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2017年2月2日(木)
『天下り』問題の本質 官僚人材をどう活用?

ゲスト

河野太郎
前国家公務員制度担当大臣 自由民主党衆議院議員
増田寛也
元総務大臣 前岩手県知事
中野雅至
神戸学院大学現代社会学部教授

『天下り』問題の本質 文科省あっせんの『真相』
秋元キャスター
「今回の文部科学省の天下り問題を検証していくのですが、まず官僚の再就職に関して、何が規制されていて、何が認められているのか、2008年12月に施行された改正国家公務員法の内容から整理していきたいと思います。現職員による他の職員やOBの再就職依頼、情報提供は禁止です。管理職以上の職員が在職中に、利害関係がある企業等への求職活動することも禁止。利害関係がない企業への求職活動は認められているのですが、内定段階で届け出が必要になります。管理職以上だったOB官僚の再就職については退職後2年以内の場合、内定、再就職の段階で届け出が必要になります。また、再就職したOBによる元の職場への口ききなどの働きかけは禁止されています。この点を踏まえて、今回の文部科学省の天下りあっせん問題を見ていきますと、問題になりましたのは文部科学省で大学を所管する高等教育局長だった吉田氏の早稲田大学への再就職です。文部科学省の人事課は、この吉田元局長が在職中から早稲田大学に対して、人事課が直接、再就職をあっせんしていました。ところが、表向きは実際にはあっせんに関わっていない人事課OBのA氏を介して早稲田大学に人材を紹介したということにしていて、その際に文部科学省は隠ぺい工作のための想定問答を吉田元局長、人事課OBのA氏、早稲田大学の3者に用意していたことが明らかになっています。このケース、先ほどの改正国家公務員法に照らし合せると何がダメだったのかということを見てみますと、まず1つ目、現職員による再就職依頼という点と、それから、在職中の利害関係のある企業などへの求職活動に抵触するということです。河野さん、今回、発覚しました文部科学省のケースをどう見ていますか?」
河野議員
「これまで各省庁とも法律で役所が組織的にあっせんをすることは禁止されていますから、一切やっていませんとずっと言い続けてきたんです。いやいや、そんなことはないだろうと、いやいや、それはできないです、というのが、これまでの…、この野郎という感じですよね。それが1つと、今回は口裏合わせをやったんですね。監視委員会が両サイドから訊いていると、辞めてから2か月で行っているというのは、ちょっと期間が短いのではないかと。高等教育局長だった人が大学へ行っているわけですから。いくら何でもおかしいよねというので、両サイドの話を訊いたら口裏合わせをやっているはずなのに微妙にずれている。微妙にずれているところをドンドン突っ込んでいったら、文科省はいろいろやるのだけれども、早稲田の方は、ごめんなさい、と認めました。と言うのは、押しつけられたというところが多分にあったのではないのかと、大学側が。だから、なにも庇う必要はないよねと。だから、もう言っちゃえみたいな、そういう感じだったのではないかと思うのですが」
反町キャスター
「河野さん、一応整理をしたいのですけれど、今回の文科省のケースで当てはまるものというのは、文科省が狙ったのは、このパターンでいくことを狙っていた。OBは、管理職以上のOBで2年以内に求職活動をして、届け出をしたから、セーフだよというパターンでいこうと思ったのだけれども、実は調べてみたら、現職の文科省の職員が噛んでいたということで、ここにも当たっているし、在職中に利害関係がある企業等に対して求職活動をしていたということで、ここにも当たるという、ここを狙って見せかけて、実態はここにあった、こういう理解でよろしいですね?」
河野議員
「そうです。だから、セーフな方でやっているのだよと口裏を合わせることを、一生懸命、虚偽答弁集までつくってやっていたわけですね。ところが、そこは監視委員会が機能していて、いやいや、ちょっと待て、と言っているうちに早稲田側から、ごめんなさい、という話があって、わかったわけですね」
反町キャスター
「河野さん、先ほど、押しつけられたと言いましたけど、今回のケースというのが今回限りのケースなのか。過去にもたくさん、こういうケースがあったのかというのは、これから出てくるのだろうと思うのですけれど。送り出す側の文科省と、受け入れる側の、今回、早稲田大学だったのですけれど、他の大学にもそういうケースがあるかもしれない。送り出す側と、受け入れる側の学校なら学校側の双方の狙い、メリット、想い、どういうものが背景に?利害関係だったと見ていますか?」
河野議員
「天下りの場合は、他にもあるかもしれませんが、これが1つクローズアップされていますけども、文科省と国立大学法人の間では現役出向という名前で、つまり、法律には違反をしていませんと言う、あからさまな押しつけをやっているわけです。名目的には、建前は、国立大学法人の大学の学長さんが是非に、と言ってきたから出しましたという話ですが、国立大学法人になって、独立した組織になって10年以上経っていて、まだ人材が足らないですと言うのだったら、それは人材を育てられない学長をクビにしろよという話だと思うんです。全部、国立大学大学法人の幹部クラスに現役出向という建前をとって文科省から人を押しつけて、その人事は未だに文科省が握っていて、そこで文句を言うと、運営費交付金を減らされていいのか、あるいは補助金、これに応募をしているけれども、それは要らないのか、ということをやっているわけです。それを、天下りで私立にまで広げているのが今回のケースですよね」
反町キャスター
「今回、人事OBのAさんという、名義上というのか、この人の会社に頼まれて人を送ったのだよという形をとっているではないですか。トンネル会社と言ってはいけないのかな、そういうものをつくって、今回このようなことを行うというパターンはいかがですか?」
中野教授
「非常に古典的ですね。昔こういうややこしいことを役所が一時期やった時代があって、文科省が直接絡むのではなくて、この人が入っている財団があって、その上に財団があって、そこに文科省から金が落ちて、文科省が直接関与しないで財団から、ここに金を落としていくと。非常に古典的なやり方ですね。しかも、ここと人事課が密接に絡んでいたことがまた明らかになっている。だから、明確なあっせんだという、潜脱行為と今回、言っているわけですけれども、だから、古典的な天下りの典型ですね」

実態調査の『実効性』
秋元キャスター
「今回、発覚した文科省の不正な天下りへの対応について安倍総理は、国会で、このように発言をしています。『全省庁の権限を背景とした組織的な天下りを根絶しなければならない。外部の目も入れながら内閣人事局が主導して行う』ということですが、この外部の目として外部の弁護士を含む、およそ30人規模の調査チームを結成し、一昨日から調査を開始しました。対象は先ほど、紹介しました国家公務員法が改正され、天下りへの規制が厳しくなった2008年以降に再就職した国家公務員OB全員と現役の職員で、2008年から昨年の9月までの再就職の届け出があったものだけでも1万件以上にのぼるということですね。増田さん、この外部の目として外部の弁護士も参加をすることなのですけれども、この調査チームの陣容をどう見ていますか?」
増田氏
「対象となる人達が膨大ですね。大臣だって現在18人かな。その下に大勢の人達がいるわけですね。弁護士さん、もちろん、外部の目が入った方がいいのですが、ただ、調査自体は各省の、そこにいる人達の協力が相当ないと現実に出てこないし、おそらく普通にやったのでは、弁護士が入っても、これこれできちんとルールが守られていました、という結果が山ほど出てくるようなことではないかなと思います。おそらく今回、だから、それは早稲田大学も相当罪があると思うのですが。その想定問答通り喋ったりして、時間が随分経っているんですね。それから、今回のことが明るみになってからも、だいぶ時間が経って、このぐらいの時間があれば皆、一斉に証拠は残さないように細工をしますからね。いや、まだこれからなので、あまり悲観的なことばかり言ってもいけないですけれども、要は、中の人事課だとか、それから、直近でOBになった人達が本当に協力をして、その役所の存亡に関わるという意識を持つかどうかが調査結果に表れるのではないかと思います」
河野議員
「監視委員会は捜査権限があって、ある程度、強制捜査に近いことができるんです。ただ、人事局にはその権限が、1つはありませんから。その話をしてくれるかどうかというところにまずかかってくるんです。ですから、なるべく早く、疑いがあれば、監視委員会が調査に入れますから。疑いがあるものをドンドン監視委員会に送るのが、1つ大事だと思います。もう1つ、この調査対象の中に受け入れた側、つまり、早稲田大学は別に罪に問われないから喋るわけですね。だけど、文科省からしてみれば、それは完全にルール違反だという。だから、受け入れ側にきちんと話を聞くということをやっていかないとダメだと思うんですね」
反町キャスター
「予算委員会において松野文科大臣から国民の信頼回復をはかる観点で、有識者、弁護士にも調査に関与してもらう。それに対して河野さん、調査に関与では弱いのではないか、泥棒に泥棒の見張りをさせても意味がない、というやり取りがありました。調査に関与では足りないというのは、これはどういう意味なのですか?」
河野議員
「これは2つ、松野さんの答弁で、1つは調査を外部にさせるか、その中の人間が調査をして、それを何らかの形で監修してもらうかというのが1つ。それは外の人間が行ってやらなかったら、世の中から見て、霞が関の人が霞が関のルール違反を調査したら、それはないと言うことになるよねと思っているわけですから。それはやはり外の人間が調べたって、相当これは難しい調査ですよね。だから、それならまず外の人間が調査をして、信頼性、調査に対する信頼性を何とか保てるかどうかというのが1つあると思います。それから、ここは国民の信頼回復をはかる観点でと松野さんがおっしゃったところですが、この前後、大臣は公正性、中立、公正を担保する。公正、公正、何のために外部を入れるのか。たぶん大臣は、朝の答弁の打ち合わせ時間が極端に短かったから、答弁書を読んでいるのだと思うのですが。外の目を入れるのは普通の常識から言えば、その調査がちゃんと行われているかどうか。その調査に信頼できるかどうかのために外部の目を入れているというのが、私の質問の真意もそうですし、世の中の人も、だから、外の人間を入れろと。ところが、文科省の答弁書は調査の中立、公正性を保つためというのがやたら出てくるんですね」
反町キャスター
「それはどういう意味ですか?」
河野議員
「だから、公正に調査が行われたかどうかを担保するために外部の目を入れるというのが答弁書なわけですよ。それはおかしいだろと」
反町キャスター
「それはおかしいですね。調査が関与ではなく、もっと強くやるべきだという、ここの部分。調査に関与ではなく、有識者や弁護士はこの調査委員会がどこまでやるべきだという意味で言っているのですか?先ほど、言われた監視委員会に?」
河野議員
「やるならば、外部の人がまず調査をやる、疑わしいというならドンドン監視委員会に送る。もらった監視委員会の方も、委員長1人が常勤で、あと4人は非常勤ですね。もう1つ、監察官というのが1人だけ常勤の人がいる。ところが、とても手が足りませんから、監察官は政令で人数を増やせるはずです。だから、まずとりあえず政令で人数を増やして、常勤の監察官を。とにかく監視委員会に行けと。人事局なり、文科省の調査で疑わしいというのはドンドン言ってもらって、権限のある監視委員会が調査に出るということをやらないとダメだと思いますね」
中野教授
「全省調査はまったく進まないと思います。内閣人事局に各省が委託しているわけですから。それは、人事課はあっせんしていないと言うわけに決まっていますので、OBもそれを言うわけがないので基本的に何も出ないと思います。今回、文科省、河野先生みたく強くおっしゃる方もいらっしゃるので今回、文科省の調査に関しては、それなりに出るのではないかと期待しています。昔に比べると、見ていると、事務次官のクビのはね方が非常に早いです。昔は、事務次官が辞める時は大臣と対等とか、もっと役所が粘った部分があって、悪事に対しても。それが今回はすごく早いですよ。事務次官、首謀者でもありましたけれども、辞めるのが早いし、文教フォーラムの開催も非常に早いと。政権は相当意識していると思うんです。内閣人事局ができたのはすごく効いていて、人事を完全に握っているので、官邸が。だから、なかなか逆らいづらいと思います、ここは。ここで隠すと、またまたやられますから。文部科学省、文部と科学省が一体になっているので、文部がダメなら科学を持ってくるわけですから、完全に人事を」
反町キャスター
「次官レースですね。たすきがけではなくて」
中野教授
「現在の人事、非常にうまいのは、前の小泉内閣は外部から人を連れてくるんですよ。外部から人を連れてくるとなると、内部は一体化するんですよ、役人というのは。人事をとられないために。でも、今回、内部同士で競わせるので、外部から決して人を入れないわけですよ、競わせるので、官僚同士を。と言うことは、割と内部でもしかしたら、うまく仕組むと自浄作用が出てきて、あと河野先生がおっしゃったように、外部の目を厳しく入れると割合、今回、見せしめの意味も含め、相当出すことを意識するのではないか、文科省に関してはですよ。だから、全省調査はなかなか、これは出ないと思います」
反町キャスター
「それは国交省とか、要するに、合併官庁はそれができるという意味で言っていますよね?総務省もそうかもしれないけれど。そういうところはできるかもしれないけれども、たとえば、外務とか、財務とか、そういうところは?」
中野教授
「でも、一体性を完全に破壊されていますよ、官僚機構は。たとえば、財務省の人事が1番わかりやすい。同期から3人事務次官なんてあり得ない話で、人事に完全に介入されているので現在政治に。だから、動けないと思うんです。内閣人事局がいずれにしても非常に効いています、こうなってくると。効いていると思います」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、河野さんがこのように厳しく言っているけど、今回の天下りに対する、いわゆる調査はそれなりの成果は出るだろう。いや、結果的に魚が何匹釣れたという話はしたくないのだけれども、いくつか新しいものが出てくるという期待感はありますか?」
中野教授
「再就職監視委員会が38件挙げているわけで、それは徹底的にやると思います。ただ、文科大臣、若干、優しそうなのが気になりますけれども。ちょっと優しそうだなという感じがするので、この人がどこまで強気にやるか。官邸はやると思いますよ。だから、官邸は相当強気にやってくると思います。それは人事の差し替えも含めて。ここで妥協すると世論が傾いちゃうので、やると思います」
反町キャスター
「河野さん、現在の安倍政権の話になってしまうのですけど、安倍政権は過去の政権に比べると霞が関に対するグリップ、もしかしたら威圧かもしれない、抑止力かもしれない。強烈な強い内閣でなかなかこういうケースが起きた時にパチンとやって、皆が言うことを聞くような雰囲気、かつてよりは強いのですか?」
河野議員
「雰囲気というよりは、先生がおっしゃっているように、内閣人事局ができて、人事をそこがきちんと押さえていますよね。それが内閣人事局をつくった理由のひとつで、官邸が右と言っても各省は左に行っていますみたいなことはなくなっていますよね。官邸はどう思っているのかということを考えながら役所も動くようになっていますから。そういう意味での制度的なグリップ。それは別に安倍政権だからとか、何とか政権だからではなくて、制度としてきちんと役所を官邸がグリップできるようになった、ということだと思いますね」

官僚組織の『構造と論理』
秋元キャスター
「ここからは天下りの本質的な問題について聞いていきます。天下りがなくならない背景の1つと言われているのが官僚組織の構造です。官僚組織は事務次官を頂点としたピラミッド構造になっています。年次が上がっていくにつれてポストの数が少なくなっていくので、同期の中でポストに就けず辞めざるを得ない人というのが出てくるわけですね。中野さん、この構造が天下りを生むと言われているのですが、いかがですか?」
中野教授
「同期が同時昇進していって、1人が偉くなると順次外に出していく。このシステムは相当古くて、調べた感じでは、昭和初期ぐらいから完全に確立されています。内務省の課長の鼎談会というのを読んだのですけれど、当時、官選知事で辞めないので、下が上がれないと。下が上がれないので辞めさせてくれと。その時にどうしても行く先がないと辞めないというので、行く先をあっせんし出した。これが1番の天下りの淵源だと思います。だから、人事は非常に大きいですね。このシステムを変えない限りなかなか天下りはなくならないと思います」
反町キャスター
「先ほどの話、これは、要するに、昭和初期からの内務省から始まった話、同期で、たとえば、これだけの人間が入省、全員キャリアの場合です、入省しましたと。課長になるのはこのうちの全員ではありません。課長になれない人は、この時点から課長になるか、ならないかの時点で、既に外に出て行く人というのは出てくるのですか?」
中野教授
「昔はいなかったです。昔は課長までは一斉に同期は上げていくと。課長から部長、審議官、局長に上がるにつれて徐々にポストが少なくなるので出ていくと。なぜかと言うと、プライドが傷つくからと。同期の下に行くのは傷つくとか、下から先輩が後輩に追い抜かれるのは傷つく」
反町キャスター
「そんなのは民間企業では当たり前ですよ」
中野教授
「それが官僚機構の雇用慣行ですよ」
秋元キャスター
「辞める方がまだマシ?」
中野教授
「まだマシということですね、一言で言うと」
反町キャスター
「それは現在でもそうなのですか?」
中野教授
「これが現在は相当変わっていて現在は高齢化しているんです。全般的に3歳ぐらい退職年齢が上がっていると思います、管理職の。組織は全般的に上に上がっていて、辞めない人も増えています。ただ、人事がまわらなくなっているんですよね。ポストが、ピラミッドは限定されていると。課長は政令で決まっていますし、室長は省令で決まっていますから、簡単にいじれないわけですね、ポストを増やすとか。だから、ポストがどうしても限定されるので、人事が詰まるので、詰まった人事を現役出向という形で外に出すとか、官民人事交流でまわしているわけです。だから、菅内閣が認めたのはそれですよ。現役出向を認めたのは菅内閣ですけれども」
反町キャスター
「現状において、いわゆる今回あったみたいに役所が面倒を見る天下りというのが実際出てくるのは、局長クラスぐらいまでいった時点で、出ざるを得なかったこういう人達に対してぐらいからですか?」
中野教授
「この下ですね。課長です。課長から部長になれなかったぐらいからの人ですね。このレベルから、要するにお世話をする。50歳ぐらいとか、早ければ49歳とか、48歳とか、それぐらいから面倒を見るので当然65歳まで考えたら2、3個いるわけ。だから、天下りの渡りという現象が出てくるわけですね。いくつも再就職を繰り返していく、昔でいうところの。定年まで働けるというならば誰も出ていかなくて済むわけです」
反町キャスター
「そうすると、表でいうと横に出て行ったこの人達ですよね?この人達の再就職というのは、本人が探すか、役所が探すか、面倒を見るしかないわけではないですか?」
中野教授
「そういうことです」
反町キャスター
「基本的に今日の話を聞いていると役所が面倒を見るのがほとんどですか?」
中野教授
「かつてはそうです。おっしゃるように50歳で急にマーケットに放り出されて、再就職を探せるかと言うと、非常に難しい。確かに流動化するのは望ましいですけれども、民間企業だって終身雇用なわけですよ。民間が終身雇用なのに、流動化しようがないわけです。これがしんどいところです。確かにリボルビングドアみたいに、エリート層は、政・官・学・財・情報、マスコミも含めて、移っていければ、これは望ましいのですが、民間企業も閉じていますし、マスコミも閉じています。学者も閉じた世界なわけです。全部閉じている、役所は役所で閉じた世界でどこかに行かない。と言うことは、公益法人とか、財団法人とか、独法とか、特殊法人、そういったところに行かざるを得ないというのが日本の現状なので、これを潰さない限りはリボルビングドアにはならない」
反町キャスター
「中野さん、役所によって同期のキャリアの入省数は、たとえば、20人だったり、30人だったり、いろいろとあるわけではないですか。それが、要するに、こういう形に抜けていく人達が毎年、毎年、出てくると、年次によっていろいろあるにせよ、ある役所にしたら毎年、毎年、20人とか30人の途中退職者、そういう人達が出てきて、その人達の面倒を見るのは、はっきり言って、組織的なマニュアルとか、組織でないと対応できないと思うのですけれども」
中野教授
「昔は完全に組織的です」
反町キャスター
「現在はそんなことはできていない?」
中野教授
「現在はそこはやらないと言っています。少なくとも、天の声があるとかね。やめろと言っても天の声があるから待っておけとか。あっせんはしてはダメなので、実際、退職金で食いつないでいる人もいます。民主党政権の時は厳しかったので、辞めたあと、退職金で食いつないでいる局長がいっぱいいました。ずっと空白があってという人もいた。でも、昔は完全に面倒を見ていて、なので、人事もすごく見えました。現役の人事とOBの人事が完全にリンクをしていて、出たら、入れる。完全にわかるわけですよ。財務省の場合は非常にきれいで、次に誰がいくかとすごくよくわかるんですよ。そういうのは現在、全然ないです。規則性がないわけです。だから、そこまでの人事は担保できないわけですよ。変わることは変わっているんです。退職年齢も上がっているし、ギリギリで人事もまわしているし、苦しい役人が多いというのも間違いない」
反町キャスター
「ある程度の人達に対して、局長ないしそれより上のレベルで退職する人達に対しては当然、役所も、特定のポストの人に対しては面倒を見るという流れが現在も残っているとすれば、それは役所の誰かのところに、今年辞める人はこの人とこの人とこの人で、20人なら20人の辞めるリストがあると。このうち、本当に、松、竹、梅みたいなもので、1番、面倒を見ていかなければいけないのは、これ、その次はこれ。その次はこれと。一方で、我が省から派遣できるところというのは、これだけあって、これも、松、竹、梅があって、そのマッチングというのを誰かが考えないと破綻しますよね?システムとして」
中野教授
「昔は、だから、完全マッチングしていたんです。今誰もマッチングしていないと思います。だから、明確にはできていないと思います」
反町キャスター
「先ほど、言われた神の声とか、明らかに役所の中でそういうところを見えないようにやっている。要するに、大臣官房の一角でそういうことをやっている人がいるという噂を僕はよく聞きますよ。そこはどうなのですか?」
中野教授
「非常にブラックボックスです。証拠は残さない。誰がやったかわかりません。今回の調査で期待をしているのは、OBがやっているのか、あるいはOBの中でブローカーみたいな人がいるのかどうかですね。今回も、人事のOBがいました。そういうのと同じブローカーみたいな人がいるのかどうか。ブローカーみたいな人と人事が関連しているのかどうか。ここが調査でわかれば、非常に面白いですけれども、おそらく出てこないと思います」
河野議員
「たとえば、官民交流人事というのがあって役所から民間へ行きますと、官民交流ですと。ところが、定年2年前の人が民間に行き、ワンタッチ戻ってきて、定年退職して、そのまま同じ企業へ戻るというのが結構あったんです。私が大臣になる前に、自民党の行革推進本部長の時に全件見たんです。全件見たら50歳過ぎて、官民交流はおかしいだろう。しかも、そのうちの何人かはワンタッチで戻ってきて、そこへ行っていますと。これは変形天下りだよねと、人事院を呼んで、これをやめさせたんです。50歳になったら、官民交流は対象外。20代、30代は民間へ出て、民間のいろいろやっていることを学んで戻ってくることは、それは大いにやるべきだと。だけど、50代は明らかな変形天下りだから」
反町キャスター
「河野さん、官民交流で5年、6年行って、そのあと一瞬、役所に戻って、また同じところに行くというのは、先ほどの話に抵触しないのですか?」
河野議員
「そこは自分で行っているみたいな話をするので」
反町キャスター
「そうか、このルール。こういうところに抵触するのではなくて、いわゆる公募みたいな形でやっていくという形になるのですか?」
河野議員
「民間ですから公募とは言わないでしょうし、おそらく影では抵触しているのだと思いますが、表向きは抵触しませんという話だったので、それは、50代はダメですと。それから、もう1つは、独立行政法人やら何やらの理事長ポストの公募、これは行革担当大臣が見ることになっているのですが、役所のOBが1人だけ応募するんです。民間からは2人とか。選考した結果、この人になりましたと。公募を厳正にやったら、この人で、たまたまその人はOBですと。だけれど、ずっと見ていると役所のOBが2人応募することはないですね。ずっと1人です。そういうOBが勝ち続けているので、これはおかしいと。私が大臣の時に人数が少なかったら止めろ、ちゃんともう1回オープンに公募し、応募者をちゃんと増やせと。出てこなかったら経団連に言って、マネジメントに適した人を出してもらうということをやったんです。だから、そうやって天下りでない、外へ出る、役所がやっているところというのがいくつかあって、それは抵触していないと言うけれども、それは精神にもとるからダメだと言って、潰してきて、最後に残ったのが本チャン天下り、ブラックボックスになっているところですね。ここはちょっとピシッとやらないとダメだなと」
反町キャスター
「今回、でも、そういう中野さんが言われたところによる、昔はあったけれども、今はどうなったのかわからない。壊れているかもしれないというシステムというものがある程度、浮かび上がってくる可能性はあるのですか?」
河野議員
「あると思いますね」
反町キャスター
「増田さん、制度的にどこをどう変えたら…」
増田氏
「公務員の場合は、要は、身分保障があるので基本的には終身雇用です。公務員については。それで、ただ、国家公務員と地方公務員と大きく違うのは、国家公務員、いわゆるキャリア官僚はエリートシステムをとっているんですね。上司に後輩が絶対にこないということです、年功序列ですね」
反町キャスター
「本当に今もそうなのですか?」
増田氏
「ほぼそうでしょう。たまに次官よりもエネ庁長官の方が1年上とか、そういう。それがいろんな雑誌などで話題になるぐらいですから、基本的に」
秋元キャスター
「なぜそんなに年齢にこだわるのですか?」
増田氏
「それはエリートシステムですからね。皆、能力があるという中で、その秩序をきちんと守って、その中で1番選別された人間を、限られたポストにドンドン就けていくためには、身分保障、基本的には公務員ですから、現在で言うと60歳定年まで身分が保障されているけれども、その秩序を乱さないような形で。と言うと大変失礼な、上から目線的な言い方になりますけれども、早くに競争に負けて脱落していく人というのはどうしても、その中で、限られた中でも出てくるわけですね。それはむしろ早く辞めさせた方がいいと。だけれど、その保障をするところまでの年限が相当長くなりますから。その人が独自で、民間市場でキャリアをきちんと示して、それで引く手数多であるかと言うと、なかなか自分の能力とか、成果は見せられないですね。ですから、そういう人が逆に早く外に出て行くので、きちんとそれを2つ、3つ、時々変えながらポストを用意しておかないといけない。昔は、だって、四十幾つぐらいで、そういうのがドンドン出てきてたわけですよ」
反町キャスター
「40代ですか。40代で辞めて、ということは?」
増田氏
「次官でさえ50代の前半とかですね。そのぐらいで辞めていたわけですから。
反町キャスター
「60歳の定年までと言ったら、3か所、4か所…」
増田氏
「ただ、もちろん、それは役人ですから、公務のためということで。ですから、限られた人数に対して皆の目で見てこちらの方がいいよねというのは残したわけですね。肩たたきされれば、皆さんはそれに従うということ。公共団体の場合は、そういうことになっていませんので、せいぜい部長、次長が60歳定年の、1年とか、2年早く退くぐらいで、基本的には全員そのまま60歳定年まで、専門性を活かすなり、何なりと、全部上に上がっていくのですが、さすがにそうすると誰が優れているかどうかということが、人数が多いとわからないので、それで東京都庁なんかは昇進試験を入れ、ペーパーテストとか、それでいろいろ振り分けることをしていくわけです。ところが、キャリアシステム、中央官僚の場合は、限られた10人とか、20人ですから、その中だと誰にどういう能力があるかわかりますので、お互い何となくあいつの方が優れているよねということで残っていくわけですね。実はキャリアシステムで、若い時に肩たたきし、辞めてさせて、どこかで面倒を見るというのはだんだん限界にきていまして。皆、それぞれ年次が高くなってきているから、実力主義で、どうしても弾かれる人達も専門分野を活かして、60歳近くまでずっとやってもらう。そうすれば、それ以上は保障する必要はありませんから。天下りのポストをわざわざと見つける必要もないと思うのですが。ただ、これは、むしろ民間に非常に近い形になるので、競争性を入れて、官民交流も必要でしょうし、それから、後輩のもとで、使える局の次長とか、審議官とかあっても、これからは止むを得ない時代ではないかと思うのですけれど、しかし、そういう中で、これは日本の大企業もそうだと思うのですが、本当にゼネラリストで、エリート主義を完全に断っていいのかどうか。専門性というのか、専門分野を活かして、そういう人にずっとそこで極めてもらうのはいいと思うのですけれども、広い視野で見るような人を最後どう残していくかというのは、これは官の世界だけではなくて、民間も含めて、企業の組織の中で、エリート主義というのはなかなか日本では合わないというのか、いろいろとそういうことでいいのかと言われますが、民間でエリート主義みたいなことができないのだったら、官は絶対できないですね」
反町キャスター
「年次が逆転してもそれを受け入れるような官僚のメンタリティの変革、ないしは定年を延長する、実際に。その可能性をどう感じていますか?」
河野議員
「それをやらざるを得ないところにきていて、年次の逆転もそうですし、キャリアとノンキャリは22歳の時の試験で分けているだけで、実はキャリアの試験を受かった方が、能力が高いかどうかというのは、ペーパーテストではそうかもしれないけれども、実務をやっている時に本当にそうかどうかというのはわからないわけですね。だったら、そこも一線で入ってもらって、その中からドンドン選抜をしていくという必要があるのではないかなと。最初に入った入口が決まっていると出口も変わりませんというのでは、むしろ脆いのではないかという気がするんです。年功序列もなくすべきだし、キャリア、ノンキャリの区別も要らなくて、能力がある人をドンドン引っ張っていけばいいのだろうと思うんですね。その代わりに必要なら定年まできちんと残すよということをやればいいのかなと」

どう活かす? 『官僚人材』
反町キャスター
「日本におけるエリート集団というものが必要かどうなのか。どういう組織で、何人ぐらいというイメージはありますか?」
中野教授
「具体的にはないですけど、エリート集団は必要だと思います。エートス(情熱)というか、文化とか、いろいろなものを引き継いで、国を引っ張るのだというのは必要だと思います。キャリア官僚の制度の良いところは、十数人なので、がんばるんです。徹夜でもがんばる。同期で。試験で選ばれたそこでがんばるので、がんばるモチベーションがその試験にはあると思うんです。問題は弊害が大きくなってきていることと、人数が多いので、一気に20人とか、全役所を足すと数万人とかになってしまうので、数千人単位ぐらいがいいのではないか。日本社会がエリートを必要としないというのであれば、要らないわけですよ。あくまでも社会があって、エリートが存在するので。政治でいいのだと、政治家が一生懸命に引っ張って、その下でサポートする、事務員みたいなものがいれば、それでもう十分だということであれば、なくせばいいと思うんです。そこらへんの国民的コンセンサスがどこまであるかという。最近見ていると、国民の意思もわからない、エリートは必要なのかなと思ったりすると、バッシングすることもあって、そこらへん相半ばする感情というのですか、微妙なところが日本人全体にあると思います」
反町キャスター
「増田さん、エリート制度が日本に必要かどうか。規模としてはイメージがありますか?」
増田氏
「私は正直、難しいなと思います」
反町キャスター
「それは要らないという意味ですか?」
増田氏
「ええ。要は、戦前の高文(高等文官)試験に戻すということですよ。つくるとすれば。それだけの限られた人数でまったく違う昇進ルートを設けるということです。フランスは大変な官僚天国というか、30(歳)ぐらいで局長とかをやって、小さい範囲の中で民間に行く、あるいは行政機関に行く、政治の道に行く、皆お互いに連携をとってやっているわけです。そういうことをこれから日本でつくるというのは少なくとも官の世界でやれるかと言うと私は難しいと思います。ですから、官の世界で、今のキャリア制度の中で、より競争性を増していく。それから、官民交流だとか、中途採用だとか、複線化とか、多様化、その中で専門性があって、本当にこいつがいないと滞るみたいなのが、60(歳)くらいまで、その分野で活躍すればいいし、一方で、全体を見るゼネラリストみたいな人も必要だと思いますが、それについては現在よりも数が少なくてもいいと思うのですが、そういう人達はそういう人達できちんとしたまわしを考えて、ただし、2年間は職務関係の密接なところには行かないとか、自制心を働かせると」
河野議員
「エリートではなく、リーダーなんだと思います。政治もそうですし、複線化していく中で、いろいろな形で組織を引っ張る人間が出てくるだろうと。22歳のキャリア試験にまったく信頼を置いていないですね。ですから、政治もやらなければいけないし、複線化されたシステムの中で組織を引っ張っていく人間が官僚の中からも出てくるというのはあると思います。最初からエリートを選抜する、どうやるのと。ペーパー試験ではないよね。それはいろいろなシステムを通じて日頃の業務の中からリーダーというのは生まれてくるのだと思いますね」

河野太郎 前国家公務員制度担当大臣の提言 『回転ドアとキャリアの廃止』
河野議員
「1つは回転ドア、官と民の間の行き来ができるように人材を流動化していくということと、キャリアを廃止して、業務の中でリーダーを選んでいくというのが大事だと思いますね」

増田寛也 元総務大臣の提言 『エリートシステムにより競争性を』
増田氏
「現在の官僚制度を限られた人数の中でのエリートシステムと考えると、そこに年功序列とか、早期退職勧奨みたいなものを入れるから歪んでくるので、民間の人がそこにドンドン入っていくとか、回転ドアの、一方で多様性も必要でしょうし、年次が低い者の下で年次が高い者が働くとか、そういう年功序列を切り替えるようなこともこれからは考えるべきだと思います」

中野雅至 神戸学院大学現代社会学部教授の提言 『定年まで生き生きと働ける環境』
中野教授
「天下りシステムの背後に人事システムというものがあると思います。なので、定年まで生き生きと働ける環境を。60歳まで皆、生き生きと働けたら天下りは起こらないので、スタッフ職の充実も含めて、こういう環境がつくられるのが望ましいと思います」