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2016年6月27日(月)
英国ショックと乱高下 日本経済『体幹』強化

ゲスト

八田達夫
アジア成長研究所所長
橘木俊詔
京都大学名誉教授
石川和男
NPO法人社会保障経済研究所代表

日本の『成長シナリオ』 産業構造の『新陳代謝』
秋元キャスター
「日本の成長戦略についてですが、まずは2013年にアベノミクス三本目の矢、成長戦略として発表された日本再興戦略。成長分野への投資、思い切った事業再編の断行などで、企業経営者に大胆な新陳代謝や新たな起業を促す。加えて企業統治、コーポレートガバナンスを見直し、日本企業を国際競争に勝てる体質に変革すると打ち出されていますが、八田さん、まずこの大胆な新陳代謝で新たな起業を促すというのは、どういうことなのでしょうか?」
八田氏
「経済成長というのは、1つはイノベーションによって起きます。生産性の向上ですから。もう1つは、生産資源を生産性の低いところから高いところに移動させると。そういうプロセスによっても成長が起きるわけですね。高度成長の時というのは毎年3大都市圏に60万人ぐらい人口が他から移って、生産性が低いところから高いところに移ったわけですから。それで日本全体が経済成長した。1970年代以降、バラマキして地方をそれなりに豊かにしてしまったから、人口移動も10分の1ぐらいまで減っちゃったわけです。そこで成長が止まったと。そういう資源をきちんと移動させるということです。しかしながら、きちんと新陳代謝をさせ、人口移動させ、資源移動させると、衰退産業や衰退地域が現れるんです。そこの衰退産業や衰退地域はそれまでの政治力を持っているから、それを阻止するような規制をつくると。その規制を外して、きちんと衰退するべきところは衰退させる、それが成長戦略だと言えると思います。これは、新陳代謝というのは良いことだけれども、実質的には衰退するところがあるがために、政治的には非常に難しいんですよね。痛みなくして改革なしと小泉元首相がおっしゃったけれども、要するに、痛みというのはどこかで衰退しなければいけなくて、そこをきちんとさせなければならないということだと思いますね」
反町キャスター
「新陳代謝というのはマイナスのことをするのか、プラスのことをするのか。現在の話を聞いていると、日本は足し算は出来るが引き算ができない?」
八田氏
「それは非常にいいポイントで、市場経済というのは、基本的に高い報酬を求めて生産性の低いところから高いところに資源が移るわけです。放っておけばそうなるんですよ。ところが、それを政治で止めてしまうわけです。だから、それを止めるのはやめて自然に戻しましょうよというのが成長戦略だと」
反町キャスター
「そうだとすると、では、なぜ新陳代謝が起こらなかったのですか?」
八田氏
「まず非常にうまくいった例で、幕末の時はもともと日本は綿花は全部100%国産だったんですよ。ところが輸入することになって、10年で全て外国から輸入するようになった。関税は関税自主権がなかったから掛けられなかった。それによって、綿花をつくっていた人達は皆転業したわけですね。そういうことができたから、明治時代は成長できたと。戦後だって、たとえば、石炭を1950年代の末にはほとんど自給自足をしていたわけですが、そこに中東から安い石油が出てきて、輸入することになった。経産省は抵抗を押し返して、自由化して、やれたわけですね。それが1970年代になって、日本が高度成長をしたら、その得をしたのは都市ではないかという考え方で、国土の均衡ある発展という考え方をして、地方にバラ撒くようになったと。それは、1つは政治の話も関係あるかもしれないけれども、地方から都市に人々は移ったのに、選挙区はちゃんと地方に十分な代表が選ばれるような仕組みになって、そこで歪んでいったということはあるでしょうね。敢えて言えば、小泉元首相が大改革をした直前に選挙制度の改革をやって、随分不平等な投票率が是正されたんですね。それで、ああいうことが可能になったということはあると思います」
反町キャスター
「高度成長期においては、いわゆる既に不要となったかもしれない産業や人材資源が無駄に配分されていたものを、全体が成長する中で覆い隠すことができたが、低成長期に入ったら日本の経済がそれは支えきれなくなったという見方はありますか?」
八田氏
「いや、低成長はつくり出したんですよ。要するに、放っておけばちゃんと成長していくものを止めてしまったものだから」
反町キャスター
「どちらが先かという話で言ったら、新陳代謝が行われなくなって、低成長になったと、そういう意味ですか?」
八田氏
「そう思いますよ。その1つの理由は、先ほどの政治的な構造にあって、きちんとした再配分ができないような仕組みになっている」
石川氏
「企業経営者に新陳代謝を求めたってなかなかできないでしょう。自分が居座っているのだもの。これは、企業経営者を含めてガラッと変われば。たとえば、ソニーでも東芝でもいいです。名前が変わらなくても結局、中身がどう変わるかということで、リーダーも変わらないと本当の新陳代謝でない。そうすれば、若い人に次の時代を担うためにはこういう商品だとかサービスだという発想を出させられる。これは官庁の中でもそうですよ。新しい政策というのは大概は下から出てくるんです。係長とか課長補佐とか、20代とか30代とか、そういう人からこういう政策はどうですかと出てくるんですよね。企業だって、新商品開発をする時はそういうものが多いと。ただそれは結局、上の者がうんと言わないとできないですね。なので、いつできるかと言ったら、すごく改革のマインドを持った上の人がいるか上が変わるかなんですよ。その時には極めて成功率は高くなると思うので、そういう点で新陳代謝が起きないというのを一言でいうと、日本社会全体の企業、官庁も企業社会だと考えると、企業全体の平均年齢が上がっているということ、長寿化ということ。戦後、平均寿命は短かったですよね。それがここまできたのはいいですが、ここまでくると弊害として徐々に表れてきているというのが、新陳代謝がなかなかできないという実情だと感じていますね」
反町キャスター
「新陳代謝は必要だけれどもできてないという意味?」
石川氏
「ええ。必要だけれどもできない。外国との競争というのは当然考えなければいかんと思うんです。国際社会ですから。そう考えると、世界の動きを見ると、新しい発想に追いつくには当然、若い力が必要。なぜかと言うと、外国が若い力な訳ですから。そうなると、日本が国際社会的な競争に弱いというのはそこにあるのだろうと。人という意味で新しい発想はあるんです。あるんだけれど、開花しないという環境」
反町キャスター
「なぜ日本の組織は、企業にしても官公庁しても新陳代謝が進まないのでしょう。単なる平均年齢の高度化だけですか?」
石川氏
「それはリーダーというか、意思決定している人達が元気がいいからですよ。強いですよね。いいことだと思いますが、それは逆に、若い力を削ぐと。しかも、少子化でしょう。数が少ないわけですから、これは日本社会の構造的な問題であると思っています」
反町キャスター
「石川さんの話を聞いていると、打つ手なし、どん詰まりみたいな?」
石川氏
「そうではなくなり、新しいIT(情報技術)系の企業で若い力が出てきていますので素地はあるんです。ただ、それを日本全体に広げていくにはたぶん政府が何をしてもダメで、なかなか精神的には難しいですが、企業マインドを変えてもらうということを徐々にやっていくしかないと思いますね。政府の規制が及ぶのは、結構限られていますからね」
反町キャスター
「政府の力では新陳代謝は進まない?」
石川氏
「なかなか進まないと思います」

日本経済成長への道筋 成長戦略と規制改革
反町キャスター
「起業活動率の国際比較というデータによりますと、起業に向け準備中及び起業から3年半未満の人を起業活動家としてカウントすると、日本では生産人口に占める割合は3.8%。一般先進国の中では断トツに低い値ですが、橘木さんいかがですか?」
橘木名誉教授
「私は、日本人のメンタリティを考えたいと思うんですね。日本人の若者は現在でも、大企業志向、公務員志向です。中小企業に行こうという人はあまりいない。自分で事業をやるという人の数が欠けるのは、日本人は昔から農業国家で危険を冒さないという国民性が強い。私はアメリカに長い間留学しましたが、彼らは大企業志向ではないし、公務員も望まない。自分で事業を起こす人がいっぱいいた。このメンタリティの違いというのはなかなか変わらないのだろうなと見ています」
反町キャスター
「起業活動率が低い日本の社会というのをどう見ていますか?」
橘木名誉教授
「私は成長、成長というのはあまり良くないという意見ですが、この数字だって、安倍首相の肩を持つわけではないけれど、失業率も低いのだったら多少は支持できるという側面がありますよね」
反町キャスター
「低い失業率、起業活動率で、そこから経済成長、拡大は見えますか?」
橘木名誉教授
「私みたいにゼロ成長率を主張している人物からすると、整合的でいい」
反町キャスター
「失業率も低いし、そんなに皆ギャンブルも打たないけれど現在の生活は維持できる?」
反町キャスター
「成長志向の考えからするとこの3.8%という数字はどうなのですか?」
八田氏
「とんでもない話ですね。まず日本の高度成長期、1960年代には10%以上の実質成長率が平均であったわけなんですね。その時、人口の成長率は平均でせいぜい1%ですよ。あとの9%は何でできていたかというと結局は機械や工場をつくったということと、生産性が上がったということです。決して、人口の伸び率ではない。さすがに私も10%の成長が可能だとは言わないけれども、生産性を上げ、資本を投下したら、成長はいくらでも起きると思います。それが1つ。それから、これに関して言えば、まず日本は貧乏だと思う。格差が大きく、低所得の人の生活が本当にきつい。低所得かどうか別として、普通の美容師さんだって本当に夜遅くまで働いていますよ。1日中。これは無茶ですよ。それがちゃんとした職業に就いていない人の場合にはもっと激しい。サラリーマンだって夜遅くまでやっているではないですか。これは豊かにしなければいけないと思いますよ。もっと短時間で一応の人間らしい生活ができるようにしなければいけない。私は、そのために成長がどうしても必要だと思いますね。それから、最後に言えば、日本社会が人々のポテンシャルを活かすようになっていない。たとえば、日本の大学を出てふらふらしていてという青年が、英語ができるからアメリカに就職をしようと思って、グーグルにインターネットで言ったら雇ってもらえた。4年雇ってもらったのですが、それは電話で面接があって、プログラムの扱いができたということで色々な人に会いに行って、1日会ったら1週間後に採用と。それで、給料は5倍上がってやっていった。それは向こうが潜在的にクビにできる、解雇できるからです。そういうリスクを取れるんですよ。日本では解雇できないから、そういう優位な青年でも雇えないですよ。実際にグーグルで解雇する例があるかというとほとんどないと。だけど、保険として、そういうことがあるから」
反町キャスター
「それは、労働法制の話ですね」
八田氏
「法制というよりは、裁判例もあって。だけれども私は、そういう社会の方がいきいきして良い社会だと思いますね」

『雇用政策』のあり方
秋元キャスター
「続いて成長戦略のポイントですが、成熟分野から成長分野への失業なき労働移動を進めるため、行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へ雇用政策を転換と打ち出されています。このような雇用政策の方針転換。これは必要だと考えますか?」
橘木名誉教授
「はい、私は弱い企業が退出して強い企業が入ってくるには労働移動も避けられないと見ていますので、この方針は基本的に賛成です。労働者が企業を移るということに対して抵抗感のない社会になってほしい。しかし、日本ではもし企業を離れた時にセーフティネットがあるかと言われるとまだ不十分です。どういうことか。失業保険制度が充実していない、あるいは企業を移ろうとしたら、未熟練労働者として新しい企業に行かざるを得ない。その時の職業訓練というのが非常に劣っている。新しい企業に移ろうと思っても、雇ってくれないかもしれないし、新しい企業で役立たない可能性がある。従って、私の提言は2つあります。企業を移ろうとする際の失業保険制度を充実して、失業している間の所得補償を完璧にしないといけないのが第1点。それと、企業を移るのであれば、新しい技術、技能が必要なので、ここが政府の登場の場です。政府が基本的に職業訓練をやって、労働者が自然と新しい企業に移り、有能な労働者として働けるような社会になってほしいというのが、私の2つの希望です」
反町キャスター
「所得補償、職業訓練の話というのは、いわゆる企業が潰れるとか、あなたは余剰人員だからいいですよと言われた人の話であって、積極的に他社の方から引っこ抜かれるケースというのは、現在の話には当てはまりませんよね?」
橘木名誉教授
「いやいや、そういう人もいてもいいです。現在いる企業よりも新しく移った方がもっと高い生産性が発揮でき、高い賃金を得られるのであれば、自発的に移るのも私はいいと思います。でも、雇用政策という観点からすると企業を離れなければならない人に重点を置かんといかんというのは確かですよね」
反町キャスター
「よくこの話をする時に労働組合の話になります。日本の場合には企業別、産業別の労働組合ではないですか。その企業の枠から次の企業に移る時、同じ自動車組立工にしても、ある自動車会社から他の自動車会社に移る時に、会社ごとの労働組合の間で連携をとってもらえるのかどうか。労働組合の再編がもっと必要なのではないかという議論もありますが、いかがですか?」
橘木名誉教授
「自分はその企業にロイヤリティがあるから、企業の言う通りに働くという側面もありました。しかしながら新しい時代になると、移らざるを得ない労働者というのは移ってもいいというような見方を労働組合はした方がいいなという気がします」

『労働市場』のあり方
反町キャスター
「雇用維持から労働移動支援型への雇用政策の転換はどう感じますか?」
八田氏
「基本的にはいいと思いますけれど、邪魔を取り除くという意味では、たとえば、現在、税制で退職金が優遇されているわけですよね。普通に所得として払うよりは退職金での方が税も優遇されると。こういう部分は、1つの会社にずっといさせる効果がありますよね。こういうものをポータブルにしてしまうと。年金もできるだけポータブルする。そうしていろいろな企業間を移動した時に、制度的な制約によって損害を被らないようにするということは必要だと思います。たとえば、国立大学と私立大学の先生は、私立大学から国立大学に移るというのは、昔は40歳を超えるとほとんどなかったんですよ。現在45を超えるとほぼない。それは20年間いると退職金がガンと上がるから。それで、ついには退職してから、また移動する。だから、私立と国立の間でも、そういう障害が制度によって起きているわけですね。そういうのを除くべきでしょうね」
反町キャスター
「それはつまり、企業間ないしは法人間で共通の退職金システムを設けなくてはいけないとか、そういう意味ですか?」
八田氏
「退職金も一種のファンドにして、外で積み立てればいいのではないでしょうかね。アメリカはないでしょう。これだけの規模であるのは、税制が非常に有利にしているからだと思いますから」
反町キャスター
「雇用維持型から労働移動支援型に変わるということは、つまり、年功序列とか、退職金というのはやめちまえというふうに、企業別、企業単位の年功序列とか、企業別の退職金制度というのはやめろと言っているように聞こえます」
八田氏
「私は、全て会社内でやりたいものはやっていいし、従業員も望むならしてもいいけれども、政府が邪魔するなと思う。やりたくないというところに、無理やり退職金制度を有利にするようにはしないでちょうだいと。普通に税をとるけれども、やりたいなら、どうぞとやってちょうだいと。退職金の制度を置くと、税制で有利になっているんですね。それはやめたらどうですかという話です」
石川氏
「現在話をしているのは、雇用のいろんな規制ですね。これを取っ払うべきだというのは賛成でして、企業が取っ払いたいと思うものを取っ払わせないという規制があるのは余計なお世話だろうと」
反町キャスター
「それは政府がやっている?」
石川氏
「税制関係も含めてやっているわけですね。だから、そういうものについては国際標準というか、外国を見てもいいのではないですかというのはあるんですけれども。そこで1つ大事なことは、これは国の成長戦略なので国はこういう雇用の流動化を起こさせるように、たとえば、退職金の面も含めて規制緩和をすると。そうすると労働者が移動しやすい。たとえば、極端なことを言ったら、企業がどこか潰れて雇用の受け皿が大量に必要になるという時の流動性、受け皿というのも考えておかないとダメで。それは、国策ですから。国策として雇用を増やさなければいけないのは、現在は保育士とか、介護士とか。いわば公共サービスの労働市場があるわけではないですか。そういうツールも一緒に用意しておかないと。道ですよね。道は整備しましたけれどその向こうに何かあるというところまで政府が用意しているならば、これはある意味、成長戦略というよりも労働市場を安心させる戦略という意味ではいいですよね。だけど、縦割りなので、そこまで整備しきれていないですけれど、そこはメディアなり、国会なりで、きちんと詰めていく場所ですよ」

どうする? 日本人の働き方
反町キャスター
「雇用に関する課題が各党で足並みが揃っています。どのように見ていますか?」
橘木名誉教授
「私はこれを見て全ての党がこういうことを言うのは画期的だなと。逆に言えば、争点がどこにもないという見方もできるのですが、同一労働同一賃金というのは、言葉は簡単だけれど、なかなか導入が困難な仕事を公平に評価しなければいけないし、どれだけの実績があるのか、あるいはフルタイマーとパートタイマーの違いをどこまで認めるかとか、いろんなことがありますので、各党ともこんな簡単に言っているのだけどどこまで本気ですかというようなことを問いたい。特に財界からはこの問題に対しては相当抵抗があると見ていますので、安倍首相までがこれを言い出したということは、悪く言えば、彼も格差社会を気にし、できれば私のところにも票を入れてくださいという希望かなという解釈もできなくはないと見ています」
八田氏
「同一労働同一賃金というのは不可能ですね。実質的に年功序列でずっとやっているところと、そうでない非正規と同一にするというのは難しいです。それを敢えてやったところが大阪市です。公立の保育士の給料というのは事務職と同じだから給料がずっと上がっていく。それをもし途中でお子さんを育てるといった理由で辞めても、子供が大きくなったら戻るでしょう。しかし、非正規として戻るとだいたい45%ぐらいの給料になると。同じ仕事しているんですよ。それで橋下前市長の時にこれを変えようと正規雇用の人の賃金表を新しくつくって、新しい人については表を別にして、非正規雇用の人も6割前後ももらえるようにした。まったく同一ではないかもしれないけれど、明らかな改革をやったんです。だから、私はやれるとしたらまず政府なのだから、政府がそういう余地を見つけ出してドンドンやればいいと思います」
石川氏
「これはまず手続論で言うと、与野党皆が出しているということは、与党が提案しようが政府が提案しようが、法制化されるので同一労働同一賃金制は実現すると思います。そこは国会審議の中でひょっとしたら妥協点があるかもしれませんが、いずれにしても結果として同一労働同一賃金法制は成立すると。そう思って申し上げたいのは、これは究極の平等イコール究極の悪平等です。だから、どんな公平平等な制度をつくろうと思っても、消費税というのは本来は概念的には公平でしょう。でも、格差ができるではないですか。あれと同じで、どんなに公平なものをつくろうと思っても公平にならないです。所得格差があるし、先ほど八田先生がおっしゃったように、たとえば若年層の社員と年配の社員では違いますよね。必ず格差ができる為、新たな格差ができることを予め是認して国会審議が行われると思うので、そういうことを与野党で議論をしてほしいと思うんです。これによってまた新たな格差が必ずできますから」

『外国人人材』の活用
秋元キャスター
「国家戦略特区が全国で10指定されていますが、そのうち、8 の区域で外国人材の受け入れが大きな柱となっています」
八田氏
「この中では、特区で受け入れたもので医療関係がかなり多いです。これまでは2国間協定で、たとえば、シンガポールのお医者さんが日本に来ているという時にはシンガポール人の患者だけを診ることができた。日本人も向こうに行っている人は日本人だけを診ることができた。ところが、せっかくシンガポールの人が来ているなら、英語を喋れる全ての外国人にという拡大が東京圏で起きました。ただし、日本人は診られないです。なぜか理由はわからないが、そこまでは伸びてない。それから、秋田の仙北市という場所は、台湾の非常に特殊な温泉と似ているんです。そこのお医者さんにここに来て貰ってやることが、日本人の医者の監督のもとで出来るというような仕組み。いろいろそうやってできるようになりましたので、これは本当にドンドンこれ増やしていかないといけないと。医者については何が1番いいかという多様性をもたらす。たとえば、いろいろなものの考え方、いろんな診療の仕方、そういうことについての知識をもたらすから、こういう特区でやったことをきっかけにどんどん増やしていかなければいけないだろうと思います。一方、特区ではあまりやってないけれども、ブルーカラーの受け入れについて。これは格差を拡大してしまうので考えるべきだと思います。たとえば、日本で介護の人材が足りないと。介護の資格を持っている日本人は山ほどいるわけですよ。だけれど、その人達が働かないのは賃金が低いからですね。しかも、それはほとんど公定で、国が決めた値段だから低い。それなのに低いのはそのままにして外国人をドンドン入れるというのは格差拡大以外の何ものでもないと思います」
橘木名誉教授
「外国人を受け入れる場合、極端な意見ですが、受け入れるけれどいつかは帰っていただきたいという契約でやれば、私は上手くいく可能性が高いと思う。イギリスでもアメリカでもどこでも、移民ということは一生涯そこにいるということになりますから、何年間かの契約でもって来てもらって、あとは帰ってもらうという外国人労働の入れ方があるのではというのが、私の印象」

『成長の可能性』はあるか
秋元キャスター
「人口が減る中で日本は成長できるのか?」
八田氏
「私はできると思っています。先ほど申し上げたように、生産性を高めるということはいくらでも余地はあると思います。日本の素晴らしいところは、成長を邪魔しまくってきたわけですから、これを直すということができると。1つは選挙制度、もう1つはいろんな審議会制度、そういうことを改革すればいいと思います」
橘木名誉教授
「日本は少子化が進んで労働力不足が深刻です。稼ぎ手の数が少なくなると家計消費も減る。常に需要が減る。これは潜在成長率で見るともう日本の将来成長率はネガティブです。そこに成長率2%というのはもう不可能と見ています。実は経済同友会の小林会長も成長戦略が出た時に、日本では無理です、というようなことを言われたというのは、私にとっては非常に勇気100倍でして、財界の人もこう思っているなら私の説も正しいなというのを感じたのが第1点。それと第2点は、日本人はお金がほしいと言うよりも、もっと心の幸せを求めている。たとえば、Gross National Happinessという言葉がありますが、お金はもう要りません、もっと心の豊かさがほしいという国民になっていますので、もう成長率はほどほどでいいというのが私の意見です」
石川氏
「日本は高度経済成長を経験してきましたけれど、あれは奇跡であって2度と起きない。だから、成長がないというのではなくて、国全体を底上げする、国全体のGDP(国内総生産)を上げるというのはもうたぶん不可能だと思っていますが、業種別には伸びる人は伸びる。ただし、その場合格差が出ちゃうので、貧困はダメですよと。ここはちゃんと儲けた人がある程度税金やら何やら補填するという仕組みをつくるということをもって、ただし、伸びる人は伸ばすということとやっていかなければ経営者がいなくなりますよね。従って、橘木先生はハピネスというのをおっしゃいましたけれど、私は幸せになるにはある程度金が必要だと思っていますから。そうではない人もいると思いますが、それはたぶん心の豊かな人で、多くの人はお金がほしいでしょう。ですから、それは競争環境というのを整備して、勝つ人が勝つ社会、ただし、負けた人は負かさない、一定は必ず位置づけますよ、最低限大丈夫ですよという社会を目指すというのが現実的かなと。国全体のGDPという考え方をそろそろ改めた方がいいと思っています」

八田達夫 アジア成長研究所所長の提言:『成長戦略=機会均等化』
八田氏
「成長戦略というのは機会均等化のことだと思います。既得権を持った人達が全て独占している。それが成長を止めているのですから、その人達の特権を取り除くこと、それが成長だというのが1つの意味。もう1つは、きちんとした支援を有効配分するなら、平等のため所得の再分配も必要だと思います」

橘木俊詔 京都大学名誉教授の提言:『成長はほどほどに』
橘木名誉教授
「先ほどから日本はもう成長経済は無理、あるいは成長経済は必要ないというようなことを申しましたが、もう1つ理由として日本人の長時間労働というのがありまして、もっと成長せいということはもっと働け働けと。安倍首相は1億総活躍社会と良いことを言いました。1億人が皆一生懸命頑張って経済を強くしましょうということに、国民がどれほど感銘を受けるのか、私は多少疑問を感じているところです」

石川和男 NPO法人社会保障経済研究所代表の提言:『金回りをよくしろ!』
石川氏
「簡単に言うと、高齢者が短期間で年金を使い切るように、お年寄りや高齢者が欲しがる需要というものを掘り起こす。ここに力を傾注してほしいと思います。社会保障は必ずするので使ってねという、そういうサービスや商品を若い人が知恵を絞ってやらなければいけないと思います」