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2016年9月2日(金)
日露首脳会談…収穫は 北方領土&経済連携ほか

ゲスト

武見敬三
自由民主党参議院議員 元参議院外交防衛委員長
ポダルコ・ピョートル
青山学院大学国際政治経済学部教授
畔蒜泰助
東京財団研究員・政策プロデューサー

緊急検証『日露首脳会談』 北方領土と経済連携
松村キャスター
「武見さん、今回の首脳会談をどう見ているのでしょうか?」
武見議員
「具体的にはまだよく見えないけれども、過去に捉われない新しいアプローチというのを、こうした経済面でまずお互いに互恵関係をしっかり築いて、その互恵関係のうえに信頼関係と領土問題を解決するためのシナリオをつくっていこうと。実はこの2人のリアリストの指導者同士の間で個人的に行われているというのが、実は見えない新しいアプローチではないかなと」
反町キャスター
「首脳外交ということですね、まさに」
武見議員
「まさに首脳外交」
反町キャスター
「他の人は誰もわからない」
武見議員
「安倍総理のプーチン大統領に対する評価というのは何度か聞いたことがありますけど、非常にリアリスト同士、お互いに信頼し得るような、波長が合うような、そういう認識を持っておられるように私は見受けました。踏まえたうえで、今回の非常にフランクに首脳会談が始まったというのがこれまでの動向、流れではないでしょうか」
ポダルコ教授
「私もまた、先ほどおっしゃられたこととだいたい賛成しています。特にお二人は今回の出会いが初めてではないし、何回ものことなのですが、おそらくこれからも何回もあると思います。私ども、今年を考えると、非常に面白いことに気づきまして、まさに転換期という年でもあります。ご存知の通り、今年、アメリカは選挙が行われて、また近々、来年かそれぐらいには、ドイツとか、また、フランスとか、選挙が予定されていますし、イギリスは政権が代わったばかりですが、韓国もそうだと思います。と言うのは、先進国家のリーダー達の中に、これからも在職という見通しのある方はおそらく安倍さんとプーチン大統領、習近平さんも同じだと思います。これから皆、新しい顔が揃っても、これからのことを全てゼロでスタートして築かなければいけないのですが、プーチンさんと安倍さんの場合は、既にお互いのこともよく存じていまして、またさらに展開するとか、発展するということに向いているのではないかと思っています」
反町キャスター
「9月の2日、3日というのは、9月の2日が対日戦勝記念日ですよね。9月の3日が中国の対日戦勝利記念日ですよね。こういう、向こうにしてみたら日本の帝国主義を撃破した記念すべき日に、今日は東方フォーラムという名目でありながらも、日露首脳会談を、だって、昨年はモスクワでお祝いをしていたではないですか。今年は一方で、手を握り合って、一緒にがんばろうよと。この雰囲気の変化をどう見たらいいのですか?」
畔蒜氏
「もともと昨年も実は安倍総理も招待をされていたんですよね。ただ、これまでは行けなかったのが事実としてあるのですが、9月2日というのは意味があると私は思っています。なぜならば昨年の9月の2日にまさに北方領土問題の交渉の責任者でモルグロフ氏という外務次官がいるんですけれども、彼がインタファックス通信のインタビューで、次のように言っているんですね。まずクリル問題についてはいかなる対応も、クリル問題は北方領土問題ですね、行わないと。この問題は70年前に解決済みである。南クリル諸島は第二次世界大戦の結果に基づき、法的根拠をもって我が国のものになったと。これらに対するロシアの主権と管轄権は疑いないものであると。その一方で、我々は平和条約国家交渉を建設的に続ける準備があると。そのためには日露関係を、全ての分野で幅広く未来志向で前進させる中で、この問題の相互に受け入れ可能な解決策を模索する努力を双方が行う必要があると」
反町キャスター
「昨年ですよね?」
畔蒜氏
「昨年ですね。ロシアの立場というのは、北方領土問題に関しては特に4島の帰属問題に対して、歴史的にはロシアは我々に正当性があるのだと。だけれども、日露関係の日露の友好に鑑みて、領土問題に関しては平和条約交渉という中で、要するに、何らかの妥協点を見つける準備はあると。ただし、先にロシアの歴史的正当性を認めるというのがスタートラインですよというのが、実はロシア側が、昨年の9月に岸田さんが行きました。まさにウクライナの問題が起こって、交渉がストップしていたのを初めて岸田さんを送ることで交渉が再スタートした。そのプロセスですね。その途端にロシアの外務省はこれをぶつけてきて結局、その後、交渉を再スタートしたわけですけれど、歴史問題でまったく噛み合わなくて、全然進まなかったんですよ。その状況を、実は打破するために総理がソチに、今年の5月。それで新しいアプローチという中で、その延長線上で今回のウラジオストックの首脳会談ということは、言ってみたら、要するに、9月の2日にこういうメッセージが昨年出て、今年そこに同じ9月2日に行くということは、これは、私はロシア側からすると、それはある種のシグナルであって…」
反町キャスター
「それは、つまり、日本側にしてみたら、ロシアが北方領土を不法占拠している。向こう側にしてみたら、歴史的にもちゃんと正当な占領というか、領有であり、帰属もロシアにしているのだという、ここの部分を議論している限りは一歩も進みませんよ、ということを向こうから通告されているということですよね?」
畔蒜氏
「だから、歴史問題という、そこからはいったん離れましょうよと」
反町キャスター
「やめようと。ロシア側からの提案を安倍さんが飲んだのがソチにおける、この8項目の提案だった、こういう理解でよろしいですか?」
畔蒜氏
「そうですね。その延長線上に、今回があると」
松村キャスター
「さて、第二次安倍政権になってこれまで10回に渡って日露首脳会談が行われてきました。あらためて主な動きを見ていきます。2013年4月、2014年中のプーチン大統領の訪日を招請します。翌年、プーチン大統領の訪日を秋に実施することで一致します。ですが、クリミア併合の影響で、プーチン大統領の訪日は当面、見送られます。その翌年、メドベージェフ首相が択捉島訪問などで、日露関係は悪化の道を辿っていくことになります。ですが、2015年9月、外相会談で、日露交渉再開で一致ということですね。今年ソチで新しいアプローチで一致ということです。さらに今日はウラジオストックで日露首脳会談が行われていると、このような経緯ですが、武見さん、これまでの動き、経緯、どのように見ていますか?」
武見議員
「私は、クリミア併合の前の時点に戻れたと思います。そのうえで、先ほど、畔蒜さんがおっしゃった新しい解決のシナリオに向けての第一歩が踏み出されたと。その第一歩というのは、実は従来の日ソ交渉の時から同じパターンではあるけれども、経済のファクターというのが極めて大きい。特にクリミア併合、それから、ウクライナへの干渉で、確実に西側、アメリカを中心とした経済の制裁、これは効いています。加えて、石油の価格の低迷というのが決定的にロシア経済にダメージを与えてきて、今年はまさにマイナス成長でしょう。こういう中で国内の不満というものを、これまではナショナリズムに訴えるような形で、領土問題で、逆に点を稼いできている。しかしながら、それを続けるということの限界も、そろそろプーチン大統領に出てきて。そういう時にあらためて今度は、経済そのものの、回復のシナリオを日本経済と連携をさせることであらためてつくり出すきっかけを、東方経済フォーラムを通じてつくりだそうという考え方をプーチン大統領が持ったとしても、私は極めて自然な流れだと思って見ていました」
松村キャスター
「ポダルコさん、2015年の9月ですね。交渉再開で一致ということですが、交渉がストップしていたところで再開。ロシア側の態度の変化、何が考えられますか?」
ポダルコ教授
「おそらくロシア側の態度はそれほど、変わっていないですし。と言うのは、先ほど、おっしゃった通り、クリミアの話、(クリミア併合の)前の状態に戻しているだけですよ。ところで、私、個人としては、クリミアの話とか、クリミアに関わる全てのやり取りはなるべく早く、そのページを変えて、新しいアプローチか、新しい態度ということに戻して、また、さらに進めたいと思います。なぜならば地理的にしろ、常識的にしろ、日本とクリミアは互いにあまり関係もないし、利益もないですよ。むしろ日本は、実は私個人の意見かもしれないけれども、日露交流は、その1番初期から現在に至るまでいつも2か国ではなくて、日露というよりも、第三者が必ず参加した交流ばかりですね。その時代によっては、だから、18世紀に遡る話なのですが、時代によっては、その交渉はオランダであろう、イギリスであろう、アメリカであろうということでむしろ2か国よりも3か国という交渉ばかりでした」
反町キャスター
「戦後、ここ数十年の日ソ、日露交渉というのは、つまり、アメリカが事実上、噛んでいた。日本はアメリカの表情を見ながら、ソ連、ないしにはロシアとの交渉、話し合いを進めてきた。そういう意味?」
ポダルコ教授
「もちろん、そうです」
反町キャスター
「安倍さんとプーチン大統領は、アメリカ抜きでやろうという気持ちが、この2人の間にあると感じます?」
ポダルコ教授
「完全に抜きでやろうということは、プーチンさんの場合はそうだと思います。安倍さんはどうですかね」
反町キャスター
「まず前提として、ポダルコさんが言っていた、戦後の日本と、日ソないしは日露の外交交渉というものは、アメリカ抜きではなく、常にアメリカを意識した交渉であって結局、単純な相対の交渉というのはなかったのではないかという指摘はいかがですか?」
武見議員
「日ソ共同宣言の当時の経緯を見ても明らかだし、その当時、ダレス国務長官の介入というようなことがありました。それから、さらに尖閣諸島にかかわる領土の主権の問題について米国は曖昧な立場をとっていますけれども、北方四島の問題だけについては、アメリカは日本の主権というものを認めると明白な立場をずっと一貫して持ってきているんですよ。なぜこのような使い分けを米国がするのか。それは当時の日ソ関係というものが、アメリカの立場から不必要に改善されることを、まさに阻止する障害物としてのポイントがあると思います」
反町キャスター
「アメリカから見て不必要な改善というのは、日本にとって必要な改善なのですか?」
武見議員
「それは、時には、必要な改善も当然あったわけです。それを、最小限の形で実現したのが日ソ共同宣言であったわけです。ただ、それを今、時代が変わってきた。米国の役割というのも、これから微妙に中長期的に変わる可能性が出てきている。しかも、中国の影響力というものは軍事的にも確実に広がる傾向がある。こうした中において中長期的に日露関係というものを安定化させておくということは、日本の戦略的な立場というものを、中長期的に安定したものにするために、極めて重要だという認識をおそらく安倍総理は持っておられるんだと」
反町キャスター
「プーチン大統領も持っていると?」
武見議員
「はい。向こうにとってもそうした戦略的な役割についての、お互いの認識というものがそこでできあがれば、合意ができるわけですから。それが1つの基盤になって、平和条約の締結に向けてのシナリオができあがるということは、1つのシナリオとしては考えられると思う」
反町キャスター
「プーチン大統領のインタビューを米国の経済通信社ブルームバーグが、昨日とっています。ポイントとして、プーチン大統領はインタビューに対し、我々は北方領土を取引しない。我々は日本の友人達とこの問題の解決の糸口を見つけたい。どちらか一方が損をしていると感じることのない形で解決をすることだと述べています。また中国との領土問題の解決についても話をしていまして、中国と40年間、話し合い妥協点が見つかった。非常に強い信頼関係に基づいて可能となったということをプーチン大統領がインタビューに答えているんですけれども、畔蒜さん、北方領土を取引の材料としないのだと。どちらかが、一方が損していると感じることのない形で解決をすることだ。これはどういう意味に感じますか?」
畔蒜氏
「実は、記者の質問があって、記者の質問が、要するに、これから経済協力の代わりに、あなた達は、ロシアは、北方領土の、要するに、クリル諸島に一部でも引き渡すのですかという、そういう聞き方をされているんですね」
反町キャスター
「バーターしますかと言われているわけですね」
畔蒜氏
「そうです。なので、それはやりませんよと、当然、言いますよね。ロシアって。ただし、この問題、先ほども平和条約交渉の中で、双方が歩み寄る中でこの難しい解決策を見つけなければいけないのだという、先ほどの、モルグロフのメッセージは、ある意味、共通しているところですよね」
反町キャスター
「そうすると、プーチン大統領にしてみたら、北方領土問題の解決に向けて国内の保守派を意識した時には、経済とのバーターで島を渡すということは、これはしないんだよと、これは必ず言う。鉄板の選択ですよね」
畔蒜氏
「そうですね」
反町キャスター
「そのうえで、損していると感じることのない形で解決を目指しているんだよと。これは先ほど、ずっと安倍さんがアプローチをしているプーチンに対する強い期待感が出ているという言い方になりますか?」
畔蒜氏
「そうですね。ですから、経済協力も含めた、要するに、総合的な2国間の発展のその先にまさに出口がありますよ、というメッセージなわけですね、これは。実は結構、時間がかかるのではないですかというメッセージだと思います。そんな1年、2年ですぐにできるとは私は思いませんけれどね、というプーチン大統領のメッセージ」
反町キャスター
「そうすると、北方領土、シベリア開発の話も今回ビジネスミッションも連れて総理は行っているわけじゃないですか。このビジネスミッションの話と島の話というのは当然分けて、日本側としてもロシアが納得するように分けて話していくとすれば、経済先行で島は40年待てと言われているように聞こえますよ」
畔蒜氏
「40年かはどうかはわかりませんけれども、そこは経済協力が先ですよ、というスタンスは明確だと思います、ロシア側は」

『平和条約』の必要性
反町キャスター
「総理の発言を3つのポイントにまとめました。平和条約について2人だけで突っ込んだ議論をした。新しいアプローチについて手応えを強く感じることができたと。11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)と12月15日の山口県で首脳会談を約束した。この3つをどう思いましたか?」
ポダルコ教授
「それは現実的だと思います。と言うのは、平和条約の話にしても、また、北方領土問題にしても1番欠けているのは、私の意見では、もし解決策ができたら、そのあとのこと…。もしも今日問題が解決されたとしても明日はどうなるのですか。あくまでも日本とロシアは地理的に1番近い、お隣です。あくまでもお互いのニーズをよく知っていまして、あくまでもそれぞれのニーズを満たすことができるのですが。その交流をどうやって展開するかということはとても大きい問題だと私は思います。まさか日本側から、北方領土問題を解決しても、ロシアを無視していいという気持ちはないでしょう。ロシアからも平和条約を結んだら、これから日本との交流はおしまいとも考えないでしょう。だからこそ経済協力とか、経済的な交流は一時的な結果ではなくて、むしろ将来に及ぼすという話なので、それこそが1番大事だと思っています」
反町キャスター
「島とか、北方領土とか、こういう話を、領土問題を一切使わずに平和条約の交渉を加速していく、平和条約については2人だけで突っ込んだ議論をした。平和条約がない異常な事態を打開したい状況だと。平和条約という言葉を、ずっと使っていた安倍総理のその真意。この平和条約という言葉の中に領土問題は含まれるのか、ないしは平和条約をクリアしたうえでの領土問題の話なっていくのか。この順番をどう見たらいいのですか?」
畔蒜氏
「ここは総理とプーチンさん、まさにどういう話し合いをされたのか」
反町キャスター
「どう読むかを聞きたい」
畔蒜氏
「日本政府の基本的な立場は平和条約の前提として領土問題の解決という、そこは崩していないので、そこが大きく変わるのだとしたら、新しいアプローチ」
反町キャスター
「譲歩だと、国内の、日本の保守派から言われませんか?」
畔蒜氏
「言われるでしょうね、日本の保守派からは。だから、そこはこのあと、議論もあると思いますけれど、実は日露関係というのは領土問題だけではないですよね。つまり、現在のアジア、安全保障環境を見ても、非常に劇的に変化をしている中で、そういう中でロシアとの関係を、この大きな戦略的なコンテクストの中で続けていくのかというのも、日本の総理としては大きな課題で、その中の最終的なおそらくゴールとして、要するに、平和条約というのがあるのだとすると、いろんなプロセスがあり得るかなと思っています」
反町キャスター
「平和条約先行、領土問題後まわしという政治的な順番、あり得ますか?これまで日本はそのスタンスをとったことがないですよね?」
畔蒜氏
「ないですね。ですから、難しいと思いますね、そこは」
反町キャスター
「そこまでしないと、経済で先払いと言いましたけれど、シベリア開発協力で先払いをして、なおかつ平和条約先行、領土問題後まわしという、そこまで日本は、敢えて言えば、譲歩したうえではないと、領土問題に指をかけることもできないと思った方がいいのですか?」
畔蒜氏
「いや、私の理解では、平和条約は領土問題に何らかの形がつかなければ、私はやらないと思います。ただし、そのプロセスの中で、それは1年、2年で終わるプロセスではないと思っているので。その中でここは最終的なゴールですよね、領土問題と平和条約交渉というのは。そのプロセスの中でまさに信頼醸成。まず経済もそうですし、安全保障も含め、どういう本音の、それこそ絶対、表では議論できない、たとえば、中国の話とか、北朝鮮も含めてですけれど、どこまで突っ込んだやりとりができるのかだと。まさに信頼醸成のゴールとして平和条約締結、領土問題の解決というのがあると思うので、このプロセスを突っ込んでやっていくのだと」
松村キャスター
「安倍総理はなぜ平和条約の締結にこだわっているのでしょうか?」
武見議員
「それは通常、外交的に、戦争状態にあった国がお互いに領土問題も含めて、新しくそうした安定した友好関係を確立するための1つの外交的な手段として、歴史的に平和条約というのが使われてきたわけですね。ただ、残念ながら冷戦という時代の中で平和条約は締結できなかったと。しかし、もう冷戦も終わり70年経って、あらためて中長期的に見て、日露関係の改善というものは日本の長期的な戦略的な利益になることが明白だと。それを実現していくために、こうしたこの異常な状況をという、そうした言い方でこうした状況を終わらせて、日露関係というものをより安定した関係に位置づけていくことが必要だということを総理はおっしゃっているのだと思います」
ポダルコ教授
「もちろん平和条約は必要だと私は思います。特にこれからとても必要だと思う。なぜならば、現在はグローバル化の時代とか、新世代の時代とか、要するに、グローバル的な世代にとっては、何それが重要かということは結構曖昧で、なかなかいろんな議論がありますけれども、私どもの世代にとっては、平和条約がない状態は非常識であり、とてもおかしくて、むしろ外交の面で見ても、政治的、経済的な面で見ても絶対あってはいけない状態です。だから、冷戦のせいでできなかったことは必ずケリをつけるべきだと思っています」
松村キャスター
「プーチン大統領はどう考えていると思いますか?」
ポダルコ教授
「おそらくプーチン大統領も同じように考えていらっしゃると思います。プーチン大統領も戦後に生まれた世代に所属しているし、そのような者にとっては平和がなければ安全的ではなく、極めて疑惑ばっかりの状態です。プーチン大統領も同じように考えていらっしゃると思いますので、私も期待しています」
反町キャスター
「日露が平和条約を締結した場合、地域の安定に対する影響は?」
畔蒜氏
「日露が不安定である限り、中国は常に…」
武見議員
「利益を得られる」
畔蒜氏
「外交的に。ロシアと中国は、ウクライナ以降、接近していますし、それこそ、習近平さんとプーチンさんの信頼関係もすごく高いと思います。それと同じような、信頼関係がプーチンさんと安倍総理の間にできるということが、中国のこの地域における外交上の仕かけをある種、未然にくい止める1つの歯止めになるという意味において、戦略的な意味が大きいということだと思います」

『中露接近』の思惑
反町キャスター
「ロシアは中国をどう見ているのですか?」
ポダルコ教授
「ロシアと中国は結構長い交流の歴史を持っています。中国はロシアの最初の東アジアのパートナーであったとか、17世紀に結ばれた条約は、当時の中国にとっては西洋人との最初の条約となりました。親密とか、親しいよりも、慣れている。お互いの行動を比較的わかっているという気持ちがあるのではないでしょうか。それは同じように日本と中国も一緒なのではないですか。だから、政治的にお互いいくら揉めても経済の協力は凄まじいほど幅が広いです。ロシアと中国も隣人であることを最近ではなくて、ずっと以前からあったわけです。だから、ある程度お互いのことを理解しています。ところで、日本はクリミアを言い訳にして、暫くロシアと離れるということになりましたけれど、空いているところは空けたままでいるわけにはいかないので、中国が埋めたんですよ。むしろ、日本は自分でチャンスを失っているかもしれない。完全に失われていないけれども。現在チャンスがあるんですよ、同じようなことが1980年代末とか、1990年代にもそうでしたし。最初はソビエト、次はロシア。と言うのは、あの時は中国とロシアの交流は今ほど親しくもないし、他にライバルもなかったのに、日本はまったくそれに動いてくれなかった。逆に今、それを活かさないと、あとに新しいチャンスはないと思います」
畔蒜氏
「露中関係というのは米露関係が悪化している中で、ロシアにとって極めて戦略的にも、経済的にも、非常に重要な国になっています。それが1つ。それを前提として、たとえば、今年の9月に中露は南シナ海で共同の軍事演習をやると、これまではなかったわけです。ところが、今回そこまできているということは、それは明らかに中国のゲームなわけです。そこは日本とロシアの関係をある程度、戦略的に上げていくことで初めて、ロシアはもうちょっとニュートラルな、この地域においてポジションがとれるようになるということを考えると、ネガティブなものを消すという意味もあるのですけれど、それはやはりやらなければならないことだと思います」
松村キャスター
「ロシアの経済ですが、GDP(国内総生産)成長率はマイナス3.7%となりました。ロシアの経済の現状をどう見ていますか?」
ポダルコ教授
「確かに数字だけ見るとあまり楽観的に見えませんね。ただし、ロシアの歴史から見たら、それよりも大変なこともあるし、それ以下にも落ちることもありましたが、必ずいつでも回復しました。特に石油価格ということだけを見ると今は全然良くはないんですけれども、でも、実際的に向こうの様子を見るとドンドン成長は直りつつあるのではないかと思っています。特に分野ごとにはそうですね。分野ごとは農業にしたら全然悪くない見通しですが、現在、世界の1番の穀物、ああいうことの収穫になりそうな見通しとなりまして、また、他の分野にも結構いい見通しがありそうです。だから、一時的な状況とか、グラフだけで見るなら、あまり将来がないように見えるかもしれないけれど、実際はまったくそうではありません。たとえば、アメリカだったら、アメリカの国債はオバマ政権の前と比べて倍ぐらい成長しているんですね。ただ、誰もがアメリカはこれから破綻するとは思っていないし、時と場合によってはそれぞれの左右があるわけです」
畔蒜氏
「実はこの経済成長も、2016年の経済成長の見通しは実は1.5%のプラスという形になって、つまり、これは経済制裁以上にどうしても原油価格との連動性が高いので、一応、原油価格が直近ですけれども、50前後ですね。一時20台まで落ちたのが、要するに、もう50前後にまで戻っていますので、そういう意味では、実はもう一息はついていると。それから、ロシアで、要するに、ルーブルがすごく安くなっているわけですね。ルーブルが安くなると、悪い面は海外からモノを買う時に高くなると、インフレだと。ところが、ロシアがやろうとしているのが、だったら国内で、これまで海外で買っていたものを国内でつくればいいじゃない、いわゆる輸入代替の政策を積極的に進めていますので、これが今後どこまで具体的な成果を上げていくのかというのはありますが、ある程度、食物とか、それほど難しくないものもこれまで外から買ってきたので、意外とそこは結構早くやろうと思えばできること…」
反町キャスター
「では、困っていない?」
畔蒜氏
「私はモスクワにも今年既に何回か行っていますけれども、モスクワにいる限り、どこが経済不況なのだという…」
反町キャスター
「8項目の経済協力というのが、現在のロシアにとってどれくらい魅力的なものなのか?」
畔蒜氏
「2つあると思うんですね。つまり、1つはまず極東地域に焦点を当てた経済協力であると。これはモスクワと極東では状況がまったく違うので、まさに北方領土問題を考える時にどうしても、しかも、現在のロシアの優先順位からすると、21世紀中かけてでも極東を開発するのだというのが、プーチン大統領の方針ですので、そう考えると、極東に焦点を当てた経済協力というのは、私は十分意味があると思います」
反町キャスター
「シベリアというのは経済基盤とか、インフラ基盤とかが貧弱で、そこはそういう経済投資が必要な地域なのですか?」
ポダルコ教授
「そうですね、領土が広くて天然資源が豊富で、ただ自然が厳しい。その天然資源を開発するには様々な技術とか、ノウハウとか、そういうことが必要なんですよ。それがまず1つ。もう1つは人口密度がとても低いです、シベリア極東は。だから、領土としては日本の何十倍ぐらい広い、人口の面で見ればたぶん東京にも負けると思います。と言うのは、可能な限り、大勢の人数の隣人からのサポートよりも、それほどでない隣人からの知能的な援助とか、また技術的な援助とか、そういうことが得られれば、より安心ではないでしょうかと、私は思っています」

ポダルコ・ピョートル 青山学院大学国際政治経済学部教授の提言:『第三者抜きで、相互利益を、現実的に!』
ポダルコ教授
「日露交流をまさに日露交流としてさらに展開していただきたい。また、それはどちらかの勝ち、どちらかの負けではなくて、まさに引き分けという言葉をさらに引用すれば、相互利益を重視しながら、また、現実的に、こういう交流をさらに展開していただきたいと思います。空想的ではなく、幻想的ではなく、現実感、常識感をたっぷり活かしてほしいです」

畔蒜泰助 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『首脳間の信頼関係が鍵』
畔蒜氏
「これはどういうアプローチをすべきかということですけれども、首脳間の信頼関係をどこまで高められるかということが、まさに経済を先行してやるという方向に舵を切っている中で、要するに、平和条約、領土も含めた平和条約がゴールだとすると、そこに向けて、どれだけ総理とプーチンさんが信頼をしあって、要するに、最初に俺はカードを切るけれども、あなたもちゃんとこう返してくれるよねという、そこの信頼関係がどこまで高められるのかというところが本当の勝負になってくる」

武見敬三 自由民主党参議院議員の提言:『リアリスト間の信頼醸成・利害調整』
武見議員
「大事なのは信頼醸成だけではなくて、利害調整というのを共にリアリストの立場から、いかに確実にやっていくかということが求められている。プーチン大統領と安倍総理との間のソチ以来のやりとりと、今回の東方フォーラムでの首脳会議の様子を見ていると、確実にこのアプローチというものに基づいて、現実的にお互いに確信できる、お互いの利害関係というものをきちんと確認をしながら、不必要に高揚感など持たずに、冷静に、こうした利害調整を行って、それが2人の間の信頼関係になっていくという構図になっているのだろうと思います。それを引き続き継続してくことで、新しいアプローチというのはまさに2人の強力なリーダーシップというものを通じて、こうした問題を解決しようとするアプローチが、この新しいアプローチなのではないかというのが垣間見えてきたような気がします」