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2016年6月28日(火)
『女性』で見る参院選 公約実現性と本気度は

ゲスト

白波瀬佐和子
東京大学大学院教授
水無田気流
國學院大学経済学部教授 社会学者
田中俊之
武蔵大学社会学部助教

『女性の活躍』と『働き方』 参院選・各党公約を検証
秋元キャスター
「まず女性の活躍について、参議院選挙における女性の活躍を巡る各党の公約を見ていきます。白波瀬さん、各党の公約をどのように見ていますか?」
白波瀬教授
「この内容自体というか、方向性自体を否定する人はいないので、そういう意味ではどの党も同じことを言っていますねということですよね。同数にするのか、クォーター制か、そういう意味でとりあえずはこの程度で落としておきますかというところが1番のポイントだと思うんですけど、自民党は指導的女性の割合を3割程度にと言っていますし、社民と生活は、もちろん制度的にちょっと違いますけれどもクォーター制ということで。どのあたりを本気で目指すかというのはポイントだと思います。ただ、意思決定の場にこういう形で女性というか、これまでマイノリティであった、少数派であった人達を、積極的に入れ込むという点では正しいことだと思うんですけれども、女性全体の話ということになりますと、多くの人達がパートタイムの低賃金で働いているという現状がありますので、そういう意味では、底を上げるという政策と意思決定の場なりに、具体的に参加するという人達を入れ込むということを同時に進めていただきたいなと思います」
水無田教授
「日本の女性は外で働いている労働時間と、家事とか、育児とか、そういうようなものを含めた無償労働時間を合わせた総労働時間が先進国で1番長いですね。特に既婚で子供を育てていて仕事をしているワーキングマザーは、1990年代にワーカーホリックとして提起されたアメリカ人男性よりも労働時間が長いですね。しかも、家事育児の要求水準が先進国で1番高い中でこれ以上頼まれたら、はっきり言って時間がぱんぱんです。だから、むちゃぶり過ぎるのではないのかなと」
反町キャスター
「そうすると、女性活躍というふうな選挙公約を見ると、もうこれ以上来ないでよという感じですか?」
水無田教授
「女性に目が向いていること自体はいいですよ。ただ、女性の幸福を考えているのかなという問題があって」
反町キャスター
「その公約集は女性の幸福につながらない?」
水無田教授
「日本の問題を女性に活躍して解決してもらいたいという要望ばかりで、女性の自己決定権の尊重であるとか、女性自身の選択肢の広がりがあるかとか、そういう問題よりも、やってもらいたいお願いごとが先立っちゃっているかなというのがちょっと気になります。人権問題について明記しているのは共産ぐらいですよね。実はどこの党も女性への期待が高すぎて、お願いばかりになっているのはちょっと気になります」
田中助教
「たとえば、女性の活躍ということで自民党の場合は3割程度、民進の場合は政治家の半数を女性にするということですよね。そうすると、その場所から退場する男性がいるはずです。つまり、男女の問題はセットで論じなければいけないのに、女性の活躍と言った時に、女性のことしか見えなくなっているのは大変おかしいことであると思うんですね。たとえば、3割が指導的な立場になったのであれば、現状大きく偏っている男性比率は7割になるわけですね。では、残りの人達というのはどこに行くのですかという議論がまったくないわけですよ」
反町キャスター
「管理職から追い出された男の行き場所という意味ですか?」
田中助教
「そうです。ただ、居場所がないことではなくて、女性が活躍するためにその場を去った人達というのは、地域とか家庭に帰ってこなければいけないわけですよね。その男性が地域に家庭に帰ってきた時にそれを受け入れるような素地、土壌が地域にも家庭にもない中に帰ってきたところで戦力にならないわけですよ。それは、たとえば、僕の友人で育児休業を取った男性が児童館にみたいなところに行ったところで、女性しかいないと。いたたまれなくて帰ってくるというケースがあるんですね」
反町キャスター
「圧倒的な疎外感でしょうね」
田中助教
「そうですよね。結局、せっかく女性が活躍しましたという時に、男性が地域とか家庭の責任を担えなかったらこれはスカスカになりますね。生活が成り立たないということになるので、女性活躍ということと男性をどうするかというのがセットで論じられていない。それをどこも論じていないというのは大問題だと思いますよね」
秋元キャスター
「先ほど水無田さんから、この公約は女性の幸福が抜け落ちているのではないかという話がありましたけれども、そもそも政府が推進するアベノミクスのため、経済を良くするために、女性に活躍してほしいというロジックはどうですか?」
白波瀬教授
「いろんな考え、読み方、解釈の仕方がありますが、私としてはちょっと現実主義的なところがありまして、この機会を最大限利用しない手はないと思っているんです。田中さんの方から非常に面白い話があって、男性は7割しか上に上がれなくなり、3割落ちますねという話ですけれども、それは男性を分母として考えていて、男組、女組というのが分かれているんですよ。でも、子供だって女性だけでは産めないので、本当は生活も生物学的には事前にペアになっていく。だけど、子供を持っているということになったら、1人の親で育てている人もいるし、男同士、女同士というのだって現在もあるわけではないですか。現在は女性の活躍というのはあまりにも管理職等に女性の割合が少ないので、それをポイントとしたものという点では公約としてあげる意味はあると思います。だけどその中で、お願いというのばかり前面に出ているわよという、こういう厳しい声というのは常に聞かなくてはいけない。そういう意味では、本当に女性の立場で考えてくれるのと言った時には、実際はすごく負担ばかりがかかって、期待ばかりがいっぱいになっちゃって、結果としては一杯一杯になってもう私はやりたくないとなった時に、では既存の人達はどう評価するかというと、やはり女はと、こうなるんですよね。そのために誰かが頑張らなくてはと思っちゃう人もいるのではないかと思うので。ここは現在、過渡期だから。そういう意味では、無理しなくてはいけないというところはあると思うんだけれど、でも無理していざドアを開けてあげたら、ドアを開けた後の支援も、ちゃんとしてあげてくださいと。それをセットにして公約の方も出してくださいということです。だから、3割到達でOKではなくて、そのあとの育成もセットでしてほしい。それは女性だけの問題ではなくて、男性の問題でもあるよという、こういう議論だと思います」

女性の負担が増す背景
秋元キャスター
「女性の負担が増える背景についてですが、なぜ女性の負担が増えてしまうのでしょうか?」
水無田教授
「要するに、現行の男性の、特に総合職的な、何でも無制限に働くというやり方。それを変える気が一切なく、かつ起こっている問題を全部、女性にお任せしようと思っているからですね。女性活躍というのは、大きく分けると3つの側面がある。これは上智大の三浦先生のまとめですけれども、1つは成長戦略。要するに、就労人口がこれから減るわけですから、どうしても働いてもらいたいですよね。でも、人口規模が減ると困る。だから、少子化対策でワーキングマザーが持ち上げられるわけですね。でも、同時に超がつく程の高齢化社会ですから、社会保障費を抑制したい。そうすると、たとえば、自民党は予算案の中に3世代同居減税とかも盛り込んで、できれば、おじいちゃん、おばあちゃんと同居もしてほしいとなっているわけですね。そうなってくると、家事も育児も介護も就労しつつ担わないといけないという像になってくるわけですよね。現行での男性の働き方の問題点を一切変えないで、そこに女性を、というところで調達しているからこうなるんですね」
秋元キャスター
「社会における意識の問題みたいな部分もあるのですか?家事は女性がやって、男性は外で働いてみたいな、旧来型の意識も残っているということも?」
水無田教授
「それは現代規範がちょうど戦後の高度成長期につくられたという部分が大きいと思うんですね。1950年代ぐらいまでは、だいたい全就業者のうちの半分ぐらいは農林漁業従事者で、当然、農家のお嫁さんとか自営業者の妻は一緒にやっていたわけですね。ところがサラリーマン化が進んできて、第2次産業の従事者が増えた。製造業とか建設業ですから、若年男性の筋肉量を必要としますよね。そして若年男性の雇用環境が安定して、かつ製造業が中心のような社会になり、右肩上がりの経済成長のもと男性の雇用環境が安定していますから、女性は家にいてお務めから帰ってくる旦那さんのために家事、育児に従事しているのが効率的だという現実がつくり上げられた。完成したのがだいたい1970年代ぐらいですけれども、現在その状況とか、産業構成比も大きく変わっていますよね。たとえば、全就業者の中で製造業に従事している人は1970年代前半からバブル崩壊期の1990年代前半まで34%前後で推移してきたんですよ。それがバブルが崩壊したら10年で一気に2割ぐらいにまで減ってしまった。ということは、若年男性の職場が減ったということもあるんですよね。現在、逆に7割が第3次産業従事者です。これはサービス、医療、福祉。医療、福祉は業態にもよるんですけれど、女性が圧倒的に多いですよね。福祉職とか、あと医療現場においては、お医者さんは男性が多いですけれども、看護師さんとか薬剤師さんとかは女性の職場ですよね。女性の職場が増えるので、当然、働く女性が増えてくるというのは当然のことではあるんですよ。ただ、そういった中で、旧来の昭和型のレジームが変わらないので、ジェンダー規範の問題だと思うんですけれども、男性は外で働いてくれば、それでよしと。仕事さえすれば全てのものも後からついてくる。女性は基本的には家族のために体を空けておくことが前提。それ以外は家計補助的な就労という家庭観ができあがったのは最近のことではあるんですけれど、ただ、戦後昭和の高度成長期にできあがったレジームが一時期すごく安定的に推移していたので、この成功体験が忘れられない人達がこのへんの政策をつくっているのかなという気がするんですね」
田中助教
「皆さんが言ったことで、1つ大きな答えになったと思うんです。つまり高度経済成長期以降、男性は1日8時間、週40時間は最低限働いていただくと。そこはもう固定です。そのことによって家のローンを組んだり、子供の教育費を支出したり、生活費全般というものを出していくわけです。そこに対して、最近は給料が安くなっているから、パートしてもらおうとか。ただ、パートをし過ぎてしまうと困るので、配偶者控除で、壁をつくっておこうとか、つまり、男性の働き方というのは変えないでマイナーチェンジだけでやってこようとしてきてしまったわけです。男性の働き方の部分が変わらない中で産業構造の変化が起これば、女性が無理するという解しかないです。だから、女性に活躍してもらうためには男性の労働は1日8時間、週40時間、これは最低限だというところにメスを入れなければ、働き方の根本的な組直しをしなければ、マイナーチェンジでは対応できない。にもかかわらず、基本的には絆創膏を貼るような形でやっているから、そのしわ寄せが女性に来ているということですよね。」
反町キャスター
「現在、議論になっていますが女性の活躍エリアを広げるには、まず男性の穴が開く部分に入っていかなくてはいけないと。これはこれで男にとってもつらいことでは?要するに、どこかが広がって埋まる話ではなくて、ずれる分、穴が開いても、そこにまたずれていかなくてはいけない、こういうシフトではないですか?」
田中助教
「はい、そうですね」
反町キャスター
「現在の日本の男性は、そのシフトチェンジと、パワーシフトに対応できるのですか?」
田中助教
「ですから、男性にこの問題は問われているんですね。変われないかもしれないと言いますけれど、では、変われない結果はこれまでと同じように女性が我慢をするということが前提の社会ですよ。男の人がフルタイムで週40時間働いているその間、奥さんが我慢をしているんですよ。たとえば、出産して、退院後すぐに夫が育児休業をとれないということは、精神的にも身体的にもぼろぼろの中で、夫が外にとられているわけですから、育児をやってご飯をつくっているわけではないですか。産直期というのは、産後は6週間から8週間ぐらいは安静にしていなければいけないという話なわけですよね。それを我慢し続けさせるわけです。だから、限界だという話をしているのに、いやそんなことを言っても俺ら代われないよという話をすれば、これは労働云々という話ではなくてちょっと人道的に許されないのではないのかと思うんです。ただ、それをどうしてやってきてしまったかといえば、女性は我慢するものだという、大変なことがあっても、頑張ってそれを受け止めて子育てに邁進するものだよ、みたいなイメージが残ってしまっている部分はあるのではないかと」
反町キャスター
「現在の話を聞いていると、日本は女性の活躍は無理ではないか?」
白波瀬教授
「そういう気になりますね。でも、変われるかどうかというよりも、変わらないと立ち行かないという状況なので。変わらなくてはグローバルな市場の中で勝ちえないので、そうしたら生活者の男であり女であるという立場を企業の方も認めつつ、労働者として男でも女でも大切にし、経済成長含め世の中を大きく発展させていきましょうねという構図をいかに現実的にできるのかというところで、政党としても言いにくいところも言っていただきながら、これまで十分に活用しなかった重要な資源をどう大切に育てるか。1人に1つだけの役割を与えてきたから、そういう意味で、非常に効率的だったんですよ」

同一労働 同一賃金
秋元キャスター
「さて、女性の働く環境改善に向けて各党の公約を見てみますと、同一労働同一賃金というものがあります。各党の公約における同一労働同一賃金の導入について、それによって女性の活躍につながるのでしょうか?」
白波瀬教授
「そこまでが、実は距離があるかなと思っているんですね。正規、非正規の間の格差は、統計的に日本の場合には6割程度しかないのだけれども、ヨーロッパだと8割とかになって格差を何とか是正いなくてはいけないと。でも、肝と言うか、1番重要なポイントは正規、非正規のところに、ジェンダー差とか、年齢差といったようなものが実は組み込まれているということですね。しかし同一労働同一賃金の場合は少し複雑な論点もあって、何をもって賃金決まるかという話ですよね。日本だと職能給という形があり、職務にリンクさせた形で給与が決まるというよりも、今後のキャリアとかも含めたところで給与が決まっていたから、それが正社員と非正規社員の間、つまり、正社員というのは、将来的なキャリアも含めた形での位置づけですよね。非正規というのはそういう長期的な見通しなしのカテゴリーなわけです。だから、何を給料の判断とするかということですけれども、職務が同じであれば、それを不合理な形で給与を低くするのは良くないと。原則論はその通りだと思います。ただ、その時に何を合理的に説明される差であるとするのかというのは、事例的にはいろんなものがあるので、同一労働同一賃金が達成できれば、正規、非正規の格差がなくなるんだという、そういう簡単な問題ではないから、雇用制度そのものをもかなり入れ込んだ形で話さなければ。つまり、職務が違えば賃金が変わるというのは正当に位置づけられるわけだから、逆に言えば、職務をたくさんつくることによって男女間の格差をそのまま維持するとか、大きくすることは理論的にできますからね。だけど、そういうことではなく、同じ職務をやっていたらという職務の規定を、どこの時点でどれだけの広がりをもって行うかというのも、実はここの中に入っていて、そんなに簡単なことではないと思いますけれども方向性としては非常に正しいことで、同じ職務であれば、同等の対価を払うということはあると思いますね」
反町キャスター
「同一労働同一賃金は女性の活躍の幅を広げることになりますか?」
水無田教授
「現実的な問題としてすごく私が危惧しているのは、非正規雇用の中でも中高年のパート就労の女性というのは、非正規の中でのマジョリティーですよね。でも、この人達というのは不当に、価値の高い仕事を低待遇でやらされていることが指摘できるんですね。パート、アルバイト、派遣などの非正規雇用の機関化というのは、雇用市場では指摘できるんですよ。つまり、これまでだったら、正社員がやっていたような仕事をパートとか、アルバイトの女性とか、あとブラックバイト問題も実はここに根があるんですけれども、人手不足なので、旧来だったら管理職がやらなければいけないような仕事までやらせているわけですね。それこそ、私が聞いた事例で1番酷かったのは、某銀行のパートの中高年女性に現金輸送車のタイムスケジュール管理までさせていたりする。現在パートに出ている女性は91%以上が前職に何らかの正社員経験があるんですよね。だから、基本的なジョブトレーニングはできているし、もちろん、日本人ですからある程度教育もある。そういう人達が正社員に近いような仕事を、価値が高い仕事をパートという身分制度みたいな中で、低待遇でやらせてしまっているという問題が放置されたまま。同一労働同一賃金は、もしかしたら既にパートの人も、この仕事をやっていたからと、正社員の待遇を下げる口実に使われていかないか」
反町キャスター
「低い方に寄せるための制度になってしまうのではないかと?」
水無田教授
「現実に嫌な予感が当たりそうな土壌はいっぱいあるんですね。達成されれば素晴らしいのだけれども、そこはすごく危険な問題がいっぱいあります」
田中助教
「皆が同じことを言っている時点で、単なる流行り言葉になっちゃっているのかなという懸念はあるわけですよね。先ほどからお二人が言われている問題を総合すれば、結局、男と女のイメージというものが日本社会においては非常に固定的にあるわけです。実際、男女雇用機会均等法ができた時に会社が何をやったかと言えば、総合職と一般職を分けたわけですよ。実質的に、一般職には女性が就き総合職には男性が就くけど、いや、性別では募集はしていないからOKでしょうみたいな話ですね。となると、いいことですと言われた同一労働同一賃金が導入されても、たとえば、女性のレジ打ちされる方が1500円もらえるようになりましたと。3時間で帰ってくださいという話にならないかということです。つまり、配偶者控除みたいなものを残して、1500円にしたところで、労働時間が減って良かったねという話になるかもしれないですけれども、根本的な解決にはなっていないですよね。この公約の中で言えば、男女の賃金格差を是正するという共産党のみが述べていますけれども、ここが根本問題にもかかわらずその問題を捉え損ね、同一労働同一賃金という言い方が格好いいだろうということで各党がこのように掲げるということは、つまり、先ほどから議論しているが、女性の活躍ということも含めて、お題目になっているというかそれが流行りだろうということで。根本的に日本というのは男女の差別が非常に大きい国ですよ。それをどうしていくのかということを議論しないで、流行ったような格好いい言葉を割り当てていけばいいんだろうということではね。先ほど、申し上げましたように、雇用機会均等法の時のように各企業が抜け道をつくるだろう。たとえば、仕事を継続しようという時にも保育園に入れなければ、どちらかが辞めざるを得ないです、となった時に男女の賃金の格差がある状況ではどちらが辞めるかという合理的な選択が、基本的には妻になるわけですよ。女性全般のお給料が安いので、天秤にかけて、君がお家にいてくれという話になるわけですよね。働くことが活躍とは思わないですけれども、でも、これでは政府が唱えている意味においての活躍はできないのではないですか。先ほどから、レジ打ちという話が出ていますけれども、水無田さんもおっしゃったように、女性がレジ打ちしそれで時給1000円前後であったりしても誰も何とも思わないですが、仮に反町さん世代の人が研修中というバッチをつけてレジを打っていたら、あの人、おじさんなのにかわいそうみたいな空気になっちゃうわけですよね。とすれば、逆に言えば女性が中高年で同じことをやっている分には誰も何とも思っていないということですよ。こんな女性差別はないではないですか。男が同じことをやっていたらかわいそうなのに、女の人がやっている分には機関化みたいなものが進んでいて、かつ待遇が悪くてもそうだよねと思ってしまっている。非常に根深い女性差別の問題があるのに、そこにアプローチするような公約をどこも唱えないというのは、非常に違和感を感じざるを得ないですよね」

長時間労働の見直し
秋元キャスター
「女性の活躍を妨げている要因の1つが長時間労働と言われていますが、そもそも長時間労働というのが日本でなくならない背景には何があるのでしょうか?」
水無田教授
「まさに日本人はメインストリームの労働者が日常的な長時間労働も辞さない形で、なおかつ有給休暇もだいたい半分ぐらいしか取っていないですよね。18日与えられても9日も取っていないですよね。バカンスが成立しているようなヨーロッパ諸国だと、バカンスを取らせないと会社の負担になっちゃうので、上司が年初にそれぞれ部下を配置し、いつに取れと強制的に割り振ってしまうんですよね。でも、日本の場合、有給休暇は自分で自分のいい時に取っていいですよと、一見労働者に優しいようでいて、実は自己決定するコスト。たとえば、悪いなと思い上司にお伺いを立てたり、忙しい時期を同僚に聞いたり、休みたい時期をいついつと聞いて、情報収集しなければいけないと言っているような、心理的なコストとか時間的なコストを全部労働者個人に負担させているんですよね。有給休暇ですらも半分も取れていない。長期休暇を取れないわけです。現在、厚労省が有給休暇を全取得させようとやっていますけど、これすらもできていない状況なので。ただ、有給休暇を全取得させると、いろいろ旅行に出るとか、サービス業の利用などで経済的波及効果もありますし。あと年に、必ず職場から人が一定期間離脱するということが職場の文化としてある程度定まっていれば、日常的にワークシェアリングをやって、ある程度自分が休む時に周りの人に引き継げるような、風通しのいい雇用環境にできるんですよね。たとえば、急に親が倒れて介護が必要とか、あるいは家族の誰か、もしくは本人が病気になった時の予行演習にもなるんですよ。まず有給休暇の全取得から始めて、ワークシェアリングをする準備からやっていくというのが段階的にいいのではないのかなと。」
反町キャスター
「これは男性社会の根本的な問題の指摘のような気がします」
田中助教
「そうでうね。各党がインターバル規制という言葉を出しています」
反町キャスター
「退社したら11時間は会社に帰ってくるなとか、効果はあるのですか?」
田中助教
「そんなことをやるより、日本の場合は労働基準法というものがありまして、原則の労働時間というのを読めば、1日8時間で週40時間だって書いてあるんですね。それをオーバーした分というのは時間外労働ですと書いてある。と言うことは時間外労働ですから、本来イレギュラーなものですよ。ところが、日本の男性というのは1日8時間、週40時間というのが最低限で、それ以上が普通だよねということになっちゃっているんですよね。だから長時間労働というのは解決しないのは当たり前で、皆その働き方が普通だと思っているわけですよね。つまり、これはインターバル規制などというものは必要なくて、労働基準法に書いてある原則の労働時間を守らせますという公約が1番いいわけです」
反町キャスター
「残業代で家のローンを払うとか、飲み代を出している人もいますよ」
田中助教
「それをよく言われるんですけれども、そこが根本的に間違っているのではないですか。どうして残業代込みで我々が生活を考えなければならないのかということですね。賃金体系に問題があるんですよ。それこそまさに、それが普通になってしまっていることの元凶ですよね。だって、定時なら6時に帰れるわけですよね。1時間かけて帰ってもまだ7時です。子供とご飯を食べて、お風呂に入って、寝かしつけまでできたら、これは妻がどのくらい楽かということですよね。5時に帰宅できた場合は6時に帰れて、ご飯をつくるところからできます。つまり、現に法律があるのに、同一労働同一賃金と一緒で、インターバル規制というのが格好いいのではないかということですね。だから、どこの党の公約も根本的な我が党の理想とか、思想とか、方針というものが感じられなく、キャッチフレーズ合戦になってしまっているのは、大変残念なこと」
白波瀬教授
「インターバルについては世界的なものもあるけれども、生活時間を確保するという観点から労働時間を見るとそのような概念的な話になるんですけれども、考え方としてはいろんなシフトを取っていますから、労働時間だけということではなくて大切なのは基本的な生活をちゃんと維持できる時間は確保しなさいよという方から攻めるという。公約としては確かに流行り文句があるのでつくっているという感はあるんですけれど」

社会保障制度のあり方
秋元キャスター
「現在の社会保障制度をどう見ていますか?」
水無田教授
「家族責任型というのか、家族世帯の中で互助をしていけという意味合いが強いように、社会保障プログラム法案ができた時はさらに互助の様素が強くなってきた。現政権下でつくられたわけですけれども、旧来の家族の形で支える、自助ができない人にだけに施すような公助を与えるということだと早晩もたなくなる。この間速報が出た国勢調査最新統計でも明らかになりましたけれども、日本人は人口が減っている、高齢化しているだけでなく、世帯累計として単身世帯が1番多いんですよね。1人暮らしの人が多い中で家族に頼りなさいと言っても、そもそも助け手がいないわけです。家族に頼りなさいということが実質的に不可能であるにもかかわらず、社会保障費を削減・抑制するための方便として使われているような部分が大きいです。配偶者控除という妻につけられた控除ですが、専業主婦、それに準ずるような形での働き方をしているパート就労の103万円以下で働いている女性達はいろいろケア負担の割合とか、生活水準とか、バラバラだと思うんですね。たとえば、自分がパートに出ないと家計が成り立たないような世帯もあれば、あるいは子供が手を離れてしまって、趣味的な感じで楽しみのために働いてみたみたいな人もいると思うんですよね。一方で、未婚のまま老親の面倒を見ている男性というのは一切の控除とかがないわけですよ。でも、ケア負担がすごく重い。だから、家族の中で地位に対して社会保障や控除をつけていくとかそういった形ではなくて、ケア負担ごとに個人化した控除を与えていくというふうに組み替えていかないと早晩もたなくなると思います」
水波瀬教授
「これについてはちょっと慎重な立場をとっていて、日本社会の現在が個人型のインフラがまったくできていない状況に、個人型を整備するといっても改悪になるのではないかということですね。つまり、実態として日本はいわゆる家族機能が強い、ファミリアイズムとか、家族主義論というようなそういう議論がなされてきているわけですけれど、含み資産とか家族の中でいろいろやってきて、社会保障は結果として節約することができた。その背景には実は高齢者の数が少なかったので、家族の含み資産という以前に人口構造が全然違っていたということもある。親を見るという3世代というのが家産を継承するという、もう1つのサイクルの中でも一緒だったという、そういう時代もあったと思うんですね。たとえば、税は個人が単位になっています。その一方で、社会保障といった時には基本が世帯というところになっているので、それを急に概念的に個人とすると、実態として夫の収入がどれくらいかとか、子供の末子年齢がどれくらいなのかということで既婚女性の就労が決定されている現実があるので、その現実をまったく無視した形の個人化というのは、早急にはなかなか難しいのではないかというのがあります。」

白波瀬佐和子 東京大学大学院教授の提言:『がんばりすぎない』
白波瀬教授
「がんばりすぎないということです。子育てと仕事という形ではあるのですが、子育ても仕事もということですので、いろんなやり方があっていいし、これは絶対にダメとか、これが標準的という考え方から少し開放されて、がんばりすぎないで進んでいきたいなという感じです」

水無田気流 國學院大学経済学部教授の提言:『女性に産む自由を!男性に仕事以外の人生も!』
水無田教授
「現在の日本の女性達は選択肢があるようでいて、実は産む自由がないのではないのかな。雇用機会均等法以降、それなりにキャリアを積もうと思う女性は産まない自由は何とか獲得できた。大きな成果ですけれど、旧来のいいご家庭規範に入って、法律婚のカップルの中で、なおかつ先進国で1番手間がかかる家事・育児をこなさないと子供が実質的には産み育てられないということで躊躇してしまい、産む自由がまだ確立されていないのではないのか。もっと多様なあり方の親子関係ができていいのではないか。それから、もう1つは男性には仕事以外の人生を謳歌してもらうような方向でということです」

田中俊之 武蔵大学社会学部助教の提言:『男が変わる』
田中助教
「この問題というのは、男性が問われているというところもあるので、僕らがどう変わっていくかというのが問われましたし、ただ、長時間労働みたいなものは男性が雑に扱われていると思うんです。男でも女でも疲れてしまうし、健康を害するとわけです。でも、そもそも男性自身が自分を雑に扱うことに慣れてしまっている。休まないとか、ある意味、会社が忙しいから病院に行く暇がないことは雑に扱ってしまっているので、これはチャンスですね、我々にとって。我々が自分を大切にする生き方を見出せるチャンスなので、男が変わるということは女性に寄せていくこともそうですけれど、僕ら自身の人生をどう歩むかということが問われていることなので、これはいいことだと思います」