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2016年10月20日(木)
『史上最低』大統領選 総力詳報…最終討論会

ゲスト

手嶋龍一
外交ジャーナリスト・作家
ケント・ギルバート
米カリフォルニア州 弁護士
海野素央
明治大学政治経済学部教授

トランプ×クリントン『最終討論』 女性蔑視と大統領の『資質』
秋元キャスター
「今回のテレビ討論会、現地の評価も既に出ているのですが、これまでの3回のテレビ討論会。それぞれどちらが優勢だったかというのをCNNが行った世論調査の結果、このようになっています。クリントン候補が今回、勝ったと考える視聴者が52%、トランプ候補が勝ったと答える視聴者が39%となっていて、3回の討論を経て、トランプ候補が差を詰めているという結果になっています。ただ、1回目と2回目に関しては、調査対象に民主党支持者が多いことを考慮しなければいけない点ですが、ケント・ギルバードさん、いかがですか?」
ケント・ギルバート氏
「僕は弁論部出身なので、弁論大会としては彼女の圧勝なのですけれども、だからと言って何だということですよね。彼女は、新しいことを何1つ言っていないですね。彼もそうですよ。泥仕合に過ぎない。僕は、何の参考にもなりませんでしたね。ただ、トランプ氏は非常に、信じにくいことをたくさん言うんですね。だから、すぐに陰謀論を持ち出すとか、それから、女性を知らないと、知らないはずがないです、一部に関しては知っているはずですけれど…とか。クリントン陣営が仕かけた謀略であると言うとか、そういうのはどうかわかりませんけれども、そういう姿は好きではないです。なので、私が思ったのは、クリントン氏は政策をちゃんと説明したんですよ。ところが、その政策部分を信用しないですね。ですから、上手だったというのは何の意味もないのね。このトランプ氏というのは表現力が全然ダメなんですね。文章、最後まで言わないんですよ。途中で次の文章に入っていく。通訳の方はすごく大変だと思うんだけれども、でも、自己表現力はないかもしれないけれども、彼の支持している政治思想というのは、私の考え方により近いかなという感じがしますね。ですから、本当に今回の討論会、意味があったのかなと思うんですね」
手嶋氏
「まったくないと思います」
ケント・ギルバート氏
「ないですよね」
海野教授
「今回の討論会を見ると、トランプ候補も、クリントン候補も自分達の支持者を固めることができたんですよ。1回目、2回目、3回目。そこが共通なんですよ。たとえば、トランプ候補にとっては熱狂的な支持者。クリントン候補にとっては女性、ヒスパニック系、アフリカ系を固めることができました。しかし、ここからです。無党派層を説得することができたのか。そうすると、バージニア州で個別の訪問をやったんです、無党派層を対象に。そうしましたら、ある白人の高齢者の方が悲しい選挙ですと言うんです。非常に悲しい選挙だと。それは、トランプは大統領になる資格がない。クリントンはメール問題で嘘をついている。私はジレンマに陥っていますという話をしました。もう1人は、34歳のクリントン陣営の標的となっている女性を訪問しました。その女性は、こう話しました。私はトランプ候補の国境の壁、アメリカとメキシコにつくる国境の壁に反対です。しかし、クリントン候補のシリア難民受け入れにも反対です、テロリストが入ってきますから。私はジレンマを抱えていますと言いました。つまり、無党派層、無党派層と言いますけれど、顔が見えないですけれども、個別訪問をやると顔が見えます。その人達は無党派ジレンマ層です。心理的に葛藤している人達です。ですから、無党派葛藤層とも言います。それが鍵になるんですね、どちらに動くかに。ですけれども、1回目、2回目、今回の最終の討論会を見た限り、動いたとは私は思いません」
反町キャスター
「無党派は未だに決めていないと見ていますか?」
海野教授
「決めていない人がいます」
手嶋氏
「全体から見ますと、無党派層がドンドン少なくなってきていますので、それは重要な要素ではあるのですけれど、ただ、1番面白いのが、その表がありますよね。濃いブルーが民主党に確定しているところですね。濃い赤も共和党にきましたから。大変面白いのは、実は共和党のジレンマ層というのがいるですね。これが大きなポイントなんですが、僕の隣にいるんですよ。ケント・ギルバードさん。ユタ州の出身ですね。コロラドとネバダの中間のところにあるんですよね。実はユタ州というのは大変保守的な土地柄で、従来で言うと真っ赤なんです。ここが共和党からひっくり返ることがほとんどない。この段階でこれを見て、ケントさんに、真っ先にユタがどうして薄い赤なのかということ、こういう人達がいるんですね。ギルバードさんもそうだし、ユタ州も本来ならば迷いことなく共和党に入れるというのですけれども、そこが揺れていると言うんです。僕が説明するよりもご本人に説明を…」
ケント・ギルバート氏
「揺れていますね。自分も投票用紙3週間前にいただいていますので、まだ書いていないです。私は前日になるかなという気がするんですよ。このままでは。毎日、毎日、新しい爆弾発言が出てきますから。だから、僕は、基本的に共和党です。家族中、皆そうですけれども、うちの女房はトランプがどんなとぼけた発言をしても、それを許すんですよ」
反町キャスター
「これだけ女性問題がいっぱい出ても、ケントさんの奥さんは許す?」
ケント・ギルバート氏
「どこのロッカールームの中でも、そういう話を男達はしているのだから。それよりもヒラリー・クリントンは犯罪をおかしているのであって。僕は一応、弁護士ですから、私が1番心配しているのは最高裁です。それも討論会の中で取り上げたのですけれども、最高裁判事を大統領が任命し、上院議員が承認するわけでしょう。そうすると、上院議員は現在、共和党だけれども、万が一、これが民主党になってしまえば、ヒラリーさんはリベラルな判事を任命することができるので、その人が民主党上院議員で承認されてしまえば、四半世紀変わらないです。その人が死なない限り変わらないんですね。ですから、そういう意味では、トランプ氏は、ちょっとあれだけれども、今度、最高裁判事がたぶん3人変わると思うんですよ。すごく高齢なのでね。それがすごく大事」
手嶋氏
「だから本来ならば共和党に言っているんですけれど、迷っている。まさにユタ州がそうなので、聞いたら、ユタは大変敬虔なモルモン教徒が多いですね。女性問題にとても厳しくて、その人達が迷っているみたい」
ケント・ギルバート氏
「ユタの女性はトランプ氏をあまり支持していないですね」
反町キャスター
「手嶋さん、揺れる共和党というのがもしあるとすれば、揺れる民主党というのはあるのですか?ガチガチの民主党の州だけれど、クリントンの偽メール問題が」
手嶋氏
「とても重要なところですね。クリントンさんは、予備選挙で、民主党の大統領候補になるのに散々苦しみましたね。それはバーニー・サンダースという、議会では民主党員ではない人に苦しめられるというか、若者の支持が十分にないということです。一方、共和党で言うと、プアホワイトという人たちが、もう何でもいいと、現状を変えてくれればと。アメリカの政治の底流にこれほどマグマが渦巻いているということですね」

『史上最低泥仕合』の責任と背景
秋元キャスター
「選挙結果を受け入れるのかという質問に対して、トランプ氏がそれはその時に考えると答え、司会者が選挙で負けたら勝った方を認めるのが伝統だと、あなたにはその用意ができていないと指摘をしたのに対し、トランプ氏は、今は何もわからない。その時考えると発言をしたわけですけれども、手嶋さん、トランプ氏が選挙結果を受け入れるかどうか。明言を避けましたけれども」
手嶋氏
「これは大変な発言と申し上げてもいいのだと思います。つまり、アメリカのデモクラシー、民主主義の根幹に関わるところですよね。どうして受け入れられないのかと言うと、目の前で繰り広げられている選挙キャンペーン。メディアが腐敗していると言いましたよね。メディアが捏造した材料で選挙を動かしていると。だから、自分は、その選挙結果を認めないと発言をしているんですね」
ケント・ギルバート氏
「それは事実ですよ。だけども、それによって彼が候補になったわけですよ。彼のために捏造したわけですよ、いろんな疑惑を」
反町キャスター
「それは共和党の予備選の時にですよね?」
ケント・ギルバート氏
「予備選の時に、メディアは彼をすごく応援をしたわけですよ。口を開ければ、すぐにニュースのトップになるんですよ。何を言ったって。民主党が言うのは次にくる。あるいは共和党の人達が言うことを報道するにしても、それがそのあとにくる。上げて、上げて、僕はずっと見ていて、これは危ない、これは落とすよ、最後に。視聴率のために。あまり上げ過ぎると視聴率がとれないから。下げるんですよね。また、視聴率をとる。それらのことはわかっているはずですよ、彼は。彼はおおいにそれを利用したのだから、今度は被害者だと叫んでいるのはすごく偽善者に聞こえますね」
手嶋氏
「これをヘビー級のボクシングの試合に見立てていただければ、ラスベガスでやる時は大変なお金がかかりますね。接戦でなければ、結果が見えているものなんか誰も見に行かないということになります。テレビも中継しない。だから、テレビメディアとしてはアメリカ大統領選をカバーするのに膨大なお金がかかっているということにもなりますし、今回のテレビ討論がその証拠ですけれども、8600万人が見ると言われていますよね。スーパーボールと同じぐらいの視聴率ということになりますから、興行が成立しなければ、まさに飯の食い上げになっているということになりますから、それはトランプ候補の発言をとりあげる。それは意図的にはとりあげないし、時に批判的にとりあげるのですけれども、しかし、全選挙キャンペーンの過程で70%以上が、トランプ候補の、まさに発言を、こうなると、どんなに批判的に取り上げられても、ドンドン支持率が、その結果として共和党の大統領候補になっていくということになりますよね。それを利用していたのだけれども、このところ、まさにそのメディアに裏切られて、せっかくいいところまでいったのだけれど、現に3回に渡るテレビ討論の直前は、支持率で言うと0.9ポイントというのですが、まったくの接戦ですよね。オハイオとか、フロリダ、むしろ勝っているというようなところにきていたのだけれど、始まってみて、この結果ということなので、今度はまさに居直っているということになるのですけれども」
反町キャスター
「と言うことは、手嶋さん、予備選の中で共和党の候補者リストを勝ち抜く時には、トランプさんはメディアの力で勝ち抜いた。実際に本選になってクリントンと向き合いになった時には、自分を攻撃しているということについて彼はフェアではないと言っているけれども、そのクレーム自体もフェアではないと思います?」
手嶋氏
「そうなりますね。従って、何がアメリカで起きているかというと、このように女性スキャンダル、その内容が問題ではなく、女性スキャンダルというものをクオリティペーパーとも言われるワシントンポストが、2回目の討論の前に切ってくるわけでしょう。もちろん、嘘である可能性もあったので、徹底した検証を、弁護士とも相談をしながらということになりますよね。こんなところで、あのワシントンポストが、女性スキャンダルというカードを切らなければ、クリントンが抜け出ることができない。メディアもトランプ候補という実態を明らかにできない。ここに問題点がある」
海野教授
「ただ、トランプ候補の支持者達、あるいは無党派層の中で、トランプ候補に傾いている人達というのはメディアを信じていないですよ。ですから、女性スキャンダルが出てきても、かゆいものではないですよ。と言うのは、女性スキャンダルが出てきて、トランプ候補がメディアは嘘つきだと言ったわけではないですよ。2015年の6月16日に立候補して、その時からメディアは嘘つきだと。集会の度に、あいつらが、嘘つきがいるとずっと言ってきたわけですよ。今になって言ったわけではないですよ」
反町キャスター
「共和党の予備選を勝ち抜くために、トランプさんはメディアの力を、希望したかどうかは知りませんよ。でも、利用はしていた?」
海野教授
「事実ですけれども、結局はファクトチェックがきかないですよ、事実関係のチェックが。トランプ候補の支持者達にはメディアは嘘つきということがしみこんでいる」
反町キャスター
「そこで問題になるのは、トランプさんが、メディアを利用したとか、利用されたとかということではなくて、メディアが実は1番権力があって、メディアが、どういうネタを出すかによって…」
手嶋氏
「ですから、嘘かどうか。まったく問題の本質ではないですね。ですから、嘘でも何でもとりあげられることが、今のトランプ候補の力の源泉になっているということになると、メディアは大変重要な責任を負っている。現に、それは僕らがそう判断をしているのではなくて、3大ネットワークのNBCの会長さんが、トランプをとりあげて、なぜ悪いのだ。その結果、視聴率がこんなに稼げて経営が成り立っているのだと本音を言ってしまっている」
ケント・ギルバート氏
「今回、面白かったのは、普通だったらトランプ反対、トランプ賛成。だけど、ほとんど全員、明らかに視聴率のためにトランプ氏を上げたわけですよ」
反町キャスター
「最初はね」
ケント・ギルバート氏
「はい。左側のメディアまでが。これはちょっと異常でしたね」
反町キャスター
「そうすると、ある時期、トランプ候補を持ち上げていたメディアが、ある時、手のひらを返したように落としにかかるというのは、国民から見た時のメディアに対する信頼度、きついですよね?」
手嶋氏
「おっしゃる通りで。従ってワシントンポストの例を見てもいいと思うのですが、日本で言えば、ニューヨークタイムズと並んで、大変なクオリティペーパーだと言われているワシントンポストがまさに罪と罰で、ずっと前から、そんな材料は持っているんですね。本当は切りたくないということですけれど、このままでいると大接戦ですから。怖くなったわけですね。アメリカのテレビメディアも新聞も、トランプ氏のことを一生懸命にとりあげる。接戦になって、ボクシングの興行は成り立っているのだけれど、まさに子供がちょうど火を点けて、ボウッとなって、怖くなって、ついにここで女性スキャンダル、決定的な見たくないようなカードを切ってくると。このことにアメリカン・デモクラシーの凋落を我々は見なければならない」

総力検証…米大統領選
手嶋氏
「アメリカ大統領選挙は、票が各州の選挙人270人、それが超えた段階で勝敗がつくのではないですね。負けたと見た候補がタオルを投げて、相手候補に電話をかけて、これで撃ち方やめにしましょうと。これがアメリカ民主主義の伝統、つまり、民意を受け入れるということになります。これをしっかり、しないと言っているんです。大統領選挙というか、民意を選挙で選ぶという根本のところにチャレンジした発言になりますね」
ケント・ギルバート氏
「大問題ですね。私達は発展途上国の選挙を見ていると、負けたけれども、それは不正の選挙だったから認めない。それで、デモをやるとか、これはよくあるではないですか。これはアメリカではあり得ないと思ったのですけれど、彼の支持者だったら、それはやるかもしれない」
手嶋氏
「重要なことをおっしゃったんですね。僕らは、アメリカの政治を散々批判してきたのですが、たった1つ認めなければいけないのは、アメリカは軍隊というものは選挙で選ばれていませんよね。いついかなる場合も、軍隊が政治に介入し、クーデターの素振りを見せたことがないと。このことだけはどんなにアメリカに批判的な人も認めなければいけないですけれども、こういう国でこの発言というのは、超大国のまさに末路というのが、残念ながら、ここに表れてくる大変危険な発言」
ケント・ギルバート氏
「あり得ない。あり得ないけれども、言ってしまうんですね」
反町キャスター
「言ったことが、たとえば、先ほどの話ではないですけれど、あの発言というのは、トランプの支持者、ないしは共和党の、いわゆるクリントンが嫌いという人にとっては心にしみる言葉になるのですか?今の一言は」
ケント・ギルバート氏
「それがそうなんですよ。そこが理解しにくいところでしょう。私は法律家だから、それは絶対に言ってはいけないことというけれども、それが響くんですよ。でも、だから、ブッシュ、ゴアの時、僅差で決まったのですけれど、本当に僅差、数百人ですね。最後に最高裁が決めたでしょう。その時、ゴアは認めたくなかったけれど、潔く敗北を認めますと言って終わったんですね。これで終わったんです。これをしないというのだったら、ちょっと大変です」
反町キャスター
「でも、このタイミングで、それを言うということは、もしかしたら、俺は、最後まで諦めないから、皆がんばれと、サポーターに対するメッセージと、そんなレベルの話ではない?」
海野教授
「ですけど、そのサポーター達というのは、大統領選挙をいかさまだと思っているんですよ。インチキ選挙だと思っていますから、トランプ氏に対する支持というのは大きい。しかも、その女性スキャンダルよりも、選挙そのものがインチキで、いかさまであると。だから、エスタブリッシュメントがつくった選挙ですから、それを潰さなければならない。変革の議論が、非常にトランプ候補は強いです、クリントン候補よりも。アメリカを、クリントン候補は、アメリカは偉大だと言っている。だけれど、トランプ候補は、アメリカは偉大ではないと。変革を起こさなければダメだという気持ちが強いです。ですから、トランプ候補の支持者は、トランプ候補に投票をすると言わない人がいるんですよ。我々は変革に投票するのだと言いますよ」
手嶋氏
「海野さんが言うような、反知性主義とよく言われるんですけれど、一切の事実そのものを認めない。これはまさにトランプもそうですよね。そういう潮流点は常にあるのですけれども、それが、心ある人達がそれを抑え込んできたというのがアメリカの姿で、しかし、そういう危険な潮流というのが、表面に出てきているのが、今回の選挙の大きな特徴です」

『ウィキリークス』と対ロシア
秋元キャスター
「両候補のロシアに対しての発言です。クリントン氏が、プーチン氏はアメリカ大統領という操り人形を持ちたいと思っているというのに対して、トランプ氏は、クリントン氏より賢い。アメリカがロシアと仲良くすることは悪くないとロシアに対して好意的な発言をしているわけですけれども、手嶋さん、こうしたトランプ氏のロシア寄りとも言える発言をどのように見ていますか?」
手嶋氏
「ロシア寄りというのか、ロシアそのものと言っていいのかもしれません。実は冷戦期を通じてですら、日本の外交の責任者もはっきり言っているんですけれども、アメリカとロシアの関係で言うと最も悪いというほど。最大の要因は、クリミア半島の併合にあるわけですけれども、こういう中でこれからかりそめにも大統領を目指そうという人達が、それらアメリカの外交基盤というのを全部無視して、プーチン寄りの発言をしているということになりますから、大変ここのところは深刻ですよね」
反町キャスター
「ただ、もともとこの話が出てきた流れを見ていると、ウィキリークスというか、クリントン候補が重要なものを一般のメールでやりとりしていたことについての情報に関する感度の悪さみたいなものが批判されてくる中で、その情報を流しているのはウィキリークス。その裏にロシアがあると、メール問題を通じて彼女の愛国心、国に対する忠誠心が問われるテーマを逆にロシアという外敵を持ってくることで、愛国心を愛国心で戦うみたいな、そこに持ってきて、愛国心を愛国心でやるのかみたいなロジックの展開。これはどう見ていますか?」
手嶋氏
「これもまったく前例がないのだと思います。当然のことながらウィキリークスにつながるという人達、ロシアの影響下にもあるということになりますし、かつインテリジェンスの戦いの主戦場がまさにインターネットのサイバースペースに移りつつあるという、当然のことながら、中国も、ロシアも、アメリカのインターネットのスペースに入り込んで、諜報活動をしているということになっていますし、国務長官はそのことについて恒常的にインテリジェンス機関から報告を受けていますから、かなり詳しく知っていますね。その点ではクリントンさんの言う通りということになりますよね。その結果、ロシア側が得たインテリジェンス、極秘情報はウィキリークスを通じて、誰が投稿したかわからないのがウィキリークスの最大の特徴ですから。そこに投げてやると、当然のことながらアメリカ国内にも、トランプ候補にも伝わるという、まったく新しい展開になっていきますね」
反町キャスター
「海野さん、クリントン陣営からしてみたら、メール問題で叩かれる時、いや、俺ら、私を叩いているのはロシアだと。愛国者である私を叩くのはロシアだ。ここの、僕は敢えてすり替えと思っているんだけれど、そこをロシアに持ってくるというのは、クリントン陣営からすると、いいカウンタープランなのですか?」
海野教授
「ええ、もちろんですよ。それは、私が注目したところは1回目の討論会、2回目の討論会で、クリントン候補が言わなかったことがあるんです。それがウィキリークスのことですよ。ロシアとウィキリークスを1回目と2回目は話していないんですよ、討論会の中で。ところが、今回、3回目でクリントン候補は初めてロシアのハッキングがあるのだと。実は昨年からクリントン陣営のメールが、ロシアによってハッキングされているという噂があったんですよ。あったんですよね。にもかかわらず、クリントン候補は黙って、黙って、1回目の討論会で言うのかなと思って言わなかった。2回目に言うのかな、言わない。今回初めて出した。クリントン候補が削除した3万3000通をロシアがハッキングする可能性があるんですよ。それがオクトーバー・ビッグ・サプライズになる可能性があるんです。それが怖いんですよ。怖いので、今回の最後のテレビ討論会で出た場合のダメージを小さくするために出したんですよ。怖いんですよ。メールがハッキングされているのが。ですから、これが、たとえば、11月に入り、あと1週間しかない時に出た場合、大きなオクトーバー・サプライズになるわけですよね。その時に対策をとっても遅いので、今出したんですよ。ダメージを小さくする。小さく、小さく持っていくために使った。3回目で使ったんですよ。ですから、1回目、2回目で使わなかった」
反町キャスター
「ただ、もしも現状をこうやって見ても、普通にいけばクリントンさんが勝つと皆思うわけではないですか。大統領になったら、なるのだろうから、なった時にここまでプーチン大統領を名指しで、ロシアくそみそに言っているわけですよ。米ロ関係を良くしようとは…」
ケント・ギルバート氏
「それが、アメリカの公式見解ですよ。クリミアを併合したんですからね。でも、あの問題も変なので、あれはウクライナという緩衝地帯を置かないと、NATO(北大西洋条約機構)とロシアの間にこれが必要ですよ。NATOが入れないと約束していたのに、入れようとしていたわけ。そうすると、ロシアがそれを待ってと。それではこの港は使えないと獲っちゃったんですよ。だから、自分達がつくった問題なのだから。ですけれど、プーチン氏に対して制裁措置を現在とっているので、ロシアの経済はすごく苦しんでいるんですよ。そこに面白いことに、西側同盟のはずの日本が入ってきて、今度、安倍さんとプーチン氏が今度、話し合いをするでしょう」
反町キャスター
「クリントンさんが大統領になったら、要するに、日ロ接近をアメリカはもっと嫌がりますでしょう。安倍・プーチン会談なんて言うのは、11月8日に大統領が決まって、その直後、プーチンさんが日本に来る、どう見るのですか?」
ケント・ギルバート氏
「大統領になるのは1月ですから。その間にやればいいので」
反町キャスター
「ありとあらゆる不快感を表明しますよね」
手嶋氏
「それは非常に大きなポイントで、そのぐらい地合が悪いわけですよね。日本は北方領土問題がありますよね。ワシントンをどう説得するのか。同時にやっているのですけれども、しかし、そのためには北方領土問題で大きな進展がなければいけないのですが、言われているほど進展がないですね。そのことは、実はホワイトハウスもわかっていて、少しじっと見ている。中国もそこのところを見ていますね。それで非常に面白い、今回は、先ほど、言われたように、こんなにプーチン政権をあしざまに言って、どうするのだろうかというのが大きなポイントですが、それほど悪いので、当座のところ米ロ関係を改善するつもりがないと、その発言から見ていいと思います。いいかどうかはわかりませんが」
ケント・ギルバート氏
「改善しようと思えば、いつでもできます。制裁措置をやめればいいです。そうすると改善します。安倍さんとプーチンさんがもし合意ができて、日本とロシアが団結したら、それは中国を封じ込める形になるわけだから、アメリカにとってはいいわけですよ」
反町キャスター
「それはそれで歓迎してくれますか?」
ケント・ギルバート氏
「だから、できるわけないと思っているのだろうけれど、できた場合には、別に悪い結果ではないから、やってみてもらおうかなと」

同盟関係と核保有容認
秋元キャスター
「両候補が日本について触れた部分を見ていきますね。クリントン氏が、トランプ氏は、日本、韓国、サウジアラビアに、なぜ核兵器を使わないのかと言ってきたと批判したのに対し、トランプ氏は、自分で守れと言ったのだ。核とは言っていないと反論をしています。手嶋さん、トランプ氏が大統領になった場合、日米同盟というのは根本から見直すことになるのでしょうか?」
手嶋氏
「これは日米同盟の問題でもあるのですが、実はもっと大きな、アメリカが超大国であることをやめると言っているのに等しいですね。これは具体的に言いますと、戦後のアメリカの外交安全保障の最後の本音は何かと聞かれましたら、それは明解です。東アジアでは日本に、ヨーロッパではドイツに核のボタンを渡さないというのが超党派の一貫したアメリカの本音ですね。なぜならば、もしそんなものを渡してしまうと西側同盟の盟主たる地位が根本的に崩れてしまうということになりますよね。そういうことなんですが、トランプ発言というのは、まさに、いや、超大国をやめてしまう。それが、トランプ候補が言っているアメリカファースト。アメリカ第一主義というのはこういうことですよね。従ってよく核の問題に矮小化されているのですけれども、構図はもっと大きいんですね」
ケント・ギルバート氏
「まず全体的な話をしますと、トランプ氏は、地政学をわかっていない気がしますよ。アメリカにとって敵がいるとすれば、中国とロシアですけれども、その間にNATOと日本があるわけだから、アメリカはのんびりしていられるわけですよ。それを自分でやれと言っているわけですから、日本やドイツが敵側にまわる可能性があるわけですよね。そうすると、アメリカは孤立するではないですか。それが最悪の場合ですから、これは絶対にあってはならないことですからボタンは絶対に渡さない。これが戦後、一貫してきたものですが、彼はそれを理解していない気がする。だから、そこが1番僕は怖いと思うんですよ。日本が核兵器を持っては絶対にいけませんし、持ちたいという日本人が中にはいますけれども、僕は絶対に大反対。これ以上、拡散してはダメですね」
手嶋氏
「長い間ホワイトハウスを担当していました。実はホワイトハウスの住居部分で、寝室がありますよね。現在もオバマ夫妻はそこに寝ている。寝室に消えたあと、廊下のところにチタンレスが置いてあって、参謀肩章をつけた、軍事補佐官がアタッシュケースのようなものを持っている。あれは核のロックを外すという。普通の人だったら夫婦生活を営むことはとてもできませんよ、そのような中で。それがアメリカ大統領。その人に核を渡すかどうかということになりますから、アメリカ大統領が誰になるのかというのはケントさんの問題だけではなくて、僕らの問題でもあるんですね」
反町キャスター
「いかがですか?海野さん。ヒラリーさんはそういう心配はないです?」
海野教授
「もちろん、ないですよ」
反町キャスター
「安全保障上の日米関係に関しては、ヒラリーさんは、トランプさんがここまで言って、それがある程度、一定のアメリカの中で支持を得ていることを考えた時に、当然のことながらここまで進んできたアメリカ軍のいわゆるトランスフォーメーションみたいなものを含めると、だんだん日本に対する防衛要求というものは当然、クリントン政権ができたとしても変わらないですよね、流れは」
海野教授
「強くなるかもしれないですよね。トランプ候補に、例え、なった場合ですね。超大国の役割というのが大きく変わりますよね。パラダイムが変わっていくと。2008年に大統領選挙でマケイン上院議員が立候補をした時、カントリーファーストと言ったんですよ。そのカントリーというのはアメリカのことですよね。ファーストは第一主義ではないですか。ですから、米国第一主義ですよね。だけれど、トランプ候補の米国第一主義とはまったく違いますよね。グローバルな責任をとる米国第一主義なのか。それとも自国だけの利益を追求する米国第一主義なのか。カントリーファーストとアメリカファースト。似ているのですよ。2008年と2016年が。だけれど、意味合いがまったく全然違いますよ」

総力検証…米大統領選
秋元キャスター
「スイングステートを見ていきます。海野さんはオハイオ州に行かれていたとのことですが、雰囲気はいかがでしたか?」
海野教授
「クリントン陣営は投票率を気にしています。つまり、世論調査でリードしているのですけれども、投票率が下がった場合、熱狂的なトランプ支持者の方が投票に行く。クリントン陣営の支持者はあまり熱狂的ではないわけですよね。しかも、クリントンさんは異文化連合軍で勝とうとしています。女性、ヒスパニック系、アフリカ系、若者、同性愛者。ヒスパニック系とアフリカ系は貧困層が多いですよね。どういうことかと言うと、オハイオ州では11月8日、投票に行く場合、写真の入ったIDカードを持って行かなければならないですよ。運転免許証とか。貧困層は車を持っていないので、IDの入った証明書がないわけですよ。そこでクリントン陣営が投票率を上げる戦略をとっているんです。それが期日前投票用のコミットメントカード、お約束カードというものです。運動員がカードを持って、カレンダーがあるんですよ。オハイオ州は10月12日から投票を行っています。投票日11月8日の前日の7日まで投票できる。期日前投票ですと写真の入ったIDが必要ないんですよ。郵送でできるんですよ。ですから、クリントン陣営はとにかく期日前投票をさせて、そこで勝負をかけているんですよ。これが万が一の場合、投票率が下がると、ヨーロッパのようにエッという事態になると」
反町キャスター
「オハイオ州を獲った方で決まりなのですか?」
手嶋氏
「1964年以降オハイオで負けて大統領になった人はいませんし、その点で確かに。ジンクスではないですね。つまり、あそこに18人の選挙人がいるのですけれども、全米の縮図で。人種構成も、農業と工業の対比もちょうどアメリカの縮図と言いますか。オハイオを制したものが大統領選挙を制すと」
反町キャスター
「直近の調査を見ると、共和党が有利なのですか?」
手嶋氏
「現在、トランプさんが抜き返したと。ただ、一方、選挙人の予測を見てわかりますように、過半数270にクリントンさんもう一歩ですよね。従来よりも必ず勝たなければいけないかというのは少し疑問。しかし、やはり非常に重要。もしオハイオ州で落とすというようなことにクリントンさんがなりましたら、一般のプアホワイトと言われるような白人層の不満が大きい。それから、奨学金を十分にもらえずに大学にいけない若者もということになりますから、新しいクリントン政権の出発に1つの黄色いシグナルが出てしまうということですね」
反町キャスター
「不在者投票をされるのですよね?」
ケント・ギルバート氏
「それはもちろん、僕はします」
反町キャスター
「最後、何で判断されるのですか?」
ケント・ギルバート氏
「まだ決まってないです」
手嶋氏
「この討論を通じて、決めました?」
ケント・ギルバート氏
「僕が1番に考えているのは最高裁ですから。最高裁については保守にとっておかなければいけないから。議会選挙もありますから、その世論調査も見てみたいですよ」
手嶋氏
「最高裁のためにトランプ氏に投票するのですか?」
ケント・ギルバート氏
「という可能性はある。もし(共和党の)上院議員を落とすなら、上院議員が民主党に動くのだったら、大統領は共和党にしないと」
反町キャスター
「リベラルな判事が出ることに対して懸念を持っている?」
ケント・ギルバート氏
「そうですね」

外交ジャーナリスト 手嶋龍一氏の提言:『ニッポンなくして東アジアの安定なし』
手嶋氏
「『ニッポンなくして東アジアの安定なし』というメッセージをアメリカに伝えるようにした方がいいです。よく天気予報的な対米外交と言うのですけれども、雨になれば、どうなるのかと言うんです。お天気とかは左右できませんけれど、日米関係、東アジアの外交というのは日本が重要なプレーヤーですから、影響力を行使することができるということを申し上げたいと思います」

米カリフォルニア州弁護士 ケント・ギルバート氏の提言:『日本の国益を再確認』
ケント・ギルバート氏
「いちいちアメリカの顔色を確認しないで、日本がやりたいことをやってしまうということが大事だと思います。もちろん、同盟国ですから、アメリカの国益を完全に無視することはできないけれども、今度、プーチンさんと安倍さんがお会いするのも、この1つですね。本当に日本の国益を確認していないです、これまでは。アメリカの国益に合わせているわけだから。ですから、そのへんは方針転換ですね」

海野素央 明治大学政治経済学部教授の提言:『依存できない米国』
海野教授
「どちらの候補が勝っても依存できない。トランプ候補は通商に興味がある、安全保障に興味はない。通商と安全保障を取り引きするかもしれない。クリントンさんは、習近平さんを賞賛していますから、本音では強い態度では出てこられない。となると依存できないアメリカということになります」