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2016年7月22日(金)
南シナ海次のシナリオ 日米の本気度&対抗策

ゲスト

宇都隆史
前外務大臣政務官 自由民主党参議院議員
朱建榮
東洋学園大学教授
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー

南シナ海『次のシナリオ』 中国強硬姿勢に日米の対応は
松村キャスター
「中国国内でアメリカ系ファストフード店ケンタッキーフライドチキンの不買運動が起こるなど、仲裁裁判所の最終判断をきっかけに様々な動きが出ています。まずはその判断からおさらいしておきます。今回の仲裁手続きは、南シナ海の領有権問題を巡り、中国の主張が国連海洋法条約に違反するとして、2013年1月に、フィリピンが起こしたものです。最終判断として示されたのが、中国が南シナ海に設定した独自の境界線、九段線に主権、管轄権、歴史的権利を主張する法的根拠はない。スプラトリー諸島にはEEZ、排他的経済水域を設けられる国連海洋法条約上の島はなく、中国はEEZを主張できない。このような判断がなされました。個々の島々についてはこのあと詳しく聞いていきますが、まずは朱さん、中国が歴史的にこの九段線の中の海域を支配してきたという、これまでの主張、これを完全に覆す判断だったこと。どう受け止めていますか?」
朱教授
「九段線について、ずっと1947年に設定して以来、当時、周辺諸国もそれに異議を呈しなかったし、日本を含め、アメリカの政府系の地図も皆、それを表示していたし、日本の地図、外務大臣推薦の地図で、その中にも九段線の中のこれがチャイナということで、南沙諸島、西沙諸島で、中国というのが表記していたというのが、現在、中国はそれを証拠として挙げているんですよ。そういうような歴史的な経緯で、その中でフィリピンが1970年代に初めて入ってきた。今回の判断でこれまでの歴史が完全に抹消されるということはないと思うんですね。あくまでもおそらく積極的な意味で言えば、アメリカ政府の立場ですけれど、それは九段線そのもので、中国の歴史的な流れ、経緯があるということはわかると。あるいは国連海洋法に照らして新しく解釈すべきだと。そういう意味で、今回のこれも中国にさらにこの新しい、こういう海洋法条約に合わせて、それに適応するような形で、国際法のもとでやっていくということを促したのは間違いないですけれども。ただ、単純に九段線が否定されたということではないと思います」

中国『九段線』の行方
反町キャスター
「日本外務省は、九段線というものを中国の主張する通り、これまで政府見解として認めてきていたのですか?」
小原氏
「正式にそれを中国の主張通りに認めたことはないと思います」
反町キャスター
「だから、どういうことですか?日本政府が認めたというのは」
朱教授
「1950年代から1960年代にかけて、中国があげている証拠というのは、当時の日本の外務大臣が実名で、奨励する地図に、それが皆、盛り込まれているんですね」
反町キャスター
「全部?」
朱教授
「当時の地図がね。中国いろいろ探して、地図があったというのがあるんですね」
宇都議員
「初めて今、聞きましたね。一貫してこの九段線というのは、歴史的な根拠、あるいは国際社会の法的な秩序に基づいた、何らかの意義があるものとして認めてないというのが政府見解です」
反町キャスター
「そもそも論ですけれども、九段線というのは、あの線の内側は中国の領海という考え方なのですか?」
朱教授
「中国政府は、そのような立場をとっていません」
反町キャスター
「あの線というのは何の線ですか?」
朱教授
「中国自身も明確な解釈を出していないから、アメリカなどに迫られて、何だよというところで、現在の中国が主張しているのは、この線の中の島は、これは中国の島であると。伝統的にも利用をしているし」
反町キャスター
「それは領土であると?」
朱教授
「ええ。中国の領土であると」
反町キャスター
「領土があったら、領海が確定され、200カイリでEEZがあってというのが、いわゆる普通の排他的経済水域だったり、領海だったりすると思うんですけれども、それでいいですよね?」
小原氏
「そうです」
反町キャスター
「領土が確定しなければ、領海もEEZもないはずですよね?」
小原氏
「はい」
反町キャスター
「その感覚からいくと、この九段線というのはいったい何ですか?」
小原氏
「先に、ここが必要だという権利意識はあると思うんですね」
反町キャスター
「ここは僕のものと勝手に言っているだけに聞こえるんです」
小原氏
「中国の言い方は、南シナ海の全ての島嶼及び付近に議論の余地のない権利を有するというのが、これは外交部も出している公式の…」
反町キャスター
「その権利とは何ですか?」
小原氏
「これが主権だとは言わない。それと、もう1つは、領海と言わない。領海と言ってしまうと、国連海洋法条約で12マイル、12カイリとはっきりと規定されるので、そうすると、南シナ海全体を押さえられない。ですから、歴史的な権利とか、管轄権というような言葉を用いて、南シナ海全体に主権が及ぶかのような、その権利を主張すると」
反町キャスター
「そういう権利の主張をする国というのは世界に他にあるのですか?」
小原氏
「歴史的権利というのは、国際法の中にも出てくる概念ではありますし、今回の裁定の中にも、しっかりとその言葉は出てきますけれども、ただ、今回、否定されたのは中国の漁民が活動していたことは認めつつ、それは一時的な活動であると」
反町キャスター
「他の国もたくさん入ってきたみたいな話もありましたよね?」
小原氏
「はい」

中国『強硬姿勢』の舞台裏
反町キャスター
「小原さん、中国の世論をはかる1つの材料として、中国のTwitter、Weiboというのがありまして、いろいろと探したのですが、こういう文言が出てきました。たくさんあった中でのピックアップなので、選んだのは我々ですけれども、1つは、アメリカも介入して、中国をこてんぱんにした。こんな判決が出て、政府はなぜやり返さないのか。もう1つ、南シナ海仲裁裁判の失敗は過去一世紀以上の中国外交の重大な失敗である。こういったものを我々見つけたんですけれども、こういったことから、これが全てだとは申し上げませんよ、こういったものが中国側のTwitterに載っていること。そこから中国における世論、何か感じる部分はありますか?」
小原氏
「中国外交の重大な失敗、これがポイントですね。法的な問題ではない。これはあくまで外交の失敗であると。実はこれが中国では非常に問題になっていまして、今年に入って習近平主席の離職を勧告する公開書簡というのが2回もネット上に流されたのですが、ここでも習近平政権の外交の失態というのが挙げられているんです。実は現在、中国は政治局の中に外交担当がいなくて、内政の時代だと言われていたのですが、今後、外交の季節に戻ると言われている。それは政治局員に外交担当をつけるのではないかという話ですが。と言うことは、これまでは外交部にやらせっ放しだったからうまくいかなかったのではないか。それが外交部がなかなか強硬な姿勢を崩せない1つの要因で、フィリピンが提訴をした2013年。その交渉まで含めると、2012年頃まで遡って外交部が処罰される可能性がある。これが怖くて現在はとにかく強行に出ざるを得ない。これがフィリピンとの合意もうまくいかない原因の1つだと思います」

『中国政府批判』の行方
反町キャスター
「中国外交の重大な失敗という言い方。仲裁裁判所は独立した司法機関だと僕らは思っているんですけれども、その仲裁裁判所の失敗が外交の失敗だというこの言い方。これは裁判というのは外交によって右、左、左右できるものだという理解が中国国民の一般の見解だと思ってよろしいのですか?」
小原氏
「はい。実は中国では仲裁裁判所は、裁判所としては認めていない。これは政府だけではなくて、広く国民一般が仲裁裁判所、これは日本語の名前なので、英語で言うと、COURT、裁判所にはなっていないですね。中国で言う仲裁所ということになると、これは、裁判所とはまったく位置づけが違う。たとえば、喧嘩をした2人が何とかしてくださいと、一緒に行って、まあまあ、お互い収めなさいよ、と言ってもらう程度の場所が仲裁所です。ですから、今回は、中国は行っていないのにフィリピンが勝手に行ったことに対して中国は怒っているというのは、裁判所という位置づけとはまったく違う認識だからですね」
反町キャスター
「中国は仲裁裁判所を裁判所と思っていないのですか。調整するみたいなところであって、公平でもないし、どこかの国が、はっきり言えば、アメリカがこれだと言ったら、言うことを聞くような連中が集まっているところだ。そんな感じで見ているのですか?」
朱教授
「少なくとも5人のうち、2人の判事は中国も出せたのに、出さなかったと。そこには不満も、中国の一部、Weibo、チャットに出ていますよ。ただ、それは今の話の背後に、そもそもこの仲裁、最初からこれが互いに話し合って、私と反町さんとが話して決着つかなければ、この仲裁のところ、警察に聞こうということですけれども、そういうことをこちらが同意せずに、一方的に聞いたものが本当に仲裁かと。その背後に明らかに何かの陰謀があるのではないか。そのようなことで反発。一方、その対応で結果的にちょっと早く真剣に対応すべきではなかったのかと」
反町キャスター
「それはどちらですか。要するに、ちゃんと対応していればここに柳井さんが選出した4人の方に対して、中国側は不公平だみたいなことをいっているという、最初から中国がきちんと対応していれば、こういう選出ではなく、フィリピンが選出した1人がいるように、中国側が選出した1人か2人が入るはずだったのではないですか。それをやらなかったということが、中国政府当局の失敗だと皆、怒っているのか。ないしはこういうものをやられたことに対して、いや、日本とかアメリカが我が国を叩こうとしていると思っている。どっちに怒っているのですか?」
朱教授
「正直言って、現在、学者の一部が、結果として、そういうところが中国は本当の国際海洋法というのを活かしていない。少なくとも相手にこの海洋法を、拡大解釈して、利用され、つけ込まれたと。そのような不満があるんですけれど、ただ、大半の人はこの仲裁というのは、先ほども申し上げているように、最初からこれが仲裁というのは両方の意見を聞いたうえでの話であって、そうではなかった。しかも、それが主権とか、領海、これも裁判対象ではないのに、今回、越権して拡大解釈をしたと、それは何だ、そういうようなものが、こんな一辺倒のような結論であれば、返ってそれで、それが中国を包囲する、これが下心、企みに見えたのではないかという、逆にまた中国の中でちょっと一辺倒したこと自体が完全に陰謀だというのが正直言って、大半を占めている人の受け止め方です」
反町キャスター
「たとえば、今日のテーマに限らず、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の話でもそうですけれども、知的財産権の話でもいいですよ。中国というは、国際ルールみたいなものに対し、いまいち、まだこれからキャッチアップしていかなくてはいけない部分というのがたくさんありますよという話は、これは朱さんに限らず、いろいろな方が、当番組に来て言いますよ。知的財産権についてどうだ。コピーしたら、まずいよとか。AIIBの通貨の問題にしても、これにしてもそうですけれども、今回のこのケースに関しても、仲裁裁判に関しても、国際法に対する理解がちょっと足りなかったのではないのという、そういう率直な反省というのは、中国の内部においてはちゃんとあるのですか?」
朱教授
「私は結果としてはあると思います。ですから、だって、その対応の段階では、正直言って、先ほど申し上げたように、それ自体への不当というところに強い反発というのをやってきて、結果として、このような一辺倒した結論というのは、逆にこれからいろんな問題の引き金になるので、次の紛争への幕開けと。そのような部分はともかくとして、私は結果としてこのようなものが出てきて、少なくともアメリカ、あるいは日本から中国が孤立しているよと。そういうふうに言われると、これから中国が国際社会でもっと役割を果たしていくためにはダメージだと。これからもっと法律をうまく活用して、そういうところをやらないといけない。そうような考え方になりつつあると思います」

『ミスチーフ礁』の行方
反町キャスター
「仲裁裁判所の判断の中で1つはっきりしていたのは、このミスチーフ礁というところですけれど、このミスチーフ礁というのはフィリピンのパラワン島という、フィリピンの西の端っこに当たる島ですけれども。そこから、200カイリ、フィリピンのEEZを見た時に、このへんのものは全て今回の仲裁裁判所の判断で島ではないという判断がされた中で、ここの範囲は、つまり、フィリピンのパラワン島から見た時の200カイリの経済水域内だという前提でいくと、このフィリピンの200カイリ内にあるミスチーフ礁に中国は様々なものを建築している。これはおかしいのではないのかということになっているんですけれども、これはいかがですか?」
朱教授
「現在、南沙諸島というのは各国が入り乱れて占領しているので、きちんとした、現在のEEZの線で、それ以内が全部フィリピン。それ以外が全部中国とベトナムではないですね。ベトナムは29の島や岩礁を取っているので一部そこも入っていると。ですから、それで、そもそもそれが今回の九段線を、今回の判断で否定したから、中国の九段線や、その関係の、中国の実効支配をしている島や岩礁すら、主権がないというようなところは、否定されているものではないですね」
反町キャスター
「そこは譲れない?」
朱教授
「はい。そこはたぶんないと思います」
反町キャスター
「小原さん、この問題。今回の仲裁裁判所の判断で、1つはっきり出していたのは、このスプラトリーには島はないと。島はない中で、フィリピンの200カイリの中にある。だから、このミスチーフ礁に中国は様々なもの、建築物をつくるのはおかしいと。この部分。中国に対しては特別な楔として意味を持ちますか?」
小原氏
「持つと思います。中国に対して何らの権利もないという表現になっている。これは非常に強い判断だと思います。ここに中国が人工島、ミスチーフは、本当に最初は、小さな岩礁の上に、櫓を建てただけのものから、どんどん拡大していったんですけれども、これがまったく中国にとっては何の意味も持たないと。中国のものですらないと言われてしまったわけですから。これについて中国は受け入れることができないと強く考えていると思います」

中国・フィリピンの交渉は…
反町キャスター
「そうすると、ここから先は中国とフィリピンの間、フィリピンは今回、仲裁裁判所からミスチーフ礁はお宅のものですが、お宅の200カイリ内にあるのだから、ここに中国が櫓を建てるのはおかしいですよと言われ、今度はフィリピンと中国の交渉に入っていくとは言いながらも、フィリピンと中国との話ということについてはフィリピンのヤサイ外務大臣、仲裁裁判の判断を踏まえずに2国間で話し合おうと王毅外務大臣から打診されたのだけれども。それは我々の国益にそぐわないと伝えたと、19日、フィリピンのインタビューに答えているんですけれども、仲裁裁判所の判断が出ました。しかも、先ほどのミスチーフ礁に関しては、これはおかしいよと、これは指名で仲裁裁判所から判断が出た中で、中国はこの件に関してもフィリピンと2国間で握って、何か話をしましょうと言ってきている。このフィリピンと中国の交渉の今後の展望、流れ。ヤサイ外務大臣は国益にそぐわないと拒否したような言い方をしていますけど、どのように見ていますか?」
小原氏
「中国はこの判断が出た直後から、すぐにフィリピンに働きかけをしています。フィリピンもドゥテルテ大統領は、自分達に有利な判断が出たらすぐに話し合いましょうということを言っている。と言うことは、フィリピンも実は経済的な支援がほしい。これをカードに使って、少しでも多くの利益がほしいわけです。ところが、中国はそのカードを無視しましょうと言ってきたわけですから、フィリピンにとってはせっかく有利な条件がとれるはずのカードが使えない。これは許せないということになる。フィリピンがどこまで理念を考えているかわかりませんが、中国は少なくともお金をつぎ込めばフィリピンはひっくり返るだろう。ところが、先ほど、申し上げたように現在中国外交部は柔らかく出られない。自分達の責任が現在追求されようとしている時に、この判断は無効だということをまず強く押し出さないといけないこともあって、フィリピンとうまくいかないと。ただ、中国はフィリピンとの合意ができないと、申し立て人が納得したのだから他の国は口を出すなよ、ということが言えないわけですから、これは中国としても、まだフィリピンとの合意を模索する努力は続けると思います」
反町キャスター
「中国はフィリピンに対してどういう出方があり得るのですか?」
朱教授
「現在、フィリピンのヤサイ外相のこの発言を含めて、双方のこれが駆け引きの段階ですね。結果として、これから交渉がないということは誰もそれは読んでいないですけれども。フィリピンとしてはもっと自分に有利になるような条件で、していこう。中国としては、それは今回の判断そのものを棚上げにする形でやる。これからの交渉というのは、国際社会では玉虫色のものがいっぱいあるので、結果として、交渉に入るんですけれども、フィリピンはその前提があり、中国はその前提がないと。中国大陸と台湾の交渉もそれぞれの解釈の前提が違うわけです。ですから、そういうようなところ、これから双方が交渉に入っていく大きい流れというのは現時点では残っていると。フィリピン側も中国に対して、ラモス元大統領を、交渉をする時は、これを特使として中国に派遣すると。そのようなことも数日前に伝わっています。ただ、その間に今の話でも出たんですけれども、中国が認めないなら、そのまま入れないと。おそらく中国から見れば、背後にもともとフィリピン側が言っている内容でまず日本やアメリカの意見も聞くので、結局、裏からもっと強行に出ようというところであるのではないか。そういう意味で、ちょっと駆け引きというのはまだ暫く1か月、2か月は続くのではないかなと思います」
反町キャスター
「宇都さん、このフィリピンと中国のせめぎ合いというのか、序盤戦の展開、どう見ていますか?」
宇都議員
「この問題は2国間の単なる主権の問題ではなくて、中国はそもそも大戦略で、この南シナ海をつくろうとしていますから。必ずこれはアメリカを意識したA2、AD戦略とも絡んできている話であって、これはフィリピンと2国間の交渉で納得させられるようなことがあれば、これは日本の安全保障にとっても、もちろん、世界の平和の秩序にとっても大変なことになるわけですよ。フィリピンはそれをよく理解をしていて、昨年成立した平和安全法制の時にも、2国間を名指しにして、我々は中国や韓国と違うと。この平和安全法制を大きく評価するというような、非常に大きな戦略絵図を理解しながら、2国間の交渉には乗らないという意思を示していると思います」
反町キャスター
「それは、でも、アキノ大統領の時ですよね。今度のドゥテルテさんはバキオか何かの市長をやっていた人ですよね。その人がどのぐらいアキノ前大統領と同じような想いで、国際法に対する考えを持っているのかどうか。もっとわかりやすく言ってしまうと、仲裁裁判所の判決と、中国からどのぐらいの譲歩を引き出せるかを天秤にかけて、それが国益だと思ってディールをするか、しないか、その部分はわからないですよね?」
宇都議員
「それをたぶん1番望んでいるのは中国側でしょうね。つまり、ASEAN(東南アジア諸国連合)であるとか、国際社会の一角を1つずつ崩していく。そのために1対1の交渉に持ち込むというのは中国の戦略でしょう。だから、我々はそれに絶対に乗らない。多国間の中で、国際的なルールの中で決着をつけていきましょうという話には持っていくべきでしょうね」

中国の軍事戦略&米国の対応
松村キャスター
「スカボロー礁に中国が手を伸ばす戦略的意義は?」
小原氏
「この地図のこの円は対艦ミサイルの射程400kmを示しているんですけど、既にウッディー島にはこの対艦ミサイルが配備されました。YJ‐62という対艦ミサイルです。ここにはもう既に昨年から戦闘機が実弾、ミサイルや弾を積んで展開をしていると中国国内でも報道しています。次に南沙諸島のファイアリクロス礁には3000m級の滑走路に今年の1月、民間機がおりました。4月には軍用機も初めておりました。この隣のクアテロン礁には既にレーダー施設が整えられています。ここも間もなく軍事拠点化が進むだろう。ただ、これで南シナ海全部を抑えられない。どうしてもほしいのがスカボロー礁、ここを押さえると南シナ海が全て面で抑えられることになります。これはミサイルの射程だけではなくて、戦闘機の運用についても3つ基地があるとそれぞれ相互支援ができる様になる。そうすると、外からは非常に手が出しにくくなります。もう1つスカボロー礁からフィリピンまで200kmぐらいしかないですね。そうすると、アメリカ海軍が使うと言っているスービック、もう1つもう少し内陸にあるクラーク空軍基地、ここが常にこのスカボロー礁からの対地ミサイルの射程の中にあると、何もしないうちから常にここは狙われているという状態になってしまう。これは中国にとってはどうしても押さえたい。その3つがあって初めてこの三角形で南シナ海がコントロールできると考えていると思います」
反町キャスター
「アメリカが力で対抗してくるということはありますか?」
宇都議員
「アメリカがそこを本気でどこまで考えているのかというのはなかなか向こうに聞かないとわからないと思いますけれど、あくまで軍事戦略上で考えたら、確かに小原さんが言われたように、この3点のうちの1点、3つ目の、最後のスカボロー礁が完成してしまうと非常に大きな戦略的な意味をこれまでと随分変わってくるのだろうなと思いますね。島を守るにはまずエアカバーをきっちりしないとダメです、昔は制空権と言いましたけれども、現在は航空優勢としか言わないですけれど、なぜ言葉が変わったのかというと、持続的にカバーできるものではないからですね。制海権とも最近言わずに海上優勢という言葉を使いますけれど、ただ、島にそれぞれ拠点化したそういう対艦ミサイル施設であり、レーダーであり、そういうものを備えていけば、これはほぼ制空権、制海権と言っていい持続的な自分達の軍事的なパワーを使えるようなエリアというのが存在してくることになるわけで、そうすると、非常にやっかいな拠点がここに発生してしまうということは、アメリカにとっても、これはプラスにはならないと」
反町キャスター
「(軍事施設等をつくると)スカボロー礁に関してはかなりきわどい問題になるとわかっているのですか?」
朱教授
「私はわかっていると思います。お二方は皆、軍事の専門家です。おそらくそういうところに三角をつくると強固な軍事拠点になるというような分析も、これから、そのことを全部紛争のない、そのものとして考えるというのは良くわかるんですけど、しかし、前提として中国はそもそもこれを、戦略的にアメリカと対決するというような考え持っているかどうか。再三アメリカに対してそのような考えがないと。基地はまだつくってないですけれども、それでもちろん、アメリカがさらに中国に対して、軍事的圧力を加えれば、それはもう1つの対抗のカードとしては温存しているんですけれど、防空識別権を含めて。今すぐはない。言いたいのは、中国はそもそも現在、軍事専門家がおっしゃったような、中国が未来、要するに、海洋軍事大国のような構想を持って、そのようなことをすること自体が、中国は南シナ海の紛争というところをあくまでもそこの領海、領土の紛争で、私のような非軍事専門家から見ても、おっしゃるようにそこにつくれば、軍事拠点にすれば、三角のところは互いに支援しあえると。ところが、つくらなくても他の国が入らなければ、別に中国が最初から、アメリカが東南アジアを支配する、アメリカと対決するスービックを脅威下に置くという前提があれば、そのような連想が成り立つんですけれども、そもそも中国はこの東南アジア含め、全部敵にまわして何の得があるのか。ですから、その前提、アメリカと対決して中国のこれから、国際社会、経済発展がどうなるかと。もうちょっと大きい背景で見ないと、ただ軍事的に見れば、中国はこれを次につくって、もっと強固になると。つくらなくても他の国が入ってこなければ、中国にとっての脅威にならない。中国が東南アジアを全部敵にまわすようなことは考えていないし、おそらく今後も考えること自体がもう自殺行為だと思います」

東シナ海・尖閣諸島問題 中国の挑発と日本の対応
反町キャスター
「南シナ海に対する日本の姿勢が、東シナ海に中国を呼び込んでいるという見方についてはいかがですか?」
朱教授
「今回の、最近の動きで見れば、そのような考えが全然ないとは思わないですが、ただ、この間、ロシア艦隊が通ったということで、日本政府は中国が入ったというところを強調しているんですけれども、確かに小原さんもそのあとどこかで書かれていたと思うんですけれども、日本の護衛艦も入ったんですね。いろいろ調べたら、結局、現在、2014年11月の日中の4項目の合意のあとで、互いに艦船はその中に入っていないです。今回中国から見れば、ロシアの艦船が入るということで日本の艦船がそれを理由にこれをすると、中国は、あなたが入るならこちらも入る、とそのようなことがどうも真相であって、中国がロシア艦船と一緒に入ったということではない。従って、いろんなケースでただ簡単に前のケースはそのまま南シナ海ではない。ただ、最近の動きは、会談で安倍首相に対しても申し入れをしたりするということは、日本の動きについて警戒していると思います」
反町キャスター
「日本が国際世論の場において中国を批判すれば、結果的に尖閣周辺に跳ね返ってくる実感はありますか?」
宇都議員
「私は連動していると思います、大きな流れの中で。南シナ海で前に進めない分、東シナに動きを移しながら、習近平政府も軍人の怒りのやりどころを、どこかにはけ口を求めてきているのは十分あると思っていますし、前回、初めて口永良部島の領海にも侵入したという事案もあります。ちょうど日米印3か国の合同演習の最中で、国際連携で何かをしているのに対する明らかな政治的メッセージだと思いますし、スクランブル自体も平成27年度は最高の571回、対中国機に記録を出したという。ただ、単に東シナ海だけが活発化しているのではなくて、南シナ海の動き、国際社会の動きのバランス…」
小原氏
「南シナ海と東シナ海が連動しているというのは、宇都先生がおっしゃる通りですが、南シナ海で日本が口出しをしている間は、中国は東シナ海で何かすることは考えにくい。たとえば、日本が航行の自由作戦に参加すると言えば、これは東シナ海での牽制は必ず起こると思います。ただ、日本の国益にかなうのかという話ですね。これは航行の自由作戦をやっても日本の国益にはかなわないだろうと。日本が求めているのは航行の自由であり、公共財を自分達が自由に使う。しかも、その状況を実力を使って変えないという国際社会の維持であって、そのために日本ができることというのは必ずしも軍事力を使ってすぐに何かをするということではないだろうと思います。ですから、日本はその国益に基づいて、国際社会と共に、これは日本が住みやすいと思っている国際社会ですね、ルールを守って皆が議論を通じて変えたいものがあれば、変えていく。その議論をしていく。そういった国際秩序を維持することが日本の国益だということですから」

朱建榮 東洋学園大学教授の提言:『ともに新しい枠組みを』
朱教授
「私はこれが、1つの新しい交渉の1つのきっかけで、共に南シナ海を含めて、新しい枠組みをどうつくっていくかと。今回の判断で、それ自体が結果ではなくて、むしろパンドラの箱を開けたと思うんです。日本の新聞でも沖ノ鳥島というのは太平島より遥かに小さいのはどうなのかと。アメリカはハワイ沖のすごく小さいところで200海里を設定しているんです。中国からあれは何なの?ダブルスタンダードではないかと。そういう意味では、これから一緒に国際法に則って新しい枠組みをつくっていく、これが大事だと思います」

小原凡司 東京財団研究員の提言:『騒がずき然とした態度と実力を使う決意』
小原氏
「新しい枠組みは必要だと思います。ただ、ルール自体が不満だと、同じゲームができない相手に対して議論は通じないということは認識しておく必要があると思います。ですから、ルールを決める長い議論の間にも実力行使を認めさせないためには騒ぎ過ぎず、き然とした態度で言うことを言ったあとは、実力を使う決意をしっかり持っていなければ中国は止まらないと思います」

宇都隆史 前外務大臣政務官の提言:『長期戦略と多国間外交』
宇都議員
「こういう最終判断が出たからと言って中国がすぐに変わることは絶対にあり得ませんし、先ほど言ったように、力でルールを無視している国家に(ルールを)守らせようと思っても、彼らは守りませんから、非常に長い複合的な戦略が必要だろうなと。軍事だけではなくて、政治も経済もありとあらゆる、中国がルールを守らなければ、かえって全部火種が自分に向かってくるような、そういう戦略を持ちつつ、決して1対1の土俵に上って国際社会の連携を切り崩させないこと。現在のつくり上げたルール、秩序というのを守ってもらう側に中国になってもらう、そういう努力というのが必要だろうと思っています」