら、軍事行動、活動を考えるというのは、1つの指摘された要素ですけども、もう1つは、トランプ政権、北朝鮮の目的というのはアメリカのワシントンに核を撃ち込む能力を持ってしまえば、もう警察官をやめますとトランプさんは言うに違いないということで、大陸間弾道弾を見せつければ、トランプさんは米朝協議をしなければいけないのではないかと出てくるに違いないという計算。これは戦略ですよ、核の。これが北朝鮮にはあるわけですね。ですから、軍事行動というのは、北朝鮮が1番大きな、やるか、やらないか。訓練も含めて、ミサイル発射を含めて。基準はアメリカが交渉に出てきそうなのか。トランプさんの先週の発言はどうだったのかということの方が大きな要素だと思うんですね」
反町キャスター
「そうすると、この間の、12日のミサイル発射というのは、これは日米首脳会談に触発されたのですか。それとも、前の米中の電話協議、何がトリガーになって、北がミサイルを撃ったのですか?」
武貞特任教授
「日米でしょうね。ですから、ご指摘のように、大陸間弾道弾ではなくて、非常に抑制をした形で、気分の良い日米の首脳会談のところに、北朝鮮のことを忘れないでね、という抑えたミサイルで、北朝鮮の存在をアピールしたと」
反町キャスター
「すごく違和感がありますよ。忘れないでねという言葉とか、抑えたとか」
武貞特任教授
「私が思っているのではなくて、発想は、そういうものだという説明で、そうしないと非難のメールがドンドン入ってきちゃうような気がするから。それは、訂正してもいいですけれども、それは北朝鮮の発想で、危ないものを見せれば、やがて相手はいい条件で自分にすり寄ってくるに違いないというのが基本的な発想。具体的には、ワシントン、ニューヨークを破壊するものを持ってしまえば米朝関係正常化以外にないなと。トランプさんなら言いそうだと。まだ北の指導部は計算しているのではないでしょうか。ですから、アメリカの姿勢如何で、軍事的に強硬な姿勢に出るかどうかということが決まるのだろうと思います」


後編

日米首脳会談と米国の本音
秋元キャスター
「今回の日米首脳会談、異例の厚遇で、日米の蜜月等も報じられていますけれども、野口さん、経済学者の立場から今回の日米首脳会談をどう見ていましたか?」
野口氏
「少なくとも経済的な問題に関する限りはほとんど具体的なことは決めていないですね。事前には、いろいろな要求が突きつけられるのではないかと予想されていましたね。たとえば、円安の批判であるとか、それから、自動車の輸出の問題であるとか。そういうことは一切、出なかったようで、従って、経済の問題についてはこれからということですね。ですから、これから何が出るかはわからない。その中で、出てくることによっては、非常に大きな影響があると思います。単に日本経済に影響があるというだけではなくて、アメリカ経済にももちろん、大きな影響があると思いますし、世界経済にとっても大きな影響があると思いますね」
浜教授
「ちょっと言葉が悪いですが、同じ穴の狢の同床異夢というのが非常に強いですね。同じ穴の狢というのは、トランプさんはアメリカファーストで、アメリカを再び偉大にするぜと言い、安倍さんは強い日本を取り戻すと言い、同じ様なメッセージを発信しているという意味で、同じ穴の狢ですが、同床異夢というのは目指しているところが違うということですね。トランプさんがアメリカファーストで結構、アメリカに引き籠り、アメリカに余計なものが入ってくるなと言っているのは、実は安倍さんにとっては、トランプさんがちょっとイメージしているのとは違う意味で都合がいい。つまり、日本がドンドン世界に出て行く、軍備も増強をする、プレゼンスを高めるというためには、引き籠り型の人が出てきたということは都合がいいなと思っている可能性は非常に大きいと思いますし、これからたぶんテーマになるであろうTPPも、アメリカ抜きなら威張れるぜという思い。そういうそれぞれの全然違う思惑を抱きながら、双方向接待ゴルフみたいな感じで盛り上がったという。そんなイメージを持ちましたね」
片山議員
「私は、まず就任式から帰ってきて、すぐにいろいろな情報を官邸に伝えて、今度、日米首脳が会うなら、日米はまず経済対話の枠組みを提示するべきで、すぐに日米FTA(自由貿易協定)の約束をしてはダメだということと、あとTPPに固執し過ぎても、向こうは政治的にTPPを受けられないから似て非なるものであってもTPPと言っただけで脱オバマなのだから絶対に受けられないということを申し上げた。それから、アメリカ自身が本音と建て前で、誰もが入ってこれて、誰もが成功できる、完全に開かれた国という建前にも疲れちゃって、半分ぐらいの人が現在の自分達の雇用と所得を保障してくれとなっていて、それが生んだのがトランプ大統領で、トランプ大統領が生まれたからこうなのではないというのを現地で見てきましたから。それはこれだけいろいろと…この政権が最初に躓いても、共和党の中でのトランプ大統領政権の支持率はそんなに悪くなく、それを背負って、それを実現しようとして日米首脳に臨んでくるから、それを考えて対話されるといいですと言ったところ、誰が考えてもそういうアドバイスかもしれないけれど、ほぼ100点ですよね。まず、だってまったく日米については、成長や雇用のための対話でいいと。FTAをすぐに受けてもいない。為替についてもほんの小さな一言をトランプさんが言って、安倍総理が答えると、それだけでマーケットが乱高下して大変な鞘取り合戦の、鞘取り業者しか喜ばない乱高下相場になりますから、それはプロ、プロに任せようということで、それで財務省の上にもいて副総理である麻生さんとペンスさんという常識的な組み合わせになったと。ここに何とか持ち込んだことでもほぼ100点だと思う」
秋元キャスター
「今回の首脳会談の大きなテーマの1つ、アメリカのTPP離脱をはじめとする貿易問題だったわけですけれども、安倍総理が一昨日、プライムニュースに出演時にこのように話されています。『日米が主導して、アジア太平洋地域に自由でフェアな経済圏をつくっていくことの意義について、お互いの理解が一致した。日米2国間ももちろん、排除しないが、同時に今まで進めてきたマルチの姿も否定せず、どういうものができるかということを議論していくことになった』と。野口さん、アメリカがTPPから離脱をしている現在、このマルチの姿というのはどういう可能性があるのでしょうか?」
野口氏
「通常交渉の形と言いますと、皆さん、想像をするのは、TPPとか、FTAとか、あるいは最近ではRCEP(東アジア地域包括的経済連携)と言われていますが、つまり、これらは自由貿易協定ではなくて、ブロック化ですよね。マルチの交渉というのは、本当は全世界的な交渉、つまり、WTO(世界貿易機関)を通じる交渉ですよね。こういうことを言い出すと、お前は理想論的なことを言っていて現実的ではない、という反応が返ってくるかと思いますが、ただ、今後問題になることは原理原則に関することが大きいわけですよ。たとえば、トランプ政権が国境税を課すかもしれない、あるいは関税を課すかもしれない。これは規則から言って、認容されるのかというのは非常に重要な問題ですよね。そういう問題があるんです。だから、私はマルチの交渉の本来の姿である全世界的な交渉ということを皆さん忘れちゃっているのですけれども、原点に返ると」
反町キャスター
「野口さん、今の話だと総理がここで言っているマルチの姿がもしTPPだとすれば、それは間違っているという話になるのであって、TPPはマルチでない…」
野口氏
「ブロック化」
反町キャスター
「そういう意味ですよね。ただ、総理がここで言われているのは、我々の受け止めているのはTPPという意味なのだろうけれども」
野口氏
「たぶん、そうでしょう」
反町キャスター
「その意味で言うと、もしかしたら野口さんの言われるマルチの話までいく可能性というのは?」
野口氏
「現実的にはないでしょう。それは私も認めますよ。ですから、現実的には日米の2国間交渉になっていくのでしょうけれども、2国間交渉で解決できない問題が先ほどの国境税の問題とか、非常に重要な問題が出てくるのです。そういうことを忘れてはいけないということです」
浜教授
「非常に不規則発言。危険発言だと思います。そもそも野口さんがおっしゃる通りで、TPPはマルチではありません。相手限定、地域特定ですから。本当のマルチというのは全方位的に相手を特定せず、相手によって態度を変えずに、全ての貿易パートナーとの間で、同じように貿易を自由化していくと。なぜこうなっているかと言うと、そういう相手特定、地域限定型を1930年代に国々がやたらやった。そのことが世界大戦になってしまったということに対する深い深い反省がある。その典型的な流れが、大東亜共栄圏を目指すという、大日本帝国の方向感であったわけですし、ナチス経済圏というのもあり、それよりちょっと前の段階ではイギリスのポンドブロック、フランスによる金ブロックの形成と、そういう流れの中で戦争になってしまったので、2度と相手特定、地域限定的に経済関係に戦略性を持たせて囲い込みをやるということはしないという合意ができて、その合意に基づいて、現在のWTOの基本理念である、自由、無差別、互恵という原則がある。この3つの原則は、平和のための通商理念だと言ってもいいと思います。それをドンドン崩していくのがFTA方式であり、TPPもその1つです。いわんや、2国間協定というのはやってはいけないことの最たるものです。だから、それもナンセンスですが、でも、安倍首相が抱いておいでであろうと思われるTPPに関する野望ですね。ご本人が、これは、TPPは経済効果もさりながら、長期的に見れば、戦略的価値が驚異的だと言っているわけですから。そこにその想いが出ているわけです。そういう方向に現在行くということで考えれば、そこにアメリカがいないのがラッキーという感じになる。TPPはアメリカ抜きでやりながら、アメリカとは2国間でやってもいいでしょうという流れになるかもしれない。それは最悪の展開で、まともなスタンスであれば野口さんが言われる通り、マルチならWTOしかないでしょうと。皆でWTOに戻りましょうと言うことを、声高に日本が言うことがあればすごく格好いいですが、まず絶対にそうはならないでしょうね」

『米国第一主義』がもたらすもの
秋元キャスター
「ここからトランプ政権が推し進めようとしていますアメリカ第一主義が世界経済、日本経済に何をもたらすのかについて聞いていきます。あらためてトランプ政権が掲げる主な経済政策を見ますと、いわゆるトランプノミクスです。大幅減税と規制緩和。10年で1兆ドルのインフラ投資。保護主義的な貿易政策。このトランプノミクスの中で、特に日本や世界経済に大きな影響を与えそうなのが、アメリカ第一主義による保護主義的な政策ですけれども、これに対しまして中国の習近平国家主席が先月、スイスで行われたダボス会議でこのような発言をしています。『保護主義に明確に反対する。貿易戦争の果てに勝者はいない』と牽制をしているわけですけれども、野口さん、この習主席の、この発言をどう見ていますか?なぜこんな発言をされたのかも含めて」
野口氏
「それは、原理原則を主張するというのは、私は正しいことだと思います。それから、トランプ政策がアメリカ第一主義だと一般に言われているのですが、それは間違いだと思っているんです。アメリカ第一主義はアメリカのためになることをするんですよね。だけど、彼が言っていることを実行すれば、アメリカの経済は弱くなりますよ」
反町キャスター
「この3本柱でやると?」
野口氏
「アメリカに鉄鋼産業が復活するはずないし、自動車産業を呼び戻してもそれでアメリカが復活するはずはないんです。だから、保護貿易的な政策をとることによってアメリカは弱くなるんですよ。決してアメリカは中心主義ではない」
片山議員
「それは正しいですね」
反町キャスター
「アメリカのエコノミストの皆さんはそういう、いわゆるロジカルな…」
片山議員
「それは言っていますよね皆。消費者の利益にならない、高いものを買わされる可能性があるのと、競争で切磋琢磨し、人材もドンドン入れて強くなっていった。現在でもアメリカは潜在成長率が1ポイント高いのだから。その強みの一部をなくすのではないかという危惧は、私はウォールストリートのトップ2人に会ってきましたけれども、皆、言っていましたし、政権にゴールドマン(サックス)がだいぶ入っているから、少しは抑えるとは思いますけれども、それはアメリカを弱くしますねと」
野口氏
「強い部分を壊してしまうというのも重要な点で。たとえば、アメリカを牽引しているのはハイテク産業です。シリコンバレーのIT(情報技術)みたいなものです。そこは移民の人が多いわけですよ。そういう人達がIT革命を実現したわけですね。しかし、移民政策に対する制限的なことを強化して、たとえば、H1Bというビザがあるのですが、それを廃止するとか、制限するとすれば、そういう産業に対する人材の供給が途絶えてしまうから、アメリカの1番強い部分がダメになってしまうわけですね」
反町キャスター
「トランプノミクス、大幅減税と規制緩和、10年で1兆ドルのインフラ投資、保護主義的な貿易政策の3つを立てましたけれども、どれが生き残るのですか?」
片山議員
「減税は必ずやりますよ。減税はどんな論者もアメリカの法人税の表面税率は高過ぎる、税制度がよくないと言っていますから。これはレーガンの時もやったように、おそらく投資を即時償却して、投資をドンドンさせると。表面税率を下げて、アメリカに企業を呼び戻すはするのだけれど、その財源を確保するために、まさか輸出を免税にして輸入に課税しないだろうねというのは皆、言っていて。そこまでしないで調整できるのではないかという論者もいて、議論百出しています」
浜教授
「今のおふたりのやり取りから明らかになってきたと思いますけれども、要は、支離滅裂になっていることですね。あの人の言うことを聞いたらこうかもしれない、この人の言うことを聞いたらこうかもしれない、でも、俺はこれはやりたいという、そういう中で脈絡のない形に経済運営がなっていってしまい、そのことによってアメリカ経済がうまくまわらなくなっていく。そうすると、トランプさんに対しても幻想がだんだんはげていく。そうなってはならない、やっぱり俺はアメリカファーストだぜ、というのでいくと、結局、外に敵を見出す他はないというので、極めて保護主義的になり、その場合の大きなターゲットは中国になっていく」

浜矩子 同志社大学大学院ビジネス研究科教授の提言 『なみだの経済学で』
浜教授
「経済活動は、人のために泣ける人達の営みですので、もらい泣きをすることができる人、人の痛みがわかる人々が経済を運営し、経済活動を営むと。この原則に忠実にやるということが重要だと思いますね。ちなみに、トランプさんは絶対に人のためには泣けない人だと思いますから、安倍さんもそうだと思いますけれども、これは日本政府ではなくて、日本がどう対応するかという意味では、人の痛みがわかるとはこういうことだということを示す、そんな姿勢でいくことが重要なのではないかなと思います」

野口悠紀雄 早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の提言 『原理原則』
野口氏
「たとえば、今後アメリカが日本に言ってくることとして考えられるのは、輸入に税をかけて、輸出企業の税を軽減するようなことを言っているわけですね。これはトランプさんというよりも共和党の案、昔からの。それが現実化する可能性があるわけです。もしそういうことが実際に起こったら日本経済は大混乱に陥るんですよね。そういうことにどう対応できるかということを考えると、自由貿易の原則から言って、間違いであるということを主張するしかないですよ。それに対して全世界の賛同を得るしかありません。だから、日本は、原理原則を曲げてはいけない、言うべきことを主張しなくてはいけない、というのが私の考えです」
反町キャスター
「その考えの延長線上に日本がTPPを主張することはありますか?WTOとか、そういう話?それが原理原則になる」
野口氏
「そういうことです。私の理解では、TPPというのは農産物の関税を軽くして、アメリカから見ればトラックの関税を引き延ばしたというのが実際的な意義だったと私は思うんです」

片山さつき 自由民主党政務調査会長の提言 『共存共栄』
片山議員
「日米の政府がどうあがこうが、グロバール企業、ボーダレス企業、ICT、AI(人工知能)の世界です。何を言ってもこの瞬間、瞬時取引が成り立っていて、日米間の、いわゆるつながりというのは切っても切れない一体化していますから。それを見たうえで、お互い共存共栄できるような、いろいろな取引をしましょうと。今回、虎穴に入らずんば虎児を得ずで、総理は入っていったと思うんですね、リスクを取っても」