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2016年10月27日(木)
ドゥテルテ台風発達中 『暴言王』の正体解剖

ゲスト

中谷元
前防衛大臣 自由民主党衆議院議員
柴田直治
近畿大学国際学部教授
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

暴言王ドゥテルテ大統領の『正体』 日比首脳会談と『対日感情』
佐々木キャスター
「安倍総理とドゥテルテ大統領の首脳会談、主なポイントをまとめてあります。安倍総理ですが『南シナ海問題については国連海洋法条約などに従って、平和的に解決するために、日米同盟の重要性を確認』。しかし、ドゥテルテ大統領は『法の支配に基づいて平和裏に解決すべきだが、今は語るべき時ではない。時が来たら日本側に立つ』ということを発言しています。主な合意事項としましては、大型巡視船2隻の供与、海上自衛隊の航空機の貸与、インフラ整備などのために、およそ213億円の円借款を実施することで合意をしています。まず宮家さん、この成果についてどのように見ていますか?」
宮家氏
「まあまあではないでしょうか。ドゥテルテさんというのは、ナショナリストだと思っているんです。ポピュリストで反米左派ですよ、中身は。この3つが大事なので。現在、彼の頭の中にあるのは、もし間違ったら直してください。領土のこと、領有権のことがあるけれども、ごちゃごちゃ言わないでくれと。俺がやりたいのはフィリピンを良くしたいのだと。農業国であり、出稼ぎだけではなく、しっかりした工業国にしたいし、そのために日本、手伝ってくれと。そのためにお金も必要だし、中国が出すといったら出してくれると言うのだから、ごちゃごちゃ言わないでくれと。これはあと回しだと。だけど、だからと言って、領有権の問題について中国の言っていることを鵜呑みにしたのではありませんよ。今、言うべきではないんだ。来るべき時が来たらちゃんと言うから。待ってちょうだいと。こういうことでしょう」
反町キャスター
「それは信じていいのですか?」
宮家氏
「全部信じるかといったら、それは常に状況を判断しながら…だけれども、彼の反米左派の顔とナショナリストの顔、これを考えたら、反米だからと言って親中ではないですよ。彼はポピュリストなわけでしょう。国民が拍手喝采しなければいけないわけだ。ポピュリストで、ナショナリストが中国に領有権を譲りました、では、それで終わりではないですか。そういうことはできないと私は思う。その微妙なバランスを、トランプさんと違ってもっと頭が良いから、政治経験もあるし、さらには行政経験もある人ですから。それはうまくバランスをとりながら、彼が考えるフィリピンの国益を最大化しよう。それなりに、強かに、戦略的に動いていると私は思っています」
中谷議員
「就任後、いろいろと言動があって、心配していた向きもありますけれども、関係者は安堵したと。首脳会談は個人的な関係を確立することができて、大成功だったと思います。その中で特に首脳会談の冒頭、原稿なしで長時間、ドゥテルテ大統領が、日本が大好きだと。帰り際には兄弟よりも親しい関係で、日本の対応に心から感謝すると、非常に喜んで帰られました」
佐々木キャスター
「柴田さん、これを額面通り受けとっていいものなのでしょうか?」
柴田教授
「日本に対しては掛け値なく、日本のことは好きだと思います。これは間違いないです。アメリカも掛け値なく嫌いだと思いますけれども、日本が好きなことは間違いないですね。中国とは非常に戦略的にというか、合わせているという感じがしますけれど、日本に対する、この一種の愛というか、これは間違いないです。いろいろなアメリカに対する嫌いだというのは、両方とも、個人的な…」
反町キャスター
「彼が掛け値なく日本を愛する理由というのは何かあるのですか?」
柴田教授
「日本人とのこれまでの(交流)、まだ誰も注目をしていない地方の市長の時に、日本人と交流してきたことが大きいですね。特にダバオは戦前2万人ぐらい日本人が住む、日本人の大きな町があって、それは戦争で潰れたわけです。そのあと残った、日本人は帰るのですけれども、子供達、日系人、残されて非常に悲惨な思いをしたんです。ただ、その悲惨な思いをした日系人を日本国内のボランティア団体が非常に助けたわけですね。その人達、共にダバオでお世話になっているということで、ドゥテルテさんと交流をされて、日本に招待をして、すごく温かく、民間の方が接待をされたりしているんです。そういう個人的な想いというのが、私は非常に強いと思っています」
反町キャスター
「そうすると、先ほど、宮家さんに聞いたみたいに、いざとなったら、日本の側に立つというのは信じていいのですか?そういう質問はしない方がいい?」
柴田教授
「掛け値なしだと思います。ただ、その時が来ればという、この時はどういう時なのだというのはありますけれどもね」
反町キャスター
「まだ、と言われれば、それまでではないですか」
柴田教授
「それでも心情的に、日本と平仄を合わせて、共にという気持ちは変わらない。ただ今回も記者の質問の中で、あなたは日本が好きなのか、中国が好きなのかと聞かれているんですね。その時の答えというのは、いや、私はフィリピンが好きだと答えているんですね」
反町キャスター
「それは日本での質疑ですか?」
柴田教授
「それは日本に来る前です、フィリピンで。だから、フィリピン・ファーストというのは、それは宮家さんがおっしゃるように本当にナショナリストで、演説のしめで、必ず我が愛するフィリピンのために私はやるのだということを繰り返されているんです。ですから、日本は好きです。中国に対しては、これは付き合っていかなくてはしょうがないと思っている。アメリカは嫌い。でも、いずれにしても、フィリピンのための国益にとっては何かということは考えていると思います」

人物評と『超』高支持率
佐々木キャスター
「大統領の経歴を簡単に紹介をしていきます。大学を卒業してから、ドゥテルテさんは、ミンダナオ島にあるダバオ市の検察官を務めたあと政界に進出します。副市長を経て、1988年にダバオ市長になります。多選禁止規定に抵触するために、途中で下院議員や副市長になった期間を挟んではいるものの、7期22年、非常に長い期間ダバオ市長を務めています。この間、麻薬常習者が横行し、フィリピンの中で犯罪発生率が最悪と言われていたダバオの治安を劇的に改善したのが成果としてあげられます。今年の6月末にフィリピンの大統領に就任したと、こういう経歴になっていますが、国内からは圧倒的な支持率を集めていますね。支持が86%。不支持が3%。圧倒的にドゥテルテ大統領が、フィリピンでここまで支持される国内的な背景にはどういったものがあるのですか?」
柴田教授
「もともと大統領選出馬、昨年12月ですけれども、表明した時は(大統領に)とてもなるとは思わなかったんですね。それがなってしまったというのは、社会にフラストレーションみたいなのがあって、特に渋滞が酷いとか、町に麻薬中毒者が溢れていると、そういう状況がずっと続いてきた。それに対して他の候補では変わらないだろうと。と言うのは、他の候補は、ずっとマニラのエスタブリッシュメント層がずっと全ての大統領、これまでの、そこに属していたわけですね。その中でダバオという、地方の都市の首長さんとして実績をあげて、それを全国に広げると。彼の言った公約というのが、たとえば、麻薬の撲滅、汚職追放。それで社会にとにかく規律を持ち込む。それだけ規律のないところがある国だと思うんですね。ですから、それを持ち込むということに、フィリピン人が非常に期待をした。それをこのグローバル化の中で、国民の10人に1人、1000万人ぐらい出稼ぎに出ているわけですね。出稼ぎに出ていて、その出稼ぎに行った国というのはだいたい先進国ですから、なぜうちの国はいつまで経ってもこうなのか。前のアキノさんの時も結構、成長率は良かった。パフォーマンスも悪くなかったのですけれど、それでも渋滞が年々酷くなっているんです。だいたい私が見ていたら、アジアで1番酷いですけれども、通勤に3時間も4時間もかかると。ちょっとマニラでも外れたところに行ったら、そこで中毒者が、明らかにわかる人が、歩いている状況があって、それをダバオで彼はそういう悪弊を追放したと。だから、それを全国に広げる。それをやってくれるのではないかということで、最初はとても支持が集まらないと思われたメトロマニラ。マニラ首都圏とか、それから、中間層以上、これからも圧倒的な、要するに、その階層、地域にかかわらず、それでなければ86%もいきませんから。支持を集めている。出だしの、この3か月、4か月で4000人を殺したとか言われているけれども、実際死んでいるのですけれど、一方、タクシーの運転手に聞くと明らかに治安が良くなったと言うんです。特にタクシーで、マニラでホールドアッパーという強盗が多いのだけれども、そんなことをしようものならドゥテルテに殺されると。本当にそう思っているわけですね。それで相当良くなった、あるいは劇的に改善したという人もいるわけです。だから、この100日のパフォーマンス。海外から見たらとんでもないことをやっているという批判されているわけですけれども、国内では非常に上々だと。やってくれている。本当に実行をしてくれていると。現在の段階では思われているわけですね」
佐々木キャスター
「規律が行き過ぎて、恐怖に変わるということはないのですか?」
柴田教授
「もちろん、だから、あるのですけれども、人の命の値段が多少違うところもあるし、たとえば、大家族…」
反町キャスター
「それは安いという意味で言っています?」
柴田教授
「そうです。大家族10人の中で、庶民だと1人ぐらい、シャブ中みたいなのがいたりするわけです。そうすると、それが家族の足を引っ張っている。そういう人を排除してほしいと。シャブをやっている連中も、職はなく、仲間が誘うから、しているけれど、ドゥテルテが怖いからといってやめるきっかけになるとか、そう思っている部分があると思うんですね。だから、社会の規律を、日本と違って規律という点では、日本人の目からすると緩いですから、それはフィリピン人も外国の情報とか、自分が外国に行ってみて、グローバルスタンダードというのはある程度、感じていますから、それでこの国を何とかしなくてはという気分があって、それで彼にその夢を託している。改革、真の改革。これまでの人は選挙の時、良いことを言うけれど、結局、変わらなかったと。それをこの異様な政治家、剛腕政治家だったらやってくれるかもしれない。逆に言うと、剛腕でないと、この国は変わらないと。そう思っているのではないかと」
反町キャスター
「中谷さん、こういう政治を目指されているとは僕は思いたくないですけれど、こういうある意味、ウケている。ある意味、剛腕、危ない人。同じ政治家としての感想として聞きたいんですよ。どう見ています?」
中谷議員
「写真の目つきを見ていたら、目が据わっていますよね。迫力があるんです。今、田中角栄さんの本が日本で売れていますが、まさに田中角栄さんのような政治家を彷彿とさせます。と言うのは、言葉の使い方、それから、演説の迫力、実行力。そういう意味では、非常に待望していた政治家が出てきたということでもありますし、また、経歴を見ていますと、非常に地元の名門の大学で法律を学び、検察官をし、それから、警察を指導する教官をし、そのあとは市長を22年もやっているんですね。これだけ大衆にも支持されているということは、それだけの仕事をしてきたということです。それから、日本に来ても言葉の使い方。実に巧みで、たとえば、1番の注目は南シナ海がどうなるのかということについてはうまく日本の東シナ海を念頭に日本もフィリピンも同じ立場です。しかし、安心してくださいと。私達は時が経てば、必ず日本側に立ちますと。いわば三次元的な。普通は二次元で、地理的なこと、時が経てばということで三次元的なことで、こういった説得できるということは、非常に表現力にしても、説得力があるということで、まさに、日本で言えば、田中角栄のような、実行力のある政治家ではないかと」
反町キャスター
「たとえば、そこまで言うならば、もう1問。中谷さんが現職閣僚で、たとえば、外務大臣でもいいです、総理でもいいです。向かい合って話し合い、そういうことを言われた時に、こいつ一緒に仕事できるタイプと思いますか?」
中谷議員
「まず注目は人柄とか、人物で、この人は嘘をつかないのだろうかという信頼感ですね。話をしているうちに、そういうものが伝わるわけでして、こういった首脳会談、私も経験しましたけれど、この人なら信頼できるかどうかですね。そういう点では非常に、安倍総理との関係も信頼関係が構築できるぐらいの人物ではないかなという気はします」

『反米』因縁と歴史背景
佐々木キャスター
「今日の午後、ドゥテルテ大統領は、神奈川県の海上保安庁の基地を視察したあとのインタビューで、個人的な感情を述べています。この内容は、安倍総理との首脳会談でも伝えた内容ですが、『人権の問題では、私たちはヒモで縛られた犬みたいな扱いをされる。アメリカは餌を与えようとするが、私達が気に入れないことをすれば、餌を取れないようにする。私達は犬みたいだ』と。犬という言葉を使って表現をしています。柴田さん、それほど反米感情が強いのかということと、1件メールが届いているのですが、神奈川県の方からです。『アメリカの犬という発言は、日本への皮肉も込められているのか』ということですけれども」
柴田教授
「そんな裏はないと思いますね。その前に言っておきたいことは、彼のトークというのは非常に聴衆を惹きつけるトークがあって、大統領になったいくつかの理由があるのですけれども、1つ大きな理由は、彼の聴衆を惹きつける話術です。この話術というのは聴衆がいたら3分から5分に1回は爆笑を誘うような話術です。それが大衆にウケたということがあるのですが、それは選挙キャンペーン、つまり、国内でやっている時はいいですけれど、そのまま外交、中央政治の経験もほとんどない人ですよね。それが、国際舞台にきて、同じ調子でやっているというところがあるわけです。だから、もう71歳だし、そうキャラも変わりませんので、それをそのままやってて国際的な摩擦、特に欧米のスタンダードに合わない。オバマさんに言っていたような、暴言をされていると、これがきっかけとして、米比首脳会談がキャンセルになる。あれなんて常に言っているんです、ああいうこと。合いの手のように、4文字言葉みたいなことを、国内の演説でもボンボン入れているわけですね。それをそのまま確かに訳すと、そういうことになって、アメリカが過剰に反応、過剰反応だと思うのですけれども、キャンセルをしましたでしょう。だから、それも結構しこっていて、いろいろしこっていることが、どうもアメリカとの間で、個人的にしこっていることがあるのですけれど、最後は自分が力を入れていること、麻薬撲滅キャンペーンに対して人権批判しかしないということのうえに、ちょっとした言葉使い。いつもやっている言葉使いで、キャンセルをされたというのがあるわけです。キャンセルをされて、ちょっと謝ったのですけれども、謝ったあとに…」
反町キャスター
「それは本人ですか?報道官のコメントですか?本人が誤ったのでしたか?」
柴田教授
「報道官からのコメントだけれども、一応、本人もまずかったかなというのがあって、その後オバマさんと控室で、ASEAN(東南アジア諸国連合)で会っているんです。それで、私、新任のドゥテルテです、みたいなことの挨拶をしたんだけれども、その時に、オバマさんがフィリピン側の報道によるとですけれど、その時に部下があなたと話すからと言った。これにカチンと来たことから始まっていたんですね」
佐々木キャスター
「相手にされなかったという感じなのですか?」
柴田教授
「そう、その時に、あれでその後のアメリカとASEANの首脳会談というのがあったのですけれども、それを欠席して、だから、取り繕って、周りの報道官は頭痛だと言ったけれども、あとで帰ってきて、バラしているのだけれども、あんなの頭痛なのではなかった。意図的に欠席をしたのだと言ったんですね。その間に自分のパソコンで、100年ぐらい前の米比戦争の頃に、アメリカが残虐にフィリピン人、特にミンダナオで殺した写真をどこからかとってきて、それをプリントして、それで事務方が用意した南シナ海の原稿を打ち捨てて、それを配って、東アジアサミットではその話しかしなかったわけですね。だから、それは低レベルと言えば、そうですけれど、フィリピン国民から、おっさん、また、やっている、という感じですけれども、それが国際舞台ではそうはならない。でも、それがだんだん言っていくうちに、自分で喋っているうちに、ドンドン自分で盛り上がるタイプだと思うんです。それでドンドン反米発言もエスカレートをして、それで引くに引けないというか、引かないという状況になっているだと私は見ていますけれども」
反町キャスター
「これはよその国の人が、こうやっていると面白いね、で済むレベルでいいのか。もうちょっと深刻に、我々にも火の粉が降りかかるとみる?どう感じますか?」
宮家氏
「その前に、一言言いたいのですけれども、彼のアメリカに対する気持ちを見ていると、愛情と憎悪が重なっているんです。アメリカが好きです、と思います。だけども、アメリカのやってきたことというのはまったく彼が望んでいたことではないと。つまり、アメリカは自由で、民主主義で、人権を保護して、対等な、神の下で平等だと、そう扱っていないではないか俺達のこと。そういうところから始まっていると思うので、その意味で、愛憎ですね。そのうえで今回、見ていて面白いなと思ったのだけれども、フィリピンは、間違っていたら教えてください、フィリピンの人には申し訳ないのだけれども、スペインの悪いところとアメリカの悪いところが混ざっちゃったような感じなんですよ。つまり、自由民主主義をやっているのはいいのだけれども、本来この地域の国が発展しようと思ったら、何が必要か、開発独裁ですよ。だけど、フィリピンがこの地域で遅れてきた最後の開発独裁国家なのよ。やろうとしているのこの人は。この人の理想は、リー・クアンユーでしょう。つまり、ああやって規律をきちんとして、ビシッとやって、違う国にしたいのだろうと思うのだけれど、それは他の国だったら許されるんですね。勝手にやっちゃうから。だけど、アメリカが民主主義を導入しているでしょう。人権も保護しなければいけないでしょう。できないんですよ。それでまたがちゃがちゃ言われたら、それでは何をしたらいいのだと、ふざけるなと。この憎しみの部分が出てきてもおかしくないなと思っていて、それは確かに人数は少ないかもしれないけれど、フィリピン人の心のどこかに流れている気持ちではないかなという気がするんです」
反町キャスター
「ドゥテルテ大統領は行った場所、行った場所で違うことを言っているようにも聞こえますよね。中国に行った時にはアメリカと決別すると言ってみたり、日比首脳会談ではアメリカと外交関係を断ち切るわけではないと言ってみたり、その場、その場で1番ウケのいいことを言っているようにも聞こえますし。これを発言のブレと見た方がいいのか?ないしは、ドゥテルテ大統領はどこに行っても変わっていないと見た方がいいのか?どう見たらいいのですか?」
柴田教授
「ブレまくっていますよ。ブレまくってるし、言っていることが変わっています。それを1つ1つとり上げて、論評しても、あまり生産的ではないと思っていて、いくつかの発言を積み重ね、だいたいこの人はこういう人なのだなと見ないと、1つ1つ、アメリカとセパレーションと言って、言ったけれども、すぐセパレーションは、おそらくフィリピンはカトリック国で、ディボースというのが、離婚ができなくて、皆セパレーションと言うんですよ。だから、そういうことでセパレーションと言ったのではないかなと思うのですけれども」
反町キャスター
「決別ではなくて、別居みたいな感じ?」
柴田教授
「そうですよね。正式な夫婦関係にあるアメリカと離婚ができないから、別居みたいな感じではないかと思うけれども。1つ1つを、どういうのですか、この3か月の間でも、1つ1つの彼の言っているセンテンスをそれだけで受け止めると、非常にブレが出るのではないか。だから、全体として日中米というので言うと、アメリカはそうは言っても、とにかく嫌いだと。その嫌いだというところをスタートにして、関係をどう築いていくかということになっていると思うんですね。日本は好きだ。中国に対しては、かなり中国のところだけは非常に戦略的にやっているなという感じがするわけです」
反町キャスター
「ただ、フィリピン・ファーストと、フィリピンの国益が第一と言っておきながら、アメリカと事を構えるということは矛盾をしていますよね?どこかで、必ず矛盾が出てきますよね?」
柴田教授
「そうですね」
反町キャスター
「フィリピン・ファーストと言うのだったら、必ずどこかでアメリカと同調、ないしは連携しなくてはいけないというのは、これは本人も当然わかっているとは思うのですけれども、その落としどころ、どう見ていますか?」
柴田教授
「ただ、現在言っている状況で言えば、国交を断絶するわけでもなし、条約を改定するということまでは言っていないので、言っているのは、合同演習はやめるとか、パトロールをやめるということは言っていますけど、それをやめたところでフィリピンにとってそれほど失うものがあるかと本人は思っていると思うので。安全保障面、軍事面でどれだけ影響があるのか、ドゥテルテさんとしてはおそらくそれをやめても。もう1つは、アメリカに対して、そんなことを言うけれども、これまで何をやってくれたんだというところがあると思うんですね」
反町キャスター
「だって、1回出ていってくれと言って、中国が来たら困るから、戻ってきてくれとアメリカに言っているではないですか」
柴田教授
「それは前の政権ですよね」
反町キャスター
「前の政権がやったことだから自分は関係ないという立場をとるのですか?」
柴田教授
「それはそうですよ。もう政権が代わったら、今度おそらくアメリカだって、トランプさんに代わればまったく変わるのと一緒で、フィリピンはそういう面で、大統領の権限がすごく強いですから。代わってしまえばスタッフも全部入れ替わりますし、政策も総取り替えだと思うんですよ」
反町キャスター
「中谷さん、2年後には我が国から外国の兵隊は出ていってくれと言ったのですけれども。1回出ていってくれと言って、スービック、クラークをあけて、中国が出てきたのはやばいというので、またいろんな意味で戻ってきてください、演習使ってください、港を使ってくださいと言って、戻ってきたと。この関係がまた出ていくことになったら、防衛大臣として聞きたいですけれど、あの地域の安全保障上のバランスはどうなりますか?」
中谷議員
「力の空白ということで、ベトナム、フィリピンから米ソがいなくなった途端に中国が進出をしましたので、バランスオブパワーの面ではアメリカは必要です。日本もそのことをドゥテルテ氏には今回もおそらく説明したと思います。しかし、ドゥテルテ氏が大統領として、いろんな想いを持ってああいう発言をしていますので、ああいう発言の裏には、本人が言ったように注目をしてほしいのだと。彼が1番やりたいことは、内政をきちんと治めるという意味で、麻薬撲滅と、それから、汚職の撲滅。銃社会ですから、こういった銃の規制もやりたいと思いますが、彼は本当に大統領として必死にやっていると思うんですよ。麻薬をなくしたり、汚職をなくしたり、一生懸命やっているのに、他の国がとやかく言って自分がやっていることを邪魔してもらいたくないという苛立ち、こういう想いがあって、敢えてこういうことを言って、先ほど、説明したように、これはこういうことでやっているのだということをわかってほしかったのではないでしょうか」

『対中接近』 本音と戦略
佐々木キャスター
「先週行われた、フィリピンと中国との首脳会談で、合意されたもの、中国外務省の発表資料からまとめています。それによりますと、南シナ海の問題は一時棚上げすると。インフラ建設など中国による経済協力を、およそ2兆5000億円規模で行うと。これはフィリピンの国家予算の3分の1に当たるということですね。フィリピン産バナナなど果物の輸入が解禁されるということが発表されています。これに関しましては、宮家さん、外交的にどちらが勝利したと言っていいのでしょうか?」
宮家氏
「長い長いプロセスのある外交の一部分で、勝った、負けたと言っても、意味がないと思います。今の話で1番気になっているのは、ある時が来れば、話をすると。対話をすると言うけれども、言いたいことを言わせてもらうということでしょう。その時期は10年後、20年後ではないかもしれないですよ。僕が1番心配しているのは、フィリピンのクラーク基地から200kmちょっとしかないところにあるスカボロー礁という、中国が2012年の段階で事実上、確保をした礁があるわけですよ、岩がね。そこを中国が本気で南と同じように、埋め立てを始める。滑走路をつくる。そうなると、おそらく中国の本土に近い島と、それから、最近つくった島と、3つを三角形で結ぶと、かなり点とか、線ではなくて、面を確保できるようなものができかねない。そうなった時に、まさにフィリピンがその時、どう対応するのかというのが求められるわけです。彼は気の長いことを言って、まだ外交のことはよく知らないから、もし彼が中国に対して、ああいう態度をとったことが中国に対して間違ったメッセージを送ったことになったとした場合は、中国は少なくとも、中国は習近平氏ではないかもしれないけれども、人民解放軍の一部の人がスカボロー礁は大丈夫だとなって、誤算をした時に、この地域で、1つの局面が出てくる可能性はあるわけですよ。その時に、フィリピンの大統領はどう対応するのですかというのが比較的早い段階で出てきてもおかしくないと、私は思っている。だから、心配をしている」
反町キャスター
「棚上げだよ、それでいいよ、バナナ買ってくれるよと、そこまで話をまとめたあとに、宮家さんは、中国はスカボローに埋め立ての船を出す可能性がある国だという話をされました。中谷さん、中国という国をどう見ていますか?」
中谷議員
「中国は国際社会の中でもリーダーとして振る舞わなければいけません。だから、再三再四、国際法に従うということを主張しています。中国はそれに従わないことによって、中国が困るという状況になっていくと思いますので、そういったことを続ければ、中国は非常に国家の信頼を失い、他の国とトラブルになっていくということに気がつくように、国際社会で連携した動きをとると。そういう意味で、ASEANとか、フィリピンとの関係は、現在はなかなかすぐにフィリピンもできないという状況がありますので、外交というのはこちらのことを言うことも大事ですけれど、向こうの立場も理解をしたうえで、しかし、そのうえでどうするかということを考え、粘り強く、フィリピンとはそういうことを話し合っていくということだと思います」

日本・フィリピン関係の行方
反町キャスター
「今回のドゥテルテ大統領訪問中に中身が詰まったものがこの2つです。日比防衛協力協定と日比防衛装備品・技術移転協定。具体的には航空機の貸与でありますとか、巡視船の供与でありますとか、護衛艦、潜水艦などが、フィリピンの港に寄港すること。共同訓練、フィリピン軍の能力構築実施など、いろんなことがあるのですけれども、中谷さん、この内容をどう評価されますか?」
中谷議員
「これは前アキノ政権時に日米の話し合いもありましたが、日本とフィリピンがこういう協定を結んで、フィリピンの能力向上、これをはかるし、TC-90という航空機ですね、こういった偵察をしたり、警戒監視をしたりする能力がありませんので、日本の練習機、それを貸与したり、また、沿岸警備艇を供与するというようなことで、防衛協力、それプラス、キャパシティビルディングという能力を向上させるような支援。たとえば、パイロットの訓練を日本で行うとか、そういった1つ、1つの内容について政府間で協議をして合意をしました。政権が代わったわけですが、今回、首脳会談をしてその内容で協力をしましょうということに合意をしたということです」
反町キャスター
「アメリカとフィリピンの防衛協力が破綻しないように日本も努力しなければならないという話になっていくのですか?」
中谷議員
「その通りです。必要以上にフィリピンとアメリカの関係を悪化させるということは、フィリピンにとってプラスにならないと思います。しかし、日本ができることというのはフィリピンのそういった支援をすることで、フィリピン自身の能力を向上させて、トラブルとか、紛争がないように、岩礁もフィリピンの領域に入っていますからね。そういう意味で、フィリピン自身が力をつけることによって、この地域が安定するようにしていきましょうと。地域全体の協力によって、地域を安定させていこうという狙いがあって、そのことに対してドゥテルテ大統領も同意をして、約束をするということだと思います」
宮家氏
「1番のカギは巡視船の供与ですよ。巡視船というのは、海軍ではないです。それは沿岸警備隊、日本で言えば、海上保安庁ですね。島の喧嘩というのは軍隊を使うというのは最後の手段なので、基本的には海上警察能力の競争です。中国には公船がいっぱいある。それに対してフィリピンは巡視船、もしくはコーストガードの船は弱いから、まずは巡視船を供与して、巡視船の能力、すなわちフィリピンの海上保安庁に相当する部隊の能力を向上させることがこの地域において安定を、つまり、中国を抑止できる、軍ではないですよ。バランスをうまく維持することが大事だと思うので、その意味での協定だと理解した方がいいと」
柴田教授
「心配です。日米比と組んでいれば、アメリカを補完する形でコーストガードにしても力をつけてもらうというのはあり得ると思うのですが、フィリピンがアメリカとは引くと言っている。その中で日本とフィリピン、つまり、日本だけが助けるということになるんですね。海軍にも船がほとんどない、フィリピンというのは。その中で、今度は巡視艇を全部で12隻出しますけれど、フィリピンの海軍が嫉妬しているわけですね。なぜ俺達よりいい船がコーストガードにあるのだと。それで、南シナ海でパトロールして、水かけあう船が日本の船ですよ。そういうのが火種にならないのかと。もう1つ懸念というのは、今回、中国でドゥテルテさんが13ほどのMOU(了解覚書)を結んでいるのですが、その中の1つに、中国とフィリピンのコーストガードが協力していこうと言っているわけですよ。一部報道では中国と共同パトロールという話も、南シナ海で。詳細がわからないので判断つきかねるところもあるのですけれども、それが現実化すれば、フィリピンから出て行く船は日本があげた船ですよ、これはおかしくないですか。中国と向き合って、中国に対するカウンターパートとして、日本も船を出す、教育すると言っている時に中国と合同演習で日本の船が出て行くといったら…」
宮家氏
「コーストガード同士の協力というものが直ちにそういう形になるわけではない。もう1つの可能性としては、コーストガードがお互いに知り合うことによって信頼醸成というものが育まれる可能性がある。それによって不必要な、もしくは誤算に基づくような衝突を回避する可能性が出てくるのも事実です」

中谷元 前防衛大臣の提言:『ミンダナオ和平・バンサモロ創設』
中谷議員
「これはイスラム自治政府のことです。前アキノ政権で行っていたのですが、フィリピンの1番の悩みはテロ、治安、銃社会です。ですから、これを収めるために連邦制をつくりたいというのがドゥテルテ大統領の3大公約の1つです。こういった面で日本が支援をしてあげれば、大統領との信頼関係も強くなるということで、このミンダナオというのをキーワードにしたらいいと思います」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『フィリピン人の心の声を聴く』
宮家氏
「この大統領は、言い方が悪いけれども、フィリピンの屈折した感情の産物なんですよ。ですから、我々が大統領の心(の声)をよく聞く、フィリピン人の心の声を聞くことによって、本当のフィリピンと日本の良い関係がつくれると思うので、彼(の心の声)をよく聞かなければいけないということです」

柴田直治 近畿大学国際学部教授の提言:『間違いなく発展する大事な隣国 目線を合わせておつきあい』
柴田教授
「フィリピンの国民の平均年齢は23歳、昨年に1億人の人口を超えました。2050年で、アジアで少子化していないのはフィリピンだけなんですね。これから人口ボーナス期がずっと続きますし、間違いなく発展する国です。しかも、隣国です。韓国とか、中国だけを思い浮かべますけれども、重要な隣国です。ぜひ同じ目線に立って、おつきあいをしていけばいいと思います」