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2016年8月17日(水)
『幼児教育』の経済学 追跡調査から徹底分析

ゲスト

馳浩
前文部科学大臣 自由民主党衆議院議員
鈴木みゆき
和洋女子大学人文学群こども発達学類教授
中室牧子
慶應義塾大学総合政策学部准教授 教育経済学者

馳前文科相と専門家に問う 幼児教育の現状
秋元キャスター
「今夜は幼児教育、小学校就学前の子供の教育のあり方について聞いていきます。まずは現状、どのようになっているかを確認していきたいと思います。幼稚園は文科省の管轄です。保育所は厚生労働省が管轄しています。幼保連携型認定こども園、こちらは内閣府が管轄しているんですけれども、この幼保連携型認定こども園というのは昨年4月に子育て支援制度が始まったことで本格化しまして、現在4月1日時点で公立と私立を合わせて全国に4001か所あるということですけれど、このように3つ形があります。所管が分かれているように、基本とする要領や指針も、このように分かれているわけですね。鈴木さん、現状では幼稚園と保育所、この幼保連携型認定こども園で教え方に違いはあるのでしょうか?」
鈴木教授
「もともと子供の年齢とか、保護者の就労状態など、様々な環境とか、条件で、日中、子供が過ごす場所というのが選択されてきているんです。ただ、子ども子育て支援新制度もあって、一体化施設というふうに、認定こども園ができたりして、その三者は遊びを通してということに関しては共通しているんですね。さらに現在3つの改定が進んでいます。その進んでいる中で、保育内容について改定を目指しての検討の中では、幼稚園の教育内容と整合性をはかろうと。保育所であっても、認定こども園であっても、遊びを通して、環境を通してというような教育の方法をしっかりと進めていこうということで考えています」
秋元キャスター
「この幼稚園の教育内容というのは、保育所にはないものということになるわけですよね」
鈴木教授
「これまでも整合性をはかってはきたんですけれども、より、さらにしっかりと就学、小学校就学前の幼児期の教育というものを、きちんとした整合性をもって、取り組もうではないかと、3つの委員会では検討しています」
秋元キャスター
「整合性というのは、これまで何が違ったのですか?」
鈴木教授
「基本的に保育所の場合は当然、0歳児から就学前までの幅広い年齢で、しかも、保育を必要としている、就労している保護者の方。幼稚園の場合は学校教育なので、学校教育法に基づく幼児教育となっています。ただ、内容的に言えば、遊びを通した総合的な指導ということに関しては、これまでも今後、さらにきちんと揃えていこうとなっているというところでは同じかなとは思います」
秋元キャスター
「そうした中、要領ですとか、指針の改定に向けて、鈴木さんも委員を務められている有識者会議で議論が進んでいるということですけれども、どこまで話が進んでいるのでしょうか?」
鈴木教授
「一応、幼稚園教育要領と、それから、保育所、保育指針に関しましては中間まとめ案というのが出ています」
秋元キャスター
「それはどういったものなのでしょうか?」
鈴木教授
「目指すべき方向性、みたいな形での内容に関しての議論が進んでいるという段階です。現実にはおそらく来年の春ぐらいには、しっかりとした形を出し、30年に改訂という、実施というか」
秋元キャスター
「統一の要領でやることを目指すということですか?」
鈴木教授
「いえ、幼稚園教育要領は、幼稚園教育要領。保育所、保育指針は保育指針ということです。別です」
秋元キャスター
「そうすると、整合性というのは?」
鈴木教授
「中身の整合性です」
秋元キャスター
「統一も1つのことで、要領でやるということではなく、それぞれで」
鈴木教授
「保育内容ということに関しては」
秋元キャスター
「中身についての整合性を取っていこうという話し合いをされているということですね?」
鈴木教授
「はい」

認知的能力と非認知的能力
秋元キャスター
「今月2日に公表されました、厚生労働省社会保障審議会にあります、保育専門委員会の中間とりまとめでは保育所、保育指針改定の方向性として、このように触れているんですね。近年、国際的にも非認知的能力を乳幼児の身につけることが、大人になってからの生活に大きな差を生じさせるといった研究成果、ペリー就学前計画の追跡調査などからとりわけ3歳未満児の保育の重要性への認識が高まっていると書かれているんですけれども、鈴木さん、この非認知的能力というのは、これはどういうものでしょうか?」
鈴木教授
「非認知的能力というのと、認知的能力というのがありまして、認知的能力というのはとてもわかりやすく、IQであるとか、学力であるとか、数量化しやすいもの」
秋元キャスター
「計りやすいもの?」
鈴木教授
「そうですね。それに対して非認知的能力というのは、やり抜く力とか、自分の気持ちをコントロールするとか、粘り強さ、諦めない気持ちとか、コミュニケーションをとるというようなものですね。ただ、この2つはまるっきり別々というわけではなくて、たとえば、やり抜く力を持って取り組めば、成果もあがりますね。認知能力を上げるためには、何かを一緒にしようと考えて、いいものをつくろうとした時に、一緒にがんばろうという気持ちが育ってきたりもしますよね。ですので、この両者は結構、密接に関連はしている」
秋元キャスター
「切り離せることではないということ?」
鈴木教授
「はい」

『ペリー就学前計画』
秋元キャスター
「こうしたやり抜く力などを乳幼児期につけさせることが大人になっての生活にとって大事だということが書かれているわけですけれども、中室さん、この中間とりまとめでも参考にされている、ペリー就学前計画の追跡調査、これはどういう調査でしょうか?」
中室准教授
「ペリー就学前調査というのは、アメリカで行われました社会実験でして、1962年にスタートしています。かなり前ということになるんですけれども、低所得層の、アフリカ系アメリカ人の子供達、3、4歳児の子が対象になっています。先ほど、社会実験と言いましたけれども、この就学前教育の効果を測定するために、対象となった123人の子供達をランダムに抽選で、2つのグループに分けています。1つが、この被験者58名。この子達はペリー就学前計画の対象になる人達です。一方、この非被験者とありますけど、この人達はその対象にならなかった人達ですね。我々は専門用語で対象群などと言ったりしますけれども、この2つのグループを比較することで、ペリー就学前計画を受けたことの効果というものを定量的に計ろうというふうに経済学者が考えたわけです。具体的に、その内容はいかなるものかと言いますと、非常に質の高い就学前教育というものを子供達に提供しましょう。どのように質が高かったのですかというと、先生は児童心理等の専門家であって修士号以上の学位を持っています。子供6人を先生1人が担当しています。週5日、午前中に、約2.5時間の読み書きや歌のレッスンなどを2年間受けます。さらに1週間につき、だいたい1.5時間の家庭訪問があったと。幼稚園の先生達が家庭を直接訪問して、子供の情報をやり取りしたり、遊び方や声のかけ方などを親御さんにレクチャーするというような機会があったと言われています。こう見ていただきますと本当に質が高いのか、今どきの保育園や幼稚園であればこういうことをやっているところも少なくなさそうですけれども、この計画自体は1962年に開始されたものですので、当時としては非常に質の高いものであったと言われています」
秋元キャスター
「この計画が今、日本で注目されている理由というのはどこにあるのでしょうか?」
中室准教
「実は、この1962年に開始された、この就学前計画ですけれども、その子達が、とうとう大人になりまして、40歳前後になった子供達をペリー就学前計画はずっと追跡をしてきているわけですね。同じ子供達をずっと追跡してきている。そうすると、3、4歳の一時点の時に非常に質の高い幼児教育を受けた子達と受けなかった子達で顕著に差が出てきているということが研究の中でわかってきたわけです。たとえば、6歳時点のIQというものは、ペリー就学前計画の対象になっていた子達の方がずっと高かったし、19歳時点での高校卒業率というのも高かったし、27歳時点の持家率というのも高かった、40歳時点での所得というのも高かったわけです。すなわちこの3、4歳の時に受けた就学前教育の効果というのは極めて長期間に渡って、効果が持続したことがわかっていて、その効果というものを社会収益率と我々は呼んだりしていますけれども、社会に対してもたらした便益というものも非常に大きかった。その理由は何かと言いますと、この教育を受けた本人達が得た利益、これを私的収益率などと言って、たとえば、所得が高くなるとか、学歴が高くなるというようなものがあるんですけれども、それ以外にこの教育を受けた人達の逮捕率が低かったり、生活保護に陥る割合が低かったり、そういうような形で社会全体が受けるメリットも大変大きかった。具体的な数字で申し上げますと、我々は内部収益率などと呼んだりしますけれども、この1962年に政府が、ミシガン州の政府が投資をした100円というお金が、子供達が65歳になった時に社会に6000円から3万円となって還元された。それぐらいの大きな収益というものがこの就学前教育によってもたらされたということがわかっているわけです」
秋元キャスター
「6歳の時点ということは3、4歳の子達だから2、3年で差が出ているわけですね?」
中室准教授
「その通りです。短期的な効果だけではなくて、なんと40歳まで、その効果が持続したということが非常に驚きを持って受け止められました。それがどうして日本の、現在の政策の策定の中で非常に注目を浴びているかと言いますと、我が国の財政が非常に限られている中で、教育と言えど、聖域ではない。何にお金を使って、何に使わざるべきかということが議論されているわけですけれども、こうした幼児教育にしっかり社会として投資をしていくということは、社会全体にもたらされる便益が多いのではないかということが期待されていますので、そのことがおそらくこの研究に大変な注目が集まっているということだろうと思います」
秋元キャスター
「いろいろとIQが高くなったり、高校の卒業率が高くなったりと、こういったことは非認知能力が高くなったことの表れなのですか?」
中室准教授
「その点が実はこの研究の非常に重要なところでして、認知能力についても、非認知能力についても、この幼児教育を受けたグループと受けなかったグループについて、両方調査が行われています。驚くべきことに当初、多くの研究者が予想したのはこの就学前教育が非常に成功したのは子供達の認知能力が改善されてからであろうと考えたんですね。子供達がこういう質の高い就学前教育を受けて、賢くなったので、学歴が高くなり、収入が高くなったと」
秋元キャスター
「認知能力というのは、先ほどのIQとか、学力とか、こちらですね?」
中室准教授
「そうですね。記憶力というような、数字で比較的容易に計ることができる、そういう能力です。最近は心理学分野の発達もあって非認知能力というものも数値化することができます。たとえば、やり抜く力とか、自制心、こういったものも数値化することができるんですね。経済学者はこういったものを数値化して、ずっと追跡調査の中で計測しています。そうしますと、この認知能力といわれるIQや学力と言われるものは、確かに、6歳時点では差がついていたわけですけれど、だんだんとその差というのが埋まってきて、この就学前教育を受けた子達と受けなかった子達で、8歳前後で差がなくなるということが確認されています。しかしながら、その差がずっと埋まらなかったものが何なのかと言うと、ここで紹介されている非認知能力というものなんですね」

『ペリー就学前計画』と非認知的能力
秋元キャスター
「中室さん、なぜこの教育を受けた子供達が非認知的能力が高まったのでしょうか?何がポイントだったのでしょうか?」
中室准教授
「これはいくつか理由が言われているのですけれども、もともとそういう非認知的な能力を伸ばそうということを目的にした介入が行われたということは1つあると思います。さらにこの介入の中で、実は1週間につき、1.5時間の家庭訪問があったということがここに書かれていますけれども、この家庭訪問が果たした役割が非常に大きかったのではないかと言われています。研究によりますと、この家庭訪問があったことによって、就学前計画の対象になった子供達とならなかった子供達では親の意識が大きく変わったということを示すエビデンス(科学的根拠)があるんですね。ですので、おそらく保育園や幼稚園といったその機関の中だけではなくて、家庭の中でも積極的に親からの関わりがあって、コミュニケーションをとろうとして、そのことによって非認知的能力というものが非常に発達したのではないか。育ったのではないかと見られています」
馳議員
「中室先生にお聞きしたいんです。私達政治家ですからよく幼稚園や保育所訪問して、先生方からお話を伺う時によく出る言葉が、まず親の教育からしないとダメですよねというような、非常に抽象的なことを言われるのですが、つまり、家庭教育において、子供達との接し方をきちんと踏まえたうえで対応することによって、いわゆる幼児教育の施設、保育所や幼稚園で取り組んでいることの効果がさらに増幅されると考えてよろしいということですか?」
中室准教授
「はい。そうだと思います。最近の経済学の研究ではこの就学前の教育で、画期的に良い成果をもたらそうと考えるのであれば、子供の世話をする大人の生活に介入しなければならないという見方が主流になってきています。なので、大人の意識を変えるというのは、実は大変なことではあるんですけれども、それをどのように介入していくかというのは、今後の研究の主要な課題になってくるものと思います」
秋元キャスター
「先ほど、中室さんから、だいたい子供の時に投資した100円が6000円から3万円というイメージの効果があるという話がありましたけれど、それは効果としてかなり大きい?費用対効果という言葉が正しいかわからないですけれども」
中室准教授
「その通りです。費用対効果が高いと言っていいと思います。教育を投資と捉えることに抵抗がある方もおられるかと思いますけれど、しかしながら、その限られた財源をどこに使っていくかという議論は残念ながら我々は避けられませんので、なるべく投資対効果の高いところに、積極的に投資をしていく必要があると思います。さらには、このペリー幼稚園プログラムを先に進めた、最近の様々な研究が出てきていますけれども、ペリー幼稚園プログラム、ペリー就学前計画というのは、どちらかと言えば、エンリッチメント、すなわち就学前教育を充実させましょうというようなメッセージを中心に発していたと思いますけれども、最近の研究は、むしろ子供達の幼少期を大人がどのようにプロテクション、守っていくかというところにだんだんと議論が進むようになってきています。要するに、幼少期の教育というのは決定的に大切でありまして、なぜかと言うと、幼少期に、たとえば、栄養障害が起こったとか、精神的な抑圧が起こると、大人になってから、非常に大きな健康リスクを抱えるということが明らかになってきているわけですね。たとえば、心臓病になる確率が上がったりとか、精神的な病気に罹る確率が上がったりするというわけですね。ですから、エンリッチメント、充実させていくということも必要ですが、プロテクションをしていくということが必要。これは社会として取り組んでいかなければならないし、そのために我々の限られた貴重な財源であるとか、税金というものを使っていくということに対して、もっと積極的になるべきなのではないかと私は思います」

幼児教育のあり方とは
秋元キャスター
「馳さん、いかがですか?社会でやっていくべきだと」
馳議員
「私はこの話を、随分と勉強させていただいて、大臣の時に、経済財政諮問会議とか、教育再生会議の時に、この話を随分と使わせていただいて、特に麻生財務大臣とか財政制度審議会では、この話を随分申し上げてきました。つまり、経済学者の観点から、エビデンスに基づいて、いかに幼児教育において投資を充実することは、社会的な、公的投資を充実することが、その後の10年後、20年後、30年後、40年後の日本社会にとって、いかにプラスになるかというところに着目をして、従って、ここに一定の支援が必要で、できれば、ここに幼児教育無償化の議論というものを定着させていかなければいけないと、こう申してきました。どちらかと言うと財務省は子供が減った、少子化だと。従って、小中学校でクラスが減ってくるのだから、その分の教育投資を減らせばいいではないかと。幼児教育については、一義的には親の責任ではないか、あるいは保育所や幼稚園の施設においてきちんとやってくださればいいではないか。それ以上、何を増やす必要があるのだという、こういう議論が結構、財政的には多かったのですが」
秋元キャスター
「むしろ、数が減るのだから、削れるのではないかと」
馳議員
「そうです。そうではなく、この就学前にきちんと投資をすること。また、こういった幼児教育の施設と家庭との連携をとることがいかにその後の社会にとっての便益となるか、所得もそうですし、生活保護受給者が減るということも具体的に出てきていますけれども、そういうエビデンスに基づいて、投資をする必要があるという認識を、我々は、もっともっと展開していく必要がありますし、そのための研究も、調査も、私はしていく必要があると思っています」

基本的生活習慣と非認知的能力
秋元キャスター
「鈴木さん、幼児教育で何が大事だと思いますか?」
鈴木教授
「私は、同じく家庭教育の中で、何が大事かというと人の健康だと思っているんです。人の健康というのは、心と体というのが、とても密接に関連しているものなので、子供が元気に機嫌よく過ごすことということが、感じたり考えたりという力につながっていくと思っています。規則正しい生活習慣ということを日中の活動の中でも考えていこうと思っています」
秋元キャスター
「元気に、機嫌よく過ごすということが先ほどから出ています非認知的能力につながってくということになるのですか?」
鈴木教授
「はい。たとえば、朝、登園の時、機嫌のいい子は遊びにすっと入れるんです。ちょっと友達といざこざがあっても譲り合うというようなことがあって。そのベースに、たとえば、早寝早起き朝ごはんのような、基本的な生活習慣があるのではないかと思っています」
秋元キャスター
「基本的な生活習慣ができないとどういう影響が出てきてしまうのですか?」
鈴木教授
「現在の状況ですと、たとえば、記憶が定着しないということで、学力とか、生活習慣病の予備軍であるとか、それから、認知能力が下がるとか、いいことはないです」
秋元キャスター
「後々にも影響があるんですよね」
鈴木教授
「そうですね。東京都教育委員会が都立高校中途退学した子供達を追いかけて、インタビュー調査した結果です。都立高校中途退学したあとに正社員になっていたりとか、あるいは高卒認定を取るので学校に行っていたり、いろいろなカテゴリーに分けたんです。その中で中途退学した時の状況はどんな状況でしたかと聞くと遅刻や欠席が多かったとか、それから、どんなことがあったら中途退学をしなかったと思いますかという質問に対して、規則正しい生活ができることというのを、全てのカテゴリーの子供達が答えたんですね。東京都教育委員会が報告書を出しています。その中に書かれていることですが、基本的な生活習慣の未収得と名づけられています」
秋元キャスター
「高校中退者だから、高校生ということですよね。高校生で、自分で、規則正しい生活ができることが大事だとわかっていながらもできないということですよね?」
鈴木教授
「はい。あまりそういう生活をしてこなかったと」
秋元キャスター
「つまり、その時点で、今から規則正しくしようと思ってもなかなか難しくて」
鈴木教授
「中高生になりますと、ネットであったりとか、いろいろなゲームであったりとか、いろいろな影響も加わりますし、生活習慣というのは継続するという研究はすごくたくさんあるんです。ですので、幼児期の生活習慣というのはとても大切です」
秋元キャスター
「子供の時にしっかりと身につけなければいけない。三つ子の魂百までなんて言いますよね」
馳議員
「他人事ではなくて、まさしく全ての保護者。親にしても、家族にしても、意識的に早く寝て、早く起きて、食事を摂り、また、排せつも、できれば、学校に行く前に、きちんとさせてあげて、学校に行かせてあげる。この落ち着いた状況の中で、勉強に取り組む。また、クラス活動、あるいは運動に取り組むということが集中して物事に取り組むことができるベースになるわけですよね。従って、早寝、早起き、朝ごはんというのは、幼児教育において実は最も重要なベースになってきているんです。ところが、家庭生活においてお母さん、お父さんが早く起きなかったり、朝ごはんを食べさせてあげなかったりすると、これが、学校生活においても、友人関係においても、イライラ感がつのる。何をしていいかわからない。パニック状況になってしまう。その嫌な思い出が、また、何度も何度も繰り返されると自分に自信を持てなくなってくると。自分に対する尊厳を持てなくなってくるというふうに、自分を否定的に捉えるようになってしまうんですね。従って、就学前に基本的な生活習慣を取らせてあげるように、意識的に保護者が整えてあげないと。そんなの子供の自主性とは言えないではないですか、ということですよね」

これからの幼児教育
秋元キャスター
「文部科学省の幼児教育部会、厚生労働省の保育専門委員会は、共に、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というのを挙げていまして、その中で健康な心と体、自立心、思考力の芽生え、協同性などを挙げているんですけれども、1つの同じ、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というのを目指すという意味で言うと今後、保育園でも幼稚園と同じような教育を受けるという方向になっていくということなのですか?」
鈴木教授
「これに関しては、一致して、一緒にやっていこうと思っています」
秋元キャスター
「それは保育園を幼稚園の教育に合わせるということになるのですか?」
鈴木教授
「いや、保育所には保育所の役割とかをずっと持ってきたし、それから、その中で教育的なことも行われてきたわけですけれども、今後はどこの施設で小学校就学前の教育を受けても同じように育てていこうという、そういう連携を取りたいというところがあるのだろうと思います」
秋元キャスター
「同じような教育ということになる。現状、保育園は保育士さんが世話をしているわけですよね?」
鈴木教授
「はい」
秋元キャスター
「幼稚園は幼稚園の教諭の資格を持っている方がということですよね?」
鈴木教授
「そうです」
秋元キャスター
「今後それはどうなっていくのですか?」
鈴木教授
「たとえば、認定こども園では、保育教諭という形で、現時点では幼稚園教諭と保育士を両方持っている」
秋元キャスター
「両方の資格を持っている方が…」
鈴木教授
「そうです」
馳議員
「既に8割方の人が、保育士は幼稚園教諭の資格をもっていますし、幼稚園教諭は保育士の資格を持っているんです。そうなるように実はこの10年ほど仕向けてきているんですよ。秋元さんが疑問に思われているようなことが子供達にとっては大事なことですね。中学校に入った時に保育所から上がったお子さんと幼稚園から上がったお子さんとで学校の方で戸惑っては困りますし、その内容を合わせるということは指導する先生の資格も両方の資格を持てるようにしましょうよと進めてきて、8割方持っているんです。最終的には両方の資格を取得できるようにすることによってスムーズな連携ができて、お子さんも、保護者も、また学校の先生も戸惑うことのないようにしましょうと方向性を合わせてきているということです」
秋元キャスター
「ただ、人材確保のちょっと心配をしてしまうのですが、現状で保育士さんも数が足りていないという状況で、両方の資格を持っている人というのはどのぐらい確保できるのかなと。そこはどうなのですか?」
馳議員
「おっしゃる通りでありまして、ここは女性活躍の1つのポイントでもあるのですが、これは大学でそういったものの指導も合わせてきていますし、次の段階で言いますけれど、処遇の改善なんですよ。プラス、保育士にしても、幼稚園教諭にしても、認定こども園の先生にしても、職場に入ったあとで研修をできるようにすると。そのためには人材がいなければいけないんですね。つまり、確保をするためには、人の配置、定数の改善、ここに入っていかなければいけないので、財源を確保したうえで。現状では、本当にてんてこまいです、先生方は。研修を受けるところではありません。明日の教材確保、保護者への連絡、先生方同士のミーティングで手一杯です。それに処遇が見合っているかどうか。従って、ここはまだ処遇も改善していかなければいけないし、安定した教員の、定数の配置によって、研修もできるようにしてあげることによって、先生方も、保育士も、プライドを持って、この仕事に取り組んでいるというふうにしてあげなければいけないということです」
秋元キャスター
「その人材確保のことももちろん、そうですし、その他実現するために何が必要だと感じますか?」
馳議員
「これは国の方針、都道府県の方針、市町村の方針。個別の園や保育所の方針といったものが、ベースが一致することが必要だと思っているんです。だから、我々2年前に幼児教育振興法、ベースとなる立法に基づいて、財政的な措置と財政上の措置を、これを充実させていかなければいけないということで、実はまず法律に基づいて最終的には財政上の措置と言えば、財務省との戦いなわけですよ。ここは理解してもらう。そのためには我々も財源を確保する必要があることを、世の中の皆さんに、理解していただかなければいけないということで、この議員立法に取り組んできたという背景があるんですよ」
秋元キャスター
「経済学者の視点で、どういう幼児教育をしていけばいいと思いますか?」
中室准教授
「たとえば、協同性とか、自立心というものは、我々経済学者が否認知力と呼んでいるものなのかなと感じます。最近アメリカの方で進んでいる研究では幼児教育の中で認知教育と非認知教育のどちらに重きを置いて教育を行えばいいかというような議論が進んでいまして、これはシカゴ大学のジョン・リストという人達を中心に行われている研究ですが、2000年に始まって、15年が経って、その結果を見てみますと、非認知能力に対する投資のリターンが高いようであるということが明らかになってきています。さらに、日本のデータを使った研究の中でも、非認知能力が高い人というのは、収入が高かったり、昇格が早かったり、学歴が高いというエビデンスもありまして、因果関係がどうかということまでははっきりわからないものの、日本のデータを使っても非認知能力というものが長期に渡って人々の成功を支えてきているということが明らかになってきています。その意味において、幼少期の教育で1番大事なことは、社会に出た時に必要とされる能力という意味で、非認知能力を鍛えてあげる、育成してあげる、そういう環境が重要なのではないかと考えます」

幼児教育無償化の展望
秋元キャスター
「幼児教育の無償化、どこまでの範囲を無償化と考えているのですか?」
馳議員
「具体的に無償化の財源は7000億円ぐらいですねと言っていますが、それをどの部分で取るかということについてまだ十分にお示しすることはできません。なぜかと言うと、幼稚園も幼児教育を担っています。保育所も幼児教育を担っています。認定こども園も幼児教育を担っています。施設に行かなくても、家庭教育においても幼児教育を担っていれば、地域の見守りなども幼児教育を担っているというふうにベースにとっていますので、そのどこに財政的な支援をするか、公的な支援をすればいいのかということについては精査が必要だと思っています」
中室准教授
「幼時期の栄養障害であるとか、あるいは精神的な抑圧というものが大人になった時の健康状態に影響するからということ。幼少期の教育に積極的に投資をすることによって将来の医療費を削減できるというエビデンスがあるわけですから、医療費の一部を幼児教育に充てるという考え方があってもいいのではないかと思っています。国家財政のだいたい5兆円が教育に使われていて、一方、介護、社会保障、医療でだいたい100兆円のお金が使われています。1人当たりということで言えば、就学前の子供にかけられているお金は1年当たりの政府支出が50万円~100万円程度。しかしながら、100歳の老人には500万円のお金が使われています。この資源配分が必ずしも正しくないとは言いきれませんが、子供よりも老人に大変なお金が使われているという、この状態に関しては、私は国民的な議論が必要だと考えます」
鈴木教授
「無償化というのは、教育の質というものに関わるというところですごく重要だと思っているんです。幼児教育の質に向上を求められるということは幼児教育に携わる者としては圧力ではあるのですが、そこでしっかりと日々の教育を構成して、中室先生や馳先生がおっしゃるように社会に還元していく、そこにつなげていくことが、きっかけになると思うので、是非がんばっていただきたい」

馳浩 前文部科学大臣の提言:『財源』
馳議員
「麻生財務大臣、幼児教育に、未来への先行投資、皆でがんばりますが、是非お願いします」

鈴木みゆき 和洋女子大学人文学群こども発達学類教授の提言:『子供達の現在と未来を育てる幼児期の教育! 質を高めてさらに前進!』
鈴木教授
「幼児教育というのは、子供達の現在と未来を育てると思っています。なので、幼児期の現在と未来を育てる幼児期の教育。質を高めてさらに前進」

中室牧子 慶應義塾大学総合政策学部准教授の提言:『科学的根拠に基づく社会的収益率の高い投資にする』
中室准教授
「馳さんと同じで、財源の問題、非常に重要だと思っています。これは財政当局を説得するだけではなくて、納税者である国民の理解も得なければいけません。そのためにはどのような幼児教育をすれば、どのような成果がもたらされるのか、そのことを科学的根拠によって明らかにして幼児教育を社会的収益率の高いものにする。そうすれば、自ずと国民的な合意が形成され、財源がついてくるものと考えています」