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2016年9月7日(水)
櫻井よしこ×中国野望 習政権狙う『新戦場』

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト
小原凡司
東京財団政策研究調整ディレクター兼研究員

櫻井よしこ×中国の野望 どう見た?日中首脳会談
秋元キャスター
「今週月曜日に行われました日中首脳会談についてまず聞いていきたいと思います。いかがですか?」
小原氏
「今回の日中首脳会談は、その後の安倍首相の記者会見を見る限り、安倍首相は相当、ご不満だったのではないかと思います。これは記者会見の冒頭、暫くの時間、G7という言葉を何回も繰り返されたんですね。このG7というのは、中国は憎む枠組みですね。これは中国が含まれていない枠組みで、このG7が世界を決めていくのだと言わんばかりの発言をずっと前半されたというのは、不満の表明だったのではないかと思いますし、これは報道されていたように、安倍首相は、日本の立場をもちろん、述べられたわけですが、特に東シナ海、尖閣諸島周辺での行動の自制を求めた時に中国、習近平主席が、中国には中国の認識があるが、と言って、そのまま、しかし、衝突は避けなければならないという海空連絡メカニズムの話をされてしまったと。これから、いったん衝突を避ける話をしましょうと言われたのに、もう1度下がって避難するというのは非常に難しいわけですね。と言うことは、今回は、実は中国、8月に入ってから外交姿勢に少し柔軟性が出てきた。これは中国の国内の政治、権力闘争にも関わっている問題だと思いますけれども、うまくやった。このスカボロー礁もそうで、この時期にやって、しかも、オバマ大統領は非難をしなかったわけです。それどころかパリ協定を持ち出され、環境問題です。でも、オバマ大統領にとってはこの環境問題しか、もう得点を上げることはできない。レガシーにならないわけですね。これを持ってきた。オバマ大統領は強くは非難をしなかったわけですね。しかも、スカボロー礁のところを埋め立てるかもしれない行動まで見せて。それでもアメリカは手を出さないということを世界に見せてしまったわけです。また、8月16日、17日には、中国で、中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)の高級幹部会合を開いて、中国は、これまで絶対に嫌だと言っていた、南シナ海における行動規範、コードオブコンタクトの草案、これを来年の半ばまでにメドをつけるということを中国側から提案したんですね。これを言われたらASEANは黙ります。ASEANは衝突をしたくないわけですから。さすがに国際秩序というよりも、自国の利益が優先ですね。表面的には国際秩序を守らなければいけない、法の支配を守らなければいけないということは言わなければならないのですが、彼らの利益が何なのかということも考えないとなかなか中国には対抗できないということだと思います」
櫻井氏
「小原さんがおっしゃったことの中にいくつもいくつもすごく大事な、中国なりの理屈の立て方と、その虚実が含まれているんです。安倍さんがG7を何回も言って、それに対して中国が内心、すごく反発、それはもうわかるわけです。G20の方が本当の意味で世界を動かすのだと彼らは言ってきたわけですね。でも、そのG20 が世界を動かすのだと言った時に、動かす資格とは何か。これはどの国も受け入れることができる共通のルールというものですよね。それは国際法であるかもしれないし、その2国間、もしくは多国間の合意であるかもしれないわけですね。でも、国際法という意味において中国は南シナ海の裁定を紙屑だと言っているわけですから、G20の方がG7よりも価値があるだなんてことを言っておきながら、では、そのG20を中国が牛耳る時は、中国だけのルールになるのねということで、自らの立場を否定しているわけですね。それから、コードオブコンタクトという行動規範という話が出ました。これは南シナ海を取り囲む、東南アジアの、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどと、中国がずっとやってきたことですよね。やってきたことなのだけれども、中国はそれを守ろうとしないわけですよ。だから、その行動規範をつくりましょう、それを実行しましょうと言っても、中国がいつも言ってきたのは2国間の関係でしょうと。その会議には応じるけれども、その会議に応じている間にも埋め立てをするわけですね。どんな約束をしても、これは言葉のうえでは美しい約束ですけれど、行動に結びつかない。これは私達も過去体験から知っているわけですから、中国の言っている理屈をそのまま額面通りにとったら、とんでもないことになりますよということをまたまたここで示しているのですが、でも、小原さんがおっしゃったようにオバマ大統領がパリ協定しかないのだと、自分のレガシーを残すには。そういった自分の都合というか、短期的な、しかも、自分の国の利益と言いますか、その場の利益に民主主義の国というのは振りまわされるんですよね。だから、そこのところがある時には大衆の思いを無視してでも、強力なリーダーシップを発揮することができる体制と、こちら側との違いだという気がしますね」

尖閣は? 東シナ海の今後
秋元キャスター
「日中首脳会談で安倍総理は習近平国家主席に『東シナ海での中国公船や軍による特異な活動は極めて遺憾だ。一方的に緊張をエスカレートさせる行動をなくし、状況を改善すべきだ』と抗議しました。それに対して習近平国家主席、『対話を通じて問題を適切に処理し、東シナ海の平和と安定を共同で維持すべき』と話したんですけれども、櫻井さん、このやりとりをどのように見ていますか?」
櫻井氏
「ずっとこのようなやりとりが日中間で続いてきたわけですね。東シナ海、それから、これは尖閣もそうですし、ガス田でのこともみんなそうですけれども。中国は必ずその問題を適切に処理するとか、話し合いとか、美しい言葉で言うんですけれど、実際に中国がしてきたことというと着実に彼らの利益を得るための行動を進めてきているということですね」
秋元キャスター
「これまでの中国の海洋進出のプロセス見ていきますと、領有の主張を、まず、します。そのあとタイミングを見計らってまず海洋調査を始めて、次にターゲットとする海域に公船や軍艦を展開して、軍事的プレゼンスを大きくしたあとに漁民など文民が上陸して、続いて、軍が上陸し、最後は軍事拠点の建設を進めるというのがだいたいのパターンのようですけれども、櫻井さん、尖閣もこうした中国の、海洋進出のプロセスの途中と見ていいのでしょうか?」
櫻井氏
「そうですね。南シナ海で起きたこと、起きていることは、そのまま、ほぼ同じようなプロセスで、東シナ海、尖閣でも起きると思わなければいけないですね。その順番から言うと、次は漁民の上陸。漁民と言っても本当の漁民ではなく、軍人が漁民に化けているというような人達が上陸するわけです。この前、15隻の公船と200、300隻の漁船が来ました。あの中に民兵というのですか、海上民兵、元軍人であったりした人達が100名も入っていたといいますよね。中国の漁船は人を運ぶ時に200隻で1個師団くらい運べてしまう。ですから、非常に彼らは機動的な訓練もあれでやったと思った方がいいし、昨年、一昨年でしたか、太平洋側に赤サンゴ、紅サンゴを獲りに中国が、あれも同じ様な訓練の一環だと見るのも可能だと私は思っていますね。だから、必ず、彼らは尖閣を獲りにくるのだろうと思います」
反町キャスター
「小原さん、どうですか?このプロセスで言うと、櫻井さんの話だと、次は上陸だという話になっちゃうんですけれど、そのぐらいの危機感を持って尖閣の状況を見た方がいいと感じますか?」
小原氏
「はい。まず現状から言えば中国はすぐに上陸することはないと思います。でも、これは、中国はやる意図がないのではなくて、日本の海上保安庁の方が優勢だからですね。これは中国の研究者と話していても言われるのは、これまで日本と尖閣の問題を話しても、公平な議論ができなかった。それは海上保安庁の方が圧倒的に優勢だったからだというんですね」
反町キャスター
「それは数的な優位ですか?」
小原氏
「数もそうですし、実際のオペレーションもそうです。ですから、中国にとっての公平というのは自分達が現状を変えられる段階になって公平なんですね。それは、しかも、力によって変わるということですよ。これは最初から、正義だとか、公正があるわけではなく、力によってそれは変わるんだということですね。中国に対して議論がなかなか通じないというのは、中国は今のルール自体が不満と言っているわけです。これは外交部も現在の国際関係は不公平と不平等が突出しているということを公言していますし、昨年、習近平主席は公平とwin-winを核心とする新型国際関係を構築するのだと言いました。公平とwin-winを核心とするのが新型とすると、今の国際関係はそうではないと言っていて、中国はそれを変えると言っているんです。と言うことは、同じゲームをするつもりはないということですね。そういった相手に対して議論をしましょうと言っても、それはなかなか本音のところでは議論にならない」
反町キャスター
「そうすると、この間来た公船15隻、漁船200、300隻という、大船団が来ましたというのは、要するに、中国側にしてみたら、魚があるから来るんだよという説明をする人もいるんですけれど、次は本当に上陸する可能性もあるということは、あの状態というのは、数的な、質的な日本が優位というこれまでの状況を逆転した瞬間だったわけですよね」
小原氏
「はい。ただ、海上保安庁と衝突するところまで行っていないですね。中国は2014年1月の海洋局会議で、コーストガード、海警局の船の大量建造を決めて、しかも、大型船をつくったんです。1万トンを超える。なぜこんな大きな船とつくったのかというと、体当たりして相手の国の船を排除するためだと言うんですね。そうして自分達のエリアを、自分達で獲っていくと言うんです。でも、ここまでまだやっていないですし。中国の戦略はよくサラミスライスと言われますけれど、相手が気づかないうちにというか、我慢できる範囲で、少しずつ相手のとり分を獲っていく。自分の椅子を獲っていくので、それから考えると今回のは明らかにエスカレートの幅が大き過ぎる」
反町キャスター
「ちょっとサラミを厚く切ってしまった感じ?」
小原氏
「はい。大きな流れは変わらないですね。尖閣を獲りに行くということを放棄することはないです。実効支配を崩すための方法というのはこの流れであることは変わらないのですが、少しずつだったんですね。これがいきなり飛び上がったのは、別に理由を考えなければならないと思っていまして、これは中国の国内の問題だと思っています。ですから、その大きな流れから外れることはこれからもあります。急にエスカレートしたり、沈静化したり。でも、それが、そのまま流れが変わるのかどうかというのは、しっかり見極めないと誤るのではないかと思います」
櫻井氏
「今のお話の中で、私達日本人が本当に自分のこととして認識しておかなければいけないことがいくつもあって、それは小原さん、向こうは大型の船つくってきましたと。1万トン以上のもの。では、1万トン以上の船ってね。日本は戦後、軍事の勉強、誰もしていないでしょう。大学で軍事の講座がないですから。こんな国ないですよね。だから、私達、1万トンの船がどのぐらい大きいのかがわからない。100トンの船もどのぐらいなのかわからない。もうボヤッとしているわけですね。でも、1万トンの船って、ものすごいんですよ。海警局は日本でいうと海上保安庁にあたります。もちろん、実質的には人民解放軍の海軍の船がドンドン海警局に渡されて、白いペンキを塗られたりしているだけの話ですから、両者がドンドン融合していることは確かですけれども、建前上は日本の海上保安庁に相当する海警局が1万2000トンの船を10隻つくったんですよね。海上自衛隊、我が国の軍隊ですよ。1万トン以上の船5隻ぐらいしかないですね。限られた数しかない。向こうは軍隊でもないところが、少なくとも新たに10隻つくってしまった。我が国の海上保安庁の船というのは1500トン、2000トンとか、1番大きいので7000トン、8000トンですよ。ですから、圧倒的な力を向こうは築きつつあって、おっしゃったように、彼らが上陸しない理由は、したいのだけれども、まだ、海保ががんばっていて、どうも上陸をするといろいろと問題だから、時機を待っているのだという時期ですね。それは、彼らが船を増やし、人員を増やし、ドンドン日本に送りこんでくるということによって、力の差が開けば、これは獲れるわけですよ。2020年といったら東京オリンピックの年ですけれども、その時までに、今の見込みですけれども、日本と中国の軍力の差が、日本が1で向こうが5になると言われているんですね。これは孫氏の兵法で言うと、もう戦って十分勝てるわけですから。即、戦って、獲るという段階に、あと数年で到達してしまう。このことを日本人が、日本国民の私達がきちんと認識をして、では一体、守るにはどうしたらいいかと考えられないといけないと思うんです、政府もね」
反町キャスター
「そうすると、日本は防衛費並びに海上保安庁の予算というものを拡充するしかない?選択肢としてはそれだということになりますか?」
櫻井氏
「選択肢はいくつもあるんですけれども、1番喫緊のことはそこだと思いますね。いろんな、アメリカと協力するとか、インドと協力する、オーストラリア、東南アジアと協力する、これももちろん、大事ですけれど、でも、自分の国を自分の足元で守るというのは自分の力でしかないわけですね。だから、そこのところの守る力をまず今は圧倒的に足りないのは客観的事実ですから、私が防衛大臣とか、海保のトップだったら、眠れぬ夜を過ごしますよ、心配で、心配で。だから、そういった実態をよく国民の皆さんにお話して、ちゃんとここをやりましょうということで、予算を増やして、船を増やして、飛行機を増やして、もっと大事なことは人間を増やすということです。そうしないと本当に守れないと思います」

習政権が狙う『新戦場』
秋元キャスター
「さて、ここまでは中国が強める海洋進出について聞いてきましたけれども、ここからは中国が進める新戦場の軍事戦略について聞いていきます。今や陸、海、空に加えて、サイバー空間や宇宙も新たな戦場と言われて、中国は積極的に手を広げていると言われています。新たな戦場の1つサイバー空間における中国の軍事戦略について聞いていきたいと思うのですが、中国軍のサイバー攻撃部隊として知られるのが、61398部隊です。この部隊の存在が大きくクローズアップされたのは2014年のことですけれども、この61398部隊がアメリカの原子力や金属、太陽光発電の企業に対して電子メールを送りつける手法などでサイバー攻撃を仕かけ、原発の配管の設計情報など機密情報を盗んだとして、アメリカの司法省が中国の将校5人を刑事訴追しました。米中のサイバー戦争とも言われ、大きな外交問題にも発展した事件だったわけですけれども」
小原氏
「この61398部隊というのはちょっと組織が変わりましたが、過去は総参謀部の第三部というところがやっていました。第二部というのが、本当はスパイなんかをやっているところで、情報をやっているところですけれども、第三部はもともと技術偵察部隊で、技術情報を取ってくる部隊ですね。この部隊は、そこに所属をしているということは情報収集が目的で、まさにサイバー攻撃を仕かけて、機密情報などを盗む部隊ですね。特に彼らのメインの仕事は技術情報を盗むことです。これは、今回は原発の配管ですけれども、その他にも、軍需産業ですとか、そういったところに繰り返しハッキングを仕かけて、2014年の間に数十件のハッキングを仕かけて、機密情報を盗んだということが言われています。この部隊はハッキングをして情報を盗む部隊ですけれども、中国にはこの他にも、情報を盗るだけではなくて、様々なサイバーの部隊はあると思います」
反町キャスター
「情報を取る以外に、そのサイバー部隊の行動、具体的にどういう攻撃を仕かけてくるのですか?」
小原氏
「これはマルウェアという悪意を持ったソフトを、ファイルを送り込むんですね。これが発動するとそのコンピューターがコントロールしている機械の作動を狂わせることができます。これは2007年には早くもアメリカでは実験が行われて、発電所の発電機に、これをコントロールしているコンピューターにマルウェアを送り込むとどうなるかというのを撮影したんですけれども、何と爆発的に破壊されてしまったんですね。予想していたよりもはるかに大きな破壊だったので、見ている人達は非常に危機感を高めたと言われていますけれども、これでアメリカはサイバー攻撃であっても、物理的な破壊を伴うことができるとわかったわけです。実際にイランの核兵器のためのプルトニウム、遠心分離器、これにスタックスネットというマルウェアが侵入をして、その遠心分離器の回転数に影響を与えたんですね。これによってその機械を作動不能にして核兵器の材料を取り出すことができなくした。これによってイランの核兵器開発は10年遅れたと言われています。アメリカはさらにこのインフラに対するサイバー攻撃は軍事攻撃だと見なすと。これに対して自衛権を発動すると明確に5、6年前だと思いますが、言っています。それほど、サイバーというのは情報を盗るだけではなくて…」
反町キャスター
「武器ですね、もう、それ」
小原氏
「意図と能力のあるものにはほとんど無限の可能性を与えるということが言えると思います」
櫻井氏
「21世紀の戦争というのは、サイバー戦争と言われていますよね。宇宙空間を巻き込んで。もう人類の中ではサイバー戦争が行われているんですよ。何年でしたか、ロシアとグルジアが戦争した時がありました。ロシアはコテンパンにグルジアをやっつけちゃったわけですけれども、確かにロシアの戦車も行ったんですけれど、その前にロシア愛国青年同盟でしたか、というような団体がいて、これは公式的には軍とは関係ないのだというのですけれども、おそらくつながっているだろうと見られているところが、グルジアのありとあらゆるところにサイバー攻撃をかけた。電力、交通網、それから、銀行、金融機関。本当に何も動かなくなったところに攻め込んだらお手上げですね。そのようなことが実際に起きているわけですよ。だから、このサイバーというのは先に攻撃をかけた方が勝ち。サイバーでは先制攻撃した方が圧倒的に勝つんですね。そのような性質を持って、しかも、わからないところでサッとやってのけることができるというので非常に恐ろしい形の戦いだと思います」
反町キャスター
「小原さん、中国の61398部隊というのは実際にそういう攻撃力があるとしたら、目標はどこの国で、何をしようとしているのかというところ。はっきり言えば、アメリカを叩こうとしているわけですか?」
小原氏
「61398部隊というのは、そのうちの1つの部隊でしかなくて、こういった部隊は数多くあるんですね。この技術情報偵察部だった、総参謀軍の第三部の部隊は、基本的には情報を盗むことが主たる目的だと思います。この主たる先は、もちろん、アメリカです。アメリカの軍需産業が持っている、イージス艦の情報も盗まれていたとも言われたこともありますし、その他に、中国の実は空軍の基地に、ステルス機のまったく同じ形の模型が置いてあるのが衛星写真で撮られたりですね。これは設計図が抜かれているということです」

サイバー攻撃と自衛権
秋元キャスター
「安倍総理は昨年、このような見解を述べられています。『一般論として申し上げれば、サイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられる』。具体的にはどのようなケースが想定されるのでしょうか?」
小原氏
「サイバー攻撃を100%防御するのは不可能で、一般的にはマルウェアですとか、悪意を持ったソフトが先に開発されて、それを止めるための技術ができる。と言うことは、必ず先に攻撃がある。技術はそれに沿って進んでいくわけですから現在のコンピューターでもひっきりなしにサイバー攻撃を受けている。これを防御しているつもりでも必ずマルウェアが入っているのだという認識を持たなければならない。しかも、それが必ずいつか動き出すとなると、それに対する防御はできないわけですから、そうなると、その相手が誰かを必ず突き止める能力、その相手に対して相手のネットワークを完全に破壊できる強いサイバー能力を持っていないと、相手に対して抑止は効かない。ですから、アメリカは、サイバー部隊は防御の部隊と攻撃の部隊を一体化して新しい組織になりました。これはアメリカがどのようにサイバー空間でのオペレーションを考えているかを示すものだと思います」
反町キャスター
「自衛権を発動するというのは自衛隊を使うという意味なのですか?」
小原氏
「自衛権を発動するということは有事だということですから有事認定がされないと個別的自衛権は発生しない」
反町キャスター
「どこからが武力攻撃で、どこまでが産業情報を盗ろうしているのかが、わからないですよね?」
小原氏
「これは、サイバー空間の新しい概念でもあるのですけれども、地理的な概念も時間的概念も超えるということです。物理的な破壊まで伴うことができる。しかも、それに続いて軍事攻撃がされるかもしれないという性格のもので、何が起こるかがわからない部分が多い。何でもできるのかもしれない。IoT(モノのインターネット)のように、インターネットを使ってモノを動かすことができるようになってきているということは、インターネットを使ってモノを破壊することも、あるいは自由に乗っ取ることもできるということです。ですから、ここで言われている武力行使の一環というのは、物理的な破壊を伴う念頭に置いていらっしゃるのではないか。あるいはこれに引き続いて軍事行動が行われようとしているという兆候がある時には武力攻撃の一環と捉えられるのではないか」
櫻井氏
「これは日本独自の答弁だなと感じますね。日本は非常に穏やかな国ですよ。できるだけ武力、力を行使しない方がいいとされてきた戦後70年がありますね。その中で私達の国を守るコンセプトは専守防衛ですね。たとえば、いろんな有事があっても、空の有事があっても、航空自衛隊は攻撃用の兵器がほとんどないわけですから、専ら守るしかない。でも、世界は違うんですね。アメリカは何年か前に、ある一定のサイバー攻撃を、武力とか、産業とか、一切関係なく、ある一定以上のサイバー攻撃に対して、これを戦争行為とみなしますよとはっきり言っているわけですね。それは商業目的で入っていろいろな技術を盗んで、自分の国のいろいろな企業にまわして、そこで経済力をつけて、競争力をつけて、やってくるというようないろいろなサイクルがあるわけですから。他の国は攻撃を受けることが明らかな場合は、あらかじめ先制攻撃をしたりとか、報復攻撃をしたりということは十分に考えられるのですが、日本でサイバー能力が周回遅れをしている1つの理由は、専守防衛という考え方があって、こちらからは攻撃をしかけないという考え方に縛られているんです。ですから、私は、日本はすごくサイバー攻撃の被害を受けていると思うんです。民間企業はそれを言いませんね。それを公表した途端に株価が下がったりということもありますから。言わないですけれども、すごく被害を受けていて、大変な目にある時に、総理としてこのようなことを言わざるを得ないところまで広がって…。国としてもっと強く、防御のための、抑止のための体制をつくるということにいかないといけないと思います」

日本のサイバー攻撃対策
秋元キャスター
「2014年には自衛隊サイバー防衛隊が発足し、2015年には内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発足させ、現在は160人体制で対策に取り組んでいて、内閣府は今年中に180人程度を目指すとしています。一方、海外を見てみると、米国のサイバー任務部隊は細かく分かれていまして、人数も2018年9月までに6200人規模にするとしています。アメリカと比べると、日本は規模として小さいと」
櫻井氏
「アメリカに比べてもそうですし、中国と比べてももっとそうだと思うんですね。これは私達がこういうレベルに今いるということを認めざるを得ないわけで、ここからどうやって、できるだけ早く専門家を増やしていけるかですが、日本の民間企業の中にはかなり優秀な人達がいるんですね。だから、いざとなったら、こういう民間の人達にも来てもらって、協力してもらうという体制をつくっておくべきだと思います。中国はいざという時にワーッと集まるわけですね。我が国もそのように、どこにどういう優秀な人達がいて、どういった時に協力をしてもらえるかということの民間ネットワークづくりみたいなものをしておかなければいけないと思います」
反町キャスター
「この規模で守れるのかどうか?被害の実態が明らかにならないと人員を増やすのも難しいと思うのですが」
小原氏
「日本のサイバーセキュリティの担当機関というのは総務省であり、経産省です。ここには外交安全保障の概念というのは入ってこなかったわけですけれども。ですから、情報をファイアーウォールみたいなものをつくって守るかということだけに集中してきた。しかし、今の状況はサイバーウォーと言われる時代になった。しかも、ハイブリッドに行われる。安全保障の概念は必ず入ってこなければいけない。その部隊を自衛隊に置くのか、他に置くのかはまた別の話ですけれども、どのようなサイバーオペレーションを行うのかということを考えなければいけないのだろうと。特にアメリカが6200人で済んでいるのは、アメリカはサイバー攻撃に対して実際に軍事力を行使すると言っている。自衛権を発動するということは、アメリカは相手の国に対して攻撃できるんですよ。ですから、重要インフラへのサイバー攻撃は軍事攻撃とみなして自衛権を発動する、これは国防長官が言っていますから。と言うことは、相手の国、誰がやっているかを見つけたら、そこにミサイルを撃ち込むぞと言っているんです。そこまでやってもサイバー任務部隊は6200人。日本の場合は相手を攻撃できない。策源地攻撃をすると言った時にはもっといろんな議論が必要になる。と言うことは、アメリカ以上にサイバーに関わる人間が必要なわけだと思います」

『新戦場』宇宙開発の脅威
秋元キャスター
「中国は積極的に宇宙開発を進めているようですが、軍事的にどういう意味を持つのでしょうか?」
櫻井氏
「これは非常に重要な意味を持ちますよね。世界最強の軍を持っているアメリカの軍の強さというのは宇宙空間を飛んでいる軍事情報衛星が取ってくる情報を直ちに現場につなげることができて、ミサイルもピンポイントで攻撃ができる世界最強の軍ができているのですが、逆に言うと、ここのところを断ち切られてしまえば、アメリカの優位性がなくなるわけですね。2007年に人工衛星破壊実験に成功と中国は言いました。地上発射で高度820~830kmところにある中国の人工衛星を破壊したんです。その時、世界は衝撃を受けたんです。中国は820km上空のものを破壊することができるとなればアメリカの衛星も破壊できるわけで、それをされた途端にアメリカの空母はただの鉄の塊になると比喩的に言われたくらいです。中国が35基の衛星ネットワークをつくって、全世界を見ることができるように2020年頃にします。その頃までに宇宙ステーションが完成します、独自の。この独自の宇宙ステーションというのは、他の国にもどうぞ使ってもいいですよと言葉では言っていますが、それを信じてはいけないと思うんですね。中国だけの宇宙ステーションをつくる意味は何かと。地球規模のネットワークを持って、さらに月にランドローバー等を走らせたりしてやがて月に基地をつくりたいと。月の基地と自分たちだけの宇宙ステーションをつないで、それを地上の各基地とつなげれば地球を取り巻く宇宙全体のコントロールができるんです。ここでアメリカと同等になれるわけです。アメリカの力はすごいですから、そんなに簡単に同等になれるとは思いませんけれど、そこを目指していると考えた方がいいと思います」
反町キャスター
「この緊張関係のプレイヤーは中国とアメリカだけですか?ロシアも噛んでいる?」
小原氏
「ロシアも噛んでいます。ヨーロッパももちろん、やっています。中国は北斗というGPSに変わるような位置情報システムを示す衛星をドンドン打ち上げているのですが、まだ足りない。正確さに欠ける。中国の携帯など見ると面白いのは、北斗だけではなくて、ロシアの測位情報も取れる。さらにGPSも取れる。それで自分の位置を把握しているんです。中国とロシアはそういうところで協力していできますけれども、中国はロシアを信用できないので、自分のネットワークをつくると。ヨーロッパはヨーロッパで自分達のガリレオという測位システムをつくるということをやっています。日本は何ができるかという話ですが、中国がアメリカのシステムを破壊する、全部はできませんから、一部を破壊しようとした場合にそのネットワークを補完することができるわけです。これは日本だけではなくて、アメリカの同盟国が全て協力することによってネットワークは非常に複雑で大規模になります。中国がいくら潰しても潰しても、そのネットワークは潰しきれない」

小原凡司 東京財団政策研究調整ディレクターの提言:『感情的にならず 大きな流れを把握せよ』
小原氏
「中国はほしいものは絶対に取りにいきます。この流れは変わらないのですが、その中で突然エスカレートしたり、低下したりすることがあります。それは一時的なものであって、大きな流れというものはしっかり把握しておかないと対処を誤ると思います」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言:『自衛隊の増強』
櫻井氏
「国際協調を進めることも大事ですけれど、まず日本は日本国民と日本国を自分の力で守るための備えを強くしなければいけないということで、ここに海保も入れて、自衛隊を強くする、増やすことが大事だと思います」