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2016年6月3日(金)
南シナ海…国際包囲網 中国狙う『次の一手』

ゲスト

佐藤正久
自由民主党参議院議員 参議院外交防衛委員長
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー
朱建栄
東洋学園大学教授

南シナ海 国際包囲網 『シャングリラ会合』開幕
松村キャスター
「今日から3日間に渡って開催される第15回アジア安全保障会議、通称シャングリラ会合に、今年もアメリカ、カナダなど、アジア太平洋地域や欧米など21か国の国防大臣や副大臣、30以上の国から専門家などが参加、日本からは中谷防衛大臣が参加します。中国は人民解放軍から孫建国副総参謀長が参加しています。3日間のスケジュールを見てみますと日本は先ほどから、カナダ、インド、シンガポールと2国間の防衛相会談を行っています。タイの首相による基調演説も今日、行われます。明日からは日米、日米韓、日韓などの会談が予定されていて、南シナ海における緊張、これをテーマにした全体会合が明日、行われます。会合は明後日までということですね。佐藤さん、シャングリラ会合のどういうところに注目をしていますか?」
佐藤議員
「南シナ海問題が今回の1番大きなテーマになると思います。南シナ海問題において日米の立場、すなわち中国の大規模、かつ急速な人工島の構築、軍事拠点化というものが国際法違反だという立場と、中国は、これは、いやいや、主権の範囲内だと。この問題は2国間で解決すべきもので、他の国は口を出すなという立場。その日米と中国が、どれだけASEAN(東南アジア諸国連合)とか、あるいはヨーロッパ、韓国という国とどちらが多く連携できるかという部分が1つのポイントではないかと思います」
松村キャスター
「中国にとってこの会議はどのような意味を持っていますか。特に今回は?」
朱教授
「今回の会議はいろんなASEAN諸国の動きでみれば、もはや、かつてはASEAN諸国が主役だったのが現在、アメリカ、日本と中国でそれぞれが多数派工作をやっているんですね。そういう意味で、中小国家というのは冷ややかに当然、自分の利益のために、いろいろ保険をかけてやっているんですけれども、中国はアメリカがここで覇権を求めているところを強調し、中国は周辺諸国に、侵略やいろんな緊張させる意図がないというようなところで、結果的にアメリカと多数派工作で、いろんな国の支持と理解を求めようとしているのではないかなと思います」
佐藤議員
「今回テレビを見ている皆さんにシャングリラ会合を理解していただきたいのは、これは民間の研究所が主催しているんですよ。それもヨーロッパの、イギリスのIISSという研究所が主催しているという部分がミソなので、特に英仏を含めた欧米諸国がどういうコメントを今回出すかというのがこのシャングリラ会合の、今回の1つの見どころかと思っています」
反町キャスター
「佐藤さん、シャングリラ会合の、いろんなメッセージが飛び交う中、最終的に、たとえば、南シナ海における中国のその姿勢は間違っているのかどうか。別に多数決で決めるわけではないですよね、今回のシンガポールにおいては」
佐藤議員
「はい」
反町キャスター
「多数派工作の意味というのがなかなかわからないんですけれど、中国を批判する人が多数になったことで、会議の何がどうなって、どういう声明が出せるか。そういう多数派を持つことによって何かいいことがあるのですか?」
佐藤議員
「自分達の主張に、いかに近い発言を各国にしてもらうかという部分は1つのポイントではないかと。韓国は中国が非常に雰囲気的にも仲良かったという部分が若干、この日米側の方に現在近づきつつあるということで、昨年のシャングリラダイアローグの方で1番ぎりぎりのラインですけれども、この種の問題は国際法に基づいて解決すべきだというラインまでは発言してくれたんですよ」
反町キャスター
「寄ってきた?」
佐藤議員
「やっとそこまで。今年はどこからどこまで踏み込んでくれるかどうかというのがポイントであるように、それぞれの国々がどういう立場で発言をするかという部分が大事だと思っています」
反町キャスター
「いわば踏み絵踏ませるという言い方も変ですけれども、そんな場面であるというような理解でもよろしいですか?」
佐藤議員
「しかも、バイの会談も会議もありますから」
朱教授
「韓国、まさに佐藤さんが指摘するように1つ、中国のポイントでどういう発言をするか。もう1つは現在フィリピンが新しい政権の大統領が誕生するので、今回中国は久しぶりにフィリピンの代表とどこまで会談し、どういう話をするか。それも注目される」

『軍事拠点化』の展望
松村キャスター
「ここからは南シナ海の現状を見ていきますが、こちらはアメリカ国防省が先月13日に公表した年次報告書です。この中に南シナ海の現状が写真付きで示されているんですね。この報告書をもとに南シナ海の現状を大きなパネルにまとめました。中国が急速に埋め立てを進めているのは、スプラトリー諸島で、面積は過去2年間で、およそ13㎢と埋め立て前のおよそ6倍に達しています。また、実効支配を進める、このパラセル諸島。こちらには地対空ミサイルや地対艦ミサイルの拠点を整備。今年5月には無人偵察機、これを配備したとの情報もあります。さらに、こちらにきましてスカボロー礁。こちらでも測量を開始していまして、新たな埋め立てが始まると見られています。この南シナ海の現状をどのように見ていますか?」
小原氏
「中国はまず西沙諸島、パラセル諸島から軍事化を進めてきていると。それで、昨年9月の米中首脳会談では南沙諸島は軍事化しないと、習近平主席が約束したわけですけれども、最近になって言うことが変わってきたと。中国の防衛のための施設の建設は、軍事化ではないということを言い始めたということは、今度はスプラトリー諸島の軍事化が始まる。既にファイアリクロス、これは、3000m級の滑走路もつくったわけですけれど、ここに今年になってまず民間機を試験飛行でおろした。4月には初めて軍用機をおろしたんですね。これはケガ人、病人の搬送だとは言っていますけれど、なぜ軍用機を使ったんだということは、アメリカも非常に懸念を示している。こうして着実に今度はスプラトリー諸島の軍事施設化が始まる。現在、非常に懸念されているのがスカボロー礁です。西沙諸島と南沙諸島だけでは、見ていただければわかるように海南島から直線にしかならないですね。ところが、このスカボロー礁を押さえると、南シナ海を面で押さえることになります。この円はたぶん地対艦ミサイルの400kmで書いてあるのかなと思うのですが、これは地対艦ミサイルのエリア、3つに配備されると、南シナ海がほぼすっぽり収まるということですね」
反町キャスター
「地対艦ミサイルで、要するに、中国の軍事力によって水上艦艇が全て脅威にさらされることになる」
小原氏
「はい。さらにはこの3つ、既に西沙諸島、南沙諸島、この3000mキロ級の滑走路がある。このウッディー島に関しては、中国海軍は既に戦闘機の中継基地として使うということを明言していますから、さらにスプラトリー諸島、万が一、スカボロー礁にもそういうものをつくるということになると、この3つの航空基地の間で相互支援ができるようになる。そうすると、この地域の航空優勢は、あくまで平時ですけれども、中国が優勢になるということになります」

中国『防空識別圏』設定か
反町キャスター
「航空機の運用に関して、関連する情報。先日、香港の新聞の、サウスチャイナ・モーニング・ポストに、こんな記事が出ました。1日付のサウスチャイナ・モーニング・ポストに中国が、南シナ海上空に、南シナ海の上空というのは、この3つの丸のあたりですけれども、中国が、南シナ海上空に防空識別圏を設定する準備をしていると。防空識別圏というのは何ぞやというのをこの番組でも何度か取り上げているんですけれど、違っていたら、ごめんなさい、防空識別圏というのは、領空、いわゆる領海の領空よりも、かなり広い空域に設定をするものであって、防空上から飛行計画を提出せずに、この空域に入る航空機に対して、この場合で言ったら、中国が、南シナ海に防空識別圏を設定した場合、事前に飛行計画を提出せずに、ここの空域に入るような航空機に対して、識別とか証明を求め、場合によっては軍事的な予防措置をとることもできるとする空域にしてしまうということなのですが、そういう理解でよろしいですか?」
小原氏
「はい。ただ、あくまでこれは公の空なので、実は防空識別圏をどこにどう設定をしようが、その国の勝手なわけですね。ただ、その中で、中国が東シナ海に最初、設定をした時に問題だったのは、あたかも領空であるかのように、その中で対処できるようなことを言ったのがおかしいと。あくまで領空侵犯をしそうなものに対してはスクランブルをかけて、まずは予防的にそれを監視するということですし、中国も東シナ海の防空識別圏に関しては、他の国、アメリカや日本が言っているような防空識別圏とほぼ同様な扱いに変えましたので、その部分は問題ない。ただ、識別のためのエリアだと。軍事的な意味合いがあるわけですから、そうすると、他の国に普通は配慮して、考えながら、形というものを考えたりするわけですけれど、それを一方的に周りの国に対する配慮もせずに設定するというのは、非常に挑発的だということは言えます」
反町キャスター
「それはアメリカの国防総省高官が昨日、コメントをしている、『中国が、防空識別圏を宣言することを強く懸念をしている。領有権争いのある空域での宣言は挑発的だ』。これは佐藤さん、領有権争いのある空域での宣言、つまり、南シナ海のこの3つの地域というのは別に中国の領有が国際的に認められたわけでもないのに、その地域において防空識別圏を中国側が勝手に設定をすることは、これは極めて挑発的だと、こういう意味ですよね?」
佐藤議員
「まさに海の上の、排他的経済水域とまったく同じ話ですよ。そこは境界が決まっていないのに、一方的に、排他的経済水域を中国は九段線の中で、領海も含む時に、こうやって自分の許可を取れとか、いろいろ言っていますよね。まさにここも同じように、ここで先ほど、あったように、航空基地をいっぱいつくる、そこに上の方に防空識別圏をつくるということは、沿岸国はたまったものではないですね。自分達の空、あるいは自分達の海だと思っていたのが全部、一方的に自分のものだと。しかも、力、軍事力がこんなにも違いますから。これはすごくアメリカにとっても、自由な海、自由な空がなくなってしまうという懸念があると思いますね」
反町キャスター
「朱さん、いかがですか?この情報、まだあまり心配しなくてもいいという話になるのですか?」
朱教授
「現在それも米中の駆け引きの一環だと思うんですね。現時点で、事実上、2人の専門家がおっしゃるように、中国は防空識別圏を勝手に設定しても、それを支える、あるいは実際にそれを運用する能力はないわけです、現時点で。そういうのを1つのカードとして我々は持っているのだと。アメリカがさらにこの地域にいろんな軍事的な存在を強化すれば、我々はこの対策もあり得るのだと。それをそれぞれ交渉をすると」

米中『軍事バランス』
反町キャスター
「防空識別圏に関してはアメリカが出てくればやると。ここはなかなか理屈として、我々が、中国に対する国際的な批判のトーンを上げなければ、中国は防空識別圏を設定しないのか。どう信用をしたらいいですか?」
朱教授
「中国から見れば、アメリカが最近、南シナ海での軍事的プレゼンスを、相当強化しているわけです。周辺国との軍事協力関係の強化、自らいろんな艦船の出動、あるいは中国近海への偵察。それに対して中国から見れば、最近、軍事化をしているのは、アメリカであって、それに対して我々は結局レーダーぐらいで、我々は本当の軍事力、他の国に脅威を与えるような軍事力を配備しているのかと。それに対してアメリカが圧倒的な軍事力を、現地で運用をしているわけです。中国から見れば、それをアメリカがさらに進めると我々も対抗せざるを得ないと。結局、正直言って、アメリカも中国も互いに軍事面では互いに引けないようなところで、相当激しい駆け引きはしていると思いますね」
佐藤議員
「それは通用しないと思いますよ。まだアメリカが周辺国にいろんな軍事協力を支援しているから、中国はさらにこういう軍事化を島々に強化しないといけないというのは、これは国際社会にとってはとても受け入れられない」

中国『次の一手』は?
松村キャスター
「中国の海洋進出に対しては、アメリカや日本、南シナ海の周辺国は様々な動きを見せています。4月にはフィリピン・クラーク基地に、アメリカがA-10攻撃機を派遣しています。5月10日にはアメリカが3度目の航行の自由作戦を実施。22日から23日にはオバマ大統領がベトナムを訪問しました。ベトナムへの武器輸出を実に41年ぶりに全面解禁すると発表しました。また、G7伊勢志摩サミットですが、ここでは海洋安全保障分野で南シナ海の状況についての懸念が7か国で共有されました。ベトナムに寄港ということなのですが、4月にも海上自衛隊の護衛艦『ありあけ』と『せとぎり』が、ベトナムのカムラン湾に寄港しています。5月29日にも、掃海母艦の『うらが』、掃海艇の『たかしま』がベトナムのカムラン湾に寄港をしています。さらにフィリピン政府が南シナ海に対する中国の主張について、常設仲裁裁判所に提訴した件。7月にも判断が出ると言われています。佐藤さん、このような周辺国の、アメリカと日本の動きをどのように見ていますか?」
佐藤議員
「アメリカと日本に共通するのは沿岸国に対する軍事的な協力を行うと同時にプレゼンスを増やしているという一環ではないかなと思います。ただ、1つは、アメリカの意思が感じられるのは、クラーク基地にA-10という攻撃機を配備したと。そこから飛び立って、先ほど話題になったスカボロー礁、これに対しての偵察行動を行っているんですよ。普通はこれまでは南沙諸島、西沙諸島はP-8と言われるような、普通の哨戒機。武装していないもので警戒監視をやっていたのが、スカボロー礁に対しては、この攻撃機、戦闘機、アタッカー。アタッカーを使って哨戒をしているというのは、スカボロー礁に対する中国の軍事化に対する、極めて威嚇の、アメリカからのメッセージ」

米→ベトナム 武器輸出解禁
反町キャスター
「やったら、やるぞという意味ですか?」
佐藤議員
「スカボロー礁の埋め立てを、すごくアメリカも懸念をしていると。南沙諸島もやられてしまいましたから。現在からなかなか止めようがないでしょう。あそこまできてしまうと。これからスカボロー礁を現在、埋め立ての兆候とか出ているので、そういう点で、アメリカは反応をしています。このコメントにしても、今回のものにしてもそこは大きいなと思います。もう1つ、オバマ大統領がこのサミットに来る前に、ベトナムを訪問して、殺傷兵器を含んだ全ての武器の全面解禁。殺傷兵器も含めた全面解禁ですから、かなり大きなメッセージを中国には与えたのではないのかなと思います」
松村キャスター
「朱さん、こうした各国の動きを中国はどのように見ているのでしょうか?」
朱教授
「大国がまさに、それが先ほど、陣取り合戦も含めて、多数派工作を、日本やアメリカが、フィリピンやベトナムというので、そこへのプレゼンスや支援強化するということをやっているのはその通りですが、私はもうちょっと別の角度で、これらの中小国家自身がどう思っているのか。ベトナムというのは昨年末の指導部の交代で、1番の親米派の首相が降りたんです。もともと親中派と言われるトップがそのまま残っていて。言いたいのはベトナムというのが、したたかな、歴史上で多くの大国に挟まれて、これまでやってきた国です。最大の貿易相手国は中国。同時に社会主義体制。本当にそのまま現在、アメリカを受け入れると体制崩壊です。ですから、そのようなところで、一方、中国への警戒、アメリカ、日本を巻き込む。そのような部分と。現在フィリピンも政権の交代というのがある意味で、中小国家というのは大国をうまく利用をして、それをやると。そのような一面を合わせて見ないと、ただ、そういうような国が日本やアメリカに意思表示をしたから、だから、皆、対中包囲網にこうなったと。そう見るのはちょっと実は逆に利用されているという一面。中国は、だって、これまで北朝鮮に散々そのようにされたのですから」
反町キャスター
「利用されていた。利用されていたと認めます」
朱教授
「いやいや、その通りだと思います。ですから、東南アジアも、そういうことを合わせて見ないといけないと思います」

伊勢志摩『首脳宣言』の効果
反町キャスター
「朱さん、現在サミットの話が出たんですけれども、サミットで、その前の、広島のG7外務大臣会合のおさらいに、ほぼ近い結果だったんですけれど、サミットの首脳宣言、こういう内容になりました。海における法の支配三原則ということで、国際法に基づく主張、力と威圧の不使用、平和的紛争の解決、東シナ海及び南シナ海における状況懸念という文言を入れて、中国という国名は言わないまでも事実上、中国に対して、強い懸念を表明する首脳宣言の内容となっています。対して中国外務省の華春瑩副報道局長は『日本はG7サミットを主催して南シナ海の問題を誇張し、地域の緊張をエスカレートさせようとしている』と。別にこれは日本が他の6か国を騙してとは言いませんけれども、引っ張り込んでと、こういうコメントをまとめたかのような言い方ですけれども」
朱教授
「実はこの三原則について揶揄する声があって、あっこれはそのままアメリカに当てはまるのではないかと。第1、国際法というのは、アメリカは現在でも国際海洋法に加入しようとしない。入れということ。第2に力と威圧というのは現在のアメリカこそがどんどんやっているのではないか。ですから、そういうようなことを言ってみれば、中国も当然圧力を受けるんですけれど、アメリカへの牽制でもありますので、だから、そこの部分が結果的にまだ両方で、今回のG7というのは、中国への、1つの牽制でもあるんですけれども、中国包囲網をつくったということにはならないですよね」
佐藤議員
「それは無理がある。この3つがアメリカへの牽制とは誰もとっていない」
朱教授
「中国でそういう記事が出たんですよ」
佐藤議員
「でも、普通のG7の首脳が合意として、これをアメリカに対してとは、それはちょっとお門違いですし、この3つの1(国際法に基づく主張)、2(力と威圧の不使用)、3(平和的紛争解決)というのは、実は一昨年このシャングリラ会合で総理が演説した内容です。シャングリラのやつが今年の首脳宣言に入ったというのは、これはイギリス、フランス、カナダを含めた、南シナ海、東シナ海、直接安全保障の問題もないような国までが、この必要性というものを認めたという意味は、私は極めて大きいと思います」

常設仲裁裁判所の『判断』
松村キャスター
「仲裁裁判所でどういう判断が出ると思いますか?」
小原氏
「判断はもちろん、フィリピンの主張に近いものが出るのではないかと思いますが、中国側の法律の効力を持たないという言い方が非常に通常でない言い方で、もちろん、仲裁裁判所なので、法的な拘束力、強制力がないです。ところが、そこで出たものは法的根拠になるということですね。仲裁、出たそれに従って、問題は解決されるべきだろうと。ただ、一方で仲裁されたあとの話というのは当事者間ですることになると」
反町キャスター
「仲裁裁判所というのは和解案みたいなものを提示するのですか?」
小原凡司
「はい。そうなると思います。ですから、こうだと言ってそれを強制する機関という国以上のレベルではないわけですね」
佐藤議員
「ただ、国連海洋法条約に基づく裁判によって判断が出るわけです。これは、中国は国連海洋法条約の締約国なので、その判断に従う義務はあるんです。だけど、罰則規定がないから初めからそういう裁判そのものは無効だと言っているだけですけど、不利な判断が出たら、これは国際社会の中では孤立しかねないことになるので、非常に嫌がっていると思いますよ」
反町キャスター
「中国は仲裁裁判所をどういう雰囲気で見ているのですか?」
朱教授
「海洋法というのに明記された、はっきりした条項があって、そのような仲裁とか、受けないこともできると。世界二十数か国、特に国連安保理のG5というのが、アメリカは入っていないし、他の皆そのような声明しているわけですね。最近中国はおっしゃるように実際にもし中国に不利な判決が出ると国際社会で見ていても中国にとって不利なので、最近いろんな中国も宣伝工作をやっているんですけれど、1つはアメリカもイギリスもこれまでこのような仲裁裁判に対して従っていないのではないか。1980年代、ニカローカという中米の国で、まさにハーグの裁判所の仲裁法廷でアメリカに不利な判決が出たんですけど、アメリカは拒否と。それから、南大西洋のフォークランド諸島、国連大陸棚委員会というのが、それはアルゼンチンのものと。それを捨てて、イギリスはそれを拒否。それでアルゼンチンが出兵したわけです。そういうようなことで、私は究極的に、各国とも本当に新しいルールをつくっていくということは望ましいと思うんですけれど、現時点では中国は仲裁裁判というのはアメリカによる対中包囲圏の一環であると」

海自艦ベトナム寄港
村松キャスター
「海自艦のベトナム寄港の狙いは?」
佐藤議員
「日本とベトナムの首脳でも、あるいは防衛相会談でも、お互いの防衛協力というものを今後強化しましょうというラインはあります。特にその中でカムラン湾というのはまさに1つの南シナ海における象徴的な軍港ですから。そこにしっかりこういう形で日本の船が寄港するということにも合意していますから。そういう形で日本のプレゼンス、こういうものをどんどん増やしてくというのは非常に大事だと思います。ただ、掃海母艦とか、掃海艇が入ったから、それは中国にとって脅威かというと、そうではありません」
反町キャスター
「何か特別な意味があるのですか?要するに、護衛艦が入るのと、掃海母艦と掃海艇が入るのは何か意味が違うのですか?」
佐藤議員
「掃海は、これはたまたま向こうもペルシャ湾での国際的な掃海艇、掃海訓練の帰りに寄っただけですから。別にそれに意味があるというわけではないですけれども、今後いろんな形で日本の海上自衛隊の船がカムラン湾に寄るというテンポを高めるというのは非常に私は意味があると。まさに海軍は外交と言われている1つの所以ではないかなと見ています」
反町キャスター
「中国外務省がコメントを出していまして、中国の驚異を念頭に置いた自衛艦のカムラン湾寄港ならば、反対せざるを得ないという。中国としては日本の護衛艦がカムラン湾に寄ったぐらいでは目くじらを立てたりはしないのですか?」
朱教授
「アメリカ大統領のベトナム訪問に比べても、私が感じたところでは日本の牽制の方がきついです、G7のところを含めて。かつて日本は南シナ海を中国のものだと認めていたというようなところと、中国侵略、そのような背景があると思うのですが、実は最近歴史資料を調べたのですが、1938年、昭和13年、当時インドシナはフランスが占領していたんですけれども、そこから西沙諸島に入ろうとした。それに対して日本はフランスに抗議、西沙諸島は明らかにシナ領、中国領である。日本側がフランス軍のインドシナ駐在軍の海軍部長に対して、西沙諸島はフランスと関係があるか。我々が知っている限り関係はないのだと。日本はそれを主張したんです。日本は日中戦争があるので、次に日中戦争の延長でこれを獲ろうというところがその後は理屈になったのだけれども、戦後も日本は日華条約でも、南沙諸島、西沙諸島を放棄した。そのような歴史がある中で、日本が周辺諸国との関係の強化ということであればいいのですが、佐藤さんが先ほど、おっしゃったように、それを通じて日本のプレゼンスの強化、拡大する。そこで対中包囲圏に加わろうとすると、私はそういうことをすると日中関係の脆弱な基盤をさらに崩すことになると。そこは慎重にした方がいいと思います」

今後の日米『対中』連携
反町キャスター
「多数派工作をやるのはいいのだけれども、やった結果、確たるものになるのかどうか。日本はアジアの中で中国との関係をどう進めていけばいいと思いますか?」
佐藤議員
「まさにそういう国は自分の国益に従って動く、これは外交上当たり前です。ただそういう中で、日本は本当にこの経済という分野と安全保障の分野については、本当に我々は地域の安定を願うためにいろいろな形で資金協力とか、あるいはODA(政府開発援助)、あるいは巡視船供与とか、いろんなものに使いながら、我々は別に中国と対立するのではなく、開かれた海、自由な空というものをつくるために協力しますということを粘り強くアメリカと一緒になってやるということが大事だと思います。特に日米同盟というのは、米韓同盟と違ってアジア太平洋、特に東アジアの安定化をはかるという目的もありますから、ここはアメリカと一緒になって、そういう形で粘り強く関係国とそういう外交を進めるということは基本だと思います」

朱建栄 東洋学園大学教授の提言:『アジアの融合の推進役を』
朱教授
「私は日中関係、あるいはアジア全般で見れば、ただの南シナ海というだけではないと。日中、あるいは他の国を含めて、それを巡って、いろいろ互いに主張しながら、妥協点、着地点ということを目指していく。そういう駆け引きが激しいかもしれませんが、同時に忘れてはならないのは日本と中国の間は世界最大規模の貿易相手国、現在人的交流というところで、中国から日本に500万人、600万人来ていて、日本を見ていて、日本に対する印象を良くした。最近では日本と中国は三菱グループのかつての強制労働で歴史的な合意に達したわけですね。共に歴史を越えていくということも含めて、合わせて見ないと。南シナ海だけが日中関係ではないと。そういうところも総合的視点が必要ではないかと思います」

小原凡司 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『各国と共有できる問題認識を』
小原氏
「今日、多数間工作という話もありましたけれど、私は1つの問題についてAかBかをとれと言っているのではない。実は日本が言っていることと中国が主張していることは違うので、それぞれ各国が両方に支持をすると言ったことがあり得るんだ。日本は領土問題を問題にしているわけではないと。ここで何を求めているのかというのは力によって抑えて、秩序を変えるということは許せないですよということを、これを共有しなければならないだろうと。これは他の国だけではなく、中国もそういう問題を話しているのではありませんということをしっかりしなければならない。そうしたうえで日本は、国際秩序は今後どうしていくのかというのをあくまで話し合いで決める。平和的に決めるというのは三原則の中にある通りだと思います」

佐藤正久 自由民主党参議院議員の提言:『◇沿岸国支援強化 ◇プレゼンス拡大』
佐藤議員
「この南シナ海の問題というのは人ごとではないと。日本の当然シーレーンも通っていますし、南シナ海と東シナ海、太平洋と。この3つは一体として考えるべきだと。南シナ海で起きたことが東シナ海で起きないとは誰も言えません。実際に防空識別圏とか、あるいはガス田における海洋政策、そういう中においてであれば、日米連携して、巡視船というものを周辺国、沿岸国に供与することによって、少しでも中国と周辺国の軍事格差というものを埋めて、警戒監視能力というものを強化しないといけませんし、同時に日本の艦艇がカムラン湾港に寄る、あるいはフィリピンの方との共同訓練を含む、そういう形でのプレゼンスを強めていくということが大事。個人的には対話に対する協力の強化という部分はアメリカと一緒だと考えないと。この状況が続けば、いずれ南シナ海から太平洋の方に中国が出る時期も遠くないですから。そういう時に現在の台湾のあの軍備ではとてももちませんから。大事なバシー海峡を一緒に守るためにもこういう関係国との強化というのが大事だと思います」