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2016年6月24日(金)
『EU離脱』の衝撃…緊急検証!英国民投票

ゲスト

浜矩子
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
中島厚志
経済産業研究所理事長
中野晃一
上智大学教授

緊急検証『英EU離脱へ』 なぜ世論は動いたのか?
松村キャスター
「あらためて投票結果を見ていきましょう。離脱が1741 万742票、51.9%でした。残留は1614万1241票で48.1%。これは、キャメロン首相が支持していました。地域別に見ていきますと、北部のスコットランドや北アイルランドの一部地域以外は離脱支持がほとんどの地域を占めています。浜さん、この結果、どう見ていますか?」
浜教授
「すごくわかりやすい結果というか、こういう感じで出てくるだろうなと、私は、長年、待ちわびていたというわけでもないですが、いずれこうなるだろうと思っていた日が来たという感じの受け止め方をしていますね」
松村キャスター
「特に驚いてもいないと?」
浜教授
「驚く気はしないです。どうしたって、こうなるよなという感じです」
反町キャスター
「それは損得勘定からですか?それとも何かもっと別の歴史的なもの?ないしはスピリットというか、血とかね。何が原因だと思っているのですか?」
浜教授
「損得勘定も、計算高いイギリス人のことですから、損得勘定は必ずあるのですが、でも、体質的にEU(欧州連合)的なものとイギリスはものすごく合わないですよね。イギリスは海洋国家、もうちょっと正確に言えば、海賊国ですけれど。大陸欧州というのは、宮廷文化の世界といいますか、予定調和。政治主導で、計画的に予定調和をつくっていくという論理で考える人達の世界で、だから、EUのいろんな条約とか、仕組みとかいうのはそういうふうになっているわけですけれど。それに対して、イギリスというのは本当に海洋性で、海賊性で、経済優先で、成り行きでなるようになる、それがいいのだという感じの。全てが、そういう形で動いていく世界なので、抵抗が大きいと。だから、これが全体的な印象ですけれど、現在言われたスコットランドが圧倒的に残留で、イングランドが圧倒的に離脱と。このへんはイギリス国内の面白い事情があって。そのへんも是非一緒に考えていってみたいと思いますね」
中島氏
「今回の、この議論というのは、最初から議論がすれ違いになっていたと思うんですね。ですから、経済的損得に、自分として関わっている人は残留。ところが、一方で、肌感覚で、むしろ残留ではないよね。これはちょっとおかしいという人達が離脱の中心で。離脱が勝ったということは、この議論が最初から経済損得で、これは残らざるを得ないねというのは、結果としてはすれ違った。実際に支持率を見ても、確かに拮抗はしていたんですけれども、むしろ未定の人の割合が下がると同時に、離脱が増えているんです。ですから、最後まで損得ではちょっと考えにくいという人達が、最後に離脱の方にまわったのかなと思いますね」
反町キャスター
「経済感覚、経済的な損得と肌感覚の違いだとすれば、とは言っても、肌感覚で離脱と言った人達が、全然、自分の仕事とか、生活とかが現在のEU、ないしは、いわゆるグローバリゼーションと、国際化と関係ないかどうか。関係アリなわけではないですか。それに気がつかないで離脱するということに札を入れている。そういう意味で言っていますか?」
中島氏
「十分にそこは、損得は計算していないということだと思うんですね。ですから、先ほどの浜さんのお話にもちょっと絡むんですけれども、肌感覚がヨーロッパ大陸の人達のやり方、発想の仕方、たとえば、法律をきちんと決めるというところからスタートするヨーロッパ大陸に対し、憲法すらないと、書かれたものがなく、これまでの慣習のうえで成り立って、だいたい考え方が決まっているという。これは建国以来ですからね。そこらへんはやり方が違うという意味で、今回、移民問題と合わせて、主権回復が強く言われてきたというのが、その背景だと思うんですよね」

『連合王国崩壊』への可能性
反町キャスター
「中野さん、スコットランドの話を聞きたいのですが、スコットランドの自治政府の首相が、スコットランドは62%がEU残留に投票した。明確かつ断固とした答えだ、スコットランドの未来はEUの1部になることだと言う。明らかにスコットランド、ないしは北アイルランドなども含め、イギリスの中における、それぞれ地域の分離独立のトリガーになっているのかどうか。それをどう見ていますか?」
中野教授
「2つありますけれども、スコットランドとアイルランドの問題ですよね。そもそも先ほど、お二方がおっしゃっている体質的な部分というところで、いわゆる連合国、連合国というぐらいですから、要は、4つの異なる民族と言いますか、から成っているわけで、その中で、スコットランドやアイルランドというのはより大陸に近いというのがありますから、とりわけスコットランドはそうですけれど。そういったことがある以上、なかなかこの問題を別ものと扱う人はほとんどスコットランドにいないと思うんですね。そもそも独立派も、EUの中で独立をしましょうという安心のさせ方というのももともとあったわけですから」
反町キャスター
「スコットランドがね」
中野教授
「はい。だから、今回、EUから出ていくとなれば、EUに残りたい、けれど、イングランドに首根っこを押さえられているような政治体制というのは嫌だというような人達は多いですから。そのへんはスコットランド的にはかなりアピール力のある立ち位置になってくると思いますね」
反町キャスター
「スコットランド独立派の人達、スタージョン自治政府首相も含めて、スコットランド独立派の狙いというのは、ここで我々は残留という意見をスコットランドは強く出したのだと。どうしてもイギリス全体が出ていくというなら、その時こそ我々はEU加盟という形で、イギリスから抜けるのだと。これはアリですか?作戦として」
中野教授
「だから、2014年ですか、あの時、スコットランドが独立するかどうかという住民投票で、決着がついたと思っている独立派の人はいないと思うんですね。と言うのは、もともと独立や自治の強化ということは1970年代から始まっていることで、非常に時間をかけて、もちろん、サッチャー政権期にどんどん先鋭化していって、政治的な軸を固めていくというわけですけれども、紆余曲折がありながら、しかし、着実に生活に根差す形で独立志向が強まっていますから。実際、いろんな部分も違うわけですね。もともと違ったところもあれば、さらに自治権が強化されたことによって、違いが強くなってきているというのがありますから、当然、それは終わったという話ではなくて、実際、ご承知の通り、連合国全体の総選挙が昨年、ありましたけれども、あの時だって、スコットランドの民族党が第3党まで、いわゆる自由民主党、連立与党だった自由民主党を追い抜いて躍進をしているわけですよね。だから、それぐらいの勢いできていますから、決してあの時の独立の是非を問うた選挙で終わって、意気消沈して、あの問題が終わったということにはなっていなかったということだと思います」
反町キャスター
「中野さん、イギリス全体の有権者を支持層別に見ますと、保守党の支持者の中では離脱が圧倒的に多かった、56%。労働党の支持者の中では、離脱というのが30%で、非常に低い部分があったわけですけれども、ただ、今回の国民投票をリードしたのは保守党の党首であるキャメロンさんですよね?」
中野教授
「はい」
反町キャスター
「キャメロンさんは、離脱を多く求める保守党のリーダーでありながら、なぜ自分の意思として前回、2014年に国民投票を約束したのか。でも、保守党の大多数の人達は離脱派が多い。でも、彼は国民投票に向けては、残ろうよと最後まで言い続けた。これはどう見たらいいのですか?」
中野教授
「国民投票を約束するところまで追い込まれたというのが1つと、もう1つは計算違いだと思います。彼は、国民投票をやれば、党内の離脱派が負けて、沈静化できるだろうと。サッチャー期からありましたけれど、保守党の内部でEUに加盟していることの是非というのは非常に、党を二分するような問題としてあって、重要閣僚の辞任であるとか、党内の権力闘争ということと常に結びついてきたわけですね。とりわけサッチャーほどのカリスマ性がなかったジョン・メージャーの時でも、本当に大騒ぎになったということがありましたから。キャメロン氏としては当然、保守党の党首になった段階からこの問題は非常に頭の痛い問題であって、通常であれば、保守党の首相というのは国内的には反EU的な言説も使いながら、これだけ交渉して、たとえば、ユーロは入らなかったとか、ここから免除してもらったとかということで、イギリスの国益を守ってきたぞということを盛んにアピールするということで、何とか落としどころを見つけてきたわけです。おそらくキャメロン氏としても、そういう意図で今回、この問題にアプローチしたんですけど、ただ、国民投票を舐めてかかったという部分があるのではないかなと思いますね。要は、よく言われることですけれど、国民投票というのはイギリスにおいて、先ほどのスコットランドもそうですけれど、1回で決着がついて、きれいに終わるということは必ずしもないですね。たとえば、選挙制度を変えるかという国民投票がこの間、ありました。スコットランドの自治権を拡大するかというのも1970年代から3回目をやったわけですね。そういうことをやっていて、そういったことでおそらく穏健なイギリス人というイメージでいきますと最終的な段階で急に離脱になるようなドラスティックな結果というのは出にくいのではないかと思っていたというのはあるのではないかと思います。だから、彼としてみれば決して名誉なことではないわけです。こんな形で辞任をすることになってしまって」
反町キャスター
「辞める必要があったのですか?」
中野教授
「いや、あると思いますね」
反町キャスター
「どうして?本人は保守党のリーダーで、国民投票で、キャメロン氏は辞めろというのが過半数に達したなら、それは辞めますよ。別にリコールがかかったわけでもないし、政策の1つが…」
中野教授
「いや、これからキャメロンのバカみたいな雰囲気が出てくると思うんですよ。要は、国民投票を約束しなければ、こういうことにならなかったのに、蓋を開けちゃったから出てきちゃったということになりますから。だから、リーダーシップの失敗というか、残留を支持する側からすれば、これまで我慢してやってきて、騙し騙しやってきたのに。おそらくイギリスの発想からするともちろん、先ほど、浜さんがおっしゃったような海洋国家、海賊国家としての違和感というのはずっとあるわけですけれど。アメリカ、大西洋とEUを天秤にかけてやっていくというのがおいしい立ち位置だったところがあった部分はあるわけですね。それがこれでちゃぶ台返しみたいなことになっちゃいますと、かなり大胆な話になりますから、本当にここまで予期していて、あなたは国民投票を開催したのかということは、計算間違いといいますか、政治家としての読み違い…」
反町キャスター
「浜さん、キャメロンさんというのは国民投票を舐めていたのですか?」
浜教授
「そうですね。甘く見ていたと思います。ですから、これで決着をつけるのだということだったわけですけれど、かえって寝た子を起こしたような格好になりましたよね。だから、イギリス人のくせに割合、イギリス人心理というのをわかっていないというか、イギリス人はすごく反骨精神が旺盛で、天邪鬼ですから。その手には乗るかという感じで結構、離脱派にいった人がいるのではないかなという感じがしますね。だから、こういう流れに乗せられようとしていることに気づいて、どうしようかなと思っていた人達は、確実に離脱の方にいったと思うんですよね」

EU経済への影響は
松村キャスター
「ここからはイギリスのEU離脱が経済にどんな影響を与えるのかを聞いていきます。イギリス経済への影響ですが、イギリス財務省が予測した最悪のケースは、離脱後の2年間でGDP(国内総生産)はマイナス6%。失業者がおよそ80万人増。消費者物価指数はプラス2.7%。ポンドは15%下落する。このような予想がされています。中島さん、これらの数字をどう見ていますか?」
中島氏
「累積だと十分あり得る数字だと思うのですが、ただ気をつけなくてはいけないのは、ポンドが大きく下落すれば当然、たとえば、貿易とか、落ち込みはある程度カバーできますから」
反町キャスター
「輸出競争力がつくということですか?」
中島氏
「そういうことですね。従って、GDPの仕組みも、逆にポンドが早く落ちれば、ここまで落ちないという可能性があるんですね」
松村キャスター
「浜さんはイギリス経済にとってどんなマイナスがあると考えますか?」
浜教授
「意外とマイナス要因を見つけるのは難しいのではないのかという感じがします。でも、このショックシナリオというのは、最悪の時はこうなりますという数字ですから、たぶんその全てについて最悪をあまり脈略もなく出した数字という感じだろうと思います。中島さんがおっしゃるように、累積でこの程度だということだから、逆に言えば、そんなに悲劇的な状態になるということではないと受け止めていいのではないかなと思いますね。だから、それこそユーロ圏にも入っていたわけではないですし、ポンドは下落するというのは、実はそれを非常に期待をしていた面があるわけで、思い通りになったというような感じの流れになっていくでしょう。こういうEU離脱ということになったなら、イギリスは全力を挙げて、外資を引っ張り込んで、既にいる外資が逃げていかないように、猛烈に愛嬌をふりまくようになるでしょうね。さらにはEUでいろんな面倒くさい規制とかに従わなくていいわけですから、こっちの水の方が甘いですよというのを、そういうのは結構上手ですから、必死でやり出すと思うんです。そうすると、意外と活況を呈してしまうかという、そんな読みもあって、株価もあの程度の下落に終わっていると」
反町キャスター
「イギリスが4.5%下落したのに対し、ドイツやフランスの方が大きくて、さらに言えば、EUの中でも、やや問題があると言われるイタリア、スぺイン、ギリシャの方がもう倍以上の下落率になっているんです。これはどう見たらいいのですか?なぜ1番、本来なら落ちるはずのイギリスがこの程度で、ユーロ優等生のドイツが1.5倍。フランスも大きく、さらにイタリア、スペイン、ギリシャは総崩れみたいな、これはどう見たらいいのですか?」
浜教授
「だから、イギリスはそこそこ自然体。一応、大きな変化だから、腰がちょっと引けるというような感じの自然体で、あとはパニックしているという感じですね。だから、パニック要因というのが実はイギリスでは発生していなくて、大陸欧州の、しかも、その影響大と言われている弱いところにグワァと発生していると。日本もパニックしているということですよね。だから、この姿にEUからのイギリス離脱というのは、どういう意味を持っているのかということが結構表われていると思いますね」
反町キャスター
「ただ、これらの大幅に下落した国々も別にイギリスの離脱によって、それぞれの国の経済を大きく毀損したとか、ショックを受けたとかということではなくて、いわゆる仕手筋の思惑みたいなものもあって、売り浴びせてやろうかみたいなところを待っているのではないかなという、実態経済を反映した下落率ではないのではないですか?これは」
浜教授
「パニックですから、それに乗る人もいるから、実態経済を反映していないと言えば、言えますけれども、ですけど、非常にイタリア、スペイン、ギリシャというのは、金融行政というようなものも、それこそ政府をどこまで信頼できるのか。スペインはまだ政府がないみたいな感じの状況です。こういうところで自分の金がどうなるかわからないと思う人達が右往左往している姿がそこに表われていると思いますし、当然ながら、そういう状況だから、この投機家達に狙い撃ちをされているというような、そういうところがはっきり出てきているということで。だから、自然体VS投機ですね」
反町キャスター
「中島さん、何でドイツ、フランスの下げ幅が大きくて、イタリアや、スペイン、ギリシャの方がもっと沈んでいるのか?」
中島氏
「イギリスは、プラス志向で考えれば、いろんな打つ手をとれるようになるわけですね」
反町キャスター
「では、中島さん、本当は離脱して良かったと思っているのですか?」
中島氏
「いや、手はいろいろありますよね。たとえば、EUの中であれば、現在金融取引税を入れようとしているんですね。シティのあるイギリスは反対をしてきたわけですね。それをやる必要がないわけですね。あるいは移民にしたって、移民が必要だとなったら、もっと入れればいんですよ。それは別に、移民に困っているからやめるという選択肢だけではなくて、もっと入れてもいいという、両方のフリーハンドを得られるということですね。ですから、それに対してイタリア、スペイン、ギリシャは追い込まれている立場で、しかも、その中で、たとえば、若い人達、それなりのスキルのある人達はどんどんドイツの方に仕事を求めて出て行ってしまうとか、そういうのを止められないですね。まったく止められない状況なので、打つ手が、そういう意味ですと、EUの共通規制の中で何をやるかという、それはここ数年を見てもなかなか難しいなということです。従って、イギリスの場合は、プラス志向で考えれば、むしろ積極的に打つ手は増える面もあるかもしれないですよ。ところが、イタリア、スペイン、ギリシャは追い込まれたままで打つ手はない。これまで通りの中でどうやってやるかですね」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、今日もポンドがダーッと落ちたりしていますけれども、中島さんに為替の予測を聞くのも変な感じがするんだけれども、それほど下落もしないで、もしかしたらイギリス政府の対応次第によっては、これはチャンスが戻ってくる、ないしはイギリスの株価も上がってくるとか。そういう可能性も見えますか?」
中島氏
「いや、もちろん、これは将来の話ですね。逆に言えば、これから離脱の交渉が始まる前に1日にして、いわゆる5%も10%も株価が落ちる、あるいはポンドが10%以上下落するということ自体、マーケットの織り込みがあまりに早い。オーバーシュートですよね。だけど、オーバーシュートだった分だけ、逆にそれだけ、先ほどのいろいろなイギリスのショックシナリオの場合、悪い場合でも深刻な場合でもGDPはそこまで落ちなくて済むかもしれない」

『期限2年』のプロセス
松村キャスター
「離脱のプロセスの中で懸念されることは何でしょうか?」
中野教授
「これは、言ってみれば協議離婚みたいな話になってくるわけですけれども、未知の世界ですから、初めて今回、実際にこういう規定ができたこと自体も最近なわけで、だから、これを実際にどう運用していくのかということはわからないことはいっぱいありますし、2年間というのはいろいろなところにEUというのが、要は、一般の人達がEUというのはうるさいとか、やかましいなとか、出たいなと思うぐらいに生活の場まで入ってきているということですから。それを解除していこうということになりますとその過程でいろんな想いがあるわけですね。だから、結構これはわからない話なわけですね。本当に大変ですし、要は、ふる側とふられる側というのはふられる側というのが大変なわけですね。こちらの側もイギリスは出るということを決めたけれど、それをどこまで簡単にするのか、しないのか、置いてかれる方はどうやって自分達を守っていくかというのが大きな課題になってきますから、どこまでこれがスムーズにいくのかということ。要は、共通の利益としてあまり世界の経済が大変なことになるとか、あるいは出たイギリスも含めて、大変な影響を被ってしまうような危機というのは避けたい。しかしながらそんなに全てで利害が一致しているかと言ったら、一致していればもちろん、一緒にいるわけですから、時間が2年間ということで足りるのかということも含めて、その間の政治的ないろんな、要は、ここで今回、私達からすると結構驚く離脱の決定という国民投票の結果が出たわけですけれども、他に何が起きるかわからないわけですね。そうなってくると、これでカタがついたということが言えるかといったら、ちょっとわからないと思います」
反町キャスター
「イギリスで今回、行われた国民投票には拘束力はないでしょう?」
中野教授
「そうですね」
反町キャスター
「あくまでも政府は参考にするということですよね。参考にして、方向は決まったけれども、2年がんばったけれども、ダメだったと。時の政府は出ないと、ないしは出るけれどもEUに混ぜて、というのはアリですか?」
中野教授
「アリだと思います。ちょっと無理があると思うんですね。キャメロンさんも大袈裟な言い方をしていて、民主的な壮大なプロジェクトだと、明確な意思が表明されたと言いますけれども、多数決が出ただけの話ですから、イギリスの民主的な意思が総体として出たわけではないです、ゲームですよ。今回、国民投票でがっちり決まったのかと言ったら、いや、3年経って膠着しているのが続いていた時に、あれは何だったのかという話になって、もう1回国民投票をやって、聞いてみましょうみたいな話というのは…」
反町キャスター
「イギリスとEUのせめぎ合いはどうなると見ていますか?」
浜教授
「確かにイギリス人は結構がんばったけれども、ダメだったわというのは意外と好きだったりするんです。だから、そういうこともアリかもしれないと思います。だけど、そういうことをいつまでも繰り返していては、その間に統合欧州というものの理念とか、そういうものがどこかにすっ飛んでいってしまうので、難しいことはおっしゃる通りですけども、21世紀で現在のEUに結実している発想というのは、東西冷戦体制ができる、生まれる時に考えられたものですね。それをベースに今日の統合欧州があるので、だから、実を言えばEUというもの自体が本当に時代錯誤的な存在だということが言えると思うんです、グローバル化している21世紀において。だから、現在の21世紀の中を統合欧州というものがちゃんと生きぬくことができるようにしたいのであれば、その枠組みについて考え直す。ドンドンこの当初のシナリオに従って統合を深めていく。深める深化ではなく、進む進化。同じ進化でも現在の状況に合った、それこそルーズな、来る者は拒まず、去る者は追わずで、いったん去っちゃったんだけど、また来ましたもアリみたいな感じの仲良しさというものを持っていきましょうと。それを21世紀の統合欧州のモチーフにしましょうというところに皆で合意できれば大人の…」
中島氏
「確かに私もそうなれば1番いいと思うんですけれども、難しいですよね。現在の問題と言うのは先ほど、要するに、どこが窓口だという話もあったんですけれど、ある意味、窓口というか、事務方ではあるのだけれども、リードしている側でもあるのがEU本部ですよね。ですから、EU本部にいる国際公務員の人達ですよね。ですから、そういう人達が1つ大きな方向性を持ってやっている時、むしろ緩やかな多様性のある国々でいいよねと言うと、そういう人達の意義というのはもちろん、そういう間をつなぐということは必要ですけれども、そうではなくて、リーダー役は必ずしもEU本部にいる必要はないわけです。こういうことになるわけです。そうするとこれまでの、先ほどおっしゃった冷戦の時の通貨を1つにしようねとか、政治統合してEU大統領までつくったねとか、EU議会もあるよねという、この方向はいったい何だったのだろうということなので、浜さんがおっしゃる通りですけれども、なかなか方向を大きく変えるというのは難しいですね」
松村キャスター
「移民問題は今後どのようになっていくと思いますか?」
中野教授
「結局、移民と言いましても、東欧が2000年代に順次加盟していったことで、よく言われるのはポーランド出身の水道工がドンドン来るというようなイメージで、英語だし、いろんな機会があるということで、イギリスに来るということが、非常にこう注目を浴びるような取り上げ方をされたということになっていくわけですけれども、先ほど、キャメロンさんのスピーチでもありましたけれども、直ちにどうなるわけではありませんと言っていたぐらい、あっちこっちにそういう方がいるわけですよね。そうすると、不安な状態と言いますか、出て行ってください、ということを言われるのがいつかくるという前提でいくわけですから…」
反町キャスター
「そうなりますか?」
中野教授
「そうなります」
反町キャスター
「来ちゃった人を出す形になります?」
中野教授
「そうでなければ何のために国民投票をやったのかとか、離脱のキャンペーンというのが、非常に反移民的な部分に偏って、ポピュリストが発していったという部分は無視できないと思うんです。そこがなかったら排斥感情というのにかなり火をつけた部分はありますし、UKIPという独立党、これはきれいごとでは済まないと、欧州でたくさん出ているような極右政党につながりかねないと。この間、ローマでも女性市長が誕生しましたけれども、同じ欧州議会で同じグループに入っているんです。だから、この問題をごまかすということであれば、いったい何のために俺は離脱に投票したのだという人がたぶん1番多い問題になってくるので、なかなか難しい問題になってくると思いますね。イメージとして良くないですから。EUの職員だってイギリス人はこれから排除されていくことになるわけですね。それもすごいことですよね。だって、実際に外務省のレベルから何から常に密着して年がら年中議論をやっていて政策を一緒にやっていたのが、これからイギリスの人達には出てもらいますという話になりますから、空気は悪いですよ、それは。それはかなりドラスティックな変化になっていきますので、人の部分というのは、その時、本当に耐えられるほどのきれいな別れ方ができるのかどうかというと相当感情的な部分がさらに煽られていく危険性というのは、移民の問題というのはあると思いますね」

『離脱ドミノ』はあるか?
松村キャスター
「今後イギリスのようにEUを離脱したいという国は出てきそうですか?」
浜教授
「出てくる可能性は結構あると思いますね。EU、先ほども言いましたけれども、本質的に時代遅れなシステムになっているので時代に合うような形でEUそのものが変身できないと消滅に至るということ。だから、発展的な解体を自立的に目指すというような大きな発想の転換ができない限りぼろぼろになくなって、そして誰もいなくなったということになる可能性があると思いますね」
中島氏
「今回のイギリスのEU離脱というのはイギリスの問題というよりもEUのあり方の問題ですから。ただ、気をつけなければいけないのは、同じ地域圏を形成していくというのがどうも時代にあわないということでは一律なくて、むしろEUの問題というのは規制を緩和する、だから、中にいるとより経済は活性化するし、いいよという話がかつてあったのが、むしろいろいろな規制が増えていく。そうすると、わずらわしさというか、これは自分達の思うところと違うというのが随分あるわけです。根本的にTPPと違うのは、たとえば、TPPは域内に入ると、人、モノ、金をもっと自由に動かせるようにしようねということでした。要するに、規制を下げるという話です。ところが、現在のEUというのは規制を新たにつくり出したということなので、ここが大きなポイントなので、昔みたいに比較的自由な枠組みの中に、ヨーロッパは1つだと、こういうコンセンサスのもとで、ギリシャも残るし、イギリスもまた入りたいということができるかどうか、というのが問われている」
中野教授
「あるかなと思うのが離脱の動きが次々と出てきてしまうと。経済的にも豊かだったり、社会民主主義的と思われている国においても、第3政党に反EUだったり、反移民だったり、排斥主義的な政党が既にたくさんあるわけですよね。そういったところは元気づいているわけですから、その議論はいろいろなところで出てくるということですね」

浜矩子 同志社大学大学院ビジネス研究科教授の提言:『自然体がベスト』
浜教授
「これは日本だけに限った話ではなくて、イギリスも、EUもそうですけれども、無理をしない。無理をすると必ずそこにつけ込まれて、そこからヒビが入るので、正直、素直に自然体でいきましょう」

中島厚志 経済産業研究所理事長の提言:『リーマンショックを繰り返さない』
中島氏
「逆に、自然体でありすぎるとつけ込まれるところがありますので、いかに無理をするのかということは、変なふうに無理してはいけないのですが、あくまでもバランスの取れた形の中で、それを越えるような動きというのは抑制すると。これが現在1番大事なことだと思います。日本にとってもこれが1番いいと思います」

中野晃一 上智大学教授の提言:『・長丁場 ・他山の石』
中野教授
「1つ目は長丁場で、要は、短期的な観点からすると国民投票で離脱という1つのブレイクスルーができちゃったわけですけれど、これでもうカタがついたという話ではないので、相当長いこと注視していく必要があるだろう、結論を急がない方がいいだろうというのが1つ目と、もう1つの他山の石というのは、国境を越えて経済活動が行われているのに、その民主的な統制というのができていないというのは、EUの中でもそうだし、イギリスの中でもスコットランドの不満にみられるようにあるわけです。日本においてもそういう問題はありますから、現在のように、経済活動が国境を越えてきている時にどうやって民主的な統制を強化するのかということは日本にとってもかなり切実な問題と理解しておいた方がいいと思います」