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2016年6月29日(水)
ついに始動…AIIB 中国の世界融資戦略は

ゲスト

河合正弘
東京大学公共政策大学院特任教授
公益財団法人環日本海経済研究所代表理事
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
姫田小夏
アジア・ビズ・フォーラム理事長 ジャーナリスト

『AIIB』が本格始動 初融資と『一帯一路』構想
秋元キャスター
「中国が主導して昨年12月に発足したAIIB(アジアインフラ投資銀行)ですけれど、先週末、北京で初の年次総会を開催し、最初に融資する事業が決まりました。インドネシアの貧困地区の再開発事業、バングラデシュの送電網の整備事業、パキスタンの高速道路の建設事業、タジキスタンの道路の整備事業ということですけれど、この4つの事業に日本円で合わせて500億円余を融資します。まず河合さん、今回承認された4つの融資先、事業内容、規模をどのように見ていますか?」
河合特任教授
「融資先、規模とも比較的、固い出発をしたなという感じがします。タジキスタンは、陸のシルクロードに位置する国になるわけですよね。パキスタンもその意味では若干離れていますけれども、陸のシルクロードであると。インドネシアは海のシルクロードに位置すると。バングラデシュ、パキスタンはインドを取り囲む形になっていますから、ちょっとそこらへんはインドに対して、何らかの考え方があったのかなというふうにも考えさせられますけれども、4つのプロジェクト。金額は合計5億ドルちょっとですが、もともと今年の事業規模の予定では5億ドルから12億ドルぐらいにするという予定でしたので、また、これからインフラプロジェクト、少し増えていく可能性ありますけれども、そういう意味では、非常に順調な滑り出しをしたのではないかなと思います」
反町キャスター
「基本的な話を聞きますが、AIIBというのは、別に中国の銀行ではないですよね」
河合特任教授
「そうですね」
反町キャスター
「いわゆる中国主導でつくられた中国に本拠地が、本部がある。でも、国際的な投資銀行というか、そういう国際的な金融期間、融資機関だと思っているのですが、現在の話を聞いていると、海のシルクロードが、陸のシルクロードが、インドを挟み込むんだと、全部、中国の国益にかなった話ですよね、これは。AIIBと言いながらも中国国家戦略銀行にしか見えないですけれども、そういうものというのは、僕らはここで懸念を挟んではいけないものなのですか?」
河合特任教授
「現在の段階ではまだ何とも言えないと思います。と言いますのは、AIIBは中国が主導しています。一帯一路戦略をサポートすることにもなっていますので、それは加盟国の間でサポートしてはいけないという反対はありませんので」
反町キャスター
「それが前提になっているわけですね?」
河合特任教授
「そうですね。ですから、この中でもインドに対しては、融資は行われてはいませんけれども、インドはまだ一帯一路戦略をサポートするという明確な立場は打ち出してはいないですね。対象になります4か国は、一帯一路を支持している国ですので、中国側の意図にも合うような選択かもしれません」

協調融資の背景と狙い
秋元キャスター
「AIIBが今回、初めて融資する4件のうち3つが、既存の国際金融機関と協調した融資という形になっているんですね。インドネシアでの貧困地区の再開発事業というのは世界銀行との協調融資と、パキスタンの高速道路の建設はアジア開発銀行と、タジキスタンの道路の整備は欧州復興開発銀行と、バングラデシュの送電網の整備は唯一の単独融資ということになっています。河合さん、このAIIBですけれど、なぜ融資は協調融資という形をとっているのでしょうか?」
河合特任教授
「そもそもインフラ事業を開発するにはかなりの時間がかかるんですね。まずこういうインフラをつくろうと思ってから、それが本当に意味のあるインフラなのか。経済的な採算性に合うのかどうか。環境へのインパクトがどうなるのか。住んでいる住民はいったいどうしたらいいのか、あるいはいろんな法的な問題、法律上の問題もいろいろ出てきますので、インフラ事業を立ち上げて開発していくにはかなりの時間がかかる。1年とか、2年、3年かかるんですね。まだAIIBはできたばかりですので、十分パイプライン、私達はパイプラインと言っていますけれども、パイプラインはない」
反町キャスター
「パイプラインとは何ですか?」
宮家氏
「将来モノがやってくるという意味ですよ、その中に入って」
河合特任教授
「開発するインフラを、ここまで準備できていますという、そういうものですね。準備してあるものがほとんどないですね」
反町キャスター
「ノウハウの蓄積という意味ですか?銀行のノウハウの蓄積という意味ではなくて、現地との?」
河合特任教授
「まず銀行ができたのが昨年12月です。できてから、まだ半年です。人材、人が40人ぐらいしかいない。そういう中で、いろんな事業を審査していく。いろんな精査をしていく。事業のリスクがありますから、そのリスクに対して対応する。いろんなことをやっていくというのには時間がかかるんですね。これがまだ十分にできていないので。ですから、世界銀行やアジア開発銀行、欧州復興開発銀行にはそういうのがいっぱいありますから。彼らがやっているもので、AIIBも一緒にやりたいなという、そういう話し合いを過去9か月とか、1年近く、他の国際金融機関と話をしてきて、それで3つそういうのが出てきてきたということで、単独の融資ができたのは非常に、そういう意味でよくやったなという感じがしますね」
反町キャスター
「たとえば、パキスタン100億円。アジア開発銀行がパートナーとなる、このケースで見ると、現在の話だと、1年ないしは2年、3年、普通、審査にかかるというと当然、アジア開発銀行はパキスタンの高速道路の建設に関しては、AIIBが半年で結論を出すよりも、もっとずっと前から検討していたはずですよね」
河合特任教授
「そうですね」
反町キャスター
「そうすると、2つあるんですけれども、アジア開発銀行にしてみたら、AIIBにしましょう。AIIBにしてみたら、自分のところでろくな調査もしないで、アジ開の審査機関がこれはいけると言って○をつけたところにあとから乗ったという、こういう理解でよろしいのですか?」
河合特任教授
「そうですね」
反町キャスター
「なぜAIIBは後乗りをすることによるメリットが、要するに、僕らは、やったという実績を示したかっただけなのか。そこはどうですか?」
河合特任教授
「実績を示すことができるというのが1つと、もう1つはアジア開発銀行がやってきた、そのやり方ですね。やり方から自分達もノウハウを蓄積できるということですね。たとえば、環境対策はどうやっているのかとか、住民対策はどうやっているのか。調達、入札のやり方はどうやっていくのかということを自分達も学んで、そこでノウハウを蓄積していくことができる。そういうメリットがありますね。お金は先ほど申し上げたように5億ドルから12億ドルぐらいは、今年にはやりたいということですから、その実績はつくりたいということですので、他の、既存の国際金融機関に相乗りしてやっていくということは、AIIBにとってもメリットがあると」
反町キャスター
「AIIBのメリットはわかります。要するに、老舗の調査機関にタダ乗りできるわけですから。乗られる側のメリットは何ですか?」
河合特任教授
「それは2つありまして、半分、AIIBがお金を出してくれるのであれば、自分達は、たとえば、アジア開発銀行はお金が余るわけです。それを他のプロジェクトに回すことができる。アジア開発銀行は良いプロジェクトをたくさん開発することができるというメリットが1つあります。もう1つは、AIIBにちゃんとしたノウハウを伝えていくことで、AIIBがしっかりとした銀行になるような手助けをすることができる。そのことによって、AIIBはアジア開発銀行や世界銀行などと敵対するものではなくて、一緒にアジアのインフラづくりをやっていく機関として、AIIBを育てることができるというメリットがあるということだと思います」
反町キャスター
「借りる側にした場合に、たとえば、パキスタン。アジア開発銀行、1つから借りる場合と、AIIBとアジ開の2つから借りる場合。たぶん貸付のルールとか、返済のルールは違いますよね?同じですか?」
河合特任教授
「おそらく本当に同じかどうかはドキュメントを見てみないとわからないですけれども、それはかなり調和、調整されていると思いますね」
反町キャスター
「AIIBのもともとのウリというのか、メリットというか、アジ開が融資しないようなところにも我々は皆さんにお貸ししますよという売り文句。キャッチコピーが活かされていないということにはならないのですか。ただ単にAIIBは尻馬に乗っているだけではないですか?ここは違うんですか?」
河合特任教授
「これは最初の年ですし、出発したばかりで、自分達単独のインフラ事業を開発していくには、まだこれから1年とか、2年、3年かかるわけですから。当面はこういう協調融資が続くんだろうと思いますね」
反町キャスター
「それでは、結果的に、そういう意味で言うと、AIIBに関しても実績を急いでいた。そこにうまくマッチしたと。こういう理解でよろしいですか?」
河合特任教授
「そうですね」
反町キャスター
「なぜ急いでいたのですか?姫田さん、AIIBは急いでいたのですか?」
姫田氏
「急ぐというのは中国の本質ですから。どんな時でも急ぎますよね。急いで早く実績をつくって世界に見せたい。やっていますとアピールしたいし、もう1つは、金立群氏の言葉ですけれども、目に見えた形のデモンストレーションをしたかったと。協調していますよ、暴走していませんよというところのプレゼンス」
反町キャスター
「それは参加していない、日本やアメリカへの当てつけになりますものね」
姫田氏
「そうですよね」
反町キャスター
「急いで結果を出したかった?」
姫田氏
「それは中国ですから」

今後の課題と日本の対応
反町キャスター
「いろいろあるAIIBの懸念で、これまで議論された2つの点、僕らの番組でもかつてやっているのですけど、常駐の理事を置かないことが1つありますと。結果的に融資の審査や監督業務は、北京にいる中国人の人達だけで勝手に決めちゃうのではないかという、こういう話です。もう1つは、中国は最大議決権のシェアを持つ。これが、要するに、もっと言っちゃうと拒否権の問題も含め、中国の意向が非常に強く出てしまう、このAIIBの意思決定プロセス、透明性や中立性の問題点。河合さん、見ていてAIIB、この問題、解決できたと見ていますか?」
河合特任教授
「いえ、現在の立ち上がった4件を見る限りはマイナスの面は出ていないなと私は判断しています。ただ、これからの案件について果たしてどうなっていくのかというのは、まだわかりませんが、とんでもないような案件が万が一出てきたらどうなるのかな。あるいは金立群総裁がそういうものを本当に出すのかどうか。わかりませんけれど、そういった時に、そうしたチェック機能がいったいどうなるのかというのはまだこれから見ていかないとわからないと思います。ただ、現在の段階で、こういう懸念はまだ具体化はされていないということですね」
反町キャスター
「僕らが聞いている限りでもAIIBの機構的なもので、たとえば、透明性を確保するために、こういう組織がありますよとか、常駐の理事会が置かれましたとか、そういう目に見える形で組織上の透明性を高めるものがビルトインされていると僕らまだ聞いていないです。これからと言うと、たとえば、何か起きた時に手を打っていなかったんだよねと、何か悪事が露見してから打っていなかったことがわかるという、こんな感じで見ていかなければいけないものなのですか?この銀行は」
河合特任教授
「それはどの組織でも、ある意味で、組織はそういうことだと思うんですね。予期していなかったこと、悪いことが起きて、それにどう対応するのか。対応できる能力があるのかどうかということですので、現在のところは常駐の理事を置いていない、悪いところはまだ出ていない。それは見えない。実際に理事がこの4つの案件を承認した。これから将来的には、理事ではなくて、金総裁とか、副総裁とか、その中の経営陣ですね。AIIBの経営陣が決めていく可能性もあるんですね、これからは。ですから、それが本当にそうなった時にちゃんとしたプロジェクトとして承認されるのか」
反町キャスター
「見ていった方がいいということですか?」
河合特任教授
「そうです」
反町キャスター
「もう1つ、議決権のシェアについて、河合さんのテータに基づいて表をつくらせてもらったんですけれども、議決権というか、この場合、拒否権、その裏返しですよね。AIIBにおいての拒否権というものは25%。これ以上を持っている場合となっている中で現状、中国は26.1%の議決権のシェアを持っているので自分はこのプロジェクトに融資したくないよという時には、中国がノーと言った場合に、これは拒否されてしまう。ところが、日本が参加した場合というのが、日本はAIIBに現在参加していませんけれども、参加した場合には議決権を9.8%手に入れることができて、結果的に中国は相対的に押し込まれて22.7%。つまり、中国は拒否権を失う。アメリカが入った場合に、アメリカは域外国ということで多少圧迫されると言っても、それでも11.8%。日米を合わせると、中国の20.5%をちょっと超える。さらに、中国は20.5%に議決権が圧縮されて、さらに、中国はモノが言いにくくなっていく。この話からすると日本とアメリカは、現在入っていませんけれども、積極的にAIIBに参加して、中国の議決権を封じ込め、さらに、このAIIBなる国際金融機関がより良き方向に向くように、積極的に関与すべきだという、こういう趣旨になりますか?」
河合特任教授
「はい。それは1つの考え方になると思います。中に入って、内側からAIIBを良いものにしていくというのが1つの考え方です。もう1つの考え方は、たとえ、日本が入ったとしても、中国が拒否権を失ったとしても、中国、その他の域内の途上国、新興国を合わせたシェアは非常に大きいので70%近くになります。日本が入りますと60%近くですけれども、50%以上を持ちますので、中国と域内の途上国、新興国と一緒になれば、日本が言ったところで…」
反町キャスター
「止められないと」
河合特任教授
「あるいはアメリカが入った場合でも、それは止められない。ですから、日本やアメリカが入る場合には、これはかなり中国に任せても大丈夫だという確信がないと入れないのではないかというのが2つ目の考え方ですね」
反町キャスター
「河合さん的には、どちらですかと尋ねるのはあまり聞かない方がいいですか。入った方がいいのか?それとも外で見ていた方がいいのか?どちらがいいと思いますか?」
河合特任教授
「現状では、日本の安倍首相と中国の習近平国家主席との間の関係というのは必ずしも良くない。日本と中国との関係も必ずしも良くないと。お互いに信頼関係があるとも思えない。そういう中で中国に対して信頼感を持っているかというと、おそらく日本の国内の中では信頼感は持てないという意見が非常に多いのではないかと思うんですね。ですから、両首脳がお互いもっと話し合って、お互いの信頼関係をつくっていく。AIIB自身が、自分達がしっかりとした国際金融機関であるということを見せ続けるということになれば、日本、あるいはアメリカが入ってもまったくおかしくないはないと思います」

中国の世界戦略に日本は…英EU離脱と中国の思惑
秋元キャスター
「中国はイギリスのEU離脱をどう捉えているのでしょうか?」
姫田氏
「チャンスだと思っていると思います。要は、イギリスはもともと債務問題を抱えていて、経済的にも低迷していて、さらに離脱すれば、国民の生活水準というのは低くなっていくだろうという読みがあって、どことタッグを組むかとイギリスが考えた場合、中国に寄り添ってくるに違いないというような発想があるわけですよね。ですから、EUの束縛ですか、そういったものに縛られなくなったイギリスというのを中国も当然市場だと思っているだろうし、既にイギリスの中では中国資本の進出ですか、すごく盛んですよね。香港も含めれば中華の色がすごく濃くなってきて、タクシーも中国製の車が走っていたりとか、不動産は言うまでもなく、いろいろと買えるものは買っているという状況で、水道の会社、電力の会社、天然ガスの会社というのは、李嘉誠グループですか、そこが手を出していたりとか、ですから、どんどん中華とイギリスが接近してきているなというのはここ数年、私も感じていたことだったので、より一層それが加速するのではないかと」
反町キャスター
「中国にとってイギリスのどこが魅力を感じるのですか?」
姫田氏
「金融ではないですかね。人民元の国際化をアメリカではなく、シティでということを目算している」
宮家氏
「中国にとって欧州はどういう意味があるかというと市場もそうですよ。結果的には欧米の連携に楔を打つ。日米の連携に楔を打つ。ロシアは適宜利用する。決して同盟国ではない、これが中国の考え方だと思います。中国にとって、イギリスが魅力的なものなのかというのはBREXITの結果を見てからでも、十分、中国はできる。むしろそういうことよりも欧州がガタガタしていって、世界経済がドンドン衰退していく、もしくは停滞をしていけば、結局、中国の経済の将来にも雲が見えてくるわけでしょう。そういうことを考えたら、そんな単純なものではないと思います」
反町キャスター
「イギリスは中国寄りの姿勢?米英同盟というのがもしも本当にあるとすれば、アメリカの中国に対する姿勢とイギリスの中国に対する姿勢というのは明らかに違うように見えるんですけれど…」
宮家氏
「見極めなければいけないのは政治レベルの協力、それから、経済レベルの協力です。イギリスが現在EUの中の1国になって、ここから出て行くわけで、さらにばらけ、ドンドン相場が小さくなるでしょう。彼らは本来の姿に戻るんです、貿易国ですね。貿易立国です。彼らは貿易国ですから、できるだけ多くの国と付き合わなければいけないし、貿易をしなければいけないし、彼らはモノがつくれないから、金融を、中国のお金がロンドンを通っていってもらいたいわけです。それは、政治と違う話、安全保障とはまったく関係のない話です。イギリスにとって中国が安全保障のパートナーになるわけがないです。それはどう考えてみても、欧州との関係から言っても、ロシアとの関係から言っても別にイギリスは残念ながら東アジアにはプレゼンスはないのですから。そうしたらアメリカとの関係が最も強いに決まっています。中国との関係が、これでアメリカと完全にバランスをとる、そんなレベルの話ではない。経済的にそういうことはあり得るかもしれませんよ。しかし、外交、安全保障の世界でそういうことが起こるとは私は思いません」

ロシアとの経済連携
秋元キャスター
「中国とロシアの連携というのは今後どうなっていきますか?」
宮家氏
「どうにもならないのではないですかね。だって、ユーラシア経済連合はカザフでしょう、キルギス、タジク、それから、コーカサスの方面にいずれは行くのでしょう。この地域は元ソ連でしょう。ロシア語を喋り、しかも、世俗国家ですよ。だけど、基本的にはムスリムなの。ソ連が崩壊した時に、あの地域だけは実は居抜きで、というか、独立はしたけれども、新しい勢力がその力の空白を埋めなかった。ロシアが引いたでしょう。中国は入っていかなかった。だから、そのまま、出てきちゃったの。それはロシア語喋り、世俗主義で、しかし、ムスリムがいっぱいいるこの中央アジアというのができたわけですよ。現在でもそこはある意味では戦略的に見れば真空状態です。いろんな形でアメリカもロシアも影響を及ぼそうとしているけれど、基本的にここはロシアの勢力圏です。だけど、もし中国が一帯一路をやるとしたら、カザフとキルギスとタジクを通って行かざるを得ないわけですよ。そこに中国が入ってこられますか。私はとても思えない。あの地域に行って感じたのは、中国はとてもではないけれど、むしろオフェンシブというより、攻勢というよりは防衛ですよ。つまり、キルギス、タジクのあたりで、先ほど申し上げたようにソ連時代の世俗主義の、しかも、非常に腐敗した政権がそのまま代替わりしているわけですよ、多くは。その国々はどうなりますか。かならずイスラム化してきますよね。イスラム化すれば、ここに過激主義が出てきて、隣にウイグルがあるんです。そのようなことを考えた時に中国がこの地域で、むしろムスリムの過激派の流入を抑えなければいけないという意味で、非常に強い危機感を持っていると思いますよ。だけども、ヨーロッパまで行こうと言ったって、ここはロシアが抑えている。と言うことは、一帯一路はどっちがどっちだか忘れちゃったけれども、陸の方が非常に難しいと思う。このユーラシア大陸全体の中でロシアと中国がある意味で交錯する、そのところが中央アジアですから。それは簡単に一帯一路でビョーンとヨーロッパまで行く状況では全然ないと思う。少なくとも経済的にペイするのだったら、とっくにもうプロジェクト動いているはずですよ。それが動いてないということは、経済的にペイしない。ロシアがそこをがっちりと抑えていて、しかしながら、一部の部分についてはイスラム化が心配されていて、その時に中国がそれをどう防ぐかという、こういうゲームの中で中央アジアを見るべきだと思っているので、ユーラシアの経済連合と中国の一帯一路が協調する、連携する、どうやるのだろうと思う」
反町キャスター
「中ロ連携と言うのは?」
宮家氏
「反米の時だけ。それ以外について相当利益の対立があり得るので、彼らは喧嘩したくないですから、調整はすると思いますよ。本質的な矛盾は解消されていないと思います、現在でも」
秋元キャスター
「中ロ連携について」
河合氏
「私も中ロ連携というのは、反米というのは賛成するんですけれど、中央アジアを見てみますと、中央アジアの国というのは港にアクセスできない内陸国ですね、皆ね。内陸国で、彼らは経済発展しようと思いましたら、お互い国と国の間をつなげていかないと貿易、物流ができないという国ですので、インフラというのは非常に重要ですね。特に交通インフラは非常に重要だと。そういう中で中国がいろいろなインフラ・ファイナンス、インフラ融資をやるというのは、彼らにとっては非常に魅力的だという側面もあります中国の陸のシルクロードとして、中央アジアを使っていきたいというのがありますので、そこは中央アジア諸国と中国とは利害が一致する。中国がそこに出て行くということは、旧ソ連の国だったわけですから、それはロシアにとっては面白いとは思わない。そういう拮抗関係があるのは事実だと思うんです。ただ、申し上げたいのは、中央アジアにとっては中国の存在というのは、他の全ての国にとってそうでありますように、経済的な魅力は非常に感じているという事実があるということで、中国は貿易面でも中央アジアに対してかなり早いスピードで拡大しているということで、いろんな形でロシアとぶつかっていくのではないのかなと」

日本のとるべき対応
秋元キャスター
「日本はどのように対応すればいいのでしょうか?」
宮家氏
「私の基本的な考え方は、非常に簡単で、日本は海洋国家ですから、ユーラシア大陸は、もしあるとすれば、それがロシアであっても、中国であっても、インドであっても何でもいいのだけれども、とにかく1つの覇権国家が大陸全体を支配するような、そのような状況だけはつくりたくない。それがまず基本ですね。米、ロ、それから、中という感覚で言えば、それは日本としては中国というものが国際社会の責任あるメンバーの一員として、国際社会に入ってくるように当然、働きかけをする。しかし、同時に、もしそれをしないで、第二次大戦後の現状というものを力によって変更しようとすると、ロシアがやろうとしていることと同じですよね。やるということになるのであれば、それはロシアも中国も困るんです。それはG7のメッセージであり、それを抑止する必要は場合によってはあるかもしれない。しかし、抑止が目的ではなく、本当の目的は、中国が普通の国と言ったら申し訳ないけれども、自由で民主主義かどうか、これは中国人が決めること。だけども、少なくとも国際社会の一員として、責任ある態度をとってくれるのかどうかということを私は見ているし、それに向かってくれるのであれば、それは協力しましょう。それをやらないのだったら、それはいかんです、という是々非々の態度でいるべきだと思っています」

姫田小夏 アジア・ビズ・フォーラム理事長の提言:『非ガチンコ』
姫田氏
「ガチンコで戦わないというのが、1番良いのではないかと理解しています。たとえば、今回の一帯一路も原点は道を通していく、道をつくるということは、土木の工事なわけですよね。その土木の工事を、たとえば、日本のゼネコンが受注しようと思っても、もはや競争力がない。ですから、その部分においては中国にやってもらって、日本はまた別の戦い、質が問われる戦い、安全が問われるような土俵でアプローチをした方がいいのかなと、うまく棲み分ければいいのではないかなと思います」

河合正弘 東京大学公共政策大学院特任教授の提言:『国際ルール 国際公共財』
河合氏
「国際ルール、国際公共財を、中国がもっと重視する方向にいってほしいと思います。AIIBは現在のところ国際的なルールに近いところでやっているように思いますので、こういったことをもっと進めていくと。一帯一路というのは、中国とヨーロッパを幾つかのシルクロードでつなげていくというもので、それ自体としましては、ある意味での公共財の提供になりますので、それを自分の国だけが得をするものではなくて、たくさんの国が得をするというような形で国際公共財を提供する、そういう責任のある国になっていくことが望ましいと思います」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『GLOBAL STANDARDで』
宮家氏
「私は以下同文、おっしゃる通りGLOBAL STANDARD、国際ルール、国際公共財、同じです。繰り返しません」