プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年8月31日(水)
黒田日銀のリスク検証 再バズーカ可能性は?

ゲスト

林芳正
自由民主党参議院議員
池尾和人
慶應義塾大学経済学部教授
白川浩道
クレディ・スイス証券チーフ・エコノミスト

徹底検証…日銀の金融政策 なぜ今『総括的な検証』?
秋元キャスター
「日銀のこれまでの金融政策と消費者物価指数の推移を合わせたグラフですけれども、2013年4月に日銀は2年程度で2%の物価上昇という目標を掲げ、国債の買入れなどによる量的・質的金融緩和の導入を決定し、物価も狙い通り上昇に転じました。ところが、翌年には物価の上昇が頭打ちとなりまして、2014年10月には量的・質的金融緩和をさらに拡大することを決定しました。量的・質的金融緩和の導入から2年経っても物価目標には届かず、今年1月、マイナス金利政策の導入を決めましたが、物価上昇率は鈍化しています。こうした事態を受けて、日銀は7月の金融政策決定会合で9月に総括的な検証を行うと発表しました。まずは池尾さん、この総括的な検証のタイミング、狙いをどのように見ていますか?」
池尾教授
「タイミングはいささか遅いぐらいだと思います。それは最初に2年でということを割と強調をしていたわけですから、それが経過した段階で総括と言いますか、反省をするというのはあって良かったと思うんです。いわゆる異次元緩和というのはショック療法のようなものだったと思いますから、ショック療法を長く続けるということは無理なわけです。だから、長く続けられるような枠組みに、金融政策全体の建つけというのですか、それを短期決戦型から、持久戦型という言い方がよくされますけれど、そういう形に見直すというのが、なされれば、そういう検証になってもらえればといいと思っています」
反町キャスター
「その刺激的なショック療法がずっと続いてきたわけではないですか。つまり、どういうことかと言うと、ショックに慣れるとどうなっちゃうのですか?」
池尾教授
「だから、だんだんと…。ただ実際、異次元緩和がスタートした時点では非常に高く評価される方が多く、実績的にも円高是正が進んだという、あの頃のドル円レートというのは1ドル80円ぐらいでしたから、これはある意味、実態よりも行き過ぎた円高であったと。だから、ショック療法が効いたということがあって100円まで戻した。それはほぼ実力というか、に戻したと思うんですよね。そこからいったん120円まで行きましたけれども、これは逆に実態というか、実力よりも円安に振れたと思うんですよね。それが、そういう行き来があったわけですけども、だんだんと当初のショックが、要するに、池に石を放り込めば最初は大きな波が立ちますが、だんだんその波が消えていくようになって、現在の1ドル100円ぐらいで物価が異次元緩和の開始直前のレベルに戻ったという、そのショックの波が潰えたというか、静まったという感じですね」
反町キャスター
「薬はまだまだ打ち続けているのに効果が出なくなっているという理解でいいのですか?」
池尾教授
「国債を買うのを続けているという意味で、継続しているとは言えますけれど、もうショックではないですよね」
反町キャスター
「薬を打つのを止めてしまったらどうなるのですか?」
池尾教授
「私は、ここまで国債を買い増してきて、多少長期金利が下がったとか、そういう効果はありましたけれども、それほどドラスティックなものはなかったわけですから、それを止めたからといって、副作用だけがすごく大きく発生するということは実体経済的にはないと思うんですね。ただ、マーケットがどう反応をするのかという問題があるので。実体経済的には別に効果がなかったのだから、巻き戻したって副作用はそんなにないだろうという議論が成り立つだろうと思うんですけれども、でも、期待に働きかける政策ということで、マーケットの期待を高めに高めてきたところがありますから、はしごを外されたみたいな恰好になると思いがけないマーケットの反乱というか、反応を招きかねないので、それが怖くてなかなか路線を変更できないと、そういうことかなと思っています」
白川氏
「金融政策は、たとえば、金融緩和をした時に一定の効果はラグがありますから。どちらかと言うと、総括が遅れたというよりも、もともと2年の設定が非常に無理がある。2年間で2%にいくなんて、まったくの希望的観測としても、やや行き過ぎたものですね」

物価上昇目標『2年で2%』
反町キャスター
「建つけに無理があった?」
白川氏
「そうですね。実は当時、私も外国人投資家とよく喋った時に、2年でマネタリーベース、日銀のバランスシートですけれども、2倍にして2%にしますということで、2、2、2で、よく外国人にトゥー、トゥー、トゥー、スリートゥーと言っていたんですよ。日銀の黒田政権は市場に影響を与えなければいけないので、わかりやすいことを非常に重視しているんですね。2年、2倍で2%。その意味で言いますと、2年、2倍を、たとえば、3年で2倍、2%。3、2、2ではないですか。つまり、語呂から入っているので…」
反町キャスター
「本当ですか?こんな重要なことをそんな…。キャッチコピーではないですか?」
白川氏
「そうです。それは、日本銀行が、最初の、2013年4月の決定会合時の2、2、2というのはすごく我々マーケットの関係者だったら印象に残っているんですね。ですから、ボタンの掛け違いとは言いませんけれども、出発点から、キャッチフレーズから入って、それはエコノミスト、我々から見ると、2年で2%は、かなり無理があって、3年、場合によっては4年かかるかもしれないという話だと思いますので、最初の2年というのがやや行き過ぎ、ないしは無理があったということだと思いますね」
反町キャスター
「池尾さんの言葉を借りるならばショック療法としてそのぐらいの言葉の強いメッセージを出さないとデフレから脱却できないし、円高を是正できないという、そういう危機感の、よく言えば、そのぐらいの危機感の裏返しだったというような言い方にはなる?それにしてもあまりにも言葉が上滑りしていたんですかね」
白川氏
「欧米の金融政策のやり方というのはマーケットの裏をかくのではなくて、マーケットにいろんなことを織り込んでもらって、実際マーケットと一緒に歩んでいくようなパターンが、アメリカもヨーロッパも多いわけです。ちょっとヨーロッパは違いがあるのかもしれませんけれども。日本というのはどちらかと言うと、居合斬りみたいな、イヤッという感じで、突然来たかということで驚かす。実はそういう政策の効果というのは時間の経過とともに減っていくわけですね。問題はここで総括的な検証をやったあとにもう1回、柔道で言えば、一本を狙うのか、それとも寝技の有効を狙うのかという局面に入っているんですよ。外国人から言わせると、もう1回、背負い投げをやってくれないですかねとか、少なくとも大外刈りはやってくれと。大技期待がある。ところが、日本人はそういうイメージではなくて、ここから寝技に持ち込んで、有効で、黒田日銀が、その5年間を終えていくという発想を持っている人が、日本には多いと思います。だから、ちょっと柔道に例えてもしょうがないのですが、そういった違いがあると思いますので」
反町キャスター
「白川さん、マーケットの期待値とか、ウケみたいなのは、それは別にして、日本の経済を本当に拡大させていくためには、立ち技か、寝技による有効、効果を狙っていくのか。どちらの方がいいのですか?」
白川氏
「私は寝技、有効でいいと思います。なぜかと言うと、チャートにあったように、日銀がこの施策をやってから一応、物価の基調というのは、マイナスからプラスになっていると。問題は賃金とかがついてきてくれていないですけれど、今度は漢方の話になってしまいますけれども、長く飲むことによって効いてくるという局面に入ってくると思うので、粘り強く、ここはやるという話で、仮にマーケットの一部がもう1回、新しいショックを期待しているにしても、日本銀行はそこでも寝技で、漢方薬でという世界でやっていけば」
反町キャスター
「同じ金融緩和という薬をある時はショック療法として、ある時は漢方として使うのですか?違う薬を処方しなければいけない?」
白川氏
「技術的に、もう漢方薬しか処方できなくなってきたということですね。結局、外科手術的にいったのですけれども、何度も手術はできないという状態で、ここからは体質を改善していきましょうと。もうちょっと努力をして、体質を改善して、国民とか、経済がついてくるというのを待ちましょうと。だいぶこのスタイルが変わってくるのではないかと思いますね」

『総括的な検証』の中身
林議員
「先ほどのグラフを見ますと、物価はマイナス0.5から始まって、このへんにはきているんです。だから、何も意味がなかったし、やめちゃったら、戻るということではなく、少なくともこのゼロというところを超えてきているところまできているのと、それから、実はこの12月と4月の間、ここに実は、政府と日銀の合意というものがあるんです。白川さんの時にね。それから、黒田さんが4月にきているので、2年というのは、1月の政府と日銀の文書には出てこないです。政府と日銀の文書には、できるだけ早期にとしか書いていないので、そこから、黒田さんが入ってきて、かなり高い目標を出し、マインドを変えるのだということをやられるため、2年というのは黒田さんがおっしゃっているので、2年をどうするのかというのは、手続き的に言うと、日銀の中だけで完結できる話ですね。できるだけ早期という、1月まで戻っちゃうと、政府と日銀が話をして、いつかここで言ったことがあるかもしれないけれども、例の経済財政諮問会議の枠組みでやるということになるので、今回の検証というのは、そこまでの話ではないとすると、この2年というのをどう言うのか、というふうになるのだろうなと」
秋元キャスター
「経済同友会の小林代表幹事が昨日の定例記者会見で、このような発言をしています。『大きなサプライズと刺激は大成功だったが、それをただ続けるのは意味がない。引くところは引かなければならない時期がいまきている』と指摘されたのですが、林さん、この発言はいかがですか?」
林議員
「前半賛成です。後半の、引くという言葉の意味が、小林さんはそういう意識をされずにおっしゃったのでしょうけれども、量的緩和をやめるみたいに捉えちゃうと若干、あれなのかなと。日銀の総裁ではないので、こういうことだと思いますけれども。先ほど、どなたかがおっしゃったようにサプライズというのはずっと続かないので、そろそろ対話型、織り込み型にやっていって、持久戦になっていくと。だから、ショック型の療法から、もう少し漢方薬。だいたい揃っているわけですね。そういうことをおっしゃっているのではないかと思いますし、今度は9月の下旬ですから、FRB(連邦準備制度)と同じころになって、今度、金利がもしかしたら、上げてくれるかもしれないなと、アメリカが。そうすると、ちょっとチャンスではないかなと思っているのは、為替が1番、皆、注目しますので、もし金利の引き上げということになれば、基本的には円安要因になるわけですから、そこと、こちらが少しそういうやり方を変えることによって市場がどう見るかの不確定要因というのが相殺できれば、今度の9月はチャンスではないかなと思うんですけれどね」
反町キャスター
「同友会みたいな、大企業の皆さんにしてみれば、輸出関連のところも含めれば、比較的アベノミクスにおいては巨額の利益を受けた側の人の発言かなと、僕は思っているんですけれども、その同友会の代表幹事の方から、小林さんの場合、比較的、企業の利益というよりも、もうちょっと広い視野の話も多いので、そこの部分も割引いて考えなくてはいけないとは言いながらも、大企業の経営者から引くところは引かなければならないというのは結構、深刻な意味もあるのかなと。要するに、もう転換点だよという」
林議員
「小林さんの個人的なご見識もあると思いますし、経団連ではなく、同友会ですよね。ですから、もう少し中長期的に日本にとってどういう政策が必要なのかという視点が入っていると考えたいですけれどね」

『マイナス金利』功罪と行方
秋元キャスター
「ここから日銀が総括的な検証を行う金融政策、効果、副作用について。そして今後の行方についても聞いていきたいと思います。まずマイナス金利政策について、今年1月にマイナス金利の導入が決定されて、およそ半年が経つわけですが、消費者物価指数を見ましても物価目標に近づくどころか指数は下がっていまして、その効果が表れていないという状況ですけれども、池尾さん、なぜ、マイナス金利の効果が表れないのでしょうか?」
池尾教授
「経済学でよく、他の条件にして、一定であればという、仮定において、他の条件が変わらなければ、こうすればこういう効果が出ますという議論をするんですけれど、現実には他の条件も大きく動くわけですよね。だから、マイナス金利政策も発表されて3日間ぐらいは確かに円安になって、株も上がったわけで。だけれども、その後、期待した効果とは逆になったわけですね。それは他の条件が非常に大きく変わった。端的に言って海外要因が大きかったということで、だから、金融政策、特に日本の金融政策というのは、日本の物価とか、為替レートを決める重要な要因の1つですけれども、それだけで物価が決まったり、為替レートが決まったりするものではなくて、特に為替レートについて言うと、海外の要因、特にアメリカ次第というところがあって、アメリカの金融政策の方が、ウェイトが高いというか、アメリカの金融政策に関する見通しがちょっと変わると、日銀がマイナス金利にしたぐらいでは打ち消されてしまうということで。繰り返しになりますが、他の条件にして、一定だったら、マイナス金利政策は円安効果を持つと私も思いますよ。でも、他の条件が動きますから、そういうことにならなかったという話だと思います」
反町キャスター
「もともとの話として、日銀がいろいろなことをいじって、物価目標を設定すること自体に無理があると聞こえちゃうんですけれども、そういうことではないのですか?」
池尾教授
「だから、目標を持つことは大切なわけで、人生においても自分の努力だけで全てが決まるわけではなくて、いろんな環境、諸条件があるわけだし。努力をしても運が悪いとか、努力をしなくても運が良かったということがあるわけですけれども、基本的には、目標を立てて努力をしていくというのは、スタンスとしては全然間違っていないわけで。そういう意味で、最近はインフレ目標に関しても、がちがち機械的な形で捉えるのではなく、もっと弾力的、フレキシブルという言い方をしますけれども、伸縮的な形のインフレ目標というのがむしろ主流になっていて。だから、日本銀行のインフレ目標も極めてリジッドな形でがちがちにやっているところがあるのを、今回の検証を通じてもっと弾力的なものに。いろいろな要因あるわけで、日銀自身が言っているように、石油の価格が上がったり、下がったりすれば、物価は大きく影響を受けるわけですから。それによって、目標達成が半年、1年延びたりするのは、やむを得ないことだということで、フレキシブルな、弾力的なインフレ目標にうまく転換をしていくというのが、今回の検証に期待をするところですね」
白川氏
「先生がおっしゃったみたいに、マイナス金利になったあとの円高というのは、アメリカの金利が下がったことの影響が大きいですね。ですから、足元では、先ほど、林先生がおっしゃったみたいに、アメリカが利上げする可能性も実はあるんですけれども、年初からどちらかと言うと、利上げの期待が落ちてくるような状態に、アメリカについて、なっていました。それが円高になったのがあるんですけれども、もう1つあるのは、マイナス金利政策を導入したということで、市場の一部では量的な緩和。たとえば、国債を買って、量的な緩和に限界があるということが、日本銀行が認めたのではないかというのが結構あったんですね。ですから、マイナス金利政策導入イコール量的緩和の限界。そうすると、量的緩和とマイナス金利というもののどちらに重きを置いて為替市場でプレイをすればいいかと。どちらかと言うと、外国人は量的緩和が好きなんですよ。長期金利がどういう影響を与えるのかということをきちんと考えなければいけないですけれど、量というものに対して、非常に海外のプレイヤーは重きを置いています。そうなるとマイナス金利ということは量的緩和の限界、どちらかと言うと、円はマイナス金利になっても買いだと。円高になっちゃうという、そういうのがあったと実際に思いますし、日銀がマイナス金利をさらに拡大しますと円高になるよという外国人は結構いるんですよ。つまり、教科書的にいう理論とは少しずれていると思うんですよ。これは市場というものなので、我々からすると、市場の感覚的なもの。つまり、マイナス金利だ。次はたぶん量が減るのではないかとなると、今度は量が減ることの円高的な効果を市場は織り込みにいってしまう。かなりマイナス金利を深くしてやらないと対抗できなくなってしまう」
反町キャスター
「深堀りしなければダメだということですか?」
白川氏
「私のイメージで、もしやるのだったら、もっと深くしないと効かないというのがあると思います、為替だけを見れば。それが実際の経済では銀行部門に対する収益の問題とか、様々な問題があって、そうはできないと思いますけれども、たとえば、スイスは日銀と同じような施策をしていますが、マイナス0.75という金利をつけていて、しかも、日銀の場合、日銀当座預金のたった10%にマイナスですけれど、スイスは40%にマイナス金利をかけていますから、極端に言うと日本がスイス並みのようなことをやろうとすると、マイナス3%になっちゃうんですよ、計算上は。だから、そういうことがあるとたぶん黒田総裁の頭の中には、マイナス0.1、10%にかけているだろう、すごく小さいと思っていらっしゃると思うすよ。つまり、たぶん効果がないぐらいのマイナス金利だと思っていらっしゃると思うんですね。実際にマーケットもそういう感じになっているんですよね。アメリカの影響がたぶんあると思うんですけれど。と言うことは、マイナス金利については功罪もあるんですけど、為替相場との関係でいくとかなりマイナスを深くしないと対抗できないという発想に実はなりかねないので、総括的検証したあとにもっとマイナスを深くするよという議論が出てきてしまう可能性はあると思います」
反町キャスター
「それに関連するのですか?先日ジャクソンホールでしたか、黒田総裁、こんな発言をしていますね。『下限からはまだかなり距離がある』というこの発言。これはまさに白川さんが言われたまだいけるぞということを総裁自らが行くぞと言っている?」
白川氏
「ここに日本銀行的な、その文書の書き方ですけれど、かなりというのが入っていますので、まだ距離があるではなくて、かなり距離がある。そこは相当の…」
反町キャスター
「そこがわからない」
白川氏
「あと0.5とかはいけるという感じではないですかね。まだ距離があると、かなり距離がある、は全然違いますよ」
反町キャスター
「でも、先ほどの話でまだ行くぞということは、逆に言うと、量的緩和を閉めるのではないかということで、円高に進むとこういう話になっちゃうのですか?」
白川氏
「日銀の場合、そういう海外からのプレイヤーの見方があることが、もし日銀がわかっていれば、マイナスを深くしていきながら、量も拡大していかなければならないという相反することをやらなければならないという可能性があって、それはますます量的緩和の持続性を落とす可能性があるので、かなり危ないところにきているということです。危ないという意味は、市場の期待に応えようとすると政策的に持続性がなくなるようなという、要するに無理して量的緩和を増やしてしまうようなことをやらざるを得ないリスクがある。やらないと今度は円高になってしまうかもしれないとか、まさに先ほど、林先生がおっしゃった通りで、FRBが利上げをしてくれたら、かなりうれしいわけです。助かる」

『国債買入れ』の行方
秋元キャスター
「年間80兆円もの日銀による国債の買入れ、ずっと続けることは可能なのでしょうか?」
池尾教授
「国債の発行残高は限界がありますから、幸か不幸か財政赤字が続いているので、発行残高は年々増えてはいるんですけれども、その増えているペース以上に日銀が買い取っていますから、いつかは算数の問題として限界がくるということは確かな話ですよね。経済的にはもっとその手前で、算数的に計算するもっと手前のところで、国債を必要としている人は日銀以外にもいろいろな理由でいますから、そうすると、日銀が買える部分というのは限られてくる。そういうのをIMF(国際通貨基金)の人とか、元日銀副総裁の岩田一政さんが理事長をされている日本経済研究センターとかが推計して、2017年の中頃で、現在のペースでいくと限界に達するのではないかと」
反町キャスター
「あと1年?」
池尾教授
「そういう見通しです。幸か不幸か大量に国債が存在していますから、買おうと思えば、もう少し買えないことはないとは思うのですけれども、現在も非常に割高な価格で日銀は国債を買っているので。要するに、含み損を抱えた形で、ドンドン国債を買っていますから、量的に無理をしてもっと2018年、2019年ぐらいまで買ったとしても、その時には含み損を日本銀行自身が抱えてしまうという、コストの問題というのが裏側で深刻になると思いますね」
反町キャスター
「日銀が大量の含み損を抱えた先には何が待っているのですか?」
池尾教授
「日銀が債務超過になると言いますか、日銀の自己資本がなくなってしまうということです。そこから先はよくわからないんですよ。中央銀行が債務超過になって、自己資本が失われ、それでどういうことが起こるかというのは、そういうことは歴史上経験がありませんから。赤字になった中央銀行は、たとえば、ラテンアメリカの方とか、東欧の方であることはあるのですが、こんなに規模の大きい先進国の中央銀行がそうなったことがないという意味であって、だから、日銀が債務超過になって、赤字になっちゃうと円に対する信任が失われ、大変なことになるという主張と、別に何ともならないのではないかと。そんなことは一般の人は関心がないから、何も起こらないのではないかと。両極端の主張があるので、いったい何が起こるかわかりませんけれど、とにかく赤字になることは避けられないということですね」
反町キャスター
「怖がった方がいいのか?怖がらなくてもいいのか?わからない」
池尾教授
「その区分で申し上げると、私は警戒すべきだという立場です。それは物理で弾性限界という言い方をしますけれど、たとえば、プラスチックの物差しを曲げていくと暫くは曲がるわけです。力を放すと元に戻るのですけれど、あるところでバキッといってしまえば、元に戻らないですね。だから、貨幣に対する信任とか、中央銀行に対する信用みたいなものも、あるところまでは問題なく行くし、力をかけるのをやめれば元に戻る、復元力があると思うんです。ある範囲内まではやったって大丈夫だという議論は成り立つけれど、どこかに限界みたいなものがあって、そこを越してしまうとバキッとくる可能性が私はあると思っているので、まだ幸いにしてバキッとくる内側にいると思うので、このへんで止めておいた方が安全だというのが、私の立場で。バキッといく限界があらかじめわかっているわけではないので、力のかけ具合の問題でまだまだ大丈夫とやっているうちにバキッときたら怖いなと。ある程度、慎重にやった方がいいのではないかなと思います」

『効果と副作用』で日本経済は
反町キャスター
「マイナス金利を深めるとしたら80兆円をさらに買い広げることが日銀に求められていく?」
白川氏
「マーケットとしてはあると思います。80兆円で買っていっても、おそらく2017年のどこかでは限界がくるかもしれないという議論はありますから、もし80兆円を100兆円に仮に上げれば、限界がくるタイミングが早くなるというだけという可能性があるわけですね。そうなると、一種のギャンブルになってしまうんですね。マーケットからすると、マイナス金利を深堀りした、量的緩和を増やしてくれた、良かったねというのが一瞬出るけども、これは100兆円に上げたから、実は80兆円よりも早く買っていくわけですから、限界が早く来るよねと思った瞬間に結局、円高になってしまうかもしれないわけです。と言うことで、意味がないわけです。短期的なマーケットの期待に影響を与えようという政策を続けていると、ドンドン持続性のある政策がなくなっていって、円安になった瞬間も短くなっていくと。100兆円に上げた分、今度は60兆円にしなければいけませんねと出てきてしまいますと、金利がボンと上がるということですね。持続性を持った政策にしてもらいたいというのが基本的なマーケットプレイヤーの考え方だと思うし、おそらく政策当局、日銀の外側から見ていても持続的な政策のフレームワークにいってほしい。別にショックを与える必要はないということだと思いますね」

どうすべき? 出口戦略
秋元キャスター
「出口戦略が必要だと思いますが、どういう戦略が必要だと思いますか?」
池尾教授
「金融政策の出口戦略という言い方をするのですが、出口の問題というのは、財政問題だと思っていて、財政に対する信任が確保されていて日本の財政がちゃんと持続的にやっていけるという信頼感がある状況であれば、出口の問題というのは本当に技術的な金融調節の話に終わってしまうと思うんです。ところが、財政に関して信任が必ずしもない。日銀が支えないと日本の財政はもたないということを市場関係者が思っている中で、緩和からの出口を目指すと、なかなか大変な、技術的な問題以上のところで本質的な問題を惹起しかねないということですね。財政の健全化がどの程度達成されているか、まさに財政の問題だと考えています」
反町キャスター
「まずはプライマリーバランスですか?」
池尾教授
「そうですね。デフレが続いていく中で、金融緩和を続けるべき状況が続いている中ではいいのですけれども、そういう状況がなくなって、インフレ目標が達成された時に財政が向かう方向性と金融が向かう方向性が対立してしまう可能性があって、そこで金融だけで出口にいけるためには財政がしっかりしていないとダメだと」

白川浩道 クレディ・スイス証券チーフ・エコノミストの提言:『持久戦』
白川氏
「持久戦ということですね。短期決戦で勝利を収められなかったんですけれども、まだ戦いは続けていくということですね。ちゃんと物価がプラスになるようにするという意味で、戦いは続けていくのですけれども、粘る、持久戦だと。寝技だ、有効だ、漢方薬だと。以上ですね」

池尾和人 慶應義塾大学経済学部教授の提言:『名脇役になろう。』
池尾教授
「主役は成長戦略だと思っていまして、これまで金融政策が主役のような扱いをされていて、日銀もそれに応えて、主役を張るような姿勢をとってきたけれども、そもそも金融政策はそういうものではなく、金融政策は脇役で、渋い名演技の、表むこうにはウケないかもしれないけれど、評価される名脇役に日銀にはなってほしいということです」

林芳正 自由民主党参議院議員の提言:『ねばり強く、地道に』
林議員
「まったく同じで、持久戦、粘り強く。脇役、地道にいこうと。おっしゃる通りだと思います」