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2016年12月19日(月)
日露トップ会談の虚実 急ぐ経済・動かぬ領土

ゲスト

渡辺周
民進党衆議院議員 元防衛副大臣
袴田茂樹
新潟県立大学教授
下斗米伸夫
法政大学法学部教授

北方領土『共同経済活動』 『特別な制度』のあり方は
秋元キャスター
「この週末に行われましたFNN世論調査の結果、今回の首脳会談で北方領土問題解決に向けて進展をすると思うかを聞きました。進展すると思わないが69.0%、進展するが26.5%となりました。北方領土で漁業や観光、医療など、日露両国が共同経済活動を行うことについて賛成ですかという質問に関しては賛成が77.3%、反対が16.5%という結果になりました。領土問題解決への進展は難しいとしながらも、日露両国による経済活動には賛成ということなのですが、袴田さん、この結果はどう見ていますか?」
袴田教授
「この難しさが多くの国民の方には理解しにくいと思うんです。共同経済活動の難しさが。と言うのは、安倍首相は記者との会見との時に、4島において共同経済活動を行うための特別な制度に関する協議の開始に合意したと。ただ、外務省のブリーフィングペーパーにもちゃんと書いてあるのですが、それについては別添のプレス向け声明をご覧くださいと。その声明には特別な制度のもとでというのが抜いてあるんですよ。これは、聞いたところではロシア側がそれを入れることを非常に強く抵抗して入れさせなかった。つまり、ロシアはあくまでもロシアの法律のもとでということを譲っていません。それは今回一緒に来たルシャコフ大統領補佐官もストレートに言っています。そのあとも言っていますし、だから、特別の制度のもとにこれを認めたとしても大変なこと。つまり、日本の法律でもない、ロシアの法律でもない、特別の制度がそもそも現実性があるのかという問題が生じますが、これを拒否しているということ自体、あくまでロシアの法律のもとでやるということ自体、そうすると、これはロシアの主権を認めることになるわけですから、つまり、日本は北方領土を放棄します、という意味になるわけですから、それほど簡単な問題ではないと思います」
下斗米教授
「この特別の法的枠組みと言いますか、特別な政治的な枠組みと言いますか、これを巡る、共同経済活動を巡る、議論の出方に注目しているんですね。今年の11月までは、プーチン大統領は確かに現在のルシャコフさんと同じ発言をしていますね。ロシアの主権のもとで共同経済活動をやると。ただ、これにはいくつかのバリエーションがあると述べているんです。今度、数日前の読売新聞だったと思うのですが、プーチンさんの記者会見では、1の可能性もある、1か2か3か4かいくつかバリエーションがある、対象は。共同経済活動については」
反町キャスター
「共同経済活動の島の数ですね?」
下斗米教授
「はい。今回出てきたのは4つの島というのが明確に出てきているんです。つまり、昔からある、2か4かという、つまり、歯舞、色丹は1956年の枠組みで、共同宣言で引き渡すことが決まっているわけです。プーチンさんは主権がどうなるかの対応はわからないなどと言っていますが、引き渡すことは決まっているわけです。残りの93%を占める国後、択捉の扱いについてロシアが、プーチン大統領がどうするのかというのは、この数日間がポイントだったのですが。これは安倍総理がいい仕事をしたと。つまり、4つが入ったということで、4つで共同経済活動をする。これはちょっと日本のマスコミの評価というか、現在の世論調査は少し安倍総理の努力を過小評価しているのかなという感じがします」
秋元キャスター
「経済活動に関する協議、今回、開始することが確認されたわけですが、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4島で行われることになったということです。4島において経済活動を行うための特別な制度について交渉を開始することで合意をした。経済活動は、両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識のもとに進められる。特別な制度は日露間のみに創設される。平和条約の締結に向けた重要な一歩であると、安倍総理は共同会見の中で話をしています。下斗米さんが先ほど言ったのは、ここに4島が入ったということ…」
下斗米教授
「これが非常に大きなポイント」
反町キャスター
「日露の間で共同経済活動をやるなら2なのか、4なのか、綱引きあったと見ていますか?」
下斗米教授
「私はあったと思いますね。論理的にはね」
反町キャスター
「日本はこれを4にしたい。ロシアは、できれば、国後、択捉は外して、歯舞、色丹だけで経済活動をやろうよと言った可能性、その理由としてはどういうものがあると見ていますか?」
下斗米教授
「まず自由往来、旧島民の自由往来が入るわけですね。それを広げていくと。そこにおける共同の経済活動について、漁業、観光、医療、いくつかのそういう分野が挙げられていますけれども、ロシア人と旧島民を含む日本人が一緒にこの島でやると。問題はどういう制度のもとで、どういう主権のもとでやるのか。ロシアはロシアの主権を言い、日本は当然、日本の主権を言い、問題はおそらく中間的な枠組みをつくれるのかどうか。これをつくったのだろうと思うんですね」
反町キャスター
「これからつくると総理は言っていましたよね?できたけど、言わない方がいいかもしれない?」
下斗米教授
「それに合意をしたということです。ちょっと日本側のプレス発表も、ややよくわからない部分があるのですが、国際約束という、ややこなれていない言葉ですが、これはロシア側の表現によると、国際条約。だから、個別のところ、個別の主権に関わらない国際条約、ミニ国際条約を2か国でつくって、それに基づいてやるという話ですね。そこで合意をして、だから、これからおそらくどれぐらいの時間がかかるかはわかりませんが、来年9月の東方経済フォーラムまでになっていますから、それまでぐらいになるのかどうかわかりませんが、これはわかりませんけれども、それまでの間にそういう制度づくりをする」
反町キャスター
「総理は行くと約束をしています」
下斗米教授
「ですから、そういう枠組みで合意している。その意味では、簡単に言うと、4つの島の中で日本人とロシア人がまず一緒に住む、あるいは少なくとも往来を自由にする、一緒の経済活動をするという枠組みを、乱暴に言えば来年中ぐらいに何となくどころかちゃんとつくると。おそらく制度的な基盤は20年前に1回、検討している」
反町キャスター
「小渕さんの時に?」
下斗米教授
「そうです。ですから、制度的枠組みありますし、もう1つは、あとで申し上げますが、実はそういう紛争地における経済活動みたいな話は、歴史的には経験があるんですね」
反町キャスター
「ロシアは?」
下斗米教授
「ロシアを含めてですね。ですから、そういったことをやると、実は考えるより容易にできるかもしれない。もう1つは、1万7000人の島ですから、1万7000人の島でやる経済活動というのは、そうは言っても、そんなに大規模ではない。ですから、簡単な、いくつかの制度について合意すれば、専門家達が話し合ってやれば、できない話ではない。それを2人のリーダーが見て、『はじめ』と言っている。そこが現在のこの一連のプロセスの肝なのだろうと思いますね」
反町キャスター
「まさにロシア政府が言っていたようなこと、ロシアの法のもとに共同経済活動を行うのだよという、この話と日本の主権、日本の法の建つけを壊さない、害を及ぼさない範囲でやるのだよと。重なる部分があるのですかというのがずっと疑問があるわけですよ。そこはどのように考えるのですか?言われたような共同経済活動を可能ならしむるような国際条約のようなものを日露が結ぶとします。それが結果的に北方領土、特に歯舞、色丹ではなくて、国後、択捉の中におけるロシアの主権を侵すもの、あるいは主権を削るものになり得るのかどうか、そこはどう考えますか?」
下斗米教授
「だから、そういう例が、これまでもあるということですね」
反町キャスター
「そこをロシアが納得したのだろうと見るんですね?」
下斗米教授
「そうです。だから、スピッツベルゲン島とか、これはスヴァールバル条約というのが1920年に、そういうのがあるんですね。要するに、これも国際条約。国際条約を結んでロシア人とノルウェー人が共同に住んでいるという。経済活動をそれぞれやっていると。もう1つ、プーチンさんは面白いことをおっしゃっていて、閉鎖されていた地域を開くことも考えるという、これもおそらく4つの島の話だろうと思うんです。ですから、使っていない土地がいっぱいある国後、択捉、特に択捉ではないか、これはわかりません。早急なことは言えませんが、にもかかわらず、そういうことも言っているものですから、ある種、枠組みをつくると。その意味での、安倍総理の言っている特別な枠組みというのが、そういうのがいずれにせよ、検討する」

日本・ロシア『譲れぬ主張』
反町キャスター
「首脳同士、安倍・プーチン間で特別な枠組みでやっていこうと言った時に、今回の、日露交渉の1つの特徴というのはボトムアップではなくて、たぶんトップダウンの交渉だという、ここはよろしいと思うのですけれども、首脳同士が、そういうことで、ちょっと制度的にいろんなものをつくっていこうよという、お互いに納得をしたとしても、お互いのそれぞれの世論にも配慮をした特別な制度でやりますと発表文には入れないけど、口頭で言うとか、様々な、お互いのバックに対する配慮がにじみ出た話になっているではないですか。その意味において、話がこれから先、だんだんやろうかということで、ただ、役所とか、それぞれ自治体に話が降りていった時、それはダメだと突き上げられる可能性、それはないと見ていますか?」
下斗米教授
「それはあり得ます、もちろん。あり得ることはあり得ますが…」
反町キャスター
「それはロシア側ですよね?日本ではなくて、当然…」
下斗米教授
「誰が妨害するかというのはいくらでもあり得ます。にもかかわらず、それを両首脳がつくるということを決意したというのが、1つの今回のポイントだろうと思います」
袴田教授
「先ほど、おっしゃられたこれまで入れない地域にも入れるようにする。これはロシアではよく、これは日本人だけではなくて、ロシア人も、通常の人は入れない地域というのを設けているんです。ただ、ロシアは、できるだけ広い範囲で、しかも、ロシアの法律のもとで共同経済活動を広げたいと思っているわけですから、これまで立ち入り禁止にしていた部分も、そこでも経済活動をおおいにします。しかし、ロシアの法のもとでというのは、それは一切変えませんよと。ルシャコフ氏にしても、それから、マトビエンコという上院議長が、11月1日に東京で講演をした時も、はっきりと4島で共同経済活動をやりたいと。しかし、当然のことながらロシアの法的な枠組みのもとでという形で述べている。しかも、このマトビエンコさんも、ルシャコフさんもプーチン大統領と非常に信頼関係の高い人物であるし、それから、こういう主権マターは、プーチン大統領の、これは専管事項と言ってもいい。その主権マターで、プーチン大統領の考えとは違ったことをルシャコフ氏とか、マトビエンコ氏が自分の考えとして言うわけがないです」

ロシアの懸念…『日米安保』
反町キャスター
「共同会見の時、プーチン大統領のこういう発言がありました。『日本とアメリカの関係は特別。両国の間に安全保障条約が存在しており、日本は決められた責務を負っている。この日米関係はどうなるのか私達にはわからない。我々の日本の同僚及び友人は、すべてのニュアンスやロシア側のすべての懸念を考慮してほしい』と、共同会見時のプーチン大統領の発言です。渡辺さん、防衛副大臣を務めた経験のある立場で、プーチン大統領は、その日米安保に対してどういう想いを持っていて、日米の安全保障体制に、どういう変化を求めていると、どう見ていますか?」
渡辺議員
「歴史的に、日ソの共同宣言の時も、2島、日本はあとから、2島を足して4島。その後1960年、安保の改定の時にどちらをとるのだと。ある意味では、ロシア側から2島をとるのか、日米同盟をとるのか、どちらだと。つまり、あの時の条件は、ソ連側は2島還してほしかったら外国の部隊を駐留させるなと、いわば米軍を切れと言って、条件をつけてきたわけです。ですから、現在もそのまま残っているのは、本当に還してほしいんだったら、日米同盟、つまり、米軍が現在は沖縄本島にいるけど、それが最終的に北海道や自分達の戦略的要衝である、この千島列島の要衝というところに手を出してくるのではないかと。実際、日本の防衛省もウォッチしています。これは当然、択捉や国後を。だから、偵察衛星もあれば、肉眼で見るものもある。いろいろな手を使ってウォッチしています。米軍がここまでやってきてあらゆる情報、特に国後水道というのがありまして、深さ500mぐらい、幅22kmぐらいの行き来するところがあるんです。この国後と択捉の間の国後水道というところが、ウラジオストクから出てきて、当然、宗谷海峡を通って太平洋へ出ていくんです。ですので、ここをウォッチされることを避けたいと。実際ここは、宗谷海峡は当然、日本は潜水艦の動きをウォッチしている。対馬海峡、津軽海峡も全部見ているわけです。それを承知のうえで、敢えてここは米軍から監視されるようなエリアになっては困るということで」
反町キャスター
「そうすると、話を聞いていると、この歯舞、色丹だけでもこれを日本側に還したら、ここに、たとえば、自衛隊ないしは米軍のとは言いませんけれども、非常に精度の高い対潜水艦観測機器、ないしはもっと露骨な軍事基地ができることをプーチン大統領は懸念している?」
渡辺議員
「もっと言えば、無人偵察機が飛ぶとか、無人の潜水艦探査機で、南シナ海で還す、還さないのと言ってる…。実際にこれは、向こうは嫌です」
反町キャスター
「このプーチン大統領の発言は、渡辺さんから見ると北方領土を還してほしいのだったら、アメリカと縁を切れ、と言っているように聞こえますか?」
渡辺議員
「縁を切れとは言わないまでも、当然、ここに米軍は展開しないということを何らかの形で確約しろと。それは無理ですよね。そうしたら、我々は、尖閣の話はどうするのか、恣意的にここを守ってください、ここは日米安保の第5条の適用範囲内にしてくださいと。いや、ここは相手を損ねるといけないから管理してくださいみたいな」
反町キャスター
「こちらはしてくれ、こちらはしないでくれとは言えない?」
渡辺議員
「そんなことになると。ですから、無理難題になると、敢えて友人などという、プーチンさんはここだけ使っていますね。我々日本の同僚及び友人と、ある意味で、懇願調だというちょっとニュアンスを感じているのですけれども、本当にそこまでするのなら、日米の基地をここには置くなよと。もっと言えば、米軍のみならず自衛隊も置くなよと」
反町キャスター
「日米安保5条の適用除外、仮に歯舞、色丹が返還された時に断る方法。要するに、たとえば、そこに米軍基地があり、米軍が展開する、駐屯するかは日米委員会というのがありますよね、日米委員会で…、日本側が拒否すれば、歯舞、色丹というのは、安保条約の適用範囲の外にすることができるという話ではないのですか?」
渡辺議員
「いや、それを、だから、向こうは求めているんですよね。ですから、返す時はここは非武装の場所にしなさいと。でも、現実問題として、日米同盟をここまで言っておいて、アメリカにここだけはロシアの機嫌を損ねないように、駐留しないようにやってくださいということが果たしてできるかと」
下斗米教授
「これはもちろん、日米関係、その問題が大きいわけですが、実はもう1つ厄介な問題があって、つまり、この地域は、渡辺さんがおっしゃったように、アメリカ軍だけではないですね。実は中国の軍隊がここを使って出ていく。もう1つ、さらに言えば、北極圏がこれから使える。来年からLLG線を引きますので、要するに、商業用のルートにもなるし、軍事用にもなるし、国際的な一種の十字路になるわけですね。そういう意味で、実は日本との、どういうアレを両首脳が考えているのかわかりませんけれども、それを考えるとしても、そういう問題を抜きにやることができない。2プラス2という日露の枠組みを敢えて、確かこれは民主党の政権の時にロシア側が求めてつくられた制度で、そうしてご案内の通り、ウクライナでちょっとアレして、これからまた復活するわけですが、ですから、いろんな意味で日露が協力するということについては、いろんな安全保障上の懸念があるという、私はそう読んでいるんですね。ですから、これは非武装になるのか、それともある種、沖縄みたいな形になるのか。誰も今のところ、おそらく交渉次第だと思っているのですけれども」
反町キャスター
「袴田さん、プーチンさんの発言は、アメリカを切れ、と僕は荒っぽい言い方をしちゃうけれども、何を狙っているのですか?できないのではなく、やるのなら、こういうことでと」
袴田教授
「ミサイルディフェンスシステム。日本とアメリカの、韓国はTHAADで配備されることになっていますが。日本にそういうミサイルシステム、アメリカと協力をするということには以前、ロシアはたいして危機感を持っていなかった。いや、構いませんよと。対象は北朝鮮とか、あるいは中国かもしれないけれど、それは少なくともロシアではないとわかっていますからと言っていたのですが、欧州のミサイルディフェンスシステム、これが今度、世界でロシアを取り囲む役割をしているのではないかという、この恐怖心というか、危機意識を強く近年、持つようになりまして、近年は、だから、日米安保条約のもとでそういうミサイルディフェンスとか、そういう分野でも日本がアメリカと協力することに非常に厳しい目を向けています。そういう意味で、私は2プラス2というのを今回は表には出ませんでしたが、これはロシア側が非常に求めている。と言うのは、1番の安全保障はトップの深い結びつきですよ。通常は同盟国とか、特別の信頼関係のある国でしか、結ばない2プラス2という。日米条約でアメリカの防衛力というのを非常に重視している日本が今度はロシアと2プラス2を結ぶと、米国の方が日本には情報をちょっとまともな形では与えられないぞという形で、日本に対する不信感は強めてしまうと」
反町キャスター
「プーチン大統領のこの言葉に応じて、日本側が先ほど、いろいろ議論になったみたいに、では、領土が返還されたら、その部分は非武装にしますよ。ないしは日米安保条約の適用除外になるかどうかわからないけど、そういうことをやりますと言うと、逆にそれは日米間にきしみが出てくる?」
袴田教授
「そういうことですよ」
反町キャスター
「安倍政権だったら、どちらをとるという議論になるのではないかと、こういう主旨で言っている?」
袴田教授
「かなりその問題が深刻になると思いますよ」

日露接近と中国の胸中
反町キャスター
「安倍総理の『アジア太平洋地域の安全保障環境は厳しくなっている。北朝鮮、中国の南シナ海、東シナ海、そして尖閣に対する振る舞い…。その中において、日本とロシアが安全保障分野においても連携できるようになれば、日本の立場はもちろん強くなるし、地域の平和と安定のために間違いなくプラスになる』という発言は北方四島、あるいは北方領土の一部が返還された時、ここを非武装化しなくてはいけない。軍事的な可能性があることによってロシアが懸念するのではないかということに対する総理の1つの答えが示されていると思うのですが、どう感じますか?」
下斗米教授
「ロシアの日本観というのは微妙に変わってきているんですね。1つは、少し大きな話になりますが、ヨーロッパ、古い西側というのがかなり弱くなっていると。おそらくG2、米中が強まっている。もちろん、中国はロシアの戦略的パートナーである。ただ、中国に対してロシアが持っているスタンスというのは中国の周りにある国々、日本を含む、ベトナムだとか、インドだとか、イランとか、こういったところともロシアが非常に友好的な関係を持つことによって、ある種、ソフトクッションみたいな形にしたいというのがあるわけですね。従って、多少ウクライナで中国に寄り過ぎたという反省もあって、逆に中国離れという動きがあるわけで、その意味で日露が話し合う場所があるよねというのが、ロシアの日本に対する見方ですから、多極世界の1極だという、その意味で、ですから、ロシアと日本は安全保障上の固有の利害のぶつかり合いは、領土問題を除けばないから、話し合いができるよねと、こういう話で安倍総理も納得されたのではないですかね」
反町キャスター
「この地域における日露間の連携は、あなたの国の安全保障にもメリットになるのだよという説得、これがアメリカに通用するかどうか、どう感じますか?」
下斗米教授
「おそらくどのアメリカと話をするのか、つまり、オバマさん、クリントンさんと、トランプ時代は少し違ってくるのではないかと思うんですよね。実はロシアは、クリントン候補が勝つとずっと10月まで思って、トランプさんが勝つという、ちょっと意外だった。そのへん少しロシアは混乱した可能性はありますけれど、トランプ・アメリカとどういう付き合いをするか、国務長官がエクソン・モービルの、要するに、サハリン1の責任者でもあるんですね。その方が入ってくるとなると、米露の関係が安全保障面では少し違ってくるという、そういう見通しもおそらくあるんだろうと思うんですね。そういう意味では、日本とアメリカとロシアが少なくともこの地域では話し合う必要が出てくる可能性があると」

国際協調とロシアへの向き合い
袴田教授
「日本にとっては現在も、見通せる将来に関しても、中国とか、北朝鮮の方が、より難しい国であるし、将来もそうであると。韓国との関係も非常に難しいと。そういう意味では、長期的、戦略的にロシアと安定した関係を持つことは非常に重要だということは一貫して述べている。ロシアに対して厳しいことだけを述べているわけではないので。そういう中で現在2プラス2をG7が対露制裁中にロシア側と安全保障面でこの状況のもと少なくとも強固な関係をというのは、日本としては積極的にできることではない。ロシア側がそれを求めているんですよ。それはG7による対露制裁の和を破る象徴的な意味にもなりますので。ロシア側は復活を求めている。日本はすぐに踏み切れない故に今回は表面に出なかったと」
反町キャスター
「アメリカとの関係が悪くなるのではないか、このロジックで日米関係がクリアできるかどうか、そこはどう感じますか?」
袴田教授
「どういう協力をするかによる。基本的な情報もお互いに交換し合うような、重要な軍事情報もそこまでやるというのであれば、日米安保条約を揺るがすことになりますから、今はそこまでできる状況ではない。けれど、長期的、戦略的にはロシアと安定した関係を持つ、その中に安全保障の問題も当然含まれるでしょう。トランプ政権ができていない状況で、しかも、プーチン大統領が訪日にした15日に、ヨーロッパでも、アメリカでも、極めて厳しい対露姿勢を示している時に…」
反町キャスター
「制裁延長されました」
袴田教授
「そう。日本だけがロシアに対して、仲良くしましょうというのを出せる状況ではないですね」
渡辺議員
「あまり難しく考えていなくて、つまり、今までは仮想敵国はソ連だったんですよね、冷戦の時は。ですから、北海道に攻め入ってくると、それが1つの基盤的防衛力構想と言って、陸上自衛隊を北海道に配備して、着上陸型の安全保障論を基盤的防衛力構想ということで変えたわけですね。現在は島嶼部、九州から沖縄にかけての、いわゆる東シナ海対策をこれからやっていく中で、かつての冷戦型のソ連、ロシアが脅威でなくなるのであれば、2プラス2は外務大臣と防衛大臣が両国から、2人ずつ出て、いろいろなことを話しましょうと。今までも救助だとか、海上の事故の共同訓練とかをやったのだけど、テロ対策とか一緒にやっていけば。ミサイルは確かに300kmの射程のところに、択捉にあるけれど、我々の国を狙うことはないよねとなれば、最終的に東シナ海、尖閣も含めて、あるいは北朝鮮のミサイル防衛を含め、防衛力を日本の沖縄であるとか、九州であるとか、これから、日本版海兵隊をつくっているところです。島が奪われた時には上陸して奪還するということもやります。かつてのソ連の脅威型、ロシアの脅威型という防衛構想ではなくて、そちらにシフトしていますから、そういう意味ではシフトも含めてできるのだよと。そうなったら、我々の立場がプラスになって、それはひいては東シナ海だとか、アジアの朝鮮半島に目を向けることがもっとできるようになりますよという意味で私はとっているのですけれども」

プーチン大統領の狙いを読む
反町キャスター
「今回の日露交渉におけるロシア側の、プーチン大統領の狙いは、経済なのか、安保なのか?」
下斗米教授
「ロシアの今の戦略というのは、明らかにアジア国家になりたいと。なぜなら、ロシアの経済の主力である、エネルギー資源を含めて、それが売れる先はアジア・太平洋であると。インドであり、インドネシアであり、シンガポールであり、日韓ですね。従って、アジアシフトというのは、ウクライナ紛争以前から決まっている方針ですが、これがプーチン時代に一斉に出てきた。そうすると、ソ連時代のイメージの枠組みとは違う、新しいロシアのアジアにおける存在というものを、とりあえず日本に認めてもらいたい」
反町キャスター
「経済、経済みたいな話ではあるけれど、本音は安全保障とか、アジアにおけるプレゼンスを強化することだという意味ですか?」
下斗米教授
「と思いますね。安全保障と言っても、いろんな次元があって、架空の次元は米露の、リセットの失敗以来、次のトランプ政権がどうするかは知りませんけれども、これは日本が手が出るような話ではそもそもない。そうではないけど、ある種、中規模な大国としてお互いちゃんとした関係にしたい。冷戦の遺産でこの問題が象徴的な問題ですから、何とか突破して、日本との関係改善をし、エネルギーだとか、日本からは科学技術だとか、そういったものも手に入れたいと。世界の政治経済は急速に脱エネルギー化しているわけですから、これに乗り遅れますと、インドだとか、中国、サウジアラビアにすら遅れると言われる。そういう意味では、科学技術だとか、IT(情報技術)とか、ロボットだとか、こういったものがある日本、あるいは人口が減って、そういったところで、どうやって快適な生活を保障していくのかという、8項目の提案ですよ。こういうものが喉から手が出るほどほしいのだろうと思いますね」
袴田教授
「安全保障の問題は当然関心がありますが、少なくとも現在の時点では、プーチン大統領はG7が対露制裁をし、それに包囲されているという意識がありますから、それを破るという、その意識が1番だと、現在の状況の下では」
反町キャスター
「対露包囲網に穴を開けるための最初の一穴が日本だと」
袴田教授
「そういうことです。日本が1番弱いと見ていて。2プラス2が結べたら、もう結んでいるのですが、それをいったん凍結しています。この復活をロシア側がソチで提案しました。日本が同意したら、ロシアは大満足ですよ」
反町キャスター
「首脳会談が頻繁に行われているだけでも目的は達成されているかもしれない?」
袴田教授
「ただ、今回はプーチン大統領は喜んで日本に来たとは思わないんですよ。安全保障の問題もありますが、安倍さんの最大の関心事は領土問題の解決で、できるだけ2人で静かにゆっくり話したいというので山口に招いたという、それをできるだけ避けようとして、プーチン大統領が東京でと言って、安倍さんも抵抗したけれども、押し切られて、両方ということになりました。そういう意味で、日本に行って、そもそも領土問題で譲歩をできるわけがないし、という意味で、現在の状況では、私は安倍さんの招待をある意味では、ありがた迷惑と見ていた側面もあったと思います」

渡辺周 民進党衆議院議員の提言:『正義は日本にあり』
渡辺氏
「伊豆の下田で結ばれて以来、国境は1回もソ連、ロシアのものになったことはないですね。ですから、正義をぶつけ合うだけでは解決できないです。我々は、歴史的、法の支配による正義を訴え続けると、たとえ、いろんな経済的な駆け引きがあるとしても、この均衡をちゃんと持って、我々の領土であるということを絶対に忘れてはいけないと。そういう意味で、経済交渉をしてもらいたい、経済協力も進めてもらいたいと思います」

袴田茂樹 新潟県立大学教授の提言:『東京宣言』
袴田教授
「私は東京宣言と書きました。これは、日本の首相や外務大臣が歴代、日本の平和条約に対する基本方針という言葉で述べている、4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するというのは東京宣言の言葉。しかも、プーチン大統領もそれを認めていたんです。従って、ロシアも認めるそういうところから仕切り直しをするという、難しいですけれど、ここから始める以外ないと思っています」

下斗米伸夫 法政大学法学部教授の提言:『自他共栄』
下斗米教授
「これはプーチンさんに送られた嘉納治五郎の字だそうですね。共存共栄ということだろうと思うんですけれども、この北方四島で共同経済活動を是非やって、成功させてほしいと。小さい、1万7000人の島ですから、やろうと思えば、私はできると。皆さんの議論は、大規模な国民国家の話、大規模な経済、そういうものではないですよね。だから、共存は可能だし、共栄も可能だし、それはやってみる価値があると。これが成功すれば平和条約につながると思います」