プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2016年7月21日(木)
『生前退位』のご意向 陛下のお気持ちに何が

ゲスト

所功
モラロジー研究所教授 京都産業大学名誉教授
山内昌之
東京大学名誉教授
橋本寿史
フジテレビ解説委員

陛下『生前退位のご意向』 象徴の務めと皇室の未来
秋元キャスター
「天皇陛下の生前退位のお気持ちが明らかになった経緯を確認していきたいと思います。13日、NHKが、陛下が生前退位の意向を宮内庁関係者に示されている。皇后さまをはじめ、皇太子さまや秋篠宮さまも退位を受け入れられていると報道しました。この報道を受けまして、同じ日、宮内庁次長が記者会見を行い、陛下が生前退位のご意向を示された事実は一切ないと否定しています。さらに翌日、宮内庁長官も陛下は憲法上の立場から具体的な制度について言及されたという事実はないとあらためて報道を否定しているわけですが、まずは橋本さん、陛下が生前退位のお気持ちを示されたというのですが、以前から、そうした気持ちというのは取材されていて、耳にする機会はありましたか?」
橋本解説委員
「恥ずかしながら、私どものところには全然そうした話というのは届いていなくて、今回の報道は、第一報を聞いた時にびっくりしたというのが率直な感想でした」
反町キャスター
「NHKの報道について、この宮内庁の2つの発言というのは同じ方向で否定をしているのですか。それとも、微妙な違いはあるのか。どう理解したらいいですか?」
橋本解説委員
「最初のこの次長の会見等々ではNHKが言っていることは間違いであって、意向を示された事実はない、と一点張りであったのが、次の日の長官の時には、具体的制度について言及されたという事実がないという言葉で、我々の中では何となく同じことを否定しているようで、少しずつ、ちょっとニュアンスが違うのかなという気はしました。特に長官の方の、具体的な制度について言及された事実はない、という言葉の中には、陛下が国政に関する権能を有しないという憲法、これに基づいた中では、陛下のご意向により、いわゆる法整備というのが必要になってくる。非常に政治的な部分に関わってくるというのを、宮内庁としても、そういうことではないということを打ち消し続けたのではないかと、私達は考えていました」
反町キャスター
「宮内庁次長の発言から、長官の発言までの間に何があったのかというと、陛下のお気持ちがどこにあるのかということではなく、具体的に言う、つまり、陛下が具体的にその発言はされるということは、つまり、法的な、ここで言うなら憲法ですね、憲法改正を、法的な整備というものを、陛下が望まれているということに抵触することを避けようというのが一義的にあった?」
橋本解説委員
「だと思いますね。ですから、次長が会見で否定した時にも、そこを強く、ずっと言い続けていまして、陛下が生前退位のご意向を示された事実は一切ないという、どこが事実は一切ないのかというのを読み解くと、ご意向を示されたというところがないのだと、私達も読み解いていき、いろいろな情報でもお気持ちというのはお持ちのようだということはわかりました」
反町キャスター
「生前退位を望まれるお気持ちはあるけれども、具体的に制度的なことも含めて言及はされていないと。こういう非常に微妙なところですけれど、そういうことだと理解してよろしいですか?」
橋本解説委員
「私は、そういうふうに理解しています」
反町キャスター
「この状況を整理するためには陛下の直接のお言葉をいただくことが1番わかりやすいというような見解もあると思うんですけれども、直接、陛下のお気持ちを、我々伺うというような機会があると思ってもよろしいのですか?どう感じますか?」
橋本解説委員
「今のところ、こういった報道がされて、その中にはいろいろな報道が各社の中であって、その中には陛下がお気持ちを述べられるのではないか。またはその他、長官がそういったことを代弁するのではないかと、いろいろとありますけれども、陛下が何らかの形で、お気持ちは示されるだろうとは思っていますが、それが本当にご自身で述べられるかどうかというのは、まだ不透明と言いますか、可能性はありますけれど、まだ見えてこない」
秋元キャスター
「所さん、いかがですか?陛下のお気持ち、どのように感じられますか?」
所教授
「陛下ご自身が、自ら憲法に則った象徴天皇制度というものを、具体的に担ってこられて、つくってこられたという意味では、極めて憲法に忠実なお方だと思うんですね。だけど、自らつくられた象徴天皇像というものを目一杯、現在もやっておられるのですが、これをいつまでも続けられるのかどうかはわからないと。若干の不安を覚えられるようになったということも事実だと思いますから。けれども、さりとてそれですぐ、どうこう制度を変えてほしいということではなくて、むしろ自らのあり様がきちんと理解されないと、本当に将来とも象徴天皇が続くかどうかについて考えてもらう機会がない限りこのままずっといってしまって、結果的に、いわば象徴天皇制、機能不全に陥ることを憂慮されたと思うんです。ところが、先ほどから出ていますように、そのことがストレートに政治的な影響を及ぼしてはいけないということは重々ご承知ですから。そういう想いと言いますか実情、というものをどのような形で伝えられるのかというのは、大変お悩みだったと思います。だから、むしろそういう実情をご存知の方がそれを一種のつぶやきとして漏らされるようなことが、ギリギリ今回なされた1つのあり方だと思うんですよね。もっと他にやり方があったのかもしれませんけれども、我々もびっくりしましたけれど、考えてみれば、こういう形で、まずは実情を私どもに知らせていただいたという、そういう意味では、こういうことしかなかったのかなという印象です」
反町キャスター
「そうすると、所さん、つぶやきと言われましたけれども、つぶやきも、しかも、伝聞ですよね?」
所教授
「はい」
反町キャスター
「おそらくは。NHKで一報の原稿を出した人が、陛下から直接つぶやきを聞かされたということはたぶんないと思うんですけれども、その意味においては、僕は先ほど橋本さんにも聞いた同じ話ですけれども、所さん、たとえば、陛下のご自身のお言葉でお話する方が望ましいのか。ないしはあくまでもこの問題というのは周りの人間を1回、ワンクッションおいて、介しながら、いわばある意味、丁寧かもしれないけれど、ちょっと間接的な、手探り状態が暫く続いた方がいいのか。どう感じていますか?」
所教授
「このへんは非常に難しいと思います。ご自身が何らかの機会にそういうご意思というか、お気持ちをお述べになることもふさわしい場があれば。ですから、なかなか、これも時期なり、表現が難しいところがありますし、また、周辺の方がおっしゃるにしても、また同様に、ただ、宮内庁関係者であれば、政治との関係で、どのような表現が取り得るかということがありますが、私は今回の報道で十分ご真意は伝わったと思うんです。だから、ある意味で、私は各社の報道を見て思いますのは、これがいったん宮内庁の関係者が否定したように見えますけれど、これはご意向を示されたということがないとかいうだけで、中身について宮内庁関係者が否定しているわけではないとしますと、明らかに受け止め方は、陛下のご意思だろうと、おそらく大多数の人が信じたと思うんですね。もっと言えば、感じたと思うんです。でも、これを無碍にすることはできないということになれば、陛下が、ストレートにおっしゃろうと、おっしゃらまいとも、これが陛下のご意思だとすればという大前提で、これを受け止める側の政府なり、国会なり、国民がそのお気持ちをどのように尊重して、それを実現できるかという、いわばボールは渡っていると。だから、そういう意味では、非常に難しい時期選び、表現選びをされる。あり得るとは思いますけれど、それをされなくてももっと我々の感性でそれをしっかりと受け止めて、それを十分慎重に検討したうえですけれど、実現する方向に向かう必要があるのではないかと思っています」

皇室典範改正の可能性
反町キャスター
「生前退位について、かつて皇室典範を制定した時に、様々な議論があったということをここにまとめました。退位を認めた場合、上皇や法皇のような存在による弊害のおそれがあるのではないか。辞めた天皇が上皇や法皇になって、その後の新たな天皇に対する無言の圧力のような存在になるのではないかという意味だと思います。もう1つは、天皇の自由意思に基づかない退位の強制があるのではないか。もう1つが天皇の恣意的な退位。周りの圧力ではなく、ご本人がまだまだお元気で、しかも、いろいろな能力があるにもかかわらず、個人的な事情によって辞めてしまうということもあるのではないか、ということがあったのですが、山内さん、生前退位の懸念というものが、かつて、こういうものが示されていたということ。これらの疑問についてどう感じますか?」
山内名誉教授
「日本の歴史を紐解きますと、近代、現代はひとまず置くとしまして、明治以降は。現実に古代における壬申の乱、天武天皇の皇子、弘文天皇となる方ですけれども、その方と天智天皇の弟の、天武天皇の大海人皇子。このお二方の実際、内乱に発展したり、それから、これはよく知られているような保元平治の乱でも、上皇、天皇の関係が非常に入り組んだ形で行われていきますね。ですから、歴史的に見た場合、このようなことはないわけではなかった。しかしながら近代の憲法、帝国憲法、あるいは現憲法の下において、このような形の弊害、あるいは強制的な退位を要求されるといったようなことは憲法の縛り、あるいは何と言っても民主主義国家としての、日本国民の監視や、彼らの判断というようなものによってそう簡単にいくわけではありません。エリート達によって、こうした恣意的な運用がなされるという時代ではありませんから。このことは、私はあまり懸念材料では、現在はですよ、現在はないと思うのですが、私は根本的にこの帝国憲法、あるいは現憲法の下での皇室典範でなぜ規定をされなかったのかと申しますと、私の考えでは、天皇という最も重要な、最高の地位、最高の概念についてそれより上位者、あるいは並ぶような人。つまり、前の天皇であったという方や、天皇と並ぶかもしれないような存在。国民の尊敬心や国民の信頼感も、ついこの間まで天皇でいらっしゃったわけですから。そういう上位概念をつくりかねないような、法的な制定というのは近代の憲法、あるいは特に日本の象徴天皇制の場合にやや難しかったのではないか。従って、そういう規定というものはなかなか法学的、憲法学的に理解されないということで入れられなかったのではないかという、そう私自身は考えています」
反町キャスター
「所さん、いかがですか?今の山内さんのご指摘は」
所教授
「山内さんがおっしゃることは大事な点で、今回も本当に陛下がご高齢で、こういうご意思を示されたことはほとんどの方が理解できて、退位をされた場合、退位されたあとの天皇、あるいは皇后がどう呼ばれるかによりますが、おそらく太上天皇、要するに、上皇。それから、皇太后というお方が、次の新しい天皇、皇后と比較される。いろいろと取り沙汰されるという懸念は今からしっかり考えないといけないと思うんですね。私の推測ですけれど、まさに今の両陛下は、とりわけ天皇陛下は次の新しい天皇が象徴天皇としての役割を充分に果たせるようにということで、自らはまったくマイナス要因にならないように、充分なご注意を払って身の処し方を考えられると思うんですね。けれど、そういうことをご本人達がそうであっても、周辺がどう思ったり、どういうふうにしたりするかは、また別の問題でありますから、その点でイメージとして30年近く果たされた実績に鑑みて、ご自身は、たとえ言葉で悪いのですが、いわゆる隠居をされても、隠居された方について、期待もあれば、またいろんな思惑もありますと、その新しい天皇、皇后との関係は決して簡単でない。そのへんのご自身、関係者のこれからのあり様というのは、むしろ我々が考える以上に慎重であられるでしょうけれど、難しいところも伴うということは予見されると思います」
反町キャスター
「所さん、今の話ですと、ご本人がいわゆる隠居ですと言って、退位されたとしても、周りが、この件については、先の天皇だったらどうされるのだろうかとか、そういう比較をされること自体が現職の陛下に対するプレシャーになると僕は聞こえました。そうすると、今の陛下ご自身が生前退位を望まれるという話にはなっていながらも、事実上できないのではないかという観測にも聞こえます。それはどう感じていますか?」
所教授
「先ほど申しましたように、今の陛下のお考えは自分自身がつくり上げてこられた象徴天皇制度のあり方は、それは自分の代のことであって、次の代については、また、新しい担い手が考えて、つくっていくだろうということを既にちょっとおっしゃったこともあり、また、皇太子さまも従来の伝統を引き継ぎながら、新しい時代の要請に応えて進んでいきたいとおっしゃられている。そういう点で考えると基本的にお考えは一致しているのですが、ただ、その場合に今の両陛下なり、今の皇太子さま、同妃などの関係というものを、ご本人の意思を本当に周囲の人も、もっと言えば、国民もしっかりと理解して、大事なことは、新しい天皇が本当に天皇としての役割を十全に果たしていただけるようなあり様を、また、報道機関もそうですけれども、心して応援していくと言いますか、ということが大事だと思うんです。つまらないことで前の方が善かったの、悪かったの、というようなことで…」
山内名誉教授
「それが1番大事なところなのではないでしょうか。太上天皇、あるいは前天皇という形で現在の地位を退かれる。しかし、何らかの形で、その名称が与えられる。その時に、おそらくこれは私どもが忖度すべきことではないのですが、これまでの憲法や皇室典範の現行法に対して、非常に忠実、かつ最もそれに厳格に対応してこられた両陛下は、そこでご自分達がなさってきたことは全て現天皇の方に移るのだと。つまり、新天皇に移るのだというお立場をお取りになる可能性は非常に大きいわけですね。ですから、ご自分達はそこで、当然のことですが、身を引かれるということにまったく疑いはないと思われます。しかし、現実に新天皇に即位されることになる方々がすぐにご自分達の新しい天皇家としてのスタイルを確立できるかというと、これも、時間、過渡期が必要になる。そうしたような時に最終的には、国民がどのように考えるかと。国民が前天皇と皇后陛下の時代と、新天皇と新皇后、こちらを比較し、先代であればとか、先帝陛下であればとか、いや、こちらの方々のようなと、こういうようなことが出てくることは人間社会として、国民主権の時代ですから、それはあり得るのだと思うんです。ですから、いろいろと危惧される材料というのもあるのですが、問題は新天皇になられていく、皇太子殿下と妃殿下、皇后様になられる。その方々の新しいスタイルや象徴としてのあり方をできるだけご自分達、つまり、現天皇と現皇后がその許す範囲で、憲法上、法制度の上で、見守りたい。あるいは必要であれば、ご家族という側面もあるわけですから。そこは大変失礼ながら、内々でのご助言や、ご経験、知識、そういうものをご自分達がご健在のうちに伝えていきたいという、このお気持ちが、大変失礼ながら、父として、あるいは母としてという属性をお持ちでいらっしゃるから。子としての、あるいは皇太子殿下にも誠実に伝えていきたいというお考えというのはあるのだろうと思うんです。ただ、そういう、この側面と法的存在、法的に定められている象徴天皇としての地位との間がピタッと重ならない。ご自分の運命や職業選択の自由を、日本で唯一持たない方々だと言ってもよろしいわけです。ですから、そこの間のある種のお考えのお苦しみ、あるいはお悩みのようなことを、私達は法と人間の心との間の問題として、この間にある問題として理解していく必要が今、私達の側にもあるし、行政、すなわち内閣や総理大臣や官房長官の側にもこれからおそらく問われてくる問題ではないかと思うんです」

『摂政』制度と陛下の想い
秋元キャスター
「今回、陛下の生前退位のご意向が報じられた際に麻生副総理からこのような発言がありました。『陛下がご高齢ということで非常にご負担がかかるということであれば、どう対応していくかを考えなければならない。大正天皇の後半の方は、後の昭和天皇がご公務の一部を摂政として実質しておられた』と、このように発言をしていまして、昭和天皇が大正天皇の摂政を行ったという事実を挙げて、摂政制度について言及しているんですけれど、この摂政というのは皇室典範でどのように規定されているのかといいますと、天皇が成年に達していない時、もしくは天皇が精神・身体の重患または重大な事故で国事行為をできない時に置かれて、成年に達した皇族が就任するとされています。つまり、現在では摂政就任の順位、1位は皇太子さまとなるわけですけれども、山内さん、陛下のご負担を軽くするために摂政を置くという方法を考えておく必要があるのでしょうか?」
山内名誉教授
「摂政というのを、仮に置かれて、ご公務の負担を減らすということですが、この皇室典範の第16条の精神、もしくは身体の重患、または重大な事故に相当するかどうかというのをクリアしなければなりませんね。天皇陛下ご自身が第一に天皇であるという地位にはおとどまりになるんですね、この場合は。その場合に、天皇という地位というものを何度も申しますように、法によって、憲法と皇室典範の定めるところによって、お仕事をされている方が、それで本当にお仕事を軽減、ご自分で減らすかどうか。減らすことに同意されるのかどうか。これは責任感のお強い方だから、摂政制度を置いたからといって、その形式によってご公務が減って、ご負担の軽減になるかどうかということは、必ずしもそうとも言えないということはあるのです。ですから、ある意味、ご譲位という、譲位されるという考え方は、法的定めによって天皇であるという象徴の地位から退かれるわけですから、国事行為、公務、あるいは皇室に関わる重要な私的な義務、お仕事。こうしたことから退かれるということになる。この場合はかなりの程度、そういう義務や仕事から、自らが離れられますから、軽減にはなる。摂政制度というのは、その問題について、この16条の2というものを仮に援用した場合、あり得るとは思うのですが、根本的に問題になっている陛下のご健康や、あるいは実際の執務に際して、お感じになっておられる、失礼なことを申しますと、カッコ付きで使わせていただくと『限界』と申しますか、そういうことの解決に本当になるかどうかという問題が残るんですね。摂政制度というのは。1つの、しかし、考えなければならない、これは選択肢ではあることは間違いありません」
所教授
「摂政を置く条件が心身とも重大な、ほとんど再び、その仕事ができないような状態を想定していますから。まだお元気であられる天皇がご高齢を理由に摂政を置かれることは難しいわけですね。しかも、麻生さんが述べられた、いわば大正時代のことは全然、参考にならないと思うんです。それどころか非常に大事なことは、大正10年にヨーロッパから帰られた当時の皇太子、後の昭和天皇が、満20歳ということで、ご病気のお父様に代わって摂政になられましたけれども、5年間は、お父様はおられたわけです。お父様がまだおられるのにその地位を代行するということがどれほど、後の昭和天皇にとってお苦しいことであったのかということは先般公表されました昭和天皇実録を見ましても拝察できるのですが、実はもっと近い例で言いますと、昭和時代の最後に、昭和63年の9月に大量吐血をされて、それで、たぶんもう回復されることは難しいと思われたにもかかわらず、結局、摂政を置かれなかったんですね。国事行為の臨時代行で、ある意味、乗り切られたということですと、およそ摂政というものをほとんど置くことができないと考えるほかないと思うんです」
反町キャスター
「その状況下でも置かなかったというのは、何か特別な理由があったのですか?摂政という名のポジションをつくることに対して政治的な反対意見が何かあったのですか?」
所教授
「いえ、それはわかりませんけれど、推測をするところ、1つは先ほど言いましたみたいに、昭和天皇ご自身がお父様との関係で、非常にお苦しみになったであろうことを、今の陛下も皇太子でご存知でしたし、また、ご自身は当時のお考えとしては、お父様の、昭和天皇に最後まで天皇の地位を全うしていただきたいというお気持ちがあられて、ご自身は臨時代行でお父様の回復を祈られたということで、仮に摂政の話が出てもご遠慮なさったということも、あるいは、あるのかなと思います。ただ、少なくとも当時はそういう意味で、摂政というものを軽々に置くことはできない。置くべきではないというお考えがあり、しかし、そういう事実がいったん出来てしまいますと今後そういう状態ですら置けない摂政はほとんど、今の陛下がさらにご高齢になられて、非常に難しい状態になられても、なお、摂政すら置けないということをたぶんお考えになって、そうであるならば、むしろ元気なうちに次の方が天皇の役割を十分果たせる状況下でバトンタッチをした方が良いと。またはそういうことができないかということをお考えになって、生前退位ということに思いつかれたというか、そこへその道を何とか開いてもらうことができないものかというお気持ちだろうと思います」
反町キャスター
「生前退位をもし、された時に、されたあとの太上天皇が震災か何かあり、お見舞いをされました。慰霊の旅を続けられました。これは僕らにとってどのような意味を持ってくるのか?それが、いわゆるその時の、今度新しくなる天皇陛下にとってどのようなものになるのか?我々はどのように理解をしたらよろしいのですか?」
所教授
「私自身は想像力が乏しいものですから、本当にどうなさるかはわかりませんし、これは軽々に言えないことだと思うんです。ただ、はっきりしていることは新しい天皇が本当に象徴天皇の役割を十分にお果たし、お働きいただけるようにということを見守られるという、いわば一般原則ははっきりしていると思うんですね。ただ、その場合、どういうことであれ新しい天皇がなさるべきことと、なさらなくてもいいとは言いませんけれども、絶対やっていただきたいことは、憲法上の国事行為と宮中におけるお祭、祭祀です。これは天皇が自らなさり、主催されることですから、これだけははっきりしているし。また、いわゆる公的行為と言われるものも高齢化している。たとえば、三大行幸と言われるようなものとか、外国の国賓が来られた時の接遇、あるいは、また自らの外国訪問というものは、いわば国家元首にあたるような方がなさるべきことは必ず天皇が、新しい天皇がなさるべきだと思うのですが、それ以外のお出ましとか、あるいは、またお励ましというようなことは、もちろん陛下が、天皇がお出ましになるに越したことはないというお考えもあれば、いや、それは他の、新しい皇太子、あるいは皇太弟と言いますか、そういう方でも良い。また、他の皇族方で良いと考えれば、これまではほとんどお一人で担ってこられたことを新しい天皇は必ずなさるべきことと、なさった方がふさわしいけども、他の方でもよいことときちんと区分けをするというのか、仕分けをすることが大事だと思うんですね。そのことによって、むしろ新しい天皇が自ら今度是非なさりたいことも、それに付け加えることができるし、また、ご負担ということも調整できるようになると。だから、そのことが大事で、今度お引きになった、今の天皇がどうなさるかは、我々は簡単に言えないし、また、言わない方がいいと思っています。むしろリアルな問題は、お退きになったあと、どこにお住まいになるかということですね。1つの考え方は、かつて、昭和天皇が亡くなったあと、香淳皇后は、吹上の中の大宮御所という形で、10年そこにおられましたし、今の両陛下は暫く赤坂の東宮御所におられ、暫くしてから新しい御所を吹上の中におつくりになりましたから。同じ吹上のエリアにお住まいになるという可能性もあると思うんですね。だけど、一方で、中におられるといろいろ重なる部分が出てくるとすれば、皇居の外へお出になる。たとえば、御用邸が葉山とか、那須にあれば、そういうところとか、もっと言えば、京都などに大宮御所もありますから、そういうところにお移りになるとか。いろんなことが考えられるわけですね。つまり、それは新しい状態で、新しい天皇が本当にお役目を果たされるうえで、いわば俗に言う隠居された方がどこに身を置いて、何かをなさる場合に、一定の距離を置くといいますか。それでどこにお住まいを定めるかは非常に大変な問題だと思いますから。これを十分お考えだと思いますが、周辺も、それを考えて、そういうことが本当にうまくいくように是非考えてほしいと」

政治・国民のあるべき議論
秋元キャスター
「ここからは天皇陛下の生前退位のお気持ちが明らかになったことを受けまして、政治、そして国民はどう皇室と向き合っていくべきかを聞いていきたいと思います。まず政治ですけれど、直近では皇室典範改正の議論が行われたことが2度あります。小泉内閣では、皇太子さま以降の皇位継承の問題を巡り、女性、女系天皇について有識者会議で議論が行われたんですけれど、紀子さまのご懐妊で改正案の国会提出は見送りとなりました。野田内閣では、将来的な皇族の減少という問題を巡り、女性宮家創設について、有識者ヒヤリングが行われたのですが、政権が自民党に代わりまして、改正案の国会提出は見送られました。所さん、皇室典範の見直しに関して議論が二分されて、なかなか進まないという現状もあるわけですが、これまでの議論の進め方をどのように見ていますか?」
所教授
「10年あまり前の小泉内閣の時も、何年か前の野田内閣の時も、たまたま私も呼ばれて意見を述べましたけれど、いわゆる有識者会議という形をとりますと、それぞれの方が意見を持っていますから、合意点を見つけるよりも対立点をはっきりさせることになってしまって、結果として背景にある国民の中にもいろんな見方があることをより鮮明にしてしまったと言いますか、敢えて亀裂を大きくしてしまった感があるんです。皇室のためと皆思って、よりよくあってほしいと思いながらも、従来の皇室のあり方をなるべく続けてほしいという方と、無理であれば変えるほかないという方との違いですから、皇室が存在してほしい、永続してほしいという想いが一致していても具体的に違うわけですね。そうすると、今後議論を進める時に、ああいうふうな形で、政府があらためて有識者をお招きしても結局、それぞれの違ったご意見がある。そのことが今後も繰り返されていいのかということには、私はちょっと疑問があるわけです」
反町キャスター
「生前退位を行うために皇室典範は改正しなくてはいけないと僕らは思っているのですが、その点はいかがですか?」
所教授
「この点は一部報道されているように、皇室典範の改正はなかなか、法律の改正ですから手続きが要るので、単独に陛下のご意向を実現させるために政令で済ませるとか、特別法でという意見がありまして、もし数年以内に実現してほしいというご意向を前提として、実現するためにそういう方法しかなければ、これも1つのあり方かなと思いますが。それでもできることは、陛下のご意向に従って、退位を可能にするだけで、次の皇太子が立てられないということはついてしまうんですね。つまり、皇太弟の規定がありませんから。早晩、皇室典範を改正しなくてはいけない。となるとむしろ1年なり、2年なりをかけて、きちんと皇室典範を改正するべく議論をすると」
反町キャスター
「所さんの皇室典範の改正試案では第4条に『皇室会議の議を経て退位』を加えるとあります。このことでどこがスムースになっていくのですか?」
所教授
「今回、陛下のご意向として生前の退位を実現するということをするためには、皇室典範を改正しなければいけないけれども、それで終身在位というあり方をなくす必要はないわけですね。将来、まさに終身在位が可能であれば、その道も現状通り残すと共に、もう1つは、新しい状況、超高齢化社会におけるあり方として生前退位もあり得るというわけですが、陛下のご意思だから即実行するのではなくて、陛下のご意向をしっかりと確かめて、それは誠にごもっともであり、そのことが将来のために良いという判断する場がないといけない」
反町キャスター
「それが皇室会議?」
所教授
「ええ。実は皇室会議は、現在の皇室典範に常設されているわけですね。常に10名のメンバーが決まっていまして、そのメンバーの構成が、いろいろ議論はありますが、私は良くできていると思いますのは、皇族代表が2名と、国民の代表と言ってもいい3権の責任者が8名ということになります。おおまかに言えば、皇族のご意見と国民の意見を一緒にして、そこで意見が聞けると。多くの人が納得できる形になっているわけですね」
山内名誉教授
「現天皇は法の支配に忠実な方で、同時に国際平和と国際協調主義を非常に重視してこられた方です。そういう方の平成という時代が終わるということになるわけです。エポックとして世界史的な意味を持つわけです。我々は今回のことを国内的次元で考えがちですけれど、日本国の戦後の平和と国民主権を維持してきた大変な功労者であり象徴天皇が退かれることは、1つの時代の終わりを国際関係、世界史に向かって、日本がメッセージを発するということになるんですね。そうした時に国際的な影響がどうあるのかについて、どこかできちんと議論しておかなければいけない大事な問題であります」

所功 モラロジー研究所教授の提言:『皇統と象徴の永続』
所教授
「2000年来続いてきました皇統が永続することが1番大事だと思うんです。その皇統が単に血縁さえつながっていればいいのではなくて、象徴としての役割を果たされることも続いていくのが必要ですから、敢えて言えば、皇統と象徴の永続ということを可能にするシステムが必要だと思います。そのためには現状のままではなくて、多少の修正・改正を要すると考えています」

山内昌之 東京大学名誉教授の提言:『法と心の間』
山内名誉教授
「象徴としての天皇の法的お立場と、人間としての天皇のお心のうち、あるいは内面、こういうことと、国民の側においても天皇制というものを考えていく法的な問題と、しかしながら、人間として活動していらっしゃる天皇陛下の心や内面をどう理解していくのかという、こういう形で国民統合の象徴としての天皇と国民の関係の間に法だけではなくて、心というもの、この間で考えていくことが大事だと思っている次第です」