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2016年6月20日(月)
税をめぐる理想とリアル 政治の責任国民の責任

ゲスト

神野直彦
東京大学名誉教授
西沢和彦
日本総研調査部上席主任研究員
片岡剛士
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員

衆院選の焦点検証 どうなる?税と社会保障
秋元キャスター
「まずは各党の消費税に関する公約から見ていきたいと思います。神野さん、来年4月に予定されていた消費増税ですが、賛成を訴える党はありません。見送りになりますが、どう受け止められますか?」
神野名誉教授
「そうですね。オルタナティブがない選択ということになるわけですよね。延期する理由などを見てみると景気条項等々、循環的な問題ですね。この消費増税というのは社会保障と税の一体改革という構造的な問題。つまり、社会構造や経済構造が大きく変わった。現行の社会保障制度を張り替えなければならない。さらに租税の方も、抜本的に税制改革をしておかなければならないと。つまり、これまでの日本の社会保障が依存前提にしてきた家族とか、コミュニティとか、あるいは企業内福祉とかというものがぐずぐずになったり、あるいは人口構造が大きく変わったり。それから、雇用形態と言いますか、雇用の問題が大きく変わってきたり。そういったことで生じている構造的な問題に対応していこうと。しかも、税もこれまでのような産業構造前提にできないので変えていこうと。この2つを一体化してやろうという改革なわけですね。そうすると、こういう構造的な問題というのは、いずれやらなくてはいけないし、直近の課題になっていたわけですね。社会的な問題なんかがどんどん増えてきましたから。それを循環的な問題で先送るということをすると、構造的な問題の解決は遅れれば遅れるほどますます困難に、つまり、構造的な問題は進化していきますよね。困難になってくると。そうすると、それは結局、将来不安につながって、循環的な問題にも悪影響を及ぼすのではないかと考えられていますので、そもそも3党合意が成立したのも、そういう構造的な問題はリーマンショック後の混乱の中でも浮上してきたのでね。これにどうにか対応しなくてはいけないという問題意識があったはずで、これを循環的な問題だけで先延ばすということは構造的な問題の解決を引き延ばして、いずれ解決をしなければならない問題に手をつけられていない、そういう状態に陥ってしまうのではないかと思います」
反町キャスター
「西沢さん、2度の増税延期をどう見ていましたか?」
西沢氏
「これは自民党、公明党、民進党とも情けないと思いますよね。結局、その国の一般会計が、ざっくり50兆円財政赤字ですと。短期国債でみれば半分ぐらいですけれど、50兆円を仮に埋めるとなると、消費税1%で2.5兆円として、20%。20%追加すると欧州の最も高い国に近づくぐらいの相場感があると。本来は、我が国は財政収支の黒字化によって、GDP(国内総生産)比、政府債務名目での残額減少を狙っていくべき。これがだいたいコンセンサスだと思うのですが、そうした中において、仮にそういう最終ゴールを設定して、我が国はそういう状態ですと最終合意を設定したうえで、段階的に上げるけれども、足元の景気を見た時にはちょっと留意をしましょうかと言うのなら、まだわかるのです。最終ゴールも示さず10%に上げるというもたもたしている状況。ですので、これはまったく評価できないですよね」
反町キャスター
「景気そのものに対する配慮というものというのは、どう感じました?」
西沢氏
「現在の景気、確か2012年の頃は景気後退をしていてちょっと厳しかったかなと思いますけれども、2013、2014、2015と雇用も含めて、景気が比較的いい状況ですよね。あと消費、個人が消費しない要因として、私も定量的にはちょっと示せないですけれども、特に若い人の将来不安だと思うんですよね。確かに相当まずいと思いますけれども、年金が貰えないのではないかと。あるいは親の介護で大変ではないか。この借金について、我々は将来、増税を負うのではないのというような不安が大きいと思うんですね。ですから、その不安を払拭しない中において、消費税の引き上げ時期を少しずらしたところで変わらないのではないかなと思うんですけれども」
反町キャスター
「片岡さん、いかがですか?」
片岡氏
「私自身は、延期は良かったなと思っています。ただ、先ほど、西沢さんや神野さんがおっしゃっていたように、問題に対して解決策という話ではなく、むしろ問題を先送りしただけなのかなという気がするんですね。私自身、神野先生と若干違う考えなのは循環的要因と構造的要因。先ほど話がありましたけど、これは両面考えていかないと、構造的要因もなかなか解決がつかないかなという気がするんですね。たとえば、日本の財政赤字を1つとってみても、財政赤字がこれだけ累積した1つの大きな要因というのは、日本経済がデフレに陥って名目税収がなかなか増えない状態だと。最近ちょっと改善してきていますけれど、そうした状況というのが1つあるわけですよね。社会保障と税の一体改革という中で消費税率を段階的に引き上げていかなければいけないと。こういう議論がありますけれども、現状、政治の動きを見る限りにおいては、たかだか10%までの引き上げというのも今回2回延期をしているわけですね。だから、構造問題に対処しようとしても、足元の景気ですとか、こうしたところに配慮しながら、社会保障の財源を捻出していくというか、安定財源を確保していくと。現状はこういったことを両立させるということが求められているのかなという気がするんですよね。あとは西沢さんがおっしゃっていた消費税の延期の話ですけれど、これと消費の話ですね。私は、5%から8%に引き上げたことによって、家計の所得、実質的な所得とか、そういったものが落ち込んでいったと。それから、増税すれば当然、我々の将来所得というのが、特に若い方を中心に、あまり増えないのではないかと。そういう心配もありますね。だから、先ほど、将来不安というお話がありましたけれども、現状の不安というのも当然あるわけですね。もう1つ言えば、今回延期という話になったわけですけれども、いつか消費税は10%までは引き上げられるということは決まっているわけですよね。ですから、将来消費税をさらに10%引き上げられることができれば、たとえば所得が多少増えたとは言っても、将来、増税されるわけですので。だからそういう意味では、結局、現在消費を無理やりしようとか、そうは思わないのではないかという気がします。ですから、安倍政権が増税を延期しましたと言っても、足元の消費が伸びる気配は当然ないわけですけれども、増税をするという話はいずれにしても変わらないと。こういったところも影響しているのではないかなと思いますね」
反町キャスター
「今回は2年半増税しないと言っても、いずれは上げるというものが日本経済に負担に既になっているのですか?」
片岡氏
「ええ。先行き上げるという話があるわけですから、その事実はまったく変わらないわけですね。ですから、その間にもちろん、大規模な財政出動であるとか、そういう話はあるかもしれませんけれども、それをやって果たして、どれほど効果があるのかなという気はするんですよね」
反町キャスター
「政党の公約ですが、国民の幸福を長期的に見据えた時に現在、増税すべきだという政党がいない。この日本の政治状況をどう感じますか?」
神野名誉教授
「世論調査でもこういう結果が出ていると。これは、国民は負担が少ない方がいいけれど、受益は多い方がいいと言っているわけですからね。それは当たり前の話。これをクリアするというのが政治家の任務ですよね。そういう非常にアンビバレントな行動をとる国民をどうやって正義の旗印の下に統合していくかというのが、政治家の任務ですから。これにこういう状況に対応できる政策プランを描く。これがそもそもの政治のあるべき任務ではないでしょうか。それができないというのは。そもそもこういう状態にあるというのは政治では当たり前の話ですよね」

増税延期と社会保障改革
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社会保障改革の施策例

【子育て】
・保育の受け皿の拡大(50万人分)
・保育氏の処遇改善

【医療・介護】
・低所得者の介護保険料軽減
・国民健康保険への財政支援拡大
・地域医療・介護の提供体制改革

【年金】
・年金の受給資格期間短縮(25年→10年)
・低年金者への給付金(年6万円)
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秋元キャスター
「もともと消費税率を10%に引き上げることで予定されていた具体的な政策の例があります。西沢さん、これらの政策は8%に引き上げた時から継続していくものだと思うのですが、増税延期というのはどう影響してくるのでしょうか?」
西沢氏
「下から順にいらないと思うんですよね。もともと社会保障と税の一体改革は、消費税を5%追加的に引き上げて、1%充実に使うと言っているんですけれど、アメとムチみたいな関係にあって、例えばちょっと消費税引き上げに納得を得ようという感じで低年金者への給付金とあるんですけれども、だいたい5600億円ぐらいと試算されているのですが、700万人ぐらいを対象に、年金の低い人に月最大5000円というのも、でも、年金はもともと過去に保険料をたくさん払ったから、たくさん貰えるという仕組みであって。現在、低年金であるというのは過去、保険料を少なくしか払えなかったという側面もあるんですね。その人に事後的に年金を与えてしまうというのは、あまり実は社会保険の原理に馴染まないですし、この仕組みも長く払った人に多めに出しているので、そういう社会保険に馴染ませるようにして。そうすると今度、逆に低所所得者対策として効果的ではないですね。さらに言えば、2004年に年金改正を行ってから現在に至るまでマクロ経済スライドという年金給付抑制の仕組みがほとんど効いていなくて、年金が1割ぐらいかさ上げされているんですね。ですので、本当は下げなくてはいけないところに、さらに上乗せをする。しかも、それもあまり公平でもなければ合理的でもないという仕組みになっているのも知らないと思いますし、受給資格を25年から10年に短縮するというのも低年金者を生みかねない。あるいは充実と効率化と書いてありますけれども、もともと社会保障税一体改革は、医療や介護は充実もするけれども、抑制もすると。差引で1.5兆円やりましょうと。かつては長期入院の是正とかいう厳しめの方向を並べたんです。現在はネットで金額を書いてしまって、本当は医療に関しても歳出抑制の厳しい項目が官僚ベースでは進んでいるかもしれませんが、政府、政治の表に立ってこないですので、そこもどうかなと思いますし。最後に残ったところはやっていくべきかと思いますけれども」
反町キャスター
「もともと10%にした時にこれだけをやろうという項目自体、税と社会保障の一体改革のカリキュラム自体が、方向性が、ある意味で部分的には過剰で、ある意味でもしかしたら無駄と言うか。そもそもの社会保障の理念からすれば、間違った金の貼り付け方をしているのではないか、そういう主旨ですか?」
西沢氏
「消費税の引き上げを政治的にスムーズに進めるために、社会保障のメニューの準備をしているという側面、メニューも入っていて真に必要な物ではなく、社会保障を引き上げる国民的合意を得やすくするためのアメとしてのものというのが混在していると思うんですね」
神野名誉教授
「西沢さんのおっしゃっていることも事実です。甘すぎるということではあるのだけれども、それは社会保障の一体改革の中で抜け落ちているというか、考慮の対象に入っているのが生活保護です。低年金などの年金でやる問題というようなものがあった時に、医療の保険の方ですくい取っていくようにするのか、あるいはそこまでやるのか。そうしないといずれ年金がほとんどなくなり、低年金の人達が落ち込んで生活保護で受けなくてはいけませんから、それはどちらで、論理的に持つのか。たとえば、年金というのは掛け金に比例的にやらなければいけない。だけど、ゼロの人が年金ゼロでいいのかということですけれども・・・」
反町キャスター
「すぐ生活保護の方に行ってしまう?」
神野名誉教授
「そうです。真っ直ぐに行っちゃうということにするのか。それとも生活保護と同じ理念で、ミニマムペイションという最低保障年金をつくるのか。そういう選択の問題なので、年金の制度内でどう変えていくのかという話や、医療保険等々の方でどうやって対応していくのかということ、社会保障全体の中でどう考えていくかという、つまり、生活保護を含めて、どう有機的に関連づけるかという話とセットにしていく必要があるかなと思います」
反町キャスター
「甘いだろうという指摘に対して、現在の年金、生活保護受給資格があるにもかかわらず、受給者は2割か3割ぐらいですね、確か。その人達が全員生活保護を受けるようになったならば、こんな千億円単位ではなくて、兆単位でお金がかかるのが皆わかっているところで、大きな生活保護給付の負担が財政にかかるのを防ぐために、甘いと言われてもここで何とか止めておこうという作戦という話はいかがですか?」
西沢氏
「ですので、先ほど、神野先生がおっしゃったように構造問題と。たとえば、今後は高齢者の貧困、子供の貧困も言われていますね。あるいは終末期どこで亡くなっていくか。医療提供か、介護体制提供かといったすごく大きな構造問題がある中で、メニューというのがあって、構造問題に構造的に対応しているものではないと思うんですね。目先、年金を少し上乗せしましょうと。何もしないよりはもちろん、いいです、もちろん。ただ、効率的でないし、永続的ではないですよね。本来はもっと社会政策というのですか。社会保障の制度として、年金と生活保護、縦割りではなくて、最低保障的なものを年金の中でつくるとか、そういう議論を本当はしたいですね。そのビジョン、青写真を出しながら、わかりやすく。そのうえで、必要な負担を求めるというのは本来的に一体改革だと思っていまして。そうした中で、目先・既存の制度に少しお金の色をつけるというものでしかないので、ですから、以前のような、2%消費増税しないと社会保障が充実しないとか、持続可能でないという、そもそも論としてそうだと思います」

『受益と負担』のあるべき姿
反町キャスター
「支出の方を見ていきたいのですが、全体で120兆円弱です。2015年度の年金が56兆円、ほぼ半分ですよね。医療が40兆円弱あって、あとその他、介護、子供、子育て、その他諸々となっています。この社会保障の支出は、年間、税、保険料、諸々含めて120兆円という莫大な金が出ていますが、この内訳は年金、医療がほとんどで、介護が10兆円、子供子育て5.5兆円です。このバランスをどう見ていますか?」
西沢氏
「年金が大きくなっているんですけれども、先ほど、マクロ経済スライドという言葉を出しましたが、2004年に出た給付抑制の仕組みというものがあります。ほとんど効いていないのですが、それが効いていれば、現在だと、2004年に比べて1割ぐらい減っているはずですね。それがまったく効いていない。今回各政党の公約を見ましたけれども、自民党は年金は何も書いていないです。ですので、本来はマクロ経済スライドをきちんと効かせるというのが最大の至上命題のはずですが、そこにまったく触れていないのが問題で、トータルで見ておそらく対GDPで比較しますと、そんなに大きくはないかもしれないですけれども、年金が極めて大きくなっているのが気になりますね」
反町キャスター
「子供子育て5.5兆円というのはだいたい相場感として、こんなものですか?」
西沢氏
「少ないと思いますね。諸外国と比べましても」
反町キャスター
「片岡さん、この社会保障の支出のバランスをどう感じますか?」
片岡氏
「子育て、それから、教育ですよね。少子高齢化と言われ、子供1人の生産性とか、価値とか、そういったものを上げていかないと、日本全体としてなかなか立ち行くのは難しくなると。そういう状況の中で、日本は諸外国と比べると子育て、それから就学とかいったところに対する公的な関与というのが少ないかなという気がします。現状、1億総活躍プランというのがあって、その中で別途、若年層の方とかお年寄り向けとか、女性の方向けとか、いろいろな形で給付ないしは補助のようなものをやっているわけですよね。ですから、率直に言って、1億総活躍プランの話と社会保障と税の一体改革の中で言われる充実分といったようなところと合算して、どれぐらい国民1人がお得になるのか、それは正しいのかどうかというところがはっきり言ってよくわからなくなっているような気がするんですよね。むしろこうした支出みたいな話を考えた時に、もちろん額には限りがあるわけですから。必要な人にきちんといき渡るような、そういう仕組みを考えていかないとと思うんですけれども、政治の側として、その場しのぎの給付という話を乱発し過ぎていて、率直に言ってどの程度受益期間があって、それに対する負担がいくらなのか。本当に消費税分なのか、そうでないのか。こうしたところが見えにくくなっているというところが、1つの問題かなと思っています」

日本社会は持続可能?
秋元キャスター
「消費税が社会保障財源とされているのは安定性というのが大きな理由ですか?」
神野名誉教授
「そうですね、一般的に言われているのは税収が安定しているということと、それから、一般性と。全ての人々が負担するということから、社会保障財源に適しているだろうと。社会保障というのは、ある時は財源が増える、ある時は減っているということでは困るから、安定的で多くの人が広く負担できるような多収性があり一般性もあると言われる付加価値で消費税が社会保障財源として適していると考えられていますが、欠点があるんですね。逆進性なので。普通はヨーロッパでは逆進性だから、逆進性対策として社会保障財源とする。人々の生活のため、弱者のために使うお金なのだからということで、社会保障財源として認められてきているということになります。ただ、ちょっと正確に言うと付加価値税を目的税にしているという国、議論している国というと日本以外にあまりないですね。充てるということは間違いないのだけれど、目的税というのは支出と収入との充当関係をつくってしまうことなので、日本は目的税ではなく、目的財源化というか、充当するということを総則で謳っているだけです。現在なくなっていますが、道路財源の時にこれは道路しか使えませんよ、道路はこの範囲でやりなさいというような目的税化をしているわけではないです。なので、社会保障の充実、あるいは社会保障のウエイトの大きな財政を支えていくには消費税が適していると考えられると思います」
片岡氏
「消費税と社会保障は、これは長くてよく伸びる紐という感じだと思うんですね。ですから、先ほどの目的税という話ですと、要は、紐づけされているわけですよね。消費税収がかっちり社会保障の指数のいくらかに充当されるという意味で紐づけされているというわけですけれども、先ほど神野先生がおっしゃったように、そこまで明確ではなくて、他の財源とかのようなものも社会保障に実質充てられているので、これ自体は、たとえば1万円札に消費税という印鑑が押してあって、それのみの1万円札しか使ってはいけないという話ではないので。ですから、もちろん紐づけはされているのだけれども、その紐は長く伸びたりとか、短くなったりとか、そういう話になって、悪い言い方をすると、そういった理屈を財政当局が利用したりとか、増税をしないと充実しないとか、そういう話もあるわけですね。そういう言い方というのはまず典型的な悪用の例だと私は思うんですけれども、そうしたところがまず1つです。あと税収の動きを見ていくと、確かに消費税は安定しているんですね。ただ、安定している税収というのは、これが1つの論点としてもっともっと消費税収を上げていく、消費税率を上げていくと、上げていくことで上げた分だけきちんと税収がとれるのかどうかというところははっきり言ってわからないですよね。限界税率という言葉がありますけれども、ある一定の域値を超えるとなかなか税収がとれなくなってしまうと。そういった領域があるので、それは日本の現状の場合どこまでがなのかというところはまず消費税を引き上げるべきだという議論の中において考える必要があると思いますね」
西沢氏
「社会保障では世代間の公平が1つ問題で、高齢者の方にも、一定の負担を負ってもらうといった中で、現在の所得税制は公的年金等控除が非常に手厚くて、なかなか高齢者の方に税負担を負ってもらう体系になっていないですね。そのもとにおいては、消費税というのは広い世代が負担するという意味で好ましいですし、また保険料と比較した時には、保険料は半分が事業所負担で、どうしても正社員賃金課税になっていますので、雇用抑制的に働きかねないです、雇用情勢が悪い時に。しかも、賃金か商品価格転嫁、保険料転嫁しても、消費税と違って輸出免税みたいな仕組みがなく、輸出した時に消費税は戻ってくるのですけれど、社会保険料は何らかに転嫁しないといけないので、輸出競争力を削ぐという意味でも社会保険料と消費税の比較、消費税と所得税の比較の中で、消費税は優れていると思うんですね。せっかく一般消費税、一般というのは全部にかけるから一般であって、軽減税率を入れない、一般消費税という綺麗な形をキープするという前提においては消費税が好ましいと思います」
反町キャスター
「軽減税率みたいなものを加えない方がいいのですか?」
神野名誉教授
「税収の生産性で言えば、明らかです。入れない方がいい。複雑になればなるほど、税収は上がりませんので、効率が悪くなる。軽減税率というのは逆進性対策としては効かないですね。つまり、消費に課税されますので、望ましい消費は軽くして、望ましくない消費を重くするということでしか効かない。ぜいたく品とか、その消費が社会的に好ましくないような消費に重く課税して、生活必需品みたいなものを軽くするということで、複数税率が入ると考えられています。現在言ったようなことは、別に個別消費税と組み合わせてもできるんです。そうした選択肢も考えて、軽減税率の問題等々を考えていく必要があるのかなと」

政治が負うべき責任は? 社会保障と税制改革
秋元キャスター
「過去の政権が増税に苦労した背景をどのように見ていますか?」
神野名誉教授
「そもそも最初の一般消費税を大平内閣が導入した時も、これで社会保障充実の福祉元年とか、そのあとに出てくる充実しますからということで出てくるわけです。日本はこれまで極端に言えばシャウプ勧告で戦後の税制をかけて以来、減税しかやっていないですね。実質増税はやっていない。だいたい税制改革というのは税収中立というのをやって、そうではない時には所得税、法人税が中心的な税制の時には自然増収がありますから、その自然増収分をダウンさせるということで、税負担を引き上げないできた。そのツケが現在まわっていると、普通に考えればそうだと思いますね。おそらく社会保障と税の一体改革が戦後の日本でやった初めての増税という改革ではないかと思います。これをどうするかということに関して言えば、政治の責任であるものの、問題は政治の責任をとるのは誰かというと結果責任は全部国民なんですよね。先送った結果、どんな社会になっているのか、未来になってみないとわからないので、未来のいわば裁判所が裁くということになるわけですが、どんな社会になっても責任は国民がとるのだと。政治がどういう意思決定をしようと。それを国民は認識したうえで、私はあの時無関心でしたとか、いや税負担さえ低ければいいと思ったんですよ、ということを言っても責任は全部自分にかかってくるということを考えていく必要があるかと思います」
西沢氏
「政治が最初、情けないと申し上げましたけれども、今回の社会保障と税の一体改革はもともと菅直人政権で始まって、でも、菅直人首相のメンタリティーが消費税増税とそれまでまったく言っていなかったわけで、言うわけがないだろうなという感じもありましたし、与謝野さんも閣外から招いてきて、野田政権に引き継がれて、結局、借り物の政策だったと思うんですね。財務省が財政に危機感をもちろん、感じますよね。強い正義感のもとに政治を動かして、何とか一体改革という道筋をつけて3党合意に持っていった。けれども民主党政権にしても、確か野田首相は財政危機をお持ちだったと思うのですが、所詮借り物の政策で、自民党にしても衆議院の定数削減と社保一体改革の3党合意で解散してくれるなら合意しようというだけであって、結局我が政策ではない。ですから、2014年の暮れに先送りしましたし、先日また先送りしましたし、自分のやったものではないですから。政治というか、政党としては先送りするのもわかります。財務省にやらされていると思っているので。ですので、政治の責任を問わないといけないですけれど、それは先送りしたということよりも、遡ってそもそも自分達の内なる意識として財政に対する危機とか、高齢化に対する危機として、結構打ち出していないというところが問われるべきだと思うんですよ。」
片岡氏
「お二方の話も確かにその通りだと思うんですけれども、安倍政権として社会保障の財源をどう考えるのか、こういったような話というのは、これは先ほどもお話がありましたけれども、その前の政権からの基本方針が持ち越しになっている状況だと思うんです。ですから、もちろん民主党政権の時に現状の日本経済が現在のような状況になるとあまり思われていなかったと思うんですね。たとえば、税収にしても、国税だけで言うと50兆円強ですけれども、国地方合わせれば90兆円を越えているわけですね。財政状況も何だかんだ言いながらも着実に改善の方向に向かっているのは事実で、これは政治の方針、ないしアベノミクスという経済政策を行ったことによる大きな成果だと思うんですよ。名目成長率が上がってきて、超金利はマイナスのような状況になっていると。ですから、これがずっと続けていけば、当然ながら財政状況は改善していくので、そういう動きが出てきているわけですよね。だから、この動きの中で社会保障と税の一体改革の話というのを安倍政権オリジナルの形に変えていかないといけないのではないかなと思うんですね。ただ、それが出てこないので、たとえば、消費税を2回増税延期しましたとか、そういうような話で、いわゆる社会保障と税の話と、それから、経済政策、もしくは他の成長戦略とか、そういったところに齟齬が生じている。あまりバランスが釣り合ってないなと、そういう印象ありますね」

神野直彦 東京大学名誉教授の提言:『予言の自己成就』
神野名誉教授
「これは、未来はこうなるという風に信じれば信じるほどそうなる確率が高まる。社会心理学の言葉です。つまり、肯定的な未来を描いて、それに向かって努力すればそうなるし、逆のことをすれば逆になる。社会保障税一体改革等々見てもわかりますように、重要なのはどういう社会にしていくのか、それで幸せになれるのかということを問うて、明確なビジョンをつくって、そのあとの道順ですね。道順は状況によって変えざるを得ないのでそれは変えていってもいいですけれども、しかし、少なくともビジョンと目的地、方向性ということを示すことが重要かと思います」

西沢和彦 日本総研調査部上席主任研究員の提言:『自前の政策』
西沢氏
「現在、公約が各党から出ていますけれども、審議会とかで出ているような要望をそこで見受けることが多いですね。たとえば、自民党でも、民進党でも、先ほどあった、年金5000円配ります、みたいな。これは各党から出てきているものではなく、特に民進党は民主党時代に最低保障年金と言ってきて、それは素晴らしいコンセプトだったわけですから、稚拙であっても自分の政党から出てくる政策といったものを国民に訴えてほしいと思いますね」

片岡剛士 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の提言:『痛みを求めるのは早い』
片岡氏
「よく安倍政権のことを安定政権だと、だから、ここで税率が上げられなくてどうするという話があるんですけれども、安倍政権だからこそ今回消費税を延期したと思うんです。経済の足腰をきちんとつけて、増税に負けないような経済状況をつくると。こういったためにやっているということだと理解しています。ですから、今後負担を求めざるを得ない局面というのは2020年代におそらく訪れると思うんですね。そこまではできる限り負担を求めずに景気の状況を安定化させることが大事なのではないかと。中長期的に考えると、そういうことだと思います」