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2016年6月23日(木)
中国『あの国』警戒? 緊迫の海読み解く糸口

ゲスト

金田秀昭
元海上自衛隊護衛艦隊司令官 岡崎研究所理事
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー
長尾賢
東京財団研究員 学習院大学講師

エスカレートする中国海軍 尖閣接続水域侵入の真相は
秋元キャスター
「今月に入って、エスカレートする中国軍艦の日本周辺での動きを見ていきたいと思います。今月9日、中国海軍のフリゲイト1隻が、尖閣諸島、久場島北東の海域を取り囲む接続水域に入ったのが海上自衛隊によって確認されました。この海域ではこれまで日本の海上保安庁にあたる中国の海警局の船が相次いで航行してきたのですが、海軍の軍艦が接続水域に入ったのが確認されたのは初めてです。同じ時間帯にはロシアの海軍の船3隻も接続水域を突っ切る形で航行していました。15日ですけれども、中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島周辺の領海に侵入したのを海上自衛隊の哨戒機が確認しています。この船はそのままトカラ海峡を通過しています。さらにこの情報収集艦ですけれども、翌16日、沖縄県北大東島の接続水域に入りまして19日から20日にかけては尖閣諸島接続水域の外側の公海上を東西に何度も往復しているのが海上自衛隊によって確認されています。まず金田さんに聞きたいんですけれども、今月に入って、中国の軍艦が相次いで日本の領海や接続水域に入っていますけれども、これらの動きというのは連動した一連の流れとして見た方がいいのでしょうか?」
金田氏
「中国の動きそのものを見れば、これらについては単なる偶然とか、万が一そういったことがあるかもしれませんが、どう見ても相当上の方からの許可を得て、あるいはその指示を得て、やっているのではないかと。こう見るのが妥当なのではないでしょうか」
反町キャスター
「小原さん、いかがですか?まず9日から聞いていきたいんですけれど、9日に尖閣周辺の接続水域に入ってきた中国の船はどういう狙いがあったと見たらいいのですか?」
小原氏
「この船は公表されていませんけれども、この海域に普段から中国が待機させている船ではないかと。フリゲイト艦でしたから。これは以前からこの海域にいるというのは報道されていますので。そのうちの1隻はロシア軍艦が東南アジアを訪問し、合同演習と訪問を終えて帰ってきた船ですけれども、この船が来るという情報はもちろん、持っていたでしょうから。近くに寄っていてどういう動きをするのかは見ていたのだろう。それに海上自衛隊の護衛艦が監視についた。しかも、その船が、これは中国が主張するんですけれども、“中国の領海”に近づいたと」
反町キャスター
「“中国の領海”というのは、つまり、尖閣周辺という意味ですね?」
小原氏
「それは中国が主張する」
反町キャスター
「向こうからすれば、そういうことになるわけですね」
小原氏
「はい。だから、括弧付きの“領海”ですけれども、そこに他国の軍艦が近づいたと。これに対応するために近づいたような動きには見えます」
反町キャスター
「尖閣の周辺で言うと、ロシアの軍艦は現在言われたように南から北に、斜めに突っ切っていくのに、これを迎えるかのような動きを、この中国のフリゲイト艦がコースをとっているんですけれども、これは小原さんから見ると、このロシアの軍艦が、中国が主張する自国の領海の接続水域に、ロシアの軍艦が入ってくるのを警戒任務として中国のフリゲイト艦が出てきたと。そういうことになるのですか?」
小原氏
「これがロシアの船だけだったらやったかどうかはわからないですけれど、海上自衛隊の護衛艦がついていたということは」
反町キャスター
「このロシアの軍艦の後ろに海自がついていた?」
小原氏
「後ろなのか、どこなのかは、これは明らかにされていませんけれども、監視についたと言われていますので、その近くにいたのだろうと。そうすると、海自の護衛艦に主としてフォーカスしたのではないかと思いますが、領海に入られることに対処する対応をとりにきたのではないかと」
反町キャスター
「そうすると、中国のフリゲイト艦の動き、狙いというのは、ロシアの軍艦ではなくて、ロシアの軍艦の後ろについてきていると思われる日本の船に対する対応として、中国は動いたというので正解?」
小原氏
「と思います」
反町キャスター
「この接続水域にロシアと中国の船が入って来ている直後にいろいろな説が飛び交って、中国とロシアが示し合わせて接続水域に入ってきたという人もいれば、いやいや、中国はロシアを警戒したのだという人もいれば、現在、まさにここで言われたみたいに、ロシアの後ろにいるかもしれない日本をマークしていたんだよと。金田さんは、今回の中露連携説、陰謀説、どう見ていますか?」
金田氏
「中露陰謀説というのはちょっと当たらないと思いますね。ただし、中国側が、ロシアの艦艇が南から上がってくると。現在、位置はここであると。たとえば、対馬まで上がるわけですから、そうすると、直線距離にするとどうしてもここを通るかなと。これまでも通ったことがある。彼らはずっとここに張りついていますから。先ほど、言われたようにね。ですから、そういうこともわかっていて、これはどうも通るかなということで、まずそちらに向かって、ロシアの船に向かって、何らかの行動を起こしたという可能性もあるわけですよね。ですから、随伴していた護衛艦、監視をしていた護衛艦がどこにいたのかというのはちょっとわかりませんので、何とも言えないなと」
反町キャスター
「小原さん、どう思いますか?中ロ連携か、それとも中国の単独犯行という言い方も変ですけれども。どう見ますか?」
小原氏
「現在、金田さんがおっしゃったように、連携していたような動きには見えないと思います。それはロシアの軍艦の方が先に入っているんですね。それを追うように中国のフリゲイトが3時間後に入っているのですが。接続水域に入った時には、ロシアの軍艦はほぼ接続水域の真ん中を超えて、抜けようかという時ですね。ですから、そのままあとを追うように動いたと報道されていますけれど。そうすると、反応したと考えるのが適当ではないかと思います」

軍艦『領海侵入』の衝撃 中国の戦略・日本の対応
秋元キャスター
「続いて15日、中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島周辺の領海に侵入して、トカラ海峡を通過したケースを検証していきたいと思います。この領海侵入を受けた日本側の抗議に対して、中国外務省のスポークスマンは『トカラ海峡は国際航行に使われる国際海峡であり、国連海洋法条約に基づく通過通行権を行使した。日本側は国際法を勉強すべきだ』と主張をしています。中谷防衛大臣は『わが国領域を航行した海域について、国際航行に使用されている海域には該当しない。中国側の独自の主張は受け入れられない』と反論しています。金田さん、このトカラ海峡ですけれども、国際海峡であり、通行権があるという中国の主張は正しいのでしょうか?」
金田氏
「完璧に間違っていますね。通過通行権を行使した。それから、国際海峡であるということ、この2つとも間違っています。ですから、日本側というのはではなく、中国はもっと国際法を勉強すべきだということを思い知ったというぐらい、言うべきですよね、本当は。なぜそう言うかと言いますと、確かに国連海洋法条約は、国際海峡の場合には、たとえば、一般的な領海と言われている部分を通過通行するという権利は認めています。では、国際海峡とは何かというと、それは国際航行に使われていることが前提ですが、それぞれの国が決められるわけですね。日本は国際海峡と言いませんけれど、国際海峡として使われる特定海峡ということで、5つの海峡、これを…」
反町キャスター
「用意しました。5つというのは、宗谷、津軽、大隅、対馬の東、西」
金田氏
「はい。この5つですね。これを特に指定しています。法律でも指定して」
反町キャスター
「この5つの海峡は、だから、その中国が言う限りにおける、国際海峡であり、各国に対して通過通行権を認めている海峡であり…」
金田氏
「ではなくて、特定海峡ですけれども、国際海峡に使用されますよね。ですけど、ここではむしろそうではなく、そういうやり方ではなく、通常、領海というのは12カイリまででしょう、陸岸から。ところが、ここは3カイリにしているんです。ですから、宗谷も、津軽も、大隅も、対馬の東、西も全て非常に狭くなっている部分だけ領海を3カイリにしています。3マイル」
秋元キャスター
「日本が自主的にそうしている?」
金田氏
「そうしている。そうすると、何が起こるかと言うと、この海峡全てに公海が生まれるわけです。本当だったら」
反町キャスター
「公の海、真ん中のところにね」
金田氏
「本当だったら12カイリ、12カイリで全てが領海になってしまうところをわざと3カイリと3カイリにして間を空けてあるということです。ですから、領海を通過することはない。それから、通過通行権ということも、そもそも起こらないと。こういう話です。ですから、勉強すべきは、これは中国側でしょうということになりますよね。中谷さんが言っておられることはまったくもっともであると、このように思います」
秋元キャスター
「日本が特定海峡として3カイリに、ある意味、譲るわけではないですか。そのメリットというのは何があるのですか?」
金田氏
「いろいろあるのですが、良い面も、悪い面もあるでしょう」
反町キャスター
「日本のメリットは何かいいことがあるのですか?」
金田氏
「いろいろな判断から」
反町キャスター
「小原さん、何ですか?領海をわざわざ小さくすることによるメリットは?」
金田氏
「私が責任を持って言いましょう。つまり、冷戦時代の延長と言えば、延長ですけれども、要は、原子力潜水艦が海に潜ったまま通峡したいと。そうなると、中国が2004年に我が国の領海を侵犯して、潜行して通過した原潜の事象に思い起こされますけれども、要するに、国際法違反になるわけです。ですから、そういうことを避けるために、これはアメリカもおそらく当時のソ連も含めてという、非常に高度な判断があったと思うんですけれども、基本的にはアメリカの原子力潜水艦がわざわざ浮上しなくても、そこを潜ったまま通過してくださいというような意味から、こういうものを設けたと理解してください」
反町キャスター
「日米安保条約の運用上、その方が日本の安全保障にとってメリットがあるということで、領海を12カイリと主張できるのを、3カイリに収めて、海峡中心部分に原潜が潜っても通過できるエリアを設けた?」
金田氏
「そうです」
反町キャスター
「でも、それは逆の言い方をすると、そこの地域にだけ、わかるようにソナーを設置しておけば、アメリカの船ではない、ロシアの潜水艦、当時、ソ連か。ソ連の原潜や中国の潜水艦が通った時にもわかりますよね?」
金田氏
「わかりますね」
反町キャスター
「何か定置網みたいな感じで。ここを通る魚は一網打尽みたいな、そういう意味はあったのですか?」
金田氏
「わかるでしょうね」
反町キャスター
「そういう意味も、メリットもあった?」
金田氏
「どうでしょうか。少なくとも特定海峡については、そういうことだからやっているということだと思います」
反町キャスター
「トカラ海峡の話に戻るんですけれども、金田さん、中国側がわかっていなかったということではなく、わかっていて、わざわざトカラ海峡を通したのかどうかと。ここの話にいきます。何で中国は敢えてわけのわからない理屈を、一発で嘘がばれるようなことを強弁してでも、トカラ海峡を通したかったのか?それはどう見ますか?」
金田氏
「彼らの、いわゆる近海防御戦略から始まって現在、遠海防御、遠海護衛などという言葉を使っていますけど、そういう戦略的な見地から海をいかに軍事的に利用しようかということが戦略的にも検討して、彼らは、いわゆる9つの出口というものを決めているわけです」
反町キャスター
「これですか?」
金田氏
「中国は、いわゆる第一列島線というもの、ここから台湾を通ってフィリピンを抜ける、この海域を目の上のタンコブというか、ここが全て外に出る、オーシャンに出ていくための障害になっているわけですね。そのために、彼らはここをしっかりと自分達が通りやすいような形にしたい。ないしは、いつもそういったところを抜けて経験を積み、有事となれば、そういったところも活用していきたい。そういうことはあります。2010年に新華社系の国際先駆動向というところが発表した内容ですが、宗谷海峡、それから、大隅海峡、宮古水道、ここは沖縄の宮古島にある、よく中国海軍が通る所ですけれども、ここは国際海峡ではないのですが、十分に広い海峡です。ですから、公海がある、存在するというところなので、ここを通峡する。それから、あと与那国島と台湾の間もかなり広いです。さらに言うと、この台湾の南、ルソンとバシーというのがある。日本に関係しますのは与那国、台湾のところですね。ここを彼らが、A2ADとか、いろいろいますし、あるいは最近は遠海にも出てくるのですが。そのための通路としたいということです。自分達のものにしたいということですね。その中で宗谷、大隅、宮古、与那国というところは既に何回も通っているのですが、実はトカラというのは通っていないわけです。ここをとにかく通過するという実績を残したいと。その時の、日本の反応をみたいと。そういったところはあったと思います」
反町キャスター
「小原さん、いかがですか?情報収集艦がトカラ海峡を通過したこと。どう見ていますか?何をしたのですか、彼らは」
小原氏
「基本的には、ここを通った船は電波情報収集艦と言われるタイプの船で、電波情報を収集するために来ていた船です。そのターゲットは当時、この海域で行われていたマラバールという名前の日米印の海軍合同演習だったことは間違いないと。報道によれば、これに参加していた艦艇を追跡して入ったということのようですので、それを理由として入ったのか、その動きを見たかったのか。電波情報と、目で見て、何をしているのかを合わせると非常に詳しい、いろんな情報ができあがってくるんですね。そのためには取っている電波と共に、何をしているのかを見たいという状況もあると思うので、そのために近づいた可能性、追跡した可能性はあると思います」
反町キャスター
「現在の話を聞いていると、この9つ出口のうちの1つである、トカラ海峡を通って、調査をしたかったということではなくて、マラバールという、日本とアメリカとインドの合同海上軍事演習が行われている、その時に中国の調査船の前を引っ張るようにどこかの国の軍艦がここを通っていったのですか?」
小原氏
「これは、報道ではそのように報じられていたと思います」
反町キャスター
「これはどこの国の?」
小原氏
「ここを通ったのはインドの船で、それに釣られてと言うか、追尾して入ったという報道だったと思います」
反町キャスター
「それはどう見たらいいのですか?トカラ海峡を通過した中国の調査船はトカラ海峡を通過するのが目的だったのか、インドの船を追尾し、その動きを監視するのが目的だったのか、どちらだと見ていますか?」
小原氏
「主たる目的はあくまで電波情報収集艦であることを考えると、情報収集だっただろうと。追跡をして入ったということだと思いますが。ただその時、そこが他国の領海であるということ。しかも、日本であるということであれば、普通はそこには入らないという配慮があって然るべきであろうと。ですから、それを敢えて、そういった配慮をせずに突っ込んでいくということは、そこに中国側の意図があると感じられます」
反町キャスター
「今回マラバールに参加するインドの軍艦が、トカラ海峡を通過、ないしは前を横切る形で行って、それに引っ張られるように中国の調査船がという現在の話がありました。そういうような観点から見た時にインド側というのは、今回は意識して十分、今回の訓練に参加していたのですかね。何かそういうのを感じる部分はありますか?」
長尾氏
「基本的な演習をやる時に情報収集をするというのは、それは有事に備えとして、海軍の主要な任務の1つだと思うんですね。当然、海軍の艦艇が活動をしていて、しかも、今回の演習は非常に大きな演習でしたので、それの情報収集をしようというのは当然、行われてくると思います。ただし、インドの活動が活発になってきています、この地域で。これは本当の話ですね」
反町キャスター
「この地域とは東シナ海とか、そのへんですか?」
長尾氏
「過去に比べれば、そうです。回答としてはイエスですね。南シナ海でも活発になっていますが、東シナ海でも活動をするようになっています。それはもちろん、日本と協力するために来ているわけですよ。活動が活発になっている。中国としては放って置くわけにはいかないというような要素があるのだと見られます」
反町キャスター
「小原さん、現在の話を聞いていると、今回マラバールという軍事演習をやっています。そのうちのインドの船をマークしている中国の情報収集船が、意図的かどうかは別にしても、日本の領海を横切ってまでもインドの船を追っかけましたと、こういうこと?マラバールに限らず、この地域における日本、ないしは日米、他の第三国を絡めての軍事演習というのはこれからも行われるだろうし、これから様々な組み合わせが考えられると思うんですけれども、度々、中国の情報収集船が来て、領海だろうと何だろうと突っ切って、あとをつけて何をやっているのかなとずっと聞き耳をそば立てるみたいな、そういう可能性というのはこれからさらに高まっていくと見た方がいいのですか?」
小原氏
「はい。これも領海に入った今回の行動と、尖閣の接続水域に入った行動の目的は違いますし、性格は違うと思いますが、それでも共通しているのは、中国海軍の行動が昔のような政治的配慮とか、そういった躊躇はないように見えるんです。ですから、それは私が申し上げた、何か行動に標準化がされてしまって、こうした情報収集の時は、その取るべき、ある程度の標準化がある。そうすると、このトカラ海峡だろうと、領海だろうとまったく躊躇せず入ってくる。それは定められた行動なのだということになれば、艦長は何も考えず、その通りに動けばいいわけですよね。ですから、そういったことになっているのだとすると、こうした事案は今後ますます増えてくることは考えられると思います」

日米印防衛協力の意義
秋元キャスター
「マラバールですが、どこに注目されましたか?」
金田氏
「マラバールという、かなり古い時期から始まっている、米印の共同訓練ですが、それに加えまして、最近の状況を反映して、日本側もこれに参加をし、各種の訓練を積み、非常に効果があると思います。最近の報道で見ますとマラバールでやっている最中だったかな、インド側から次は日米印の中で日本側を正式にメンバーとして認めますよというような発表も確かあったと思います。そういったことで日米印の結束ですね。これはこういう部分でも非常に強くなったということは歓迎すべきことだと思います」
秋元キャスター
「具体的にどういう事態に備えて行う訓練なのですか?」
金田氏
「海上訓練の必要なものは大部分やっていると言っていいと思います。対潜水艦、対水上、対空戦、こういうような普遍的な海上戦闘、こういう訓練を空母も交えてやっている。日本はヘリコプター護衛艦ですね。それに加え、捜索や救難といった訓練もやっている。海上における訓練としては非常に内容の濃い訓練をやっていると思います。期間的にも1週間強ですか、そういう意味で、非常に豊富な訓練内容だと思います」
反町キャスター
「中国はこのマラバールをどう見たのですか?」
小原氏
「マラバールという枠組みが、中国にとって嫌なのは、これまでアジア太平洋の協力をアメリカが中心に考えてきたのは、いまやインドパシフィック、広い範囲になったんです。大西洋側は、アメリカはNATO(北大西洋条約機構)とやっていますから、中国が使える海がなくなるということです。これまでの中国の西進戦略と、その実践だと言われる一帯一路は、アメリカとの衝突を避けて西へ行くという意味合いもあった。ところが、日米同盟の、日本が参加することによって、その協力というのは、アジア太平洋からインド洋まで及んでくると。この枠組み自体が嫌いですね。ですから、日本がこのマラバールに参加することに対して、中国が反発したのは、日本近海ではないです。インド洋で行われるマラバールには他の国は参加させるなと言って、中国はインドに圧力をかけたんですね。日本は2007年からこのマラバールに参加していますけれども、これは日本近海とインド洋と毎年交互に行われているのですが、日本近海での演習に参加しているんです。インド洋に参加できなかった。2014年、初めてインド洋でのマラバールに日本を正式に参加させましょうと、金田さんがおっしゃったお話になります」
反町キャスター
「インド海軍の技術的なレベルについて。日米と同じレベルでスムースに訓練ができたのか?」
長尾氏
「直接担当した方にお話を聞く機会はまだないですけれども、もともとの装備を調べて見ますと、起こり得ることは想像できるわけです。要するに、インドはアメリカと協力することを前提に装備を保有した国ではないということです。だから、それを仲間として受け入れて、一緒に共同演習をすることになると、いろんなことを調整し直さないといけない。だからこそこの共同演習には意味がある。共同演習をすることで問題を洗い出して、改善することができるんですね。だから、演習を重ねれば重ねるほど相互に連携がとりやすくなっていく。だんだん実力を蓄えていくし、直し方もわかっているという状態になっていると思います。マラバール演習が始まったのは1992年で、アメリカとインドの間で始まったんですね。今年は2016年です、随分長くなっている。だから、すごく進んだと思っていいと思います」

日印連携『効果』と『副作用』
秋元キャスター
「防衛協力の相手としてのインドをどう見ていますか?」
金田氏
「まず2000年頃からインドパシフィックという概念、こういったものが際立って出てきました。とりわけ海洋安全保障という面ではこれまでインド洋と太平洋というのは別々に考えられていたのですが、インド洋と太平洋を一体のものとして考えなくてはいけないような議論が出てきました。重要な海上交通路は、日本にとっても、中国とっても、韓国にとっても、インドにとってもそうなのですが、中東から北インド洋を通って、マラッカ、シンガポール海峡を通って、南シナ海、東シナ海に抜けていく。北東アジアに来るというこのルートは世界で最も重要な生命線と言える思います。ここを守るのにどうなのかというと、往時の米国海軍というのは、1国でできたかもしれないけれども、現在はそれほどではないということになると、この海域にまたがる、いろんな価値観を共有し、国家というものが連携しながら海洋交通路、インド洋、太平洋を貫通する、ここを何とか守りたいね。協力する以外ないねと。日本はインド洋まで出て行くわけにはいかない。インドは東シナ海まで出てきて、常時、海上交通路を護衛するとか、そういったこともできないわけですから、それぞれ分担を持ちながら、アメリカももちろん入って、オーストラリアも入って、しっかりやっていこうということが出てくるのは当然です。従ってそのような動きが見えてくるということだと思います」
反町キャスター
「数十年のスパンでもいい、信頼してやっていけるのかどうか。インドにはブレというリスクはないのか?そこをどう見ていますか?」
長尾氏
「インドには問題なく、できると私は思っているんです。第一に前例があるからです。冷戦時代に、ソ連は、インドが口では非同盟と言っている間に、事実上同盟関係になっていました。それができるのだったら、他の国にもできるはずです。しかも、それは何十年と言うスパンで続いたわけです。1971年ぐらいから冷戦が終わるまで続いた。だとすれば、そこに日米が入ることはできるはずです、少なくとも理論上。あとはどうやってやるのかの方が問題で、うまくやっていかなければいけないというところがあるんです。結構長い目で見て、インドは自己主張が強いので、一見すると全然手を組むつもりがないのではないか。と思われることが頻繁にあるのですが、でも、長期的に見ていきますと、チャンスが出てきます。チャンスが出てきた時それを逃さないでちゃんと引っ張りこんでいくと我々の陣営にくる。そういうことはあると思うんです。たとえば、現在チャンスだと思います。たとえば、2014年アメリカの研究機関があるのですが、そこが調査をやっている、インド人に、どこと同盟を組みたいですかと。半分ぐらいの人がアメリカと応えた。これは過去から見てあり得ない数字です。なぜかと言うと、2番目の29%の人がロシアと応えたのですが、これが伝統的に強かったのに、これが29%でアメリカが50%。驚くべきことは、インドがこれを報道した時にインドの記事に書かれているのですが、26%の人が日本と答えたと。第3位です。つまり、インド人の中でアメリカだけでなく、日本という意識が強くある。だから、米印が現在仲良くしようとしています。米印が仲良くしている時に日本が加わることで、米印関係も良くなる。そういうような関係がある」
反町キャスター
「4月に中国、インド、ロシアの外務大臣会談が行われ、その時にインド側が南シナ海における中国の立場を支持したと。小原さん、そうですよね?」
小原氏
「そうです。中国はそれを一生懸命に報道している。それは孤立したくないから。ただ中国の報道は素直なところがあって、2国間会談もやっています。中ロと中印。ロシアのラブロフ外相は明らかに中国寄りの発言をする。ところが、インドの外相が言っているのは、国際法に則って議論によって問題を解決しましょうというのが趣旨であって、中国はそれが自分の立場だと言っているわけです」

金田秀昭 元海上自衛隊護衛艦隊司令官の提言:『印太地域の東西アンカー 海洋安保協盟(MSC)』
金田氏
「インドパシフィックという言葉がありますが、印太地域でのインド、太平洋と貫通する海上交通路の東側のアンカーとなるべきは日本、西側アンカーとなるのはインド、こういう意味です。お互いにこういうことについては意識をしていると思います。これを私は海洋安保協盟と呼んでいます」

小原凡司 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『“インド・太平洋”協力の構築と“大西洋”のとの連携』
小原氏
「まずインドと日本がそれぞれ、自分の国の周辺だけでなくて、インド太平洋の協力、まずこれをつくる。その次には太平洋で行われている協力との連携をはかっていく。そのことによって、日本はインドと共に世界の海の平和と安全をはかっていくと言うことが必要だと思います」

長尾賢 東京財団研究員の提言:『よくみて チャンスを 逃さない』
長尾氏
「インドとの付き合いは意外と思った方に進まないということが多いと思いますが、よく見ていると必ずチャンスが訪れます。現在がチャンスですね。こういうチャンスを逃さないという姿勢を常に持っている必要があると思いまして、こう書きました」