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2017年2月6日(月)
櫻井よしこ×中西輝政 『激変世界』の処世術

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト 国家基本問題研究所理事長
中西輝政
京都大学名誉教授

櫻井よしこ×中西輝政 『世界激変』と米国の分断
秋元キャスター
「移民の入国を制限する大統領令について、トランプ政権と司法が対立しています。これまでの動きをまとめました。1月27日に、トランプ大統領は難民の受け入れやイスラム圏7か国出身者の入国を制限する大統領令に署名しました。これに対して30日、ワシントン州が大統領令は憲法違反と提訴しました。この動きにはミネソタ州もその後、続いています。同じ日にトランプ大統領は大統領令に異論を唱えましたイエーツ司法長官代行を解任しました。今月3日には、連邦地方裁判所が大統領令の一時差し止めを命じたのですけれども、これに対してトランプ政権は地裁命令の取り消しを求めて連邦高裁に上訴しましたが、これは棄却されました。トランプ大統領はこの国を危険にさらす判事の判断は信じられないと、もし何かあったら判事と裁判制度のせいだとTwitterで発信しました。公然と司法を批判しているわけですけれど、櫻井さん、行政と司法が対立しているこのアメリカの状況というのをどう見ていますか?」
櫻井氏
「私達は、トランプさんが選挙キャンペーンの時に、酷いことを言っていた時に、いや、大統領になったら周りにいろんなアドバイザーがつくし、いろんな閣僚が就くから、もう少しまともな発言になるだろうということが言われていましたが、必ずしもそうではないということが今回のことでわかったわけですよね。そうしますと、自由の国であり、民主主義のアメリカが、ある程度の説明もなく、本当は十分な説明をしてから実施すべきことですが、ある程度の説明もなく、ボーンとそこに飛んでいってしまったということは、行政側がびっくりするのが当たり前、これからもこのような混乱は続いていくと覚悟しておいた方がいいと思いました」
中西名誉教授
「1つ言えることは、アメリカ憲法というのは18世紀にできているんです。すごく古い憲法で、大統領令で、こんな民主主義の人権を踏みにじるようなことが平気でできるという、そういう憲法。アメリカ憲法は当時、18世紀の時代というのはほとんど他の国は王政、絶対王政の時代ですよね、アメリカだけが民主制と言いますか、大統領制になって。だから、王様と同じような権限を大統領に与えてしまうという、アメリカ憲法の特殊な事情があったんですよね。今もそうですけれど、これはアメリカ民主主義という原則から言うと、本当にアメリカは民主主義なのと。我々がそう問い直さないといけないですよね。あなたの国、これ民主主義ですかと。おそらく大統領が専権でこんなことができるということはおかしいのではないですかと。もちろん、それは司法の場に訴えて、裁判手続きをすれば覆せることはできるのですけれど、その間の世界に与えた影響、あるいは踏みにじられた人権とか、あるいは移動の自由、そういう普遍的な価値観の傷ついた状況というのは修復不可能になりますよね。そういう意味で、アメリカという国の特殊性がモロに表われたので、今後の世界はアメリカの持っている特殊性をどのように扱っていくかという、周りの世界の問題として投げかけられているのではないでしょうか」
櫻井氏
「もう1つ。これは49%の人が支持しているでしょ。支持しない方が少ないわけですよね。この数字というのは、私達から見るとちょっと予想外だったんですよね。これが何を意味するかということを、アメリカを見る時に考えなければいけないと思うんですね。アメリカの人達は本当に、ある意味での恐怖感と言いますか、自分達が攻撃をされるのだと、テロに対してね。という恐怖心を抱いているのと、トランプさんを選んだということは、経済の格差が開いて、自分達は十分に恩恵を受けていないという、既成の政治に対する不満というものが、ここに1つの形になったわけですね。だから、そのような不満と恐怖心というものが、私達が考えるより以上に切迫したものとなって、受け止められているのだと思いますね。これがアメリカを内向きに内向きにしてしまうエネルギー。これはトランプさんが出たから内向きになっているのではなくて、内向きだからトランプさんが出てきたということを、善い悪いはまったく置いて、アメリカというものを、これから読み取る時には頭に置いておかないといけないと思います」
中西名誉教授
「長い目で見れば、そんなに不自然なことでないということを知っておくことですね。うーんと、100年近い前はアメリカもこうなった。だけど、その前は、また、アメリカは開放的だった時代も確かにあるんですよ。ただ、振り子が振っているんです。時代が、時代精神が変わると、何か人々の発想が変わってしまって、もう国を閉じようではないかと。いや、これまで開け過ぎた。だから、これは少しやらないと大変なことになるねというような時代と、いや、世界に広げていかなければならない使命が我々にはあるのだと、こういう循環。私はアメリカ史というのは学者によって違いますけれども、30年ぐらいで振り子が振り返すという、これはアーサー・シュレジンジャーという有名な政治史学者がいるのですが、彼なんかは30年と言うのですが、私はもうちょっと長いだろうと思いますけど、いずれにしてもそういう循環、アメリカ史を見る時の循環性という、大きな目でアメリカを見るということがそろそろ日本人にも必要になっているのではないですかね」

『世界激変』と『トランプ時代』
秋元キャスター
「トランプ大統領は今後、国際社会にどう関与していくのか。これまでの発言や政策を見ていきます。トランプ大統領、大統領選の最中から世界の警察をやめると明言をしています。一方、ホワイトハウスのホームページによりますと、力による平和が基本であり、自ら敵を求めて海外に出ることはないという政策を掲げているのですが」
反町キャスター
「パックス・アメリカーナと言うではないですか。アメリカによる平和みたいな。こういう形でトランプさんが新たな外交、安全保障の柱を立てていくとしたら、お巡りさんをやめます、こういう言い方になってきたとなるとアメリカによる世界の平和というのはなくなるのですか?」
櫻井氏
「パックス・アメリカーナというのはアメリカの下における平和維持ということですね。そうすると、力による平和が基本で、世界の警察をやめるというようなことを言われてしまえば、パックス・アメリカーナはアメリカが終わらせるということですよね」
反町キャスター
「自ら。放棄するとも聞こえますよね」
櫻井氏
「聞こえますね。そうしますと、他に、私がパックス何かをやりましょうと言う国が出てくるわけで、それが中国なわけですね。パックス・シニカと言いますね。中国による平和。このパックス・シニカがこれまでの国際社会のように、たとえば、各国の主権を尊重するとか、国際法を尊重するとか、少数民族を大事にしてあげるとか、私達が考えている価値観を共有してくれるのであれば、それは大国の興亡で、いろいろな軋みはありましょうけれども、いいわけですけれども、そうではないという現実が目の前にあるわけですから、だから、皆がここで、さあ、どうしたらいいかということで、大変不安に考えているわけですね。だけれども、パックス・アメリカーナは、トランプさんの言葉を見る限り、やめると言っている。だけれども、今回に日本にいらした国防長官のマティスさんのおっしゃったことを見るとまったく違うものが見えてきましたよね。マティスさんのおっしゃったことで、日本人はここで安心をしてはいけないのですけれども」
反町キャスター
「非常に安心感を覚えた人が多かったと思いますよ」
櫻井氏
「そうでしょう。だから、尖閣に(日米安保)第5条を適用します。それから、南シナ海のことも国際法をちゃんと守ってやりましょうとか、アメリカは日米安保条約、もっともっとコミットします。日本もやってくださいということですね。軍人が言うことと、トランプさん、ビジネスマンですから、ビジネスマンが言うこと。政治家が言うこと。トランプさんが政治家と分別するかどうかは別にして、非軍人の言うことは違いますよね。軍人の場合ははっきりしているわけですよ、発想が。敵がいて、味方がいて、この中間があって。自分達は自分の国益を守るために何をしたらいいか。すごくロジックがはっきりしています。だから、マティスさんの頭の中で1番の脅威は、たとえば、ロシアであり、次はイスラム国であり、アジアにおいては中国であり、アメリカの築いてきた戦後の秩序、国際法、その他、航行の自由を守るためには中国と厳しく対峙しなければならない。そのためには日本と協力しなければならない。これは当たり前の話です。極めて常識的なことをおっしゃった。それはマティスさんが軍人であるからですよね。ここに経済の要素が加わると、トランプさんは、日本は為替操作をしているではないかと濡れ衣みたいなこともおっしゃるわけですね。自動車はどうだとか、資本の流れはどうだとおっしゃる。これは、別の思惑で言っていることです。だから、マティスさんの言っていることをトランプ大統領がどこまで受け入れるか。ティラーソンさんの言っていることをどこまで受け入れるか。その他の首席戦略補佐官であるとか。たとえば、ピーター・ナバロさんとか、いろんな要に就いている人達の提言をどこまで受け入れるかというのを総合的に見ないとわからないですね」
中西名誉教授
「おそらく現在起こっているのは、アメリカの一極覇権的な構造。これは冷戦終焉後の、過去25年がそうだったと思うですが。それ以前は二極化構造、簡単に言えばそういうことですね。今後の世界というのは、この一極構造が崩れているから、おそらくどういうパターンになるかはわかりませんが多極化していくわけです、世界が。多極化というのは、日本人にとっては大変苦手な世界でもあるので、これは非常に大事な話になってくると思うんですけれど。つまり、価値観においても習近平さんが(スイスのロイトハルト大統領との会談後の発言で、国際紛争の平和的解決で我々は近い立場にあると)言ったといっても、我々日本人にすれば、尖閣諸島の問題もあれば、貿易で中国に散々煮え湯を飲まされてきた経験もありますから。何を言っているのだろうということですが、世界の多くの国は今のトランプさんを見て、習近平発言を聞くと、こちらの方がもしかしたら、まともかもしれないと」
櫻井氏
「まだ、そこまでいっていないのでは」
反町キャスター
「でも、まったく利害関係のない国からすれば、初めて言われた言葉がこれだったら、この人だと思う可能性はありますよね。そうではないと、まるっきり否定はしませんけれども」
中西名誉教授
「中東で、トランプさんにいじめられている人達がこれを聞くと、中国が新しい救世主になってくれるかもしれないと。そういう志向にグッ傾くんですよ。それが多極化というか、ちょっと真空が生じると必ずその真空を埋めようとして、次の覇権国を志す国が入ってくる。これが多極化への移行の1つのパターンです。おそらく大事なことは多極化する世界なんてずっと歴史にたくさん例がありますけれども、日本人の場合は、どうしても、パックス・アメリカーナ。アメリカ一極時代。あるいはせいぜい冷戦構造。そういう時代しか経験をしていないものですから、そういう時代の雰囲気をよくわかっていないことがあるのですけれども、そういう時代になるといろいろ価値観とか、そういうことにあまり関係なくて、プラグマティズムに各国が国益によって動いていくわけですよね。それから、力ということで言っても、同盟関係とか、外交関係も非常に極端ですよ。多極化の流れが二十数年経って、2040年代と私は見ていますけれども、それぐらいの時代に入ってきたら、同盟関係とか、外交関係、親しい国、友好関係、こういうものが非常に自由に組み替えられる。自由ではないですけれど、頻繁に組み替えられるていく。そういう時代というのは、たとえば、近代の国際政治の歴史を見えればかなり長くあったわけですよね」
反町キャスター
「いつ頃、そういう時代があったのですか?」
中西名誉教授
「19世紀、国際政治はそういう時代ですね。だいたい100年間、そういう時代が続きました。イギリスがイタリアと同盟を結んでいると思ったら、今度、イタリアはドイツと同盟を結びます。あるいは日本、日本人の経験で言えば、日清戦争のあと三国干渉というのがありましたね。ドイツ、フランス、ロシアが清国から日本が獲った領土を還せという三国干渉。あれも本当はドイツとフランスは敵国というか、仮想敵国ですよね、当時の。しかし、それが一緒になって行動して、そこにうまくロシアが乗っかってしまう。しかし、あれが終わると、すぐにまた敵対関係に入ってしまう。めまぐるしい関係になるんです」
櫻井氏
「中西さんがおっしゃったように、多極化に進むんです。超大国がなくなって、幾つかの準超大国みたいな国々が生まれてくる。これをGゼロの世界と言います。そういった世界に移りつつあるというのは、その通りですけれども、その中で中国のいやらしさというか、中国の凄まじくも反人間的な中国共産党の政策というのの怖さを知っている国は、ごまんとあるわけです。だって、周辺の国々だってそうですし、いろんな民族もそうです。それから、散々、煮え湯を飲まされてアジアの、私達の国、日本も、中国を信用している国というのはいないですよね。だからこそ習近平さんがこういったことを言うと、皆笑うわけですよ。これはダボス会議でもそうですし、シンガポールのシャングリラ会議もそうですね。中国の代表が、平和だ何だと言うと、本当に皆、笑いますよね。だから、中国というのは国際的にまったく信頼をされていない。ただ、力があると思われている。その力は経済力であり、軍事力であると思われているわけです。中国が本当にアメリカにとって代わって本気でパックス・シニカを築けるのか。これはまだまだわからないですが、統計的に見れば、軍事的に、中国がアメリカを追い越す時期というものも、経済的に追い越すというのも統計上ちゃんと私達は予測していますね。その予測通りにいくのかどうか。それから、もう1つの国としてインドがありますね。インドはもちろん、現在、中国と比べると経済もすごく小さいですけれども、インドの存在というのは、中国にとってすごく大きな脅威です。そのインドと私達が良い関係を持つ。また中国とは非常に表面上は仲が良いけれど、実際には対立している、お互いに憎み合っていると言ってもいいくらいロシアの存在ですね。ここもそんなに簡単に中国の思惑通りには行かないと私は思いますよ」

『世界激変』… ロシアの狙い
秋元キャスター
「トランプ大統領、ティラーソン国務長官、マティス国防長官の、中国、ロシアに対する姿勢、発言などをまとめました。中国に関してトランプ大統領、ティラーソン国務長官、マティス国防長官はともに南シナ海での埋め立て行為ですとか、軍事活動について批判を強めています。一方、ロシアについて見ますと、トランプ大統領は、プーチン大統領を尊敬しているとしていまして、関係改善に意欲を見せています。エクソン・モービルの前会長でありますティラーソン国務長官は過去、プーチン大統領からロシア友好勲章を授与されるなど、ロシアとは深いかかわりを持っているのですが、議会承認を得る公聴会では友好的ではない敵対的な国であると表現しました。マティス国防長官は揺るがぬ脅威と警戒感を示しています」
中西名誉教授
「もし米露接近ということが現在の状況の中で起こると、ヨーロッパ諸国、NATO(北大西洋条約機構)諸国は皆、浮き上がってしまいます。1番の脅威がプーチンのロシアだと言っているわけです、ウクライナ危機以来。その中で米露が接近をしてしまうと、(アメリカは)NATO同盟を守ってくれるのだろうか。もう早速に、ポーランドとか、ブルガリアとか、あるいはバルト三国の中にもモスクワ詣を始めよう、NATOには頼っていられないから、アメリカはこうなのだからと。だから、アメリカのトランプさんよりも先に、我々はロシアと仲良くしようと。こういうNATOの分断含みの動きがもう始まっています」
櫻井氏
「トランプさんはNATO、アメリカを入れて28の国々に、あなた達は防衛のための十分なお金を払っていないでしょうと。GDP(国内総生産)の2%以上をそれぞれが、防衛費、国防費に使うはずでしょう。それをやっていない。4つだけではないかと、すごく怒っているわけですね。この間、メイ首相がホワイトハウスに行った時に、それまでトランプさんは、NATOなんてあんなもの時代錯誤でつまらないと。破棄するみたいなことを言っていたのがですが。メイ首相との会談では、メイ首相が記者会見で、あなたはNATOを100%支持すると言いましたね。各国のプレスの前で確認を取ったわけですね。そういう話をしているわけですが、であるなら、NATOは何のためにできたのか。対ソ連で皆で守り合って、ソ連を抑制、牽制し、ソ連に負けないようにするためにつくったものを、分担費を払っていない。でも、これから100%コミットしますというのは、NATOを守るということですね。だけども、そのロシアと手を結んで、もし核兵器か何かを削減するようなことがあれば、制裁を解除してもいいようなことも言いましたね。これはとんでもないことで、今、ロシアというのはすごく追い詰められているんですね、本当に。ロシアというのは背に腹を代えられないぐらい追い詰められていて、それだけNATO、EU(欧州連合)諸国、日本も含めた、こちら側の制裁が効いているわけですね。ようやく効くところまできたにも関わらず核兵器何千発も持っているわけですから。こんなものこれ以上、持っていなくてもいいようなのだけれども、むしろ減らす方が経済的に楽なわけですね。こんな本当にゴミの山になっている核をちょっと減らすからと言って、経済制裁を解除したりしたらとんでもない、これはNATOだって怒るし、日本だって怒りますよ。つまり、本当にNATOというものがバラバラになって、ヨーロッパというものがバラバラになって、トランプ政権の、アメリカにものすごく不信感を抱かざるを得ないですね。アメリカにおけるヨーロッパ、ユーラシア大陸における信頼というのはすごく落ちますね」

『世界激変』と日米同盟
秋元キャスター
「先週金曜日にマティス国防長官がトランプ政権の閣僚で初めて日本を訪問し、土曜日には稲田防衛大臣と会談を行いました。日米防衛大臣共同会見では、『東シナ海・南シナ海における中国の活動は安全保障上の懸念との認識を共有』『尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲』『北朝鮮による核・ミサイル開発の進展は安全保障上の重大な脅威との認識で一致』『日本の在日米軍駐留経費負担は他国が見習うべきお手本』『普天間基地の辺野古移設の進展で一致』とこの結果をどう見たらいいですか?」
櫻井氏
「日本中でひと安心というのはありますけれども、これはどう考えても国としておかしいと思っているんですよ。どうしてこんなことを、尖閣の時には第5条を適用してもらえのるかどうかとか、アメリカが守ってくれるのかどうかということを確認しなければ安心できないと。もちろん、そのような状況にあること事態、この70年間、放置してきたことがおかしいわけですが、これは本当にマティスさんがよくおっしゃってくださったと。私もうれしく思います、正直言って。このことを言ってくれなければどうなったかわからないぐらいの危機が隣の国からやってくるわけですからね。隣の国だって、これによって抑止されてしまったと思いますよ。だけど、安心した分、本当に日本はこの安心のゾーンから早く抜け出さないといけないということを感じました」
反町キャスター
「マティスさんは、トランプさんの発言を受けて、周囲の国で誤解が生じかねない危険性があるので、それを直しに来たのだと話したという情報もあるのですが、トランプさんの発言が中国にどういうシグナルになる、危険性を感じてマティスさんは火消しに来たのだと思いますか?」
櫻井氏
「韓国に先に行きましたけれども、本当は日本に先に来る予定だったのを、日本が国会の予定がつかないとか、いろいろ言って、もうちょっとあとにしてくれと言って、韓国に先に行ったわけですが、今回の眼目は日本が第一ですよね。中国に対して、手を出すなよと言ったわけです。私は中国に対してこれは安心だなと思わせてはいけないのがあったと思います。中国に誤解をさせてはいけないというので、それから同盟国である日本の不安を解消しなければ同盟がもたないということでマティスさんは日本に来られたと思うんです」
反町キャスター
「トランプさんが中国と握ってしまったから、マティスに言わせたけれど、チャラねというリスクはあるのですか?」
中西名誉教授
「それは常にありますね。それは多極化世界を一番先取りしているのは、トランプさんです、この意味では。日本にとって良いことではないけれども、非常にドライで国益中心で、理念とか、そういうものより目の前の必要性があれば、誰だって理解してくれるよねと」
反町キャスター
「トランプ大統領の言葉に対する信頼度というものはどうですか?」
中西名誉教授
「トランプさんだけではなくて、国家の行動というものの客観的信頼度を考えるためには、その国の国益をどう考えるか。私はここで尖閣諸島は5条の適用範囲ですよとマティスさんが言ってくれたから、日本人は喜んでいますけれども、抑止というレベルと、政治的レベルと、軍事・防衛・安全保障というレベルと細かい議論が必要かもしれませんが、ざっくり言ってしまえば、私の個人的な見方ですけれど、尖閣諸島をアメリカが守ると言っても、守れるの?と。中国がもし一線を超えて出てきたら、アメリカは無理でしょうと。だけど、できない約束を向こうはしてくれたわけですよね。やるつもりがあるかどうかもわかりませんね。大統領が最後の断を下すわけですから。そういう時に大事なことは、これはいくらぐらいの値段になるのだろうと。おそらく経済ですよね。これをマティスさんに言ってもらったということは、おそらくアメリカのインフラに何億ドル投資をするのかとか、そんな話になるんです。これは日米関係の基本構造にありますよ、こういう裏取引的な話というのは。経済に必ず安保を絡ませるんですよね。1980年代から、中曽根時代からずっと経験してきた。プラザ合意パート2みたいなことを日本で経済人が恐れているというのはまだその記憶が払拭されていないからですよ。今回マティスさんが来られたのは、緊急の必要性があったからです。政権が発足して、こんなタイミングで来られても、向こうは政策ができていませんから、おそらく非常に暫定的な、北朝鮮がミサイルを撃つ、あるいは北朝鮮が崩壊に近づいている、そういう緊急のメッセージを伝える必要があったから来た、あるいは日本の国内でトランプさんになったから、アメリカから離れようというような流れが一気に加速すると、それを恐れて来た」
櫻井氏
「マティスさんの気持ちは信じることができると思いますけれども、軍人が国の政治をやるわけではないですから、信じるべきは何が国益かということですよ。アメリカの国益はなんだろうと。こちらの国益はなんだろうと、国益をどう捉えるかということで、ここで日本は力の発揮のしどころだと私は思っているのです。たとえば、トランプさんの言う経済がどんな交渉になるかはわからないですけれども。TPPはやらない、二国間交渉でやると、アメリカ式の資本主義的な考え方というのをドンドン日本に押しつける可能性はあると思うのですけれども」

『世界激変』と『処世術』
反町キャスター
「日本はどういう物差しを持って、次から次へと出てくる問題に対して対処していけばいいのか?」
中西名誉教授
「これは私が1月に出した本ですけれども、『日本人として知っておきたい
「世界激変」
の行方』の中で詳しく書いているのですが、日本がグローバリゼーションで進んできた、ここまでのそういう流れを今後どういう行き方と言いますか、日本にとっての1番良い市場経済のあり方みたいなもの、そこで非常に大事なのは日本として、大きなグローバルの波はまだまだ収束はしないと思います。グローバルリズムという推進しようとする強い政治力は終焉に向かわざるを得ません、先ほど言った多極化がそうです。しかし、日本としては緩やかな、グローバル化みたいなもの、賢い、慎重で、謙虚な形で現実主義を踏まえながら、グローバリゼーションがこの20年間、あまりに急激に、あまりにも無慈悲に推進され過ぎた。それをハイパーグローバリゼーションと言う学者がいますけれども、そういう話をこの本の中に書き込みましたけれども、簡単に言ってしまうと、日本は日本としての道を、多極化の中で、いわば全方位的外交ですよね。全ての可能性を保持しておく。その中でのキーワードとして、安倍さんが今度アメリカに行かれるということで、交渉になると思いますが、今の日本人の気持ちは、トランプさんがアメリカファーストだから、ジャパンファースト、この原則は踏まえてほしいと。これは日本人の多くの願いではないでしょうか。ですから、安保と経済を絡められてどうのこうのとかいうギリギリした議論よりも日本としての行き方というようなところ、トランプさんに多少説教めいてでも、ゴルフをやられるのなら十分時間はあるわけで、くだけた雰囲気の中で理念の話をする。これは、アメリカ人は好きですから、そういうところで是非日本の本領を発揮していただきたいと思います」
櫻井氏
「日本の理念を掲げてちゃんと言いなさいというのは、私もそれはすべきだと思います。だけれども、日本にそれだけの発言をする力があるのかと。その資格があるのかと問われると思いますね。だって、あなたの国は自分で自分を守れないのでしょう。何を生意気言っているのですかと言われたら、それで終わりです。だから、日本が現在すべきことはきちんと日本的な価値観の旗を立てると同時に、その旗を立てるに値する、自分で自分を守れる体制というものをつくらなければいけない。すなわちそれは憲法改正であり、日本人としての自覚をもう1回、皆が持つということになっていきますね。先ほど、中西さんがおっしゃった尖閣をアメリカが守ってくれると言って、守れますかと。アメリカが守れなかったら、日本なんてもっと守れないです。そうしたら中国に対して何を言ってもしょうがないわけです。だから、そのへんのところを、現実を見て、私達がこういう危機的状況の中にあるということ、本当に東シナ海のことを思うとすごく危機的ですよ。その現実をとにかく見て、これを乗り越えるためにどうすべきかということを足元からやっていくべきだと思いますね。日本がGDPの約1%だから防衛を語る資格がないかと言えば…、あります。それは中国に対して、このようなことをしてはいけない、という言うことと、日本なりに考えるという意味ですね。日本はちゃんと発言をしていくべきですし、日本は経済そのものが大きいですから、1%と言っても他の国々の防衛費、国防費と比べるとかなり大きいわけですから、日本なりの重みというのはちゃんと持っています。持っているけど、日本を守ることを私達にできるのですか。今は多くの国と連携してやらなければいけない時代ではありますけれど、自衛隊の自の字も憲法に書かれていないですよ。皆、自衛隊を尊敬しているとか、親しみを持つと9割以上の人が言っていますけれども、自衛隊は憲法のどこにも出てこない。こんなことがあるのですかということを考えなければいけないということです」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言 『精神的松明を掲げよ』
櫻井氏
「これは議論にも出てきましたけれども、日本なりの価値観。アメリカが価値観を説かないのであるならば、日本こそ価値観を説いて、誇りを持って、自信を持って、掲げ続けなさいと。それをすべき時だと思います」

中西輝政 京都大学名誉教授の提言 『多極化する世界に適応を』
中西名誉教授
「多極化する世界に適応をする必要を強調したいと思います。今日の私の話は、時間軸というのが普通の日本での議論よりは長くとった議論をしているのですが、今後、3、4年は目の前でじっくりと、たとえば、尖閣の問題などいろいろ抑止を効かせて、実務的に、堅実にやらなければいけません。10年ぐらいのタイムスパンで、私は多極化する世界への適応を申し上げたいと思います」