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2016年8月23日(火)
国民投票の意義と限界 ポピュリズムか民意か

ゲスト

柴山昌彦
首相補佐官 自由民主党衆議院議員
内貴滋
帝京大学経済学部教授 英国バーミンガム大学名誉フェロー
先﨑彰容
日本大学危機管理学部教授

国民投票の意義と限界 英・EU離脱の教訓
秋元キャスター
「今年6月23日にイギリスで、EU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が行われました。まずは内貴さんに聞きたいんですけれど、政府は国民投票の結果に従ったわけですが、イギリスの国民投票というのはイギリスの法律ではどういう位置づけなのでしょうか?」
内貴教授
「イギリスは議会主義の発祥の地といわれていますし、ずっと歴史的にいろんな事実を積み重ねてきているんです。コモンセンスと言いますか、皆の知恵で、これから具体的にやっていこうというところですけれども、成文憲文そのものはないですけれど、そこで培われた憲法規範というか、そういうものがあるんですね。その中で、1番大きなものは国会主権と、日本では国民主権と言いますけれども、国会主権と言って、国会が実質的に全てを決めると。男を女にし、女を男にすること以外は何でも決められる、イギリスの国会はという言葉が昔からありますし、憲法学の権威のあるダイシーという学者がいるんですけれども、その人も英国議会はどのような法をつくり、また、廃止する権利を持つ。法を何でもつくれるし、廃止もできるのだと。さらにいかなる人も、機関も、イギリスの法によって国会の立法を覆すことはできないと。あくまでも国会に主権があるんだということが非常に大きな規範なわけですね」
反町キャスター
「国会主権のイギリスで、国民投票が馴染まないと言われるイギリスにおける国民投票というのは、法的な、この場合で言うならば、議会を拘束する権利があるのですか?ないのですか?」
内貴教授
「ありません。議会を拘束できない」
反町キャスター
「EU離脱するのか、しないのかの国民投票で離脱が51.9%だったからと言って、それを無視するとは言いませんけれども、これの51.9対48.1の非常に僅差の差をもって、国民全部が離脱だと判断してグッと進めるものなのかどうか。ないしは多少斟酌をしながら、その後の世論の動きを見た時に、410万人の署名が集まった。要するに、短期間の間に。その世論を見た時に、慎重に議論を進めながらも、その方向性でというのは、つまり、玉虫色とは言いませんけれども、そういう方向性で議論を進めるという選択肢もキャメロン政権にはあったはずですよね?」
内貴教授
「当然ですね」
反町キャスター
「なぜ取れなかったのですか?」
内貴教授
「とにかく決まった時に、首相は、キャメロン首相は辞任を発表すると。その辞任の発表の時に今回の国民投票の結果は、明確に国民の意思が明らかになったのだということを言ったんですね」
反町キャスター
「今回のイギリスの、EU離脱の国民投票で浮かび上がる国民投票の制度的な問題点にどんなものがあると感じますか?」
内貴教授
「まず基本的には、国民が判断するために必要な、明確な、客観的な、必要な情報が提供されたかどうかということが1つでしょうし、国民の方はあまりいっぱい情報を提供されても、国民は忙しいわけだから、一生懸命、自分の仕事をして、働いているわけですね。それを咀嚼して、ちゃんと判断できるかということがもちろん、ありますし、それから、国民投票、一般に言われているように非常に感情に流されるとか、実はできるだけイギリスが公平にやろうと言って、YESキャンペーン、NOキャンペーンというのを、代表登録して、公平に選挙委員会が公費をもって、機会を設けて同じ時間、同じような条件でYES、NOをやらせるわけですよね」
反町キャスター
「情報提供、制度的には担保されたのですか?」
内貴教授
「情報提供の仕組みは担保された」
反町キャスター
「仕組みは担保されても、僕らが見ている限りではイギリス独立というのですか、その独立とEU離脱を強く勧めた独立党がバナーを見ているだけでも、いや、EUを離脱すれば、EUに対する納付金がなくて済むから、それで皆さんの社会保障は一気に豊かになりますよと大キャンペーンを全国でうって、それでそういうものがあったにもかかわらず、投票が終わったあと、あれは嘘でしたと。先頭に立った、ファラージというイギリス独立党の党首は辞任していますよね。これはおかしくないですか?」
内貴教授
「おかしいですよね。おかしいですが結局、国民投票を管理しているのが選挙委員会という公式なところです。それはお金で上限を超えないようにとか、公平にやるということを管理しているので、選挙キャンペーンの中身まで規制をしているわけではない」
反町キャスター
「嘘をついても何もペナルティがないのですか?」
内貴教授
「ただ、この国民投票というのは政策を選ぶということなので、日本の選挙のように、選挙人の資格に詐称があったとか、これは公職選挙法で向こうもあるんですけど、本来は政策なので、政策にどの程度、投票行動が影響を受けたかどうかというのは非常に立証は難しいと思います。それから、そういう意味では、また、逆に国民投票というのはそういう人のネガティブキャンペーンに相手を批判するということが多くなるので、国民自身が賢くなって、嘘をつかれていることもあるかなというと、自分で調べてね。そのぐらいのことをしないと、本当に自分できちんとした情報のうえで判断できるかということがあると思いますね」

グローバル化と民主主義
秋元キャスター
「ヨーロッパでは近年、国民投票が多く行われていますが、2014年にはスペインで、2015年はギリシャ、デンマーク、アイルランド、今年はオランダ、イギリスで実施されていて、今後イタリアでも国民投票が実施される見通しですけれど、先﨑さん、国民投票が増えている背景をどのように見ていますか?」
先﨑教授
「EUの本来の、最もわかりやすい教科書的な見方というのは、経済においての障壁をなくして、自由度を高める一方において、政治的な政策に対しては、まだ、国家という枠組み、それが力を発揮することができるという、そういうシステムなわけですよね。そうすると、まず経済の方の特徴から言いますと、モノと金が自由に、しかも、かなりの速度で右へ左へと縦横無尽に飛び交うというイメージでいいと思うんですね。だとすると、もう1つ残るのは、モノと金の次は人ですよね。人間はどう動くのだろうと考えた時に、おおよそ3つに分けることができるんですよね。1つは、僕らが、たとえば、普通に生きているというと語弊がありますけれども、大方の人は自らの生まれた土地であるとか、自らが生まれた国内において、おおよそ生きていくというのが普通だと思うんですね。それに対して、残りの2つは何かというと、1つは、たとえば、極めて特殊な能力、技能を持っていることによって、どこに飛んでいっても生きていけることができる人です。これは簡単に言うと、エリートでいいと思うんですよね。自らの体1つ持っていけば、そこで食っていくことができるという意味においては。そういう人達は自分に特殊な能力を持っている。もう1つ、3番目は何かと言うと、これが、たとえば、移民とかであって。国籍というものを剥奪されてしまい、いわば無色透明な存在として流浪しなければならない。食えそうなところを探して、しかも、根拠がないのにさすらう存在ということですね。そうすると、実はモノと金が自由に動いているのと、人間の種類の中で似ている存在というのは極めて選択されたエリートとか、それとも移民達が蠢いているとかいう、そういう状況があると思うんですね。そのうちの移民の人達というのがヨーロッパでいろんな国に散々、動いていった映像をニュースで見たように、結果的に誰を刺激しているかというと、1番目の人達。おおよそそこで食っていて、そうしている人達の職権を奪っていくと見えるわけです。これの何が1番の問題かと言うと、見えるというところが問題で、実際は、僕達は言葉のうえで、難民や移民に分けなければいけないけど、そういう人達と一緒に暮らしていかなければいけないということがわかっているのだけど、自らの、たとえば、職業が奪われたと感じるだけでも十分に過激なナショナリズムを刺激することができるわけですよ。だから、そこをまず基本的には押さえておかなければいけなくて、そうすると、自分達の意見がどうやって反映してくれるのかと、このグローバルな社会で、いろんな混乱が起きている時に、してくれるのかなと思った時に、ここでもう1回、話を最初に戻せば、経済とごく一部の人は自由に動いている。それによって何か経済的な不況が起きた時に、これは国家1つ1つでは解決できない問題なのかもしれないのに僕達は、投票行動を国家の範囲内でやるわけですね。そうすると、EU全体で起きているような経済の混乱、それから、人の動きの混乱に対して、1つ1つ限定された地域だけでしか政策がうてないのが国ですから、良い政策を打てないということがあるわけですね。だから、しょっちゅう外相が集まったり、首相が集まったりしてやろうとするのだけれど、それがそうやっているにもかかわらず、無理だった場合にどうなるかと言うと今の政権が悪いということになる。我々の思っていることを反映してくれないとなる。そうすると、より純粋に、より私達の利益に直接的に反映してほしいという考えが生まれてきて、国民投票みたいなものを望むような雰囲気というのは出てくるのかなと」

民意かポピュリズムか
内貴教授
「EUの関係は非常に多いですね。だから、影響が大きいから国民投票にかけて信を問うというか、それはある意味で、統治者のエクスキューズにもなると。国民がすごく大きな複雑な問題でやった時に、自分で一生懸命、本来は判断して言うべきだと思うんですけれど、安易に、国民投票に頼って、それで決めたのだから、じゃあやればという、自分の責任を回避するという面も否めない」
反町キャスター
「国民投票は、国民の瞬間のYES、NOははっきり出ますよね。民意を計るツールとしてはありかなと思っているんですけれど、そこはどう感じていますか?」
先﨑教授
「少し、それに答えながら、内貴先生に質問みたいな形にさせていただきたいんですけれど、今日のテレビ、この番組も含めて、論調として、要するに、離脱になってしまったことを良くないと。どちらかと言うと良くないという評価を…」
反町キャスター
「論調でそういう雰囲気になっていますが、それでいいかなと思って聞いているんです」
先﨑教授
「敢えてそこを引っ掻きまわす形で言いますと、たとえば、2つ評価ができると思うんですよ。なぜなら、日本のある種、保守の人達の考えからすると、今回のEU離脱というのは、むしろ歓迎すべきことであって。なぜならば、こういうグローバルに経済が動いていく中で、そういう拡張することを良しとするのではなく、さすがイギリスは民主主義が成熟しているのだと。なぜならそういうグローバルなところにドンドン乗っかっていくような形ではなくて、一国の経済とか、文化のあり方の方にむしろ回帰しようとしているイギリスは、ある意味で健全に閉じるから、だから、良いのではないかということで、これは、たとえば、日本におけるTPPについての議論の時にまったく同じことが行われたわけですよね。TPPというのは確かにモノや金が流動して、そのうちのモノや金を日本に取ってくるという意味では、愛国心だと言っている保守派の人がたくさんいたんですね。だけれど、それによって日本の基盤となっている農業であるとか、畜産業というのが崩壊して、それで金がじゃぶじゃぶ、たとえば、入ってきたとして、日本の基本的な風景が、そういうものが壊されてでも、お金がたくさん取れることをもって本当に愛国心と言えるのかとTPPに反対をする人達は言って、むしろ健全な形で閉じることを良しとしたんですよね。そういう意味で言えば、同じですよ。そう考えると、今回の離脱を良しとすることもできる。だけど、一方で先ほど来、僕自身も言いましたように、それが健全な閉じ方と言ったのであって、要するに、拒絶反応という可能性があるんです、一方で。そうすると、今度マイナスになるではないですか。これだけ一気に…。ちょっとふざけていいですか。要するに、僕が道を歩いていて、いきなりすごくきれいな人に告白をされたら、動揺して、ちょっと待ってくれと言うではないですか。心の準備ができていないから。なぜふざけて言っているかというと、要するに、あまりにも過激に、自分の国だと、国内に金やモノというのが流動化して、なおさら人ですね。しかも、形も違うと思われる人が入ってきた時に、あまりにもそれが一気に入ってきたら、人というのはいったん引くというか、拒絶反応を起こすというのを、ある意味、生理的に健全な現象だと思うんですね。そういうふうに今回の離脱というものを見るということがたぶん皆さんの心の中に、漠然としてあって、だから、今回はいきなり離脱したから株価がどうしたこうしたとなって、それはいきなり感があるわけですよ。だから、そう考えると、今回の国民投票によるイギリスのあり方というのは、良く評価もできるし、拒絶反応としてあまりにも過激なのではないの。ひょっとしたら、差別も含めて、排外的になるのではないのという考え方もあると思うんですけど、どちらの方を内貴先生のようなご専門の方は考えているのかなということですが」
内貴教授
「きちんと国会で議員が熟議して、メリット、デメリットを決めて、きちんと、自分達の考えを国民にわかる形で議論をして、いわゆる紛争の固定化というのか、議会では一生懸命、皆やっていることが、1人1人の国民が対立して、俺は賛成だ、反対だって、殴り合ったら困るではないですか。でも、自分達の意見が、いろんな形で議会で言われていて、それでやることによって、自分達の意見も含めて議論されていって、それが全体としてはこう決めたという形でやる方が専門的な議論でもあるし、技術とか、いろんな情報も政府でなければわからないところもあるし、いろんな情報についての秘密の問題もあるでしょうから。また、外交だと交渉事でもありますので。そういうことを含めてやっていた方が実質的に国民のためになる決定ができるのではないかと。一方で、全員に聞いたから、国会議員よりも多くの人間に全部、聞いたから。そちらの方が多いから、国民に聞いたから、そちらの方がいいという、その形にあまりにも固執して、正当性を求めると、本来こんな話ではなかった。こんなつもりではなかったということにもなりかねないので、イギリス人は実質的な判断ということがあったと思うんですね」
反町キャスター
「でも、たとえば、EUの離脱みたいに非常に利害が錯綜している難しい問題の場合はそうかもしれないけれど、この中でEU域内に国民投票、今後がどうかはテーマによりけりだと思うのですが、比較的にシンプルな問題、価値観みたいなものがあって白黒はっきりつけられることが比較的容易なものを国民投票にかけるケースと、今回のEU離脱みたいに、非常に利害関係が複雑で、ある人にとってはそうかもしれないけれども、実は家に帰れば家族全体で考える場合、NOだった。そう考えた時に、テーマによって違うのではないか?それはないですか?」
内貴教授
「それはその通りだと思います。しかし、要するに、議会で何で決められないのだと。なぜ議会できちんと専門的に勉強をして、議論して、議会で決めないのだということ。今回キャメロンさんが決めきれなかったのは、保守党の中が割れたと。閣僚で割れているわけです。もし国会できちんと内閣として体裁を守って、一応、残留は決めたのだけれど、それと同時に、閣僚はNOキャンペーンをやっても良いよ。YESキャンペーン。要するに、内閣の一体性を放棄したんです。それはそういう形で、自由に閣僚の意見を言わせて。そういうような形で、要するに、国民投票は公平、公正に、要するに、やるという形を整えているわけです。しかし、一方で考えると無責任ではないのかと。内閣として決めておいて、その意思をきちんとやるのだったら、その説明をきちんとやったうえでやるべきではないのかと。形ではなくて、実質、中身、どちらが国民のためになるのか。そのためにはいろんなことを検討しなければいけないので、それをきちんとやったうえで、やるべきではないのかなと」
反町キャスター
「柴山さん、この内貴さんの話、閣内における不統一もあったりして、中身が伴っていないのではないかという指摘をどう感じますか?」
柴山議員
「ただ、それを解決するのだったら、党議拘束を外して、要するに、党内で、たとえば、日本における臓器移植法みたいに、党議拘束を外して、1人1人の議員が自らの心情に基づいて投票するという選択肢もあったわけですね。でも、今回、キャメロンさんは国民投票という形をとった。その根本的な理由というのは、先ほど来、お話が出ている通り、こちらにあるように、国としての独立をどうするかですとか、あるいは国家主権のあり方をどうするかというような極めて国民の1人1人に根本的な重大な意味を持つ問題については、国民1人1人の意見を聞いた方が、座りが良いという理屈の問題と、あとは、もう1つ、キャメロンさんがいろいろと事前のキャンペーンとか、あるいは予測の調査などで、もしかしたら勝てるかもしれないと踏んでいたこともあるのでしょう。勝てば、お墨付きが得られるという非常に大きな政治的な効果が得られるわけですから。この2つですよね」
反町キャスター
「ギャンブルのツールに使っているように聞こえます。そう見ていますか?」
柴山議員
「いや、いや」
反町キャスター
「要するに、キャメロンは賭けに負けたと?」
柴山議員
「ギャンブルのツールという表現が正しいのかどうかはともかく、先ほど来、出ているように国民投票というのは両刃の剣なわけですよね。どちらに転ぶかわからないという側面。特にキャンペーンの仕方によって結果がいろいろと予測できない方向に転ぶかもしれない。だけれども、いったん結果が出ると、それはかなりの政治的な大きなインパクトを与える。ギリシャのチプラスさんのように結局、結果が出たけれど、大どんでん返しで、ちょっと変化球を使って、緊縮策を飲んだというような方法もあるにせよ、国民投票には大きな政治的な効力、インパクトがある。それをある程度、時の政権が想定するということはあるのだろうと思います」

日本の直接民主制のあり方 住民投票の意義と限界
秋元キャスター
「埼玉県所沢市で入間基地の騒音のために窓を閉め切った場合の暑さ対策として、市立小中学校エアコンの設置の是非を問う住民投票が行われました」
柴山議員
「私は地元ですからね。この間の経緯をずっと身近に見続けてきました」
反町キャスター
「住民投票にいく前に、市議会と市長の間で十分議論が行われたうえでの住民投票だったのですか?」
柴山議員
「今回のケースにおいてはまさしく時間的な、予算のスケジュール上の制約ということもあり、市長が方針を先にお決めになられたというところはあったんです。ただ、今回の場合、私は住民投票というプロセスには比較的馴染みやすいテーマだったのかなというようにも思いますし、その結果、結局想定された得票数を得られなかったけれども、賛成の方が多数だったということを踏まえて、防衛省の補助金がきちんと確保できる騒音のうるさい2校について、市長が方針をさらに転換して、エアコンの設置を決めたということも、これも私は妥当な選択だったのかなと思います」
反町キャスター
「住民投票のコストをもってすれば、そもそも28校にエアコンの設置ができたのではないか?結論に整合性があるのかという」
柴山議員
「ただ、エアコンを28校全部に設置すると数十億円のオーダーで予算が必要になると、防衛省から見込める予算にしても自衛隊機が通る最も騒音が厳しいところ以外に、所沢ではかなり離れたところに小中学校があって、住民の方々がそこも含めてエアコンの設置を求めてきたわけですが、財政状況を見ると、数十億円の予算をそこに投入するのは難しいということで、住民の方々の意見を問うための住民投票で、住民投票を求めたのは市長側ではなく、不満を感じた住民の方々が住民投票に持ち込んだという経緯があるので」
反町キャスター
「市長は住民投票をしない選択肢はなかったのですか?あったんですよね?」
内貴教授
「いや、それは地方自治上、住民自治というのは国にない制度でありますので、直接民主主義的な要素があります。それは有権者の50分の1以上の署名が集まれば、必ず議会に住民投票の条例案として議会にかけなければならない。だけど、決定は議会。所沢市議会はキチッとやったんですね。修正議決して、要するに、先ほどおっしゃった3分の1以上の要件をつけたわけですよ」
反町キャスター
「その結果を受けた市長の判断がどうなのかということになる」
内貴教授
「その時に市長の意見も必ず求められますので、おそらく住民投票には反対をしなかったのだろうと思う。あとは議会で修正したという形だったと思うんです」
反町キャスター
「評価されていますね?」
内貴教授
「住民投票で決めることについては基本的には賛成ではありません。だって、優先順位、エアコンなのか、それとも他の福祉政策なのか、そういうものが住民投票では判断できないのですから。あるいは所沢市の予算状況だとか、5か年計画が何なのか、それぞれが皆、必要だと思ってがんばっている中で、限られた財源でここに優先順位をつける。これが1年でやるのか、10年でやるのか、さらに先延ばしにできるのか、そういうことを総合的に判断してやるのは執行当局と議会ですよね」

憲法改正手続きの課題
秋元キャスター
「憲法改正の手続きを規定しています日本国憲法第96条は、これは憲法改正ということについては最終的に国民の判断に委ねるという解釈?」
柴山議員
「そうですね。これまで特に参議院選挙の直前に改憲派が3の2を占めるのかどうかが非常に大きな問題だということを言われていましたけれども、ご紹介いただいた通り、結局、主権者たる国民がその憲法の改正案をYESと言うことによって、初めて憲法改正は実現をするわけですから、発議という一部の部分についてだけ議員の数を整えても、本丸である国民投票がきちんと行われなければいけないというところがポイントだと思います」
秋元キャスター
「衆参両議院で審査、それぞれ3分の2以上の賛成で可決。国民投票で賛成が投票総数の2分の1を超えた場合、国民の承認があったものとなると。この流れをもって日本も国民投票実施する制度上の環境は整っていると考えていいのでしょうか?」
柴山議員
「まだ日本において憲法改正を含めて、純粋な国民投票が行われたことは1回もないんですよ。ですから、先ほどのEUの離脱、イギリスにおける国民投票のような経験はまだ私達一度も経験していませんし、憲法上定められた国民投票自体も、相当国民投票法制定の時に、それをしっかりと国民が活用できる様な仕組みをどうつくるかということは議論されたんですけれど、まだまだ実を言うと、諸外国の例からも学んだり、制度設計を充実させたりしなければいけない部分が私は大きいのではないかなと思いますね。1つが公務員の国民投票運動をどうするかという問題だったりするわけです。様々な広報、周知、国民投票運動、このあたりの制度設計はこれからまだ詰めていかなければいけない部分だと思います」
反町キャスター
「広報の周知は、広報されている情報が正しいのか、間違っているのか、そこを含めて、聞く側も嘘を言っているのかどうかを考えながら聞かなければいけない。そこの部分で広報活動の質的、量的なものの条件は加えられていないのですか?」
柴山議員
「周知・広報の内容はどうかという、内容の問題ですが、公職選挙法における候補者の経歴とかですと、嘘とか、本当とか、がわかりやすいですけれど、憲法の条文にはこういう意味合いがあるんだよというのは、果たして正しいのか、間違っているのかは、なかなか難しいのではないですか。だから、中身に踏み込んだ形で、それが虚偽かどうかという形の規制をするのは難しいと思いますね。広報・周知の具体的な方法ということについては詰まっていない部分があると思います。これから詰めていかなければいけないかなと」

日本の国民投票 対象はどこまで?
秋元キャスター
「今後、日本で対象が憲法改正以外に広がる可能性というのをどう見ていますか?」
柴山議員
「憲法審査会でも国民投票の法律ができた時、対象事項をどこまで広げるかということが大きなテーマとなりました。もちろん、憲法の条文を改正するには国民投票が必要だ、これは憲法の中に書き込んであるのですけれど、憲法に付随する問題、憲法問題と言いますけれども、たとえば、皇室の問題ですとか、そういった事柄をどうするかとか、あるいは当時の野党、民主党の方々がよくおっしゃっていたんですけど、直接民主主義的な要素をより積極的に評価して、重要な問題についてはより積極的に国民投票を活用してもいいのではないかということも議論され、それについては実は今後の宿題という形で、今回の国民投票法の中には附則に書かれているんです」
内貴教授
「私は慎重であるべきだと思います。結局、拘束をすると、憲法に違反すると思いますし、拘束しないでよくて、諮問ならいい、参考に聞くのだというのは、結局参考に聞くと言っても、そこで決定が出るわけですので、その判断をもし受け入れなかった時、非常に政治的な問題にもなるし、かえって混乱してしまって、1回やっちゃったら、もし間違った時にやり直しがきかないわけですよ。制度で責任ある立場の方が決定していれば、それは解散するなり、国会議員を辞めるなり、新たな展開がはかられますけれど、国民が決めたのだから国民の責任だと言われても、国民は責任の取りようがないと。次の展開にいかないと日本国が混乱してしまうから、私は極力慎重であるべきだと思います」
先﨑教授
「今日、本当はお話する議題の1つにあったと思うんですけれども、まず結論から言うと、議会制民主主義というものが、今、危機だと思われているんです。それは具体例で言うならば、民主党政権の時代に、皆さん、テレビを見て、ほぼ何を見ていたかというと民主党内部における争いみたいなもので、それをいろいろと、ごちゃごちゃやっていて、実際こんなことはどうでもいいけれども、政治をちゃんと動かしてくれているのかという漠然とした雰囲気があった。そのことを、決められない政治と言っていたわけです。その次に出てきた安倍政権というのは、何やらぐいぐいと引っ張っていて、決めてくれる政治のように見えるわけですね。この奇妙な好対照というのが両方とも議会制民主主義の危機だと学者の間では感じられているわけです。なぜなら機能しなくなっている、そこに急に機能ちょっと行き過ぎてしているように見える人が出てきた、両極端にぶれているから、いずれの時代をとっても長期的な目で見れば、これは議会制そのものが機能しなくなっているのではないかなという、そこのところは押さえておかないと。そこで機能しないからと言って、ドンドン国民投票の方に流れていってしまったら、議会制民主主義そのものが下からシロアリに食われるようにドンドン掘り崩されるわけですよ。かえって我々の政治のシステムを壊す可能性があると思います」

柴山昌彦 首相補佐官の提言:『多様なチャンネル』
柴山議員
「国と地方、議会と1人1人の市民、ないし国民、それぞれの役割分担というものが私はあると思っています。それぞれの持ち分で、民意と言われるものを発していくことによって、それがうまくミックスすることによって、より正確でかしこい民意というものが生まれてくるのだと思っています」

内貴滋 帝京大学経済学部教授の提言:『各機関が誇りを持って責任を果たす、国民も勉強する』
内貴教授
「議会とか、政府とか、責任を取るべきところが自信を持って、誇りをもって職責を果たしてもらいたいと。自分の意見を決めてもらいたいと。きちんとそれを国民に提示して、それがやっぱり責任を果たすことだと。一方、国民も民意と言ったって、本当に自分でよく考えて。十人十色ですから、それも全部考えて、自分も勉強し、正しい民意というのはありませんけれども、自分の納得できることを言える、そういう勉強ですか、そういうものを培っていくということが大事で、あまり批判ばかりしないで制度を育てる、そういうことが大切だと思います」

先﨑彰容 日本大学危機管理学部教授の提言:『しなやかさ』
先﨑教授
「要するに、国民が投票する時に、社会全体の雰囲気の中に、多様な意見を入れていく柔らかさ、しなやかさというのが必要だと思います」