プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年11月21日(月)
日露首脳会談の成果は 検証APEC安倍外交

ゲスト

岸信夫
外務副大臣 自由民主党衆議院議員
袴田茂樹
新潟県立大学教授
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

検証『安倍・プーチン会談』 日露首脳が目指す決着点は…
反町キャスター
「プーチン大統領、ペルーにおける会見においてこういうことを言っているんですよ。日ソ共同宣言、昭和31年、1956年の歯舞、色丹を、平和条約との交換で引き渡すということについては、プーチン大統領は『日本に歯舞、色丹を引き渡すと記載はあるが、引き渡す場合の主権をどちらに置くか、引き渡しの条件については、日ソ共同宣言には何も記載されていない』と。どこで戦おうとしているのかがわからないのですが、このプーチン大統領の言いぶりというのは、どう理解をしたらいいのですか?」
宮家氏
「たとえば、このペンを反町さんにあげると、引き渡しますよと。だけど、所有権は俺のだぞとか言わないでしょう。普通は渡したら、その段階で主権は移転をするんですよ。ですから、僕には、必ずしも全部知っているわけではないけれども、素人には屁理屈に見えますよね」
反町キャスター
「袴田さんから見ても屁理屈に見えますか?」
袴田教授
「これは日本人が、プーチン大統領は非常に柔道家で、親日家だから、ずいぶん柔軟だなという、この発言がいくつかあるんですよね。たとえば、引き分け、柔道用語の、引き分けという発言で日本は随分と沸きました。しかし、2012年の3月1日に、その発言をしているのですけれども、その時に同じ、この硬い発言もしているんですよ」
反町キャスター
「その会見の場において?」
袴田教授
「会見の場において。しかも、この2島以外に、つまり、国後、択捉は問題に一切しないと、問題ではないという硬い発言もしているのですが、こういう硬い発言は、その後、プーチン氏は2014年の5月23日、それから、つい最近、9月6日にも記者会見で同じ硬い発言をしているのですが、ただ、日本のメディアは、不思議なことに、硬い発言は報じていない。引き分け発言だけを報じている」
反町キャスター
「どちらも本音ですよね。たぶん。どちらが本音と聞いた方がいいですか?どちらも本音なのですか?」
袴田教授
「だから、本来、引き分けというのをどういう意味で使っているかということで、私の理解では、プーチン氏が確かに2000年に、それまでいったん1960年に否定したこの日ソ共同宣言を、第9項領土条項ですけれども、それを認めたと。だから、俺達は譲ったのだと。譲歩をしたのだと。だから、日本も4島4島と言っていないで、少なくとも日ソ共同宣言のところまではきなさいよと。私は、それが彼の頭にあると」
反町キャスター
「それがこの発言の中にある。発言の真意もそこにある。発言の真意というのは国後、択捉はもともと議論の対象にはしませんよと」
袴田教授
「その時、それもはっきりと言いました」
反町キャスター
「歯舞、色丹を引き渡すと書いてあるけれども、その引き渡し方をこれから話し合おうではないかと」
袴田教授
「だから、引き渡し後も、だから、主権はロシアに残る」
反町キャスター
「これは形としてどういうことですか?引き渡したあと、主権を残すというのはどういうことなのですか?」
袴田教授
「ロシア人は、専門家、これもまた屁理屈に聞こえるのですが、善意によるプレゼントであると。引き渡しというのは、この日ソ共同宣言は善意によるプレゼントであると。プレゼントする以上、自分が持っていないものをプレゼントできますかと。だから、まず日本がこのロシアの主権下にある、つまり、ロシア領だというのを認めなさいと」
反町キャスター
「引き渡す前の主権をどちらに置くのかというのは、ロシアのものを、あなたがまず歯舞、色丹、ロシアのものだとまず前提として認めなさいよと」
袴田教授
「それは最近、非常にいろんな形で言うのですけれども。この時、言った時には、渡したあと、未来形で、ロシア語で未来形で言いました。引き渡したあとの主権がどちらになるかも書いてありませんよという、そういうようにはっきりと述べています。それも3回。3回同じ表現を使っているということは、思いつきではなくて」
宮家氏
「それは条件を吊り上げていこうということでしょう」
反町キャスター
「タダではあげないよと言っているようにも聞こえるのですけれども、そういう受け止め方はあまり正しくないですか?」
袴田教授
「それは今回のプーチン大統領の、現時点では、今はロシアの主権がある領土だとしていると、認識していると。ただし、日本側と対話を続ける用意はある。あらゆる案が可能だと考えていると。彼がこれまで言う時にははっきり断言しているんです、ロシア領であると。今回は、こういう1つの含みを持たせた言い方になっていますが、その狙いは、私は明らかだと思うんですよ。断言をしたら、もう領土交渉しても無駄だと。領土主権交渉するために経済協力をやるというのはばかばかしいと。そういう結論になってしまうが故に…」
反町キャスター
「2島の話に集中して、あとは経済協力ができるところしっかりやろうと、もやもやした部分をクリアカットして話し合いに入りませんかと言っているように聞こえる。宮家さん、そういう印象ではないのですか?」
宮家氏
「根本的なところは譲歩しないで。経済協力だけほしいということですか?」
反町キャスター
「でも、2つは引き渡すよという」
袴田教授
「おっしゃったのは、二島先行論」
反町キャスター
「どちらかと言うと2島打ち止め論みたいに聞こえます。2島でおしまいというふうに」
袴田教授
「二島先行論とか、段階論という言い方もありますが、それは4島、4島と言っていても、ロシアは簡単に4島を日本に渡すはずがないと。しかし、プーチン大統領が1956年(日ソ共同)宣言は認めているのだから、とりあえず1956年宣言に従って、歯舞、色丹の2島は日本に還させますよと。残りの2島は継続協議。その方が現実的ではないですかという考え方があるんですよ。ただ、私はこれに対して、常に言うのは論理的に、それは成り立ちますかと。その理由は1956年宣言に従う限りは、とりあえずであれ、歯舞、色丹を日本に引き渡すためには平和条約が必要であります。平和条約というのが戦後処理が最終的に終わったということを意味する以上、これまで日本は日ソ共同宣言で、あらゆる領土問題以外は片づいてはいるけれど、平和条約を結んでいないのは領土問題が片づいていないから。だけど、現在はまだ、この領土問題が片づいていない時に、平和条約が結ばれていない、だから、一生懸命に我々は交渉を求めているのに、平和条約を結んだあと、ロシアが残り面積93%の国後、択捉の返還交渉をするというのは現実的にありますかと。まず私はあり得ないと」

北方四島をめぐる駆け引き 日露首脳それぞれの思惑は…
反町キャスター
「APEC(アジア太平洋経済協力)終了後の、プーチン大統領の会見で、ちょっと気になる発言がありましたのでまとめてみました。こういう発言がありました。安倍総理からの経済協力の提案は8項目で、クリル諸島に限らず、日露間のかなり大きなプロジェクトです。安倍総理と今回の会談ではクリル諸島でどのような共同活動ができるのかということについても話し合いました。こういう話だったのですけれども、袴田さん、確認ですけれども、これはAPEC終了の、昨日の時点でのプーチン大統領の発言、ここで言っているクリルというのは、北方四島も含める?」
袴田教授
「含めています」
反町キャスター
「北方四島も含めたというところの、北方四島の島々で共同活動。いわゆる新聞の一部を騒がせた共同経済活動。これはどういう意味なのですか?」
袴田教授
「これはロシア側が1990年代から非常に強く求めていたことなんです。特にプリマコフ首相、その前は外相でしたけれど、彼が非常に強く求めていた。つまり、北方領土を経済的に豊かにするためには日本の協力をできるだけ取り入れたい。だから、北方領土で日本の投資、あるいは企業などがドンドン進出してもらって、共同で経済活動をやりましょうと、1998年に、実は共同経済活動委員会というのが日露間でできているんです。小渕首相の時に」
反町キャスター
「やろうという雰囲気には、両国の間ではなっている?」
袴田教授
「ただ、両国の法的立場を侵さない限りという、範囲でということで、両国の立場を侵さない」
反町キャスター
「今回その共同経済活動という言葉出た時にも共同経済活動ということを首脳間でもし認めたとしたら、合意したとしたら、ロシアの主権下における北方領土における経済活動なのか。そこは日本の領土として認めたうえでの共同経済活動か。全然違うではないかというところで、ドカンと…」
袴田教授
「ロシアは当然のことながら、ロシア領だと考えている」
反町キャスター
「それは、日本は飲めない話ですよね」
袴田教授
「そうです。だから、これは共同経済活動というのはつくりましたが、海上で、海で何かちょっとやるというのを、少しいろいろとトライはしましたけれども、本格的な意味での共同経済活動はできなかった。それはロシアの法律の下で、共同経済活動をやるということは、これがロシア領だということを認めることになるから、日本政府としてはそれに乗れなかったということですね」
反町キャスター
「岸さん、今回のプーチン大統領が敢えて、あらためてというか、言ったクリル諸島における共同活動は日本政府としてはどう受け止めるのですか?」
岸議員
「会談の中で、どのような会話があったか。これは、私どもがつまびらかにする立場にないですけれども、そのうえで共同活動、当然ながら、これから4島返還に向けて、議論をする中で、過程、あるいは最終段階において何らかの経済活動をしていくと。経済協力という形も含めてやっていくことも想定されるわけですけれど、その中で、たとえば、他の国の企業はかなり北方領土の中に入っている国もありますね。日本も先ほど、おっしゃっていましたが、それぞれの国の法律の下でという条件がありますから、これまでできなかったわけですけれども、そうした面が解決できるのであれば、それは1つの協力の形を、北方領土での協力の形としては十分にあり得ると思います。ただ今の時点でそれがどのような形になるのか。そういうことを予断をもって話をするわけにはなかなかいかないのかなと思います」
反町キャスター
「プーチン大統領の会見の場で、安倍総理との今回の会談では、クリル諸島でどのような共同活動ができるのかということについても話し合いをしたと言ったあと、記者がいろんなことを突っ込もうとすると、この件についてはこれ以上、話さない方がいいだろうということで、細かい言及を避けているんですよ。だから、喋り過ぎたと大統領が思ったとは思いませんけれども、ここの部分というのは非常に琴線に触れる部分だなというのを感じたうえで言っているのだと思うんですけれども、日本にしてみたら、ロシアの主権を認めた北方四島における共同経済活動は日本政府として認められるものなのですか?」
岸議員
「認められない。大前提としての部分があると思うんです。ロシアの法律に従ってロシアの領土で活動することを認めるようなことになることはできないわけですね」
反町キャスター
「そうすると、安倍総理からの経済協力の提案8項目。これまで日露間の話で、安倍・プーチン間で話し合われていた経済協力というのはシベリアの拠点開発とか、そういう部分が多かった。たくさんあったわけではないですか。そういう部分であれば、要するに、ロシアの主権が当然あるところ、そういうところに対する経済協力があることはわかると。ただし、北方四島において、ロシアの主権を認める形で、そこに日本の企業や資本やらが入ってやるというのは、ここの部分というのは、日本にとって飲めないものですねという、それが日本政府の基本的な受け止め方だと思ってよろしいですか?」
岸議員
「もともと日本の国の立場としては、そういうことだと思います。ただ、今後、領土問題の議論の中で、様々な議論が出てくる、話し合われると思うんですね。その中で、それぞれの国の立場は立場として議論をするということはあり得るかもしれません。ただ、結論としてそうなるかどうか、そういう部分については、特にまだお話できるような状態ではないと思います」
反町キャスター
「分けて考えた方がいいかもしれないなと思ったのは、クリル諸島で、どのような共同活動ができるかということに関して、たとえば、これまでの話で言うのだったら、歯舞、色丹ではなくて、国後、択捉の方の島においての共同経済活動というものを、2島を、平和条約締結とのバーターにおける二島先行返還、もしかしたら、打ち止め返還なのかもしれないけれども、返還したあとに、残りの2島、国後、択捉にしては継続協議という形において共同活動という形で色をつけるという、その選択肢というのはあり得るのですか。平和条約を締結して、2島が還ってきて、残りの国後、択捉に関しては、主権に関しては形式上こちら側から見れば継続協議、向こうから見たら打ち止めという形にしたうえで共同経済活動という意味というのはあるのですか?」
袴田教授
「平和条約をもし歯舞、色丹で結んでしまえば、残りはロシアの主権と認めたのと同じになりますから。言葉のうえで継続協議と言っても、そこで共同経済活動をやるというのは、もう日本は諦めたと。おっしゃったように、それでも諦めるというのであれば、7%での話はまた別だと思います」
反町キャスター
「93%を諦めて、そちらの方ではどうぞということになるのであれば、別だと?」
袴田教授
「ただ、おそらく今の状況でそういう認め方をした場合は、クリミア併合とか、南シナ海の問題等で日本が何か問題を指摘する、提起する、その権利を失うと思うんですよ。つまり、この4島の主権を侵害されているという形で、これまで抗議してきた。それが7%、60年前でも、その時にサインさえすれば還ってきた歯舞、色丹で、もう手を打ったということになれば、日本は主権問題、領土問題ではほとんど真剣勝負で何もやらない国だと。だから、クリミア問題に、それについて日本がものを言う権利があるのか。南シナ海、ほぼ全域が中国領だと言っている、それについて日本が何かクレームをつける、そういう権利があるのか」
反町キャスター
「93%で諦めて、7%で合意するような形になった時に、日本は、今後、クリミア、ウクライナ、尖閣問題、南シナ海の問題。主権が関わる問題について、ものが言える立場を失うのではないかという主旨の発言がありました」
岸議員
「確かに主権、領土はまさに国家主権に関わるわけで、その時点で、日本が主張してきたものを諦めるというのは、確かに大変大きな決断になると思いますし、これまでそういう立場を言ってこなかった。逆に言えば、だからこそこれまで年数経っても動いてこなかったというのも事実です。そういうことで言ったら、クリミア、ウクライナ問題、こちらについても、同じように主権の問題に絡んできて、それについてはG7の国と我々は、日本は歩調を合わせて、ロシアに対して制裁をかけている。そういう立場ですね。ですけれども、確かにそれぞれ主権の問題ではありますが、バックグラウンドとして、あるいは歴史的な背景としてはそれぞれ違うところも一方ではあるのだろうと思います。我々は確かに北方領土の問題というのを解決するためには日本とロシアが真摯に向き合わなければ解決のしようがない。こういうものですから、これまでも国際社会、G7の国に対しても、同じロシアに対してのクリミア問題と、北方領土問題というのはある意味、切り離して話をしているわけです。その中で北方領土問題を解決すること、平和条約を締結すること。このことが地域、あるいは国際社会に対してどのような影響を及ぼすのか。むしろプラスの面がいろいろあるわけですけれども、そういうことをきちんと説明しながらやってきているわけです。ですから、丁寧に、1つはやはり日本が決して主権の問題として基本を曲げているわけではないのだと。要は、尖閣諸島にしても、あるいは遠くクリミアにおける対ロシアという意味においても、これまでの主張と矛盾をするわけではないということをきちんと説明を尽くしていかなければいけない問題だと思います」
反町キャスター
「ただ、その原則論に注視した結果、70年間一歩も動かずというところもあるわけですよね。既に北方領土に住まわれている方々はもう3世代目に入っているという話もある中で、そこに日本人は1人も住んでいないわけですよね。たとえば、ロシアの行動を弁護するつもりはないのだけれども、たとえば、クリミアというのは、あそこはロシア人の人たちがたくさんいて、住民投票をしても、ロシアとの併合を望む人が多い中での、ああいうロシアの武力的なもの、武力介入も、いろいろあったのだという前提のものと、日本の北方領土というのは、確かに不法に占拠をされたものであっても、現在ロシア人がいて、しかも3世代住んでいる。そこに日本人は住んでいない。それを日本に還してくれということというのは非常に向こうにしても還しにくい。でも、そのまま向き合っていたら、これまでの70年間、また70年間、同じ様な状態が続くかもしれないという、こういう状況もある中で原理原則や建て前にこだわっていたら、一歩も進まないよという。これは岸さんに質問するのは無理筋だと思うのですけれども、そこにこだわっていたら、一歩も前に進まないからやっているんだよねと僕は思っているんですよ、そこは間違いですか?」
岸議員
「いや、おっしゃる通りだと思います。私も今から5年前に北方領土に交流事業の中で1度、行ったことがあるのですけれども、状況、向こうの、住んでいるロシア人の皆さんですね。おっしゃるように昔は1世の方は、たとえば、ウクライナから強制的に移住させられた。そこの土地と何の関係もない方々が多かったと思うのですが、おっしゃる通り、2代、3代となってきますと、そこが彼らの故郷になりつつあるわけですね。一方で、生活環境を見ても、厳しかった環境の中でしたけれども、近年ではドンドン開発が進んで、環境が改善をされている。その中で彼らはそこに定着している。ある意味で、時が経てば経つほどロシア化が進んできている。一方で日本の遺産、様々な建物とか、ありましたけれども、そうしたものが取り壊されたり、そういうことで失われつつある。こういう状況がある一方で、島民の皆さん、こちらに移ってきて、何世代になって、元々の旧島民の方々もお年になってきてしまった。時間が経つことというのが、時間が経つことだけは我々にとって決していいことにならない状況が一方であるわけですね。そうした中で、首脳同士の間で、この問題を解決しようという気運が高まってきているのだと思います。ですから、総理も新しいアプローチという言い方をしています。これまでの、同じようなやり方にこだわっては解決策が出てこない。それぞれの国の原則はもちろん、あります。ロシアにもあるでしょうし、日本にもある、それはそれとして持ちながら、新しいアプローチ、いろいろな角度から、これまで考えてこなかったことも含めて、議論をする中で解決策を見出していこうと、こういうことだと思います」
宮家氏
「難しい問題ですが、誤解を恐れずに言いますと、確かに領土の問題は、これは原理原則があるわけですよ。これは領土の世界である限りはゼロサムゲームなんですね、ある意味で。獲るか、獲らないかだから。確かにおっしゃる通り、この問題で譲ったら、他の国にも言いにくいというのはあるかもしれない。だけど領土問題は1つ1つ別ですから、仮に譲歩をしても、それは他のものへの発言力が、心情的には変わるかもしれないけれども、法的には基本的に変わらないと思うんです。誤解を恐れずに言うと、領土問題は領土問題で、もちろん、あるのですけれども、おそらくもっと大きな問題があり得る、すなわち地政学的な、戦略的な判断なり、新しい状況なりというものが出てきたと仮にするわけですね。その場合、領土問題はその戦略問題の一部になり得るということです。これは、領土問題とは別の世界のことですよ。そのような形で考えるのか、それとも領土問題にフォーカスして考えるのか。この考え方は領土の専門の人だったら、そうではないでしょうけれども、戦略家がいた場合には、それが1つの判断材料になり得るのだと私は思います。一般論ですよ、今やれと言っているわけではないですよ」
反町キャスター
「アメリカの国力の衰退とか、中国の領土拡張政策とか、そういうのを見た時に、ロシアと握ること、どういうことが、日本にとってメリットがあるかという主旨で言っていますか?」
宮家氏
「そういうのも1つの可能性ですよね。その種のことというのはヨーロッパの歴史を見ていくと一杯あるわけですよ。ただ、それがいいと言っているわけではないですよ。譲歩しろと言っているわけではありません。そういう見方もあり得ると申し上げている」

TPP『漂流リスク』の先行き
秋元キャスター
「ここから日露を含む、アジア太平洋地域の今後について見ていきたいと思います。今回、ペルーのAPECでの主要な議題のひとつTPP、環太平洋経済連携協定についてこのような動きがありました。そもそも発端はアメリカの次期大統領トランプ氏が、選挙中の演説で度々、当選したら就任初日にTPP離脱を表明すると、アメリカの方針転換を明言していたことです。先行きが不透明な中、ペルーで行われましたTPP参加国の首脳会合では手続き推進に向けた共同宣言が見送られました。その一方、習近平首席は講演で、中国が主導し、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の早期妥結をはかると、アメリカ抜きの自由貿易協定に言及をしているわけですね。この自由貿易に関しては、各国議論されている枠組みはこのようになっていまして、TPP参加国は日米はじめとする12か国で、全てAPECに参加、加盟している国々で、将来的には21か国全てが参加するFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)という構想を目指しています。一方で、中国、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)10か国を含むのは、習近平氏が提唱しましたRCEPなわけですけれども、日本はこちらの枠組みにも入っています。岸さん、これらの枠組みについて、アメリカと中国、この主導権争い、日本の立ち位置などをどのように見ていますか?」
岸議員
「日本はこれまで世界貿易のルール、最初のプラットフォームとしてTPPというものの成立を目指してきました。オバマ大統領からトランプ次期大統領に移るにあたって、その道筋が少しわかりにくくなってしまったというのはあると思うのですけれど、わが国の考え方自体はまだ変わったわけではないですね。あくまでもTPPというのが、自由貿易、そして様々なルールをつくっていくわけですけど、その共通のルールの中でこれからいろいろな国がもちろん、TPPの加盟国、さらに言えば、それ以外の、中国も含めて、それが1つの基準としてそこに乗っかってもらうようにする、それを目指してきたわけです。確かにトランプさんは選挙中にTPPから離脱するということをかなりはっきりおっしゃっていましたけれども、当選されてからは、言い方が変わってきていると思うんです。TPPから少なくとも就任の日に離脱するということは一切おっしゃっていないんだと理解しているところです。あとは、もちろん、TPP、マルチですから、日米だけではなくて、他の国も、まだ国家として承認をしていない国がたくさんありますけれども、そうした国々も日本がどうするのか、アメリカがどうするのか、こうしたことを注意深く見守っているところも多いと思います。日本がこれまで、アメリカの大統領がもちろん、そういうことを選挙戦中に言われたけれども、我々は基本的には変わりませんよということを示していくということが、1番大事だろうと思います。その中で、我々はまだTPPの成立を追求していくべきだと思っています。そのうえでRCEP、あるいはFTAAPといった枠組みも一方であるわけですね。これは中国なども入った枠組みになってくるのですけれども、ある意味では、その1つのモデルになるのがTPPだと思っています。ですので、TPPが成立することができれば、逆に言えば、そのあと続くFTAAPやRCEPというものについても、日本が、あるいはTPP加盟国が、主導しやすいような状況をつくることができるのではないかなと思います」
反町キャスター
「その意味で言うと、もともとTPPというのは、単なる関税の撤廃とか、そういうことだけではなくて、知的財産権の問題だとか、金融取引のルールであるとか、もっと下世話な言い方をすると、国際市場に出てくる中国に対して国際グローバルスタンダードはこうなのだよと、箍を嵌められるようなものを意識していると僕らは認識しているんです。実際、そう説明する方もいた中で、TPPというものを、対中国というと、また、言葉が悪いのかな。その中国の広がりに対して、アメリカはどう受け入れるのかというものの受け皿を作る場だったと思えば、そうそう簡単に放すわけにはいかないし、アメリカに対しても、それが国益になるのだということを説明して説得する可能性はあると考えているということでよろしいですか?」
岸議員
「トランプさんが就任するまで、まだ2か月弱あるわけです。その間、日本だけではないでしょうけれども、このTPPの役割、メリット、そうしたことについて、正確な認識を持っていただくということが必要なのだと思います。日本の立場ももちろん、その中でお示ししながら、そういうことに務めていかないといけないのだろうと思います」
反町キャスター
「宮家さん、TPPに対する、我々のこだわりどう持つべきなのか?」
宮家氏
「この協定というものは、2つ目的があって、我々にとって、1つは日本の国内の改革。これはある意味で、TPPを交渉することによって日本も変わっていったと。新しい自由貿易の世界でも日本が生きていけるような農業を含めて、改革をやっているわけです、実際に。日本は意外とこういう交渉の時に改革も進めるんですよ。外圧とは言わないけど。そういう時にうまくいく場合もあるんですよ、私の経験から言えば。そういう意味では、日本にとっても悪くない話。おっしゃる通り中国にとっても、グローバルスタンダードというのはこういうものだということを認識してもらわなければいけない。残念ながらトランプさんは政治家をやったことがないです。政治家というのは選挙をやって、当選して、それで統治モードになるんです。選挙モードから統治モードに変わって現実化しなければいけないんですよ。フィリピンのドゥテルテさんだって20年間市長をやっているわけですから。彼は政治家なんですよ。でも、トランプさんは政治家はやっていないです。これから始まるんです。その意味では、TPPに対してああいう誤解、もしくは表面的な理解がある。もちろん、国内的には、それを言わないと、ヒラリーさんだって言っていたのだから、その意味では必要だったのでしょう。しかし、その後、彼が統治モードに入った時に、どれだけアメリカの関係者が、いかにアメリカにとって利益なのかということ、もちろん、我々はやらなければいけないけれど、アメリカの国内でやっていた人にそれをまず言ってもらわなければ困るわけですよ。そういった学習をしたうえで、本当の判断をくだしてほしいなと思います」
袴田教授
「ロシアの反応が参考になるかもしれない、トランプ現象に対して、ロシアがどう反応しているかということなのですが、まずトランプさんが大統領に当選したという情報が入った時、ロシアの議会で拍手が沸いたんですよ。ただ、すぐそのあと次のようなコメントがメディアで出てきました。ある意味で、対露包囲網というか、対露制裁網を崩す1つのチャンスかもしれないけど、しかし、2つ問題があると。1つはおっしゃったように、彼は安全保障とか、対外政策とか、外交といった問題についてこれまで何もやっていない。だから、結局、共和党のプロに任せざるを得ないのではないか。そうなると、これまでのアメリカの路線がまったく変わってしまうということはあり得ないのだろうという。だから、プーチンさんを持ち上げているけれども、そんなに喜ぶべきではない。トランプさんが、プーチン大統領を随分持ち上げた。オバマさんよりも立派な大統領だと言ってますから。もう1つは、トランプ氏は言うことがコロコロ変わるから、その時その時の一時的な発言で、一喜一憂すべきではないと。これからの様子をもう少し見てから、きちんと判断すべきだと、ヌカ喜びするなというような、そういうのが出てきました」

日本が示すべき役割と存在感
秋元キャスター
「ここまで話を聞いてきましたように来年1月にトランプ氏がアメリカの大統領になりますと、米中露の大国関係にも様々な面で変化が出てくると思いますけれど、そのような中で、これからの日本が果たすべき役割というのはどういうものなのか?」
岸議員
「おっしゃった米中露を含めて、国際社会を見渡した時に日本の政治状況というのはある意味では、少なくとも大国、あるいは先進国の中で見れば、1番安定した状況に見えると思います。内政が安定した状況にある時こそ外交で大きな役割を果たすこともできるのだと思うのですけれども、そういう意味で、今おっしゃった日米、あるいは日露、日中それぞれにおいて様々な課題もあるし、新しいリーダーが出てきて、状況の変化が想定される場合もあります。そうした時に、我々が気をつけなければいけないのは、日本の立ち位置がそこでぶれないようにしなければいけないのだろうなと。逆に言うとぶれる必要がないのだと思います。これまでもそうした中で外交の基軸である日米関係も発展をさせてきた。特に安倍政権になってから安全保障も含めて、良い関係を日米間で築く、発展させることができてきた。日露においてもこうした形で、領土交渉、あるいは平和条約交渉。こうしたものにいよいよ動きが出てこようとしているわけですね。日中についても様々な課題はありますけれども、そういう状況だからこそ日本の立ち位置を変えることなく、中国と向き合っていくことができるのではないかなと思います」
袴田教授
「世界が極めて流動的になっている。アメリカが1つの典型ですが、アジアでも中国、フィリピン、その他の国々の立ち位置そのものがこれからどうなるか。以前は5年、10年先をかなり見通せたけれども、今は半年先が見通せないような、そういう流動的な世界になっています。中近東、ヨーロッパもそうです。そういう中で、日本は安定した国である。そういった意味ではアジアで、しかも、経済的にも大国である、大きな役割を果たし得ると思っているんですよ。その辺を我々はきちんと自覚して今後の日本の政策を考えていくべきだと思いますね」
宮家氏
「残念ながら今の世の中は全ての国がプレーヤー、メジャーリーグベースボールではないわけですよ。メジャーリーグというのは3チームしかないです。アメリカ、ロシア、中国です。その下に、メジャーリーグの下にマイナーリーグがあるわけでしょう。この中には日本はもちろん入っているし、EU(欧州連合)が入っていますね、インドも入っています。そのうえでメジャーリーグは1強プラス2弱ですよ。だけど、弱から強に動いている1がある、こういう状況ですね。この感覚をまず押えていただいて、我々はマイナーリーグかもしれないけれど、メジャーリーグの1国とは共通の利益がある。他にもマイナーリーグの国々と共通の利益があると。それは現状維持をするということです。現状維持を求め、力による現状変更に反対する、これが戦略であるはずなんです。現在必要なことは確かにアメリカの力が弱くなっていると言う人がいるけれど、私はそうは思わない。アメリカはまだまだ力がある。何が弱まったかと言うとアメリカのリーダー達にアメリカの力を適切に使える能力が失われているわけです。冷戦時代の方がアメリカの能力を適切に使う能力があった。それがドンドン減ってきて、2001年から、よせばいいのにドンドン戦争をやって、今度は、2009年以降はやらなければいけないことをやらないで、何もしないで、その結果、中東が壊れていった。アメリカが適度に国際問題に関与をするように働きかけていかなければいけない。上から目線でトランプさんに説教なんかしたって駄目だけど、ああいう形でマッサージして、フワフワッとその気にさせるというのは安倍さんうまいと思うので、そういうのをやっていていいと思うんです。とにかくマイナーリーグですから、長く政権をやってもらわないと困るわけです。毎年総理が変わっていたら、マイナーリーグの首相が毎年変わっているのだったら、オーナーは会わないです。今のような政権があるということは、日本は、G7の中でアメリカがなんとなくふらふらしてきた、メルケルさんは長いけれども、お尻に火がつくかもしれないと。すると、日本はかなり重要な役割を果たし得る、G7の中で。現状維持勢力の1つのリーダーとして仕事ができるのではないかなと思います」

宮家邦彦 キャノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『海洋同盟の深化』
宮家氏
「先ほどのメジャーリーグで言えば、米中露で海洋国家はアメリカだけですよね。マイナーリーグでは日本があり、欧州の一部、オーストラリアがある。こういう形で海を、シーレーンを守るというのが日本の基本でなければならないと思います」

袴田茂樹 新潟県立大学教授の提言:『座標軸』
袴田教授
「安定した座標軸をしっかり持つということですね。おっしゃる通り、日本はメジャーな国ではないですけれども、現在の流動的な国際社会の中では非常に安定した国としてそれなりの役割を果たせる。そのためにはきちんとした座標軸を常に意識するということです」

岸信夫 外務副大臣の提言:『信頼の政治』
岸議員
「国際社会から信頼される国であり続けなければいけないと思います。わが国は、残念ながら、先の戦争で国際社会の信頼を失って、その後、復興・復活をしていく中で、様々な努力を我々の諸先輩方がしてこられました。外交にしても、ODA(政府開発援助)をはじめ、多くの国を支援してきました。その中でようやく日本は信頼できる国だということが醸成されてきたのだと思います。新しいリーダーともまず信頼関係をつくっていく。その中で、日本の言うこと、していることだったら信頼できると、そういう存在になっていかなければいけないと思います」