プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年12月6日(火)
トランプ政策波乱含み アベノミクスの行方は

ゲスト

伊吹文明
自由民主党衆議院議員 元財務大臣
浜矩子
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
永濱利廣
第一生命経済研究所首席エコノミスト

トランプノミクスVSアベノミクス 日本経済の行方は…
秋元キャスター
「まずはトランプ次期大統領が今月1日、オハイオ州で演説し『歴史をつくったが、本当の仕事はこれからだ。アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)を実行する』とアメリカの国益を最優先するアメリカ第一主義を訴えました。アメリカ大統領選から間もなく1か月になりますけれども、伊吹さん、このトランプ次期大統領の掲げるアメリカ・ファーストというのをどのように見ていますか?」
伊吹議員
「どうなのだろうな。今回、だから、アメリカ・ファーストというので、不満を持っている人たちに対して、アメリカを元のような国にするという結果、モンロー主義のようなことになってしまうと世界全体の経済がシュリンクしていきますからね。それは結局、自分達に跳ね返ってくるわけで、アメリカの牛肉に税金をかけるなら、日本の車にそれ以上の税金をかけてやるなんて言っているけれども、アメリカで動いている車はほとんどアメリカ国内でつくられているか、FTA(自由貿易協定)を結んでいる、カナダか、メキシコからアメリカにいっているので、その部品の工場とか、そういうものの雇用とか、セールスの雇用とかというのは、アメリカに随分貢献をしているわけだから。今後、あくまで貫き通すことによって混乱を生ずるのか。あるいは修正をすることによって投票した人をがっかりさせて混乱を生ずるのか。いずれにしろ、非常に不安定になると見ているんです」
浜教授
「アメリカ・ファーストと言いながら、実は本当の本音は、僕ちゃんファーストなんだと思いますね。自分がそれこそ強いリーダーとして前面に出ていく。自分が点数を稼ぐことができる、思い通り人の悪口を言える、人の悪口を思い通りに言えるのは私も好きですけど、そういう自分が我がもの顔で、いろんなことができるということが、彼の1番追求したいところで、今の日本の安倍首相も実は同じではないかとは思いますが、そういうものが前面に出てくるということは、すごく世界的な、グローバリズムというものをどう評価するかという面はもちろん、あるのですけれども。でも、グローバリズムというのは、うまく我々がそれをコントロールしていくことができれば、国境を越えて人々が手を差し伸べあう、支え合っていくという方向性を持っているわけで、そういうものが、僕ちゃんファースト主義によると、完全に反故になってしまう。そういう極めて危険人物が踊り出てきたなという感じですね」
反町キャスター
「永濱さん、選挙戦中、当選後も諸々の経済に関しても、トランプさんは言葉を飛ばしますけれども、どう見ていますか?」
永濱氏
「アメリカ第一主義ということから言うと、マクロ経済学的に切れば、いい意味でも、悪い意味でも、期待インフレ率が高まる要因ですよね」
反町キャスター
「アメリカのインフレ率が高まるのですか?」
永濱氏
「いい意味でも、悪い意味でも。いい意味は何かと言うと、要は、積極的な財政政策とか、規制緩和とか、これはいい意味で、リマインドプレイングと言いますけど、一方の保護貿易とか、移民の抑制というのはコスト・プッシュ・インフレと言いましょうか。海外から安いモノが入ってこなくなるし、国内の高い人件費を使わなければいけないわけではないですか。となると、マーケットは良くても、悪くても、結局インフレ期待が高まるということで、ドル高になって、円安になって、株が上がっているということですけれど。これが悪い方の保護貿易とか、移民抑制とか、そちらの方が出て、強く出るとこれはちょっと危険だなと。そういう意味では、現在のマーケットの動きは、若干楽観視し過ぎているのではないかという気がします」
反町キャスター
「言葉を変えるのではないかと思っています?実際、大統領になったら、かつて言ったことを修正するのではないかいう期待も、でも、マーケットしては、勇ましいことを言っているけれども、実際、本当にホワイトハウスに入ったら、ちょっと修正かけてくるのではないかなと、マーケットはそういう思いで見ていますか?」
永濱氏
「マーケットが期待しているからこそ、ある程度、マーケットはこうだと思っているんですね」
反町キャスター
「期待しているからこそ、上がっている?」
永濱氏
「具体的に言うと、何だかんだと言って、トランプさんはビジネスマンだから、企業にネガティブなことをやらないのではないかと、良い意味で考えているとか、さらに言うと既に出されている政策でも大統領が決まる前は、たとえば、インフラ投資も10年間で1兆ドルと言っていたのを、5500億ドルに下げたりしているではないですか。そういった意味で、期待感はあるのですけれども、あとで出てくると思うのですけれども、中国に対して挑発的な発言をしたりとか、いろいろ考えたりするとそこまで楽観できないかなと、個人的には思っています」

円安・株高はいつまで…
秋元キャスター
「トランプ候補の次期大統領の就任が決まってからの為替と株価の動き。トランプショックが駆け巡った先月9日には、日経平均株価の下げ幅は一時1000円を超え、1万6251円でした。しかし、その後トランプ政策の期待感から上昇に転じまして、今日は1万8360円で取引を終えています。また、為替相場は円安ドル高水準で推移をしています。永濱さん、今後もこの円安、株高というのは続くのでしょうか?」
永濱氏
「トランプ氏の一挙手一投足次第かなという感じですけれど、逆に言うと、一般的に考えれば、1月20日の就任会見まではそんな極端なことは言わないんじゃないかなとマーケットは思っていて、そこまでは何とか続くのかなとみられているのですが、実は今回の円安、株高というのは、実は別にトランプ期待だけでこうなっているわけではなくて、実は世界経済全体で見ても、今年の秋ぐらいから循環的に景気が上向きなってきたりとか、さらには原油が下げ止まった要因で、世界的にも物価が上がってきているという。別にトランプ氏でなくても期待インフレ率というのが上がってきて、そういった下地もあるので、そこも効いているということにすると暫くは。よほど変なことを言わない限りいくと思うんですけど」
反町キャスター
「1月20日までの命なのですか?この円安、株価は?」
永濱氏
「その時の発言次第だと思います。その時、本当にそれこそ保護貿易を強調するような発言をすれば、逆に言えば、現在の金利上昇、ドル高は容認できないという発言をしたら、一気に円高、株安にいく可能性も否定はできないと思います。わからないです」
浜教授
「何と軽薄な反応を市場はすることかということをつくづく思いますけれども。要は、久々の大型財政だということに飛びついているわけですよね。これはトランプ氏がやろうとしていること、言っていることは、超無節操型レーガノミクスという感じですよ。財政を大盤振る舞いするぜと、中国をやっつけるぜと。通商政策は僕ちゃんファーストでいくと。かつてのレーガノミクスを、輪をかけて節操なく、なりふり構わないという格好にしたものが出てきたということで、これは大盤振る舞い財政だから、景気が良くなるぜというので、株式市場は反応しているということですよね。金利が上がって、だから、ドルも上がるだろうということですけれど、そういう材料にしがみつけるところまではしがみついていこうという格好だと思いますし、いい材料を株という観点から見れば、いい材料が非常になかった状況にこういう威勢のいい話が出てきたので、それをはやしているというのが現状だ思います。その現状の中で、希望的観測がドンドン、また、その希望的観測を生むという格好の展開になっているということでしょうね。だから、先ほど、ちょっとお話のありましたトランプさんはビジネスマンだから、あまり企業に困ることはやらないだろうと、ビジネスライクにいろいろなことをやるのだろうというのも飛び交っている話ですが、だけど、トランプさんは果たしてどれだけまともなビジネスマンとして、まともなビジネスをやってきたのかということを考えてみると、本当にビジネスマンかというような面があるわけです。たとえば、このトランプ大学なるものがあって、トランプさんのビジネス戦略を教えるぜといって、高い金を巻き上げてと。それは詐欺できないかというので、70件にもなる訴訟がトランプさんに対して起こされる状況があったわけです。それは全部、大慌てで金で解決したわけですよね。だいたい2代目の経営者というか、大富豪ですし、本当に経営者としての感受性とか、感覚とか、手腕とか、倫理観とか、やってはいけないことと、やっていいことと、そういうのがあるのかとまず考えたうえで、ビジネスマンだから、ビジネスライクにやるのだろうと言うならば、ちゃんと見ておかないといけないですよね。そういうことも一切なく、日本の財界人なども、そういう大型インフラへ投資やるという発想に期待をかけるみたいなことを言っている、この状況は怖いと思います。そういうので、お互いに、いいよ、いいよ、と煽って、株も為替も舞い上がっちゃうと、それが違ったという時に、はしごを外された時は、非常に悲惨な状態になりますし、私は、たぶんもうちょっと長めに見た展開は、トランプバブル、転じてトランプ恐慌へと、そういう展開だと思いますので、バブルの方にしがみついてくっついていっちゃうと大変なことになると思いますね」

『アベノミクスにプラス』
反町キャスター
「財務省の伊吹さんの後輩にあたるスイス大使の本田さんが、ウォールストリートジャーナルの取材を受けて、アメリカの経済に関してどうなのだと。トランプノミクスどうなるのだと。思い切ったケインズ政策、公共事業をバンバンやって、利上げが重なれば、間違いなくドル高になるだろう。ドル高は日本にとって円安。アベノミクスにはプラスになるとまとめちゃったので、こういうシンプルな理屈立てになってしまうのですけれども、こういうような話をされているのですが、いかがですか?」
伊吹議員
「だから、ドル高になったら、アベノミクスにプラスかどうかはわからない。アベノミクスというのは国内の消費を第三の矢で増やして、国内の設備投資が増えることによって国内の雇用と国内の乗数効果による有効需要を期待しているというのが第三の矢でしょう。ここで言っていることは、海外で儲けたものを、同じ100万ドルを、日本円に評価をして、日本の上場企業の損益計算書に載せれば、利益が上がりますよということを言っているだけのことだと」
反町キャスター
「輸出が有利になるとか、そういうことは?」
伊吹議員
「輸出が有利になるということはありますよ。だけど、高度成長時代の日本は、貿易収支は大黒字で経常収支は赤字だったのだけれども、現在は貿易収支が赤字になったり、黒字になったり、コロコロしているけれども、基本的に日本が国内のいろいろな社会保障だとか、あるいは教育だとか、そういうものの資金繰りをつけているのは、海外からの収益、つまり、経常収支ですからね。かつての英国がそうだったわけでしょう。国内で働かないから資本と技術を皆、植民地へ持っていったと。それでドンドン送金がロンドン市場に行われたと。大喜びをして、ゆりかごから墓場までをやったと。ところが、投資先が皆、第二次世界大戦後独立をしてしまって、お金を送ってくれるところがなくなってしまったから、国際収支が大赤字になり、財政が大赤字になった。だから、そういう危険をはらんでいる日本というのか、先進国ではどこでも起こることなのだけれども、それをできるだけ地方創生とか、そういう形で、あるいは技術集約的というのか、労働力の生産性を高めるような投資でもって乗り切っていければいいのだけれども、これはなかなか難しいですよね」
反町キャスター
「浜さん、この本田さんの発言、どのように感じましたか?」
浜教授
「株が上がり、円が安くなり、強い企業はより強くなり、大きいところがより大きくなるということが、現在の日本経済が必要としている政策対応かどうかということが基本的な問題で、でも、この人達は、自分達が押し出した政策が、もともと円安を狙っているのだから、ドル高になるというのはありがたいということしか言っていないですよね。本当に目をつけるところが、政策に責任を持つ人々として、著しく無責任だと思います。それがはからずもこういう言い方などに出てきてしまっていると思いますね」
永濱氏
「裏づけのあるドル高であれば、アメリカ経済がちゃんと成長するドル高であれば、その通りだと思います。おそらく本田さんがそうやっておっしゃっているのは、実はこれと言うのは、財政政策というのが経済政策の最先端の議論の中で非常に見直されてきているんです。たとえば、象徴的なもので言えば、アメリカのジャクソンホールでシンポジウムがあって、シムズ教授というプリンストン大学の先生が物価水準の財政理論と言っ、要は、なぜこれまで先進国で金融緩和をやっても十分に効かないのかと。それは財政と裏づけがなければダメだと。そういう理論を言って、それだけではないですね。サマーズの長期停滞論も財政が必要だとか、さらにはイエレン議長も高圧経済とか言って、需要を刺激し、サプライサイドを強化するということが現在ブームになってきて、おそらく本田先生は、その裏づけのもとにそういう話をしているかなということからすると、むしろ正しくて、むしろケインズ政策はアメリカよりも日本の方が重要だと思います。必要だと思います」
反町キャスター
「日本でもっと財政出動をするべきだということですか?」
永濱氏
「2015年の税収は、国と地方を合わせて15兆円、アベノミクスありました3年間で増えているんです。その間の名目GDP(国内総生産)は26兆円しか増えていない。26兆円の名目GDPの増加の半分以上が税金で持ってかれているわけです。逆に言うと、アベノミクスがまずかったのは拙速な増税をやり過ぎたということが問題だと思います」

『TPP離脱』の影響は
秋元キャスター
「トランプ氏、先月の21日にビデオメッセージで、このように話をしています。『大統領就任初日にTPPからの脱退を通告する』と宣言をしています」
反町キャスター
「浜さん、いかがですか?TPPをやらない宣言、どう感じていますか?」
浜教授
「2国間協定というものを、トランプさんが非常に正当づけるような言い方をすると。ここが怖いですね。つまり、WTOというものが現実にあって、世界貿易機構ですね。これは戦間期において国々がやたらに、自己都合に基づいた手前勝手な2国間協定の締結合戦をすることによって、世界市場を分断し、囲い込み合戦になってしまったということへの反省のもとに、WTOの基本原則は、相手特定・地域限定的な経済連携を勝手にやらないと。全て、全方位的。この無差別に全て貿易相手と同じような、同じ条件で、貿易を自由化していくという無差別、差別することのなくお互いに恩恵を施し合うという体制を皆で守っていきましょうということになっているわけですね。日本もアメリカもWTOには加盟しているわけです。ですから、そのこととの関係で言えば、非常に大いなる今日的な通商原則の違反行為を平気で正当化している。それを正当化するということは、現在のWTOの主義で排除しようとしている1930年代的な危険な方向性にだんだんお墨付きを与えていってしまうということになる。ここは実は、私が1番怖いと思います」
反町キャスター
「バイの2国間の協議を求めてくるという話がありました。アメリカが、たとえば、TPPはやらないのだけれども。日本とバイでやろうよとか、そう言ってきた時、日本はそれに対してどう立ち向かっていくべきか。受けるべきですか?どうしたらいいと思いますか?」
浜教授
「まずは、ごめんなさい、我々は互いにWTO加盟国でございますから、そういうのはちょっと違反ですよと。ひょっとしてあなたはそれをご存知ではないのでしょうかとか言いながら、日本のような開放的な経済関係の中で、ここまでの成熟度と豊かさに到達をした国は、WTO原則というものを守るという姿勢を示す義務があると思うんですね」
伊吹議員
「浜先生のおっしゃったことは、それは当然そうあるべきですよね。だけど、そうではない連中ばかり相手にしながらやらなくてはいけないという現実をどう処理するかということを考えるわけだから、それは交渉ごとですから、打ち出しは、世界のルールに反しますよ、というところから始めるわけだけれど、いろいろとやりながら、トランプ氏より、日本は国民が1番有利になるように条件を引き出すということをしないと。もし言ってくればですよ、それは」
反町キャスター
「その意味で言うと、TPPはもうダメだろうという前提に立った時に、アメリカからバイでやりたいと言ってくる可能性をどう見ますか?」
伊吹議員
「バイでやるというよりも、トランプさんという人もメキシコやカナダとの関係を大幅に変えちゃうというような。ちょうどイギリスに我々が出て行ったところ、イギリスがEU(欧州連合)離脱した時と同じな現象が起こるわけでしょう。それはアメリカにとってトータルからすれば、アメリカの雇用だとかに得にはならないよねと。それをどう彼らが解釈するかということにかかっているので、率直に言うと、従来の人と違ってわからない人だからね。非常に不安定要素が多いということだけは覚悟して、身構えてやっていかないといけないと思いますよ」
反町キャスター
「アメリカからの提案があった時に、ないしはTPPに入らないとなった時にワーッと反応するのではなくて、暫く様子見をした方がいいくらいですか?」
伊吹議員
「そうだと思いますけど」
反町キャスター
「永濱さん、どうですか?今後の日本、アメリカとの向き合い方をどうしていったらいいと思いますか?経済政策については」
永濱氏
「トランプさんがなぜ2国間交渉をしたがっているのかと言うと、要は、多国間だと自分のところに有利なように交渉ができないからということではないですか。だから、2国間でとすれば、ジャイアンみたいな国ですから、やりたいようにできるということだと思うんですね。そういった意味では、2国間というのは結構、リスクが高いのかなという気がします。逆に言うと、たとえば、アメリカ抜きで、環太平洋で経済連携協定みたいなものを、組んだとするではないですか。そうすると、たとえば、具体的に挙げれば、アメリカから結構牛肉を買っているのですけれども、関税38.5%でしたか。違う国と組んだらちょうどオーストラリアから関税が9%で輸入しやすくなると言うと、アメリカからの牛肉の輸出がすごく滞るではないですか。そうしたら、すごく不満、批判が出てきます。そうなったら、どうアメリカの方が対応してくれるのかなというのは興味がありますよね」
反町キャスター
「とりあえず待って向こうの出方を見た方が賢いのではないか、そういうことになるわけですか?」
永濱氏
「そうだと思いますね」

トランプ政策と日本経済 大規模財政出動の行く末
秋元キャスター
「トランプ次期大統領の財政政策が世界経済に与える影響をどう見ていますか?」
永濱氏
「実現すればそれなりの大きな効果があると思うのですが、1つポイントなのが、実際にこの政策の効果がいつから出てくるのかということを、諸々の手続きを考えても、早くてインフラ投資が来年の秋ぐらい。減税に至っては再来年になるんです。そうすると、それまでの間、期待先行で金利上昇、ドル高になっているわけではないですか。そこまでアメリカ経済が耐えられるのかなという1つ心配なところ」
反町キャスター
「逆に言うと、現在これだけアナウンスするということはアメリカ経済にとってよくない?」
永濱氏
「そうですね。行き過ぎたドル高、金利上昇は当然良くないですよね」
浜教授
「大型の財政出動、大型減税、かつてサプライサイドの経済学ということをレーガン政権下で言っていました。減税をすればするほど税収が増えるのだということも言っていましたね。経済成長率が上がるから。それの超拡大バージョン的なものがまた出てきているということですね。ここ暫く財政がまともに機能できない状況がずっと続いてきて、金融政策に、世界的に、異様なる負担がかかってきてという展開になった出発点は、節度なき財政拡張というのが、アメリカにおいても、日本においても、要するに、財政を赤字にすることは経済成長率を高めることにつながるということが論理で、むちゃくちゃなことをやっていたことが結局、つじつまがあわなくなっていることの出発点だったわけですね。その出発点にまた戻っていくというので、財政というものが機能するということが待望久しいので、そこに皆飛びつく気持ちはあかりますけれども、それは財政のバランスがきちんととれたところから、2度と再びレーガン的にならないように財政が然るべき役割を果たしていくというならわかるのですけれども、突然高圧経済とか言い出しているところに、歴史から全然学んでいないではないかということを強く感じます。今こそバランスをとれた形でやらなければいけないと思うのに、これでいけるぜ、という感じで皆しがみついていくところに、再びこの道に踏み込むかという感が濃厚ですね」
伊吹議員
「財政を預かっている立場からすると、入ってくるもの(法人税率)は35%から15%にして、出すものはドンドン出すと、そんなことが国家運営として可能ですかねと僕は思うけど。経済の観点だけから政治家は財政を預かっているわけではないので、次の世代に対する責任を持っているわけだから、借金を残すということをよく言われるけれど、次の世代が納めた税金の配分権限を、前の世代が収奪しているということでしょう。国債を大量に発行しなければつじつまが合わないのだから。それはいつまでも続けるべきではない。財政を出動させて本当にいいというのは、出動させることによって、それ以上の税収が上がるという見通しがなければいけないので、アベノミクスが最初、比較的人気が出たのは、名目税収、名目ですから、税収がずっと上がってきたためですよ。トランプさんの今のことは責任持った政治家がやるべきことかなと思いますが」
反町キャスター
「日本の景気対策としても財政出動がいいのではないかという話がありましたが、どうなのですか?」
永濱氏
「まず断っておきたいのは、アメリカはこの政策がベストかと言うと、私はここまでやらなくていいのではないかなという気がするんですね。もっと財政出動が必要なのは、日本とか、ヨーロッパであって、なぜ経済政策の最先端の議論でこういった財政政策が見直されてきているかというと、レーガノミクスの時と決定的に違うポイントが1つあって、当時はスタグフレーションだったんですね。供給能力が足りなくて、景気が悪い中で、物価が上がっていってしまうわけですね。対して今回は、先進国はデスインフレですね。それは物価をある程度まで引っ張り上げるためには、もちろん、何でもお金を使ったらいいというわけではないですよ。効果的な財政政策をやることが効果的だという、そういう話です。いわゆるデフレ均衡みたいなところから通常の均衡にもっていかなければいけないわけですよ。経済がまわらないわけですよ。ずっとやれと言っているわけではないですよね。正常にもっていくために必要であって。逆に言うと、財政というのは借金を全部返さなければいけないわけではなくて、財政の健全化というのは、政府財務残高の伸びが、GDPの拡大内に抑えられてればいいわけですね。さらに言えば、なぜ物価を上げなければいけないかと言うと、借金はインフレの状況になれば実質的な負担は減っていくわけではないですか。そういう意味では、ある程度物価を上げていかなければいけないので、総合的な判断のもとで、現在の局面では、日本とか、ヨーロッパみたいな、金融緩和を相当やったんだけれども、一方で、緊縮財政とセットでやったら厳しかったねと。あとは財政と、そういう議論になっているんです」
伊吹議員
「日銀総裁の黒田君の心情を言えば、カンフルを打て打てと言われたので、自分達は随分カンフルを打ちましたと。ちょっと元気になったねと。だけど、これからいよいよ体力の増強、よく規制緩和とか、言いますけれども、それがそうかなと思いますけれども、政府の責任ではないのかと、黒田君は思っていると思いますよ。彼の心境を代弁すれば。そうすると、財政支出をするというよりも労働生産性を上げないといけません。労働生産性を上げるということは、1つは日本人の性根を叩き直すということ。経済評論家の人は、アベノミクスを成功させるために労働生産性を上げなくてはいけないと。どうするのですかということを、むしろそういうことを言う人に聞きたいですね。1つは、安倍さんは第1次安倍内閣の時は教育基本法を改正するとか、そういうことをして、かつて日本人が持っていたような矜持みたいなものをもう1度取り返すと。これは10年、20年かかりますね。もう1つは、労働力はあまり使わなくても収益が上がってくるような研究・開発投資を見つけていく。もう1つは、日本人が常に成長していなければ、満足できないというわけではないですよ、ここまでくれば。政治的には常に経済を成長させて、今日より明日、明日より明後日と言わないと票が入ってこないけれど、だけど、ある時点で足るを知るということをしないと、1週間の間に4日ぐらい好きなフリーターやアルバイトをしていれば、少なくとも食べていくには困らないレベルの国なってしまっていると、日本は。そういう労働力を使って、国内の有効需要になる国内の設備投資はできませんよ。だから、皆海外に抜けてしまう。だから、そこのところを海外で一生懸命働かせてくださいという人の労働力を使って儲けた金を国内に送金する。100万ドルを送金して、100万ドルは変わらないけれども、為替レートが変わっただけで景気が良いとか、悪いとか言っているのが現在の日本経済なのだから、そこのところを直さない限りはダメでしょう。財政出動だっていいんですよ。財政出動するのであれば、その財源は国債発行でやるのか、それとも増税でやるのかということ。使う先も、どういうところへ使うのか。公共投資と言うけれども、公共投資でかつてのように、雇用だとかセメントだとか、鉄鋼だとかグルグルまわるほどの、日本の状態ではないでしょう。そうすると、研究・開発投資とか、そういうものをどこまでやっていけるのか。そういう見極めをして財政を使うということでしょ」
永濱氏
「おっしゃる通りだと思いますよ。むしろ育児とか、教育とか、将来への期待に働きかけるような、将来不安をなくすような、そういったところに使えばいい。労働生産性で言えば、日本というのは労働市場が流動化していないというのが1つあると思うので、解雇規制を緩和する一方で、職業訓練を安くするようにお金を使うとか。日本は少子化が問題なわけではないですか、たとえば、極端な話、公立の幼稚園とか、学校を含め、授業料をタダにするのには2兆円ぐらいでいくわけですよ。無償化するだけでも、子育て世帯には将来不安の軽減につながって少子化対策にもつながるし、そういう方向にもっと財政を使えばいいと思います」
浜教授
「以上のいずれも重要なポイントでありますけれども、だけど、現在の日本経済が直面している問題の本質がどこにあるのかということとの関わりで、どういう政策対応をするのかというのが当然、決めていかなければいけないわけですよね。現在の問題は、どこにあるかというと、私は豊かさの中の貧困問題だとずっと思ってきたんですね。日本経済は世界に冠たる豊かな経済になってしまって、伊吹さんがおっしゃる通りで、連綿と経済の規模が大きくなっていくなどということをもはや必要としていないわけです。そういう豊かさを満喫しているのに、相対貧困率ではかると、16.1%という貧困率になっていると、6人に1人の人が貧困だと言うわけですよ。こんなに豊かな国の中において。こういう状況を是正していかない限り日本経済はまともに人を幸せにできるようなまわり方になっていかないと。そこは分配の歪みですよね。ここを是正するために財政も金融も政策はそこに神経を集中するというのがまっとうな対応だと思います。だから、貧困率の低い国、デンマークとか、向こうの国々では5、6%ですから、せめてそのへんまで貧困率を下げるということに集中していけば、そのために何をやるのと言うと、所得再分配ですから、金持ち増税、あるいは企業も増税だっていいのかもしれません。そうやって取ったものを貧困解消にもっていくというようなところに、財政政策も焦点がシフトしていくというのが本質的な問題だと思いますね」

アベノミクスの行方は
秋元キャスター
「日本としてはトランプリスクにどう備えていくべきでしょうか?」
浜教授
「日本に関する限り、アベノミクスがある限りにおいてはトランプ氏であろうとトランプ氏でなかろうと、そこに本質的な問題があると。アホノミクスが日本経済のバランスを突き崩し、日本経済の本質的問題に焦点にあてようとしていないということが厳然とあるので、トランプ氏がどうであろうと、そこは動かしようがないので、そういうことはまず踏まえておかなくてはいけないと思います。それを申し上げたうえで、トランプ氏というものに対して、日本のみならず世界的にどう対応するかということで言えば、彼の自分さえ良ければという発想によって、我々が、グロバール経済が全体として、1930年代に引き戻されていかないようにすると。そのためには彼に対してどう対処するべきか、何をやっていくべきかということをきちんと考えていくということですね。今為すべきことは何かということに、ああいうのが出てきたということに惑わされることなく、見つめていくということが重要だと思いますね。だから、トランプ氏に反応するという発想をまず捨てた方がいいということです。トランプ氏はやっつければいいのだと。アホノミクスも」
永濱氏
「浜さんと結果は同じですけれども、意見は違うんですけど。私はアベノミクスは基本的に正しい方向だと思うんですね。道半ばで、足りない部分があると思っているので、逆に言うと、トランプ氏がどうなろうと、それはどうしようもないわけではないですか。これまでの3本の矢のところを強力に進めていって日本の内需を拡大させていくところに集中するのが、まず最大のポイントですし、可能であれば、経済連携協定ではないのですが、アメリカの方が必然的に追い込まれるような形で良い方向に誘導していけるような、外交とか、通商政策とか、進められたら、なおいいかなと考えます」

伊吹文明 自由民主党衆議院議員の提言:『エリートは間違う 大衆は怒る おでんやの湯気の向こうの浮世かな』
伊吹議員
「トランプさんというよりも日本の政策決定についても自戒を込めて。つまり、政策を決めているとうぬぼれているエリートはだいたい間違うことが多いという謙虚さを持ってもらいたいという、これが間違うと大衆が怒る。これが結局、世界各地で起こっていることですね。トランプさんを当選させ、ポピュリズム的政党が各地で起こる。だから、エリートと言われる人、あるいはエリートとうぬぼれている人は、町のおでんやに行って、湯気の向こうで、浮世で、どういう、庶民が言葉を交わしているかということを是非理解してもらいたい」

浜矩子 同志社大学大学院ビジネス研究科教授の提言:『基本に忠実に!!』
浜教授
「基本に忠実に。これが現在の日本の政治と政策に最もできていないということだと思います。だから、トランプ氏であろうが、トランプ氏でなかろうが現在本当の問題は何なのだというところにしっかりと目を向けて、経済政策というものには重要な役割があるわけです。経済のバランスとキチッと保っていく、そのことによって弱者を救済すると。そこに忠実であることというのが今ほど重要だったことはないと思いますね」

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミストの提言:『ワイズスペンディング』
永濱氏
「ワイズスペンディングするには、1つ障害になるのは、2020年のプライマリーバランスの黒字化だと思うんですね。私はそこまで言いませんけれども、シムズ教授が言っていたのがインフレ目標2%達成するまで消費税を上げないと言うべきだと言っていたのですけれども、私はそこまで言わないですけれども、せめてプライマリーバランス黒字化ではなくて政府債務残高GDPの上昇を止めるという目標に変えた方がいいのではないかと。そうしたらこちらの制約が弱まるかなと」