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2016年12月14日(水)
櫻井よしこ×宮家邦彦 北方領土と朴政権瓦解

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

櫻井よしこ×宮家邦彦 『瓦解』韓国との距離感
秋元キャスター
「日韓関係における日本の外交戦略について聞いていきます。先週、朴槿恵大統領の弾劾訴追案が可決しまして、朴大統領は職務停止となり、韓国の政治が、大きく混乱した状態にあるわけですけれども、まずは櫻井さん、現在の韓国の混乱をどう見ていますか?」
櫻井氏
「朴槿恵大統領自身に対する批判ではあるのですけれども、その後ろに、実は北朝鮮の情報操作とか、資金提供とか、工作員の送り込みとか、様々なことがあるということを私達は念頭に置いておくべきだと思うんですね。それと、このデモの主催者が誰かということで、ちょっとややこしい名前で書いてきたのですけれど。民衆総決起闘争本部というのがあって、そこにいろんな労働組合がたくさん集まって、つくっているのですけれど、その中に入っている団体ですね、これもややこしい名前なのですが、祖国統一反民族連合南側本部とか、民族自主平和統一中央会議とか、これは全部、北朝鮮勢力で、韓国の政府から国家保安法違反で何回も摘発されている組織なんです。まさに北朝鮮のエージェントそのものと言っていいような団体が闘争本部メンバーになっていて、この人達が明らかにお金を出している、人間を出している。ソウルのデモを見てみますと、すごくお金がかかっているデモですよ、あれは。いろいろなところに大型のスピーカーとか、大型のスクリーンが設置されていて、ユン・ミンソクさんという人が歌をつくったんですね。『これが国家か』という歌。『これが国家か』という歌をつくったユン・ミンソクさんという方は、1992年に金日成を称える歌をつくっているんですよ。明らかに、この人は北朝鮮系の人です。この人も4回くらい逮捕歴が韓国内であるのですが、その度にすぐに釈放されて出てくる人が今回、『これが国家か』という、革命の歌をつくりまして、歌詞の一部をご紹介しますと、セヌリ党も朝鮮日報も醜悪な共犯者だ、お前達も解体してやる、みたいな。これが詞ですよ。これを皆が歌いながら行進をするわけですね。でも、私はこういう側面があると同時に、韓国の一般大衆が意外に落ち着いている面もあるんですよ、実は。デモをしながら、この人達がすごく暴力的な行為に出ようとすると、いわゆる日本で言う機動隊が、非暴力、非暴力と叫ぶんです。そうすると、民衆の人達が非暴力、非暴力と答えるんです。だから、たくさんの人がデモに行って、朴槿恵さん、おかしいのではないの、と言っているのは、わかるのですけれども、この人達は必ずしも国を解体しようとか、セヌリ党を解体しようとか、そういう気持ちではなく、朴槿恵さん、あなた、おかしいよ、という抗議で行っているんですね。だから、非暴力ということに、この群衆の多くの人達は同調するという。だから、2つの動きがありますね。北朝鮮勢力に主導された、ともすると暴力革命にでも行こうかというような動きと、それに煽動をされて、デモに加わってはいるけれども、でも、その人達は国家転覆とか、国家解体というところまでは考えていないと。だから、私達は、韓国の暴力的ではない人達の存在をしっかりと胸に刻んで、ある意味で、この人達がいるのだから、韓国はある意味、支援をしていかなければならないという気持ちを持ち続けることが大事だと思うんです。ただ、支援の仕方はなかなか日本は難しいですけれど。でも、気持ちのうえではそこをちゃんと持っておかないと北朝鮮勢力側の思うツボになってしまうということがありますね」
秋元キャスター
「来年、韓国では大統領選挙が行われて、新しい大統領が誕生することになるわけですが、その大統領選の有力候補。現時点で、こういった顔ぶれが出ています。直近の支持率を見てみますと、野党第1党であります、共に民主党前代表の文在寅氏が23.5%でトップとなっているのですけれども、櫻井さん、朴大統領の一連の問題を受けて、韓国はこれからどういう方向になっていくと考えますか?」
櫻井氏
「弾劾訴追案が可決されましたね。今度は司法によって、きちんと精査される。最大限180日ありますね。その間ファンさんという現在の首相が大統領臨時代理のような形でなさるわけですが、ファンさんはなかなかの人物と私は聞いているんです。まともな人で、統合進歩党というイ・ソッキさんという李という字に、石という字に、基本の基という李石基さんという議員がいたのですが、この人は北朝鮮のエージェントみたいな人で、もし何かあった時には韓国でどのようにして内乱を起こすかという謀議をしていたことがわかって、裁判にかけられて、たぶん刑務所に10年とか、12年の刑期でいるんです。この統合進歩党を解体したのが現在の首相で大統領の代理になったファンさん。この方を中心にこれから何か月間の間、少し落ち着いて、韓国の国民の皆さん方も、少し気分を落ち着かせて、その中で本当にこのまま熱に浮かれたような形で、革命的な動きに入っていいのかと。私達の未来を、たとえば、文在寅さんとか、朴元淳さんとか、名前が出ていますけれども、この人達は皆、左翼ですよ。この人達に本当に次の世代の韓国大統領を任せていいのかということをしっかり考える時間をたまたま持っているわけです。だから、これから何か月間で何ができるかわかりませんけれども、私は、本当に韓国の人達にここで落ち着いて、自分達の国を北朝鮮とか、中国の方に引っ張っていかれてしまって、事実上、韓国が事実上ですよ、消滅してしまうような事態になってもいいのかと。そうではないはずで、自分達は自由とか、人権とか、民主主義とか、法の支配とか、日本とか、アメリカとか、自由陣営と同じような価値観でやっていきたいという、そのためには何をしたらいいだろうかというようなことを、落ち着いて考えてほしいと私は思っています」
反町キャスター
「宮家さん、文在寅さんはどう見ても左派だろうと、これはわかりますよ。李在明さんは左派というか、(韓国の)トランプと言われたり、ツイッターで、仮想敵国は日本だと書いたりした人、恐ろしい人ですけれど、安哲秀さんはいいとして、潘基文さんは現在、国連のトップですよね。この人がなるという可能性を見た時に、この人が韓国のトップに立ったら韓国はどういう国になるのですか?」
宮家氏
「彼がどのぐらい内政をご存知なのかは、私は知りません。国連事務総長としてしか私は知りませんが、外務大臣の時も、国連事務総長の時も、韓国の中のいろんなバランスをとってというよりは、どちらかというと外を向いてた人ですね。ですから、それが象徴的になるのはいいかもしれないけども、では、実際に、本当に選ばれてやるとしたら、相当立派な内政のブレーンなり、関係者を連れてこないとなかなか難しいのではないですか。そうでなくたって、この国の大統領はかわいそうにも、本当に選ばれたまではいいのだけれども、そのあとが大変ですよね。ですから、その意味では、いいブレーンがいれば、潘基文さんにもチャンスがあるのかもしれないけれど、その前におそらく与党がちゃんと固まる、それがまず最低条件ではないでしょうか」
反町キャスター
「櫻井さん、いかがですか?文在寅さん、潘基文さんという、この3人、非常に誰がなっても日本にとっては…」
桜井氏
「非常に悪いと思いますよ。潘基文さんが国連事務総長として、たとえば、歴史問題であるとか、日本に対して随分酷いことをおっしゃいましたね。酷いことと言うのは、国連事務総長というのは自分の国のことから離れて、国際社会のことを考えるポジションですよね。にもかかわらず非常に反日的な姿勢で、しかも、これは私達からも見て、これは言われてもしょうがないなという公平な意見ではなく、偏った意見でしたね。北朝鮮と中国にどちらかと言うと同情的な意見でしたので、私は潘基文さんが大統領になったら、現在よりずっと日韓関係が悪くなると思いますね」

『日露首脳会談』 北方領土は?
秋元キャスター
「北方領土問題ですけれども、安倍総理、プーチン大統領、それぞれのスタンスはこのようになっています。一昨日、安倍総理は『私の世代で、北方領土問題に終始符を打つ。その決意で首脳会談に臨みたい』と話しています。一方、プーチン大統領は昨日、ロシアの大統領府が公開しました、一部メディアのインタビューに対して『日本との間に領土問題はない。あると考えているのは日本。対話に応じる用意はある』と話をしているのですが」
櫻井氏
「国際政治というのはすごく厳しいものだと私達は認識するべきだと思うんですよ。個人的な信頼関係があるのがベストですけれども、個人の関係と国家の関係は違うということを今回、何となく突きつけられているような感じがするんですよね」
反町キャスター
「櫻井さん、悲観的と言っていいのか」
櫻井氏
「いや、悲観的ではなくて」
反町キャスター
「信頼関係があっても進まないよという感じ?」
宮家氏
「現実的なんですよ」
櫻井氏
「どの期間で考えるかということです。現在アメリカとロシアがくっつこうとしています。アメリカの今度の国務長官になったエクソン・モービルの会長はキッシンジャーさんに次いでおそらくプーチン氏に1番親しいアメリカ人であろうと言われているぐらいに親しい人ですね。その彼はロシアに対する制裁にも反対しました、クリミア半島の時に。ですから、トランプさんがこういった人を国務長官に選んだということはロシアに対してこれまでとは別のアプローチをとろうということですね。その意味で言うと、米露は接近する可能性がある。では、米露が接近した時に、中国はどういうポジションに置かれるかということです。それは米露の接近に関わらず、中露もいいですよということもあり得るかもしれないけれども、万万が一、中国が孤立するような場合は、これは日本とロシアの関係というのがすごく活きてくるわけですよ。ですから、国際政治というのはビリヤードみたいなもので、1つの球を打ったらそれがいろいろなところに波及していくために、いろいろなところで手を打っておかなければいけませんから、私は決して悲観的ではないです。何と言っても、世界のリーダーの中で、オバマさんは引退をしますね。トランプさんは、何となく危ういです。プーチンさんは本当に世界中から孤立していると言ってもいいです。だって、クリミア半島のこともあるし。習近平さんは誰の人望もないですよね。そういう意味から言うと、本当に安倍さんだけですよ。安倍さん、今ほど日本国の総理大臣として高く評価をされている人はいないと思いますね。だから、すごく有利なところにあるし、日本がどういう発言をするのか、どういう戦略を立ててどう進むのか、世界の政治の、1つの核ですよ。だから、そういう意味では、私は日本がきちんとやる余地というのはあると思うんです。ただ、その時に甘く考えてはいけないということだけの話」
反町キャスター
「櫻井さん、米露の接近が日露交渉に有利に働くか、不利に働くかは、ここはどう見ていますか?」
櫻井氏
「これは日本が、たとえば、8項目の経済協力を出して、プーチンさんは、これは領土問題とか、平和条約についての条件ではない、雰囲気づくりだと言っているわけですね。こういうことをやっても直接、平和交渉にも領土の返還にも結びつきませんよということを言っているわけですが、このようなロシアの厳しい姿勢。それに対して日本が経済協力をしていくというような柔軟路線をとらなければならないとしたら、米露が接近した時には、私達の国は自立できていませんから、アメリカの方針に反対して、ロシアの非常に厳しい策をとるということは難しいと思いますよ。安倍さん、非常に苦労をなさる局面が出てくると思いますね」

『北方領土』 現実的な戦略
櫻井氏
「日本とロシアのこの交渉、ずっと見てみますと1956年に共同宣言がありましたね。これは平和条約締結後に歯舞、色丹を日本に引き渡す。それから、1993年に細川さんとエリツィン大統領が4島の帰属問題を、法と正義を基礎として解決するというのがありました。1998年には橋本龍太郎さんとエリツィンさんの川奈会談というのがありました。これは正式な文書にはなっていないのですけれども、4島の北側に線を引いて当面ロシアに施政権を委ねるというような、主権だけは日本だよということを認めるという。それを2001年にイルクーツク声明という森さんとプーチンさんが出しているんですよ。イルクーツク宣言というのは、1956年の日ソ共同宣言を出発点としてというような文言がありますが、でも、あの中で東京宣言を認めているんですよ。ですから、プーチンさんが署名しているわけですから、プーチンさんもこの時までは東京宣言、4島の帰属問題をちゃんと法と正義をもとにしてやりましょうということは認めていたんですよ。それが2005年9月になったらガラッと変わって、第二次大戦後の国際法によって、自分達が正統なものとして、4島をソビエト、ロシアのものにしたのだと変わるわけですね。私はどうして今回、読売と日本テレビの取材を見て、一生懸命に探したんですよ。どうしてこのことをきちんと言わないのかと、質問側としてね。1番大事なところですよね」
反町キャスター
「あなた、態度が変わったでしょう、というところですよね?」
櫻井氏
「プーチンさんの言いたいことを言わせた。それはある意味で、聞くというのはいいですけれど、でも、もう一歩突っ込んで、あなた違ったわね、ということ、いったん認めた過去がありますね、どうして変わったのですかと。そもそも北方四島というのは、昭和20年8月9日、あなたの国が中立条約を破って、攻めてきたんですよと。その結果としていろんな問題が起きて、北方領土というのはその時に、あなた方が国際法に違反して獲ったんです。どういう言い方をするかは気をつけなければいけませんけど、このような基本的な要素をきちんと入れた質問をすべきだと思いますし、日本もこのようなことを日露の交渉の席で、ある意味では言わなければならない。なぜならば、プーチンさんがおっしゃっていることは日本側からするととんでもないことですよ。そうでしょう。2島を引き渡すけれど、その引き渡しの条件としてどういう状況であるとか、主権がどこに属するとか、こういうことが書いていないではないですか。でも、これはとんでもない解釈で到底、私達は受け入れることができない。であるならば、これは本当に、お互いの信頼のために本気で話をしましょうということで、いや、我々日本国としては、あなたの国の方が違法行為をしているのだと。国際法を見ても、国際的な状況を見ても、これが事実ですよということを、冷静に、丁寧に、しかし、はっきりと、どこかで言わないと、正常な交渉にはならないと私は思っているんです」
宮家氏
「先ほどの、プーチンさんが最初は受け入れたけれども、途中から考えを変えた。2001年ですよね。あの前後に、彼はおそらく大統領として、大きな心境の変化というか、考え方を変えたんだと思うんですね。それは単に日本だけではなくて、欧州方面でもね。結局、ロシアは言われた通り民主化をしてやってきたけれど、結局、欧米の連中が入ってきて、ロシアの富を収奪していったではないかと。すごく大きな敗北感、ないし喪失感があったのではないのかな。彼に関する本をいくつか最近、読んでいるんですけれども、確かにあの時期に彼が考え方を変えて、急に大富豪を逮捕してみたり、それから、もともと民営化されたエネルギー会社を皆、国有化していったりする。一連の流れと一致しているなと。その目的のためだったら、本当にどんな手段をとってでも実現するという強い意志を感じるんですよ、この人には」
反町キャスター
「今回の日露交渉に向けた日本側の狙いというのは、領土問題の解決の先にある平和条約の締結までも視野に入れた交渉だとした場合、プーチン大統領が狙っているものは何ですか?」
宮家氏
「それは15日にわかるんですよ」

北方領土と安全保障戦略
秋元キャスター
「こちらの地図ですが、アジア太平洋地域への関与強化を表明しているロシアは、太平洋への出入り口となる北方領土を軍事的に重要な拠点として位置づけていまして、最近、国後と択捉に新型の地対艦ミサイルを配備しました。もし日ソ共同宣言が現実的となって、歯舞群島と色丹が日本に返還をされる場合。この2島というのは日米安保の適用地域ということになりまして米露関係の緊張が続く中で、米軍の駐留が可能となるわけですけれども、宮家さん、この北方領土返還交渉と日本の安全保障体制との関係、どのように考えますか?」
宮家氏
「まずこの島の海が戦略原潜も含めて、ロシアの戦略的な核、もしくは抑止力に非常に大きな意味を持ち得るわけですから、場所的に。ですから、なかなか手放さないというのは、そういう側面があることをまず押さえなければいけないですね。そのうえで、おっしゃったように、2島、2つが還ってきたと。その時にそれは当然、日本が主権を回復して、施政権を持つわけですから、一般論としては、それは私だったら条約の対象になる、5条の対象になるのは当たり前だと思うんですね。つまり、そこに何かがあれば当然、同盟が発動されると。だけど、その前提においてどのようなものをそこに置くか。どのような部隊を置くのか、置かないのか。それは各国で判断をすべきことですよね。その中でもしロシア側との関係でいろいろな議論があり得るのであれば、それは譲るというか、そこは話し合いの余地があると思うんです。ただ、そこに適用されないとか、始めから適用除外という話を始めたら、では、他の南の島々はどうなるのですか。いろいろな中国との関係も出てくるわけですから。そんなに簡単に原則を譲るのは、私だったらやらないですよね」
櫻井氏
「絶対にやらないのではないですか」
反町キャスター
「ロシアがそこを条件として、還してあげるけれど、そこは安保の適用除外にしてねと言ってくる可能性はあると思いませんか?」
櫻井氏
「でも、もしそのようなことを言われた場合に、それを受け入れたと仮定しますね。受け入れてはいけないと思いますけれども。日本はどういう国になるですか。沖縄に米軍の基地があって、日米安保条約があって、その時、日本とロシアの関係でどのような条約が結ばれるかは知りませんけれど、北方領土の方にロシアの軍の基地とか、コーストガードの基地があると言ったら日本という国はめちゃくちゃですよね。そうしたら、これは他のところにも全部波及しますよ。尖閣だのいろんなところで。それから、ここに地図が出ていますでしょう。この地図をちょっと見ていただきたいですけれども、ここに千島列島ありますよね。樺太がありますね。1875年に千島樺太交換条約というのをやっているんです。この時にロシアがこの千島列島を日本に渡し、日本がサハリンと書いてありますが、樺太全島をロシアのものにする。面積は樺太の方が随分と多いんですよ。その時に…」
反町キャスター
「この時の交換条約というのは、ここまでの千島列島ですか?」
櫻井氏
「そうですね」
反町キャスター
「それと島全体を交換する?」
櫻井氏
「交換したわけですね。そうですよね、宮家さん。島の面積は別として、戦略的にすごく日本は賢いことをしたんですよ。だって、ここ、海、全部封じ込めちゃうんですから。あとになってロシア側は気がついたと思うんです。大変なことをしてしまったと。ですから、現在はこの島々の重要性というのは誰でも知っていますけれども、我が国の、先祖の皆さん方は非常に賢い戦略を当時していたと思うんです。現在、島々をロシアが還そうとしないというのは戦略的に、いかにこの島々が大事であるかということも頭にあると思います」
反町キャスター
「その意味で言うと、ここで議論をしたみたいな安保条約の適用除外というのはもってのほか?」
櫻井氏
「もってのほか、国の基本に反しますよね」
反町キャスター
「それをロシア側が言ってくるかは、蓋を開けて見なければわからない、既に言ってきているという人も一部にはいるのですけれど、これまでの日露交渉において。日本側は当然、毅然とした態度をとっていた。もしも過去においてあったとして、毅然とした態度をとっていたと思いたいですよね。それが、たとえば、持ち帰って検討しますと言っていたら、これは国家としてはちょっと違いますよね。その心配はないですか?」
櫻井氏
「私は今回、日本側が外務省をほとんど抜きにして交渉したんですかね。宮家さん」
宮家氏
「そこは知りません」
櫻井氏
「私もよくわからないですけれども、外務省はかなり横に置かれて、官邸主導だったということをよく聞いているんですね。だから、官邸主導でそのようなことは、なさらないだろうと思いますよ。もしそのようなオファーがあっても受けつけていないだろうと思います。その証拠にこの島で、主権はロシアのままで経済の共同開発をしようと言ったときに、官房長官の菅さんが、日本の主権とか、そういった原則というものを、きちんと法的立場を害さないことが前提条件だということをおっしゃっていますので、それはおそらくそういうことなのだろうと思うんですね。主権がロシアで、そこに日本が入ってきていいですよと。経済をやっていいですと言ったら、向こうの島だと認めて、そこにお金をつぎ込むわけですから、これは日本国民の立場から言ってもなかなか納得はできないし、国家的な観点から言っても非常にまずいことになると思いますね」
反町キャスター
「宮家さん、ロシアの立場に立った場合に、歯舞、色丹の小さい2つであろうとも日本に還しました。それが安保条約の適用範囲ですと日本政府が敢えて宣言をする必要はないと思うのですけれども、当然そうなるのだから。それをそういう前提で、その島の返還が行われた時にロシアにしてみたら、安全保障上の脅威を感じる要素になるのですか?」
宮家氏
「だけど、よく見てください。この色丹、歯舞の隣は北海道ですよ。もちろん、ここには日本の自衛隊もいるし、そこに入ってきたら当然5条適用になると決まっているわけでしょう。だったら、色丹、歯舞が還ってきたら適用になるに決まっているではないですか。それは還したのだから、それをまた獲りにくるのかいと。獲りに来たら、それは同盟が機能しますよと。当たり前の話ではないですか?」
櫻井氏
「ここ行ってみると晴れた日は見えるんですよ、島がね。本当に近いですからね」
反町キャスター
「そこは心配をしなくてもよさそうな。そんな感じがします。日本政府側としてはですよ。少なくとも。まさかそこで…」
櫻井氏
「そういった議論を私も聞きましたし、あることは事実ですけれど、そういった議論が出てきた時に、それは国としてあり得ないということを私達国民も含め、はっきり言った方がいいと思いますね」

安倍首相の真珠湾訪問
秋元キャスター
「ここからは、今月26日、27日に予定されています、安倍総理の真珠湾訪問について話を聞いていきます。安倍総理の真珠湾訪問は、現職の総理大臣としては初めてとなるわけですけれども、今回の訪問について菅官房長官、6日の記者会見で話をしています。今回の訪問は戦没者の慰霊のためであって、謝罪のためではないということなのですが、櫻井さん、まずこの安倍総理の決断、どう評価されますか?」
櫻井氏
「決断なさったんだなということを感じましたね。奥様の昭恵さんがいらしていますしね。ある程度、もしかしてということを予想させることですよね。奥様がいらしたということは。その時に菅さんがこれは謝罪のためではなく、慰霊のためとおっしゃったことも、これは正しい訪れ方だと思いますね。真珠湾というのは騙し討ちみたいに言われていますけれども、日本国としてはそういうつもりはなかったのであって、たまたま通告が遅れたということもありますが、軍事施設を中心に攻撃したわけでありまして、謝罪するのは間違いだろうと思いますね」
宮家氏
「私自身は、意見が違うかもしれませんけれども、大きな意味では、真珠湾訪問と(オバマ)大統領の広島訪問、等価ではないけれど、全体としてパッケージだと思っているわけ。オバマさんはある意味で、政治的なリスクをとって行ったわけですね。もちろん、日本だってアメリカだっていろんな議論が真珠湾についてもあるでしょう。しかし、これをやることによって、これから戦略的にものを考えていかなければいけなくて、我々の周辺で何が起こるかがわからない時に同盟関係が常に機能するようにして、常にレディでなければいけない時に、このような、もしわだかまりと言ったらいい過ぎかもしれないけど、何となく気に引っかかるものがなくなっていくことの質的な高みと言いますか。こういうものは、私は政治家同士でオバマさんとどのぐらい仲が良かったかのかは知らないけれど、この部分については、非常にうまく政治家として判断したのではないかと思って評価しています」
反町キャスター
「それは個人的な関係ではなくて、国と国との関係性にまで昇華されていくものなのですか?」
宮家氏
「象徴的なものではないですか、どちらも。ですから、いろいろな議論はあるのだと思うのだけれども、結果的に1つの問題をクリアし、次のレベルの信頼関係に上がっていくには非常に必要なものだったし、それができたのではないかなと思っています」
櫻井氏
「宮家さんも、私とは少し違いますよと。広島とパールハーバーとパッケージとおっしゃったけれど、安倍さんもバーターだと思われたくないということをおっしゃった。私もパッケージとは思っていないです。ただ、真珠湾に関しては民間の方がある意味では和解をしているんですよね。私はこの前に番組でお話申し上げたかもしれないですけれど、山本五十六さん(出身地)の長岡市。新潟県長岡市。その長岡市が何年も前から、真珠湾と姉妹都市みたいになって、8月15日の終戦の日とかにハワイに行って、花火を上げるんです」
反町キャスター
「長岡、花火が有名ですものね」
櫻井氏
「ハワイの子供達と新潟の子供達、中学生ぐらいの年代の人達がお互いにそこに行って、毎年、真珠湾とか、日米関係について、自分達の思うことを書いて、作文と言いますか、それをお互いに読んで、シェアして本当にこれから誤解のないように2度とこのようなことにならないように、戦いの悲劇を体験しなくても済むように、私達はお互いをよく知りましょうというので民間レベルでこういうことをやっているんです。そのような積み重ねが大事だと思っていますね」
反町キャスター
「この交流は、次に大統領になる人に引き継がれていくのですか?」
宮家氏
「1つのステージを超えたと思っています。トランプさんがどのような形で何を考えるかはわからないけれど、彼がそういうことに関心があるとは思えない。まったく違う視点からまったく違うことを考えていたりする気がするので。しかしながら、オバマさんの最後の時にこういった形のものが象徴的に起きたというのは良かったなと思っているんです。おそらく来年の1月20日以降はまったく違うラウンドが始まると思います」
反町キャスター
「ベースになるような、精神的なつながりになるようなものはできるのではないか?」
宮家氏
「そうです。それは将来効いてくるのではないか」
櫻井氏
「ただ、それをトランプさんが引き継ぐかどうかはわからないとおしゃっていて、私もそう思いますよ。トランプさんという人はまったく別のメンタリティでやってくると思いますね。それは、彼を動かすものはたぶん実利ですよね。アメリカ国民のための利益、ある意味で国益、アメリカ国民の利益で、これはどの国のリーダーも自分の国の国民が1番ですから、それは当たり前と言えば当たり前で。ただ、これまでのアメリカは大国として国際秩序をつくる、維持する、守る、そのために戦うという、スーパーパワーだったわけですけれども、アメリカはこれからはやりたくないと重ねてずっと言っているわけですね。オバマさんもおっしゃっているし、トランプさんもおっしゃっていてトランプさんは実際にしないかもしれないわけですね。そういう意味では、アメリカは大国だけれど、普通の国になるんですよ。その普通の国が日本と相対峙する時に、あなた、やるべきことをやりなさいと言うのは当たり前の話だと思いますので、私はこれを後ろ向きに捉えるのではなくて、ちゃんとした形で捉えて、アメリカに対してもきちんと説明できるように、日本国民に対してもきちんとこれからの日本国というものを維持していけるように、皆で考え、具体的に行動すべき時だと思いますけれども」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『G7でのリーダーシップ』
宮家氏
「G7でのリーダーシップと書いたのは、来年考えてみたら安倍さんはもしかすると最も在位期間の長いリーダーの1人になるんですよ。オバマさんもいないし、フランスの大統領もいなくなるでしょう。メルケルさんがどうなるかはわからないけれども。そうなったら、安倍さんが1番シニアになるかもしれない。この時こそ日本がしっかりとしたリーダーシップをとる時だと私は思います」

櫻井よしこ氏の提言:『日本の意思と力』
櫻井氏
「宮家さんがおっしゃったように、安倍さんがおそらく世界で有力なリーダーになる年だと思います。だからこそ日本がまともな国として、意思と力を持てるような体制をつくらなければいけない。それはもっと踏み込んで言うと、憲法論議をきちんとやって、憲法改正にまできちんと結びつける努力をしなければいけないと思いますね」