プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年11月4日(金)
本日発効『パリ協定』 温暖化防止の実効性は

ゲスト

井上信治
自由民主党副幹事長 前環境副大臣 衆議院議員
亀山康子
国立環境研究所社会環境システム研究センター副センター長
竹内純子
国際環境経済研究所理事・主席研究員 筑波大学客員教授

温暖化対策『パリ協定』 『実効性』と日本の戦略
松村キャスター
「まずパリ協定がどのようなものなのか、1997年に採択された京都議定書と比べながらポイントをおさらいしていきたいと思います。京都議定書の対象国は38の国と地域で先進国のみ。パリ協定は197か国・地域です。京都議定書の数値目標ですが、温室効果ガスの排出量を1990年比で2008年から2012 年の間でおよそ5%削減。パリ協定は温室効果ガスの削減量ではなく、産業革命前からの気温上昇を2℃未満にし、1.5℃に抑える努力というものです。各国の削減目標の決め方は、京都議定書は国際交渉で削減交渉を先に決めてから達成するための国内政策を進めるというトップダウン型。パリ協定は各国が決めた削減目標を策定するボトムアップ型で、その進捗状況を報告して評価を受けるプレッジ&レビュー方式というものです。京都議定書には目標が達成できなかった場合に罰則が設けられているのですが、パリ協定には罰則がありません。亀山さん、いかがですか?」
亀山氏
「一言で言うと、時代が変わった象徴と見ています。どういうことかと言うと、京都議定書からパリ協定の間に18年間の、長い時間があったんですね。京都議定書が採択された時には、先ほどおっしゃったように、温暖化対策が重要なのはわかっているけれど、コストがかかるよね、できるだけやりたくないねと。なので、トップダウン型で、あなたは6%減らしなさい、と強く言わないとダメな時代だったんですね。それがここ5年ぐらいの間にすごく大きく変わってきて、世の中では、温暖化対策イコール新しいチャンスだと考える人達がドンドン増えてきた。なので、皆でやりましょうという気運が出てきて、昨年、採択になったんですよね。それを象徴するのは、アメリカと中国の態度の大きな、180度の転換ですよね。18年前は絶対にやりたくないと言っていたアメリカが今回、先頭を切って、批准に向かって走っていたわけですから、それはチャンスだということが国内でも言えるようになってきたということではないかと感じています」
竹内氏
「私は亀山先生ほど、これは楽観的ではないと言いますか、もちろん、パリ協定が全ての国が参加する枠組みで成立したというのは、これは私も時代が変わったというか、そういうこところは感じています。やっとここまで来たかと言いますか、日本はだいぶ前から、京都議定書の枠組みをつくる当時から、一部の国に法的な義務を課しても、結局、経済活動に伴って、必然的に排出される温室効果ガスを削減するというようなことを達成していくというのは無理だと。当然のことながら、一部の国に義務を課すと産業の流出であるとか、そういったことがカーボンリンケージという問題とかが起きてくるというので、全員参加型の枠組みを、とにかくつくることが必要であると。それにあたっては、日本の産業界がやってきたような、こうした自主的目標を掲げて、レビューによって、しっかりとサポートしていくような仕組みでなければダメだということを当初から主張していたわけですけれども、なかなかそれは通らなかった。それは時代的な背景もあったと思います。ただ、今回、全ての国が参加したというのは非常に大きな変化なのですが、亀山先生がおっしゃるように温室効果ガスを減らすことがチャンスだということだけで、このモーメンタムができているわけではないということ。これは当然、亀山先生も承知のうえでおっしゃっておられるんだと思いますけれども、そういったモーメンタムができているということは事実ですけれども、ただ、アメリカがここまで積極的だった裏には、オバマさんのレガシーづくりがあったり、中国は、国民の、温暖化というよりもある意味、環境問題に対して非常にセンシティブになっている国内対策であったりというような、様々な要素がある意味、奇跡的にうまく絡み合った結果というふうにも見ています」
反町キャスター
「まず亀山さん、先ほど、温暖化対策はチャンスだと言いましたよね。どういう意味ですか?チャンスと言うとビジネスチャンスなのか、何のチャンスですか?」
亀山氏
「一部のビジネスにとっては確かにビジネスチャンスです。でも、それは一部でしかなくて。申し上げたメリットというのは、より大きなメリットで、まさに竹内さんがおっしゃってくださったように、温暖化以外の観点も含め、総合的に見るとこれはやっていいだろうと。たとえば、中国であれば、PM2.5が問題になっていて大気汚染を改善するためには、省エネは結局やっていかなければいけないわけですよね。そうすると、それは必然的に温暖化対策にもなるわけです。そういった副次的なメリットが感じられるようになったということもあります」
反町キャスター
「それは別に、チャンス、言葉の印象論で聞いちゃうのですけれども、温暖化対策はチャンスだと言われると、これは今やらなければ損するよと聞こえるのですが、そういう意味ではなくて、様々な、諸々の、中国のPM2.5もそうですけれども、いろいろなものを複合的に考えた時に、ここで各国が足並みを揃えることがメリットになるよということを皆が理解したと、そういう意味?」
亀山氏
「両方ですよね。チャンスとなると思われるのがドンドン伸びているというのも事実です。再生可能エネルギーの業界なんかがその際たるものだと思いますけれど、ただ、それが全ての産業というわけでもないですから、そうすると、他の人達はどういったところでメリットを感じるかというと、先ほど挙げたような、その他の副次的なメリットというのがあちらこちらに見られているという、そういう意味で申し上げました。もちろん、世界中でドンドン異常気象が増えていると、それは事実として、皆さん認識しているわけですから、それの対策をとっていかないと、今度は温暖化の悪影響を受けるわけですね。集中豪雨で家が流されたりする。むしろそちらの方のコストというのがかかってくるわけですから。あとはバランスの取り方ですよね」
反町キャスター
「そうすると、環境に対する取り組みというのは、金儲けになるということよりも予防医療みたいな悪化する前に抑えておいた方が将来の大きな損失を防ぐことができるということの理解の方が正しいですか?」
亀山氏
「もちろん、それは1番の基本です。ただ、これまではそれほど温暖化の問題が大変なのですかねというところのコンセンサスがなかったから、国際合意もできなかったわけですよね」
反町キャスター
「そうすると、米中が今回乗ってきたというのは、そういう経済大国としての将来を見越した時の話だと見ていますか?それとも、たとえば、先ほど、竹内さんがおっしゃったみたいに、オバマ氏のレガシーづくりだよとか、習近平氏の話されませんでしたけれども、中国は中国側でいろんなところで世間の評判が悪いから、ここでゴマをすっておこうと思ったとか、そういう穿った見方に関してはどう思いますか?」
亀山氏
「専門、国際政治学です。ああいった大国は1人のリーダーだけでは大きくは動けません。なので、オバマさんもレガシーづくりだけだったらこの1年だけがんばればいいですけれども、彼はもともと大統領の就任当時から気候変動と、最初から言っていたんですよね。それが当時は議会の強い反対にあってなかなか言い出せなかったわけですよ。最後、残り1年ということになって、ようやく自分のやりたいことをできるようになったと。そういう意味でのレガシーという意味かなと。中国は申し上げたように経済成長で大気汚染というのが非常に大きな問題になっている。中国もこれまで、あまり経済的に豊かでなかった時には人々の健康被害よりも経済成長の方が優先されたわけですけれども、ある程度、国民の生活が豊かになってくるときれいな空気の方を優先するようになってくるわけですね。なので、日本がかつて体験してきた公害時代と同じようなものなのですけれども、皆の意識が高くなれば、それだけ国家としても対応しやすくなりますし、さらにパリ協定が合意されましたという、国際的な理由づけが立つと、今度、国内に対しても説明がしやすくなりますよね。そういった様々な利点が中国にもあった」
反町キャスター
「井上さん、いかがですか?皆がスッと乗れるタイミング、竹内さんが先ほど、奇跡的にいろんなものが一致したという話もありました。皆が揃ったタイミング、米中の思惑も含めて、どう感じていますか?」
井上議員
「様々な国際関係とか、それぞれの国の国内情勢とかもあります。ただ、私はそれだけ深刻だという、むしろそちらのインパクトが大きいと思いますよ。それは世界で異常気象が多発して、自然災害が頻発して、何とかしなければ本当におかしくなっちゃう。そういう意識を世界の人達が皆、共有しているのだと思います。だから、決してチャンスとか、プラスとか、もちろん、それはそれで考えなければいけないことですが、非常に深刻だという危機感を持って対応しないと見誤ると思いますね」
松村キャスター
「7日からCOP22(気候変動枠組条約締約国会議)で開かれます第1回締約国協議というものがあるのですけれども、これに参加するには先月の19日までに批准が必要でしたが、日本は間に合いませんでした」
反町キャスター
「竹内さん、遅れたことについては、特にデメリットはないのですか?」
竹内氏
「実質的なデメリットというのは基本的にはなくて」
反町キャスター
「7日から始まるモロッコのマルケシュで開かれる会議というのは、そこには日本は行けなくても…。行けるのですか?」
竹内氏
「もちろん、行けます。まず気候変動枠組条約、要は、温暖化に関する大元の条約があって、その締約国の会合がCOP22。その会議の期間中にパリ協定締約国会議の第1回が開催されると。基本的に様々な、要は、パリ協定の詳細なルールがつくられるという、その交渉に参加ができない、オブザーバーとしての参加になるから不利だと言われているのですが、まず役割として、基本的にはパリ協定の詳細ルールというのは、気候変動枠組条約国の全締約国で草案をつくって、それをパリ協定締約国会合でディサイドしましょう、決定しましょうということなので、草案が今年5月につくり始めただけで、できていないということなので、パリ協定の締約国会合というのは開催はされる形ですけれども、たぶん短時間で終了してしまうだろうと。終了というか、サスペンドという表現ですけれども、たぶん手続き的に1回開催をして、発効したね、良かったねというようなことになって、草案を待ちましょうねみたいな形で、サスペンドになってしまうというところが実質的なところです」
反町キャスター
「別に遅れたことが、第1回の会議に出られないことが日本が知らない間にルールができていて困ると、そういうことにはあまりならない?」
竹内氏
「あまりならないと想定されます」
松村キャスター
「ルールづくりがスタートするということですが、そのルールの中身というのもこれからということですか?」
竹内氏
「はい、もちろん、これからで。たぶんCOP22でどういう議論になるのかですが、実質的に合意に至るのは、これからのスケジュール感、いついつまでに、こういう項目、テーマについて議論を進めて、いついつまでにこういったものをつくりましょうとか、そういうスケジュール感に合意をするというのがたぶん精一杯のところかなと思います」

本日発効『パリ協定』 温暖化対策の『実効性』
松村キャスター
「各国がどのような削減目標を掲げているのかと言いますと、世界1位の温室効果ガス排出量の中国ですが、2005年比で2030年にGDP(国内総生産)当たりのCO2排出量を60%から65%削減すると。このような目標ですが、亀山さん、この目標についてはいかがですか?」
亀山氏
「中国の目標ですか。中国の目標は書かれているもの以外に、2030年までに排出量の総量をピークアウトするというようなものが含まれているんですね。なので、むしろピークアウトというフォローを見ていただくと、もう中国はある程度、成長し終わって、これから温暖化対策をがんばっていきますよというような意思表示が見られますね。GDP当たりというのは、どうしてもその時々のGDPというのはこれから予測しづらいところもありますので。ただ、GDPとCO2というのは、特に成長期にある国にとっては比例する、2つの指標でありますから。このGDP当たりで出すというのはそれほど違和感がないという」
反町キャスター
「違和感がないと言っても、他の国に比べると中国とインドというのはこれから経済の伸びしろがあると思われる国という言い方を敢えてすれば、要するに、GDP当たりのCO2排出量という言い方というのは、これはこういうまとめ方をしないと、日本やアメリカ、EU(欧州連合)のような線ではとても彼らは乗ってこれらなかったと、こういうことになるのですか?」
亀山氏
「絶対値で見ると、中国とインドを先進国と比べると、絶対値と申し上げるのはGDP当たりの排出量とか、人口当たりの排出量で見ると格段に少ないわけですね。なので、彼らにしてみれば、少なくとも先進国と同じ水準まで自分達は成長する権利があるだろうという主張はしていて、そこは先進国も否定できない部分ですね。なので、彼らがそこまで近づいた時には、GDP当たりというのはとても認められなくなると思います」
反町キャスター
「竹内さん、いかがですか?中国、インドの土俵の設定をどう見ますか?」
竹内氏
「これはこれからルールづくりの中で求めていかなければならない点だと思うのですが、新興国は途上国ではないと。京都議定書時代の先進国と途上国の二元論、二分論に新興国はすぐに立ち戻ろうとするわけですね。ですが、きちんとそういう努力のあげ方、評価のされ方、目標値もこういう総量目標ではなく、原単位の目標を掲げてくるというのは経済が成長するのだったら、それはそれで優先させていただきますということですし、2030年にピークアウトするという目標を掲げているから、努力も見えますよねとおっしゃってくださったのですけれども、どんな経済予測を見ても、中国の経済が2030年にピークアウトして、減速傾向に入るという、これは明らかなわけですよ。あれは努力というよりは、私は天気予報に近いと思っている部分があります。ですので、いかに引き上げる方向にやらせるか。やらせるかと言ったら失礼ですけれども、先進国と途上国という二元論に逃げ込ませないということが、パリ協定に実効性を持たせるというところが1番大事ではないかと思います」
反町キャスター
「井上さん、いかがですか?竹内さん、二元論だと言いました。新興国と先進国の二元論であるというこの話、確かに中国、インド、有利に見えますよね?」
井上議員
「はい。私もそういう意味では、竹内先生のお話に賛同するのが大きく、いろんな国内の状況も違いますが、1番大事なのは、地球全体で絶対量をどれぐらいCO2削減ができるかということですよ。そうなると、絶対量の目標を定めないとあまり意味がないということになってしまうので。ですから、これからルールづくり、あるいは5年ごとに目標を更新して深堀していくわけですから、その中で先進国、途上国の差異みたいなものはなるべくなくしていく。それが公平性の観点から望ましいと思っていますので、日本の国はそういったこともしっかり主張して取り組んでいくべきだと思いますね」
松村キャスター
「昨日、国連環境計画が公表した予測によりますと、各国が現在のCO2削減努力を続けた場合としても、今世紀中に2.9℃から3.4℃上昇するとしています。パリ協定が目標としています、この2℃未満というのは超えてしまうということですよね。亀山さん、現在の努力をしても上昇していくということですけれども、各国の削減目標、どのようにしていくべきなのでしょうか?」
亀山氏
「これは間口が広い協定ですから、全ての人が、国が参加できる。と言うことは、義務自体はそれほど厳しくはない義務ですよね。なので、パリ協定が発効したというのは、ゴールではなくて、ようやくスタート地点に立ったということで、これからどうやって皆が順調に走り出していけるのかというルールづくり、そこが肝ですよね」
反町キャスター
「いずれにしてもパリ協定とは何ですかと。こういう話、根源論みたいな話になる話ですよね?」
亀山氏
「パリ協定の主旨はとにかく先進国だけではなく、全ての国にとりあえず目標というものを設定してもらうということですね。そこが重要ですよ。その目標が厳しいのか、緩いのかは問わないんですよ。だけれど、足してみると全然足りませんねというのがここで出ているのですから」
反町キャスター
「それを1回教えるためにパリ協定があるみたいな感じなのですか?」
亀山氏
「そうですね。なので、むしろ、重要なのはこれから」
竹内氏
「気を長く育てましょうと」
反町キャスター
「そういう感じなのですか?小学校ではないのだからと言わないけれど、要するに、やってみましょうね、目標を設定しましょうね、やれませんでしたよね。もうちょっとがんばろうねと。そういう主旨の会合、協定なのですか?」
亀山氏
「それだと間に合わないというのは皆わかっているわけですから」
反町キャスター
「切迫感とのギャップが理解できない」
亀山氏
「それが、200近くの国が合意しようと思う時の限界ですよ。だから、今後、重要になってくるのはもちろん、それぞれの国の目標を見て、あなた、もう少し下げられるのではないですか。2030年のピークアウトをもう少し前倒しできるのではないかという話はいろんな専門家から出てきて、まず重要なのはそういう対話を始めること、あなたの国、もっとできるのではないかという議論です。それは国同士の議論で、それは時間がかかるんですよ。どの国もやれるでしょうと。いや、やれませんとなるのですけれど。もう1つ、パリ協定の面白いところは今回、国だけではなくて、産業界とか、自治体とか、いろんな、いわゆる国という単位の主体以外の主体が複雑に参加していて…」
反町キャスター
「それはNGO(非政府組織)という意味ですか?」
亀山氏
「NGOってその関係保護団体ではなく、たとえば、自治体、東京都とか、シアトル市とか、そういう市単位で何かいろいろやっているわけですよね。そういうのを皆で発表し合うとか、また、産業界は産業界でこういう技術が出ているんですけど、みたいなことを紹介し合うわけですね。そういった政府以外の主体がお互いに皆、勝手にネットワークを組んで一緒に減らしましょうみたいな話をしているので、そういうところで、むしろ国の合意よりも先に減らせるような環境をつくっていこうというプラットフォームづくりが、パリ協定と同時に平行して行われているので」
反町キャスター
「話が美し過ぎるような気がする。竹内さん、この話、僕が聞いていると皆が自主的に心を正していけば達成が早くできるみたいな、非常に美しい話に聞こえるのですけれども、そう思ったらいいのですか?」
竹内氏
「確かに私もパリ協定ができましたということをあちこちでお話すると、だって、足りないじゃないとか、だって、緩いのでしょう言われるんですが。じゃあ京都議定書で成功しましたかと。ああやって法的な達成義務があって、きちんとした担保がある。だから、温暖化に対して非常に有効であると皆、思って、あれをスタートしたわけですよね。日本はもちろん、全員参加ではなければダメだと言っていましたけれど、京都議定書で世界はスタートした。蓋を開けてみたら、バインディングな枠組みからは抜けてしまおうというモチベーションを与えてしまう枠組みだったわけですよね」
反町キャスター
「きついから嫌で、混ざらない、逃げると。これは緩すぎないですかという批判に対しては、きついと逃げるからと言う二元論で終るのですか?」
竹内氏
「まず捕まえる」
反町キャスター
「締めたら、また、逃げていくのではないですか?」
竹内氏
「それを逃げさせないように努力をすることが必要」

目標達成へ…日本の戦略
松村キャスター
「ここからは日本の対応についてです。日本の削減目標は2013年度比で、2030年度に26%削減する。このような国際公約を掲げていますが、井上さん、この目標をどのように見ていますか?」
井上議員
「国際的に見ても十分野心的な目標だと思っています。しかし、大事なのは、これをいかに達成するかということです。そういう意味では、なかなか厳しい目標でありまして、かなりがんばらなければ達成できないと。しかし、がんばれば達成できるという数字ですから、これをしっかりやっていくということだと思います」
松村キャスター
「私も26%という数字を聞いて、あまりピンとはこないのですけれども、亀山さん、この目標達成の可能性というのをどう見ていますか?」
亀山氏
「4分の1でしょう。野心的な目標だとは思うのですけれども、そもそも温暖化が大変だという議論が始まったのは、先ほど申し上げたように1990年代だと思うと、1990年から2013年までの間に何をやっていたのですかというのは、どうしても問われてしまうわけですね。昔がんばっていれば、今こんなにがんばらなくても、もしかしたら済んだのかも知れません。それはありますけれど、この目標の水準自体はそう簡単に達成できるものではないという理解を私もしています」
反町キャスター
「大変ですか?竹内さん、どうですか?目標設定。どう見ていますか?」
竹内氏
「この目標自体、日本は出すに当たって、2030年に日本はどれぐらい必要として、それをどうやって賄うかという議論。省エネについては、たとえば、いろんな分野でこういう取り組みをすれば、これぐらい減らせるというものを積み上げて出したわけで、私も相当、野心的であると思います」
反町キャスター
「2013年度というところに基準を置いているということは東日本大震災のあとですね?要するに、原発が止まって、あちこちで、化石燃料でバンバン炊いている時を基準にすれば、皆さん、難しいとは言うのだけれども、高いところ、その前の原発を動かしていた時に比べれば当然、増えているわけだから、目標値としてはそんなに厳しいのですかと聞きたくなるのですけれども、そこはどうなのですか?」
竹内氏
「原子力発電所が順調に再稼働をすればそれは達成が容易になるかもしれません。ただ、基準年を2013年度にしたのには、原子力発電が止まっている時というタイミングでもありますけれど、1番直近のデータでもあったわけですね。だから、足元から、これからの努力を比較しましょうという姿勢でもある。アメリカが出している2005年という基準年、EUが出している1990年という基準年、EUは1990年と、四半世紀前ですよね。それを基準年ですかというところは逆に問うべき話であって、みんな自分が1番出していた時を基準年にするわけですよね。そういうことですよね。EUが1990年を基準年にしているのは東欧革命があって、そこから先は、要は、減り始めてしまう。西側の技術が東欧の諸国に流入して、特にドイツですよね、統合があって放って置いても、CO2というのが減ったというよりも、反町さんにおっしゃっていただいたように、減り始めてからを基準年にするより、減る前を基準した方が大きく見えます。アメリカも2008年、2009年ぐらいからシェール革命ということで、これまで国内の石炭を運んで使っていたものを国内の天然ガス。これをパイプラインで、掘削技術が進んだおかげで使えるようになった。そうすると、コストは安くなるは、CO2は石炭に比べて天然ガスは半分ぐらいだということでメリットがあると。そういったところで、自然と減っていった部分なわけですけれども。それを2005年を基準年にすると、努力が大きく見える。どの国もやっていることではあるんですね」
松村キャスター
「各国、それぞれ基準の年は違うのですけれども、日本の目標はこちらです。工場などの産業、自動車などの運輸、項目ごとに削減目標を立てていますが、その中で電源を由来とするものが5億4800万トンありまして、それを34%削減して、3億6000万トンとしています。その削減のために想定されているエネルギーミックスは、再生可能エネルギーが10%程度から22%~24%程度。原子力が1.7%から20%~22%程度。火力が87.6%から56%。このようになっています。井上さん、再生可能エネルギーの普及が前提となっていますけれども、どのように移行を促していきますか?」
井上議員
「まずこの前提として、この割合ですから、この外側に省エネというのがあるんですね。ですから、徹底的な省エネをやるということ、電力需要を減らしていくということ。それと、再生可能エネルギーを最大限導入するというのがこのエネルギーミックスをつくった時の目標だったんですね。そういう意味では、再生可能エネルギーもなかなか野心的な目標だと思いますけれど、これに技術革新であったりをたくさんやっていけば、マスの利益が出てきますから、コストを下げていくとか。それから安定供給という意味では、不安があるものですから、それも系統を整備するとか、いろんな技術によって確保をしていくと。あらゆることをやって最大限導入をすると。それをやっていけば、不可能な数字ではない。難しいけれども、という数字ですね」
反町キャスター
「井上さん、前もこういう話を聞いたのですけれども、要するに、環境を守るのは大切だけれども、環境が残って、国が亡びるではダメですよねと、こういう話です。たとえば、再生可能エネルギーのコストというものの将来性や、原発をどのぐらいまで戻せるのかという見通しも考えたときに、意欲的な目標にチャレンジするのはいいのだけれども、安倍政権の最大の目標、国家の最大の目標というのは環境目標のクリアではなく、経済成長ではないですか。そこのバランスというのをどう感じていますか?」
井上議員
「まさに環境と経済の両立ですよね。これが本当に大きなテーマだと思います。ただ、社会的にも、環境と経済は相矛盾するものだという考え方はあまりなく、どうやってそこを調整していくのかという観点で諸外国もやっていますから。そういう意味では、環境がある意味、ビジネスチャンスにもなると。あるいはイノベーションの大きな契機にもなるということで取り組んでいくということですね」
反町キャスター
「竹内さん、いかがですか?環境と経済は矛盾しないのですか?」
竹内氏
「これまでの歴史的な経緯から言えば、当然のことながら経済成長をすればCO2排出量というのは増えてきたという経験があります。ですので、各国共にグリーン成長をするのだと言いながら、国内ではそういうことを言いながら、国際交渉になると、争って高い目標を掲げるかというと、そうではなくて、あなたの方がもっとやりなさいよということを言っているわけですね。当然そこを目指さなければいけないわけですけれど、それがそれほど簡単ではないということも皆わかっていると。ですので、それを解決するためにパリ協定にも技術革新が重要であると、技術の重要性というのが謳われている。革新的な技術開発という部分で日本が果たしていける役割というのは非常に大きく期待されるのではないかなと思っています」
反町キャスター
「原発の再稼働についてはどう思いますか?」
竹内氏
「2030年というのは時間軸的に非常に短い。今日にでも建設計画に着手しているような火力発電所、あるいは再エネでも地熱は10年先ぐらいにやっと稼働を始めるというものですね。ですので、現実的に考える必要がありまして、26%の目標を達成することであれば、当然のことながら安全の確認された原子力は再稼働を進め、このパーセンテージを確保できるようにするというようなことが必要になってくると」
反町キャスター
「ただ、その前提になるのが、新規の建設の計画、事実上ないわけですから。いわゆる僕らで言うと、定年延長ですよね。40年でお終いじゃなくて、50年働いてよみたいな。そういうことをやりながら、26%削減というのを達成するような方向に、国が向かっていますか?」
竹内氏
「その姿勢をエネルギー基本計画というのを3年に1度見直すと。そういう中で、本当であれば、来年春に第5次となるエネルギー基本計画がかかる。ここで国がどういう姿勢を示してくれるのだろうというのは私も関心を持って見ているのですが、エネルギー基本計画を改定するのかどうか、1年ぐらい改定が伸びるということはあり得る話である。ただ、見直されないかもしれないし、見直されたとしても今の書かれ方と同程度の書き方しかしないということになると、温暖化に対してどういう姿勢なのですかということを問われることになってくると思います」
亀山氏
「再生可能エネルギーのコストが高いと言われていますけれども、この10年間で価格が下がっていますし、現在、日本では再生可能エネルギーの中でも太陽光が1番中心的に推進されているわけですけれども、余っちゃっているんですよね。結局、天気がいいお昼などは発電され過ぎてしまって、使う人達がいないわけですよ。そういった需給のミスマッチが起きているということがもったいない部分です。そういうのをうまく活用できるようなシステムができると伸びしろがまだまだあるかな。ほしい人達を供給側に合わせるような制度ですとか、あるいは日本は電力系統が弱いですね、送電の部分が。それを強化するとか、そういった工夫をすることによって余地があると見ています」
井上議員
「電源構成の話は、いろんな観点があるわけですよ。コストで見るのか、環境で見るのか、100点満点の電源はないから、まさにミックスして、それぞれどういう負担で、どういう割合でやっていくかということだと思います。原発について言うと、エネルギーミックスも政府の方針ですね。しかし、政府の1番の方針は、原発については安全最優先ですよ。だから、ここだけは譲れないです。これは原子力規制委員会が世界最高水準の厳しい規制で認めたものだけを再稼動すると。ですから、その結果として22%、23%を確保できるかどうかということであって、安全性を軽視してエネルギーミックスの目標を追っていくというようなものではない、そこは誤解のないようにお願いしたいと」
松村キャスター
「二国間クレジットで全てのプロジェクト(90件)が成功したとしても、100年以上かかるという見通しなのですが」
井上議員
「二国間クレジットは日本政府がずっと主張してきたことで、これがパリ協定の中で認められたのは大きいことだと思っていまして、なぜかと言うと、日本は地球全体の中でCO2の排出量は3.8%に過ぎないです。ですから、どんなにがんばってもどこまで下げられるかという話ですけれど、日本の持てる世界最高水準の技術を他の途上国に提供していけば、もっと大きなパイの中で削減することができるわけですよ。そういう貢献を日本の国が世界に向けてしていくということが重要だと思っていまして、その1つの制度が二国間クレジットですね。ですから、私はこれを積極的にやればいいと思っていますが、ただ、パリ協定の中で残ったということだけであって、具体的な制度であるとか、どういう国が協力していくのか、そういったこともまだまだであります。数字も年間46万tだったら、これ(全世界におけるCO2削減目標)をやるのに何年かかるということになりますけれど、現在のプロジェクトだと小さいプロジェクトが最初は多いわけですから、認知度が高まれば、大きなプロジェクトでも実現することができていけば、削減量が増えていくわけですから、まさにこれからうまくルールづくりをして、賛同する国を増やして、実行していくということが必要だと思っています」
反町キャスター
「二国間クレジットは日本の成長戦略の一翼を担えると見ていますか?」
亀山氏
「日本の優れた技術を海外の方に体験してもらういいショーケースだと思うんですよね。現在あるプロジェクトだけで考えると寂しいかもしれないですけれども、1つやってみてもらって、すごくいいものだね、と思ってもらえれば、もしかしたら、JCMという枠組みを使わなくても、ドンドン日本の製品を使いましょうという話に結びつくかもしれないですよね。だから、呼び水として見てもらえたらいいと思います」

亀山康子 国立環境研究所社会環境システム研究センター副センター長の提言:『長期ビジョン』
亀山氏
「イギリスでも、フランスでも2050年にこれだけ減らすという目標を立てたうえで、2030年目標を立てたんですね。そこでは温暖化対策だけではなくて、街づくりとか、都市をどうつくっていくか、そういうのを全部合わせたうえで国土計画をして、こういうビジョンを示したいと思います」

竹内純子 国際環境経済研究所理事・主席研究員の提言:『精神論抜き』
竹内氏
「経済活動、あるいは人間活動と伴って必然的に排出されてしまう温室効果ガスをどうやって減らそうかということを考えると、現実的に考えていくということが必要で、適切に夢を見る。長期的にいい未来を描いていくということも大事なのですが、現実を踏まえるということと両輪でやっていく必要があるかなと思います」

井上信治 自由民主党副幹事長の提言:『日本のリーダーシップと国益』
井上議員
「パリ協定において日本のリーダーシップがまだ発揮できていないと思いますので、日本はせっかく世界最高水準の環境技術を持っているわけですから、それを活かして、政治の世界でも主導できるようにしていかなければいけないということ。それから、この問題がなかなか難しいのは環境と経済とか、理想と現実とか、あるいは公平性と実効性とか、矛盾するようなテーマが多いので、その中で日本の国益というものも考えてどう対応していくかということも重要だと思いますので、こういう提言をさせていただきました」