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2016年5月19日(木)
最先端医療のジレンマ 高コスト化の背景は?

ゲスト

鴨下一郎
自由民主党衆議院議員 元厚生労働副大臣
國頭英夫
日赤医療センター化学療法科部長・医師
西沢和彦
日本総合研究所調査部上席主任研究員

期待のがん新薬 『オプジーボ』とは
秋元キャスター
「まずは國頭さんに聞きたいんですけれども、議論のきっかけとなった高額ながん治療薬『オプジーボ』、これはどういった薬なのでしょうか?」
國頭氏
「薬としては非常に画期的で素晴らしい。これまで治らなかった患者さんが治るかもしれない。実際良くなっている患者さんが多数おられるという薬であります。肺がんの患者さんは全体で13万人、内10万人ちょっとが非小細胞肺がんという、この薬の対象になり得る患者さんなのですが、効きやすい、効きにくいという方がおられて、私は専門が肺がんですが、有効率、効く率というのはだいたい2割か、3割ぐらい。だから、その意味では、さほど高くはない。ただし、効いた患者さんに関しては2、3年、もしくはそれ以上、これまで治る薬はなかったんですけれど、もしかしたらこれは治ったのではないかというところまでいきそうだと。まだ、わかりません」
反町キャスター
「たとえば、良い薬ができましたという話を医者に聞くと、たぶんこういう会話になって、これは良いですね、やりましょうと、こういう話になるではないですか。ところが、國頭さんは財務省の会議に行って、この薬は国を滅ぼすと言った。これはどういうことなのですか?」
國頭氏
「そんな攻められるように言ったかなと。問題は出ましたけれども、コストでありまして。この薬はまず値段がすごく高いです、3500万円。従来の抗がん剤はだいたい1年間使うことはないですけれど、何か月かで、だいたい数十万円オーダーです。これは(1年間使えば)3500万円」

1人年間3500万円…新薬『オプジーボ』の光と影
秋元キャスター
「現在の金額、高額だという話ですけれども、1回の治療で、オプジーボ。およそ133万円です。2週間に1回治療が必要なので、1年間で26回。年間の費用が3500万円になります。ですが、高額療養費制度、医療機関や薬局で支払った金額が一定額を超えた場合、その超えた金額を国が支給するという制度があります。この制度を使うと年収370万円から770万円の人の負担は年間、およそ72万円です。70歳以上の人は、さらに下がっておよそ53万円になりまして、残りは国の負担ということになるわけですね。この高額だという点が、国として心配されている点ですね」
國頭氏
「それがまず1つです。それだけではなく、この薬の場合、残念ながら、現在のところ、誰が効くのか、誰が効かないのか、いまいちはっきりわからない。事前に予測ができないということは、効けば、当たれば、先ほど申し上げたように、もしかしたら治るのではないかというところまでいきますから、論理としては全員にやると。やらざるを得ないですよね。それがわからないわけです」
反町キャスター
「オプジーボが効くか効かないかというのは事前にバッチテストみたいなものでわからないのですか?」
國頭氏
「わからないです。予測ができそうだという論文がこの間、出ましたけれども、こちらの人は効きそうだ、こちらの人は効きそうにないというテストで、効きそうだという人は、だいたい三十何パーセントは効く。効かなそうな人というのは20%弱ぐらいしか効かない。ただし、これは分かれることは分かれるんですけれども、実際に20%弱しか効かない人に、あなた、20%もないから諦めようとは普通は言わないですよね」
反町キャスター
「そうすると、現在10万人と先ほど言われましたけれども…」
國頭氏
「その内、手術で治る人を除くと、7、8万人」
反町キャスター
「その7、8万人に3500万円の薬を使ったら、総額で年間いくらかかるのですか?」
國頭氏
「べら棒な話になります」
反町キャスター
「全部で1兆円を超える医療費の追加支出とか、薬剤、オプジーボだけでもそれだけかかるという話をされていますよね。その金額は先ほど言われた8万人に対して3500万円?」
國頭氏
「5万人に対して、1年間使った時にはそういう計算になるのですが」
反町キャスター
「5万人というのは、どういう根拠から5万人と?」
國頭氏
「そのぐらいではないかなという。患者さんとしては7、8万人の、転移で苦しむ肺がん患者さんがおられるはずでありますから。全員ではないにしても、あれば半分以上使うのかなと」
反町キャスター
「1兆7500億円というのが全体のイメージとしてわきにくいですけれど、これは鴨下さんに聞いた方がいいのかな。1つの薬で年間1兆7500億円というのはべら棒な数字なのですか?」
鴨下議員
「それは、たとえば、社会保障の中の現在、薬剤費全体で国民皆さんが使って約10兆円弱ですから、その中の1割が特にこの薬だけにという話になったらとてつもない話なわけですね。だって、他にあらゆるいろんな薬があるわけです。ですから、もともとのこの薬の薬価の付け方そのものもこういう金額という話がありますけれども、本来的には悪性黒色腫という話だったので、そういうことで、本当にごく少数の患者さんに使うということで、高額な薬価がついているのだけれど、これが肺がんにも効くという話になってきたら、すごく使用する範囲が広がっちゃった」

最先端医療のジレンマ どう向き合う?高額医療
反町キャスター
「薬の値段を決めるのは薬事審でしたか。そこの部分で2年ごとに値段を決める、決めないのところで、たとえば、僕は誰が主張するのか知りませんけれども、年間3500万円は高いから、たとえば、半分、1750万円ですよ。1750万円でやれますかという問いかけを誰かがして、それに対して政府なり、製薬会社なりがそれではダメなので、コストの問題があるので、というやり取りがあったかどうかも含め、たぶんなかったのではないかという、ここはどう見たらいいのですか?」
鴨下議員
「最終的には、中医協で診療報酬全体のバランスをとるわけですね。ですから、そういうところで、本当の意味で、バーゲニングパワーが発揮されたかどうかという話は、私もあまり聞いてはいないので、だから、悪性黒色腫の時に、この値段は合理的だったのかもわかりませんけれど、その後、肺がんに拡大された時に、メーカー、あるいは支払い側も、これじゃあ、とても払えないと、こういうようなことで、薬価を改定するべきだという議論が十分にあったかどうかというのは私も承知していないですけれども、こうなってしまったからには、こういうようなケースというのは、これからも出てくるでしょう。毎年、薬価を改定しろとか、市場規模が広がったら、広がったものに対しては、再裁定をして、その都度、合理的な値段にしていくという話というのは、あって然るべきなのだろうと思います。ただ、トータルで言うと、大きな方向としては、高い薬価、あるいは高い医療費のものがドンドンこれから増えてくる。それは高度先進医療そのものが、お金がかかるわけですから、だから、これは象徴的な話ですけれども、このあとドンドン、そういうのが出てきた時に全部それを保険でカバーしきれるかどうかというのの、1番象徴的な話が今回、出てきたという話なので、この際、根源的なところから、しっかり議論をしておかないと、たぶんこのオプジーボに関しては何とかなるかもわからない。これからいろんな適用を制限するとか、処方するお医者さんをどうコントロールするかとか、こういうような工夫はできるかもわからないけれども、トータルで言うと、いよいよそういう時代に来たなと。保険でカバーしきれない、そういうボリュームの薬がドンドン出てくる。これをどうするかというのはこの際しっかりと議論しておかないと」
反町キャスター
「それは先ほどあったみたいな高額療養費制度。いわゆる3割負担とは言いながらも年間に、月に10万円とか、20万円となった時に8万円で済むとか、10万円で済むとかという。あれは非常にありがたいです、はっきり言えば。あの制度があるからこそ、こういう問題が起きる。ないしはこういう制度を見直さなければいけないという、そういう主旨で言っていますか?」
鴨下議員
「いや、あの制度は非常に良い制度ですし、それから、いざ、本当に病気で困って、1月に何百万円もかかって3割も負担ができない人がたくさんいますから。ですから、そういう意味で言うと、8万円、5万円というような金額を払えば、あとは、ある意味で、免責をされるという。こういうようなことというのは、私は、非常に重要だと思います。特に皆保険の中で、そういうことがあるから皆安心していられるので、先ほどみたいに、3500万円もかかるので、3割負担をしてくださいと言ったなら、1200万円ぐらいかかってしまいますから、到底とても負担できません。ですから、そういう意味で、高額療養費というのは非常に良い制度だけれども、他方、患者さんのコスト意識というような意味においては、1000万円もかかっている病気だけれど、8万円で済んでいるというようなことで、皆さんもそういう治療を受けたいし、お医者さんも、最新の医療をしたいし、そういうようなことで現在は何とか成り立っているけれども、実際にそれを、だって負担しているのは現役世代の人達ですから、そういう人達にとってみると、保険料が徐々に上がっていくという、圧力になっていく。いよいよそういうことを考えないといけない時にきたと思っています」

高額医療と『命のコスト』
秋元キャスター
「技術の進歩で生まれた、画期的な医薬品で救われる命がある一方で、国の財政を左右しかねないという高額医療の問題ですけれど、ここからはどうしたら解決できるのか。たたき台として考えられる解決の方向性を番組で考えました。まず支出を減らす方法としまして、薬剤費の引き下げ、何らかの使用制限を設ける、さらに無駄な投与を減らす。こういうことが考えられると思います。一方で、医療費の原資を増やすという方法については保険料を増やす、それから、自己負担額を増やす、さらに民間の医療保険を活用するなどが挙げられると思うんですけれども」
反町キャスター
「國頭さん、問題提起をされた立場として聞きたいですけれども、どうですか?日本の薬価の決め方というのは問題あるのですか?引き下げる可能性はまだあると感じますか?」
國頭氏
「モノによるのでしょうけれども、オプジーボは、ある程度高いのはしょうがない。先ほど申し上げた通り、開発費も高いし。だけれども、これはどうよと思ったのは、文藝春秋の5月号に、開発した本庶先生が書いておられましたけど、自分もこれは高いと思う、本庶先生ご自身が厚生労働省の外郭団体のPMDAというところの役人さんに、どうしてこんなに高いのとお聞きになったそうです。そこの役人が日本初の薬だから応援しようと思いましてと答えたと。これはちょっとけしからん話で、応援するのだったら、自分の自腹を切ってやるべきであると。要するに、国民の税金を使って応援するということですよね。と言うことは、要するに、国民の税金は国庫に入ったら、俺の金だと思っていないと、この発想は出てこない、この発言は出てこないので。と言うのもちょっと知り合いの開業医の人にどう思うとお聞きしたら、その通りでこれは役人としては、発言としては恥ずべきです。ただし、残念ながら、役人の中には一定の割合で、こういう発言、発想をする人はいますということですね」
反町キャスター
「そうすると、まずコスト計算とか、日本の製薬メーカーを育てるとか、そういう政策次元の話以前の問題として、現在の國頭さんの指摘から言うと、その薬価に対する政府、この場合で言うのだったら、厚労省の一部の団体かもしれません、この部分。薬価を決める時の感覚、マインドがまずそこからおかしいのではないかという、こういう指摘ですか?」
國頭氏
「だから、ちょっと好意的にすると、これは良い薬ですからね、日本から出た薬ですから。たぶん本庶先生、そのうちノーベル賞を獲られるでしょう。皆、舞い上がるんですよね。舞い上がるのはいいですけれども、舞い上がってドンドンお金をという、誰かそこで陰でちょっと引き留めて、せこく計算して、これはさあ、と言う人がいないといけないのではないかと思うんです」
反町キャスター
「それは、鴨下さん、現在みたいな話、どう感じますか?」
鴨下議員
「そのメカニズムは中医協の中で3者構成になっていますから」

薬価引き下げは可能か?
反町キャスター
「今回、2年経っても薬価が、オプジーボの値段が下がらなかったというのはどういう意味なのですか?」
鴨下議員
「だから、それはたぶん保険者の、多少うかつなところはある」
反町キャスター
「この場合の保険者というのは誰のことですか?」
鴨下議員
「たとえば、健康保険組合であるとか」
反町キャスター
「本来だったら、薬価を決める時には、健康保険組合側の方から、この薬が高いから下げてくれと、まず要求ベースが先になるのですか?」
鴨下議員
「薬価そのものに、個別の薬価にそういうような話というのは議論になることというのは、そんなに多くないでしょうけれども、ただ、こういう象徴的な薬については、これはそういう議論があって然るべきだし、医師会の方も、こういうような高額な薬を、このままずっと使い続けるということに対しての疑問というものはもう既にいろんな人達が発言をしていますから。ですから、悪性黒色腫だったら、これで良かったんだけれども、肺がんに普遍化した時には当然、薬価を見直すというのは当たり前の話だと思っていますが、それが迂闊にも今回はできていなかったという、こういうようなことです。1番それで不利益を被るのは健康保険組合だったり、それから、協会健保だったり、国保だったり。こういうところですから。そこは所属しているのは、現役世代の人達が保険料を払っているので、それを代表して、値切りと言いますか、バーゲニングパワーをそこで発揮しなければ、薬価というのはこういうふうに場合によるとPMDAの誰がどういうふうに言ったかというのは、私は確証がないから知りませんけど、日本初の画期的な新薬だから少し色をつけましょうという話がもしあったとすれば、これはとてつもない間違った話。合理的に3者構成の中で決められる話がそういう色をつけるという話とはまったく別の次元の話ですから」
國頭氏
「本来はその役人さんも、PMDAですから、中医協と違って、薬価を決める権限はないはずでありまして。本庶先生にちょっと良い顔をしたかったのだろうと思うんですけれど。実際には薬価の決め方は原価がこのぐらいで、開発がこのぐらいで、何だかんだ利益率というので、この場合、利益率というのは効果とか、副作用とか、何とかかんとかすると、この薬は、くどいようですけれど、良い薬ですから、だから、利益率は史上最高を記録したらしいですが。そういって計算をしたら、このようにボンとなっちゃった。それを機械的にポンとなっちゃった。また、悪性黒色腫と肺がんとでは、量が違って、肺がんの方が倍ぐらい使うんですよね、量を。そうすると、値段も倍になるんですよ、当然のことながら。悪性黒色腫でこのぐらいの値段がついたら同じ量を使うわけではないので、倍になったら倍の値段がついちゃって。と言うわけで機械的にドンドン当てはめていったら、ドンドン膨らんでいっちゃったというようなことですね」
反町キャスター
「西沢さん、救いがない話に聞こえてくるんですけど、どう感じますか?」
西沢氏
「価格決定メカニズムは直さないといけないですね。財政や経済と無関係ではいられないので。それは命をお金にというよりも、資源を有効、適正に配分するという意味で、もしかしたら薬に行き過ぎると、お医者さんや看護師さんの人件費が減って忙しくなる。忙しくなって、注意が散漫になる。何か事故が起こるかもしれないというようなこともあるかもしれませんから。経済や財政と無縁でいられないという頭に切り替えていくという、価格決定メカニズムが、1つ必要ですし、あと現場のお医者さん、患者さんの利用行動を、よく診療所にちょっと風邪で薬を出しておきますねと。おきますねという暫定的な解決な感じが私はいつもしているんですけれども、そうではなく、本当に薬を出さなければいけないのか。あるいはお医者さんが家に帰って、しっかり寝ていろと言えば済む話なのか。患者の方も、薬を出してもらわないとけじめがついた感じがないですよ」
反町キャスター
「いっぱい薬を出してくれたら良い先生だというね」
西沢氏
「そのあたりの行動も変えていかないと。ですから、価格決定メカニズム、我々の行動、お医者さんの行動も変えないといけないかなと思う」

事態打開の処方箋は?
反町キャスター
「日本医師会の横倉会長は『えてして1番いい薬を使おうというのが、これまでの我々だった。しかし、患者さんの状態に応じた形で、どうあるべきかを考える時期に入った』と発言しています。こういう考え方というのは、高額医療の問題の解決策の1つ方策になるものなのですか?」
國頭氏
「オプジーボというのはモデルケースかもしれないですけれども、とにかく1つの病気に対する1つの薬にしかすぎないですよ。次から次からもっといい薬が、もっと高い薬が出てくるんですよ。そうすると、1つの解決策でどうこうということはたぶん無理でありまして、医者の方も親方日の丸に乗っかって、どちらでもいいのだったら、こちらを使うというようなのがあったのですけれど、アメリカのガイドラインを見ますと、効果が同じだったら、安い方を使えと。当たり前のようでありますけれども、なかなか徹底はされていません。メーカーさんの方でも儲けたいところはありますでしょうけれど、何よりも実際の患者さんが使うところ、皆に全部、高額な薬を使ってしまえば、どうなるかという。選別は、本当はしたくないところでありますけれども、してはいけないのかもしれませんけれども、医者がそんなことを考えるべきではないのかもしれませんけれども、だけど、これはもたないでしょう」
反町キャスター
「国の財政が?」
國頭氏
「もたなかったらどうなるかというと、ある日突然、ギリシャみたいになるのではないか。破綻した時にどうなるかというと、この保健医療制度が破綻してしまったなら、ここに薬はあるけれども、全然手が出ないようになりますよね。現在、皆で使おうということは、すなわち次の世代を捨てることとイコールだと。何らかの使用制限を設けると、それは1番やりたくないことではありますけれど、考えなければいけないのではないかなと。今日ネットで愛知県がんセンターの院長先生が、たとえば、高齢者には使わないとか、そういうようなことも考えなければいけないのではないかとおっしゃっていました。私もそう思います。何らかの使用制限を、どうやって設けるかと言うと、年齢は1番公平です」
反町キャスター
「現場の医師の方がこういうこと、国の財政のこと、将来のことをここまで言うということについて、どう受け止めるのですか?」
鴨下議員
「きちんと治療したいという方にはそれなりの負担をすれば受けられるというメカニズムがないと、ある年齢になったら、がんで、根治療法を受け入れられないという話になるのは、世代間の軋轢を生むことにもなるから、ですから、負担のところでコストをしっかりと考えていただくということで…」
反町キャスター
「給付の制限ではなく、負担増で乗り切っていくべきだと?」
鴨下議員
「そこでコントロールするべきだという話で、その時には高い医療でも、自分はこのぐらいの負担をしてもいいけれども、その治療を受けたいという、そういうようなことを否定してはいけないと」
國頭氏
「お聞きしたい。自分はある程度、余裕があるから保険料を高く払って受けたい。その保険料で無一文のお年寄りも同じように受けたいと言って、それも受けられるようにする?」
鴨下議員
「そういうことです。ですから、それはそれぞれ収入の差もあるし、ストックの差もありますから、ただ、そういうようなことで言うと、応分の負担をしていただく人にはより累進を高めていって、その代わりそこである程度出た財源については、皆保険というのはナショナルミニマムだから、ナショナルミニマムのサービスというのはどんなに貧しい人にも希望すれば受けられるようにというのを、崩してはいけないと思います」
國頭氏
「ミニマムとオプティマムがこのぐらい違うとして、こちらの人はオプティマムを目指す、こちらの人はミニマムでいいというようなことには現在なっていないですよ。皆オプティマムを目指している。それが無理だとなった時に、オプティマムとミニマムに分けるのか、それとも現在の公平を別の公平にするのであれば、こうなっちゃいますから」
鴨下議員
「ですから、ミニマムとオプティマムが一緒だと、要するに、適正なものと、最小限のものが一緒だという話ではなくて、適正なものをミニマムに考えて、それを財政的にどういうふうに誰が負担するのかということを考えるべきだと言っているんですよ」

負担増に国民は耐えられる?
秋元キャスター
「ここからは原資を増やすということについて、保険料を増やすのか、自己負担を増やすのかということになると、この2つは現実的な方法なのでしょうか?」
西沢氏
「まだたくさんあると思います。たとえば、高額療養費制度も、フローの収入を基準にしているので、ストックを勘案されていないです。ですから、本当はマイナンバーを使って、金融資産、固定資産を捕捉して、ストックある人からお金をいただくというのもあるし、消費税と言うととかく嫌われがちですけれども、現在も先送りされるかどうかを見ていますが、社会保険料よりも消費税がいいと思っていますね。社会保険は若い人の賃金にかかってくる、雇用税みたいなところがありますから。世代を考えるなら、消費税の方が好ましいと思っていますし、負担を求める方法はたくさんあると思います。負担が求められれば窮屈な議論を少し広げられるんです。負担の議論を正々堂々として、セットで給付の話をしませんとダメだと思いますし、手立てはあると思いますね」
秋元キャスター
「国民にどういう情報を開示して、どういう場で議論をしていくべきだと考えますか?」
鴨下議員
「コストをある程度透明化し、説明して、こういう治療はこれだけかかりますと。それについて、もしそれを支払うとすれば、保険料を上げざるを得ません。あるいは窓口負担を、それなりに応分の負担をしていただかなければいけません。どういうふうにしましょうかという話は問題として投げかける必要があると思う。ただ、そういうようなことで国民の皆さんが選べるかと言ったら、そういうわけではないですし、特に専門性の高い薬だとか、何だとかについて、このくらいのコストがかかりますけれども、先ほどの話ではないですけれども、肺がんも治る方もいれば、治らない方もいるけれども、というようなことになってくると、とても国民の皆さんは選択ができませんから。だから、ある程度、学術団体の然るべき人達がこういう治療については適正な使用法というのは、たとえば、遺伝子でこういうような特性のある人には使ってもいいけれども、そうでない人は差し控えるべきだという、こういう適正使用については厳密にやるべきだと思う。しかし、それでも高度な医療で高額な医療が新規にドンドン参入してきますから、そういうようなことについては、私は限界があると思っています。40兆円の中で、場合によっては新しい治療が入ってきたら、スクラップアンドビルドで、違う治療は薬局で薬を買ってもらうという、こういうふうにしていくところもあるかもわからないけれども、そこだって自分が保険に入っているのは風邪とか、腹痛で、気楽に薬がもらえるから、保険に入っているのだという方がいるかもわからないけれども、いろいろそういう議論をしなければいけない時期に入ってきたと。高度な医療については保険でいくけれど、軽い医療については自助努力でやっていただくとか。こういうことも含めて、様々なメニューを政治も議論しないといけないと思います」
國頭氏
「現在のシステムだと皆がハッピーなんですよ。皆が治療を受けられて、効く人は治るかもしれない。会社も儲かる、実際には病院も儲かるんですね。薬価差益が大きいので。何でこれをわざわざやるのかよということですね。皆ハッピーで何かをいじくろうとすると、誰かの負担が増えるとか、誰かの治療ができなくなるということになります。治療を受けられる人、うまくいく人を最大限にしようとすれば、最大限というのは、残念ながら、現在いる人の中での最大限ではなくて、将来に渡って最大限にしようとすると思えば、現在のこのままでは、どう考えても潰れると。潰れた時に、私はあと10年ぐらいで定年ですから逃げ切れるかもしれない。だけど、次の世代はどうなのだと。私はこういう話を昨年の11月ぐらいからやっていて、いっぺんやめようと思った。いいことは何もないし、嫌われるだけだし、だけど、ここで日本が潰れるのを見ているのかよ、とけしかけた人がいて。日赤の看護学の学生さんをゼミで持っていて、彼女達、彼ら達は非常に真面目で、熱心で、素直で、彼女ら、彼らが1人前のナースになった時に、我々は何を引き継ぐのか。破産した国家と、荒涼とした焼け野原のような医療の現場を引き継ぐのか。さすがにそれは…」

鴨下一郎 自由民主党衆議院議員の提言:『皆保険を守る』
鴨下議員
「あらゆる意味で皆保険を守るためにいろんな工夫が必要だと。だから、負担も増やす、あるいは負担のできる人達はそれなりに応分の負担をしていただく、こういうことをやって最終的に何を守るべきかというと、皆保険でどういう人でも医療が受けられるということを守るために知恵を出す必要がいよいよ出てきたと。こういうふうに思います」

國頭英夫 日赤医療センター化学療法科部長の提言:『自分のこと』
國頭氏
「この話は自分に、私には直接関係はしません。なくても、自分は治療を、医療をしていきます。医者が考えるべきことではないという、ドクターはいっぱいおられます。だけども、これは医者も患者もそうですけれども、自分のことではないかと」

西沢和彦 日本総合研究所調査部上席主任研究員の提言:『私の立場の医師』
西沢氏
「私というのは患者ですね。今日は抽象化されているので話を聞けましたけれど、治癒率が何割と個人で聞き直したら、とても聞けなくて、それが信頼できるお医者さんであっても耐えられないかもしれませんけれども、少なくともそうでないと耐えられないと。こういうお医者さんがいてくださるとありがたいなと思います」