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2016年11月24日(木)
子育て支援で経済成長 若者投資に描く日本像

ゲスト

鴨下一郎
自由民主党衆議院議員 元厚生労働副大臣
柴田悠
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授
和泉徹彦
嘉悦大学経営経済学部准教授

『子育て支援』で『経済成長』 保育サービスが日本を救う
秋元キャスター
「柴田さんは子育て支援が日本を救うで、統計的視点から子育て支援を分析されていますけれど、まず試算をしようと考えたきっかけは何だったのでしょうか?」
柴田准教授
「まず1番大事なこと、前提をお話ししたいのですが、今回の試算は保育の、本来の目的に関する試算ではないことです。保育の本来の目的というのは、子供の健全な発達を支援すること。あと保護者を支援することですね。主にその2点。いろいろ他にもありますけれども。そう言った保育の本来の目的に関する研究はいろいろやられているんですね。ただ、それとは別の副次的な効果というのはなかなか研究が進んでいないという状況がありまして、私としては、日本の社会保障の財政は非常にひっ迫していて、使える予算、どこにどれだけ投資をすれば、どのぐらい経済とか、いろんなところに効果があるのかというのを考える必要があると思うんですね。その時に保育というのは、本来の目的だけではなくて、他の副次的な効果、どういった効果があるのかというのも、検証をしたうえで、保育のことを考えなくてはいけないのではないかと思いまして試算をしたということになります。ただ、それだけではなく、大事な前提もいろいろお伝えをしたいのですが、まだ試算でして、非常に粗い分析ですね。まだまだ改善の余地があります。ですので、これをきっかけにいろんな方々に分析をしていただき、より正確な効果の分析が広まって、それで政策をより効率的に、本来の目的と副次的な目的も合わせて限られた財源を効率的に使わないと日本はやっていけませんので、そういう意味での議論ということです」
反町キャスター
「そうすると、今日、我々が主に聞くのは、本来ではなくて、副次的な目的、子育て支援による副次的な目的としての経済効果みたいなものに僕らが食いついてしまうのですけれども、柴田さんにしてみたらそこのところは不本意な、そこに注目してほしくて考えているのではないよと。そういうところもあるのですか?」
柴田准教授
「ただ、本来の目的はしっかりとした認可保育所で、しっかりとした保育がなされていれば、効果があるというのは検証、ある程度は進んでいるんですね。だから、ちゃんとしっかりと財源を投入すれば、しっかり現場のことをやってくださる。なかなか人手も足らなくてひっ迫しているんですね。ですので、それは予算が足りないからです、単純に。ですので、予算を増やせば、本来の目的はある程度達成される可能性は高いですし、プラスアルファで副次的な効果もあるのではないかというのが、私の議論ですね」

1.4兆円→3.3兆円のメカニズム
秋元キャスター
「実際どういう試算になったのかということですが、表で説明します。プラスの影響、これはオレンジの矢印で示していて、マイナス影響は点線で示しているのですけれども、まず保育サービスの予算を1.4兆円増やしますと、労働力の女性比率が0.34ポイント、数字で言うと40万人も増えるわけです。その結果、労働生産性成長率が0.53ポイント向上しまして、結果として経済成長率が0.65ポイント、3.3兆円増えると。こういう流れになるわけですが、1つ1つ聞いていきます。この入口となります保育サービス。柴田さん、これは具体的にどういったもの、内容を想定されているのでしょうか?」
柴田准教授
「この使っているのはOECD(経済協力開発機構)先進諸国のデータですが、そこではデータセットが、社会保障のデータがありまして、子育て支援に関する家族政策というデータセットは、主に3つに分かれていまして、保育サービスと産休、育休と児童手当です、現金給付。私が使ったのは、保育サービスの効果はどうなのかということなので、これはあらゆる保育サービスが入っている。たとえば、日本でしたら認可保育所への補助金も入りますし、あとは保育ママへの助成金だとか、保育ママに関しては、フランスでは非常に活躍していますけれども。あとはいろいろ、たとえば、場合によっては、病児保育への補助金などもあり得ますし、あとはベビーシッターへの補助金もあり得ますし、いろいろあるかと思うんですね」
反町キャスター
「総額の1.4兆円。これは何を根拠に1.4兆円という積み上げになったのですか?」
柴田准教授
「これは、私自身が試算したのですが、まず試算の前提として、2013年度の潜在的待機児童の数というのがいろんな推計がありまして、少なくとも80万人いるだろうというのが厚労省の調査をもとに推計できるんです。ですので、それを前提にしています。2013年度で80万人いた潜在的待機児童をゼロにするには、果たしていくらかかるのかというのが1.4兆円ということですが、内訳をお話ししますとまず保育所をつくったりだとか、保育士を増員する。これにおそらく0.7兆円かかるだろうと。これどうやって計算したかと言うと、政府は50万人という目標で現在やっているんですね。そのためにこのぐらいお金がかかりますと、政府は既にお金を出しています、試算を。なので、それは単純に80万人に増やせば計算ができるということです。ただ、これはいろいろ細かい点を見ると、まだまだ改善の余地のある試算だとは思いますが、ざっくりとしています。さらに、現在0.7兆円の話をしましたが、それだけではなく、プラスあとは保育士の給与の問題があるんですね。保育士の年収が一般の産業平均よりもだいたい3分の2ぐらいです。ですので、保育士の年収を1.5倍ぐらいのレベルに上げないと、全産業平均にはならないということです」
反町キャスター
「月11万円、12万円を上げることになりますよね、確か。そのぐらいですよね。月額で10万円以上開きがあることになりますよね?」
柴田准教授
「はい。あと、ボーナスも入れての話ですね」
反町キャスター
「ベースアップということ?」
柴田准教授
「あくまでも試算ですけれども。と言いますのは、保育士の、潜在保育士がいっぱいいる。資格を持っている人がいっぱいいるのですけれど、なかなかならないわけですね。給与の面とか、いろいろとハードワークだったりするわけです。なので、まずは給与を大幅に引き上げないと確保ができないだろうと。どのぐらい引き上げればいいか。まったくわかりません。私もわかりませんが、全産業平均というのが1つの目安にはなり得るかなと。たぶん私の義理の妹が保育士をやっているんですけれど、彼女に聞いたところでは、いや、それでは厳しいと。たとえば、准看護士のレベルとか、あるいは良ければ、看護士のレベルまで上げていただかないと、子供の命を預かっているわけですので、非常に繊細な仕事なんですね。なので、果たして全産業平均レベルでいいかどうか。私にはわかりませんけれども、仮にそれでいいとしましょう。そうすると、2013年度の80万人の保育、待機児童解消に必要な保育士を計算しまして、それを全員、2017年度末に、どれぐらいの保育士が必要なのか計算したわけですね。その人達全員を非正規雇用含めて、全産業平均のレベルまで上げる。もちろん、非正規雇用の場合は、時給あたりでの計算になりますけれども、そうなると合計で0.7兆円必要になると。合わせて、先ほどの1.4兆円ということです」
反町キャスター
「待機児童の解決が1つの柱で待機児童に焦点を絞っての1つの話として聞いたのですけれど」
柴田准教授
「1つの試算、目安として」
反町キャスター
「待機児童というのは、都市部だけの問題ですよ。郡部、地方には待機児童はないですよ。そうすると、これは1つの問題は。要するに、1.4兆円、都市部にぶち込むことで…」
柴田准教授
「比率としてはそうなりますね」
反町キャスター
「地方に待機児童がいないのだから、地方にこの1.4兆円がまわる可能性はないのではないですか?」
柴田准教授
「ただ、一部の地方都市としては待機児童があります。数字で挙げています。もちろん、都市部が中心になりますね。なぜそれが重要かと言いますと、若い女性が都市部にいまだに移っているんですね。これは統計でも出ていますけれども、地方から若い女性が移ってきて、そこにずっと暮らすというのは、いまだにそういう傾向が続いています。と言うことは、女性の労働力は、都市部でかなり集約的に活躍の場があるわけです。しかし、彼女達が現在、子育てと両立できないわけです。ですので、働きづらいと」
反町キャスター
「結婚して子供を育てることが非常に困難であると?」
柴田准教授
「そうです。そこで、都市部で生まれた富が地方に分配されているわけです。現実として。ですので、都市部を応援することは、日本全国を元気にすることになるわけです。都市部で得られた税収が地方に分配されるわけですから。ですので、都市部のとりわけ困っているのは女性です。地方から移ってきた女性ですね。ですから、地方は女性を都市部に奪われて、その女性達が活躍できずにいると。だから、本当に都市部に奪われた税収がこちらにまわってくれば、それはいいかなと思うんです。しかし、まわってこないんですよ。なぜなら待機児童が都市部で多いからです。なので、都市部で待機児童を解決することは地方にとってプラスなわけです。それによって都市部の税収が増えて、地方に分配されるわけですから。そういう意味で、日本全体の問題であるということです」
反町キャスター
「鴨下さん、要するに、待機児童というのは都会の問題である。都会の問題に、国費ですよ、自治体の話ではなくて。国費を投入することによってそれが都市部における、その問題を解決して、結果的にトリクルダウンとは言いませんけれど、そういうじわじわ広がっていくのが当然だということですけれど、自治体だったらわかります。横浜市とか、渋谷区とかならわかるのですけれども、国政レベルで、今のようなスケールで物事を考える、そこの部分だけですけれども、どう感じますか?」
鴨下議員
「私は、否定はしませんけれども、ただ、それだけが地方を豊かにすることと、それから、地方から上京して都市に住む女性達にある程度、支援をするということが全ての解決になるということには、直感的に、なるのかな、と思います。むしろ、子育て支援だけではなくて、その人が結婚するということもそうですし、それから、家を持つということもそうですし、子育てもそうですし、様々なハードルがあるので、その中で、子育てだけに特化するということが果たして本当にお金が有効に活きるのかということは、これからいろいろと検証していただきたいと思います」
反町キャスター
「いかがですか?子育てだけに敢えて特化した理由というのは?」
柴田准教授
「だけとは言っていないですね。効果はいろいろ。あくまで試算ですから。これから分析をしてほしいです、できれば政府系のシンクタンク、いろいろありますから。専門家に分析をしてほしいですが、今のところ、いろんな数字見ましても、保育の経済効果がかなり大きいらしいというのが他の研究でもありまして、京極さんという方がなされた分析もありまして、その場合でも、投資した額の5倍ぐらい、給与として経済全体に出てくる。これは社人研の所長だった京極さんが分析されたものですが」
反町キャスター
「労働力の女性比率が0.34ポイント上昇。40万人も増えるぞという部分ですけれども、これはどう思ったらいいのですか?これが柴田さんの予測で行くと子育てサービスに1.4兆円つぎ込むことによって0.34%。女性比率が増えて結果40万人の女性が労働市場に参入していくのだろう。2015年における、労働力市場における女性比率というのは2842万人だけれども、2842万人に40万人上乗せされる。この因果関係、どうみたらいいですか?」
柴田准教授
「OECDでの、先進国での傾向がこれだということですね。日本だけで見た場合、果たして同じ数字になるか、まだ誰もわからない。これも研究していただきたいのですが、仮に同じだとしましたら、この数字は40万人という数字になるんですね。これは実質、そんなに外れていないかなと思って、まず保育士を、先ほど申し上げた通り、2017年度末までに、80万人分解消するまでに保育士を増やすならば、だいたい8万人ぐらいの雇用がおそらく増えるだろうと。プラスして政府が50万人という待機児童解消で進んでいますが、私が言っているのは80万人。30万人の違いがありますね。30万人の子供達が保育に入れると。となると、30万人分のお母さんが働ける。単純計算すると。そうするとだいたい計算が合うんですね。40万人ということで、なので、そんなに外れた数字ではないのかなと。わからないです、もっと検証する必要がありますが、OECDでは、先進国ではこのような傾向があるので、おそらく日本でも多少は増えるのではないかということですね」
反町キャスター
「40万人の新たな女性の労働力が市場に入ってくると」
柴田准教授
「そういうことですね」
反町キャスター
「いわゆる同じ1.4兆円を使うにしても、保育サービスにぶち込むのか、いわゆる道路、公共事業に使うのかという、この比較だと思うんですよね。その乗数効果というのは、1.4兆円で3.3兆円になるのだったら、2.3倍。俗に言われる公共事業、橋、トンネル、諸々、そこの乗数効果というのは1.1(倍)とか」
柴田准教授
「1.1です」
反町キャスター
「1.4兆円そのまま、補正予算だけ計上だというので、道路工事やらと言った時には、それが景気効果として跳ね返ってくるのが1.6兆円とか、そのぐらいだとしたら。それを子育て支援にまわせば3.3兆円になるよと。単純化しちゃうと、そう聞こえるんですよね」
柴田准教授
「そうですね。ただ、あくまで、その3.3兆円を、OECDの傾向から導き出したというので、日本だけでの分析はまだできていませんので是非いろいろな方にやっていただきたいのですが、なかなかデータがなくてできないのですけれども、おそらく違いはあると思います。もっと大きいかもしれないし、もっと小さいかもしれない」

保育サービスが日本を救う
反町キャスター
「和泉さん、先ほどの話の中で、保育サービス拡充すれば40万人の女性が労働市場に新たに参入してくる。ここの部分、細かい話になってきますけれども、まず個々の部分をどう見ますか?」
和泉准教授
「順番に、段階が3段階あると思っています。それはまずフルタイムの人達が希望をしたら、すぐに保育所へ入れる。これは優先順位として自治体が現在利用調整というのをやっているのですが。いわゆるポイント制とか、そういう言い方をして、フルタイムの人、共働きの人が最優先だよと。さらに兄弟がいたら優先だよと、ありますね。そういった要素というのがあって、まずフルタイムの人から埋まっていきます。その次にパートの人達が使えるようになり、その次に現在は働いていないのだけれども、保育所に入れるんだったら働こうかという人達にまでたどり着けるんです。そこまでに80万人は必要だということですね」
反町キャスター
「80万人の、潜在も含めた待機児童をきちんと手当することで、この40万人ぐらいの新規労働力、労働市場への参入、新しい働き手の誕生という可能性は、期待はできるとしていいのですか?」
和泉准教授
「期待はしたいです。そうしないと日本が地盤沈下していきますので」
反町キャスター
「労働力不足になると皆が思っているではないですか、その1つの対抗策として、カウンタープランとしては、そういうものが十分にあり得る?」
和泉准教授
「そういうことですね。安倍政権で、女性活躍、1億総活躍と言っているのは、まさにそう言ったところで、今働いていない方に何とか就労をしてほしい。そういうところを言っていると。働き手が減っている中で率を挙げていかないと、実際に就労する数も増えないと。そこに鍵があるのかなと」
反町キャスター
「鴨下さん、社会保障、いろいろな立案に関わって、法律の取りまとめもやられている中、経済効果として、いわゆる社会保障政策というのは意識されている部分というのはあるのですか?」
鴨下議員
「多少はありますけどね。ただ、直接的にサービスをどう提供するかとか、それから、そのための財源はどうするのかとか、こういうような話になってしまいますから、ただ、今日は柴田さんがおっしゃっているようなことというのは、本来的な目的ではないのかもわからないけれども、間接的に、経済にも効果があるのだと話というのは、我々が国民の皆さんを説得する時には、こういうふうに子育てに資源を投入すれば、結果的に経済も発展するのだよと。こういう説得材料にはなるのだろうと思いますから。私は肯定的に受け止めていますし、できれば、そうあってほしいと思います」

『波及効果』と日本の未来
反町キャスター
「公共事業に対する不要論とは言いませんけれども、公共事業にいくらぶち込んでもそんなに景気がよくならないよねという議論がずっと続いている中で、たとえば、大震災があったり、いろんなことがあったりするので、こういう時には復興のためには公共事業が必要だねということで、その議論が一時、打ち消されたりする部分もあるとは思うんですけれども。冷静に公共事業、いわゆる建築土木に関して景気に対する効果というのは、政治家の皆さんはどんなふうな感じで見ているのですか?」
鴨下議員
「今回、象徴的なのは、トランプさんが大統領になって、最終的には公共事業、老朽化したインフラを更新するということで、アメリカの株は上がり、ドルは強くなりと、こういうようなことでありますから、自民党の中も、そういう意味で、国土強靭化を強くおっしゃっているような人達もいて、私は、それはそれなりに意味があると思っています。たとえば、子育て支援と言っても、箱をつくるということは、公共事業そのものですから。そうして認可保育園を増やしていくとか、こういうようなことも含めて、経済をまわしていくという話では、仮に乗数効果的にはどちらが上なのかというのは、短期的に見れば、公共事業の方がわかりやすい。しかし、今回のような地震があったり、何らかの天災があった時に、命を守るというようなことについて、公共事業をやるというのは、私はあまり否定はしていないです」
柴田准教授
「必要な公共事業はやった方がいいと思います。需要があって、本当に必要なものは効果もあるわけですから、やった方がいいと思いますね、私も」
反町キャスター
「その線引きが難しいから政治の場において、これは無駄な道路だ、橋だ、という議論がずっと続いてきているわけではないですか。たとえば、敢えて聞きたいのは、柴田さんがこういう論を建てられた立場からすると、あそこに高速道路、橋を架けるのだったら、子育てに同じ金額を、橋1つに3000億円とかかかるものがあるわけではないですか、(それを)子育てにぶち込めば、違うのになと思う部分はありますでしょう?」
柴田准教授
「ちゃんとニーズがあれば、その地域に子育てのニーズがあれば」
反町キャスター
「たとえば、わかりやすく言ってしまうと、過疎地域に何千億円かけて橋を架けるんだったら、都市部の待機児童対策にと。そういう意味ですよ」
柴田准教授
「ただ、過疎地域に暮らしておられる方もいらっしゃいますからね。必要があればやるべきだと思います」
反町キャスター
「そこを認めちゃったら立論、厳しくならないですか?そうでもないですか?」
柴田准教授
「コンパクトシティ化、私は長期的には必要だと思います。ある程度、集約して住まないと。なので、いろんな議論がありますから、軽くは言えませんけれども、ただ、それをやったうえで、必要な部分は投じる必要はありますし、なるべく無駄を排したうえでの部分はありますので、単純に比較は…ケースバイケースになるかとは思うんですね」

子供の貧困と少子化への『効能』
秋元キャスター
「柴田さんが試算されているうち、パネルに戻りますけれども、右側の部分を検証していきます。保育サービスの充実と労働力の女性比率の増加によって子供の貧困率が2.2ポイント減少すると言うんですね。また、合計特殊出生率は労働力の女性比率が増えることで、マイナスに作用する面もあるのですけれども、一方で、保育サービスの充実によるプラスの効果の方が大きいということで、結果0.015上昇するということです。柴田さん、保育サービスの拡充がなぜ子供の貧困率改善につながるのでしょうか?」
柴田准教授
「まず保育に予算が投入をされると、その分、認可保育所を使いやすくなります。これまでパートで働いてきた人が認可保育所に預けられない。なので、認可保育外の高い認可外に預ける。保育に予算が投じられるとパートの人も保育安くできますよと。そうすると、お母さんによっては家計が増えるわけです。そういう意味で、子供の貧困が減るというのが1つです。もう1つは、お母さんも働きやすくなって、たとえば、あまり時間もなくて働けなかった人が保育で預けられるとなったら、その分もうちょっと働こうかな、パートの時間を増やそうかなとか、フルタイムになろうかなとなると、お母さんの家計が、収入が増えるわけです。そうすると、お父さん1人だけで働いている場合よりも、お母さんも2人働いたりとか、あとはシングルマザーにとっては自分も働いたりすれば、その子供達も、家計は安定するわけですから、そういう意味でも子供の貧困が減るというのが1つ、保育に関してはですね。あともう1つ、ここに載せていないのですが、私の本では児童手当の効果も出していまして、これも保育とほぼ同じぐらいの投資効果があるのですが、児童手当も直接、家計を補助します。児童手当が大事なのは保育のことを言っていますと、あくまで就学前の子供達への効果だけですね。もちろん、就学前の貧困が1番問題ですので、その後の人生をかなり左右しますので、大事ですけれども。ただ、小学校入ったあとも貧困だと塾に通えなかったりとか、いろいろありますね。なので、児童手当というものが小学校に入ったあと貰えるわけですから。ですので、児童手当もかなり重要で、子供の貧困に同じぐらいの投資効果がある。先進諸国の傾向としては見られたので、両方大事かなと思っています」
反町キャスター
「公認保育所が多数できることによって、安く子供を預けられることができる、貧困率が改善される。保育所が増えることによって家計が安定する。児童手当の効果もある。3つのポイント、いかがですか?」
和泉准教授
「子供の貧困を解決するところで言えば、所得再分配の話なので、家計が豊かになれば、それはいい結果を生むというのは当然あるわけです。子供自身もそういった親と向き合うとか、親とだけ向き合うような子育てではなくて、保育所のような形でいろいろな専門的なサービスが受けられると。専門的な職種の人にかかわることで能力が開発されるメリットというのもあって、将来的な効果は大きいと思います」
反町キャスター
「貧困率の改善というのは、間違いなく効果はあるのだろうと。ただし、長期的なというところで改善が長期的にというわけではないですよね。経済効果としての長期的なものがあるのではないかと。そういう意味で言っているんですよね?」
和泉准教授
「あともう1つ、先ほども言ったように、フルタイムとパートタイムのあと潜在的な就労予備軍の方達が就労するようになる。そういうところで、実は子供のいる世帯の所得を見た時に、上の方と下の方で分布が分かれるんです。それは、いわゆる700万円とか、それぐらいの世帯年収という世帯と逆に400万円ぐらいのところの世帯というのがあって、400万円ぐらいの世帯のところ見ると、専業主婦世帯とか、そういったところがまだ残っているわけです。ここのところが就労を始めたら、世帯年収の上乗せになりますし、子供にもまわっていく。また、経済全体に対して就労が増えるということが経済成長につながっていくということになると」
反町キャスター
「400万円のところに専業主婦が多いというのは、そこはどう見たらいいのですか?400万円で足りないと思うのであれば、働きに出ればいいのではないか。でも、それは保育所に預けられないから、働けないと、こう思ってよろしいのですか?」
和泉准教授
「だから、そういう人ももちろん、一定割合いると思うんです。そこでなぜ働かないのか、あるいは働けないのかというところについて、深くはわからないですが、そういった世帯の人達がいるのが統計的な数字から見えてくると」
反町キャスター
「それは、もしかして個々の価値観の問題かもしれなくて、私はここで、たとえば、毎月毎月7万円、8万円を稼ぐよりも、お金はちょっと足りないけれども、家にいる方がいいわよという積極的な専業主婦の方も当然いると思うのですけれども、その人達に保育所できたので、子供預けて、働きにいきなさいよと、これはできませんよね?」
和泉准教授
「もちろん、そうですね。最近、保育所の話ばかりしていますけれど、幼稚園の話というのも必要ですね。最近パートの人達の中でも、夕方まで預かってくれるから、幼稚園に預けて、夕方、幼稚園から引き取ると、こういう形でやられている方もいます」
反町キャスター
「こういう話になってくると、鴨下さん、本当にいいのか、悪いのか、わからなくなってくるのですけれども」
鴨下議員
「幼稚園の話ありましたが、ある程度、所得のある方々は、保育園に預ければ、ではなくて、幼稚園で教育をするというような、こういう方もいるし、それから、あとは預かり保育のようなもので、朝8時から夕方5時ぐらいまで延長保育をやってくれれば、そちらでいいなと、こういう選択をする人もいます。従って、必ずしも保育だけではない。特に3歳から上は。さまざまな選択肢があっていいと思っているんです。ですから、私は、今日の問題にしているのはゼロ歳児から未就園児と言いますか、2、3歳ぐらいまでの子供達をどういうふうに保育園で預かるか、あるいは保育ママとか、複合的にサービスを提供できるか。こういうようなことはやるべきだと思っているので、やるべきことをやるために、副次的に経済効果もあると言われれば、私達は、非常にエンカレッジされるわけですから、ですから、そういう意味では、ありがたいデータだと。こう思います。ただ、それは最終的に1.4兆円をどこから捻出するのかという財源の話もあって、グルッと回って3.3兆円ですか、戻ってくるという話がいつになるのよというようなことが見えないと、たぶん財務省などがかなり渋いことを言うでしょうから。そこの説得力さえあれば、私は子育てにドンドン投資をするというのは本当に重要だと思うし、そういう国民全体に説得するだけのデータがあれば、ドンドンお借りしたいと思います」

現役世代への『投資効果』
秋元キャスター
「ここからは、高齢者の社会保障が大きな負担として日本にのしかかっている中で、現役世代への社会保障はどうあるべきなのかというのを聞いていきます。先進国と日本の社会保障の内訳を柴田さんがまとめられたデータですけれども、紫の部分が高齢者に対する福祉の部分、赤の斜線が現役世代への支援ですけれども、日本の高齢者福祉は他の国に引けをとらないわけですけれども、量としては。子育て支援や就労支援など、現役世代への支援の比率というのは、OECD諸国の中でも最低レベルにとどまっているという現状があります。柴田さん、社会保障が高齢者に厚く、現役世代に薄くなっているという、日本の現状、背景に何があると分析されますか?」
柴田准教授
「背景は難しくて歴史的な(ものが)、社会保障、ヨーロッパでは手厚いですけれども、私の見たところでは、少なくとも宗教改革まで遡ると思うんですね。きっかけにカトリックがやっていたチャリティというのがあるのですが、それは教会でやっていたわけですね。しかし、ルターという宗教改革者が出てきて、カトリックが金を管理するとろくでもないことをする、免罪符を発行するとか。なので、お金を管理すべきではないと。代わりに自治体だとか、市民がお金を出し合って、貧しい人を支援すべきだと初めて宗教的に言ったのはルターだと思います。そこから、宗教的なバックボーンがあって、ルター派は北欧、イタリアにはカトリックがありますから、北に逃げるわけで、北欧に広がって、北欧で社会保障が充実したという経緯が、私が見るところでは本に書いてあるのですけれども。本当に何百年にもわたる背景がありますので、日本がすぐにマネをするというのは、なかなか難しいのですが、しかし、高齢者福祉を見ますと、これだけ充実したんですね。2000年に介護保険もできました。年金もずっと何十年もやってきた。これだけ充実した。1つの成果だと思うんです。なので、やればできると思います。なので、現役世代の支援がこれだけ、先進国の半分だったり、半分以下だったりしますが、それはやっていないだけである。やればできると思います。なので、これまでこれだけ議論が盛り上がってくれば、やろうかという機運になって、財源もつけようと。たとえば、税制をいろいろと変えたりだとかして、財源をつけようとなればできるわけですから、これから増える可能性はあるのではないかなと期待はしているところです」
反町キャスター
「日本において高齢者に厚くなった背景をもう少し詳しく。日本の政治的な事情とかがあるのですか?あるいは民族的な日本人としての特性があるのですか?」
柴田准教授
「難しいですけれど、たぶん高齢化は、平均寿命の伸びは先進国の中で1番伸びたんですね。つまり、戦後直後は、日本は先進国のビリッケツだったんですね、平均寿命が。それが1980年代から1990年代にかけてトップに上り詰めたわけです。これは他の国ではなかなかないジャンプで、つまり、高齢化がものすごく進んでしまったと。その代わり、一方で、出生率に関しては、ベビーブームがあって、第2次ベビーブームがあって、第3次もきっとくるだろうという想定もおそらくあったのではないかなと思うんですね。その一方、高齢者が増えれば高齢者の手当をしっかりやらなければという判断は当然の判断なのかなと思います。しかし、実際は、第3次ベビーブームはこなかったわけです。それで少子化がすごく進んでしまっているという状況はあるかと思います」
反町キャスター
「鴨下さん、柴田さんの話、いかがですか?高齢者と現役世代のアンバランスと、敢えて言いますけれども、どう見たらいいのですか?」
鴨下議員
「この配分は変えていかないといけないでしょう。特に少子化、人口減少社会になってきて、我々、日本の国力を維持するという意味においても人口があまりにも急激に減っていくというのは望ましい姿ではありませんから。ただ、そうすると、高齢者との配分を変えていくという話というのは、民主主義においてなかなか難しい様々な問題が…」
反町キャスター
「高齢者を減らして現役にまわすという判断しかないですよね。高齢者は現在のまま維持して、現役に厚くするということはどこからか財源を持ってこなくてはいけないわけで…」
鴨下議員
「ですから、高齢者から現役世代にトレードオフというか、ゼロサムでやっていくという話になると、これは世代間のさまざまな摩擦が出てきて、それを標榜する政治家と、現役世代を大事にしましょうという人が選挙で戦った時に、どちらが勝つかということになりかねないので」
和泉准教授
「資産の格差の問題は、21世紀ならではの課題だと思っています。20世紀までのものは所得で考えていたものが、ピケティにしろ資産の格差に注目を浴びせていますので、ここは日本の現代の政治課題として取り組んでいくべきではないかなと思います」
秋元キャスター
「実際の予算を見ていますとこのようになっていまして、子供・子育て5.7兆円、医療37.9兆円、年金56.7兆円。安倍政権の子育て支援をどのように見ているのですか?」
柴田准教授
「他の国と比べて、先ほどのデータとも関連するのですが、子供1人あたりに政府が使っている子育て支援の予算を他の国と比べますと、日本は先進国の平均の半分できているんですね。これは税と社会保障の一体改革をしたあとも半分ぐらいに過ぎないという推計ができるのですけれども、他の国の子育て世代は現在の日本の子育て世代の2倍の恩恵をもらいながら、働いているんですね、国から。保育だとか、児童手当とか、そういう人達と我々子育て世代は戦わなくてはいけない、国際的な労働力の競争があるわけですから。国際競争、グローバル。だから、日本の現役世代は他の先進国平均の、半分の環境で、非常に大変な中で働いている。これは非常に不利な環境なんです、国際競争においては。それは日本の成長力を高めるというところにおいては、現役世代への給付、いろいろな手当てというのは、子育て支援もそうですし、就労支援もそうですし、教育もそうです。そういうのは全体で見ると小さいですので、もうちょっとやっていただけたら、日本の労働世代が働きやすくなって、それは結果的に経済的にプラスになるわけですから」
和泉准教授
「子育てで、公費で手当てされなかった部分は、家庭内でそれを補っているわけですね。その部分、教育支出というのは高校、大学へと進学していった先でも公的な教育支出が少ないという問題として表われていて、そこで家計の豊かさによって、進学ができるか、できないか、教育の機会というのものが限られてしまうと。そこは大きな問題かなと思っています」
反町キャスター
「日本では、親の所得による進学率の格差というのは大きいのですか?アメリカの方が大学に行くのに金がかかりますよね?」
和泉准教授
「親が豊かだったのかどうかで子供の将来が決められてしまうというのは、これは不平等と言えますよね。ですから、そこを解決するのにアメリカはもとから不平等だと言っても、とても高い学費を払っている人もいれば、奨学金をもらってある程度、所得が低い人も多様性の中で入学して学んでいくということがある。それは高い学費を払ってくれる人がいるから、その分だけ奨学金も出せるとか、そういうバランスですね。そこはあまり日本の教育の中では馴染まない部分かもしれませんけど、そういうやり方をしたいという大学があった時、やってもいいのではないかと思いますが、それは大学のポリシーとか、そういったものに関わることなので」
鴨下議員
「お子さんを1人、2人と産んで、育てる時に、ゼロ歳児からの保育のことだけではなく、最終的にこの子が私立中学校に入って、大学に入った時いくらかかるのだろうかというのを、いろいろと親は考えますから。そうすると1人かなとか、留まってしまうということはありますので、和泉さんがおっしゃったように、ここで急速に盛り上がってきたものが給付型の奨学金、こういうようなものをできるだけ増やしていくというのも、最終的に大学を卒業すれば、あとは自分で自立して、稼いで、社会の中で活躍してもらうのですけれども、そこまでのサービスというのはある程度は公的にもフォローしてあげると。こういうようなことをもっと充実させた方がいいと思います。特にこれから100万人ぐらいしかお子さんが生まれない時代ですから、ところが、団塊の世代は200万人以上、同じ学年にいるわけですから、そういう人達を支えていただくためにも、もっと若い人達の負担を減らしてあげる。あるいは現役世代は可処分所得が減っていますから、こういうところで少しでも手元にお金が残るような、こういうような仕組みと言うのは、児童手当をもう少し充実させるとか、1子目、2子目、3子目で少しずつ累進性がある、ある意味でインセンティブがあるような、こういうような手当ての出し方とか、こういうことも含め、いよいよ考えないといけないと思っています」

鴨下一郎 自由民主党衆議院議員の提言:『経済的支援』
鴨下議員
「シンプルに経済的支援を充実させるべきだと思っています。いろいろな選択肢がありますけれども、モノとしてサービスをするのではなくて、手元にいくら残るかというようなことで、現金給付も含めて、経済的な支援に徹するべきだと。あとはそれぞれ選択するのはそれぞれの方々の人生観ですから」

和泉徹彦 嘉悦大学経営経済学部准教授の提言:『子育て支援は未来への投資』
和泉准教授
「これは、社会保障の年金とかの財源も含めて、医療の財源とかも含めて、これから働き手となってくる子供達、この子達がきちんと働けるような、能力を開発できるような、創造的な能力というものを身につけるためにも現在子育て支援が必要だと考えています」

柴田悠 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授の提言:『もっと政策効果の議論を』
柴田准教授
「まだまだ研究が足りないと思います。どういった政策に投資すれば、どのぐらいの効果があるのか、副次的効果も含め。私の分析は1つの分析ではありますけれど、まだまだ穴もありますし、改善すべきところもありますので、もっと議論、研究が進んでほしいと思います」