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2016年10月17日(月)
『生前退位』議論開始 同級生が語る『真意』

ゲスト

山内昌之
東京大学名誉教授
明石元紹
天皇陛下の同級生
橋本寿史
フジテレビ編集委員

天皇陛下『生前退位』のご意向 今後の課題と皇室の未来
秋元キャスター
「天皇陛下が、8月8日に生前退位のご意向をにじませるお気持ちを表明されまして、その後、9月23日に菅官房長官が有識者会議の設置を発表。今日その第1 回目の会合が行われたと。明石さん、この2か月間の政府の動き、国民の世論についてどのように感じてきましたか?」
明石氏
「国民の方の世論は大変温かく受け止めていただいていまして、これは報道陣の支援もあったと思うんですけれども。私は、それは非常に良かったと思うのですが、はっきり申し上げると政府を中心とした対応、これは非常にストレスを持って感じています。と言うのは、陛下があれだけいろんなことに配慮をしながら、ご自分のことを、ご自分のことだけではないのですけれども、日本の将来を含めてあれだけの提案をなさっているんだと私は思いますから。それに対して、たとえば、今日の有識者会議を申し上げて悪いけれども、公務の軽減を検討すると。これは枕詞としまして、憲法に抵触しない、陛下のご発言が直接、政治制度の変更に関わらないと。そのことを考えてのことだと思いますけれど、陛下は公務軽減してくれなんて一言も言ってらっしゃらないわけですね。むしろ公務の徹底をやらせてくれと。その体が続く限りはね。それが現在の象徴天皇の1番やらなければいけない責任であると。そういう考えのもとに今度のご発言があったわけですから。これを公務の軽減を中心に議論をするなんて話は、とても納得できません」
反町キャスター
「そもそもの話、山内さん、明石さんの話をどう感じますか?」
山内名誉教授
「誰であれ、加齢があり、つまり、陛下が今年誕生日をお迎えになられる。83歳をお迎えになられると。こういうことは高齢化社会の日本人達も含めた、大きな問題なわけです。その時に、問題は2つありまして、1つは誰もが経験をしなければいけない生物学的な限界や寿命といったものについてどう考えるかということについて常に国民と共に寄り添い、国民とともに自らあること。それを島々、地方にまで行かれて、つぶさに人々と分かち合ってきた方にとって、高齢化社会における象徴天皇制とは何かという、大変重い問題はあるわけです。その時に、第2に象徴天皇制というのは、形がありそこに天皇がいらっしゃればそれで成立するというものではなく、現在の陛下、今上陛下と皇后様がお二人で初めて象徴天皇として即位され、私ども国民の総意として天皇に就かれた方ですね、そして皇后になられたと。そういう中でお疲れになったから、あるいはお年を召したから、楽をしたい、あるいは疲れた、そういう意味でおっしゃっているのではまったくない。そうではなくて、象徴天皇に伴う国事行為を別とした公的行為、あるいはその他の行為というものにおいて、ご自分が責任を持ってでき得ないような時が、否応なしにきているということについて切実におっしゃったわけです。ですからその問題について、どのように国民、あるいは政府が受け止めるのかというところの受け止め方について大変たくさん、多様な受け止め方があるということです。具体的に陛下はご自分の意思としてこうだということをおっしゃる方ではありませんから。そういう点で言えば、国民、政府の方にある種、ボールを投げかけられたということは言えると思うんですね。いずれにしましても大事なことは、その中で最初からこれというような形で陛下のお立場やあるお考えを忖度して、こうでなければならないという、こういう狭い方向でものを考えるより、ひとまず大きく問題を受け止めて、大きい枠、それがおそらく、私は政府の言うご負担の軽減ということだと思うんです」

有識者会議メンバーが語る焦点
反町キャスター
「傍から聞いていると、明石さんは、生前退位のことを話してほしいと。でも、それに対して有識者会議は、公務負担の軽減の話になってしまう。負担の軽減と生前退位というのは別ではないかという話だと僕は思ったのですが、そこは広い意味での負担軽減ということになると。その範疇に、生前退位は入るのですか?」
山内名誉教授
「今回の有識者会議というものはまず予断なく、それから、自分達の先入観を交えず、いろいろな立場の人達から、陛下の言葉を受けて、それをどう受け止めるかということについての意見を幅広く考えることによって、新しい時代、ご高齢、そういう中における象徴天皇制というのは何なのかということを答えるという点では、決して私はさほど矛盾はしていないと思うんです。いずれにしても陛下が1番お考えになられたのは、私個人としては2つあって、象徴天皇というものは、天皇のこの部分を摂政に委ねるとか、そういう形で切り離すようなことはお元気であるうちに、そういうことはなかなかできないことだと。天皇としての意思のご表現が不自由になる、不可能になれば、摂政というのもあるかもしれないけれども、しかし、そういう形ではないと。つまり、ご健康であり、ご自由に意思を表明できる間に摂政を置いたとしても、ご自分が天皇である限りは公務、あるいは国事行為といったものに対応されなければいけない。その時にいろいろな不慮の事態が起きたらどうするのかという、ある種の責任感に基づいてのことだと思うんです。ですから、その意味ではおっしゃるように陛下がお仕事やご公務に対して徹底化しようとしていることは、そういう面でお触れになられたのではないでしょうか」
明石氏
「山内先生に失礼かもしれないのですが、私はどちらかと言うと、今度の問題は当面の問題とか、政治課題の問題とか、あるいは政治論争の遡上に乗せるという問題とか、それとはまったく違うと思っているわけですよね。これから有識者会議でおそらく予想ではそういった法規に詳しい専門家、あるいは歴史に詳しい専門家、そういう方のご意見を聞いていらっしゃると思うのですが、私は違うと思います。歴史に詳しいとか、あるいは法規に詳しい方は非常に知識をお持ちですから。これまでの事例、あるいはこれまであったことの欠陥みたいなことの指摘をなさると思うんです。だけど、陛下が望んでいらっしゃることは、日本の将来を踏まえて、どういう天皇のあり方が望まれるかと。そこへ焦点を置いていらっしゃると思うんですね。ですから、むしろもっと政治や学識と離れて、一般の国民の代表みたいな方の意見を聞いていただきたい。たとえば、ノーベル賞を貰った方とか、あるいは文化勲章を貰った方とか、もっと言えば、医学の権威の方ですね。こういう方は人間がこれだけ長寿化した中で加齢と共にどうなっていくかということの意見を言ってくださると思います。それから、外国ですよね、海外のジャーナリストあたりから日本を見てどうなのだと。日本の歴史の中で何が良く、何がダメだったのだというようなことを指摘していただいて、言うなれば、一般の方ですね。何の学識もないような方から、今度の問題は意見を聞いていただきたいと思います」
反町キャスター
「公務負担軽減について、先ほどの、最初のブロックでも明石さんから話がありました。陛下は公務負担軽減を望んでいない、徹底してやりたいのだと言っている中で、なおかつ公務負担軽減を柱にしと。公務負担軽減というのは、山内さんの説明だと広い意味での今回の負担軽減であると。広い意味での負担軽減の中には、たとえば、生前退位とか、摂政とか、臨時代理、制度的なものも含め、そういうものも公務負担軽減の中に入るという理解でよろしいのですか?」
山内名誉教授
「当然そうなると思いますね。この公務軽減等と書いてあるわけで、等のところにこうしたことがニュアンスとして入っていると私は理解をしているし、それで間違いないと思います。今日実際に、有識者の場において退位、あるいは譲位という表現もありますが、譲位の問題も含めて予断なく議論をすると。こういった発言が構成員からもありましたし、これはそのようでよろしいのではないですか」

議論の焦点と今後の道筋
反町キャスター
「結論を出す時期は未定とは言え、スピード感を持って検討と。そのへんの間合いというか、阿吽の呼吸というのも、どんな雰囲気で今後進んでいくと我々は見たらいいのですか?」
山内名誉教授
「お言葉が8月8日に発せられたという時というのは、その時、私個人の印象で1番感じたことは、ご高齢になられた陛下のご事情についていろんな角度からのご覧のなり方があると思いますが、ともかくご高齢になられた陛下のご事情を鑑みて問題を受け止めなければならない。その時に慎重であることが重要であるけど、陛下のご高齢というのを意識して、できるだけ早く問題の解決に近づくことが望ましいのだろうと」
明石氏
「学者さん達、あるいは法令に詳しい方々というのは変な表現ですけれども、皇室の安全保障みたいな感じがするんですね。こういうことをやっておかないと将来いろんな心配が出てくるとかね。ところがこの問題というのはそうではなくて、もうちょっと陛下が考えていらっしゃることは非常に長いスパンで提案されたと思うんです。と言うのは、明治以降の日本が発展もし、近代化もし、戦争にも勝ち、良かった時代だと思いますけれど、ただ明治、大正、昭和の三代というのは、あまりに天皇と政治との距離が縮まった時代。もっと悪い言い方をすれば、ある意味では、政治に利用された時代とも言えるかと思うんですね。だから、これに対して陛下は疑問を持っていらっしゃいます。ところが、現在の政権も政治家もそうだけれども、その背景には明治時代への復活みたいな。そういう意識があるのではないかと思って心配するわけです。だから、明治というのは確かに画期的な時代ではあったけれども、それはもっと言えば、戦争の遠因になっているわけですね。日露戦争に勝って、日本は強いと。これで近代化されて対外的にも発展はできると勝手に思った時代。だから、そのへんをもうちょっと冷静にというか、長い目で日本の近代史を見ていただきたい。それが陛下が言ってらっしゃる歴史を大事にしなさいと、満州事変以降かは知らないけれども、その考え方の中に結構、おありになるような気がしますよ」
反町キャスター
「明治の復活を目指しているのが懸念と言いましたが、つまり、陛下が政治利用をされて、軍部がとも申し上げていいのかもしれない。そういう状況を軍部が、ないしは政治が陛下を、皇室を政治利用するのではないかということについては、現在の陛下も常にそういう危険を念頭に置きながら政治との距離感をお持ちになっている。こういう理解でよろしいのですか?」
明石氏
「そうですね。悪い言い方をすれば、政府がやろうとしていることこそ、私は天皇制の政治利用ではないかという」
山内名誉教授
「このように、ある種の専門性を持ちながらも、そういうおっしゃられたような懸念なども、ただ距離を置く、そうした比較的バランスのとれた者達がまず行司役と申しますか、1つのとりまとめ役のお世話をするという形をとりながら、広く意見を聴取していくということになりますから。この仕組みそのものが政争、あるいは政治目的であるということはないですよ。」
明石氏
「結構です。ただ、理屈上は確かに国民の代表は国会議員です。今で言えばね。だから、国会議員が意見をまとめて、この問題は最終的には結論を出さないといけないと。それが現在の日本の仕組みです」
山内名誉教授
「ですから、これをプロセスの中でいずれかの段階、どの段階かはわかりません、あるいは平行していく。少なくとも衆参両議長等々の意見を聴取しながら、最終的にそれは国会のマターになると思うんですね」
明石氏
「理屈ではそう。だけど、現実の政治家というのは他の雑念が入っているわけだと私は思いますよね。皇室を担ってきた歴代の天皇とはちょっと違って、もっと目先の結論、解決をすると思うんですね」

同級生が語るお気持ちの『真意』
反町キャスター
「皇室の政治利用という点からすると今回この問題を政府・与党側がハンドリングするにあたって、利用するというのも可能性として否定はしません。ただし、利用していると世論や野党から指弾されることのリスクを避けるという危機管理的なものというものも、僕はあるのではないかと思うんです。だから、利用していると言われたら、これはアウトですよ。だから、利用していると言われないようにいかに慎重に運ぶかというところに心を砕くことによって、結果的にいろいろあったけれども、政府・与党が慎重に事を運んだね、ニュートラルに物事を運んだねと。もしそれが結論というか、目的とすれば、利用するのではなく、利用したと言われないためのものという、慎重さ。そこを感じる部分というのはありますか?それとも完全に利用に入っていると感じますか?」
明石氏
「いや、利用というか、要するに、当面の課題の解決みたいなことがどうも・・・」
反町キャスター
「長期の視点に欠けている?」
明石氏
「そういうことです。だから、それは、私が見ている限りは、天皇陛下のようなお立場と、そのものの見方、これでないとうまくいかないというか」
山内名誉教授
「我々は天皇陛下のお心の内を忖度し、あるいはお心がこうであるというようなことについて、そう簡単にわかるものではないですね。私どもは国民としてそういう立場にあるもので、これは政治家も含め皆そうだと思います。しかし、天皇というお立場は憲法によって定められている、国民の総意として象徴であられるという天皇、つまり、憲法によって規定されている地位、これは紛れもなくあるわけです。従って陛下ご自身が常に法というものを意識し、自らは憲法によって自らの地位が規定されていることに対して誰よりも禁欲的にお考えになっていらっしゃる。しかし第2に神話、伝説、伝承、歴史というものを通して2700年に渡る、皇祖皇宗以来の長い伝統を持つ、世界でもほとんど例のないようなそういう古い歴史と伝統の継承者である天皇家という歴史があるわけですね。この歴史を踏まえられるということも陛下の同時に大事なお立場なのですが、とりあえずこれは憲法上の地位と重ならない部分もあるわけです。それはどういう時に出るかというと、たとえば、国事行為や公的行為とは別のその他の行為に関して大嘗祭、あるいは宮中祭祀といったものに関しては、これは象徴天皇であるということとの関係で、ある種の微妙な位置がある。ただし、第3番目に、天皇が長い間に渡って宮中祭祀に象徴されるような、天照大神に遡っていくご家系、神話、伝説、伝承を通して、そういう中で神道という、日本古来のある種の伝統、信仰の重要な大祭司としての担い手という面も持っていらっしゃる。つまり、多面的にあって、その中で我々が天皇陛下というものを象徴して見る場合の根拠は、これは憲法であり、かつ法によって定められているというところを見ませんと、民心国家における天皇とは何かということについて、いろいろなお心の内はこうだとか、天皇はこう考えているに違いないというような言葉はいずれにしましてもそれは断定や推定につながることなのです。基本的に私達は現在の象徴天皇制を法に基づくものとして理解していかないと、それぞれがある意味で恣意的に天皇を考えることになる。これこそがある種、政治利用につながりかねないということだと思うんですね」

陛下の『お気持ち』と法整備
反町キャスター
「具体的にご公務の軽減、ないしはその中に生前退位であるとか、摂政とか、臨時代行とか、いろいろなものが含まれるという広い意味でのご負担の軽減というのを考えた時に、1回限り、一代限りの特別立法でいくのか。皇室典範の改正を踏まえ、いわゆる恒久的な制度改正をするのか。この2つの選択がある中で、これは明石さんの感想を聞きたいんですけれども、皇室典範の改正となった場合に、直ちに行われるのかどうか。時間的な制限はあります。ないしは次の天皇陛下から適用になるかもしれないとか、陛下のお気持ちとしてご自身に対する生前退位というのが1つ。もう1つ、恒久法ということによる恒久的な、これは時間がかかるかもしれないけれども、たとえば、政治との向きあいにおいて、憲法との向きあいにおいて、陛下が望まれたからというのは直ちに憲法上のいろいろな問題が出てくるかもしれない。それだから恒久的な措置というのは次の陛下の時からという、次の時代からという可能性。このバランスというのをどのように感じていますか?」
明石氏
「私の個人的な気持ちを言いますと、陛下があれだけの視野からこれをルールにしてくださいということを言っていらっしゃるわけですよ。これは尊重をしていただきたい、1つは。それともう1つは、皇室と言え、古い伝統ばかりに縛られていて、新しいものを取り込む活動と言いますか、こういうものもやっていかなければ、これからの日本にとって、非常にためにならないと思うんですよ。それは遠慮しながら言っていらっしゃいますけれど、陛下の頭の中ではかなり大きな部分を占めていると思います」
反町キャスター
「いわゆる一代限りの特別立法ということで急いで対応するならこれですと言うか、選択肢を陛下にお見せすることは100%ないですけれど、一代限りの対応で特別立法で早い対応ということを望まれるよりは、多少時間がかかってもルールというか、制度として固定化した制度でということですね?」
明石氏
「相反するんですよね。突っ込んで、大きな改革をしようと思えば時間がかかる。一方では、体の面で早くしなければならないと。相反するのですけれど、2つに分けでても、二段階に分けてでも、日本の皇室の近代化といったら失礼だけれども、そういうものにも踏み込んでいただきたい。1番感じるのは男女同権。これがなぜ皇室の中にだけ働かないのかというのは、非常に恥ずかしいとさえ思います、海外に対して。それと、よく言われていることだけれども、皇室の体制の強化みたいな、たとえば、旧宮家の復活だとか、女性宮家とか、これは必ずしも皇室の質の強化というのか、国民の受け止められる価値と言いますか、そういうものと比例すると私は思いません。数がいらっしゃればいいかというと私はそうは思いません」
反町キャスター
「そこは男女同権と言ったものだから、たとえば、女性宮家とか、女性天皇ということに対しても門戸を開くべきだという考えでは…。そこは違うんですね?」
明石氏
「むしろ天皇になる方が男子でなければいかんという、そこがひっかかります」
橋本氏
「私も、明石さんは女性天皇というものも、それは容認をされているのと同時に、宮家という形の補完的なものよりも天皇ご一家と言いますか、天皇陛下のご家族というものを現在の陛下は1番大切にされている部分だと捉えていらっしゃるのではないかなと」
山内名誉教授
「皇統の問題で、仮に男子、女子を問わず、しかし、限られた中でやって、女性の方は外に出る、結婚をされる。宮家はつくれない。そうするとそこで狭まっていきますね。狭まることについてどうすればいいかという議論も一方でなされているわけです。その中で女性天皇、あるいは女性宮家という問題も出てくるのですが、女性宮家を否定されるということになると、その選択肢も含めて狭まりませんか?」
明石氏
「私が言いたいのは、無理して、皇族の数を増やす、あるいは無理して、皇室に嫁がれた方まで」
反町キャスター
「皇室に入ってきた方?女性宮家だと出られる方とか、出られた方とかですよね」
明石氏
「それをやたらに防ごうとして。それはあまり感心しないですね」
山内名誉教授
「重要な論点が出てきているのですが、結局私達が考えなければいけないことは、天皇陛下は、何度も申し上げますけれど、ご高齢であると。大変失礼ながら将来において、本当にご健康を損なわれて、誠に失礼な仮定ですが、どの天皇も倒れられたわけですが、ご無礼になられるというようなことは、これは歴史の必然としてあり得ると思うんです。そうした時に、皇室典範の改正ということだけでいきますと、もし検討中、議論をしている間にそうした状態が訪れた日に、いったい誰が、国民も含め、どのような形で向かい合うべきなのかという、これは大変厳粛な問題です。そういう典範改正が必要だということが、誰もが究極的には認めることに近いと思うのですが、同時に、一方においてはこの大事な問題に関して一刻でも早く、スピード感を持ってという中においては、特例、特別立法、特措法、そういう法制上の新しい特別法を出すことによって、その問題をまず解決する。解決はするけれども、こちらが発しているとの同時に、あるいはそれが一段落する、時間差はあるにしても皇室典範の改正といったものに取り組むという、こういう姿勢を、仮定ですが、現政権、あるいは内閣が打ち出すということは、まったくの荒唐無稽のことではないと。むしろそういうような形での議論や、あるいは考え方を持つ人達は多いのではないか。そういう考えの人達も含めて、今回の有識者会議はヒアリングの際にいろいろな方をお招きして考えたいと言っているのは、それが皇室典範のきちんとした改正論者、こういう人達を招く。しかし、特別法で陛下の御身や御位がどうなるかと。いろんなことを考えた時に、その問題の解決ということも大事ではないかと。しかしそれは典範改正という制度の見直しや、いわゆる改革に申せば、それはもっと矛盾するものではないという」
反町キャスター
「山内さん、その話、要するに、特別立法か、典範改正かの二択でないということですね。縦につながるということも視野に入れるべきだと」
山内名誉教授
「これはまったく個人としての仮定ですよ。有識者でも何も議論をしていないことですよ、当然。そうしたことも含めて、いろんな考えの人がいることを知っていますから。新聞やメディアを通していろんな人達が発言をしています。そういう方々を呼んでいくと、その中の方々に今のような考え方もあり得るし、出てくるのではないかと。そういう意見を含めて非常に広く議論をしていく場がこの有識者会議なのであって、最初に決め撃ちをする場所ではないということをご理解いただきたいということです」

高齢化社会と象徴天皇
秋元キャスター
「陛下は8月8日のビデオメッセージで、天皇の高齢化に伴う対処について言及されています。『天皇の高齢化に伴い、国事行為や象徴としての行為を限りなく縮小していくことに無理がある。天皇がその機能を果たし得なくなった場合には、その行為を代行する摂政を置くことも考えられるが、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま天皇であり続けることに変わりはない』と発言されているのですけれども、陛下は摂政の設置ということに否定的なように感じられるのですが、そこのあたりはどのように見ていますか?」
明石氏
「どういう方法で伺ったかは言えませんけれども、陛下ははっきりおっしゃっています。大正天皇の時代に昭和天皇が摂政におなりになりましたけれど、この時にいい面ももちろんあるが、ご当事者になられた昭和天皇、それから、大正天皇、皇后を含めまして、決していいお気持ちでこれが行われたとは思えないと。もっと言えば、それぞれに支持者というか、そういう派ができましてね」
反町キャスター
「大正天皇派と昭和天皇派と、そういう形になるのですか?」
明石氏
「陛下はそう思っていらっしゃいますよ。国論が二分するというか、勢力が2つに分かれて、諍いを伴うような話を聞いていると。だから、そういうことは良くないということが陛下の摂政論ですね」
秋元キャスター
「摂政という制度についてはどう考えていますか?」
山内名誉教授
「摂政の場合、天皇の意思能力が失われているということが前提になっています、未成年の場合は別として。もう1つ、臨時代行は国事行為の臨時代行に関する法律で、臨時代行法で天皇の意思能力が存在するにもかかわらず、たとえば、海外へのご旅行、その他の理由において一時的にそれを執行できない時、いろいろな国事行為が続きますから、そういう場合に使う。まったく天皇の意思のあり方に関わることですね。摂政がもう1つ問題なのは、昭和天皇がご入院された時に、現在の天皇が考えられたのは、そこで摂政ということになりますと、自分の父である天皇のご病気は重篤である、さながら質問が不可能な状態だというようなことを入院間もなく認めるようなことに対して、大変つらい思いをされるということになる。敢えて申しますと、親子の情においても、私達と同じように忍びないところがありますし、皇太子としての天皇に対する尊敬心、責任感としても為しえないと。そこで臨時代行法を提供されたということは十分にあると思います」
秋元キャスター
「皇室典範に退位の規定がないことについて、「上皇」や「法皇」という存在による弊害が生じる恐れがある、ということについてはどのように考えますか?」
山内名誉教授
「これは日本史を中世史まで遡ったら、このような危惧が出てくるということで繰り返されてきたのですが、保元・平治の乱などによって、あるいは鎌倉時代の承久の乱などによって、上皇達が複数いらして、鎌倉政権と争うとか、いろいろな点で権力の所在がはっきりしなくなる、最終的な責任の所在がはっきりしない。天皇なのか、上皇なのか。上皇は上皇で院庁という独自の管轄職を持つんですね。院庁が出す院宣というものがあるのですが、天皇の詔勅と同じ威力を持ったりすると、どちらが効力、威力があるのかがわからない。そうすると、権力の二重性、多重性に関わるので歓迎できないということでしょう、これ自体は」
明石氏
「古来の歴史について、陛下は非常によくご存知です。ですから、弊害もあれば、良かったこともあるのだと思いますけれども、少しご性格との関係になるからはっきりは言えませんけれど、今上の陛下のご性格から言うと、名前はどうであれ、いずれにしても次の天皇、現在の皇太子殿下に全て委ねられると、私は推測をしています」

退位後の陛下のお立場は…
反町キャスター
「役割分担とかがあり得るのですか?」
山内名誉教授
「それはかなり大きな問題で、象徴天皇は全ての国事行為から公的行為に関して臨む方ですね。そのことを現役の天皇、今上天皇として果たし得なくなるから、ご譲位ということになったとすれば、先の天皇が何をなさるのかというのは、これは未解決の問題」
反町キャスター
「そこを解決しなければ、生前退位はあり得ない?」
山内名誉教授
「わかりません。ただ、はっきりしていることはその他の行為はできるということでしょう。その他の行為、つまり、私的行為ということは。私的行為の中でどういうカテゴリーとして考えるかとか、そういう問題はありますが、それはまだ先の話だと思うんです。むしろ天皇の自由意志に基づかない退位の強制の可能性というのは大変大きい問題だと思うんです。と言うのは、主権の存する国民の総意として象徴天皇がある、そうすると、国民の側から、将来においてこういうことが恒久法化され、成文化されたとすれば、その場合に国民の側から我々が考えている天皇陛下や皇后様はこういう方達でないというようなことになって、退位ということが言われたりする。世論、メディアを通してそういうことが拡散するかもしれない。あるいは政治の側からこういう方々にはということになりかねない。実際に、明治・大正期にはそういう懸念があったわけですね。ですから、そういう点で、退位というのは恒久法による成文化というのには慎重でなければならないという面があるんです。もう1つは、退位する自由が与えられるならば、即位をする自由もあるはずだと。そうすると、将来において即位をしたくないという人が出てきたらどうするのかという問題も考えないと、これは法のもとによって定められていることだから、そう簡単に改正ということですぐに明日からとはいかないということがあるんですね」
反町キャスター
「負担軽減の有識者会議でそこまでやりますか?」
山内名誉教授
「そういういろいろなことを細かく念頭に置くのが将来のことになるかもしれません。申しているのはあくまでも原点の問題に関して言っているのであって、こういうことについての規定とか、どうあるべきかということのさしあたっての議論ではなく、そういうことを話される人は出てくると思います。今回、ヒアリングをしていった場合。そういう中で出てくるのはその問題であって、天皇が恣意的に退位をする可能性、今度は天皇陛下が逆に自分としては辞めたいと。辞める権利があるというようなことが法律的に定められているということになると、なかなか皇室の安定的継承や天皇の地位の安定的な継承が、現在の天皇のお考えにもかなわないことになるかもしれない。そういうことを相対として考えていくと。そういう議論がヒアリングで専門家達からも出てくるのではないかということです」

山内昌之 東京大学名誉教授の提言:『伝統を未来の希望に』
山内名誉教授
「伝統というものを未来の希望に変えていきたい。天皇制というのは大変古い伝統、古い歴史に由来していますが、それは将来の世代においても、また新しい形で未来の希望になるのではないかと。また、そうなってほしいという願いです」

天皇陛下の同級生 明石元紹氏の提言:『日本独善からの脱皮 世界レベルでの御活動』
明石氏
「伝統は大事なことだし、難しいことだと思いますけれども、あまり伝統だけに頼らずに、これからは次の天皇のことを考えています。日本独善からの脱皮。要するに、日本しかわからないことはやめましょうと。世界レベルでのいろいろな平成天皇がなさっていたような行為を世界レベルでやっていただきたいというのが私の希望です」