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2016年11月22日(火)
どう防ぐ?相次ぐ事故 高齢ドライバーと運転

ゲスト

古屋圭司
自由民主党衆議院議員 元国家公安委員長
所正文
立正大学心理学部教授
外岡潤
弁護士

繰り返される悲劇 相次ぐ高齢運転者事故
秋元キャスター
「高齢者ドライバーの事故というのは増えているのかということですが、東京都で、高齢者ドライバーが関与した交通事故発生状況の推移がこちらです。10年前の2005年8万件を超えていた交通事故は2014年に半数以下の3万7184件に減っているにもかかわらず、高齢ドライバーが関与した事故というのはさほど減っていないということが見てわかると思います。さらに、年齢層別に免許保有者10万人あたりの死亡事故件数を見てみますと16歳から19歳の免許取りたての若者と80歳以上というのが他の年齢層に比べて死亡事故の件数、飛び抜けて多いということがわかります。所さん、高齢ドライバーがこれだけ事故を起こしてしまっている現状をどのように見ていますか?」
所教授
「確かに事故がこの2週間ぐらい非常に多い。報道機関も少し加熱気味な感じを、私は受けているのですけれども、ただ、非常に個人差が大きいものですから、80歳代でも問題なく運転できる人もいるし、60歳代でも非常に問題がある人もいるわけですよ。ですから、新聞を見ますと一定年齢以上の人に免許更新をさせるべきではないという極論を吐いているような記事も見受けられるのですけれども、そう言った意見には、ちょっと賛同しかねるわけです。要するに、高齢者講習というのが日本にありますね。70歳以上の人は、特別な講習を受けて75歳以上になると認知機能検査と言われる認知症の簡易検査ですよ。それから視野検査があるのですけれども、そういうのを先進国でやっているの日本だけですから。そういったところを非常に疑問に思って、当初から、私は感じているんですよ」
外岡氏
「私自身は、介護福祉の専門として弁護士をやっていまして、介護施設ですとか、こういった認知症の方の問題というのを専門的に扱っているんです。そういったところを見ていますと家にいらっしゃる方がどうしても車を運転して、聞かないと。家族がタイヤの空気を抜くとか、いろいろやって。ただ運転できなくなると途端に気落ちしてしまって」
反町キャスター
「タイヤの空気を抜くというのは強制力というのか…強引な、そうでもしないと乗っちゃうということですか?」
外岡氏
「そうです。ですから、逆に運転ができなくなると急に落胆してしまって認知症がますます進むとか、そうですね、生活の一部ですから」
反町キャスター
「運転というのは、認知症に対する対抗策というか、対処療法になるのですか?」
外岡氏
「交通の手段ですから、好きな時に行きたい所に行けるということで、それを、足を奪われるようなものですから、だから、それでふさぎ込んで、ドンドン引き籠りがちになっちゃうとか、一方では聞きますから」
反町キャスター
「古屋さん、認知症の進行を食い止めるために運転すると言われても、そういう人達が街でたくさん走っておられるのは、どうなのですか?」
古屋議員
「先生がおっしゃったのは、発現形態と原因形態というか、だから、結果として運転をすることによって能力が落ちないという人もいらっしゃると思います。それは、周りの環境にもすごく影響される話です。年をとってくると機能はどうしても落ちますから。と言うのは、残念ながら現実ですね。昔、100m10秒で走っていたオリンピックの選手も、たぶん70歳になったら、どうがんばっても15秒では走れないですよね。それぐらい能力は落ちてくるので、私はある程度の年齢になったらチェックをするというのが絶対必要だとは思います」
秋元キャスター
「多発する高齢ドライバーの事故を受けまして、先週火曜日、関係閣僚会議が開かれまして、安倍総理は冒頭の挨拶でこのように話をしています。『各位にあっては改正道路交通法の施行に万全を期すとともに、取り得る対策を早急に講じるなど、この喫緊の課題に一丸となって取り組むよう指示する』と話をしています。古屋さん、政府としてはこの問題、喫緊の課題として大きな危機感として持っているということですか?」
古屋議員
「そうですね。ただ、ちょっと早急に講じるのと、もう1つ、社会全体で高齢者の移動手段を支援していくなどと、こういう言葉も、実は入っているんですね。だから、これが非常に大切なんですよ。単に75歳になったらもう運転をさせないと。では、この人達の生活はどうなるのというところがありますので、そこまで踏み込んでやりましょうということが、総理の、11月15日の関係閣僚会議の中の指示に入っているんです」

高齢ドライバーの運転能力
秋元キャスター
「高齢者の事故というのには、何か共通点というのはあるのでしょうか?なぜ高齢になると、そういう運転が増えてしまうのか?」
反町キャスター
「まとめてみますと、この3つと所さんが言っているんです。身体能力、ないしは高齢者の問題は順番に上から、目に関する特性はどう変わっていっちゃうのですか?」
所教授
「目に関する特性はだんだん視野が狭くなってくるというのがありまして、若い人ですと、両目を開いて180度、片眼で90度近くまで見るわけですけれど、老眼になってきて、50代、65歳ぐらいになってくると、それが60度ぐらいになってくると。ですから、両眼でも120度で、ですから、交差点で左折しようとした時にも、側方からバイクが来ているなんて見落とす場合があるんですよね」
反町キャスター
「と言うことは、若い時より首を大きく振らないと安全が確認できない。若い頃の気持ちで首を振らずに見えているなと思って行ってみると、見えていないところから、本人的には見えているのだけれども、見えていないところから車が来るみたいな、こんな感じですか?」
所教授
「と言うことです。ですから、高齢者講習では、認知機能検査と同時に視野検査というのが実施されているわけです」
反町キャスター
「2番目はどうですか。反応動作に関する特性は?」
所教授
「反応動作に関する特性は、単純な反応と、複雑な反応とありまして、赤信号でブレーキを踏む、これは単純な動作ですよね。この単純な動作はあまり若い人と差がないと。わずか0.1秒ぐらいの遅れしかないですけれども、複雑な動作になると苦手になるわけですよ。たとえば、選択反応検査というのですけれども、こういう約束をします。赤信号だったらブレーキを踏む。青い信号だったら、右手の手元のボタンを押す、黄色だったら左手という三選択三反応。若い人だったら器用にやるのですけれども、お年寄りだと色によって対応するわけですから、これは間違えたり。この反応時間、大幅にお年寄りは遅れます。赤が何回、黄色が何回とあとで報告しろというと、回数は間違えるし、時間もかかるしということになります。ですから、複雑になると混乱するということがあります」
反町キャスター
「咄嗟の車の操作と直結しているという主旨で言っているわけですね?」
所教授
「ですから、今回の事故でもアクセルとブレーキを踏み間違えたなんていうのは、かなりの面で説明できると思います」
反町キャスター
「3つ目の運転能力に関する過信というのは、何ですか?」
所教授
「過信というのは、一時停止の規則で止まらなくてはいけないところを、徐行で済ませて、事故に遭わないで何とか済んでいるのだというと大丈夫だろうということで自信を持ってしまうわけですよね。ですから、それでやってしまっているわけです。ですから、交通規則より、自らの経験則を重視して臨んでいるということですね。結果的に、事故というのは、交通規則を1回、2回無視したところで起こるものではなくて、重大事故の背景には29回の、間一髪の、ヒヤッと、ハッというもの、間一髪で事故に遭うという、肝を潰すような体験があると。さらに300回の違反とか、交通違反ですね。300回やっても、本当に事故に遭うのは1回しかないと。そういうハインリッシュの法則という、そういうのがあるわけですよ。ですから、お年寄りは300回も長い蓄積がありますからね。そうすると、大丈夫だろうと。それが過信」
反町キャスター
「過信という言葉、こちらでデータを用意したのですけれども、自分の運転テクニックなら十分危険を回避できる自信があるという人が75歳以上で50%を超えている。これは過信と言わずして何だと言うのか、こういう意味ですよね?」
所教授
「そうですね。それでこれまで乗り切ってきたということですよね。実績があるので、大きな事故にも遭遇してこなかったということで。この質問に対してイエス、ノーで回答をして、イエスと回答している人がこれだけいると、30代あたりはわずか20%ですよね。運転適性的には30代あたりが1番いいですけれども、その点は客観的に自己認識をしているということです」
反町キャスター
「外岡さん、こちらの方の話になるかもしれません。年寄りが、自身の、自分達の、そういう能力の問題点を認識しているのかどうか、ないしはこうやってデータを見ると、75歳以上の人が自分の運転に自信を持っていると、こういうデータは実際に、いろんなケースを見て感じることはありますか?」
外岡氏
「そうですね。高齢ということもありますし、認知症になりますと、思い込みになってしまうので、そういった部分が如実に出てきてしまっているのかなと思います」
反町キャスター
「実際にそういう認知症の方々と話をすると自分に対して自信を持っている人が多いのですか?病状として」
外岡氏
「病状なのかはわかりませんけれども、前提としてどうしても自分本位になってしまうのはあるのかなと思いますね」
反町キャスター
「自分本位になる方というのが、たとえば、このデータとして答えた人たちが認知症の患者ということではまったくないですけれど、そういう意味において、認知症の人が事故を起こすというリスクは高いという中で、年を経ることによって自信が増してくることと、安全性という問題とリンクして考えなくてはいけないのか。少し僕らは微妙なところだと思っているのですけれども、どう感じていますか?」
外岡氏
「そこが問題の本質と思うのですが、これから先、一律に、たとえば、ある年齢になったら検査をするとか、そういうことをやっても非常に反発が出ると思うんですよね。自分としては大丈夫なんだから、放って置いてくれという形で、極論すると無免許でも運転をしてしまって、それでまた事故が起きるような、たぶん起きてくると思うんです。認知症がですから免許がないと運転をしてはいけないという常識というか、大前提が守られないような可能性もあるわけですよね。そうなってくると、これは私の持論ですけれども、車自体を、技術を革新して、まずはアクセルとブレーキの踏み間違えが起きないような形にする。たとえば、身体障害者の方がこういった踏めない状態であれば、ハンドルの部分にアクセルをつけるとか、あとドライブレコーダーとか、これは事故を記録するものですが、テレマティクスというものがあります。これはテレコミュニケーションとインフォマティクスの造語ですけれども、要するに、イギリスとか、アメリカで始まった、たとえば、急ブレーキとか、そういう信号無視とか、そういったものがデータで蓄積をされて、それが通信で送られるんです、データとして。そうなると保険料があがるという、そういった仕組みの損害保険というものがあるんですよね。一応、これは10台以上の車を持っている事業者向けに発売されているのですが、それを個人向けで販売するですとか、そうすると、民間でも安全な運転をしている人は保険料が安くて済むとか。そういったことで、これからビッグデータの活用とかでできるようになってくると思うんですよね。いろんな技術があると思います」
古屋議員
「これはIoT(モノのインターネット)の活用という、あらゆる分野に適用して、ある意味で成長戦略にもなるんですね。だから、当然先生がおっしゃったような取り組みは、私は将来、進めていくべきだと。ただ、もう1つ、ブレーキの誤作動防止、いわゆるブレーキ踏み違い防止装置というのか、現在、新車では全部標準でついている車を結構、売り出し始めているんですよ。ただ、問題は新車なんです。後づけができないんです、これは。それはメカニカルに非常に複雑ですから、たとえば、ドライブレコーダーのように後づけしてできるものではないですよね。だから、新車を買った方にはブレーキ踏み間違い防止装置というのは極めて効果があると思います」

事故防止の決め手? 認知機能検査とは
秋元キャスター
「現行の道路交通法では、3年に1度、75歳以上の免許保有者には認知機能検査を行っているんですね。この認知機能検査、どういうものかと言いますと、たとえば、問題用紙に書いてありますけれど、今年は何年ですか、今月は何月ですか、今日は何日ですか、何曜日ですか、何時何分ですか、こういった問題が並んでいまして、これを、時計を見ないで、携帯電話や腕時計をしまった状態で答えてもらうというものがあるらしいです。続いて、記憶力のテストというのもあるのですけれども、イラストが全部で16種類あるのですが、これを見て、どれだけ記憶できるかということですね。覚える時間5分だと言うのですが。結構、5分で16個覚えるのは大変だなという気もしますけれども、そのあとで、5分間見たあとにイラストを思い出して、その名前を書いてもらうということですね。こういった問題が出題されて、30分ほどで終了する検査ということですけれど、こういった問題が出されるのですが、現行の認知機能検査の結果、認知症の恐れありと、診断された場合は、さらに信号無視ですとか、特定の違反があった場合には医師の診断のもと免許の取り消し、停止の可能性があるということですが、この改正道路交通法が来年3月に施行されますと、認知機能検査で認知症の恐れありと判断された場合は違反の有無にかかわらず、医師の診断で免許の取り消し、停止の可能性が出てくるということです。また、認知機能の低下と低下の恐れなしという場合、これまで3年後までは検査の必要なしとなっていたのですが、改正後は特定の違反をした場合はすぐに臨時認知機能検査というのが行われて、その結果に基づいて停止、取り消しの可能性が出てくるということです」
反町キャスター
「所さん、この新しい道路交通法の改正、分類の仕方、対応の仕方を、どう感じますか?」
所教授
「この検査の内容は、説明していただいた通り、今日は何月何日ですか、これは時間の見当識と言うんですよね。今日は何年ですかとか、何日ですかとか、何曜日ですかとか。次のがいろんな絵を覚える、手がかり再生検査というのですけれども、それ以外にもう1つ、一種類、3分間で時計の文字盤を変えて、数字を変えて、8時20分とか、短針と長針を変えて時計を書く検査。その3種類がありまして…」
反町キャスター
「所さん、16の絵を5分で覚えるのでしょう。何問以上答えられないと認知症だと言われるのですか?」
所教授
「それは複雑な数式があって、その中にその3つの検査の得点を入れて、一定の基準以上という、そういう計算の方法があるんですね。その3つの検査の総合点で、算出するようになっていますから。それで基本的に検査の内容が記憶検査が主体になっているわけですよ。認知症と一括りに言いますけれど、認知症にも幾つかのタイプがありまして、記憶障害が主に出るのは認知症の中でも有名なアルツハイマー型の認知症です。ですから、この検査で捉えられるのはアルツハイマー型の認知症だろうというのが、当初から、この検査がスタートしてから、2009年から言われていたわけです」
反町キャスター
「見つける対象がアルツハイマー型の認知症?」
所教授
「それは認知症全体のだいたい3分の2ぐらいあるだろう。ですから、3分の2の認知症を捉えられるからいいだろうということで始まったわけですけれども、残りの3分の1の認知症、別のタイプの認知症があるわけですね。それが脳血管障害型の認知症というのと、レビー小体型の認知症、あと最も問題なのに前頭側頭型がありまして、これをピック病と言うのですけれども、これは反社会的な行動をとる、脱抑制と言いまして、赤信号でなぜ止まらなくてはいけないのかとか、センターラインを超えて運転をすることに別に違和感がないとか、車両進入禁止になっている狭い道路に突っ込んでいくとか、そういう運転をしてしまうこともあり得ると。それが全体の5%と言われているんです」
反町キャスター
「ピック型の認知症を発症する前は普通のドライバーだったのですか?もともとの性格というのは」
所教授
「それは前頭側頭型の認知症の、1つのスタイルですね。それが認知症全体の5%ぐらいということですね。この認知機能検査で捉えられるのは、基本的にアルツハイマー型の認知症だということで、ですから、申し上げた前頭側頭型の認知症、レビー小体型、脳血管障害型の認知症の3分の1は基本的に除外されているというところが当初から問題視されていたんです」
反町キャスター
「でも、だからと言って、この制度が3分の2しかカバーしていないとも言えるし、3分の2は、これでスクリーニングできるという、そういう評価もできるわけですよね?」
所教授
「それはそうなのですけれども、高齢ドライバーがドンドン増えていきますと、分子の3分の1の方も看過できなくなると。特に1番問題にある5%の、100分の5の部分もドンドン大きくなってくるわけです。ですから、ここは非常に問題視されているということが1つあります。それから、さらに運転行動において問題視しなくてはいけないのは、認知症以外でも運転に不適な病気というのが、少しずつ表面化してきているということですよ。昨年の、ちょうど今頃だったでしょうか、宮崎県で歩道を激走してしまったドライバーがいたかと思います。あれは73歳のドライバーだったのですけれども、地元からの情報ではでんかん発作が起きたということを聞いています。そうすると、認知症ではなくて、てんかん発作が起きたということであると、そもそもこの検査ではカバーできませんね。そうすると、高齢ドライバーが増えてきますと、運転に不適な病気というのがアルツハイマー型認知症だけターゲットにいいのかという、根本的な問題になってくるわけですね。次々に運転に不適な病気が出てくる可能性があるんですよ。そうすると、もぐら叩きのように、その病気を見つけては…」
反町キャスター
「話を聞いていると他の認知症や、てんかんにも対応しなければいけないという話はわかりますが、3分の2のスクリーニングを否定するものではありませんよね?」
所教授
「否定するものではありません」
反町キャスター
「残り3分の1を看過していいのかという、この主旨の話だということですよね?」
所教授
「そうです」
反町キャスター
「古屋さん、どうですか?」
古屋議員
「てんかんのお話がありましたけれど、これは既に道路交通法を改正して、てんかんの方については医師の診断をつけて対応するということになっています。年齢は対象になっていませんので、てんかんの部分だけはそういう対応をする道交法が、2年ぐらい前だったかな、成立して」
所教授
「高齢者、100人に1人ぐらい突発的に初めて出た場合、これは対応のしようがないですよ。1回目の場合はね」
古屋議員
「それは高齢者ですから、いろんな症状が出てきますけど、ただ、てんかんというところに着目すれば、それはやっています。さらに高齢者になりますとあらゆる現象が認知症の一環として出てきますので、その対応は、先生の指摘する通りかもしれません」
反町キャスター
「ピック型とか、脳血管型とか、アルツハイマー以外の、残り3分の1の部分の認知症についての、そのスクリーニング、先ほど、医師が足りないという話を聞いて、さらにどうなのだというのも思いながら、そこの部分というのは、たぶんこの道路交通法の改正の時には、その部分はいいのかという議論はあったのですか?」
古屋議員
「そういう症状があるということを担当していただくお医者さんに専門医以外でもしっかり研修をしていただいて、それをしっかり見抜くというか、そういう技術を身につけていただく必要がありますね。だから、申し上げると、極めてこれは大きな改正でしょう。大改正なんですよ。だから、それはお医者さんの負担が増えますよね、これは」

運転免許証返納の現状
秋元キャスター
「運転免許を自主的に返納をする制度、1998年から始まった制度です。2015年の、75歳以上の免許保有者がおよそ478万人にのぼっているのですが、自主的に免許返納をしたという人は、およそ28万人に過ぎないということで、所さん、多いとは言えない数字だと思いますけれども、この自主返納をする方は少ないですよね?」
所教授
「そうですね。この中身を見てみますと、返納してもそれほど生活に不便がないという都市部に住んでいる人が非常に多いんです。実際、返納して、そのあとの生活が著しく不便になるといった、いわゆる地方に住んでいる人の返納というのは非常に少ないのが現実で、首都圏一都三県とか、大阪とか、そういったところに住んでいる人が大半だということを忘れてはいけないですよね。普段あまり車に乗っていないという」
反町キャスター
「古屋さん、どうですか?免許証を取りあげる、返納してもらう。これは難しいものですか?」
古屋議員
「地方都市では、特に過疎の地域では生活するのに車というものが必需品ですよ。だって、都会の方はたくさん免許を返納しているけれど、それはそうですよ。一家庭あたり車の保有台数0.2ないですから。しかし、地方に行ったら、多い県では2点何台とか。それぐらいはそれだけないと生活できないからですよね。そういう生活の手段を根幹から奪っちゃって、普通の生活をしなさいということを言っても、現実にはできない。だから、どうやって移動に対して社会全体が支援していくかということもパッケージで考えていくべきだと思います。だから、NGO(非政府組織)とか、NPO(特定非営利活動法人)とか、たとえば、デマンドタクシーというのが、先ほど調べたら平成21年が、1718の地方公共団体のうち、131団体がやっていたんです。やっているんです。平成26年には338団体に増えているんですよ。それから、コミュニティバスは平成18年に887団体だったのが、平成26年には1251団体に増えてきているんです。では台数はどれぐあいあるかというと、平成18年は1500台で、平成26年には3000台ぐらいですから、一地方公共団体に1台か2台ということで、これは絶対的に不足していますよね。でも、そういったものが増えていけばいくほどいいです。もう1つ、タクシーでもいろいろ先ほど、IoTの話もありましたけれど、そういうものもうまく使って、できるだけ効率的にそういうお年寄りが買い物に行ったり、病院に行ったりする時に使えるような移動手段。こういったものにきめ細かく対応していけば、ある程度の解決はできると思いますが、ただ、まだ、特に地方都市ではそういったことが始まったばかりなので、国を挙げて支援していく必要があると思いますし、一方では、NGOとか、NPOとか、こういう民間セクターの力も借りて対応していく必要があると思います。車を運転しなくても、地方でも生活にそんなに不自由なく生活していける環境を提供してあげることが絶対条件ですよ」
反町キャスター
「どうしても、運転する側のメリットとか、お年寄りの利便性という話になってしまうと、そんな簡単に取りあげるのは無理だよという話になるのですけれど。冒頭、紹介したみたいに件数は変わっていないということは、報道が多いのは、メディアがそこに注目しているからだという、我々の責任論もあるにせよ、被害者、事故が多発する中でその返納を待とうと、自主的返納できる環境をつくることが先だと言ってしまうと、その状況がしばらく現状維持になってしまうのではないかという危惧を持たざるを得ないですけれど、そこはもっとわかりやすく言ってしまうと、交通事故の被害者はどうしたらいいのですかという、こういう話ですよ」
古屋議員
「交通事故には加害者と被害者がいらっしゃいます。被害者からすれば、同じような事故は自分の家族だけでもうやめにしてくれ。これは被害者家族の悲痛な声ですよ。確かにそれはしっかり受け止めていく必要があります。一方では、お年寄りで普通に社会で生活しておられる方もいらっしゃいます。こういった方に対して、必要最低限の生活をする担保をどうやって提供していくのかというところも必要なので、だからこそ、これは関係閣僚会議立ち上げたのは非常にいいことですよ。これを各省庁が、じゃあ厚生労働省だけでできるかと、できませんよ。国交省だけでできるか、ましてや警察だけで取り締まるとか、そういうことができるか、できませんよ。だから、関係省庁が入ってコントロールタワーとして内閣府が入って、取り組みをスタートするということです。私はこの議論に相当、期待していますし、それから、党としても、与党としても、しっかりこれをフォローして、私も対応をしていきたいと考えています」
反町キャスター
「外岡さん、この問題は、要するに、その運転するお年寄りの利便性とか、先ほどあった生きがいとか、認知症の食い止めとか、そういうメリットがある一方、交通事故の被害者、犠牲者の側の議論を進めていくうえでバランスがすごく難しくて、どちら側に立つ話か、一方的になっちゃうような気もしながら聞いているんですけれど、ここのバランス、数から言えば、圧倒的に…。そこも含めて、どういう風にこの問題を捉えたらいいと考えますか?」
外岡氏
「まず大事なことというのは、この問題自体が今始まった問題ではなく、ずっと続いてきたわけですよね。だから、来年の3月以降も完全にこういうトラブルはなくなるわけではないわけですし、それは本当に転換点にいるのだと思うんです。つまり、認知症ですとか、てんかんとか、精神疾患の方とか含め、マイノリティだった人がマジョリティになりつつある。要するに、戦後ずっと高度経済成長の中で、健常者を前提としてやってきた世の中が、踏切事故ですとか、鉄道で電車に轢かれてしまう。本当にイレギュラーな事故が起こっていく中で、要は、想定外の行動をする人が街に溢れて、それでも最低限の安全を確保するにはどうしたらいいかというのが、本当に古屋先生がおっしゃるように、多角的にいろんな観点から、少しずつ変えていかなければいけないことだと思うんですね。ですから、それは一律に免許を取りあげれば済む話ではないですし。段階的に、要は、最低限安全な方法、たとえば、1番即効性があることはアクセルとブレーキを踏み間違えるというのは、たとえば、左足でアクセル、右足でブレーキと、両足で操作をしてしまっているということで起こっているというのはよく聞きます。ですから、片足でちゃんと踏んでいるかとか、そういった簡単な講習をまず始めるとか、あるいは先ほども言いました通り、安全な車の開発も2009年ごろに高齢者に優しい自動車開発推進知事連合というのがありまして、それは各県の知事の方がそういった2人乗りのコンパクトカーですとか、そういったものをつくってはどうかと、国交省とかに提言されていたのですけれども、今その活動がどうなっているのかというのも、先ほど、電話で聞いてみたのですけれど、ちょっと国交省に行って進言して、そこで止まっちゃっていると言うんですよね」
反町キャスター
「止まっちゃっているとはどういうことですか?」
外岡氏
「いや、わからないですけれども、技術的な問題とか、費用の問題というのが、まずあると思うんですが。この問題の本質は、認知症の人をあぶり出すということではなくて、要するに、危険な運転をする予備軍の人をなるべく、それこそふるいにかけて見出すと。それが差別につながってはいけないですけれども、でも、それは1回のテストとか、医学的な、先ほどの絵を見て覚えているかとは関係ないと思うんですよね。だから、大事なことは普段の運転でどれだけ危ないか、それをドライブレコーダーなり、テレマティクスで、予知をして、たとえば、1年間のデータを蓄積して、ポイントを集計していくわけです。こんなに急ブレーキを何度も踏むとか普段の運転の仕方というものがこのデータで集められるようにすれば、まずは結局、全部インフォメーションテクノロジーだと思うのですけれども、そういったシステムを試験的にやってみるですとか、要するに、普段の運転の状況をどれだけ把握できるかという、その仕組みをつくることが1番根本的な解決策だと思います」
反町キャスター
「若い人も含めて、個々人の運転の技量というのか、もしかしたら性格みたいな、くせみたいな、危ない運転をする人も含めての運転のマナーやら、技量を全部ビッグデータとして、でも、そうかと言って、匿名性では済まなくて、最終的には、本人に個人にフィードバックしないと、あなたはダメだよ、というところまで言えないので、ビッグデータという言い方にちょっとならないような個人データをちゃんとデータとして集めて、ダメな人に対してフィードバックする。そういうシステムをつくらなければいけないという主旨の話ですよね?」
外岡氏
「ですから、民間であれば、それがテレマティクス保険としてだんだんと始まりつつあるわけですよね。そういったものが進化していけば、仕組みとして予防には資するのではないかなと思うんですね」
反町キャスター
「かなりのコストがかかりますね?古屋さんのドライブレコーダーの話も聞きながら。それは社会が負担すべきだと感じますか?」
外岡氏
「それは車で、エコカー減税とかがありますけれども、そういうのをやっている余裕があるのであれば、要するに、安全な車ですとか、要は、そういうところに誘導するための減税ですとか、そういうことができるのではないかなと思うんですよね」
反町キャスター
「ドライブレコーダー減税?」
古屋議員
「環境負荷課税ということでずっと減税をしてきたわけですよ。でも、本当にそれだけでいいのかという議論はしていくべきでしょうね。日本の自動車は、極めて環境性能にしたら世界の優等生ですね。だから、十分、減税の政策目的はある程度、達してきているのだから、次の本当の社会的ニーズに対する議論をしていくというのは、税として考えていかなければいけないというのは、1つの考え方かもしれませんね。私は税調の専門家ではありませんので、一般論として申し上げたのですが、時代のニーズがドンドン変わってきますので、今後は高齢化社会、事故、それから、過疎、そういった方が住む人達をどうやってサポートしていくのか、そういう視点での税制というのも必要なのでしょうね」

免許証返納と家族
秋元キャスター
「高齢者のドライバーが家族にいる方は、家族としても心配だと思うのですが、家族の説得で免許返納というのは難しいものなのですか?」
所教授
「安易に、お爺ちゃん、お婆ちゃん、父親、母親なのでしょうけれど、テレビでやっていたから、危ないからやめろよと都会に出ている子供が電話をするのは逆効果であるということも言われます。介護破綻の1つの重要な要因と言われるんですね。子供はもちろん、心配して言っているのですけれど、言われた本人はそうは受けとらないということです。ですから、メンタル面でのケアというのは非常に重要なわけでして、慎重に対応しなければいけない。要するに、運転するということは、本人にとって自立の象徴であると。自己の尊厳にかかわる非常に重大な問題なので、運転免許返納するというのは、そのあと死ぬのを待っているしかないと本人が受け止めると。そのあとの生活もきちんと考えてあげないといけないということですよね。それを抜きにして危ないからやめろと安易に電話1本で言うのはもってのほか。そのあとも人生は続くわけですから、きちんと考えて、本人に説得ではなく、納得と言いますか…」
反町キャスター
「納得させる方法というのはありますか?」
所教授
「私が注目している方法が1つあるのですけれど、全国に少しずつ普及しているのですけれども、最初に始めたのは熊本県ですけれど、免許の更新現場に女性のベテラン看護師を配置しているということです。要するに、看護師でベテランということですから、医者ではないですけれども、総合医的なイメージがあるわけです。そこで認知機能が低下しているなんてことになってくると、そろそろ返納を考えたらどうかというようなことを、そういう人に言われると、医学的な面談も合わせてしますと、家族に言われたり、あるいは警察の担当者に言われると反発しても、そういうベテラン看護師に言われると心が動いてくる場合もある。地元のベテランの看護師ですから地域事情にも精通している。ですから、運転免許を手放したあとの、いろいろな生活についても、どう移動したらいいとか、そういうことについてのカウンセリングもできるということですよ」
外岡氏
「法的な観点で言いますと、親族が認知症の人の危ない運転を放置していたと、何か事故があった時には身内が監督義務を怠ったと。賠償を求められる可能性もあるわけです。家族としても他人事ではないというところがあるので難しいと思います」

責任の所在は誰に?
反町キャスター
「人身事故を起こした時に、現行法においては、認知症の人が自己を起こした場合の賠償責任というのは家族が追うのですか?」
外岡氏
「任意保険があるのですが、基本的には被害者救済の観点でやっているので認知症の人が(事故を)起こしても保険は出るものだと。ただ、法的に、今年3月にJRの鉄道事故で家族が提訴されたと。そういったことになってきますと、遠距離介護している都心に住む家族がそういう人を野放しにしていたと…」
反町キャスター
「今回のJRのケースでは、遠くに住んでいる家族というのはある程度、認められたわけではないですか、賠償責任がなくてもいいと」
外岡氏
「それは最高裁が6つの基準を出しまして、結局それはどれを組み合わせても、どんな結論でも導けるような曖昧な基準だったんですね。この問題全体が解決されたわけではないと」
反町キャスター
「認知症の人が人身事故を起こした時には、賠償は家族にまわってくると思った方がいいのですか?」
外岡氏
「何とも言えないですね」
反町キャスター
「任意保険ですが、保険会社が認知症の人を保障するかどうか?ルールはあるのですか?」
外岡氏
「100%ではないですね。ですから、法律というのは犯人探しをしますから、お金のある人を狙っていくと。そうなりますと働いている、現役の子供の世代ですとか、そういう人達の方がお金を持っているから、監督責任だと、そう構成するのも不可能ではないですよね」
古屋議員
「もちろん、民間の保険会社は、原因が何であれ、事故を起こして相手を死亡させたりしたら保険は出ますよ。しかし、代位求償される可能性が高い。要するに、保険会社が払って、たとえば、子供の監督責任が不十分だったと言ったら、代位求償権を得て、損害賠償を加害者の家族にしてくる場合があるかもしれないですね」
反町キャスター
「親(の動作)が鈍くなってきたけれど、運転しているんだよねというのは放置できない問題に聞こえてきますよね」
古屋議員
「だから、社会全体で支えていくということが必要ですよ」

古屋圭司 自由民主党衆議院議員の提言:『高齢者事故対策=地方・過疎対策』
古屋議員
「社会全体で支えていくことですが、具体的には、高齢者の事故の対策は過疎対策です。ここが1番深刻なので、過疎の、車がなくても生活していける、あるいは代行ができるような社会をつくりあげていく。これは都会と比べて、地方の必然性、逼迫性が圧倒的に高いという認識で書きました」

所正文 立正大学心理学部教授の提言;『老いの受容』
所教授
「私は心理学の立場から出させていただいていますので、高齢期になってもいつまでも中年期の延長で生きていたい、そのために、活動するために車が必要だと考える人が多いですが、運転する能力の限界に到達したと自分自身が理解する、老いを受け入れるということは一段上のステージに到達したということで、自分が成長、発達したという証になりますから、むしろ素晴らしいことなので、積極的に受け入れてほしいと思います」

弁護士 外岡潤氏の提言:『ともに生きる』
外岡氏
「この問題というのは、古くて新しい問題なわけですよね。1つ言えることは、超高齢社会になっていく中で、こういったことが当たり前という世の中に大きく変わりつつあると、そういう中でどうやっていろいろな価値観ですとか、条件の人が共生できるかというのは、本当にいろいろな知恵を絞って、一朝一夕でできるものではないですけれども、覚悟を持ってやっていくことだと思うんですね。今回の道交法改正でも、改正後に同じような事件が続けば、これでは足りないということで、より強化される可能性もありますし、本当にそういう方向でいいのかというのは、柔軟な姿勢で多角的に検討して、ともに生きるという発想でやる必要があると思います」