プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年11月9日(水)
『米国の選択』と日本 新大統領も前途多難か

ゲスト

河野太郎
前行政改革担当大臣 自由民主党衆議院議員
古森義久
産経新聞ワシントン駐在客員特派員
ケビン・メア
元米国務省日本部長
中山俊宏
慶應義塾大学総合政策学部教授
永濱利廣
第一生命経済研究所首席エコノミスト

緊急検証『トランプ次期大統領』 市場の混乱と経済の行方
秋元キャスター
「トランプ氏勝利の市場への影響について、永濱さん、どう見ていますか?」
永濱氏
「これだけ下げているということからすると、マーケットは確実にこの結果を織り込んでいなかったと思うんですね。ただ、下げ幅を見てもブレグジットの時はもっと下がりましたよね、為替も100円を割ったではないですか。に対して、今回そこまではいっていないということは、織りこんではいなかったものの、若干のブレグジットの経験があって少し警戒していた部分が若干違ったのかなというところと、全てネガティブかと言うと、とりあえずマーケットとしては先行きが不透明感でわからないというところで売られているのですけれども、たとえば、トランプ氏の政策の主なポイントは減税と、通商政策を変えるということと、移民政策ですね。特に減税の部分ですごく大規模な減税を言っていますので、これを実はポジティブに捉える向きもあって、ネガティブなところは財源がまったく示されない中で大規模減税と言っているので、将来的にアメリカの国債の格下げを通じて、ドル安になるのではないかみたいな見方もある一方で、それだけ大きな減税をやるわけで短期的に経済にはプラスになるのではないかと。さらに通商政策を変えて、たとえば、関税を上げたりすると、安い輸入品が入ってきにくくなると。合わせるとアメリカのインフレ率が結構高くなりやすく、実はアメリカ早い段階で結構利上げしやすくなるのではないかとか、そういうプラスを見ている向きも一部あったり。さらにはクリントンが大統領になったら、たとえば、富裕層の増税とか、金融規制とかネガティブな向きもあったのですけれど、逆にここがトランプ氏でなくなるみたいなところもあるので、実は夜の日経平均の先物を見ると、昼間900円以上下げたところも半分以上、戻しているんですよね」
反町キャスター
「寄り付きが1万7281円、今日、終値が1万6251円までいったのですけれども、明日の先物というのは結構、戻しているのですか?」
永濱氏
「現在のところ、1万6700円台まで戻していますので。ただ、アメリカの市場が今後どう動くかでわからないですけれど、たぶん明日の寄り付きはもうちょっと上がっているのではないかと。ただ、元には戻らないと思います。不透明感とが最大のところになりますので」
反町キャスター
「為替は一時101円まで上がったのが、先ほど103円14銭~15銭ぐらいまで。株価と同じように、1回いったのだけれども、また夜になって戻してきている。これはどう見たらいいのですか?」
永濱氏
「これは株と一緒で、最初にトランプが大統領ということで、不確実性が高まるということで下げたわけですね」
反町キャスター
「何をやるかがわからないから、怖くなったということなのですか?」
永濱氏
「そういうことです。ただ、不確実性が高まったということは、それから、じわじわ影響が拡大するものではないではないですか。さらに言えば、マーケットでオーバーシュートと言って、投機的な動きもあるので、かなり行き過ぎる部分もあるので、そこから若干、戻しているという感じだと思うんですけれども。だから、ここから戻るかどうかはまさにアメリカの利上げ次第で、一方で日本から円高を是正するような何か策はあるかと言うと、普通は金融政策ですけれども、実は金融政策はこの前の枠組みを変更して量から金利にターゲットを変えてしまいましたから、たぶん金利にしたことによって急激な円高を是正するような力はもうないと思うんです。となると、為替介入しかないと思うんですけれども、果たしてできるのかなというところから考えると、アメリカの金融政策に頼るしかないのかなと」
反町キャスター
「河野さん、政治的なことよりもアベノミクスへの影響という点でどう感じていますか?」
河野議員
「株価、あるいは為替という影響は避けては通れないのかなと思ってはいますが、中長期的に見ると勝利宣言も極めて穏やかな、普通の大統領みたいな、しかも、ヒラリー氏のことを褒めるというので、これまでは何となく選挙向けのレトリックで実際、大統領になっちゃったから、これは全国民の大統領になるぞというので、少し変わるのではないかなというのが今日の勝利宣言の期待感。根拠はあまりありませんが」

勝利宣言『可能性は無限』
秋元キャスター
「トランプ氏の勝利宣言、主なポイントはこちら。インフラの再構築で数百万人の雇用を創出する。経済成長を2倍にする。世界にアメリカの利益を最優先すると宣言する。世界の誰とでも公正な付き合いをする。こういった内容だったのですけれど、メアさん、こういった政策を宣言通りに進めていくと考えますか?」
メア氏
「選挙運動で、こういう政策だと言い易いのですけれど、具体化できるかどうか。これは実行力があるかどうか。だから、これからまず話題になることは1月までに、どういう人達を集めることができるのか。アメリカの政府は5000人ぐらいの政治指名で入る人がいますから、いい人が集まることができたら、1月から政策具体化の仕事が始まるのですから。それがポイントだと思いますね。あと3番目の『世界にアメリカの利益を最優先すると宣言する』。それは当たり前でしょう。だって、アメリカの大統領ですよ。そんなにびっくりするわけはないです。どういう首脳でも自分の国が最優先であるということですから。日米同盟を考えると、幸い、アメリカの利益と日本の利益は主なところで重なっています。だから、親しい、緊密な同盟関係があります」
反町キャスター
「古森さん、いかがですか?どんなふうに勝利宣言を聞きましたか?」
古森氏
「選挙キャンペーン中に私もかなり綿密に彼の言葉をずっと受け止めていましたけれども、これは全然違う人間ですよ。違う言葉ですよ。違う態度。ただ、この人は思ったよりもずっと鋭いというか、いわゆる臨機応変にできるのか。低俗というか、下品というか、闘争的な言葉で相手をやっつけて、嘘つきだとか、愚かだ、という言葉をしょっちゅう使っていた人がクリントン長官という敬称付ではないですか。ヒラリーは嘘つきだとさんざん言っていたのにね。だから、それだけ奥行きが深いかもしれない。もう1つ、私がこの方をずっとフォローしていて、誰もわからなかったようにトランプ氏がこんなに勝つと予測できなかった、誰もできなかった。アメリカの1番プロ中のプロが、政治の中心にいる人達までがヒラリー・クリントン氏で決まりだと言っていた、世論調査までが。今思うと実態があって、現実があって、動いているのに、こちらでそれを見ている人間がこうだ、ああだと言っていてもここに大きなギャップがあって、もしかしたら、こちらが間違っていて、私自身は反省で、アメリカを考察というか、何だかわかっているよと思っていたけれども、全然わからなかったという反省があるわけですよ」
中山教授
「9月の中旬にペンシルベニアとかオハイオに行って、トランプサポーター達に会って、彼らのトランプ氏を支持する想いというのが本物だったとわかっていましたし、そういう意味ではトランプ現象みたいなものを感覚的にはわかっていたと思っていたのですが、ただトランプ氏という人がかなり特異な人なので、ここまで支持が広がるというのはちょっと想像していなかったですよね。今日のスピーチは立派だったと思うのですが、逆を言えば、プロンプターに書いてあることを1回ぐらい、きちんと読み上げることは、誰にでもできるだろうと。今回の選挙のプロセスで相当な敵をつくったと思うんですね。アメリカ国民全員の大統領になると言うことは簡単ですけれど、政権発足初日から彼はある意味、敵と向き合うことになると思うんですよ。確かに議会もおそらく上下両院、共和党が多数派になるので、その意味で運営しやすいところはあるかもしれないですが、国は真っ二つに割れていると。半分ぐらいは敵意を持ってトランプ大統領を迎えるということは、アメリカ政治は相当に混迷状態に入るのではないのかなという感じがしますね。選挙のあとのまとまったという雰囲気を今回、私は感じないですね。まだヒラリーも敗北宣言していませんし。そこは、アメリカは内政状況が外交にも相当、強く拘束されるので、そこは正直言って、私は心配だという感じがしますね」
反町キャスター
「ただ、中山さん、上下両院ともに共和党が過半数を獲ることがほぼ確定をしている中、上院も下院も、ホワイトハウスも、全部共和党ですよね。これは大統領にしてみたらやりやすい、普通だったら。今回のトランプさんのここに至るまでのプロセスを考えると多数派を上下両院共に共和党が持っていることがトランプさんにとってプラスになりますね?」
中山教授
「プラスにはなると思うのですけれども、日本とは違って、立法府と行政府が常に一致団結して何かを進めるというのではなくて、立法府としては立法府としての気概があるわけですよね。特にトランプに反旗を翻した共和党員もかなりいますし、それから、穏健派もいます。共和党自体がトランプ党になっていくことに対する抵抗というのは相当出てくると思うんですよ。ですから、難しいと思いますよ、議会との関係は」
反町キャスター
「メアさん、議会を獲りながら、ホワイハウスも獲って、それでもトランプさんは政権運営に苦労するのですか?」
メア氏
「過半数があるのだけど、たとえば、裁判所の指名は60席が必要です、事実上。それは結局、民主党が反対したら邪魔できると。でも基本的には共和党はまだ割れている。3年前にティーパーティの影響で割れたから、その隙間にトランプ氏が入って当選できたと。反体制派ですから。だから、これから共和党がトランプ氏を支持する、たくさんの議員が支持をしますけれども、将来を考えると、あと2年間で中間選挙があるから、そこで共和党の中の対立になる可能性があると思いますよ」
反町キャスター
「古森さん、あまりトランプ氏にとってはいい環境ではないのですか?」
古森氏
「私は基本的にはいい環境だとは思いますよ。確かにトランプさんは、共和党のエスタブリッシュメントとされている主流派に悪口雑言し、ジョン・マケイン氏という非常に多くのアメリカ人が尊敬している長老政治家までも叩いた。その反発でポール・ライアン氏、下院議長も、協力しますよと言っているのに悪口を言った。ところが共和党主流の保守派の人達、ジョン・マケイン氏、ポール・ライアン氏、それからもう1人、マルコ・ルビオ氏。この3人とも悪口を散々言われたんですよ。だけど、3人ともに、共和党の予備選でトランプ派みたいな新人が挑戦したんです、それぞれ。でも、予備選で圧倒的に3人とも勝っているわけ。それで保守主義の主流というのはばっちりあって、彼らは余裕を持って、トランプ氏に対するとんでもないやつだなと思う部分と、ヒラリー政治、オバマ政治に対する反発に比べれば、トランプ氏とやっていこうということがずっと多いわけだから、私はトランプ氏の方がむしろ共和党の主流派の人の方に意外と寄っていくのではないかという、そう予測します」
反町キャスター
「党大会でトランプ氏を選びながら実際キャンペーンが始まった途中で、たとえば、ブッシュファミリーとか、いろんな人達が、トランプではやっていられないと抜けていったではないですか。その自分にノーという、絶縁状を突きつけた議会の共和党と、ホワイトハウスのトランプ大統領というのは、ノーを突きつけられたにもかかわらず、トランプさんの方から、共和党、上下両院の方に対して話し合おうよと寄ってくる?」
古森氏
「トランプさんは個人的に、いわゆる根に持つタイプだと私は思います。たけど、大統領になってうまくやっていかなければならないとなれば、いろんな首席補佐官やらがいっぱい来るわけだから、そういう人達も現在、共和党の保守派の中でも、また保守の人達がずっと出てきていますから、そのへんは流動的になるのではないでしょうか。だって、もともと同じ党だし、反民主、反リベラルという大義名分というか、大義の部分は一致しているからね。だから、ここでケンカを始めたら、まったく愚かな話でね」
反町キャスター
「でも、基本政策が一致しなかったりしないのですか?議会の共和党とホワイトハウスの間で。たとえば、TPP、安保政策とか、中国に対する姿勢とか、議会共和党の考えていることと、トランプ氏が考えていることって、一致するのですか?」
中山教授
「トランプ氏はそもそも保守ではないと思っていますよ。保守というのは、小さな政府、伝統的な価値観、力強い国際主義ですけれども、トランプ氏、いずれにも当てはまらないですよね。ですから、そういう意味で言うと、トランプは、イデオロギー的にどこに置いていいかまったくわからないと。結構、議会の首脳部はしっかりと保守的な原則を持っている人達なので、ライアン氏とか、マケイン氏というのは協力するのが相当難しいのかなという」
反町キャスター
「曲げるとすれば、トランプ氏だと思っている?」
中山教授
「現在のところ見えてこない感じですよね」
メア氏
「もう1つ予想があって、共和党の中で、トランプ氏を反対している数人がなぜ反対していたかと言うと、必ず負けると思っていたからですよ。信念、イデオロギーではなくて、負ける方を支持しない人の方が多かったんです、政治的にしても。でも、勝ったから寄るのではないですか?」
反町キャスター
「それは議会から寄ってくるという意味ですか?」
メア氏
「そうです」
反町キャスター
「議会の方が。勝った以上はトランプさんに対して?」
メア氏
「共和党の人は。彼が勝ったから、強くなるから。大統領の力を彼は、ホワイトハウスの力の使い方はたぶんまだわからないのだけれども、それがわかったら、手強い大統領になるでしょう。共和党の目から見ると」
河野議員
「共和党というのはこれまでも白人の政党だったわけですね。このままいくと白人は少数派になっていくわけです、人口が減っていって。だから、本当はこのあたりで軸足をマイノリティにもきちんと置ける共和党にしたかったのが白人の中の限られた分野の人に支持された大統領をつくってしまった。その共和党というのはマイノリティと接点を余計持ちにくくなったのではないのかなということを考えると、共和党の未来は分裂しているだけではなく、より白人中心の党になるという意味で極めて先行きがどうなるだろうと。それから、4年後には当然、負けた人達は現職がいても大統領選挙に挑戦をしてこようと思うのではないかと思うんですね。クルーズ氏にしろ、ルビオ氏にしろ。そうすると、共和党の中が、中間選挙あたりから分裂をしてくる。就任直後はお互いに歩み寄るだろうと思います、どちらがというよりは。だけど、2年後の中間選挙が終わったあとから、共和党というのは内部分裂をするよねと。一方、民主党はまさかサンダースが4年後に出てくるとは思えないので、4年後はいったい誰が出てくるのですかと言うと、何だかよくわからないですよね。ひょっとするとオバマ氏みたいな新たなスターが出るのかもしれないし。だから、何となくアメリカの政治が両方とも不透明になってきたかなという状況だと思いますね」

『日米同盟』と日本の役割
秋元キャスター
「ここからはトランプ次期大統領の誕生によって世界、そして、日本にどのような影響が及ぶのかを、トランプ氏が選挙戦で主張し続けてきたことから読み解いていきたいと思います。気になるのはトランプ氏がこれまで主張していた米軍駐留経費負担についてですけれども、『アメリカは、日本やドイツ、韓国、サウジアラビアを守っているが彼らは我々に対価を払っていない。自分で防衛するか、アメリカの費用を分担するべき』と言及してきたわけですけれど、メアさん、今後のアメリカの安全保障政策はアメリカ第一主義、アメリカファーストの方向になっていくのでしょうか?」
メア氏
「選挙運動で30年前の、いわゆるタダ乗り論と聞こえるような批判を同盟国にしましたけれど、これはどういうふうに日米の間で、安全保障体制の中で責任分担できるかという、まったく新しい話ではないです。これは20年前から続いている話です。主に、人が考えていることは思いやり予算。それが駐留経費、お金の話です。これから日本政府がやるべきことは、トランプ政権にどのぐらい日本が運用上で、お金だけではなくて、日本の防衛と地域の安定と安全保障の平和維持に貢献をしているかと、ちゃんと説明しないといけません。古い情報しか持っていないから。たとえば、安倍政権のこの4年間ですごく日本の安全保障政策は進歩している。集団的自衛権も行使できるようになって、日本の防衛能力は向上しているとか。でも、確かにワシントン、クリントン政権であっても、日本の防衛能力を向上しないとと、圧力をかけた。私の30年間の国務省での経験から見ると、4年おきに新しい政治指名が、たくさん人が入る。東アジアの地図を見る時に、日本にある米軍基地がアメリカの国益にどのぐらい有利に働いているのか、すぐわかる。前方展開戦略の基本ですから。アジアで前方展開戦略を続けたかったら、日本しかない。それで皆、地図を見る時にはわかる。問題は正しい戦略自体を理解しているかどうか。でも説明されたらわかると思うのですけれども、ただ急に日本から米軍を引き上げることはまったくないと思います」
古森氏
「トランプさんの日米同盟に対する問題提起というのは、彼なりの本能的というか、感覚的な掴んだものを表現したと。その時点でのアプローチというのは、実は近いのではないかと思うんですよ。と言うのは、彼が最初にこの問題を提起したのは、昨年8月、アラバマ州で3万人が集まる大きな集会で、アメリカは日本が攻撃されたら日本を守ることになるというけれども、日本はアメリカに対して何もしないと、これがフェアだと思いますかと皆に聞いている。だから、その時はお金のことを言っていないんですよ。あとからだんだんお金の、経費の問題になっている。だから、日本側の受け止め方として駐留米軍関連の経費の額が問題であって、その額をもっと出せばこの問題解決するのではないかという。ただ、彼の問題定義はかなり違っていまして、日米同盟は、他のNATO(北大西洋条約機構)とか、あるいは米韓同盟とか、普通の2国間同盟、多国間同盟とは違う、相互防衛の責務というのは日本にないわけですよ。自国領土だけということで。100m領海の外でアメリカ軍が攻撃されても何もしないという。それが今度、平和安全法制の一連の法案で、集団的自衛権の一部容認したけれども、これも非常にいろんな縛りがかかっていて、本当の集団的自衛権ではないですよ。だから、日本が自分達は守ってもらうけれど、他の国に対しては何もしない、アメリカに対しても何もないという、そういう認識はずっとタダ乗りというのは脈々とあって、そんなことは言わない方が今のところは日米同盟関係にとっていいのだというのが歴代政権の認識でずっときたけれども、底流としては何かおかしいというのがあって、そこの部分を投げたら、1つ球が当たったというような。そんな偶然ぐらいの、彼が提起した問題点の焦点というのは、私はそこにあると思います。だから、日本としては日本の防衛というのはどうすればいいかということをもうちょっと出発点に戻って考えないと」
中山教授
「トランプ氏は、日本だけをピンポイントにしているわけではなくて、ドイツとか、韓国とか、サウジアラビアとも言っていますよね。つまり、彼にはグローバルなコミットメントに対する不信感というものがあるのだろうと思うんですよ。アメリカの大統領だからアメリカの利益を最優先するのは当然だと、それはそうだと思うのですけれども、ここで彼がイメージしているアメリカの国益というのは、非常に小さいのだと思います。アメリカに対しての直接的な行為みたいなイメージなのだろうと思うんです。ですから、これまでアメリカは戦後秩序の中で、国際規範とか、国際秩序みたいなものを支えてきて、その中に同盟網というのが組み込まれているわけですけれど、それはトランプ氏にとっては非常に抽象的なものに見えると思うんですね。だから、アメリカに対する直接の脅威に対しては躊躇なく行動をするけれども、同盟みたいに秩序を維持する装置に対しては、どこまでコミットメントするのかまだよくわからないところがあって、日本としてはアメリカに対して本当にそれでいいのですかと。アメリカにとっても重要なのではないですかというぐらいの気持ちで臨んでいかないと、私は相当、ボタンを掛け違えちゃう可能性というのがあるような気がします」
河野議員
「トランプさんというのはたぶんこれまでのビジネスの経験を見ても、日本と関わっていないと思うんですよね。日本にあまり知り合いもいそうもないし、日本人でトランプさんと話をしたことがあるという人に僕は会ったことがないわけです。だから、あまり知らないのだと思いますし、安全保障とは縁遠かったわけですから。この同盟というのはどういう問題なのかというのを知らずに、負担を一方的にアメリカが負うのはおかしいという意味で言っているのだと思います。だから、これはいろいろな同盟の中で考えたら、日本は費用分担にしてもそれなりにやっているのだよということをきちんと説明をして、この同盟関係というのはアメリカにどういう利益になっているのかというのを説明していくというのが大事で、日本側が出て行ってしっかりやる必要があるのだろうと思います。それぐらいのことは我が国の国益を考えたらやらなければいけない。ただ、問題はああいうビジネスマンですから。中国との経済関係を考えたら中国が大事だみたいなことで出て行かれちゃうと、いやいや、ちょっと待ってくださいと。それは経済も大事だけれども、まずはアジアの安全保障というのを考えた時にいろんな枠組みがあるよねということを日本は早めにトランプさんにきちんと言って、まず日中関係があり、あるいはTPP、いろんな枠組みがあって、それから、中国、ロシアですよねということを早いうちに、日本がトランプさんにしっかり言うというのがすごく大事だと思います。放って置くと何となくお金に釣られて、米中関係みたいな話になられても困ると思います」

米露関係は『雪解け』か?
秋元キャスター
「ここからは次期大統領となるトランプ氏がどういう外交政策をとっていくのか考えていきます。まずは冷え込んでいるロシアとの関係がどうなっていくのか。トランプ氏はロシアについて『私はプーチン氏を知らないが、私のことを好意的に言っている。私達がうまくやれば、それは良いことだ』と19日のテレビ討論会で話をしているのですけれども、今回の勝利の結果を受けまして、ロシアのプーチン大統領はトランプ氏にこのような祝電を送っています。『危機的な状況に陥っている米露関係から脱するよう、ともに取り組みたい』。古森さん、米露関係が冷え込んでいますけれども、ロシアとの関係は今後、良くなっていくのでしょうか?」
古森氏
「いや、あまり急に良くなるという兆しは感じられないです。トランプさんは経験がないですし、だからナイーブというか、金正恩氏ともいろいろ問題はあるけれど、自分が1対1で会えばいいのだということを言っちゃったことがあるわけです。そうしたら、それが他の同じ保守派の仲間から叩かれたりしているから、ある部分ラフで、悪く言えば脇が甘いようなところがあるから、お互いに会おうという形で、首脳同士が話せば、うまくいくのではないかと。これはオバマ大統領も実は当初、そういうこと、態度があったんですよ。中国とか問題がある国の首脳、国とは首脳同士で会えば解決するのではないかと。そういうラーニングカーブというか、オンザジョブトレーニングみたいな少しずつ学んでいくことの出発的であって、プーチンさんと会ったからウクライナ問題が解決するのか。ロシアがトランプさんのことが好きだからウクライナのことでちょっと妥協をしますなんてプーチンさんは言わないから。ただ、首脳同士が話さないよりは話した方が危機の度合いは減るとか、そういうソフトな面での印象はありますけれども。だから、仲が良いんだよということで、現実の外交問題が左右できるという雰囲気にはちょっと思えないです」
反町キャスター
「中山さん、古森さんの話を聞いていると、トランプ外交というのは、非常に次元の低いところからスタートするのかと思ってしまうのですが?」
中山教授
「あいつが好きだ嫌いだというのは、だいぶ重要なファクターになってくると思います。ワシントンでシンクタンクの連中とかといろんな協議をしていると、アメリカにとって最大の脅威は何かという会話になっていくと、一時前までは中国の不確実な台頭みたいなことを言う人がいましたし、もちろん、テロというのも常にそうですけれども、最近はロシアの脅威というのが非常に高まっているのだろうと思うんですよね。軍の高官も、『ロシアはアメリカにとって実存的な脅威だ』という言葉を使ったりして、ロシアについて言及しているんですよ。このへんの認識と、このトランプ氏のロシア観というのにはだいぶズレがあると思うんですよ。そのへんがちょっとどういうふうに収斂していくのかというのがよくわからないところがあると思いますけれども。でも、日本が日露間で接近しようとして、クリントン政権ですと、ちょっと注意をしなければいけないのかなということでクリントンさん自身は日本の戦略的な意図はわかるという、微妙な言い方をしていましたけれども。トランプ氏とはまだこのような会話はしていないとは思うのですが、日本の意図というのを、しっかりと説明のロジックをつくって説明をしていく必要があるのかなというのは強く思います」
メア氏
「ワシントンで考えられていることは、日本がプーチン氏と会ってもあまり反発がないです。制裁措置をそのまま維持するのだったら別に皆、反対していない。なぜかと言うと、解釈されていることは安倍首相ができるだけ中国を牽制するために戦略的に考えて、ロシアとの関係を改善する方がいいのではないかと思っている。それはアメリカ政府もわかっている。だから、別に反対していないと。でも、トランプ氏は直接、各問題首脳と会って話をしたら問題解決できると思っている。オバマ氏も最初、そうだったから。選挙運動で8年前、同じことを言っていた。何で会って話さない、会って話をしたらいろいろ解決できると。たくさんの新しい大統領はそう考えている。でも、大統領になれば、周りの官僚達と外交官はいろいろ教えるから。聞くかどうかが問題ですけれど、ドンドン現実的になるでしょう。経験が少しあったら。でも、ロシアはおっしゃったようにこれからもっと、アメリカの目から見ても問題になっていくから、それはオバマ政権の責任もあります」
河野議員
「米露が危機的な状況だという時に、アメリカとつるんでいる日本といろんなことができるということはロシアから見ると、あるいはG7の中の日本とできるということはロシアからしてみるといいことで、そこはロシアにしても真剣にやろうという意思はあるのだと思います。しかし米露で話ができるようになったなら、米露でやればいいよねという話になって、日本も助けてくれるのならいろいろ助けてくれと、ワシントンに行ったついでに東京に寄るよみたいなことになると、相対的に日露関係の重要性が下がっていってしまうという心配を日本側はしなくてはいけないのかなとも思います。それこそトランプさんは、クリミアの話も、シリアの話も、場所くらいはわかっているのかもしれないけれどというところからスタートするわけで、米露でやろうとか、話をしようよと言っているけれども、いや、そういう問題ではないのだということを国務省に言われ、国防省に言われ、あるいはいろいろな将軍にロシアとはこういう問題を抱えていて、そう簡単にニココニ会って握手してればいいのではないと言われると米露も少しトーンダウンをしてくるかもしれない。米露の関係を見ながら、日露もうまくやっていく必要があると思いますよ」

TPPは『漂流』するか?
秋元キャスター
「TPPの行方をどう見ていますか?」
河野議員
「あまり楽観はできないなと正直に思います。両候補ともネガティブなことをおしゃっていたわけですよね。ただ、アメリカは外交には国民は興味がないというのが大前提だと思いますので、初日に離脱しないという選択肢はきっとあるのだろうと思います。共和党も上院を押えていますから、民主党がフィリバスターをやられると通りませんけれども、そこまでいかなければ、どこかのタイミングでというのはあるのだろうと思いますし、中国と対峙をしていこうということを考えれば、このTPPという枠組みは経済だけでなく、アジア、太平洋の新しい国際的な枠組みをつくるものだということを考えれば、アメリカはTPPが大事な道具になるはずだと思いますので、どこかのタイミングで切り替えていくというのはあると思いたいですね」
永濱氏
「TPPはアベノミクスの成長戦略の柱の1つだったわけですね。それが何を意味するかと言うと、TPPそのものというよりも、TPPによってグローバルスタンダードなビジネスを、外圧を利用することによって、日本の構造改革を進めやすくすると、そういう位置づけがあったと思いますけれど、TPPが白紙になってしまうということからすると成長戦略という意味から非常にネガティブな話だと思います。今回のトランプ氏が勝ったというのは、イギリスのブレグジットと同じ要素があったと思っていて、根本からすると、経済のグローバル化によってわりをくってしまった先進国の中低所得者層のある意味、反乱と言いましょうか、だと思うんですね。それを考えると、イギリス、アメリカだけではなくて、他の先進国、日本もそうだし、ヨーロッパもそうですけれど、特にヨーロッパについては、来年は選挙が目白押しではないですか。それを考えると、こういったうねりみたいなものが、たとえば、来年のヨーロッパ選挙の中で同じような動きが仮に出てきて、閉鎖経済から開放経済というものから、逆に閉鎖経済となってしまうと、そもそも世界経済の成長の意味では足を引っ張るようになりますから、そうなってしまうと、日本の場合、これから人口が減少していくので、いかに外需を取り込んで成長していくかという面で考えても、非常に危機的な状況になるリスクがあると懸念しています」
中山教授
「これは深刻だと思っていて、単に経済のディールではなく、価値を共有する日米という国がこの地域において先進的な秩序づくりを一緒にやるという意味づけで通そうとしてきたんですね。日米同盟というのはいろいろな脅威を設定していますけれども、基本的に冷戦後の日米というものは、価値を共有する日本とアメリカが一緒にこの地域の公共財である、秩序をつくっていくという仕組みだと思うんですよ。TPPからアメリカが降りるということは、本当に価値を共有しているのですかという疑問を少なくとも引き起こしてしまうと思うんです。ですから、これは経済だけにとどまらず、極めて政治的な負のインパクトがあるのかなという感じがしますね。そこにトランプ氏の予測不可能性が被ってくると、アメリカに対する不信感みたいなものが湧き上がってくる土壌が日本社会にあると思うんですね。そういう意味では非常に心配していますね」

永濱利廣 第一生命経済研究所首席エコノミストの提言:『自力作善』
永濱氏
「現在の関係は日本にとって間違いなく向かい風になったと思うんですね。逆にこれをテコに、自力作善というのは他力本願の逆なのですけれども、自分で外圧を使って、TPPで構造改革が使えなくなるということは自分でやらなければいけないと。それも日本は先進国で1番政治が安定していると思うんですよ。そういうことからしても、逆にこれをテコにして構造改革を中心に進めていっていただきたいと思います」

中山俊宏 慶應義塾大学教授の提言:『トランプを乗り切る』
中山教授
「これでアメリカが全て変わってしまうと、日米関係が全て変わるということではないと思うんです。我々が思っている以上に大統領の権力というのはいろんな意味で制約がありますし、次もありますし、このトランプ氏に過剰反応するのではなくて、なるべく波風を立てないようにして、どうにか乗り切って。一方、日本は日米同盟を選択してきたわけですけれども、なぜ日米同盟が日本にとってベストチョイスなのかということをきちんと言語化し、再選択する必要がある感じがして『トランプを乗り切る』にしました」

ケビン・メア 元米国務省日本部長の提言:『落ち着く』
メア氏
「新しい大統領は皆あまり政策を知らない新大統領で、不透明なところがよくあるから懸念している、心配しているのはよくわかっているけれども、考えると日米同盟はすごく熟している、深く、幅広く、長く続いている同盟だから、これからも深化が続くと確信しています。ワシントンは、日本もこれからも抑止力、防衛力を向上することが期待できるし、いい機会と思います。日本はこれから日米同盟を真の平等な同盟にする機会になるのではないかと考えています」

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の提言:『好機とみよう』
古森氏
「アメリカにまったく我々の予期しない指導者が出てくると。そのアメリカに我々は防衛でも貿易でも依存していると。その依存している相手がガラリと変わり得るのだということが1つ。だから、もうちょっと自分のことは自分でやらなければいけないよというチャンスとして見ようと。特に同盟関係に関しては基本的なところ、向こうは問題点を指摘しているのだから、それをもうちょっと前向きに考えて、ちょっと自主的にやっていこうではないかという、そういうチャンスにトランプさんを活用するべきではないか」

河野太郎 前行政改革担当大臣の提言:『主流と直接』
河野議員
「これまでの日米関係には間にジャパン・ハンドという人が入って、両方の言い分を翻訳して、うまく伝えてくれるということをやっていたわけですが、そろそろ本流同士でちゃんとやりあうということができるようにしないとダメだよねと。特にトランプさんになると、ジャパン・ハンドが活躍するのかどうか、あるいはポジションに入るかもわからないわけですから。そろそろ翻訳機なしに日米でちゃんと話ができるようにしなければいけないのではないかなと。政府もそうだし、議員もそうだと思います。議員も政府も、ジャパン・ハンドに行くみたいなところがありましたから、議員は議員でチャンネルをつくらなければいけないですし、政府も政府でチャンネルをつくっていくという、本来あるべき姿にしていかないといけないのではないのかなと。(日米間の議員の交流は)数年前は極端に細かったのですが、最近はアメリカからも来るようになりました。日米で落ち着いて時間をとって、1週間ぐらい対話をしようという議員外交も始まりつつあるので、少しずつそういうのができてくると思います」