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2017年1月16日(月)
『米中貿易戦争』危機 トランプ発言の衝撃度

ゲスト

林芳正
自由民主党参議院議員
呉軍華
日本総合研究所調査部理事 主席研究員
安井明彦
みずほ総合研究所欧米調査部長

トランプ政策で『負の波紋』? トランプ相場と米中経済の現状
秋元キャスター
「まずはアメリカ経済の現状を見ていきます。大統領選以後のアメリカ、日本、中国の株価の推移ですけれど、アメリカは2 万ドル目前まで株価が上昇する堅調さです。日本も円安が進みまして1万9000円台を回復しています。一方で中国は、トランプ氏の勝利後は伸びたものの、昨年11月をピークに、その後、株価は低迷しています。まず呉さん、2017年のアメリカ経済はこの株価のように堅調な見通しなのでしょうか?」
呉氏
「ある程度の調整はどこかの時点では出てくるとは思いますけれども、今回の相場の上昇は非常に期待先行でやってきたので、いつかは材料が出てくると大きな調整があると思います」
反町キャスター
「期待先行ということは、たとえば、インフラ投資とか、いろんなことを積極的なことをやると言っていることで、ポンと株価が上がったのでしょうけれども、ちょっとここのところ、これから先の部分がないねということを考えると、どうですか?期待先行だけで終わりつつあるのか、ここのところのトランプさんの各企業に対する発言とかを見ると、市場としては、もしかしたら、この人は間違った方向に持っていくのではないかなという心配が広がっているように見た方がいいのか?」
呉氏
「全体として、たとえば、ヒラリー候補と比べるとトランプ候補はどうかと。経済に対して、企業に対してどうか。私はトランプ候補の方がエコノミーフレンドリーというか、経済にとっていいと。この意味で2万ドルまで上がるかどうかはともかくとして、トランプさんが当選して、最初はちょっとショックがあるかもしれないけれど、いずれは上がるだろうと思っていました。この意味では、方向としては、本来の方向に向いているのではないかなと思います。ただ、上がり方ですね。まだ具体的な政策が出てくる前に、ここまで上がるのはちょっと懸念されるという感じがしますけれども」
反町キャスター
「エコノミー、ビジネスフレンドリーかどうか。アンチビジネスかどうかという点で、ここまでのトランプ次期大統領の発言を見た時に、個別の企業名を挙げて攻撃する。ないしはNAFTA、北米自由貿易協定がありながら、国境税ということを、何か言っているというような。あれを見た時に、ビジネスフレンドリーな政権だという印象を持ちますか?」
安井氏
「いや、それは、両方あると思います。拡張的な財政政策、それから、規制緩和です。これはビジネスフレンドリー。他方で経済にとって悪い政策というのは保護主義的な通商政策。それから、移民に対して厳しい姿勢。これは経済にとってマイナス。これは選挙の時からそうなのですが、選挙が終わった時に、マーケットでのストーリーのつくり方は、このうちのいいものだけが、大統領になればメインになってくるはず。なぜなら彼はビジネスマンだから、という話で…」
反町キャスター
「それは思い込み?」
安井氏
「思い込みだと思います。それはつくりたい話をつくった部分があるのだと思うんです」
反町キャスター
「それはマーケットが?」
安井氏
「トランプさん自身が何も変わっていないと、この間の記者会見でわかったのが、両方、どちらもあるんです。ただ、トランプさん自身にぶれはなくて、それはアメリカの雇用を守る。もしくはアメリカの雇用をつくる。そのためには、何でもやる。その中には、ビジネスから見れば良いものもあれば、悪いものもある。本人的には非常にきれいになっているのだと思います」
反町キャスター
「そこの部分をグーッと削ぎ落していくと、要するに、世界経済のことは考えていないのだと。アメリカ経済のことだけ、アメリカ人の雇用だけを考えた時に、減税もするし、インフラ投資もするけれども、保護主義をやるし、移民を規制する。そう考えると、1つの柱がドンと出てくるわけではないですか。その柱で今後もトランプ政権でいくぞと見た時に、株価って上がっていくものなのですか?」
安井氏
「それは良い政策の方、どちらに重点が置かれるのかですよね。ビジネス界から見て、悪い政策だと思っているようなものというのは、それを進めていくことが必ずしもアメリカの雇用にとってプラスにならないわけです。保護主義にしてもそうですし、移民が入ってこないということになれば、企業は人を雇いにくくなって、コストが上がってといろいろな問題が生じてくるわけです。そうであれば、やっているうちにどちらに重きを置くべきかというのがわかるはずだろうと。むしろ危険なのは景気が良くなくなってきた時、雇用が伸びなくなってきた時に、人気を回復するために、あるいはスケープゴートのように、悪い政策の方に偏っていくリスクというのはあると思うんですね」
反町キャスター
「具体的にどういうイメージですか?」
安井氏
「つまり、雇用が伸びないのは、移民がいけないだからだとか。雇用が伸びないのは中国がズルしているからだとか、そうしていく可能性がある。景気が良くなっていけば、そういう余計なことをしなくてもよくなるということ。そういう好循環になるか、悪循環になるのかということなのかなと思います」
反町キャスター
「呉さん、いかがですか?」
呉氏
「もっと大きなバックグラウンドで考えなければいけないと思うんです。ある意味で、2016年、トランプさんの当選に象徴されるようなことが、世界歴史的に場合によって、大きな出来事、境目になるかと」
反町キャスター
「それは良いこと、悪いこと?」
呉氏
「良いことか、悪いことか、価値判断はともかく置いておいて、少なくとも言えるのは、これまで特に冷戦崩壊以降の秩序の中で、グローバル化の中で出てきたやり方は、これ以上、たぶん行き詰ってしまうことを象徴しているのではないかなと思うんです。先ほど、安井さんのお話の中でも出てきましたけれども、企業にとって良いものは、場合によって、アメリカにとって良くないかもしれない。要するに、イコールにならないんですね。と言うことは、結局、民主主義、なぜトランプさんが選ばれたか。結局この民主主義とグローバル化の間で相容れないようなものがあるんです。と言うのは、本来であれば、デモクラシーというのは国境があるものですね、民主主義。グローバル化は国境をなくす動きです。簡単に言えば、この国の中の民主主義が企業の立場で考えた時、私にとって良くなれければ、自分の足でNOと言えるんですよ。国境を超え、出ちゃう」
反町キャスター
「よその国に行けばいい?」
呉氏
「ただ、政治家はその国にいて生きていかなければいけない。あるいは国益、もちろん、どういう捉え方かでありますけれども、考えると、結局、国境がないと、前提に考えなければいけない。そこで大きな矛盾が生じるわけです。ですから、今回のというか、現在、世界で特にアメリカで起きたことは、大きなバックグラウンドとして考えなければいけないと思うんですね。そこで、トランプさんのような人物が出てきて、こんなゲームはもう嫌だと。我がアメリカにとって、アメリカというスーパーパワー、アメリカという観点から考えると、まだ、トップですけれども、じわじわとパワーバランスが悪くなってきたんです。これは果たして我がアメリカにとって良いのかというクエスチョンを出したのが彼ですね。アメリカファーストかどうかはともかく、まさにその意味です。だから、ゲームチェンジャーですね。だから、Twitterとか、彼のやり方ね。我々は慣れないかもしれない。あるいはこれまで見たことがない。これは、ある意味で、彼がこれまでにないようなことを、なかったことをやろうとしている。だから、まずこれからの世界を、特にアメリカを見る時に、米中関係を見る時に、彼はゲームチェンジャーだということを念頭に置いて考えなければいけないのではないかなと思うんですね」
反町キャスター
「安井さん、呉さんの話を聞いた中で、たとえば、トランプ次期大統領がグローバリズムに対する決別というか、終焉というものをアジェンダとして持ってきた大統領だとした場合にですよ、そういうことがアメリカの国の富を本当に増すことになるのかどうかという見通し、どうですか?グローバリズムをやめることによって、アメリカが内向きになることによって、あの国は強くなれるのですか?」
安井氏
「それはなれないでしょう。なれないですね」
反町キャスター
「その議論というのは…」
安井氏
「アメリカにとって成長の原資というのは、海外に持っているところもありますから昔とはだいぶ違っているわけですよね。人口も先進国では伸びているとは言っても、ドンドン高齢化も進んでいる中で、海外の成長を取り込んでいかなければいけないという現実は変わりませんので、閉じていくということはその代償として成長力が下がっていく、アメリカの強みが活かされなくなってくるということだと思います。問題は政治との絡みで言えば、そういう犠牲を払ってでも国内の不満を抑えるような方向にいくのか。つまり、経済成長を犠牲にして、政治をある程度安定させるということを選ぶのか。それとも世界との関わりも維持したままで、成長させていくことで不満を抑えるような政策のやり方、もしくは企業の動き方ができるのか、その分かれ道だと思うんですね」

異例の『政治介入』と産業流出
秋元キャスター
「トランプ氏の先週行われました初の記者会見で政策について具体的な内容は明らかにならかったのですが、既に実績が出ているとして発言がありました。『私は、最高の雇用創出者になる。素晴らしいニュースが続いている。フィアット・クライスラーは国内に巨大な工場を建設した。フォードは10億ドルのメキシコ工場計画を中止し、ミシガン工場の事業規模を拡大することになった。ゼネラル・モーターズも続くことを願っているし、おそらくそうするだろう。その他にも多くの産業がアメリカに戻ってくるだろう』と、こういった発言をしているのですが」
反町キャスター
「フォードとフィアット・クライスラーは言うことを聞いてくれたと。いいよね。GMももうちょっとがんばってみてよ。個別の会社を挙げて褒めたり、叩いたりするという。これがトランプ次期大統領にとっては成果になっていると思っているわけではないですか」
林議員
「そうですね」
反町キャスター
「この成功体験が将来、災いなのか、幸せなのか、何をもたらすと見ていますか?」
林議員
「我々の今の常識で見ると、税制で優遇措置をつくるとか、補助金を出すとか、もっと」
反町キャスター
「個別企業でですか?」
林議員
「いや、クオリファイされたらということ。もちろん、フォードのためとかできませんから。それから、もっと中長期的に言えば、ジョブトレーニングをやって仕事ができるようにするとか。そういうので、そういうことが起こればいいんですけれども。お前、わかっているのだろうな、みたいなことで、たまたま今回やったというのであれば経済的合理性がない判断だと思いますよね。それが長続きするのかという意味では、結局、今勢いがあるからあれだけれども、政治的に人気がなくなってきた時に、やっぱり移ろうみたいなことになっちゃうと、今度は下り坂、後ろから押されるようなことに、あとでなるリスクというのはあるのではないかなと思います」
反町キャスター
「呉さん、いかがですか?」
呉氏
「グローバルな競争の中で、なぜここ十数年来、パワーバランスがこれだけ大きく変わってきて、シフトしてきたかというのは、片方が強くなってくるのが、いわゆる国家資本主義的な強い政府。干渉して、経済を成長してきて。エコノミストとしては私、かなりコンサバティブな方で、なるべくスモール、政府の関与は少なめの方がいいのですけれども、ただ…」
反町キャスター
「トランプさんがやっていることは?」
呉氏
「ただ、客観的に見て、片方はゲームのやり方がまったく違うでしょう」
反町キャスター
「片方というのは?」
呉氏
「たとえば、中国とアメリカの場合に、アメリカの場合は政府と企業がある意味、分かれて、プレーヤーになって、こちらは一緒になってやっていて、真ん丸と1つのパワーになる。その結果こういうシフトが起きているわけ、おそらくトランプさんの頭にどれだけ戦略があるかはわかりませんけれども、彼はおそらくこのままではスーパーパワーとしてのアメリカが衰退するしかないと。何とかこれを止めようとしていて、手段を選ばずに、出てくるのはこれだと思うんですね。これまでやってきたこと。だから、エコノミストとしては、本能的にこういうやり方は反対だけれども、ただ、もっと大きな枠組み、バックグラウンドで考えると、ある程度リーズナブルな部分もあるかなと。そうではないと太刀打ちできない」
反町キャスター
「こういうやり方をしないと中国に勝てないという意味?」
呉氏
「ある意味では」
反町キャスター
「そうですよね」
呉氏
「そうです」
反町キャスター
「林さん、現在の話、いかがですか?」
林議員
「おっしゃる通りで。たとえば、行政指導的に役所が、いかがでございましょうかと昔、日本でやっていましたよね。中国は国有企業だとすればアウトライトにやれると。だから、アメリカのような自由経済で、そういう、こういう個別のことをやらないということであれば、少なくとも自動車産業についてはなかなか厳しいということだと思いますけれども。トランプさんは自動車産業が強くなることによって、アメリカを強くしようとしているというよりは、政治的にあれだけのことをラストベルトに対して言っていましたから、そういうことに対する政治的な、恩返し的な意味で言っていて、本当にこのことが、彼がやろうとしている経済政策の中心になってくると思って本当にやっているかどうかはちょっと疑問があるのですけれども」
反町キャスター
「安井さん、ドイツのメディアのインタビューではBMWがメキシコに工場をつくって車をアメリカに輸出するのだったら、国境税は35%という話がありました。どう感じますか?」
安井氏
「そうですね。メッセージは明確だと思うのですけれど、それはアメリカの雇用を守ると。そのためには手段を選ばないということですけれども、別に高い税金をかけるところが、逆に言うと目標では当然ないわけですね。ですので、林先生からもありましたように政治的なアピールとして言っている部分というのは、かなりあるのだろうと。その目的はアメリカに雇用を残すことだとするのであれば、この政策が全てなのかというのが、重要になってくるわけで、実際には法人税の減税をするとか、規制緩和をする、そういった経済的にもアメリカにいていいよねという政策が、後ろからついてくるのかどうなのかというのがまさにポイントであって、そこを見ていかなければいけないと思います」
反町キャスター
「法的な建つけとして、よくNAFTAがあるではないですか。北米自由貿易協定は昔、社会で習ったような。メキシコ、アメリカとカナダとの間でゼロ、全てでないけれども、関税のほとんどをゼロに撤廃して、モノの輸出しやすくするという、このルール。これが基本的なルールとしてある中で、この国境税35%というのは現実的に可能なのですか?やったらどうなるのですか?もしアメリカ側がメキシコ産のBMWに35%、事実上、輸入関税ですよね、つけたらどうなるのですか?」
安井氏
「手続き的にできるかどうか、枠組み的にできるか、法律的にできるのかというのはまったく考えないとして、35%に関税を上げれば、アメリカ人が買うものが高くなりますので、消費者は困る。原材料を買って、モノをつくるアメリカの企業も困る。だから、あまりいいことは基本的にはないですね」
反町キャスター
「法的にはどうですか?メキシコから見たら、それはNAFTA違反だということで、WTO(世界貿易機関)に提訴をしますよね」
安井氏
「もちろん、そういうことになりますが」
反町キャスター
「やったらアメリカは負けるでしょう、だって勝てるのですか、これで。勝ち負けは考えていないのですか?この大統領は」
安井氏
「そこはいろんなやり方はあると思いますので、そこは抜け穴はあるんだろうと思います。ただ、ポイントは、それができるか、できないかということを議論するのはあまり意味がなくて、本人もそれを別に、最終的にそれをやろうと思っているわけではないですから。あくまでもそれはカードとして言っているわけですから。それを出して…」
反町キャスター
「カード、全部出しているではないですか?」
安井氏
「カードを出しても実際に使っているわけではないですから。そこは何をやろうとしているのか。それは、だから、雇用をアメリカに戻せるものは何なのかということで言っているわけですので、できるのか、できないのかということを考えていても、それができないのだったら、これをやるわとなりますから」
反町キャスター
「検証していっても、トランプ大統領が言っているだけでやらないよということがだんだんというか、いくつかばれていったら、今度、この政権に対する信憑性とか、信頼性とか、あの人は口だけとか、よく日本の政界で言われている人もいるけれども、そういう人になってしまったら」
安井氏
「ですから、そこで気をつけなければいけないのは、そこで言いましたように、カードですね。ブラフである可能性もある。ただ、全てがブラフということは、これまたあり得ないです。おっしゃられたとおり全部やらなかったら、誰も本気にしませんから。その中のカード、どれかのカードはどこかのタイミングで切ってくる可能性がありますよね。それはWTO違反かもしれない。でも、そんなのは関係ないよと言って、やってくる可能性は常にあるので、そこはもちろん、気をつけなければいけない」
林議員
「その通りやらなくても、何となく結果として、皆が喜ぶことが起きれば、35%かけずしても工場が残るという判断をしてもらった時点で、その工場の人は喜んでいるわけですよ。1回、言ったことに、少し自由ですから。大統領になる前ですから。だけど、あの人はやるかもしれないと思えば、判断に影響を与えますね。それだけでいいと思っているかもしれないですね、大統領は。そのへんは巧みで、商売の時だって最初から売ろうと思う値段で、これで買いませんかという人はいないのと同じで、吹っ掛けるわけです。そうしたら相手が寄ってくるからこのへんになるというのがあるし、どうもサポーターもそのへんはわかっていて、アメリカで最近、言われていることで面白いなと思ったのは、プレスは彼の言葉を真剣に受け止めていると。しかし、彼自身のことを真剣に受け止めていないと。サポーターは彼のことを真剣に受け止めているけれども、彼の言葉を文字通り受け止めていないと。こういう逆になっているという話があって、だから、そういう意味では、こう言った、ああ言ったというのは、丹念に追っかけるのですけれど、サポーター、国民の方があまりそんな細かいことを気にせずに良くなればいいやと思っている、どうも節があって」
反町キャスター
「林さん、サポーターというのは、トランプ次期大統領の人となりを、正確に把握をしているわけではおそらくないですよね?」
林議員
「たぶん雰囲気だと思います。何かやってくれるのだろう良いことをという程度のところで。私、面白い例えだなと思ったのは、プロレス、始まる前にマイクを持って、お前をぶっ潰してやる、1分でとかやるでしょう。そうすると、相手の奴がマイクをバーンとやって、いや、俺は30秒で倒すと言って。本当に30秒で試合が終わってしまったら興行が成り立たないわけですね。10分、15分ぐらいやって最後、お客が、あいつ1分で倒すと言って、あんなに時間かけやがってと怒るかといったら怒らないですよね」

貿易不均衡と為替をめぐる攻防
秋元キャスター
「トランプ氏は先週の記者会見で、中国との貿易に関して、このような発言をしています。中国との貿易では年間で何千億ドルもの不均衡がある。日本やメキシコに対しても、その他の国々に対してもアメリカは良い取引ができていないということですが、中国と並んで日本、メキシコもやり玉に挙げられたわけですが、実情を見てみますと、アメリカの貿易赤字は、中国は右肩上がりで増加しています。直近3か月では中国760億ドルに対して、日本は140億ドル程度。ドイツよりも少ない状況ですけれども、こういう状況で日本が中国と一緒にされるというのはちょっと抵抗感がある状況ですが、林さん、このトランプ氏の発言というのをどう見ていますか?」
林議員
「そうですね、数字を見て正確に言うとかというのは、もともとない人ですから。その時に思いついた国を言っているとか、そういうことだろうなと。1度マラフォートさんという人が入って、きちんと原稿をつくって、透明の板でやっている時の演説はきちんとできていましたけれど、それ以外の時は本当にツイートみたいな感じですから。そこまであまり気にすることはないとは思いますけれども、この中国にしても、日本にしても何か悪いことが起きている、みたいな、貿易赤字自体が。それは貿易が一方にとって不利になっているという見方をしているわけですね。貿易をやればどちらかが必ず黒字になり、赤字になるわけだから、それは双方で経済が最適化しているという基本的な理解というのはたぶんないのか。あったうえで政治的に言っているのか。どちらにしてもこれまでの共和党のメインストリームとは若干違う言い方かなと思いますが」
呉氏
「私はまだトランプさんが何となく選挙モードから切り替えていないと思うんですね。これは非常に、一般の、ほとんどのアメリカの、特に中西部、ほとんどのアメリカの人達にわかるかなという感じの言い方です。しかし、エコノミスト、経済がわかっている人なら、中国の為替介入とか、いろいろな面で違うよという話になるけれど、残念ながら、これはわかる人はごく一部でありまして、ほとんどの人達はわかっていないですね。本来であれば選挙の時に話して、選挙が終わったら、そろそろトーンダウンしてもいいような感じですけれど、どうも彼の動きを見ると、まだそのモードから切り替えていないような感じはします」
反町キャスター
「為替の話が出ましたけれども、トランプ次期大統領、選挙期間中も、中国は為替操作国だ、為替操作国だとずっと言ってきました。あれは正しい?」
呉氏
「この話は最初に2001年か2002年頃に、ワシントンですごく話題になったんですね。その時に中国人民元が過小評価とか言った。現在から15、16年ぐらい前ですけれども、その時、議論をしていて、それから、ずーっと議論があって、今、わかる人の間では、逆ではないかと。過小評価、中国が一生懸命、人民元を安くしようとしているよりも、逆にあまり安くならないように一生懸命に介入をしているんですね」
反町キャスター
「誰が?」
呉氏
「中国政府が」
反町キャスター
「それはなぜですか?」
呉氏
「中国で人民元安がずっと流れになっていて、外貨が減る。外貨は減っていくと、中国もいろいろ…」
反町キャスター
「為替レートが、ドンドン元安が進んで、外貨準備高が下がっていく」
呉氏
「ただでさえ中国経済はいろいろ問題を抱えていますから、大きな問題につながりかねないような懸念があるので、だから、決して中国にとって、人民元が安くなることはあまりいいことではない、現時点では。それでも彼が言っているのが完全にこういう事実を無視して、こういう事実がわからない選挙民に対してわかりやすいのですけれど。中国はレッテルを貼られているので」
反町キャスター
「中国は困っているのですね?為替操作国と言われると。いや、そんなことはないよと」
呉氏
「まずできないでしょう。彼がすぐ否定すると言いますけれども、いろいろ制度を変えたりするとできるかもしれないけれども、アメリカだって法治国家ですから。認定には認定の基準があるんですね。いろいろな基準を見ると、中国は当てはまらないんですね。もちろん、基準を変えれば、別の話ですけれども」
安井氏
「彼が問題にしているのは、常に貿易収支なわけですね。貿易収支で見ますと、先ほどありましたように中国は圧倒的に多いわけです。1番大きいわけですね。そうすると、貿易収支が非常に大きい、貿易黒字、対米貿易黒字が大きいということは何かズルしているに違いないと。だから、為替を操作しているのだ、こういう発想ですよね。為替を操作しているから、こうなっていると。こういうことを考えているのではなくて、これを見る限り、絶対に何かやっているに違いない、こういうロジックになっていますから、実際どうかはあまり関係ないという世界で言っているのだと思うんです」
反町キャスター
「ごめんなさい、マイナス5.1%と書いてあるということは、逆にやっているということですよね?」
安井氏
「そうですね」
反町キャスター
「元高の方に介入していると、こういうことですよね?」
呉氏
「支えるためにやっていると」
反町キャスター
「ここで既に破綻しているような話を、トランプ次期大統領は、選挙期間中…」
安井氏
「すごく無理を言えば、今はそうしているかもしれないけれども、そもそもの水準をずっと低くしていたのを今さらこうしているのであって、今だって人為的に低いとか、そういうことは無理やりに言おうと思えば言えます。ただ、彼の頭の中でそこまで無理やりな話を考えているかどうかというのはまったく別で、単純に貿易収支が大きい。だから、為替が問題だと。だから、介入しているかどうかはともかく為替にも問題があるに違いない。それぐらいの感覚だと思いますね」
反町キャスター
「為替操作国として認定して、何かペナルティがどうこうという議論がありますよね。それで言うと、中国はこの為替操作国には該当するのですか?」
安井氏
「今、何を見て判断をしますかというのがあります。ここに基準があります。その基準に抵触している部分で中国と日本とありますけれど、見ていただくとわかる通り、中国は1つしか該当しないわけです。日本は2つありますので。中国は、実は今の基準に従えば、為替操作国の認定にはまだ遠い距離にある。むしろ日本の方が近い距離にあるということになります。クライテリア、何を見ますかというのは法律で決まっていますが、数字は単純にアメリカの政府が決めているだけですから、変えようと思えば、いつでも変えられます。なので、恣意的に中国は、この水準でも逆になっているのは、なかなか厳しいですけれども。ただ、これも介入の期間をもっと長く、過去5年、10年で見たらどうですか、みたいなことをやってしまえば、やることは可能です。その場合の問題は、それをやると、それよりも近いところにいる国はいきがかり上、指定しなければいけなくなってしまうんですよ」
反町キャスター
「中国のみという網のかけ方ができなくなるということですね?」
安井氏
「するのはかなりトリッキーなので、場合によって日本も指定されてしまうとか、そういうところではもしかしたらあるかもしれないという付随的な問題はありますけれど。絶対に指定できないかと言えば、それはやろうと思えばできると思います」
林議員
「この3つ(貿易収支、経常収支、為替介入)を使う限りは、少なくとも韓国、ドイツ、台湾、スイス、ユーロ、日本をやってからではないと中国にいけないということですよね。2アウトですから。中国は1アウトだからね。だから、それを項目も全部変えて、いずれにしたってアメリカの決まりですから。アメリカで勝手に変えて、中国だけとなるようにするというのは不可能ではないと思いますけれども、それは本当に公平なことかと。意味があるのということになると、非常にクエスチョンマークはつきますけれども、本当に先ほどの話ではないけれども、やろうとして言っているのか。そういう牽制球を投げることで、向こうが何かやってくれれば、それでいいのだと思っているかということではないですか」
反町キャスター
「ちょっと牽制球を投げてみて、やってくれる自動車メーカーがいくつかありました。それも同じようなパターンで国に対してもやれるのではないかということ、中国に対して為替操作国として指定するぞとみたいなことを言ってみました。中国は何も反応しませんでしたとなった時に、彼はどうするのだと。こういう話になってくるんですよね」
林議員
「そうですね。だから、もう少し高い球を投げるか。別のところで何かをやってもらうように別の球を投げるかですね。首脳会談もそのうちあるでしょうから。そういう時に、実はこういうのもあってねという話ができるようになってくれば、実は中国も割と、そういうディールは昔からやっている国なので、意外と合ってね。オバマさんの時のように理念で、ノーベル賞も貰ったし、核をなくすのだ、人権だと言われてしまうと、中国には難しいところがあります。だけど、これとこれさえ何とかしてくれればとなれば、わかりました。では、この中でこうしてということが、むしろ噛み合っちゃう可能性はあるかもしれません」
反町キャスター
「ウォールストリートジャーナルのインタビューのところで、中国とは為替や貿易について協議を行い、一定の進捗が見られるまでは、中国と台湾に関してアメリカがとってきた、いわゆる一つの中国政策に同意はしないという、ここの部分。呉さんの個人的な感覚でも構いませんし、北京がこの発言をどう受け止めているのか?」
呉氏
「中国の立場から考えると、対外政策にはいろいろプライオリティがあるんです。最大のプライオリティは現体制の維持ですね。現体制の維持にもいろいろ条件があります。そのうちの1つは結局、共産党の政権の正当性のひとつが中国をまとめた、統一したと。そうすると、共産党政権の手で一つの中国政策が変わると、これは政権そのものにかかわるような問題ですね。ですから、私も驚いたのですけれども、彼はディールと言っていて、ディールする時にだいたい高いものを1つ出して相手と取引するんです。いきなり1番肝心の高いところを選んでやっているなと。この意味ではちょっとドキドキ、びくびくという、そういう感じはしますけれども」

強硬か融和か… 今後の米中関係
反町キャスター
「北京に対して、トランプ次期大統領が米中の貿易不均衡に真剣に取り組まないとここをやるぞ、と言ったとしたら、その目的は果たしている?」
呉氏
「ある意味では」
反町キャスター
「それはプラス、マイナスいろいろ出てきますよね?」
呉氏
「中国の立場から考えると、彼が初めて一つの中国政策も取引の材料になるよと言い出した時に、ある意味では、中国は落ち着いたアプローチをしていますね。それは一つ、原理原則を言います。これは絶対に許さないと。もう1つは、これまでのルールがあるんですね。アメリアの歴代政権、そのルールをきちんと守られてきた、米中間で。そうすると、こういう突然、アメリカの対中政策の流れから考えて、アメリカの内部からいろいろ反対意見が出てくるんですね」
反町キャスター
「トランプさんに対してですね?」
呉氏
「トランプさんに対して。現に起きていますね。オバマ大統領も含めて、いや、変わりませんよと。一生懸命、ケリー長官も違いますよと。メディアもそうだ、危ないことをやったなと。これがある意味、中国かなり大人の対応ですね。こういうルールです。それでももし聞かないようであれば、本当に経済だけ取引材料にしたいならば、ボーイング以外におそらくこれから出てくる農産品ですね。少しずつ出てくるのではないか。アリババの馬さんが行ったでしょう。彼が豪語したんです。5年間で100万人の雇用を生み出すと。想像し難い数字ですけれども、馬さんが言っているのは2つのことで、1つは中西部、もう1つは農業ですね。それが、トランプさんが1番リップサービスしようとしているグループです」
反町キャスター
「なるほど、中西部の雇用と、農産品の対中輸出なんだ」
呉氏
「これがどこまでできるかと。100万人の雇用をどうカウントするかですね。数字のトリックもありますけれど、正真正銘の100万人だったら中国の国内産業が大変になってしまう」
反町キャスター
「中国で失業が生まれてしまう」
呉氏
「おそらくまたアリババ流に、数字のトリックができるので。アリババが中国で3000万人の雇用をしたと豪語しています。この数え方は、アリババはネットでショップがあるんですね。取引があれば1とカウントされてしまう。こういうカウントをすれば100万も無理な数字ではなくなるかもしれない」
林議員
「一つの中国政策以上に使えるカードというのがたぶんアメリカにはない。なぜ最初から、この段階で使ってしまったのかなというのがちょっとわからない。専門家からブリーフを聞いて、そのうえで10コあるうちの5番目ぐらいだなというのを、やっていないのだと思います。たぶん自分の限られた知識の中で向こうの神経に触るものだからという程度で、最も大事な核心的利益ですよね。それを最初から使ってしまったというのがやり方はいつものビジネスのディールですけれど、もう少し研究してカードを揃えてからやれなかったのかなと思いはします。でもまあディールが始まっているとすれば、それを結果につなげていくということなのかもしれないと。馬さんが何をおっしゃったかですし、中国はしたたかですから、馬さんが最終兵器ではないですよね、おそらくは。まだいろいろあると思います」

林芳正 自由民主党参議院議員の提言 『したたかに長期的視点で』
林議員
「チャンスもあると思うんです。先ほどのような経済政策を、アメリカが本当に貿易赤字だけなくすようなことをやっているのだったら、こちらはその間にAI(人工知能)とか、ソフトの部分を強化するとか。AIIB(アジアインフラ投資銀行)なんかはアメリカが入らないなら先にいきますよと言ってみるとか。カードを持って、相手がどういうことを言ったら、これを使うということをやる。昔のように日米同盟をがっしりやって、未来100年ずっと大丈夫ですということでなくなるかもしれない長期的視点を持って、いろいろなカードを用意しておくべき時期ではないかなと」

呉軍華 日本総合研究所調査部理事の提言 『※日本、アメリカ、中国を三角形の頂点に記した図』
呉氏
「日本、中国、アメリカの間で、二等辺三角形ができれば、日本にとって1番良いのではないかなと思います。もちろん、価値観が同じとか、同盟国とか、こういう意味で、アメリカとのいい関係を維持するのは当たり前ですけれども、その一方で、中国を最大の仮想敵にして、いわゆる対中包囲網、こういうのがあるかはわかりませんけれども、いわゆる対中包囲網の最先端を走ってやるべきではないと思います。二等辺三角形になる必要はないけれども、不等辺三角形の関係、アメリカとの関係はより緊密かもしれないけれど、中国ともほどほどにやっていくという関係が1番いいのではないかなと」

安井明彦 みずほ総合研究所欧米調査部長の提言 『共生』
安井氏
「主にアメリカについてですが、何となくトランプさんの経済政策が成功したら良くないのではないかという印象があるような気がするんですね。それはそうではなくて、トランプさんの経済政策が良い政策、減税や公共投資を含め、アメリカの成長力を高める、さらに生産性も上がって次の段階にいくということであれば、日本にとってもチャンスなわけですね。日本の企業もアメリカでビジネスがしやすくなる。アメリカに引っ張られて日本も次の段階にいけるということになりますので、プラスの面も探して、したたかに共に生きていくという視点が必要なのかなと。怖がって、神経質になっているだけではたぶんチャンスを見逃すのではないかなと思っています」