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2016年10月19日(水)
ロボットが開く未来 成長寄与か雇用奪うか

ゲスト

比留川博久
産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センター長
井上智洋
駒澤大学経済学部経済学科講師
小宮山宏
三菱総合研究所理事長

ロボット&AIが開く未来 技術開発の現状と今後
秋元キャスター
「ロボット、AIと言いますと、最近は掃除ロボットとか、人型ロボット、さらにスマートフォンに搭載されている人工知能、AIなどが、私達の暮らしに身近なものになってきていますけれども、中でもAIが現在大きく注目されているんですね。人工知能ソフトアルファ碁が、今年3月、韓国のプロ棋士イ・セドル九段と対戦し、勝利しました。最近フィンテックという言葉、よく耳にする方もいると思いますけど、金融界でもビッグデータや、AIを駆使した新しいサービスが既に始まっています。自動車メーカーから、IT(情報技術)企業までが開発にしのぎを削る自動運転の核となる技術が人工知能、AIだと言われています。まずは比留川さんに聞きます。この人工知能、AI、どのぐらいのレベルまで技術が進んでいるのでしょうか?」
比留川氏
「人工知能がこういうブームになるのは3回目ですね。1回目はどちらかと言うと記号処理と言いまして、論理的にものを考える技術というのが1度、流行ったんですね」
反町キャスター
「それはいつ頃ですか?」
比留川氏
「1980年代です。2度目のブームの時はニューロコンピューターと言いまして、人間の、頭の働きを真似た、ニューロブームというのがありました。これが1990年代ですかね。2度ありました。今回は3回目ですけれども、技術的にもどちらも混ざっているんですよね。論理的にものを考えるという技術と、人間の頭の働きを真似るという技術が両方混ざっています。ただ、今回、技術的に1番違うとしたら、まずはビッグデータと言われるように、非常に大きなデータが集積されてきて、その分析が可能になってきているということが1つですね。それと計算機が圧倒的に早くなりました。私が就職した頃に比べると、だいたい3ケタから4ケタは早くなっていますね、計算機のスピードが。それ以前は全然できなかったことができつつあると」
反町キャスター
「たとえば、僕らの身近なレベルで言うと、どういうものが第1次人工知能ブームにおける身のまわりの産物?どのようなものがあると思ったらいいですか?」
比留川氏
「たとえば、その時に使われた技術だとカーナビがそうですよね。カーナビが、要するに、グラフと言うのですけれども、位置があって、それをグラフに見立てるというと、経路を探してくれますよね。そのような装置ができた技術が後々応用され、カーナビになっていますね。たとえば、当時だと、病気の診断をするソフトみたいなエキスパートシステムと言うのですが、お医者さんの知識を入れていって、病気の診断をするシステムというのも随分つくられましたね。それはあまり現在では使われていないと思いますが」
反町キャスター
「2番目の1990年代からのニューロコンピューターは、人間の頭のシステムだという話があった。これは、たとえば、カーナビや診断ソフトではなく、どういう判断ができるようになった結果、僕らの身のまわりにどういうものができるようになってきたのですか?」
比留川氏
「それはまだあまりないのではないかと思いますけれど」
反町キャスター
「まだ実用、僕らの生活にはあまり肌触り的にはきていない?」
比留川氏
「いや、たとえば、見守りのセンサーに、そういうニューラルネットワークの技術を使って、たとえば、認知症の人が徘徊したり、それから、起き出したりするというのを検知するソフトがつくられたり、いくつかトライアルがありますけれども、ちょっとどうですかね、非常に大きな製品になったというのはないのではないかと」
反町キャスター
「まだ製品化までにいっていない、技術的に、それを実用レベルにまだできていない感じなのですか?」
比留川氏
「そうですね。そのブームのきっかけになったのは、犬が犬とわかると。だから、画像を見て人間は犬だとわかりますが、これを機械にやらせますと大変だったんですよね。いろんな画像を見せて、これでこうですねとか、そういうのが現在のディープラーニングと言われるのでできちゃったんですよね」
反町キャスター
「それが、1990年代、ニューロコンピューターの、第2の人工知能の」
比留川氏
「同じ技術です。その同じ技術が、2010年代になってきて、計算機も早くなり、画像データもたくさん集められるようになったんです、インターネットが発達して。計算が早くなったのと、データの集積が進んで、ビッグデータというものが出てきましたと。そういった条件が揃ってきて、以前は難しかった問題が解けたりしてきたんですね」
秋元キャスター
「人工知能ですとか、AIの技術というのは、どこの部分を目指して開発しているのですか?次、これができるようになるところを目指しているとか」
比留川氏
「専門的にはいろいろあるのですけれども、基本的にはまず実問題をどう解くかというのを、トライアルしているのだと。実問題です。実際の問題。たとえば、先ほどの碁ですよね。どうやって碁を打つか。その手法というのはそんなに昔から変わっているかと言うと、そんなに画期的に進んだわけではないです。だいたいこういうブームがくるきっかけというのは最低、これまで解けなかった難しい問題が突然、解けるんですよね。あんな難しい問題が解けたのかということでブームがくるんですよ、これまでは。でも、ブームが終わってみると、実は最初に偶然解けた、それだけしか解けなかったよねという場合が結構多く、あまり世の中を変えるというところまできていないですよね。今回3度目のトライです。それでどうなるかと言うのはわからないですけれど。圧倒的に違うのは、手法がすごく良くなったということよりも、データですよね。Googleなり、Twitterなり、日本だとポイントカードなどで非常に大きなデータが集積されるようになってきましたね。それを処理する計算機が、記憶容量にしても処理速度にしても格段に上がってきている。データを集める仕組みもインターネットなり、いろんなものでできていると。そうなってくると、何かすごく意味のある問題が解けるのではないかという期待がすごく盛り上がっているのだと思うんですよね」

人間の仕事が代替可能に?
秋元キャスター
「イギリスのオックスフォード大学で人工知能の研究を行う学者が2013年に、10年から20年後のアメリカでは、雇用のおよそ47%が、ロボットやAIに取って代わられるリスクがあるというショッキングな論文を発表しているんですけれど、こちらが論文でロボットやAIに取って代わられるリスクが高いとされる職業の一覧です。スーパーなどのレジ係ですとか、レストランのコック、受付係、弁護士助手、ホテルのフロント係、理髪師、バーテンダーなど様々な職種に及んでいるのですけれども、井上さん、非常に幅広いジャンルになっていますけれども、何か共通点みたいなものはあるのでしょうか?」
井上氏
「事務的なものというか、手続き的なものは早く置き換わると思っていまして、それはレジ係とか、受付係とか、それから、フロント係も入ります。こういうのは情報の処理をしているだけなので、そもそもコンピューターにできる仕事で、AIというところまで行かなくても、いずれ置き換わっていくだろうと考えられると思うんですね。加えて肉体労働が結構入っているのがポイントだと思うんですね。ただ、これは技術的な代替性を言っているだけなので、実際に置き換わるかどうかというのはいろいろな社会的な条件があったり、AIやロボットの価格が下がらないと実際には置き換わらないということもありますので、そこはあくまでも技術面での話だということにはなると思うんですね」
反町キャスター
「それは、たとえば、漁師だったらば、漁師と言ってもそこに魚がいるから、ここに網を入れるという判断は、これは人間がやるかもしれないのだけれども、網を入れるという作業、巻き上げる作業はロボット代替するとか、こんなイメージですか?」
井上氏
「そうですね。イカ釣りに関してはほぼ自動化されているという話ですね。船長さんが1人いれば、あとは自動的に機械が網を降ろし、引き上げるということができると」
小宮山氏
「魚群探知機があるから」
反町キャスター
「居場所がわかるから網を入れて巻き上げるのはロボットがやっちゃうと?」
小宮山氏
「そうでしょう」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、肉体労働と言ってもいわゆる単純労働の部分というのは、かなりロボットで代わられる部分というのは出てくる?」
井上氏
「そういう意味で言うと、コミュニケーションを必要とするような仕事はここにはあまり入っていないのですが、おそらく唯一の例外がバーテンダーですけれども、私もよく知らないのですが、アメリカとイギリスにおけるバーテンダーと日本のバーテンダーはちょっと違うという話がありまして、日本でも野村総研さんがこういったランキングを出しているのですが、その中にバーテンダーは上位に入っていないらしいですね。それは、日本ではバーテンダーが、コミュニケーションを使う仕事で、私はホスピタリティという言い方をするのですが、人を心地よくさせるようなそういう気遣いが必要とされるような仕事というのは残りやすいと思っていますので」
反町キャスター
「ツアーガイドは」
井上氏
「ツアーガイドもそれに含まれるし、あるいは…」
反町キャスター
「ツアーガイドはホスピタリティの塊みたいな仕事だと思うのですが。ここはロボット化というのはどういうイメージになるのですか?」
井上氏
「ツアーガイドのロボット化に関してはどうやるのか、私はよくわからないですが、おわかりですか?」
比留川氏
「ガイドという意味では、オックスフォードのリポートは存じませんけれども、たとえば、ある観光場所に行って、たとえば、場所の案内、地図があって、こちらですよと言ってくれると。たとえば、ここは豊臣秀吉が何々をしたとかという説明をスマホから流してくれると考えれば、スマホのソフトの少し気の利いたものができれば、ある程度はできるのではないですかね。ただ、今日はいい天気ですねとか、そういう気の利いたことはなかなか言えないと思いますね」
小宮山氏
「アメリカで1番コンピューター、あるいはAIで置き換わりやすい職業というのは何かという議論をしたんだって。それでもって、裁判官ということになったんだって。要するに、データがあって何をしたか。法律を全部覚えるというのは簡単な話。判例全部調べて、それでそうなったので。それで本当に議論したんだって。哲学者を入れて。結論は人間がやった方がいいという結論だったんだって」
反町キャスター
「それはどういうことですか?」
小宮山氏
「一言でいうと、機械に死刑と言われても、まずいということらしいですよね。だから、コミュニケーションとか、人と人との関係というのがキーワードなのではないのですか」
反町キャスター
「いかがですか?この部分というのは最後のボーダーになるのですか?」
比留川氏
「たとえば、コンサートがあって、ビデオを流すコンサートがありますよね。本当にアーティストが出てきてやるコンサートに比べると、たぶん値段も安いし、人気は低いですよね」
反町キャスター
「それはロボットが演奏するという意味で言っています?」
比留川氏
「いや、たとえば、ビデオだけ流すコンサートみたいな。人間を感動させるのは人間でなければいけないというのはあると思うんです。小宮山先生がおっしゃったように、裁判官にしても、コンピューターのソフトに死刑と言われても、実際死刑にされる人にしたら納得できないのではないですかね。違うソフトは違うことを言うかもしれないではないかと思いますよね。そうなので、人間という存在がないと成立しないものというのはあるのではないでしょうか」
反町キャスター
「それは理論的なものではなく、極めて人間の、メンタリティというか、情緒的なものを満足させるために、機械では納得できない人間の気持ちを癒すというか、そこをクールダウンさせるために、人間でなくては対応できないものとして、最後は人間が残ると、こういう話ですね?」
比留川氏
「そうだと思いますよ」

『労働社会』変革の行方
秋元キャスター
「アメリカの47%の仕事が、ロボットやAIに代替されてしまうという話。先ほどしましたけれども、比留川さん、そういう状況になった場合はその仕事をしていた人達というのは失業してしまうのか。それとも、また新しい仕事が出てくるのか。そこはどう考えたらいいのでしょうか?」
比留川氏
「そういう人工知能にしても、ロボットにしても、自動化する、あるいは効率化する技術が出た時に、たとえば、ある企業がまったくそれを採用しないとしますと、別の企業は一方でその技術を採用すると。効率化して、コストダウンができると、採用しなかった企業というのは競争力が損なわれてしまうわけですよね。そうすると、その企業そのものが淘汰されてしまうわけですよ。そうすると、こういう技術を導入した企業は、たとえば、その半分の人が人員削減されるかもしれません。でも、それでも競争力を維持できるので、その企業は生き残れるんですよね。でも、まったくそれを導入しなかった企業はそもそも労働生産性が落ちてしまって、たとえば、製品の品質もこれまで車でも、ロボットなしに、品質を維持するのは無理ですよね。それでやっていくとすると、品質も落ちるし、つくるコストも高いと。そういう企業はなくなってしまうんです。そうすると、全ての雇用が失われるわけですよ。そういう選択肢は、僕はないと思うんですよ。あくまで新しい技術が出てきて、それによって商材の高付加価値化、あるいはコストの削減ができるとしたら、ドンドン入れるべきだと。そうやらない、会社なり企業というのはなくならざるを得ない。ですから、そういう意味だと思いますね。ただ、人類の歴史をとってみても、そうやってこれまで人間がやっている仕事を機械が置き換え、人間が次に新しい仕事をやっていったわけですよね。それによって生活がドンドン豊かになってきた。昔は食料をつくるだけでも精一杯だったのが、余裕が出てきて、もっといろんな楽しみというのが実現できてきたわけですよね。そこに新しい仕事が必ず生まれているんですよね。ある業種については、効率化、機械化が進むので、そこに必要な人が少なくて済むようになったと。そういう余った労働力というか、人間を、また生活を豊かにする仕事を新たに生み出して、そちらで人間をより豊かにする仕事をしていくと。そういうふうにできればいいのだと思います。ただ、どうしてもそこで変化があって、それに短期間でなかなか適応できない人が出てくる、それは致し方ないわけですよ。そこについては、これはこういう技術を利用するかどうかという問題ではなくて、雇用に対するセーフティネットをどうするかであるとか、そちらの問題をもちろん、考えるべきであって、新しい技術を入れるのを拒むというのは、僕は選択肢としてはないのだろうと思いますね」
小宮山氏
「歴史を考えてみれば、200年前まではほとんど、95%の人は農民だったわけですよ。逆に言うと、農業が雇用だったわけですね。現在、農業なんて1%になっちゃってきていて、その次に来た工業が雇用したわけだけれども、もう日本では20%を割ったわけですよ。もう8割は、いわゆるサービス産業なわけで、このサービス産業の中身はすごく多様だよね。ここでやっているのもサービス産業だし、お医者さんもサービス産業だし。そもそも、たとえば、キヤノンだとか、そういったようなメーカーは第2次産業に入っているけれども、相当の人というのが営業をやったり、メンテをやったりしているわけで、こうやってつくっている人というのは本当に減ってきているわけです。そうすると最後の、サービス産業のところの中身はいったいこのあとどう変わっていくのだろうというのが、とりあえずだね。つまり、介護の手なんて全然足りないわけだし、そういうところにいいロボットをつくっていただいて、そういうものでこれまで1人でもって3人ぐらい介護の方を見ていたのが、現在よりももっといい、優しい介護で、なおかつ10人看られるというようなことにならないと破綻してしまうわけですよ。だから、それから、建築物、随分、たくさん橋だの、道路などをつくったけれども、このメンテナンスは全然、どこの国でもできていないわけですよ。このままいくと全部古くなってダメになっちゃうわけで、ガス管なんてあちこちで漏れ出している国がすごく多いわけですよ。そういうところのものというのは人工知能が入り、ロボットが入り、ようやくできるようになるわけです。だから、当分はそういう形で、僕は雇用がなくなるなんて心配はする必要はないと思うんだよね、トータルとしては」
反町キャスター
「比留川さん、いかがですか?我々の将来の仕事はどうなるのだろうかという話ですけれども」
比留川氏
「我が国を考えると、2005年からの20年間で、いわゆる労働力人口が500万人ぐらい減るんですよ。いわゆる高齢者という65歳人口が約1000万人増えるんですね。わずか20年間で、働ける方から働けない方に1500万人シフトするんですね。そうなので、仕事がなくなるという心配をしている場合ではないですよ。本当に少子高齢化というのが、非常に我が国では深刻で、人手が足りなくなって、ある程度の介護を必要とする高齢者が急激に増えるんですよね。まず我が国がそういう状態ですから、そこをまず心配する時期ではないと。まずこの来る少子高齢化をどう乗り切るかのために、機械でどれだけ労働力を足していけるのかというのを考えるべきであると。次に新しい仕事へどうやってシフトしていくかというのを心配する時代が来て、最後はもっと週休3日で楽しく暮らせる…」
反町キャスター
「ただ、比留川さん、たとえば、我々の経済水準、ないしはGDP(国内総生産)500兆円なら500兆円でいいですよ。それを維持するために、いわゆる労働力人口が減っていくのでロボットが必要だという話。これは全体の労働力、総体としてはわかる、イメージとしては浮かぶのですけれども、コストを考えた時に、少なくとも、たとえば、先ほどの話で言ったら、運転手さん、タクシー、バスの運転手でも構いませんし、スーパーのレジ係の方でも構わないのですけれども、そういうところが、たとえば、コンピューターとか、AIに取って代わるために、コストとして十分、人件費に代わるもの。それより、それ以下でなければ、スイッチが起きないのではないですか。その価格競争力というのはどうなのですか?」
比留川氏
「それはもちろん、応用によります。ロボットの技術にしても人工知能の技術にしてもやっと使えそうなレベルにきたんですよね。今、社会とのせめぎ合いが、始まっていて、人と比べた場合、コストがどうなのだろうかとか、信頼性はどうなのだろうかと。あるいはそれによってもたらされる製品なり、サービスの質はどうだろうかというところの真剣な検討が始まったばかりということですね。ある会社の人が面白いことを言っていたのですけれども、ロボットをマラソンに例えると、どういう状態かと言うと、朝起きて、ふとんに入っていて、ふとんを出ようかという時期だと。要するに、マラソンのうち、42.195kmを走りましたではなくて、ベッドに寝ていて、これから起きようかという時期なのではないかということをおっしゃった。うまいことを言うなと思ったんですよね。そういう時期なのだろうと。産業ロボットというのは現在、国内市場がだいたい6000億円ですね。市場規模は6000億円だと。それが立ち上がった年、産業用ロボットが立ちあがったのは1980年ですよ。その時の市場規模は760億円ですよね。それがその市場は非常に重要で、その規模になってくると、1つの事業規模が100億円になってきていると。会社によっては1社の売上げ100億円を超えているんですよね。そこまでくると、大企業でも事業として認められる規模になってきていて、そこから10年間で10倍になったんです、だいたいね。産業ロボット以外の市場というのはだいたい600億円から1000億円と言われていまして、ちょうどその頃の市場規模になってきているんですね。まさにこういう夜明け前というか、事業として成立する規模の、産業をつくり出せるだけの技術がたまってきたと。ここから、それをいかに社会とのせめぎ合い、おっしゃったように、コストはどうですかと。信頼性はどうなのですかと。心理的な抵抗とか、いろんな社会制度、規制とか、法律とか、保険とか、そういうものとの整合性はどうですかと。そういうのが問われる時代になってきていますね」

『暴走』止められるか?
秋元キャスター
「もう1つの懸念であります、ロボットやAIの暴走を止められるのかという点も聞いていきたいと思います。暴走ということについてですが、今年の3月にこのような出来事がありました。Tayと名づけられたソーシャルメディア上で人間と対話をする人工知能が悪意のある人達に教え込まれ、ヒトラーは間違っていないとか、フェミニストは全員死んで、地獄で焼かれればいいなどと、差別的な発言を繰り返し、運用停止ということになりました。比留川さん、このTayですけれども、多くのユーザーと対話することで、学習するように設計をされていたということですけれど、こういったことが起きないようにAIを制御するということはできないのでしょうか?」
比留川氏
「AIの方は、それが善いか悪いかもわからないですよね。それが、たとえば、もう少し上の判断が入っていて、そういうことをやってはいけないということがきちんとソフトウェアに組み込まれていれば、こういうことはなかったはずですよね。でも、なかなか難しいだろうと思います。たとえば、ヒトラーは正しかったですか、そういうような知識を全部入れないといけないわけですよね。ヒトラーは悪い人だったんですということを言わないといけない。世の中にどのぐらい悪い人がいたかというと何億人もいると思うんですよね。それを全部入れられますかということですね。そう考えていくとある程度は限界があって、悪意がある人がソフトを、悪意のある使い方をすると、そういう問題を起こしてしまうというのは、ある程度は仕方がないと思いますね」
反町キャスター
「たとえば、AIなるものに対して人間がどのぐらい依存していっていいのかという、主従関係といおうか、依存関係というか、そこの部分に対しては自ら限界があると思ってよろしいですよね?」
比留川氏
「そうです。たとえば、我々は福祉用のロボットの開発というのをやっているのですけれども、そこでも安全性というのが非常に問題になってくるんですよね。それについても国際規格があって、きちんとこういうふうに作りなさいと決まっているんですよ。それに沿ってきちんとつくっていけば、そんなに危ないことはないような機械がつくれるんですよね。そういうことだと思うんですよね。人工知能に関して、たとえば、先ほどの悪意を持ってどうするか、こうするかということに関して、私はちょっと存じ上げないですけど、そこで国際規格があるかと言われると、たぶんまだないのだろうと思うんですね。だから、そういうルール、ある意味でルールですね。そういうのも含め、これからちゃんとやっていかないといけないのだろうと思います」
反町キャスター
「井上さん、Tayの事件というか、出来事をどう見ていましたか?」
井上氏
「この人工知能自体は言葉をつぶやくだけなので、その範囲での害で収まっているわけですけれども、これがロボットの形をしていて、手足を持っているとか、ネットを介して何らかの機器をコントロールできるとか、そうなったら余計危険性が高まるかなというところと、あと人工知能の自立性とか、汎用性が高まれば高まるほど便利ですけど、それに応じて危険性も上がっていくということが言えるかと思うんですね。完全に人間が言ったことしかやらないとか、あるいは人間がプログラムした通りにしか動かないという人工知能だったらいいですけれども、たとえば、自分の目的自体を、自分で書き変えて、成長をしていっちゃうみたいな、そういう人工知能があった時、しかも、それが悪い人間とのコミュニケーションによって悪い価値観にドンドン染まっていっちゃうとか、本当にSF的な話で、だいぶ未来の話ではあると思うのですが、そういう危険性というのは増していくと思うので。人間がしっかり人工知能にこういう目的で使うものだと目的をしっかりと与えて、最終的な判断は人間がしっかり行うということをやらないといけないかなと思っています」
小宮山氏
「思うのだけれど、危険はあると思うんですよ。これまで危険なものに対しては倫理規定をつくっていますよね。生命科学の実験でも、人間の卵細胞に対してはやってはいけないとか」
反町キャスター
「人間のクローンはどうとかですよね?」
小宮山氏
「そう。早くつくって、同時にソサイアティ・イン・ザ・ループという言い方が最近されていますが、急にフランケンシュタインが出るわけではないわけですね。だんだんと進化してくるわけですよね、ループの中で。その中で、常に倫理規定みたいなものを見直していくみたいなことをしていけば比較的、安全なのかなと思っているんですよね。もちろん、Twitterでヒトラーが何とかとつぶやいた。人間だってつぶやいているでしょう。だから、別にAIがおかしいということではないかもしれないけれども、それでも、前もって倫理規定というのを早くつくるべきだと言い続けているのだけど、そこは現在どうなっているのですかね」
井上氏
「人工知能学会という研究者達の集まりがあって、そこで倫理委員会というのをつくって、議論をして、その項目の策定とかを今年やっていまして、それはまだ世の中でコンセンサスとして、そんな広まっていないという印象ではあるとは思うのですが、議論なされているし、そういう動きは…」
小宮山氏
「国際的には?」
井上氏
「国際的にもあります」

『ロボット戦争』の可能性
秋元キャスター
「宇宙物理学者のホーキンス博士をはじめとする著名な研究者グループが昨年、公開書簡を発表しまして、ロボットやAIがもたらすリスクについて、このように発表をしているんですね。自律型の人工知能、AI兵器は戦争において火薬と核兵器に次ぐ第3の革命になるとしていまして、具体的には、軍事大国がAIの開発を推し進めた場合に、世界的な開発競争が起こることは避けられないと。AI兵器は核兵器と異なり、入手困難な材料がなくても大量生産が可能であるために、普及しやすく、テロ組織などの手に渡ってしまうというリスクがあると指摘をしているんですね」
小宮山氏
「ホーキンス博士が言っているのは自律的と言っているのね。自律的、それは現在だってアメリカがシリアで爆撃しているのは無人機ですから、あれはやっているわけですよ。だけど、あれが自律的になった時、自律というのは自分で考えて、ここはトルコにも行っちゃった方がいいという形でやるものを規制しようというのが、ホーキンスさんですね。だから、まだ行っていないのだと思うんです。だけど、それは規制すべきだと思うけれど、ホーキンスさんもそうおっしゃっているのでしょうね」
反町キャスター
「ただ、まさに比留川さんが言ったみたいに、自律型のロボットや人工知能というものが軍事技術と親和性が高いというので、小宮山さんが言われた、ないしは井上さんが言われたような倫理規定というものが、要するに、国と国とが殺し合いをする中で倫理も何もないだろうと、そういう理屈の前に踏み倒されていかないかどうか。ここはすごく心配になりませんか?」
小宮山氏
「心配ですね。だから、現在も随分いろんなものが出てきていますから、90kgを背負っていけるような、外から着るみたいなやつだとか、できてきて。そこが境界線に入ってくるのかもしれませんね。だから、そこがいけないのではないですか、やらせては。私はそう思いますよ」
井上氏
「自律型ロボットに関しては噂ではあるのですが、少なくとも2か国ぐらい既に実戦配備していると。実際にそこで戦争が起きていないのでまだ人が殺されるということにはなっていないのですけれども、配備しているという噂のある国が」
小宮山氏
「地雷のアレとか、そういうのではないの?」
井上氏
「ではなくて、人間がいるというのを感知して撃つという。具体的に、国名を挙げると問題になるかもしれないので挙げないでおきますけれども」
反町キャスター
「緊張した国境線を持っている国が使う可能性があるという意味ですよね?それは」
井上氏
「そうですね」
反町キャスター
「そこの部分、比留川さん、軍事的な部分というのと民生の部分というのはだいたい軍事的なもので利用される。それはインターネットにしても、原子力にしてもそうですけれども、軍事的な利用というのが引っ張っていって、そこに民生が安全性を確認しながら追いついていくというのは、これまでの1つの手順であったではないですか。ロボットとAIも似たような道を歩まざるを得ないという気持ちになりますか?」
比留川氏
「デュアルテクノロジーということがよく言われまして、軍事技術を民生用にしていくと。それはよく言われていることですよね。軍事利用とか、悪意を持って使うということは、技術では縛れないのでそれは使う人の心の問題ですし、あとは条約できちんと縛るとか、それは社会としてどう規制をかけていくかということでないと、技術だけで何とかなるという話ではないのだろうなと思います」
小宮山氏
「技術の問題ではないよね。本当に倫理規定の問題ですよ」
反町キャスター
「平場の協議はどういう状態なのですか?」
比留川氏
「それはおそらくないと思いますね。学会レベルでは、委員会がありまして、そういう議論はされていますが、まだ軍事利用で、実戦で使う、使わないというところはあまり顕在化していませんので、政府間で条約を協議するとか、そういう場を設けられているということはないのではないかと思うんですね」
井上氏
「人工知能学会というのは学者、研究者の集まりです。ですので、政府レベルの話ではないですね。これが政府間の協定となると、現在のところは成立していないという状況ですね」
小宮山氏
「難しいですよ。でも、早くやらなければいけないと思いますよね。先ほどのセンサーで検知して自動的に撃つというのはAI的なロボットではないよね」
井上氏
「そうですね」
小宮山氏
「まだ自動機械に近いですよね。それでも危ないです。それに動く機能が入るとか、現在のAIは人間的な、だんだんと練習して、学習していくという機能が入ってくるから、そうすると、いよいよ危なくなってきますよね。急に実戦配備して強くなるとは思えないけれども、早いうちにやっておかないと危ないですよ」

技術立国への戦略は?
小宮山氏
「AIの1番の大きな用途というのは、自動運転だと思うんですよ。そうすると、自動車はロボットなの?」
比留川氏
「自動車の人は口が裂けてもそう言わないと思いますけど、我々の目から見れば、たとえば、Googleの自動運転の技術というのがありますけど、昔、DARPAグランドチャレンジというのがありまして、それで砂漠で車を百何十km自動運転させるというコンテストがあったんですね。それに優勝した人がそのあとGoogleに入ってやっていたのがGoogle Carですよ。技術的にはロボットの技術ですし、それを自動運転ですから、人工知能と呼ぼうと思えば、人工知能ですし、その分野に関しては定めがないですね」
井上氏
「スマートマシンという言い方をするとわかりやすいかと思うんですよね。これはロボットも、無人で動くドローンも、セルフドライビングカーも、インテリジェンスを持ったメカ、こういうものをスマートマシンと言ってしまうと、広い意味でのロボットというのはスマートマシンということだと思うんですよね。これがどれだけ日本でも開発が進むかというところがひとつポイントだと思いますね」
反町キャスター
「どうですか?日本はスマートマシンという分野において先頭を切っているのですか?」
井上氏
「先頭を切っているというところまではいかないと思うのですが、日本人の得意な分野ではあると思うんですよね。これまでの人工知能というのが、情報空間の中で閉じていて、我々がFacebookを使うとか、Amazonを使うとか、そういうサービスを使うたびに情報を溜めていって、データを読み込んでドンドン賢くなっていくみたいなAIが多かったのですが、これからは実世界で動く機械にAIが載っかるということになりますので、モノづくりに日本人の優位性があって、情報の方は弱かったわけですが、これからは日本がスマートマシンという分野において、そこに人工知能が入っているという意味では、巻き返しをはかれるのかなと」
反町キャスター
「車は確かに世界をリードしていますけれど、家電メーカーはデジタル家電が出てきた時に、日本のメーカーはそれに乗り遅れて、台湾、中国、韓国に徹底的にやられましたよね。AIを組み込むことによる移動体というものが、自分が運転するのではなく、変わるのだという感覚が、日本の移動体メーカーの中で、そこは追いついていると思いますか?」
小宮山氏
「日本の車会社はグローバル化していますから、日本の中では1番国際感覚が強いと思うんですよ。それでも心配しています。つまり、自動車が電気自動車になると、すごく簡単につくりやすい、エンジンがなければ。そうすると、むしろプラットフォームを持っている会社の方が、移動体をつくっている会社よりも優位になる可能性がゼロではないわけですよ。それでも、当分は移動体をつくっているところはそれなりの強みがあるわけだから、そこがプラットフォームまで獲ればいいんですよ。やるでしょう。世界一の会社があるのですから」

井上智洋 駒澤大学経済学部経済学科講師の提言:『AIとBI』
井上氏
「今日あまりお話できなかったのですが、このBIというのはベーシックインカムというものの略なのですが、ベーシックインカムというのは国民全員に、たとえば、月に7万円なら7万円のお金を配って、完全に生活保障をするというような究極の社会保障制度ですけれど、人工知能によって失業が増えていくのであれば、失業者が安心して暮らせるように、ベーシックインカムというものが必要になってくるのだろうと思っています」

比留川博久 産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センター長の提言:『道具』
比留川氏
「人工知能にしろ、ロボットにしろ、人が使う所詮は道具だと思うんですね。いかに人が幸せになるか、悪用されるのかどうかも人の心次第ですから、こういうものはあまり不必要に恐れずに道具だと思って、どうやって人が使いこなしていくかということをきちんと考えるべきなのだろうなと思います」

小宮山宏 三菱総合研究所理事長の提言:『もっと自由に』
小宮山氏
「僕は道具なんだと思うんです。それを使って、悪いことばかり想像していると、予言調和と最近言っている人がいて、予言しているとそうなるということを言っている人が…。だから、悪いことを予言してはいけないのだと思う。昔のように90%の人が農業をやらないと食べられないという時代ではないし、自動車ですら少数の人でつくれるような時代に入って、情報に関してはどこでも手に入るということになったわけだから、本当は自由なんだよ、相当。だから、僕らが現在の状況を境界条件としてモノを考えるのではなく、僕らはもっと自由だということを考えて、いい社会をつくるのだと、その意志が重要だと思うんです」