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2016年10月26日(水)
『過労死』なくせるか 再発防ぐための方策は

ゲスト

田村憲久
前厚生労働大臣 自由民主党政務調査会会長代理
川人博
弁護士 過労死弁護団全国連絡会議幹事長
櫻澤博文
産業医 日本産業衛生学界指導医

『過労死』なくせるか 悲劇の実態…労災認定基準
石本キャスター
「広告代理店最大手の電通の新入社員が過労自殺をした問題が明るみになって、あらためて過労死という問題が大きな問題となっています。どのぐらい過労死が起きているのかと言いますと、労災の申請数と認定数をグラフにまとめました。脳や心臓疾患による死亡と未遂を含む自殺を合わせた労災申請の数は、この10年で、若干の上下はありますが、ほぼ横ばいで、昨年度は482件ありました。そのうち、労災認定された数は、脳、心臓疾患による死亡は96件、未遂を含む自殺は93件、合わせて189件でした。認定数と申請数の数に倍以上の差があるのですけれども、この認定される死とそうでない死というのは何を根拠に決まるのでしょうか?」
川人氏
「現在の厚生労働省の考え方では脳・心臓疾患の場合には、時間外労働が1か月80時間以上かどうか。というのが、1つの目安になっていますね。それで精神疾患、自殺のケースは、およそ100時間、時間外労働が100時間以上あるかどうかを、1つの重要な目安にしている。特に自殺に関してはそれ以外の様々な、パワハラとか、そういうストレスの問題についても考慮して総合的に判断をされていると、こういう実情であります」
反町キャスター
「たとえば、誰かが過労死と疑われる状況で、心筋梗塞で亡くなったとします。その人が過労死であると労災申請をしても80時間に達していなければ、その時点でアウト?検討対象から外されちゃうのですか?」
川人氏
「実情としては、厚生労働省の発表で60時間から80時間の間の人は他の要素を考慮して労災認定されているというケースはあります。他の要素とは、たとえば、とても暑い中、仕事をした。そういう労働環境なども含めて、他の要素を考慮して、認定しているという例はあります。ただ、60時間よりも未満ということになると、ほとんど認めていないというのが実情だと思います」
反町キャスター
「電通のケース、高橋さんの場合はどういう状況だったのですか?」
川人氏
「労働時間の問題に関していえば、私どもの計算では、1か月実質130時間以上の時間外労働があったと考えています。労働基準監督署は105時間ですね。100時間少しの時間外労働だったと認定をしたわけですね。ですので、一応、現在の認定基準を実質的にはクリアをしているということで労働基準監督署は労災として認定したと、こういう経緯だと思います」
反町キャスター
「数字の話なので数字の話をもう1回聞いちゃうと、たとえば、これが労基署が計算した結果、95(時間)だったと。ないしは90(時間)だったとなると、その時点で扱いが変わってくるのですか?要するに、100(時間を)超えていたら、文句なし、これは過労死だよというカテゴリーに入って話が進むものを、90時間という数字が、もし出てきたら、ちょっと待ってね、過労死の判定をする前にいろいろ調べなければいけないからと。その時点でワンステップ、ツーステップとフィルターがかかってくるということになるのですか?」
川人氏
「実際の、実務の現状では、概ね100時間。あるいは概ね80時間ということですので、たとえば、95(時間)という数字になってくると、概ね100時間に近づきますよね。ですので、時間外労働の数字が1番大きな要素になっていますが、実際にはそれ以外に、今回の女性のケースでは、上司のパワハラがあったという問題とか、その他、様々な事情を総合的に判断して、労基署は決めていると。そのように思っています。少なくとも現在の厚生労働省の関係では時間外労働は45時間を超えると健康に悪い影響を与えると。こういうふうに基本のベースは、そのようになっているわけですね。ですので、45時間以上という時間外労働は、これは基本的に健康に害を与える。このように役所の方も認めているわけですので、そうであれば、45時間以上の労働が死亡前にあったというようなケースについては原則としては労災として認める方向で考えるのが必要ではないか。そういうことによって労災が発生しないように、企業自身ももっと注意をするようになると、現在だと、たとえば、先ほどからおっしゃっているように、80時間に満たなければいいだろうということで、70(時間)くらい問題はないのだと。こういう企業の中の考え方が蔓延する危険もあるわけです。ですから、私はもっと労災認定の時間外労働の基準は低くして、それによって企業の予防を促進すると。そういう方向を、問題提起している次第です」

心のストレスと自殺
反町キャスター
「電通の高橋さんは、僕らの間でもその話が出るのですけれども、自殺の前に会社を辞めるとか、転職という選択肢はなかったのですか?」
櫻澤氏
「過労という追い詰められた、正常ではない状態だと、そもそも転職は思いつかないようになってしまうのではないのかなと思いました」
反町キャスター
「そういうケースが多いのですか?」
櫻澤氏
「たとえば、今朝も人身事故が、私が乗っている私鉄でありましたけれど、そういう時に、私もそうでしたけれども、周りの方々も隣のJRの駅まで黙々と歩いて行かれるわけですよね。そういう時に、皆さん方はどうですか?首都圏に雪が降った時にも休むという選択肢をとる人はいないのではないでしょうか。そういう追い立てられたという状況、迷惑かけるわけにはいかないという心理状態におかれて、そのあたりが本人を追い詰めていったのではないかなというのは想像できるのですが」
反町キャスター
「心を病む、その深さがだんだんと深まっていくとすれば、医療の立場から見た時に、ある程度の落ち込み具合だったら、そこまでなら冷静に転職も考えられるのだけれども、ある一定の深みを超えてしまうと、そういう判断ができなくなるという、ボーダーラインみたいなものがあるのですか?」
櫻澤氏
「ありますね」
反町キャスター
「それはどういう状況になると、合理的な判断ができなくなって、選択としては死しかなくなるというのは、どういうボーダーを超えた時にそうなるのですか?」
櫻澤氏
「たとえると、皆さんも仕事をなさっていらっしゃって、月火水木金と疲れますよね。土日で回復すると思うんです。また、月火水木金と疲れて、土日休みがとれたら回復するだろうと思いっていますから。それが過重労働で、休みがとれないとなると、月火水木金と疲れ、土日も出勤。さらに月火水木金に疲れていくと、ある一定の正常か病気かといった水面を超えてしまうと、もう正常な、余裕のあるような判断力が失われてしまうという、病気に足を踏み込んでしまうことになり得ます」

長時間労働是正の現状
石本キャスター
「さて、ここからは、過労死はなぜなくならないのか。過労死の原因や背景、対策について聞いていこうと思います。まず過労死の最大の原因と言われています、長時間労働についてです。1か月あたり100時間を超える時間外労働が疑われる企業などには、全国321か所に設けられています労働基準監督署が調査に入って、違法な場合は是正勧告を行うことになっています。たとえば、こちらのデータ。昨年の4月から12月の間、長時間労働が疑われる企業など、8530件を調査したところ、実に半数以上であります4790件に違法な長時間労働があったとして是正勧告を行いました。田村さん、電通の場合は、この是正勧告を2度出されていたにもかかわらず、この過労自殺というのが起きてしまいましたけれども、この是正勧告の実効性についてはどう考えていますか?」
田村議員
「是正勧告、何か法律違反があれば、ある方が多いですけれども、7割近くあると思うのですけれども、それを是正勧告して、企業がそれにちゃんと対応をしていれば、その報告を受け取って一応終了するわけです。やっていなければ、何回か入って、酷いという場合によってはいろんな処分にいくわけですね。行政処分ではなく、しっかりと司法処分までいくという一応建て付けにはなっているんです。その時は、ちゃんと是正報告というような形で是正しましたよということを、報告されているのだと思いますが、実態としてこれだけ悪質な状況ですから、それはもう一段の対応ということを考えるということがあっても良かったのかもしれません。ただ、厚生労働省も昨今では、かなり長時間労働に力を入れてきまして、私が大臣をやった時には、初めてブラック企業という言葉を厚生労働省で認めて、使ったんですよ。それまではブラック企業という名前は使わなかったんです、厚生労働省は。そういう名前はありましたけれど。それぐらい長時間労働はまずいよねという中で動いてきていますから。たとえば、平成27年度は100時間を超えた企業、これはいろいろと情報収集をしますので、そういう中で、たとえば、36協定も、100時間を超えて、特別条項を結んでいるようなところがあれば、そういうところは臨検し、いろいろな調査をやるみたいなことも必要だとやっていますし、それから、平成28年度からは80時間でも、これをやろうということで、80時間、残業時間を超えているところに関しては入っていこうということで、そこらへんのところは厳しい対応にはなりつつあります」
反町キャスター
「そのペナルティをどうすべきかという話でいうと、勧告と言いました。是正勧告をして、報告を受けて終了するという話だったのですけれども、食中毒を出したところはすぐに営業中止ではないですか。人が死んだ企業は、なぜ勧告で済むのかという人もいれば、たとえば、是正勧告を受けた会社というのは、企業名やら何やら全部公表はされていませんよね?」
田村議員
「司法処分になれば当然名前が出ますよね。是正勧告でも悪質だったら公表しようというので、これを初めて出しました。基準でいろいろ悩んでいるのだと思います。今回のような案件も含め、なるべく早くそういう形でペナルティを入れれば、それだけ抑制がかかるので、たぶん厚生労働省はこの是正勧告等々のあとの公表ということはいろんな検討を始めているのではないのかなと思いますね」
川人氏
「今回の問題に関して言えば、是正勧告が高橋さんの亡くなる前にまず出ていたということにとどまらずに、別の男性社員が亡くなって、労災認定もされていたという事実もあるわけですね。ですから、これは10年も20年も前のことでなく、直近の時期にあったにもかかわらず、このような非常に痛ましい事態が発生したと。ですから、私は、これは厚生労働省、あるいは労働基準監督署の担当行政として反省をしてもらわなければいけないと思いますし、現在、労働局が入って、立ち入り調査を行っていますが、本当にその反省のうえに立って、徹底して、きちんとこの問題は結論を出すべきであると。こう考えています。結局、現在の状況としては労災認定が出てもそのことは公表されないんです。今回のようにご遺族が記者会見して、発表してもいいという場合には世の中に知られます。私も労災認定が出たら、多くの遺族の方に、記者会見しますか、と必ず尋ねるんですけど、どちらかと言うとそこまではと。特に自死で労災認定をされた場合は躊躇される方が多いわけですね。ですので、労災認定が出ても、残念ながら、そのことは限られた関係者しか知らないというケースがある。この仕組みは、これでいいのかということです。ですから、是正勧告というレベルのことと、労災認定で、特に死亡が出たというのは、またレベルが違うんですね。今回の場合は両方あったわけですから。もっと何らかの対応をしておけば、昨年の秋までに労基署が対応しておけば、今回の死は防げたと。そういう可能性は十分にあったと思います」
反町キャスター
「労基署の、早めの対応のことなのか?ないしは労災認定がついた死亡ケースについて公表すべきなのか。2つの話をされました。どちらの方がより重要ですか?」
川人氏
「私は、労災認定については公表をすべきだと。過去、裁判をやりまして、関西の方で、第一審の裁判所は公表すべきだと判決を出したんですよ。ところが、そのあと、高裁、最高裁での結論が、そこまではということで、覆ったという経緯があります。でも、あらためて今回の事態を見ても、たとえば、石綿の問題、アスベストは全事業所について新聞で詳しく出ますよね。あそこまでできなくとも、そこはもっと公表をすべきで、何か企業に対して、企業のイメージダウンになってはまずいというので、変な配慮をしているのではないかと」
田村議員
「電通さんに限って言いますと、平成3年、いわゆる電通事件という自殺事件があって、その一連の流れの中で、確かにおっしゃられています通り、また今回という話になると、厚生労働省もいろいろと考えるところはあると思います。一方で、労災で死亡事故が起こった場合に公表すべきかどうかというのは、これはそのいろいろなパターンがあります。建設現場でもいろいろなパターンがあって、労災の死亡事故はあります。事実は、名前が出ているのですけれど、新聞に。ですから、それを行政が名前を出すというのがいいのか、どうなのか。自殺の場合は、先生がおっしゃられる通り、ご遺族が出したくないというので出さないという場合もある。でも、出しちゃうというのは、逆に言うと、ご遺族の想いと逆の話になっちゃうということもあって、全て行政が一律に出すのがいいのか、どうなのかというのは国民的にいろいろな議論をしないといけない話だと思います」
川人氏
「でも、ご遺族の配慮はある程度したうえで公表するやり方はあると思いますが」
反町キャスター
「匿名で発表をして、企業名を出すと、そういうことでしょう?」
川人氏
「そういうことですよね。いろいろなやり方があります。あるいは病名までは書かなくともいいです。死亡の労災認定があったということであれば、それほどストレートにプライバシーの問題には及ばない。いろいろな工夫をもっと厚生労働省にはしてもらいたいというのが私の考えです」
田村議員
「いずれにしても、これまで以上に、このような労働基準法の違反がある場合、いろんな対応を厳しくしていかないといけないことだけは確かですし、それは安倍内閣も同じ想いで、とにかく長時間労働によって、働く方々が疲弊して、心身ともに疲れ果てて、結果的に人生を台なしにされてしまうということはあってはならないことですから。これからより厳しく、厚生労働省は対応すると思っています」

過重労働と企業の体質
石本キャスター
「長時間労働など過度な労働を強いてしまう企業の体質について」
川人氏
「日本が敗戦後、欧米にキャッチアップしていくということで経済力を強化していくために、長時間労働を厭わないと、長時間労働をしても日本の経済を復興させるのだと。こういう中である種、長時間労働もやむを得ないという、そういう風土ができたことは確かです。ただ、現在の長時間労働というのは、ある意味ではそういった目標を持ってやっているというよりも、ただ、企業が生き残るため、あるいは個々の人が職を失わないためという、そういう意味での、長時間労働自体をポジティブ、ネガティブに区別をしてはいけないのですけれども、ネガティブな長時間労働というものが多い。それは精神的なストレスと結びついた長時間労働というものが日本の現状となっていると思います。ですから、風土と言った場合、戦後ずっと続いているけれど、現在の長時間労働の体制というのは、とても否定的な、つまり、生き残るために何とか目標を達成するために結果として長時間労働を続けていると、こういう実情だと思います。その状況を変えていくためには、そういった企業風土と言いますか、労務管理システム、あるいは働く側の意識状況を変えるための様々な手立てを講じていく必要があると思っています」
田村議員
「もともと日本人には働くことは美徳だみたいなところがあって、働くことを厭わない国民性もあったのかもわかりませんが、1つは終身雇用という働き方、これは2つ要素があって、1つは無限定の正社員にはホワイトカラーが多いですよね。無限定の正社員だと会社に残業というものを強いられることが非常に多い。そういう働き方になっている。一方で、終身雇用ですから、なかなか解雇されないという、そういう契約になっているんですよ。となれば、どうなるかと言うと、企業は忙しい時もあれば暇な時もあるわけですよね。企業の経営を考えれば、最低限のところで雇っておいて、忙しくなったなら残業をさせる。無限定ですから残業を受け入れるというような悪循環というか、そういう仕組みができあがっているんですよ。常日頃思うのは、ヨーロッパでも、アメリカでもすごく残業をやっている人達はいるんですね。経営者でやっている方々、大学も限られていますし、入った中では徹底的な経営者を目指した、そういうようなことをやっているわけです。日本の総合職は、昔は部長以上になれと言って、会社が大きくなりましたから、この国はドンドン広がっていったわけ、ポストができたわけですよね。ところが、現在は会社が大きくならない中で、皆、昔のようにやがては部長に、取締役にと思っていたのが、せめて子会社でもと思っていたのが、ポストがないと。だけど、働き方は無限定で幹部候補生みたいな総合職だと。だけど、気がついたら課長にもなれなかった、というような、戦後からの歪なしわ寄せがされてきて、顕在化しているんです、問題が。そこで働き方改革をどう考えるかいうのは結構、大胆な改革をしなければいけないと思います。解雇しにくいのならば、事後的金銭解雇解決というので、裁判に負けた時にいくらという話をやればいいという話ですけれど、ヨーロッパのように職種や職務で分かれていれば類型ができますから、これはだいたいこれぐらいの金銭解決の標準が出るのですが、日本の場合は同じ職種であっても、企業によって、企業の制約が違うんです。それぞれ裁判でそれぞれ判例が出てきて、ここはこういうものと個別に見ていかなければいけないので、簡単に金銭解決を類型化しづらい。そうすると、ヨーロッパみたいにするのかと。それがいいか、日本のようなのがいいのか、これは根本論ですから。ただ一方で長時間労働だけはどちらにしても是正しなければいけないというのは間違いないわけですから、日本の長時間労働を防ぐための働き方というものを、企業も、労働者もいろいろな意見を言っていかなければなりません、労働組合を含めて、政治も、行政も考えなければいけない時期にきているから、働き方改革というものを安倍内閣も提案しているのだと思っています」
反町キャスター
「働き方改革をして過労死を防ぐということと経済成長というのは両立するのですか?」
田村議員
「たとえば、10時間働いていた人が7時間に、3時間、その分だけ生産性が上がるかというと大変ですよ。労働投入量からすると減ってしまうんですよね。経済成長をするために労働投入量は大きな柱ですから、どうするのかというのは、機械化、ロボット、ICT、人工知能、いろいろなものを使っていかなければならない。日本はそこに力を入れていく分野ですから、そういうものを使いながら。一方、外国人労働者というものも野放図に入ってこられると、ヨーロッパで起こっているいろいろな問題が起こってきますから、どのように問題が起こらないように、いろいろな仕組みをつくって、外国人の方々のお力をお貸しいただく。女性がこれまではパートですとか、正規でなかった人が正規で働ける環境にする。労働時間が短くなれば、私も正規で働こうか、それでキャリアアップできるのであれば、それがいいねと思うわけです。高齢者も健康寿命が延びていますから、働く意欲があって、健康な方々は、高齢者もこれまでは週2日だったところを週4日働こうかと、総動員でやっていかないとここの部分は解決していかないと思います。これは政治が一定の方向性を示さないといけないと思いますね」

『ハラスメント』問題
石本キャスター
「職場でのパワハラ、セクハラも過労自殺を助長してしまう大きな原因と考えてもよろしいのでしょうか?」
川人氏
「そうです。極めて重要な促進原因と言えると思います。まず暴力があるんです。業績が上がらないと殴る、蹴るの暴行が実際にあるんです。そういうケースはさすがに労災認定になりますけれども、そういうケースが多い。ある職場で数字が人権だと言われている職場があったんです。うちの職場は成績を上げない人間には人権がないと、ある証券会社ですが。そういう数字が人権だと言って、業績が上がらないと殴る、蹴るの暴行。あるいは別のケースで、社長から業績が上がらないということで、上司が、管理職が怒られた。お前のせいで社長から怒られたと言って、殴る、蹴るの暴行を受けた。その人が亡くなったと。これは日記も残っており、労災認定もされている。日本ではまだまだ暴力、パワハラの最も酷い形態ですが、これがあるということを指摘したい。そのうえで次に言葉の暴力ですね。上司の方が建前としては指導として行うとしても、実際にはいわゆる嫌がらせ、人格的な侮辱、たとえば、給料泥棒だとか、営業の人にお前の車のガソリン代がもったいないとか。そういう罵倒を繰り返す。その末に亡くなったと。この人も労災認定されました。こういう暴力の数々がありました。今回の電通のケースでも残業代が払われているけれど、その残業代がもったいないというようなことを上司が言っているわけです。こういう上司による非人間的な、人格的な侮辱を伴う言動を伴うというのが過労自殺の重要な原因の1つになっていると。これが間違いない事実です。1990年代から2000年にかけてヨーロッパでは、こういった職場のイジメ、ハラスメントを規制する法律が次々とできていくのです。日本はこの点の取り組みが非常に遅れている。最近ようやくワーキンググループができて、様々なハラスメントの定義だとか行われるようになったのですが、もっとこれについては踏み込んでいく。現在はセクシャルハラスメントについては、法律できちんと規定されていますが、いわゆるパワハラというものについては法律上の規制、規定はまったくないと。ですので、ここは踏み込んで、法律の新たな制定を含め、是非政府には考えてもらいたいと、我々は主張しています」
田村議員
「暴力を振るえば傷害ですから、傷害罪になると。言葉も酷いやつは傷害罪に認定されるかもしれない。ところが、イジメというと、学校のイジメを司法処分できるかというと、できないですよね。そういう意味では、なかなか司法処分まではできないと。一方で、男女間以外のものはそもそも法律がないと。マタニティハラスメントに限っても、やっとこの間、法律改正で、会社がやっているのを知っていて見過ごしていれば、それは処分するというのに入った。たとえば、言葉の場合は、嫌な人に言われたらハラスメントですね。馬鹿野郎、このやろう、ろくでなしと言われても、そのあとでちゃんとフォローしていて、家族のような付き合いなら、課長を尊敬してますよという人間関係があるわけですよ。その言葉だけではなかなか事実として認定しづらいというのがあるのかもしれませんが、ただ、ハラスメントをこのまま放って置くというのは、日本の企業組織というものが、昔と比べ、全てではありませんよ、あたたかみのない企業が増えてきているのは事実ですから。そういう中においてはなんらかの対応を、法律が難しいのであれば、ハラスメントに対応する体制をつくっていくだとか、何かを考えないといけないのは事実だと思いますが、これは大きな課題のうちの1つだと思います」
反町キャスター
「言葉による暴力の影響力、どう感じていますか?」
櫻澤氏
「言葉の背景に相手を指導しよう、もしくは愛情を持っているかという違いではないでしょうか。従って、方法論の話になるのかもしれませんが、コーチングスキルといったトレーニングを、社会保険労務士の方々からサポートしてもらうとか、企業内における教育・訓練の場があると、上司の方はいかに部下に気持ちよく仕事をしてもらうかと、そこが生産性を向上する秘訣になるのかと」
川人氏
「40年前と状況が違っているんです。そういう現場の中で若い人達が、たとえば、顧客から、この製品はどうだと怒鳴られたり、公務員は公務員で様々なことを言われたり、メディアの人もいろいろな批判を受けたり、いい意味で、消費者主権とか、そういうのは大事ですけれども、日本は行き過ぎがあると思っているんですよ。お客様は神様ではないという、そういう価値観も一方では必要で、若い人達が働く条件を取り巻いている社会の環境が随分変わっていると、そういう中で若いメンバーが働いているということについての、(若い)世代の上のメンバーの理解というのが大切だと」

企業の意識と『働き方改革』
石本キャスター
「企業などが取り組む働き方改革ですが、退社時間の厳格化、朝型勤務制度、週休3日制を取り入れた企業があります」
反町キャスター
「何か他に具体的にこうしたらいいというのは?」
川人氏
「健康経営という言葉が研究者の間で使われるようになって、いろいろ研究も広がっているんですね。この考え方というのは、従業員の健康を大切にする企業が、健全な発展を実現する、こういう理念に基づいて、もちろん、労働時間の問題とかも含めて考慮するし、それ以外にも日常的な健康への配慮をする取り組みをしていると。ある会社は、ホームページで、どういう病気で療養しているかというのを発表して、それに対して自分達がどのように努力をして、改善しようとしているかという取り組みを発表して、それでオープンにして健康経営を目指している。それを堂々とホームページで発表している大手の会社もあるんです」
櫻澤氏
「企業に対する人間ドックみたいなものですね。法人に対する。健康度を確認することでどこを補強していったらいいのか、対策はどういう支援をとったらいいのかというあたりが見えてくると思います。私の感覚になるのですが、最近、多いのはキャリア。その人らしい働き方ができればいいのですが、それが叶わないような仕事を強いられていると心を病む人が増えているので、今年4月からキャリアコンサルタント、キャリアコンサルティング技能士といった資格を人事の担当者の方々に、私はとることを支援している次第です」

産業医 櫻澤博文氏の提言:『人生ワンモアチャンス ニャンとかなるさ』
櫻澤氏
「つらい状況があっても諦めずに、産業医、キャリアコンサルタントに相談してもらえたら幸いです」

弁護士 川人博氏の提言:『健康第一』
川人氏
「人間の健康、命が第一であると。このことを忘れずに、企業を経営し、私達は生活を営む必要がある。このことを強調したいと思います」

田村憲久 前厚生労働大臣の提言:『人らしい働き方』
田村議員
「機械でも動かし過ぎると壊れてしまうんですよね。人には感情というものがあります。幸せに楽しく働くこと。人らしい働き方が幸せにつながると。幸せというのが大事でありますから、働くことも幸せの一部、人らしい働き方であります」