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2016年11月28日(月)
経済同友会トップ登場 成熟日本の『成長論』

ゲスト

小林喜光
経済同友会代表幹事
大山泰
フジテレビ解説委員

経済同友会 小林代表幹事に問う 世界の新潮流と日本経済再生
秋元キャスター
「今年の大きな出来事の1つに、アメリカ大統領選挙ありますけれども、この事前の予想を覆してドナルド・トランプ氏が次期大統領に決定しました。そのトランプ次期大統領がこれまでに主張してきた、主な経済政策はこのようになっていまして、通商に関しては、TPPを脱退して、2国間FTA(自由貿易協定)を重視とか、税制に関しては、法人税・個人所得税の大幅な減税。国内についてはインフラ投資の拡大、エネルギー産業、金融などの規制緩和などを挙げているわけですけれども、日本の経済にも大きな影響を与えるアメリカ経済ですけれども、小林さん、トランプ次期大統領が掲げる経済政策、日本に対する影響などをどのように考えていますか?」
小林氏
「これが全て真であるとすれば、通商交渉に関しては、非常に、ある意味では、歴史に逆の流れを一瞬、喚起してしまうという、そういう残念な部分がありますけれども、これはトランプさん一存では決まることでもないでしょうし、当初はTPPから脱会というのは決まるかもしれませんけれども。今後これまでのTPP、残り11か国の動きとか、あるいはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)、中国も含みますけれども、そういうところの流れ、動き、もちろん、2国間のFTAも平行して進むでしょうが、これで全部後戻りしてしまうということはかなり考えづらいのではなかろうかと。トランプさんも、グローバル経済はよくおわかりの方でしょうし、あれは、1つの選挙対策で、1部お使いになった部分もあるでしょうし、短兵急にこれで終わったというのは、ちょっと早過ぎると思いますし、あと2つは、これは基本的に法人税を15%だとか、大幅減税、インフラ投資を激しくやる。あるいは石炭も含め、かつて死んだ産業みたいに思われたものが復活するとか、含めれば、これは当座、ここ2、3年、4年ぐらいの中では非常に経済は活性化するでしょうし、株高、あるいは円安の方向ですよね。ドル高の方向にいくのでしょうし、ただ、それが、財政が、どういう形で長期的な持続可能性を保持できるかという問題は残るかと思いますね」
反町キャスター
「TPPというのは、単なる日本とアメリカを軸とした経済連携の場ではなくて、安全保障という意味、中国に対する牽制という意味もあるし、知的財産権の問題も含めて、我々の考えるグローバルスタンダード、貿易のルールとか、こういうものだよと見せつけるというか、それはあまり期待をされていないのですか、TPPではなくてRCEPだよと言っている?」
小林氏
「それを1つのテコに、もう1度、TPP的なものをトランプさんが考えなければ危ないなと、こう思わせていく手法だとは思うんです」
反町キャスター
「RCEPに行くふり?」
小林氏
「ふりというか、可能性もあるなと。そういうリスクをトランプさんが考えれば、また、新たなるTPPというのを、自分がイニシアティブをとる可能性はありますよね」
反町キャスター
「アメリカの国内政策として、たとえば、法人税の減税とか、インフラ投資の拡大ということで株価が上がっているではないですか。これについて2、3年、4年ぐらいは持つかもしれないと言われましたよね。そのぐらいで賞味期限というより、日本のアベノミクスを考えてみても何年持つかわからない中で、4年もこれで持ちますかというか、どうですか?」
小林氏
「4年は苦しいかもしれないですね。ただ、2年は持つでしょうね」
反町キャスター
「トランプさんの考えているということは何だと見ていますか?アンチグローバリズムという、ないしはナショナリズムなのか、国益重視なのか。何ですか?」
小林氏
「アンチグローバリズムというよりはまさにアメリカファースト。ひょっとして白人のノスタルジーかなという部分もまったくないわけではないという気がしますよね」
反町キャスター
「そこにこだわっていくことが、アメリカの国力を増すことに?」
小林氏
「いや、まったくならないと思いますよね」
反町キャスター
「全体の流れとして、たとえば、この年末に向けて日露とかも安倍さんはやろうとしているわけですけれども。アメリカとか、世界の経済の動きを見ていた立場からするとアメリカの国力というのは落ちているのですか?どうにもならないのですか?かつてのパックスアメリカーナというのは、我々は諦めて、この人1人に頼ってはダメだよね、ロシアにもフックをかけるし、中国にも保険をかけるしと。そういうような姿勢をとらないといけない世界になったと思った方がいいのですか?」
小林氏
「いや、まだ基本的にはアメリカでしょう。経済的にもまだアメリカ、明らかにGDP(国内総生産)も含め、1番可能性を持っていますからね。ただ、全面的にアメリカだけ、核の傘という意味では当然だけれども、経済という意味では、それはもう少し独立した方向で動き得る状況になりつつあるということは間違いないでしょうね」
反町キャスター
「それはどういうことですか?安全保障と経済の関係?」
小林氏
「ですから、中国とか、ロシアとか、ヨーロッパを含めた形で、バイラテラルも含めて、通商交渉を進められる。単にアメリカとのTPPだけが全てということまで思い込む必要はないということだと思います」
大山解説委員
「それは、我々日本の立つ位置ということも含めてですね?」
小林氏
「ええ」

日本が向かうべき針路
秋元キャスター
「ここからは日本経済の現状について聞いていきます。第2次安倍政権発足以降のGDP成長率と輸出や個人消費など各要因がどれだけ影響しているのかというのを表したグラフですが、色分けしてありますけれど、大山さん、このグラフから日本経済の実情についてどういうことが読みとれますか?」
大山解説委員
「安倍政権は2012年の年末スタートして最初、補正予算を打ったりしています。プラスで、ちょうど2008年のリーマンショックから変曲点で、そろそろ4年が経って景気が上がってくるのではないかなという分析も議論も分かれるところで、アベノミクスのスタートが全て国際経済とも関係なくうまく行ってるかという議論はあるのですが、プラスでスタートしています。2013年4月には、日銀の金融大規模緩和があって、アベノミクス異次緩和、機動的な財政出動、それと成長戦略で3本の矢。最初に異次元の金融緩和、それでびっくりして市場に出まわる金を2倍ぐらいにするという。それが時間を稼いで、成長戦略をすべきだという感じだったのですけれども、GDP自体を前の3か月に比べて、プラス2%とかで見て行くと、消費増税の前の駆け込み需要があって、ちょっと上がって、前の3か月が上がったのを基準として、どのぐらい下がったかのを3か月の率で見るので、山が前に高ければ、この後、消費増税スタートした時は反動減で、これは下がるということがありました。その後80円台だった円、為替も120円。100円近くなったり、110円になっていますけれども、昔よりは円安になったということで、輸出も若干は伸びたところもありますけれど、下がっている時もあるということで、総じていくと線を横に均してみるという感じですけれども、おそらくきちんとプラスにはなっているのですけれど、爆発的なプラスではないと」
小林氏
「GDP的に見ますと、ちょうど4をかけると年率になるんですね。そうすると、マイナスになったり、現在のところ2.0まで7-9(月期)はいっていますね。でも、7-9(月期)の場合は、アジアへの結構、電子部品の輸出、一時的なものとなると、全体で見ますと、なかなか実質2.0を超えて、コンスタントにいってどのぐらい時間がかかるだろうか。そういう意味で、徐々にではあるけれど、明るさが出ているけれども、なかなか数値には…。民間の個人消費ですよね。これが上がったり、下がったり、なかなか表にプラスにはっきり出てこないという、ここは非常に大きな、長い間そういう形で上がってこないという、長期的な問題だとは思うのですが、これをどう喚起するのか。そこが1番、全体を押し上げる、6割ですからね、部分だとは思いますね」

日本経済の現状と課題
反町キャスター
「個人消費はどうしたらいいのですか?」
小林氏
「だから、個人消費がなぜ上がらないのか。給料は、実質賃金は、少しはプラスになっているのだけれど、個人消費が上がらないというのは将来、自分がお金を貯金しておかないと、なかなか病気をした時のため、あるいは自分も寿命がかなり長くなった中で、貯めておかなければいけないなという思い、将来不安ですよね。それと若者を中心とした消費に対する意欲の飽和というのか、欲望の飽和というか、非常にかつての日本人よりは欲望に対して貪欲でなくなった。モノに対して貪欲ではなくなった。バーチャルなことというか、ストーリーなり、音楽なり、そういう自分の感性を刺激するようなものに対してはますます貪欲になっていくかもしれない。モノに対して飽和してしまったという意味で、なかなかそう簡単に消費を喚起する状況ではないなという、結果として言えば、いわゆる付加価値というか、お金で換算するものが、同じ効用でも、iPhoneが6万円で、かつての200万円、あるいは1億円のコンピューターとカメラと、いろいろな機能を全部兼ね備えて効用はすごく上がっているのに、お値段、GDP的な、いわゆる付加価値のお値段としては6万円でしかない。このへんが重層的にあって、なかなか消費が増えない。お金的に増えない、GDPが増えない、こういうことだと思います」
反町キャスター
「金融緩和をして、金利を下げますよ、お金をまわしますよと言っても、要するに、中高年層は将来不安から貯金をする。若い人達はモノ欲がないし、何を買っていいのかわからない。全体としてはネット社会からシェアリングエコノミーみたいなものがあって、さらに言えば、スマホの話を含めれば、昔だったら何千万円もしたようなものが6万円だから、百科事典を買わなくてもいいし、全部これで済む、みたいな、質的には向上しているのだけれども、経済規模としては縮小しているという」
小林氏
「数値としての、付加価値としては縮小している。されど、1000兆円もある日本の債務、借金をどうやって返すのだと。これはGDPを増やすことによって返すしかない。この矛盾をどう解いていくかというところが今後の大きな課題でしょうね」
反町キャスター
「1000兆円の借金をどう返すかというのは?」
小林氏
「もう使わないに越したことはないというところにきちゃうんですよね」
反町キャスター
「予算を減らすしかないですよね、出を制するしかない?」
小林氏
「そこに早く政治がいかない限り、GDPだけ、財政出動をして、あるいは金融の緩和もかなりのところまできています。マイナス金利で、かなりのエビデンスが出てきて、ドラスティックに、アベノミクス、スタート時点のびっくりするほどの金融緩和によって、あれだけ為替を円安に持っていって大成功をしたわけですね。それはあくまで時間を稼ぐ状況であって、その時間を稼いだ間に成長戦略、もっと言えば、イノベーションに期待をしたわけですよね。でも、イノベーションというのはもともと2、3年でできるような感じのものではなくて、最低10年、20年、かかるんですよ。いずれにしても時間を稼いだこの4年間でなかなか本当のイノベーションがまだ出てきていないというのはまっとうな見方であって、もう少し我慢がいる」

GDP成長率と『真の豊かさ』
反町キャスター
「この表ですが、小林さん、どういう意味で、我々は理解したらいいのですか?」
小林氏
「これはかなり後進国というのは、いろいろな国が、1人当たりのGDPが増えてきますと、人々のウェルビーイングというか、快適度、生活に対する満足度が結構、線形、リニアに増えるんです。ところが、ある程度、ニュージーランドとか、カナダとか、日本とかになってくると1人当たりのGDPがある程度は違っても、快適性と言うのか、人々のある意味での幸せ度というのはほとんど飽和をしてきてしまう。1人当たりのGDPを一定程度上げても、人々の快適性は、幸せにならない」
反町キャスター
「日本は既にこの領域なのですか?」
小林氏
「日本は完全にこのレベルです。逆に言えば、ひっくり返してウェルビーイングというか、快適性がどんどん上がってきても、人々はこのへんから以上にいくと、そんなに働いて、GDPを増やそうとか、そういう意味で、こちらが1人当たりのGDPですね。逆にこれも飽和していくと。そういう現象に人口が減る以上に、人々の心のうちなる状況というのをもう少し考えていかないと」
反町キャスター
「そうすると、名目3%、実質2%で、さあ皆さん、イノベーションです。GDPを増やしましょう、ではなくて、別の方法、GDPを増やしたいとは別の方法を考えるか、ないしはGDPというものとか、数字に対するこだわりを捨てなければいけない?」
小林氏
「そう。それがGNI(国民総所得)でもまだまだ不十分ですね。GNIは向こうの、海外で稼いだ配当金なり、研究開発なり、知的財産を日本に持ってくる十数兆円の部分なわけですから。もう少しこれも定量的に表現をしないとあまりパラメーターの意味はないですけれども、人々の健康度、たとえば、寿命が何年生き、健康寿命がどうかとか、そう言ったものも数値化して、人々の満足度というか、これをしっかりカウントをしないと、国家としての品格というか、それをエバリエイトしていない。評価していない」
反町キャスター
「どこかの国でそんなことをやっている国はあるのですか?」
小林氏
「フランスのサルコジとか、イギリスでもそういう提案をしていますし、具体的には、大昔ブータンが幸せ度GNH(国民総幸福量)などありますが、あれは大いなる誤解を招くのですが、あれだけになっちゃいますと、まず基本的には先ほど来、お話になっている、1000兆円の借財を返さなくてはいけないと。と言うことは、お金を稼がなければいけない。だから、GDPは一定程度の成長は当然やらなければいけない。これをまた忘れてはいけない」
反町キャスター
「そうかと言って」
小林氏
「それを上げるがためにまた財政出動しようとするとドメスティックプロダクトではなくて、グロスデッドプロダクト。デッドだけが増えちゃう。借金が増えて、結果としてアウトプットがないという、これはもっと危険だろうということ。お金を使うところを減らそうという議論をもっとしないと。要するに、飽和している時代ですから。成長率もせいぜい2の3がマックスでしょう。1の2がいいところですよ。スタンダードですよね。それに見合った、出を制さないと、持続可能性はないでしょう」

戦後100年の日本ビジョン
秋元キャスター
「経済同友会は、戦後100年にあたる2045年に向けて取り組むべき課題などを盛り込んだ提言『JAPAN2.0』を先週発表されたわけですけれども、この狙いはどういったところにあるのでしょうか?」
小林氏
「JAPAN2.0というのは、あまり賛同してくれなかった人も結構いたのですが、2.0というのはバージョンですよ。改訂版というか、要するに、戦後70年、安倍談話を発表して、一応、日本としてのけじめを、中国にしても、韓国にしても、一定程度、納得してもらっているわけではないですか。それと同時に、偶然、今回トランプさんがああいうことをやると、日本人って、自分の頭で自分の安全保障もしっかりと考えようという新しいフェーズに、一方ではきている。あるいは経済的にも、先ほども言いましたように、単にモノだけではなく、むしろコトづくり、サービスというか、そちらにかなり転換していかないと、企業としてもたない。そういう完全にフェーズが違ってきている。だから、日本改訂版、2.0ですね。これに名前をつけたのは、昨年1月のダボス会議で、世界第2位の化学会社、アメリカの化学会社ダウ・ケミカルのチェアマンでアンドリュー・リバリスさんと話したのですけど、アメリカは非常に国家も中に入ってインダストリアル・インターネットという形でやっている。ドイツも、メルケルさん含めて、国家が入って、中小企業も入り、大企業間に横串を挿してインダストリアル4.0をやっている。日本はこれまで戦後、急激な成長と成功体験を持ちながら、されど、化学会社でもなかなか一緒になってより強くなろうとか、そういう意味での構造改革を、1社の中での構造改革と同時に、国内のM&Aを含め、より強くしていく。そういう統合が起こっていないではないか。外から見るとそうかと。彼らから見ると、日本は非常に、政治を語る前に企業経営者そのものの心の岩盤というのか、これまでの延長線上でしかモノを考えない。そういう状況なのかなと。そういう状況です。だから、これをぶっ壊さないといかんと、むしろ経営者の宣言ですね。我々はここで切り替えます。バージョン2.0というのは、まさに新しいフェーズに突入しようよと。それはそういう企業の構造改革、あるいは自分の内なる心の岩盤をぶっ壊し、グローバルな戦いの中で、それはデフレとか言う以前にもっと強い企業体を日本の中につくっていこうというのが、そういうのがまず外から見てもバージョン2.0と言えるようにしよう。我々自身もここにきて、安全保障であれ、企業の儲ける力であり、コーポレートガバナンスであり、スチュアードシップ・コードであり、そういった形でドラスティックに変えなければいかん。もう1つ実態としては、モノの経済学から、重さのある経済学から、重さのない、サービスなり、インターネットなり、そういう経済学も混ぜた形で、日本らしい、日本の本当に強いところはどこかを考えて変革しようという思いがあるんですね。それと副題の最適化社会を目指しても行ったり来たり、いろいろなところで議論してきたのですが、いわゆる分散と統合。統合にグローバリゼーション。いわゆるデモクラシーとグローバリズム。一方では、資本主義と社会主義という形の2個対立みたいなのが1個あって、とりあえずベルリンの壁1989年で崩れて、どうやら資本主義にかなりの波がいって、それが修正資本主義になり、金融工学をベースにした商業資本主義と言いますか、金融資本主義というのがあり。そういう意味で、イデオロギーの時代はある意味では終わった。資本主義の中の、ある修飾と言うか、モディファイした、そういう自由をベースにした資本の論理というものに一部置きながら、もう少し最適化をしなければいかんという時代がきたのではないかと。ですから、完全に共産主義か社会主義か、あるいは自由主義か資本主義かというのはほぼまとまりつつある。グローバリズムのメインはまとまりつつあるのだけれども、トランプさんみたいにどうもそれをやってしまうと最適化していないではないかという、彼は1つの彼なりの最適化を目指しているわけではないですか。我々は我々なりの、日本なりの最適化とはいったい何なのか。格差を減らすとか。これはイデオロギー以前だと思うんですよ。そこをもう少し考える。それで、だから、2045年、戦後100年、あるいはシンギュラリティの時代がちょうど2045年。言ってみれば、人間の脳を外部化した人工知能が、人間とある意味では同じレベルで、知的議論ができる。そういう中で、人間と共存するという中で、それに向かって、我々はどんな準備をしたらいいのだろうかと。30年後、そういうものに対しての社会的な最適化であり、我々、企業体の最適化に向かって、お互いに議論をしようという、そういう意味合いが入っているんですよ」

JAPAN2.0~最適化社会へ
秋元キャスター
「30年後に向けてどんな準備をするべきかという、JAPAN2.0ですが、これからの成長について書いてこのようにあるんです。経済の豊かさ、イノベーション、社会の持続可能性という、3つの基軸を進めていくことが必要だと指摘をされているのですけれども」
小林氏
「なぜ3次元的に解析しているのかというのは、人間、相撲取りでも、スポーツマンも皆、心、技、体と言うではないですか。心と技術と体。この3つバランスがとれて、勝負に勝てるんですよね。ですから、企業体でも、儲けの軸と技術の軸、イノベーションの軸と、心の軸というのがあるんですね。儲けはせいぜい1か月から3か月のオーダー。イノベーションというのは5年から10年、先ほど申しましたように。心の軸は、意外にも100年のオーダーだと。ただ、この3次元のベクトルでつくられた、これこそが価値です。企業価値であり、国家価値であるし、人間であれば、人の価値というか、国家で言えば、国家の品格。先ほど、言いましたように、GDP、これはX軸ですよね。これがまさに今度はテクノロジーの軸というのが、Y軸で、こちらのZ軸というのは、はっきり言って格差だとか、CO2(二酸化炭素)の削減とか、あるいはまさに社会保障とか、そういう…」
反町キャスター
「暮らしやすさみたいなイメージですか?」
小林氏
「それもありますね。あとは持続可能性ですよ。財政が破綻をきたしたら、もうまったくダメなので。そういう意味での、社会全体の持続可能性。そういう意味では、X軸をマネジメント・オブ・エコノミクス。Y軸をマネジメント・オブ・テクノロジー。Z軸をマネジメント・オブ・サステナビリティ。地球環境、これはCO2減らさらないと。COP22ですね。そういうことを全部まとめたのがZ軸で、この3つが全て大切ですよね。どれを欠いてもなかなか国家というのは進んでいかない。そういう意味で、この3つに分離して、議論をしていくのは、その中で、それぞれ皆、相互作用、相互関連をしているのですが、あるいは矛盾するものがあります。企業で言えば、ROE(株主資本利益率)とか、儲けの、資本効率とか、テクノロジーは同じですね。この縦軸もCO2の削減とか、あるいは、CSR(企業の社会的責任)ですよね。従来言っている。そういう意味で、テクノロジーの部分は何なのか。ここで日本の場合は、これはZ=a+biと言いまして、どこかにあると思うのですが、aというのがatom、モノですね。Bというのがbit、情報。ですから、モノと情報をハイブリッド化して、新しいものを21世紀的に、当然AI(人工知能)も含めて、つくっていくかということが日本の次の方向だと思うんですよ」
反町キャスター
「イノベーションは日本語に訳すと何ですかという、技術革新ではないですよね。もっとドラスティックなものですよね?」
小林氏
「インベンションではないですよね。発明、発見でもないし、イノベーションというのは社会的にどう役に立つ方向に技術なり、仕かけを持っていくのかということだと思うんですよ」
反町キャスター
「日本におけるイノベーションは、どういうものをイメージしたらいいのですか?日本と言うとどこでも同じものかもしれないですけれども」
小林氏
「たとえば、コンビニエンスストアとか、たとえば、モノの輸送。必ずしも研究開発というか、テクノロジーだけに依存したものではなくて、社会がある仕かけによって、非常に役に立つ方向に動いていくということ全体をイノベーションと定義できると思うんですよね」
反町キャスター
「日本はどうなのですか?他の国々と比べると、イノベーションというものが芽吹きやすい国なのですか、芽吹きにくい国なのですか?」
小林氏
「ものによって。先ほど言ったような、いわゆる小売業とか、流通業という意味では、大変なイノベーションを、日本独自のことをやっているわけですね。テクノロジーについても、日本の場合は、たとえば、炭素繊維とか、非常に多くのものは日本から発信をされているというのは間違いないですけれども、Googleだとか、Facebookだとか、ああいうbitに関してのイノベーションは非常に周回遅れになってしまっている。ですから、モノ、ここでいうatomとbit。モノに関しては、モノづくり日本は世界一だとか言われた時代もあるわけで、モノとコトをうまくハイブリッド化するというのか。アウフヘーベン(止揚)というのかな、止揚すれば、何か新しいもっと面白いものが十分に可能性として出てくると。そこが21世紀の日本の…」
反町キャスター
「その感覚を持っているのは誰なのですか?学生ですか?それとも高齢者なのですか?それは世代で区切らない方がいいのですか?」
小林氏
「世代ではないでしょう。文化系、理科系でもないでしょう。だから、時代感性、時代の感覚をいつも研ぎ澄まそうとしている人なら皆持っているのではないでしょうか」
大山解説委員
「もう1つ聞きたいのは、地方と東京の…」
小林氏
「インターネットの時代は、場所と時間を完全に圧縮したわけではないですか。場所とか時間のハンディキャップをなくしたわけですよね。地方というのは今後、ますますイノベーションという意味では非常に期待できると思います。問題は、大企業の中であれだけ研究・開発費を使っている割にはなかなか新規事業が育たない。このへんの効率性というのはまだまだ伸びしろがあると思っています」
反町キャスター
「どうして大企業はあれだけ研究・開発投資しているのに?」
小林氏
「10年経ってもろくなものがでてこないという、このへんの切迫感というか…」
反町キャスター
「ハングリーでない?」
小林氏
「ハングリーさが非常に枯渇してきているというのはありますよね。仮想ハングリーをどう醸成するかがポイントかもしれませんね」
秋元キャスター
「日本国民や、政府、企業経営者がどのような行動をしていけばいいのですか?」
小林氏
「19世紀初めに、人間は自分の体を外部化して、馬車から自動車までつくった。自分はラクをできた。だけど、紡織機などが出てきてしまうと、労働者が自分の仕事を奪われてしまうと言って、ラッダイト運動が起こったではないですか。それと同じように、脳を外部化すると、AIで、あるいはロボット+AIで、人間の職を全部奪うという、それは逆だと思うんですよね。逆に人間が人間らしくものを考え、より人間であるとは何なのかという方向にいくということを信じたいし、2045年、AIが、ロボットが人間を凌駕して、人間がどこに行ってしまうのだろうという、非常にネガティブなことを考える、そういう考えもあるのだけれども、いずれにしても楽観的にまず考えて、そうするために30年後とは言え、ここ数年でより議論をして今何に備えたら、人間は何を備えたらいいのだろうという、そのへんを考えたいんですよ。AIというのは、立派な半導体ベースで、情報処理が早く、容量も大きくなるから、明らかに人間を凌駕しますよ。だからと言って、人間と戦うものではない。どうやって共生するか。そうすると、全てのものが、先ほど、a+biと言ったように、そういったものを早く抱き込んで、準備をしていかなければいかん。そういう時代がきていると思うんですよ。どうするかと言うと、モノをつくっている人達は、サービスなり、情報なり、IoT(モノのインターネット)なり、第4次産業革命的なものをいかに早く取り込んでいくか。これは準備の時間は終わっていますから、これを国際的にリーダーとなり得る日本国がどう構築するか、まさに政府が未来投資なり、そこで考えてもらう世界ですから。これは非常に次に向かっての大いなるポイントだと思っています。最適化というのは、意味、価値というのが明確にないとなかなかどこに最適化していいかわからない。そういう意味では、人間の価値とか、人間は何のために生きているかとか。最も疎遠であった哲学とか、これが人間にとって極めて重要な時代がまたくるのではないかなと」
反町キャスター
「それは一部の人が考えればいいのではないですか?一部のエリートと、圧倒的多数の普通の人が暮らすみたいな、そんなイメージではないのですか?」
小林氏
「そうすると、AIがもっとエリートになってしまう」
反町キャスター
「そういう社会にはならないのですか?怖いなと思って」
小林氏
「そういう危険性はあるんですよね。だけど、それは意味も価値もない、大変なニヒリズムというか、帰納法的に、ある現象があった、その現象がまとまったなら、これしかなかったということで、そこまでいってしまうのと、そうは言っても我々は日々、3回食して…。愛こそ人間だという、それが許されるのかどうか。それは、ボクも解を持っていない。だから、最終的にAIがガーッといったら、意味も価値もない、単に事実を事実として見る、そういう極めてニヒリズムな社会かもしれませんよ」
反町キャスター
「30年後の日本を率いるであろう人達に、今のビジョンをどう伝えるのか?」
小林氏
「今回の、我々のJAPAN2.0の非常に大きなポイントは、そういう若者との場をつくろうというか、皆で描く皆の未来。これまでみたいに、我々経済界だけで、縦割りで心地よい議論をして提言している時代は終わったろ。あるいは業界を代表した組織が日々、1年先のために生きるという時代も終わったろ。やっぱりもう少し経済人として、次の、あるいは次の次の時代を担う若者とどれだけ基本的な理念を共有できるか、そういう場をつくっていきたいというのが、皆で描く皆の未来というプロジェクトを今回そこでつくりまして、新しい感覚を持った人達との場を是非つくっていきたいなと。そうでないと、現在の我々の構造では意味をなさないですよ」

小林喜光 経済同友会代表幹事の提言:『持続すること Z=a+bi』
小林氏
「最も重要なことはいかに持続可能であるかどうか。これを常に考えて、成長を指向していく。ですから、持続可能性、サスティナビリティという言葉に代表される、先ほどから言っているZ軸ですよね。これはモノだけの時代は終わった。+コトを入れて、数学で言えば、複素数の時代にきてしまった。リンゴが重力で落ちるという古典力学の時代は終わって、宇宙だとか、半導体だとか、小さな原子の時代を記述するためには量子力学が必要だったんですよね。そういう複雑系を解くという経済学が要るのではないかと。だから、経済学者よ、このへんをがんばってよ、というのが今日の提言」