プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年11月15日(火)
櫻井よしこ×元防衛相 トランプ戦略に備えよ

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト 国家基本問題研究所理事長
森本敏
元防衛大臣

『トランプ時代』の世界秩序
秋元キャスター
「櫻井さん、次期大統領にトランプ氏が決まったということについて、どのような思いで受け止められましたか?」
櫻井氏
「驚きましたけれど、ただ2人とも接戦でしたから、どちらになっても、どっちになる可能性もあるだろうなと思っていましたけれども、それでも、ああ、こうきたかという感じでした」
反町キャスター
「こうきたかと言うのは?トランプさん支持が予想外に広かったと見るのか。クリントンさんが弱かったと見るのか。アメリカ国民の選択ですよね。これは何を求めての選択だったのですか?」
櫻井氏
「わからない。と言うのは、トランプ政権がどうなるかとかね。いろんな政策を議論しようというおつもりお招きいただいたのだと思いますけれども、世界のメディア、アメリカのメディアも、日本のメディアも予測が外れたわけでしょう。木村太郎さんあたりはずっとトランプさんだとおっしゃっていましたけれども、アメリカのいろいろなリサーチ機関も外れたわけですよ。その外れた人が大統領になって、その政権移行チームを見ましても、異例の陣容ですよ。ご自分のお子さんを3人入れて。長女の旦那さんまで入れてしまったというのは。これまでにないようなことがたくさん起きていて、これから何十人、何千人も決めていかなければならない。その陣容もわからないし。トランプさんがおっしゃっていることが、キャンペーンの中でおっしゃった暴言はありますけれど、この4月に行ったスピーチとか、今回、勝利宣言のスピーチを読んでみても齟齬がありますよね。だから、私はもう少し待たないと、本当の意味での、アメリカがどのような政策でどのようなことをやっていくのかということはよくわからないと思っているんですね」
森本氏
「私は多くのメディアが、もちろん、ミスカリキュレートした、誤算をした最大の理由は、トランプ氏が選ばれるプロセスの中で、アメリカの国民が、要するに、世界のグローバル化というものの利益を享受できている人と、できていない人。つまり、できている人というのはグローバル化を進めるべきだと考えている人。主としてヒラリー・クリントンの支持者だったと思うのですけれども。全然、グローバル化の利益を享受できない、外国の移民に職を奪われたり、自分達の処遇も、待遇もなかなか改善せずに世界のグローバル化の中から、隅に置かれているということに対する不満を持っている白人の、比較的高齢の、学歴の低い人々が新しい変化を求めて、しかし、暴言を吐くトランプ氏を、私は支持しているとは言いたくない、あるいは言うことをためらったために、ポールと言いますか、調査をやった時に出てこないんでしょう、数字が。その傷がいかに深かったかということが、今回の選挙の結果を生んだのだと思うんですよ。まさにトランプ氏が、勝利宣言の中で、米国の分裂を今や縫い合わせて団結する時期だとわざわざ言わなければならなかったことはまさに分裂の溝というか、傷というものが、我々が考えている以上に深かった。これはヨーロッパでも同じですね。ヨーロッパの国々も難民が入ってきて、それに賛成する人、受け入れる人、通るだけは許すけれども受け入れない人、EU(欧州連合)から脱退する国。皆、こうやってEUの中が、グローバル化というのに対して賛成、反対、あるいは利益を受ける人、受けない人で分裂した状態なのですが、同じ現象がアメリカの中で起きている。来年はヨーロッパの選挙の年で、ドイツやフランス、それから、オランダ、オーストリアなどがずっと選挙ですけれども、これは完全にアメリカと同じような現象が起こる可能性が高いと思うんです」
櫻井氏
「可能性というよりも、森本さん、はっきり起きると思いますよ」
反町キャスター
「それは、数を獲っていくのですか?」
櫻井氏
「獲ると思います」
森本氏
「だから、メルケルさん、オランドさんは大変厳しい状況になると思います」
秋元キャスター
「ここからはトランプ時代の日米関係について聞いていきたいと思うのですが、トランプ氏、選挙中に在日米軍について『私達は、日本などの国を防衛している。彼らは対価を払っていない。相応の負担をしなければ日本を守ることができない』という話をしていて、日本が在日米軍の駐留経費の全額負担に応じない場合は、米軍撤収にまで言及しました。ところが、10日に行われた安倍総理との電話会談では日米関係は卓越したパートナーシップであり、関係を、さらに強化していきたいと話をして、これまでよりは、ややトーンダウンした印象があるのですけれど、櫻井さん、トランプ氏の本音というのをどう見ていますか?」
櫻井氏
「安倍さんがいち早く、電話会談をして、17日に会うことになったというのは、素晴らしいことだと思いますよね。ここで日本がどのようなことをしてきたか、日米関係がどのようなものなのかということですね。国会でもおっしゃっていますね。TPPのことも含めてね。だから、トランプさん、それなりにきちんと計算ができる人で実利に敏い方ですね、ビジネスマンですから。だから、これはアメリカの国益になると思えば、私は、安倍さんが彼をある程度動かすことは可能だろうと思うんです。私達が絶対忘れてはいけないのは、トランプさんの下に、上下両院ともに過半数を共和党が持っているんですね。これはものすごい力ですね。人事権を全部握るわけですね。議会もリードできるわけですから。このトランプさんと首脳同士である程度、意思の疎通をはかるということはとても大事なことになると思います。ただ、これまで言ってきたことで、日本に対価を払わせるというようなことはトランプさんだけが言っていることではなくて、アメリカ第一主義の中にずっとあるわけですね。トランプさんが言っていることを私はずっと調べてみたのですけども、パット・ブキャナン氏が言っていることとまったく同じと言っていいぐらいです。パット・ブキャナン氏というのはニクソンの特別補佐官だったし、フォード大統領、レーガン大統領でも補佐官、もしくは特別顧問として仕え、何十冊の本も書いて、アメリカのメディアでも非常に重鎮なわけですけれども。その人が書いているアメリカ第一主義というのは、たとえば、アメリカは、韓国からの撤退の期日を明確にせよとか、それから、日米安保条約を破棄すべきだとか、それから、東アジアの小さい国々が、中国や日本の脅威を恐れてアメリカの保護が必要だったら対価を払えとか、対外援助は全て打ち切りなさいと極論を言っているんです。このパット・ブキャナン氏の本を読んでいるとトランプさんはここから全部すくいあげたのではないかというようなことが感じられますね。アメリカにはこのようなことを主張する人々が必ずいるんですね。私はトランプさんのことはよくわかりません。これから、どういう政策を打ち出していくかというのはよくわかりませんけれども、何が起きてもおかしくないというような心構えをこちらが相当きちんと持って、それに対する備えというのですか、それが大事なのだろうと思います。それがある時に、初めてこちら側も主張することができる。主張して相手を説得することができるだけの強さを発揮することができると思いますね」
秋元キャスター
「この在日米軍駐留経費について、安倍総理は昨日、参議院の特別委員会で、この在日米軍駐留経費について日米とも駐留米軍が果たす役割によって利益を得ていると考えるべきだと述べて、現状の負担が適正だとの認識を示しました。今年度の在日米軍駐留経費負担1,920億円ですけれども、在日米軍関係の経費というのは、施設を借りる費用ですとか、グアムへ移転費用、沖縄における再編の費用、防衛省以外の他の省庁分等、全て合わせますと、およそ7,600億円となっていて、こういった現状があるのですが、森本さん、トランプ氏がこれ以上の負担を求めてきた場合、日本はどう対応すべきでしょう?」
森本氏
「在日米軍が駐留することにかかる全経費のうち、日本が負担している7,600億円というのは概ね7割以上を占めているんですね。つまり、それ以外のものというのは、アメリカが実際に兵員の給与だとか、それから、いわゆる軍事建設予算をとって、米軍が自ら支出をしなければいけないもの以外はほとんど日本が負担しているということ。同盟国の中で抜きんでた財政貢献をしているわけですが、総理の考えはそういう考えに立っていますから。つまり、十分同盟国としてやっていると。これがアメリカにとっても利益になっているとおっしゃっていて、正しいと思うのですが、にもかかわらず、アメリカが、それでももう少し出せないのかということ言ってきた場合に、考えられることというのは、アメリカの兵士の給与は払えません、傭兵になっちゃうから。しかも、説明があったように、たとえば、グアムの予算の経費だとか、あるいは基地対策費だとか、それから、土地の借料とか、これ以上は払えないですから。払えるとすれば、何かと言うと、たとえば、米軍の施設の補修費だとか、米軍が活動する時の燃料費とか」
反町キャスター
「燃料代?」
森本氏
「だって、インド洋でやったじゃないですか」
反町キャスター
「あれは、海賊対処ですよね」
森本氏
「だから、ああいう特殊な条件をつけて、たとえば、在日米軍が訓練をする時にかかる燃料代は払うというような、非常にテクニカルな話ですけれども、払えないというわけではないですよね。だけれど、それは現在の特別協定に基づいて日本は必要な経費は払っているわけですから。新しい枠組みをきちんとアメリカ側と話し合わないといけないし、それから、それだけそれに見合うアメリカが必要な、いろんな日米の共同運用、共同作戦にきちんと日本と一緒になって協力してくれる、情報も提供してくれる、同盟をむしろこれ以上強化するという保証がきちんとあれば、この額をまったく増やすことができないかというと、テクニカルにはそうではない」
櫻井氏
「日本は、断トツに高い負担をしているわけですね。その他の国々は、ドイツは日本の半分以下ですよね。韓国だって4割ですよね。これを、この数字を見て、日本人がこんなに払っているではないか。これ以上何だと思うのも1つ。でも、私達は、もうひとつの別の側面を考えなければいけない局面に入ると思うんです。それは、日本はこの前の安保法制で集団的自衛権をちょっとできるようになりましたけれども、他の国々の軍隊と自衛隊は全然違うんです。NATO(北大西洋条約機構)は負担率が低いですけれど、NATOは一緒に戦うんですよ。韓国だってそうでしょう。日本は必ずしもそうでなかった時代がずっと続いてきて、安保法制をしましたから、駆け付け警護とかができるようになりましたけれども、戦い方、共闘の仕方において、日本と他国は決定的に質が違うんです。だから、そのことを考えれば、もしかしたら、アメリカ人の考え方の中で日本は実際の行動を何もしないではないか。安保法制で変わりますけれども、これまで何もできなかったじゃない、一緒に行動をしていて僕達が攻撃されても日本は逃げるだけだろう。そうしたらこんなの安いものではないかとアメリカ側が論理立てて考えることは十分にあり得る。このことを、私は、今だからこそ日本人は考慮しなければいけないと思うんです」
反町キャスター
「17日にニューヨークで、安倍・トランプ会談が行われます。どんな話になると思いますか?」
櫻井氏
「安倍総理が国会で言っていますよね、TPPのことについても、きちんと話すし、日米安保の重要性についても話したいとおっしゃっていますから、当然それは話題になるでしょうね。それが今、1番ある意味で、大事なテーマだと思いますね。たとえば、TPPに、本当にアメリカが入ってこなければ、これはオーストラリアの首相が言っていましたけれども、アメリカが入ってこなければ、中国がその空白を埋めるであろうと、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)があります。それにとって代わられるだろうと言っていますよね。私は、実際にそうなって、もしアメリカが本当にTPPをやらなければ、その可能性はあるだろうと思いますから、安倍さんが国会でおっしゃったように非常に難しい状況になったのは事実だけれども、日本が諦めたら本当にダメになりますとおっしゃいましたね。総理は諦めずに、そこでもう1回説得しようと思っておられるわけで、私はそれは正しいことだと思うし、うんとやっていただきたいと思いますね。だから、あれだけTPPはダメだと言ったトランプさんもアメリカは自由貿易の中で繁栄してきたということを本当に数字などで理解することができれば、実利に敏い方ですので、その意味で、ある意味ではこれを受け入れる、多少の修正はあるにせよ。もしかして名前を変えることがあるにしても看板の書き換えで、事実上ほとんど同じ中身で実際にやりましょうということになるかもしれない。私はそうなってほしいと思っているのですが、それがない場合、これは本当に中国にとっての一大チャンスになろうかと思いますね」
反町キャスター
「森本さん、いかがですか?安倍・トランプ会談。どう見ていますか?」
森本氏
「日本の総理が選出された次期大統領に就任式の前に会うというのは、あまり例がないことだと思うんですね。そういう意味では、今回の会談をアレンジしたのは、外交の成功だと思っていますが、大事なことは、アメリカの方は、同盟を強化するためにこれまで以上の貢献をしてくれということを言ってくるに違いないと思うんです。と言うのは、この会談は双方にとって失敗が許されないです。必ず成功しないといけないです。だから、アメリカは基本的に同盟を強化したい。同盟国の協力を得て、というのが前提についていると思うんですね。おそらく総理が言うべきことというのは、それをどうすればいいのかということについて、アメリカ側、トランジションチームができているのであるから、日本側と緊密な政策協議ができる枠組みをつくりたいと言い、アメリカに承諾をさせるということが1番大事。双方が会談をする時に同席をするスタッフの人間関係ができてきますから。他の国にはない、これからのチャンネルとネットワークができると。それが1番大事ですね、この会談の持っている意味は。もちろん、会談も直接、大事ですけれども、それは1回のみですから。そのあと、ずっとアメリカのトランジションチームに、日本の考え方をインプットして、日本がどうすれば同盟を強化できるかということを話し合えるチャンネルをつくってもらうということが、私は日本側として1番主張すべきポイントだと」
秋元キャスター
「ここからはプーチン大統領、習近平国家主席、金正恩委員長と、独裁色の強いリーダーの中で、トランプ次期大統領はどう立ち振る舞っていくのかということについて聞いていきます。まずはロシアですけれど、トランプ氏は昨日、プーチン大統領と電話会談をしまして、ロシアと強く永続的な関係を築きたいと表明して、両者は悪化した米露関係の改善に向け、意見交換を続けていくことを確認したということですけれども、櫻井さん、トランプ氏とプーチン大統領の相性をどう見ていますか?」
櫻井氏
「イメージとしては、お互いにこのような方々ですから、話が、馬が合うことあるのでしょう、おそらく」
秋元キャスター
「似ている感じの印象を持っていますか?」
櫻井氏
「プーチンさんとトランプさんですか。いえ、思いません。プーチンさんという方は、強いソビエトというものですが、トランプさんは、強いアメリカ、強いアメリカと言っていますけれども、その強いアメリカがいったい何をしようかということについては、プーチンさんとはおそらく違うのではないか。プーチンさんが考えているのは、かつてのソビエト連邦みたないものをもう1回、再建したい。トランプさんは、どちらかと言うと、アメリカ第一で、アメリカだけが一生懸命に繁栄していればいいのだと、そう見えますね。だから、共通点もありますけれど、違うのではないかという感じがします。だから、このお二人方がどういう話をするのかというのは興味がありますね」
森本氏
「8年間のオバマ政権の時、ご承知の通り、ロシアがクリミアに出て、ウクライナに出て、シリアに入ってきて、力を使って現状変更しても国連安保理は通らずに、つまり、好き放題にされて、しかも国内の支持率は圧倒的に人気が高いという、独裁色の強いリーダーに、アメリカはたぶん本能的な嫌悪感があるんだろうと思いますけれど、冷戦時代よりも冷え切った米露関係が続いたのですよね。結局それがアメリカにとって利益になるかと言うと利益にならなくて、つまり、ロシアはずっと自分達の思った通りに振る舞って、一切、他の忠告、アドバイス、それから制裁を受けつけないと。こういう冷たい状態を、そうではなくて、アメリカの政策のためにロシアを協力させる。たとえば、シリアの問題で、ロシアに協力させないと、ISILのテロリストというのを打破できないわけですから。つまり、全然違うアプローチで、協調という言葉は必ずしも良くないですけれども、これまでの冷え切った米露関係が、きちんと対話ができて、アメリカの利益のために少しは協力させる両国関係にしようと思っているのではないと思うんですね。あとで話が出るけど、それとまったく中国とのアプローチは違うんですよね。私から見ると、つまり、オバマ政権というのは、不必要にロシアに冷たく、不必要に中国に甘い。これが私にはわからないですけれども、櫻井さんのおっしゃるように、これからわからないですけれど、あり得るべき選択の1つとしてはまったく逆転する。つまり、ロシアとはいろんな協調をはかられ、中国にはかなり冷たい政権のアプローチになっていくということがオプションの1つとして考えられると思います」
秋元キャスター
「その中国ですけれども、昨日、トランプ氏と中国の習近平国家主席、電話会談を行っています。習主席は『協力こそが、米中両国の唯一の正しい選択だ。共に両国関係の推進に努めることを望む』と述べて、これに対して、トランプ氏は『習主席の米中関係に対する考え方に賛同する。中国は偉大で重要な国だ。米中はwin-winの関係を実現できる』と応じているのですけれども、櫻井さん、習主席とトランプ氏のやり取りをどのように見ていますか?」
櫻井氏
「その前に、トランプさんの書いた本の中に、たった1つ、敵と明確に書かれている国があるんです。それが中国なんですよね。明確にアメリカの敵と位置づけているんです。その主な理由というのが、知的財産を圧倒的に盗むとか、経済的なこと、技術も盗まれるし、知財も盗まれるということで、それが直接の要因にはなっているのですけれど、トランプさんからしてみると、アメリカの富を盗む、技術を盗む、知恵を盗む。本当に悪い国だということで、その敵という…」
反町キャスター
「やはり経済ベースですね」
櫻井氏
「そこに出ているのね。そうなんですよ。それから、習近平さんはずっとアメリカに対して、オバマさんに対しても、新しい新型大国関係というものをずっと言ってきましたね。世界は、アメリカと中国で維持をし、ルールを決めればいいのだと。お互いの、いわゆる核心的利益というものを尊重し合いましょうというところが中国の基本であるわけで、それを、私は、トランプさんは飲んではならないし、中国と対等な立場で、核心的利益ということまでは彼は踏み込まないと思います。思いますけれども、これは大国同士、アメリカと中国の歴史的な経緯を見ると、どこかでお互いに経済的に結びついた方が楽であるということになれば、わからないと思いますね。だから今、本当にアメリカと中国とロシアと、もちろん、日本もそうですけれども、戦後の枠組みが根本的に変わりつつあるんですよ。今まで私達は戦後の枠組みはこういうものだから、こういう要素ができたら、これまでの方程式のここに入れればいいとわかっていたのですが、方程式がほとんど崩れようとしている時にいろんなことを決めつけないで、きちんと事実だけを見つめて、もう少し材料を見て、方程式をつくっていくべき時だろうと思います」
反町キャスター
「森本さん、いかがですか?米中はどうなっていくのですか?」
森本氏
「それはまったくまだ、これから国防長官、国務長官がどういう人で、どういう政策を彼らがつくっていくのかというので、まったくわからないですけれども、少なくともこれまで冷戦後に中国とロシアはアメリカに戦略的に対抗するために、不信感を持ちながらも協調をしてきたんです。その基本的な枠組みが壊れるということについては、私も賛成なのですが、どう壊れていくかということがなかなか読めないです。ただ、我々が大事だと思っていることは、つまり、ロシアというものをもう少し我々の側に引きつけることができれば、対中政策上も利益になるし、アメリカとの関係も悪くなるのではなくて、良くなるということなので、総理がやっておられる日露関係のアプローチというのは正しい方向に向かっていると私は思っているので、そういうコンテキストで中国を見ていけばいいのではないかなと思っています」
反町キャスター
「それは、日米露の共通の脅威として中国を意識することができるかという、そういう意味で言っています?そこまではいかない?」
森本氏
「いや、それは別に言う必要はないですけれど、基本的に。でも、考え方はそういうことだと思います。つまり、中露が一緒になってアメリカに対抗するという、ここを分断するようなアプローチをとっていけばいいということに結局行き着くのではないかと思います」
櫻井氏
「ロシアがやろうとしていることは、ロシア、プーチン大統領は、おそらくこれからの国際社会で勝ち組になるのは資源を手にして、その資源を供給することによって、コントロールすることができるという戦略ではないかと思うんです。これは天然ガスとか、パイプラインをロシアは一生懸命に築こうとしています。たとえば、ウクライナに対して、ウクライナが言うことを聞かない時、ガスを止めましたよね。そうしたら、ヨーロッパにいく分まで止まってしまったということがあって、ウクライナを通過しないで、迂回するパイプラインをつくったわけですね。自分達は資源をヨーロッパに輸出して経済的に潤う。しかし、言うことを聞かない国に対しては、ウクライナに対しては、いくらでも閉められるよという。資源のコントロールということをすごくプーチンさんは意識をしていると思います。だからこそ、日本に対しても、サハリンの方から北海道にずっとつなげてくるようなパイプラインとか、鉄道というのをオファーしていますよね。それには兆円単位のお金がかかると試算が出ていますけれども。私はプーチンさんの想いというのは、一昨年でしたか、30年に渡って、40兆円の天然ガスのディールを中国と結んだ時、これは未だにまだほとんど動いていないわけですよ。中国が足元を見て、非常にどちらかと言うと上から目線で買ってやるのだと。値段はその分下がっているのだというようなことで、うまくいっていないと聞いていますね。あの誇り高いプーチンさんにとって屈辱以外の何ものでもないわけですから。彼も、中国というものをすごく意識して、日本にアプローチしているし、日本も中国を念頭に森本さんが先ほど、おっしゃったように戦略的にロシアを取り込もうと。取り込むというところまでいかないと思いますけれど、とにかくこちら側に立っていただくような可能性を増やしていくという戦略なのだろうと思いますね。これも考えてみたらすごくおかしいでしょう。だって、アメリカとロシアはすごく悪い、おっしゃったように冷戦の時よりも悪かった。これからどうなるかはわかりませんけども。ロシアはこれから日本にアプローチして、プーチンさんの、友人というか、プーチンさんといろんな意味で協調しようという国は、たとえば、トルコのエルドアン氏とか、シリアのアサド氏とか、イランとか、ある意味、西側社会がちょっと辟易するような国々ばかりですね。そこに、安倍さんは果敢に入っていって、独自の戦略を打ちたてようとしていて、今度、アメリカと中国は、それを見て、どう反応をするか。玉突きゲームのように、1つの球を打ったら、それがいろんなところに波及をしていくというような時代に入っていると思いますね」

『トランプ時代』と日米同盟
秋元キャスター
「日米同盟はどうなっていくのですか?」
櫻井氏
「日本としては選択の幅はすごく狭いですよ。日本は日米同盟を基軸にせざるを得ないのではないですか。日米はミリタリー・トウ・ミリタリーのベースでいくと、すごくいい関係にあると思いますよ。ただ、ホワイトハウスがどのように考えるのかということが、オバマさんの時なんかは問題はあったわけですけれど、それでもオバマさんとの関係も良かったと思います。日本が日米同盟によって守られてきたことは誰も否定できない事実ですし。この日米同盟を外すようなことも含めてお聞になったのかもしれませんけれども、それは現在の日本はそんなことをする力はないではないですか。ですから、日米同盟というのは本当に大事にしながら、ただし、日本が一方的にアメリカに頼り続けるのではなく、日米同盟を緊密にしながらも、その中で日本もいかにして、アメリカと対等というところまではいかないにしても、基本的に自分のことについては自分達で守りましょうという気概を現実政策に反映することのできるような国にならなければならないと思います。もう1つは、アメリカに対して、日米だけでなく、価値観を同じくする他の国々、オーストラリアもうそうですし、インドもそうですし、中央アジアもそうですし、東南アジアも実はそうなんですけれども、このような枠組みを日本も一生懸命にやるから、一緒につくっていこうと奨励するというか、率先して働くということをやらなければいけないと思います」
森本氏
「伝統的にアメリカは共和党の政権の時に、日本の自民党を中心とする政権というのは、日米関係が非常に良い同盟関係でこれまであったわけですね。今後もそうありたいと我々は思いますよね。ただ、そのためには、櫻井さんがおっしゃったように、これまでのようなアメリカに多くを依存して同盟を継続するというのでは、もはややっていけそうにない感じがするんです。同盟の枠組みは変える必要はないですけれども、これを強化するためには、日本がもう少しアメリカに必要な協力とか、支援ができるようにすることと、日本の自助努力というのをしていかないと、アメリカにとって本当に意味のある同盟関係にはならないと思うんですね。ただ、その見返りとしてはもう少しアメリカが必要な政策の協議をする、あるいは様々な共同活動をする時に日本を同盟国としてキチッと位置づけるということがギャランティされているということが必要だと思うんですよね。アメリカが単に自分達がやるのを、おまえらが補完しろ、サポートしろというだけではダメだと思うんですよ。だから、そこは日本がもう少し自主的な努力をして、アメリカの足らざる部分を日本が補完するという力を示す。その見返りに、アメリカが同盟国としてもっと協力をして、大事にして、一緒に共同行動しないといけないというような同盟関係になることが日本にとって望ましく、まさにそういう機会がきていると、私は思います」
反町キャスター
「トランプさんが選挙期間中に言っていたことをどこまで気にするのかということになるのですけれども、核武装論まで彼は口にした中で、あの時はあの時の話と沈静化していくと?」
森本氏
「核武装論を本気で言ったとは私には思えません。それはアメリカの利益に1番ならないことですし、日本が核武装ということを議論するだけで、日米同盟が根本的に崩れていくわけですから、アメリカの利益にならないだけではなく、日本の利益にももちろん、ならないと。そういうことをアメリカが考えているとも思わないし、本気で言ったとも私は思わない」
櫻井氏
「核の問題は、非常に難しいと思いますね。物理的に、日本が核を持つ可能性はないと思います。これは日本の原発のことを考えても、それから、国民感情ですね。日本国民の想いを考えれば、どうやって核を持つのか。日本は独裁国ではないし、民主主義の国ですから、国民の意思というものを基本に政策がつくられますから。日本が核を保有することは物理的にないと思うのですけれど、それでも森本さん、どうなのでしょう。ここで議論をする。議論をすることによって、国民も核を持つということに直接つながるわけではないけれども、日本国の防衛というものをどうやって担保するのかと。今まであまりにもアメリカ頼りで、これからも基本的にアメリカとの協力が必要なのですけれど、その中で自主性を高めるという、その自主性というのはどこまでいくべきなのかと、やはり議論しなければいけないと思うでうすね。ペンシルバニア大学のアーサー・ウォルドロンさんという教授がいて、この方は日本でもいろいろな本の解説を書いたりして、非常に戦略的に見通しのきく方なのですが、この方が、日本が本当に生き残ろうとしたら、イギリスやフランスのようなタイプの核保有国になるべきだと。数は少ししかない、そして自分の国を守るためだけの核である。ただし、イギリスも、フランスにも、他のどの国も核攻撃をしないだろう。なぜならば核を持っているから。一隻ぐらい原子力潜水艦を持ち、それを海の中に沈めて、やったらやり返しますよという構えを見せておくことが大事なのだ。なぜならば、ここからが大事なのですが、アメリカの学者ですよ、アメリカはもはや日本を核の傘で守りきれないし、守らないからと言うんですね。アメリカがどこまで変わるのか私達はわかりません。先ほどから言っているように、トランプさんの政策は、もっと見極めないとわかりませんけれども、変わる可能性があるとしたら、その変化に私達は備えなければいけないですね。せめてどのようにすべきかということを考え方としてまとめておきたいし、考えておきたいし、でき得るならばいろんなことを準備しなければいけない。それが今求められる時代に差しかかってきたということなのだろうと私は思います。ただ、核の議論をするだけで、日本は軍国主義にいくということを中国は必ず言ってきますが、日本国民はそんなに極端に走る人達ではないですよ。だって、今だって憲法改正についてどれだけ消極的であるか、そのことを考えると。でも、そのようなことが必要とされる時代に入ってきたということだけは、森本さんのような方には認めていただきたいなと思います」
反町キャスター
「議論の必要性について」
森本氏
「議論するのには少し早すぎるのではないかなと私は思います」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言:『勢力均衡の大変化に備えよ』
櫻井氏
「私達の国、日本が直面している事態というのは100年に1回と言っていいくらいの大きな変化だと思いますね。とりわけ戦後の70年間を見ると戦後の日本の安全というものを保ってきたパワーバランスというのが変わろうとしていて、アメリカが変わろうとしている。中国が変わった。ロシアも必然的に変わるという中で、私達がこれをどう理解し、どういう道筋で日本を守っていくのかということをもう1回、真摯に考えないといけない。そのためにどのような備えをするかということも含め、具体論に踏み込んで考えていったらいいかなと思いますね」

森本敏 元防衛大臣の提言:『同盟強化の好機』
森本氏
「今回の選挙を通じてアメリカがどう変化するかというのはまだ見極めることができないのですが、アメリカがオバマ政権8年間、世界のリーダーシップをとれなかった。どちらかと言うと、後退した弱いアメリカ。(強いアメリカを)もう1度取り戻す機会が、次のアメリカの政権にきつつあると思うんです。そのアメリカと同盟を強化するためには、日本が今までにない貢献とか、努力とか、アメリカの機能の足らない部分を補完する努力をしていかないといけないので、そういう意味では、日本の安全保障政策、特に防衛政策は同盟を強化するために重要な機会が訪れているというふうに考えているわけです」