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2017年1月19日(木)
検証・オバマの8年間 『チェンジ』の功と罪

ゲスト

中谷元
前防衛大臣 自由民主党衆議院議員
長島昭久
元防衛副大臣 民進党衆議院議員
森本敏
元防衛大臣 拓殖大学総長

オバマ大統領8年『核なき世界』
秋元キャスター
「まずはオバマ大統領のチェンジを象徴するともいえる就任直後の2009年4月、核なき世界を訴えたチェコ・プラハの演説。中谷さん、これが世界に、国際社会に与えたインパクトをどう考えますか?」
中谷議員
「まさにリーダーとしてのこの発言は、ノーベル賞に匹敵するような、非常に素晴らしいものだと思いますが、この中でも平和で核兵器のない世界に向けて、具体的にも取り組んでいくということを言って、現実に新STARTという、ロシアとの核兵器の削減交渉。2010年の4月に締結しています。これによって当時4500発ぐらいあったアメリカの核兵器が1550発になっているんですね。また、運搬手段も削減したということで、そこまでは良かったのですが、ロシアとはその後、信頼関係を結べなくなったということで、それで終わっています。最後は、昨年の末に国連で各国が核兵器の禁止条約を本会議で、出したのですが、これについて113対40で、日本も反対をしましたが、アメリカも反対をしたということですから、そういう点では矛盾したところはあるのですが、大統領としては核兵器のない平和な世の中をつくりたい、そういう意欲を最後まで持ち続けたという点では評価できるのではないかと思います」
反町キャスター
「長島さん、世界最大、最強の核大国、軍事大国のリーダーがこういうことを言う。自らやるという決意を示したというところで評価すべきなのか。これまでのアメリカの覇権の根本を自ら否定するのはどうなのかと。これをどう見ていますか?」
長島議員
「でも、政治的目標を高らかに打ち上げるというのは、1つ必要なことだと思いますよ。前年にチェンジを掲げ、大統領になったばっかりで、プラハに来てこういう演説をすると皆、期待をしますよね。そういう気運を盛り上げたところで、具体的な作業に入っていれば、もちろん、新STARTはやってはいたのですけれども、あれは合意をしただけですからね。全部なくなったかというと、なくなっていないわけですから、まだね。それから、中国の核はどうなのかとか。そういうところを、核を削減するようなテーブルを、自らつくって、ギリギリの交渉をやっていったのだったら別ですけれど、フォローアップがほとんどなかったという印象ですね」
森本氏
「核なき世界というのは、現実にはそれほど簡単ではない。核の抑止に依存して、世界の中で、よく考えてみると、アメリカをはじめP5、インド、パキスタン、中国などが核を持っていて、核を持っている国の人口は世界の半分を占めているんですよね。つまり、世界の人口の半分が核兵器を持っている国の国民ですね。だから、そんなに物事は簡単ではないということを知っていて、自分は国際社会の平和のために、ある種の理想としての目標をプラハの演説の中で言って、現実問題としては米露の核軍縮がうまくいかなかったら、その次にイランと、いわゆる包括的な行動原則というか、行動基準というか、つまり、イランの核開発計画を凍結する合意をE3、ヨーロッパ3国と、それから、米中露。これで結んだわけですよね。ただ、結んだから、実際に実効性があるものかどうかというのは、そう簡単なものではなくて、イランはこれの見返りに、いろいろな国連制裁を受けている、それを徐々にきちんと解除をしてくれるというのがパッケージになっているんですよね。これが、自分達は核の開発を凍結しているのに、こちらの制裁がなかなか解除をされないことに、ずっとこの1年半。2015年の7月にできた合意ですから、不満を持ち続けているわけです。さて、問題はトランプ政権がどうするかということだと思うのですが、現在の政権を構成している主要メンバーは全部、アンチイランと言いますか、イランに対しては大変厳しい考え方を持っている人ですし、共和党議会もなかなか厳しいので、このイランとの核合意というものが、きちんと履行されて、本当に意味のあるものになるかどうかというのは、まだオバマ政権最後までわからなかった。次のトランプ政権がどうするのかということがカギだと思うんです」

オバマ大統領8年間『北朝鮮政策』
反町キャスター
「北朝鮮の核に対するオバマ政権の8年間はどうだったのですか?」
森本氏
「だから、それはダブルスタンダードみたいに見えて。イランを一生懸命にやった。北朝鮮は放置した」
反町キャスター
「なぜですか?」
森本氏
「結局、はっきり申し上げるとイランの核を凍結するということは、中東を安定するためであり、イスラエルのためであり、サウジのためであり、ヨーロッパのためでもあり。中東、ヨーロッパ、湾岸地域全体の安全のためには不可欠だったんです。では、北朝鮮は不可欠でないのかと言うと、北朝鮮が核を持っているという状態に対し、それなら、イスラエルのように攻撃をするかという国もない。つまり、絶対的なクリティカル性と言いますか、要するに、重大な緊急性というものが必ずしも北朝鮮にない、かつ持っているかもしれない状態で、軍事的にサージカルアタックみたいなものは、リスクが多すぎて、到底できないということなので、対話して問題を解決しようと思っているにもかかわらずですよ、北朝鮮の方が次の交渉をやるのであれば、核兵器国として認めるなら、座ってもいいと言われたら、認めるわけにいかないので、結局、6者協議、6か国協議が凍結されたまま今日に至って、この時間に北朝鮮の核開発の時間を与えてしまったと。こういう結論になったわけですね」

オバマ大統領8年『対中政策』
秋元キャスター
「ここからオバマ大統領の8年間の対中政策について検証していきます。オバマ政権、リバランス戦略と称しまして、アメリカの安全保障戦略を再構築しました。その内容として、国防費削減と並行してイラク・アフガニスタンから兵力撤退。アジア・太平洋地域を重視した兵力展開。戦力を地上主体から海・空・サイバー主体に変革。同盟国やパートナー国との安保協力・交流の促進と、こういった流れに変えたわけですけれど、森本さん、オバマ政権のアジア・太平洋重視をどう評価されますか?」
森本氏
「私は、基本的にアジア・太平洋の安定という点を考えると大筋において、この政策は間違っていないと思います。が、たぶんトランプ政権は、この政策を見直すと思います。国防長官はそう言っていますので。見直しとはどういうことかと言うと、あまりにアジア・太平洋に兵力を集中するというのは、それはどうかなと。もう少し中東・湾岸も重視して、兵力を動かすということをしないといけないので、これをそのまま続けるという考えはないということを言っていますので、おそらく若干の手直しが行われると思いますが、これは基本的に対中政策ですね。東シナ海、南シナ海に出てくる中国に海空戦力を中心に対応する体制をとる。これは第二次世界大戦の時から、アメリカはこうですね。日本を攻める時、つまり、ガダルカナルの方からマッカーサーラインという、フィリピン・ルソン島から。もう1つは、ミニッツラインと言って、太平洋の真ん中からサイパンを通って硫黄島に入ってくるという2つのラインで攻めようとしてきたんですね。それの対象は日本だった。けれども、現在は対象が中国だというだけの話で、太平洋の攻め方は同じですね、基本的に。参謀本部が、日本の場合はそれをよく知らなかったというだけの話で、中国は十分にそれを知っていて、第一列島線、第二列島線で、これを防護しようとしているということです。だから、基本的に日本にとっては、このリバランスという政策はそれほどおかしくはない。アジア・太平洋の安定を考えると、これは維持してほしいと思うんですけれども、そうはいかないかもしれません」
反町キャスター
「森本さん、でも、リバランスは、アジア・太平洋を重視すると言って、海・空・サイバー主体に変革すると言って、南シナ海で、たくさんの島々を埋め立てて3000メートル級の滑走路をつくらせたと、これは結果から見ると、オバマ大統領のリバランス政策というのは何だったのか?画に描いた餅で終わったのか?結果は伴ったのですか?」
森本氏
「そんなことはありません。はっきり言うと第一列島線の中に閉じ込めるというだけです」
反町キャスター
「第一列島線の内側で何をするかは…」
森本氏
「外側へ出てくるのを防ぐということです。それがエア・シー・バトルという考え方ですね。だから、出てきたら、きちんと対応しますよという。ただ、中に閉じ込めておくならば、それはやむを得ないと言いますか。要するに、オフショアコントロールと言って、たとえば、第一列島線のところに対艦ミサイルを置き、第一列島線の中で活動するのはいいけれども、その外に出てくることは防ぐのだということで、そこは矛盾をしないです」
反町キャスター
「そうすると、リバランス政策というのをオバマ政権が打ち出したことを見て、とは言いませんけれども、中国が南シナ海の島々を要塞化する、埋め立てるということは、これはオバマ政権のやり方をある意味、見切ったうえでやったという言い方にもなるのですか?南シナ海だったら、彼らは…」
森本氏
「だから、南シナ海は、最近、中国は、いわゆる核心的利益の中に入れつつある。そこは、だから、死守するのだという考え方ですね。だけども、アメリカは死守するのはいいのだけれど、そこの自由に航行する権利は確保をするぞと。それがまさに航行の自由という原則なので、いくら戦略的にそこを自分達の海だと言っても、そこは自由に通れるのだと。ただ、その中に閉じ込める、外洋に出てこないというのであれば、それはやむを得ないというか、いいと言う」
長島議員
「オバマ政権のスタートの時は中国とうまくやるという方針だったんです。G2、つまり、アジア・太平洋は、中国とうまく仕切ればいいというようなニュアンスで入っていった。ところが、ヒラリーさんが国防長官の時は、かなり警戒心が高かった。ヒラリーさんが、確か2010年の7月ですかね、ARF(ASEAN地域フォーラム)でアジア・太平洋、特に南シナ海の航行の自由については、アメリカにとっては死活的な利益だということを言って、そこで彼女はアジアピボット。アジアにもう少し重心を移すという、スピーチをするんですね。あとからオバマさんが、オーストラリアで、翌年かな、オーストラリアの議会で、それを追認するような演説をするんですよ。2013年2月にヒラリー・クリントンさんが退任されたあとが、結局、そういう中国の動きに対する警戒感が薄れてしまって、そのあと人工島もつくられ、あるいは航行の自由作戦も、実は2012年の暮れぐらいから、やっていないですね。3年ぐらい空白にして。その間、中国からすれば、じわじわ出て行っているのだけれど、何も反発がないから、いいのか、いいのかと言って、約1年で埋め立ててしまって。ですから、中国側からすると、何のチェックもなかったのだから今さら言うなよというところかもしれない」
森本氏
「我が方は随分アメリカに警戒しろと言いました。だけども、アメリカから見ると、はっきり言うと、出てきても脅威ではない。軍事的に言うと、さほど軍事的な脅威を感じない。本当に気がつき始めたのが2013年の暮れぐらいですね」
長島議員
「そうですね」
反町キャスター
「アメリカが脅威ではないのは、つまり、第一列島線から出てきているわけではないから、まあ、いいではないかと。そういう見方ということですか?」
森本氏
「トータルな戦力として、アメリカに対抗できるようなものには、2020年とか、2030年にはならないという、トータルでそう考えていた」
反町キャスター
「このリバランス政策というのは、中国に対して誤ったメッセ―ジを伝えていたことにならないのですか」
長島議員
「いや、リバランス政策、そのものは間違っていないですよ。しかし、それが実体を伴っていなかったところが問題なわけですよ」
反町キャスター
「南シナ海を、いわば放置したというのが、リバランス政策だったら、本来そこも関心の対象たるエリアだった。それをやらなかったということですか?」
長島議員
「だから、私は、セキュリティアドバイザーのライスさん。ライスさんの存在が結構大きいと思っていて、最近、彼女が選挙が終わったあと、論文を書いているんですよ。その論文を見て、仰天をしたのですけれども、航行の自由作戦に対する効果に対してちょっと疑問を呈したうえで、地域の未来は、南シナ海の艦艇ではなく、つまり、航行の自由作戦で、艦艇ではなく、北京で学んでいるアメリカ人留学生によって描かれるのだという論文を書いているんですね」
反町キャスター
「何を言いたいのですか?」
長島議員
「つまり、中国とはもう少し、協調をして、理解し合えるという、未だに彼女は信じているんですね」
反町キャスター
「それはいつの?つい最近?」
長島議員
「11月の12日に出た、ナショナルインタレストという雑誌に彼女が寄稿しているんですよ。たぶんトランプ政権の勝利を見届けたうえで書いているのだと思うんです」
反町キャスター
「そういう人がアドバイザーとしてホワイトハウスにいて、オバマ政権の安全保障政策の重大な、しかも、アジア方面の政策に重要なアドバイザーとして意見を持っていた、発言権を持っていたと。そういうことですよね?」
長島議員
「そういうことです。それがセキュリティアドバイザーですから」
森本氏
「だから、困ったんです。太平洋司令官が南シナ海で、要するに、警戒監視のための海軍活動をやることは太平洋司令官の権限として認めるが、人工島12カイリの中に入ることについては、ホワイトハウスの許可をとれと言って、入ってきたのは数回しかないということですね。いちいち太平洋軍指令官の下にある活動までホワイトハウスがコントロールしてしまう」
反町キャスター
「それは、ライス補佐官がそこまで太平洋軍を縛りつけたということは、当然、オバマ大統領も知っていますよね?」
長島議員
「もちろん、オバマさん、共有していますよ」
反町キャスター
「大統領がそういうことを、そうすべきだと。中国をあまり刺激するなとやっていたと。こういう理解でいいのですか?」
森本氏
「南シナ海というのか、米中関係を協調的なもので維持したいと。対立状態にはしたくない」
反町キャスター
「政権前半はいろいろ仲良くしようとしたのだけれども、途中から何かわかってきたのではないかと思うと、実はわかっていなかったのですか、最後まで」
森本氏
「いや、わかっていたのですけれども、最後までその方針を変えなかったんですね」
中谷議員
「いや、気がつくのが遅かったんですよ。中国の実力とか、動きを見誤ったというか、最初は選挙ですから、8年前。今回もそうですけれど、選挙で応援をしてもらった人を選ぶわけです。中国のロビーはすごいので、そういう人を選んでしまったというところで、最初は中国と協調路線でありますが、やっているうちに、パリの地球温暖化会議で中国の代表が変な演説をしたんです。それでおかしいなと思い始めて、それから、中国から一歩引くと。それから、習近平氏がアメリカに行った時も非常に大胆なことを言って、その時は大人の対応であったのですけれども、そのあとは日本も悪くて、鳩山・菅内閣という非常に安全保障において、沖縄問題から混乱して、非常に日米の不信感が増強して、非常にそういう面では、中国に対してこういった抑止が効かなかったわけですが、その後、野田内閣になって、森本先生が防衛大臣になって、ガイドラインの話とかを非常に始めて、その頃からいよいよリバランスを中心に、こういった日米の協力関係を構築し始めたということですから。こういった状況に気がつくのが双方、遅かったということだと思います」
長島議員
「確かにアジア・太平洋でアメリカにとって信頼できる同盟国は日本ですよね。日本とオーストラリアですか、言ってみれば。その日本が安全保障に関心を持って、アメリカに対して、いや、本来、こうすべきではないですか、こうした方がいいですよと言えるような関係になっていないといけないのだなということは、反省としてありますね。最後は野田政権でうまくそこは回復させたのですけれども。民主党政権のスタートはそういう感覚の薄い政権だったというのは…」
反町キャスター
「日本の、そういう政治体制がある中、ライスさんがホワイトハウスで、徐々に発言権を増していって、中国に対してそういう政策、スタンスをとるようになっていったという、こういう流れになるんですね?」
長島議員
「はい。先ほど言ったように、ヒラリーさんがいた時は、まだ良かった。そのあとですよ、たぶん2013年の2月以降の話ですね」
森本氏
「2013年6月の西海岸の米中首脳会談ですよね。ちょっとおかしいなという感じになって、翌2014年の11月には、これは、アメリカは対中政策を間違っているということを内外から言われるようになって、それでも急な方針変更ができなかったんですね」
反町キャスター
「それは、オバマ大統領がライス補佐官を変えられなかったということですか?なぜですか?他にもっと良いところがあったのですか、彼女には。他のエリアの安全保障政策で彼女を信じていたとか」
森本氏
「いや、そうではなくて、彼女の持っているリベラルな思考というのが大統領と合ったのではないでしょうか」
長島議員
「だと思います。極めつけは2013年の9月に、もはやアメリカは世界の警察官ではないと。あっ、なるほどとロシアと中国は思ったと思いますよ」
反町キャスター
「その考えの延長線上だったらG2みたいな世界山分けみたいな話というのは、ライスさんが主導となって、中国と話し合ってもおかしくないみたいな話になるのではないですか?」
長島議員
「もちろん。それは現実が許さなかったんですよ。最初、閣内にヒラリーさんがいた。いなくなったら、先ほど、先生がおっしゃったように、2014年ぐらいから日本が騒ぎ始めた。他のオーストラリアも含めて、アジア・太平洋、このままではダメだとなってきたから、さすがに米中山分けみたいな話にはならなかったんです」
反町キャスター
「そうしたら、リバランスだ、アジア重視だと言いながら結局、オバマ政権というのははっきりとアジアの現状を直視した政策は何1つ打っていなかったという話になるではないですか?」
長島議員
「結果としては、そうだと思います」
中谷議員
「立ち遅れたと。それで国務大臣が4人変わっているんですよ。最初、ゲーツ。それから、パネッタ、ヘーゲル、カーター。軍とホワイトハウスに溝があったと言われていますけれども、なかなかそういった政治が軍事的な現実、これを汲みとっていなかった」
反町キャスター
「トランプさん、次の大統領の中国の発言。一つの中国政策に縛られる必要があるのかどうかわからないと。中国は、南シナ海で人工島を建設して、アメリカに対して優位な立場に立とうとしていると言ったり、一方、習近平さんはスイスでの演説で言うと、こちらの核心的利益を尊重すべきだ、アメリカとは積極的に新型大国関係の構築を進めていく。中国の話はいいですよ。トランプ次期大統領の発言を見ると、リベラルに対する反省というものが彼にあるのか。ないし彼はただ単に、ビジネスマンで、ディールのツールとして考えているのか、ここはどう見ていますか?」
長島議員
「トランプさん自身はビジネスマンでディールメーカーだという性格が強いと思いますけれど、彼が指名した、たとえば、国務長官ティラーソン。それから、マティス国防長官、あるいはCIA(中央情報局)の長官、国家情報長官と、顔ぶれを見る限りは、かなりリアリストが並んでいますので、そう簡単に中国に丸め込まれる。ロシアに丸め込まれるという布陣ではないと思いますので。ただ、ここまで人工島を拡大し、これを撤去しろとは、なかなか難しいと思いますね」
反町キャスター
「中谷さん、いかがですか?この次期大統領。中国に対してこれまでとは違う色合いをちゃんと出してくれると期待できますか?」
中谷議員
「南シナ海問題はカーター国防長官がやっているようにアメリカのプレゼンスを示していかなければいけませんので、現実にその点の必要な軍備、これは必要ですから、アメリカもそういった体制で対峙していかなければなりませんし、日本も現在の防衛費で本当に大丈夫かなというような点で対応していかなければいけない」
反町キャスター
「GDP(国内総生産)の2%要求してくるかもしれませんよね。GDPの2%と言ったら10兆円ですよね?」
森本氏
「いや、ないとは言わないけれど、経費を2%にしろとか、そういうことではなく、防衛上の防衛協力上の機能とか、役割について強化をしてくださいというのは、一般論として言ってくる可能性が、それはもちろん、お金がついているのとついていないのとあるけれども。たとえば、ついていないのとなれば、具体的に、たとえば、基地の共同使用をやるというのは別にお金必要ないですから。だから、少し増やさなければいけないけれど、私は日本の防衛努力もさることながら、フィリピンも結構、スカボロー礁が鍵ですね。と言いますのは、フィリピンとアメリカが結んでいる協定通り、フィリピンが5つの基地をアメリカに自由に使わせると、かなり強い抑止になるので、中国が本土から土砂を持ってきて、埋め立てをするという工事が長期に渡ってできないかもしれないけど、フィリピンにそれを嫌がられると困るので、総理はフィリピン側をこちらの方につけるために、随分、努力をしておられる。これは戦略的なアメリカに対する貢献だと思います」

オバマ大統領8年『中東政策』
秋元キャスター
「オバマ政権が打ち出した、アジア・太平洋地域重視のリバランス戦略。相対的に中東におけるアメリカのプレゼンスを弱めることになりました。イラクに関してですけれども、オバマ大統領は就任直後に駐留米軍の撤退を表明しまして、2011年に完全撤退しました。その年末、イラク戦争の終結宣言を行いました。一方、アフガニスタンに関してですけれども、完全撤退を表明するも2015年3月にその発言を撤回し、現在も一部の米軍がアフガニスタンに展開しているという状況ですが、森本さん、オバマ政権の中東政策をどう評価されますか?」
森本氏
「結局アフガン、イラクから引くと言いながら実態はその後、ISILが出てきたために、やむなくある程度の兵力を置かざるを得ないという状態です。アフガンについては人数を減らし、昨年の今頃8500人ぐらいまでになって、それを昨年の年末5500人に減らす予定だったのですが、アフガン大統領の強い要請によって米軍に引かれるとアフガンの治安が維持できないということで、現状維持のまま兵力を置いているということですね。イラクの方も完全撤退したのですが、ISILの侵攻を受けて結局はイラク治安軍を訓練支援する、後方支援するために5500以上の兵力を送った。これは戦闘には参加をしていません。けれど、シリアにも数百人。結局アフガン、イラクから完全に手が引けない状態がずっと続いていると。その状態が最初、つまり、アフガンで言えば、タリバン政権が崩壊するのに1か月がかかって、その後ウサマビン・ラディンも2011年の5月に殺害したのだけれど、アフガンの治安を維持するため一定の兵力を置かざるを得ないという状態がずっと続いているということなので、トランプ政権がこれをどうするかというのは次の大きなカギですけれど、1番大事なのはシリアの政府側、アサド政権の戦闘を停止して、NATO(北大西条約機構)軍とロシア軍の協力で、ISILを撲滅するとか、現地で封殺するという。これができれば1番いいですが、できなかったらロシアに任せるか、あるいはヒットエンドランで、米軍が短期で出ていって、攻撃をして戻ってくるみたいな、できるだけ介入を少なくして、損害を少なくし、あそこに留まっているISILを撃破するという目的は何としても達したい。これがおそらく次の政権のプライオリティなのではないかなと思います」
反町キャスター
「中谷さん、オバマ政権の中東政策はうまくいったのですか?それとも転んだのですか?」
中谷議員
「うまくいかなかったです。シリアについて、1番まずかったのはアサド政権が化学兵器を使った時に、(化学兵器を)本当に使ったらやるぞと言ったけれど、見つかったけれど、やらなかったんですね。それでアメリカの権威が失われて、大変な内戦になったと。それから、アラブの春がありましたね。あれに非常に幻想を見ていて、理想先行で、これの事態の拍車をかけたと。まずエジプトが混乱し、それから、リビアもカダフィが殺され、それから、このシリア。非常にこういう点において口では理想を言っているけれど、現実は伴わなかった。もう1つは、イランです。非常にイスラエルとの関係がアメリカは悪くなって、ネタニヤフ氏がアメリカに行って口論になるぐらいにですね。それに対して、中東全体がプラスの状態からマイナスに転じていますので、今度のトランプ政権の最大の課題、これは中東の安定だと思います」
反町キャスター
「兵は引いたけれども、混乱は増して、次の政権へのツケまわしが多くなったということでよろしいのですか?」
中谷議員
「いや、最終的な絵姿。これを見ずに撤退をしてしまったと。結果を考えて引かないとそのあとの混乱をもたらしますので、こういった分野で軍と政府の考えがずれていたと。この時期に辞めた高官もたくさんいるんです抗議して。大臣が急に交代をしたというのも、戦略的な問題で現実と実際がうまく伴わなかったので、結果として、混乱を招いていると」
長島議員
「これはブッシュ前大統領の残した負の遺産というのが大きかったと思いますよ。だって、あれだけ介入し、あとはそのまま全部、オバマさんに。だから、オバマさんだけが責めを負うべき問題では、実はない。これが1つ。アラブの春は、アメリカが何かをしようとしても難しかったですよね。燎原の火の如く国から国へ移っていった。その時に2つ。1つは、これはブッシュさんの反動なのだけれども、なるべく軍事力を使わない、なるべく介入しないで、たとえば、リビアだったらNATO、イギリスにやらせると。それが1つ。それから、たとえば、ムバラクさん、同盟国です、エジプトとは。しかし、ムバラクさんがああいうふうになるのを、失脚するのを見過ごしたと。現在の大統領にはムスリム同胞団のトップの人がなったわけですよ。イランの核合意でも、イスラエルやサウジアラビア、この2つの同盟国の意を汲みとりきれなかった。軍事介入もためらった。民主主義が広がることについてはいいと思ったと思いますけれども、肝心な同盟国を次々に失ってしまったという意味では、オバマさんの責任というのは大きい気はしますね。しかし、その前の負の遺産があまりにも大きかったと思います」
森本氏
「問題はこの新しい政権の構成メンバーで、たとえば、マティス氏のように中央軍司令官をやっていた。その下でインテリジェンスをやっていたのはフリン氏だったと。ポンペオ氏も中東への思い入れが非常に深い。クシュナー氏のようにイスラエルのエージェントみたいなのが中東を担当する大統領補佐官ですね。中東を担当しているんです。だから、黙って中東を見ているとは到底思えないですよね。だから、どういう手を打ってくるのかということを、我々は非常に関心を持っているのですけれども。もしかしたら、もう1回、中東にピンポイントで関わるということだってあり得ると。プライオリティが高いと思うんです。ISILをとにかく撃破する。どうやってやるかということが問題ですね。駐留をしないで、ヒットエンドランでやるか。海空軍、陸軍を使わないで、海空軍だけでやるか。どういう方法かはわからないけれど、とにかく黙って見ているとは到底思えないですよ」
長島議員
「だから、そこでロシアの役割が出てくるんですよ」
中谷議員
「だから、ロシアに対して働きかけをしていますが、トルコも現在、交渉に入っていますし、非常に悪くはなったけれども、非常に良くしようと努力をしていまして、ISILの対応も非常に効果的に進んでいて、峠を越して下火になりつつある気がします」

オバマ大統領8年『日米同盟』
秋元キャスター
「ここからはオバマ政権8年の日米同盟を検証します。2016年にオバマ大統領の広島訪問という、日米同盟にとって象徴的な出来事がありました。オバマ大統領の広島訪問、スピーチの中身をどう見ましたか?」
中谷議員
「オバマ大統領の判断によって実現をしましたけれども、70年、非常に未だにそういった悲劇の中で、多くの方々が苦しみ、心で悩んでいる、そういう方々にとっては本当に直接、語りかけをして、心に響く演説として、オバマ大統領の気持ちがしっかりと伝わった、良い訪問であったと思います」
長島議員
「良かったと思います。オバマさんは就任当初から、広島、長崎ということは意識の中にあった。鳩山さんもそういうインビテーションを送っていました。ただ、機が熟さないまま8年が経って、最後の最後に、最初はプラハでやって、最後に広島で閉じたというのは、オバマさんとしては非常に気持ちがこもってたと思います」
森本氏
「まったく同感です。この演説は、おそらく多くの日本人が非常に深い感慨を持って聞いたのだと思います。アメリカの中では一部反対する声があったに違いないと思いますが、これを仕かけてキチッと実現したのは、大統領の決断もさることながら、我が方の外交もかなりうまく成功し、岸田外務大臣、ケネディ大使、ケリー国務長官、皆の努力がこういう形で実ったのは日米関係にとって良かったなと思います」
反町キャスター
「オバマさんはこういう点では良かったと、こういう話になりますね?」
森本氏
「そうですね。人間が起こした歴史の過去にこういう形でキチッと1つずつ清算していくというのは、政治家の責任の1つなので、これは立派な業績としてあとに残ると思いますね」
反町キャスター
「アメリカの指導者が代わる中で日米関係はどう変わる可能性があって、それに対してどう備えなければいけないのか?」
森本氏
「私は極端なモノの考えですけど、これまでのように同盟という言葉が、これは共通の脅威があて、敵があって、これにある種の運命共同体として対応していくという、こういう従来型の伝統的な同盟というものをおそらくアメリカの政権は踏襲しないのではないかと。これはどういうことかと言うと、それよりももっと大事な、共通に共有できる価値観だとか、そういうものがあるとそれを重視する。つまり、アメリカと日本の国益が共有できるところもそれを共有する。だから、伝統的な意味での我々が普段使っている同盟というものと違うものに変質していく可能性がある」
中谷議員
「韓国もトランプ大統領によって軍事的な面の予算、そういうのは増やさざるを得ないような…心配しています。やはり日本もこういうアメリカの姿勢、オバマ政権の時もそうでしたが、世界の警察官をやめます、という状況になりつつありますので、民主主義と自由主義を守る、世界秩序を安定させる、そのために日本もしっかりやるべきことはやっていかなければなりませんので、アメリカに言われるまでもなく、日本自身が安全保障の努力をしなければいけない。そのためには予算とか、人の面、装備の面もしっかりしていかなければいけません。この間、オバマ政権の中で日米関係は非常にいい状態で、私も防衛大臣として日米ガイドラインとか、また平和安全法制、法律的な整備とか、共同訓練とか、連絡とか、そういった積み重ねがありますので、そういうものはそれをベースとして維持発展していけばいいと思いますので、しっかりアメリカに言われるまでもなく、日本がやるべきことはやっていくべきだと思います」
長島議員
「レーガン流を目指しているところがあるんですよ。力による平和。トランプさんていうのはレーガン流だけれども、価値観みたいなものはないと。ガチガチの現実主義。何が言いたいのかと言うと、アメリカ第一でしょう。アメリカの経済的利得がある場合とか、シリアを何とか安定させたいという時には、多少独裁政権でも、多少国際秩序を踏みにじるような、プーチン大統領とでも手を握って解決を目指すと。だから、1番似ているのは戦前の、独ソ不可侵条約がいきなり結ばれてしまって、平沼騏一郎内閣が、欧州情勢は複雑怪奇なりと言ったではないですか。そういう複雑怪奇なことを相当やってくる可能性がある方だと思うんです。それを日米同盟の強化にどうつなげるかと言ったら、安全保障における相互依存関係を深めていくしかないです。つまり、逃げられないようにするしかないし、日本がどうしても必要だという状況にもっていくしかないと。だから、役割とか、任務、そういう分担をはっきりさせた方がいい、もう1回はっきりさせるべきだと。ともすればお金の話をしてくるかと思います、トランプさんは。いや、お金の問題ではないでしょう。我々は切っても切れない、この地域の安定のために、日本はこういうことができる、こういう役割を分担できる、そういう話にもっていく必要がある。もっていくことによってトランプさん達は日本をさらに重視するようになると思うんです。それは同盟だからとか、価値観を共有しているからというレベルではなくて、実際に日本と組んでいくことが利益になると、アメリカの。そう思わせる外交安全保障をやるべきだと思います」

中谷元 前防衛大臣の提言 『日米防衛協力 ガイドラインの実行』
中谷議員
「オバマ政権とは非常に日米関係は良かった。信頼関係がありました。中でも日米の防衛協力、ガイドラインを合意しましたので、これを確実に実行していく。オバマ政権の中で日米安保条約は尖閣列島も含むと明言されました。これも信頼関係がありますので、トランプ氏としっかりとした信頼関係を活かして、オバマ時代の流れを引き継いでいけるように努力するべきだと思います」

長島昭久 元防衛副大臣の提言 『ぶれない』
長島議員
「このガイドラインの話ももちろん、そうですけれども、TPPについても別にアメリカのためにやるというよりは本当に日本の国益のためにTPPが必要だ。あるいは日米の同盟協力の深化に必要だと我々は判断をしたわけですよね。その外部環境が変わるから、ちょっとTPPは難しそうだからやめようとかではなくて、自由貿易のためにはこの仕組みが必要だと、アジア太平洋地域の安定のために日米同盟の深化が必要だと。ここは決めたらぶれない、そういう姿勢が大事だと思います」

森本敏 元防衛大臣の提言 『力は使用できる状態にして、はじめて抑止力になる』
森本氏
「オバマ政権の8年間で1番やってほしくなかったのは2013年9月の世界の警察官にならないみたいに、自分の力を自分で否定してしまう、今日の世界の混迷状態はこの一言がつくったように思うんですよね。2度こういうことはやるべきでないと。力というのは使うか、使わないか、わからないという状態で持っていることが1番抑止力になるので、それを、伝家の宝刀を抜かないと言ってしまったら、終わりです。だから、一切そういうことを言わない。強いリーダーシップを発揮できるアメリカに戻ってほしいと思うので、このことを非常に強く感じます。軍事力と言っても多種多様で、サイバーから、テロから、宇宙から、あらゆるものに対応しないといけないので、この力というのは広範な意味を持っているのですが、多種多様なリスクに対応できるものを、力を蓄えて、それを使わないなどと決して言わないということが重要だと思います」