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2016年5月17日(火)
ヘイトスピーチ対策法 現場の痛み国会の悩み

ゲスト

平沢勝栄
自由民主党 差別問題に関する特命委員会委員長 衆議院議員
逢坂誠二
民進党衆議院議員 法務委員会筆頭理事
安田浩一
ジャーナリスト
殷勇基
弁護士

ヘイトスピーチ対策法案成立へ 『差別的言動』なくなるか?
秋元キャスター
「参議院で可決されましたヘイトスピーチ対策法案は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みを推進すること、ということを目的としています。法案ではヘイトスピーチの定義について、『本邦外出身者である事を理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動』としていまして、その例として、『本邦外出身者に対する不当な差別的意識を助長し、又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知する及び著しく侮蔑するなど』となっています。この法律は国や地方公共団体に対して、相談体制の整備や人権教育、そして、啓発活動の充実などを求めるもので、罰則はないとしています。まずは平沢さん、今回の対策法案の意義は何でしょうか?」
平沢議員
「ヘイトスピーチが実態として極めて深刻というか、まったく許せない状態であるということについては皆、認識は一致しているんです。ただ、ヘイトスピーチをどういう形でやめさせるかというのは、言論の自由、あるいは表現の自由とも絡んできますので、極めて慎重に気をつけてやらなければならないんです。例えば1番典型的なのは、本邦外出身者であると、だいたい日本で行われているのは、韓国とか朝鮮の出身者の方、あるいはその子孫の方。その人達に対して、要するに、死ねとか、聞くに堪えない言葉を発しているわけですよね。ただ、これをどういう形でやめさせるのか。たとえば、現場に警察官がいっぱいいます。警察官がそこでそれを聞いていて、これは酷いからやめろと言ったら、これは戦前の治安維持法になっちゃうんです。要するに、事前検閲みたいな形になるわけですね。警察官が中身を聞いて判断でということです。何をもってヘイトスピーチとするかということで、判断でやることになると戦前の治安維持法。たとえば、デモが行われますが、デモの許可というのは内容で判断しちゃいけないんです。これは許可制ですけれど、自動的に全部認めなければならないので。もし条件をつけるとすれば、たとえばこれが交通に大きな障害を及ぼすとか、あるいは極めて警備上支障があるとか、そういう外形的な理由で認めないのはいいですけれども、内容でやってはいけないです。警察は内容で判断をしちゃいけないんです」
反町キャスター
「内容は、戦前と言いましたけれども、たとえば戦前は立会演説会とかで反政府的なスピーチ、演説をやっていると、弁士中止と言っている特高警察とかその関係の人達が止めに入ったりしたではないですか。もしこの形でヘイトスピーチに対して警察が止めに入ったら、それと同じこと?」
平沢議員
「同じことになっちゃうと。ですから、何をもってヘイトスピーチとするかということに絡んできますから、現場で警察官が現場で聞いて、たとえば科学的に一定の騒音のボリューム以上だったなら、これは違反だというのは出てきます。だけど、これはあくまでも内容だけですから。何をもってどういうことを言ったらなるのか。どういうこと言ったらならないのか。警察官がその場で判断して良いのかどうかということになるんです」
反町キャスター
「公然のその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知する及び著しく侮蔑するなどということはしちゃいけないという法律が、このままいくと成立するわけではないですか?」
平沢議員
「これは許さないということで、禁止しているアレではないですよ。ですから、ここが難しいところです」
反町キャスター
「許さないけれども、禁止もしない?」
平沢議員
「禁止というか、規正法ではないんです。あくまでも理念法です。これは許しません、許しちゃいけません。そういう世界を皆でつくりましょうという理念法なんです。禁止をしてはいけないと法律でつくるとするでしょう。そうすると、何をもってという定義をはっきりしなければならない」
秋元キャスター
「でも、定義があるわけですよね?」
平沢議員
「ですから、非常に漠然としていますでしょう。たとえば、現場で殺すと言うのとか、あるいは追い出すとか、いろんな言葉を言った場合、どの言葉を言った時に禁止するのかをはっきりさせなければならない、ということになってきますと、逆にはっきりさせたら、そこから出たものは全部許されるということになってしまう。反対解釈もできるわけですから。ということになると結局、私達の今度の法律というのは今国会で通ると思いますけれど、要するに、こういうことはあってはいけませんよと、許しませんよという理念法であって禁止をしているわけではないです。ですから、罰則もない。皆で協力をして、そういうヘイトスピーチが行われない、そういった社会をつくりましょうと。こういうことです」
逢坂議員
「ヘイトスピーチというのは表現の自由、人権は保証されている観点から言うと、権利の濫用なんですよ、言ってみれば、ある種」
反町キャスター
「濫用とはっきり言い切れるんだったらば、罰則規定あってもいいのではないか?」
逢坂議員
「ただし、権利の濫用だからと言って、この表現の自由というのを、そこまで規制をできるかどうか。表現の自由というのは人権の中でも、非常に優位性の強い人権なので、優越的人権にしなければならないものなので、ここは相当に慎重であるべきですね」
反町キャスター
「安田さん、罰則規定がなかったことについてはどう考えますか?」
安田氏
「罰則規定に関してもともと、私達ヘイトスピーチに反対する側が強く求めてきたという経緯はないわけです。私達は最低限の禁止規定を設けるべきだということを主張してきたわけですね。まずこれは理念法であることには関しては異存ありません。ただし、私達の国の規定として、私達の社会の姿勢として、ヘイトスピーチはまず禁止されるべきものなのだということをきちんと明確に謳うということが、私はいわば魂を入れる、この法案にきちんと骨格をつくるうえでも重要なことだと思っています」
反町キャスター
「理念法でいいというふうに考えですね?」
安田氏
「理念法で構わないと思っています。ただし、その合意がこれまでできていなかったということ、そして理念法がないが故に、根拠がないとして被差別当事者が置いてけぼりを食らっていたということ、また、被差別者の被害が鮮明に、私達の社会の中に響いてなかったということ、さらにはそのスピーチ被害というものを私達が救済する手段を持ちえなかったということ。これが問題なわけですね」
反町キャスター
「附帯決議の、インターネットについての部分があります。『インターネットを通じて行われる本邦外出身者等に対する不当な差別的言動を助長し、又は誘発する行為の解消に向けた取組に関する施策を実施すること』とあります。これは、つまり、街頭で出て行けとか何だと言っているのでなく、ネット上における、この差別的な表現。これはどう具体的にやっていくのですか?」
平沢議員
「具体的に今回の実効性のところから言いますと、実効性がないのではないかと、これは禁止規定ではなくて、理念法で許さないと謳っているだけなので、これはその実効性がないではないかということがよく言われますけれども、私は、それは違うと思います。これは実効性がおおいにあると。何が違うかと言うと、たとえば、これまで警察でもヘイトスピーチとしての概念はまったくなかったわけです。そういう考え方がなかったんです。ですから、ヘイトスピーチがどのぐらい行われたかという統計自体もなかったんです。しかし今回、ヘイトスピーチ対策法という法律ができることによって、警察官に対してヘイトスピーチの教育ができるのだと。それでヘイトスピーチに対する、いわばデモの申請とか何かでもヘイトスピーチというものを捉えた形の統計というのは、これから出てくるだろうと思うんです。要するに、そういう方向に関心が向かいますから。それだけでも全然違います。そして、そういうことを通じてインターネットでもこれまでヘイトスピーチという考えがなかったのを、取り締りというか、この中で違法的なものはないかどうかと、おそらく警察やプロバイダーがやると思いますけれども、法律をつくることによって、当然のことながら関心を向けていく。それは大きな違いだろうと思います」
反町キャスター
「警察やプロバイダーがネット上におけるヘイトスピーチ的な書き込みに対して、何かできるのですか?もともとの本則においては、相談体制の整備や人権教育、啓蒙活動ということが謳ってあるだけであって、インターネット上におけるへイトスピーチ的な表現が出た時に、それを削除するように警察、ないしは公権力の方からプロバイダーなり、その書き込みをした人に対して求める、これは事実上、表現の自由を削るのと同じではないですか?」
平沢議員
「これは視聴者の方はなかなかわかりにくいと思うんですけれど、既存の法律でもいろいろと取り締まりもあるんですよ。たとえば、侮辱罪とか、名誉棄損とか、あるいは脅迫だとか、いろんな法律があるんです。なぜ殺すといっても取り締まれないかと言うと、この取り締まりは特定の個人に対してです。ヘイトスピーチの場合は集団とか、組織、民族に対して言うから取り締まりにならないわけです。しかしヘイトスピーチに関心を持っていれば、これがたとえば、その中で特定の個人に対して、あるいは本邦外の人達にと」
反町キャスター
「インターネットだってそうでしょう。」
平沢議員
「それだったら、取り締まりはできませんが、その中に、たとえば、現在の現行法に触れるところがないかどうかという、そういうところを精査することはできると思います」
反町キャスター
「その意味で言うと、特定の個人に対するものでない限りはインターネット上におけるヘイトスピーチ対策法案の効力というのも、削除をプロバイダーに求めるとか、そういったことができない?」
平沢議員
「できないと思います」
反町キャスター
「本則と同じように啓蒙活動とか、人権教育ということを書き込む人に対するそれはやめた方がいいよという働きかけにとどまる?」
平沢議員
「とどまると思う」
反町キャスター
「ここがあくまでも理念法?」
平沢議員
「そういうことですね」
反町キャスター
「安田さん、ネットの方に関してはどう感じていますか?」
安田氏
「街頭におけるヘイトスピーチばかりが注目されているわけですけれど、街頭に出てきてヘイトスピーチを叫ぶ人達の、いわば畑というのはインターネットなわけです。インターネットの中で飛び交っている、デマを中心としたヘイトスピーチ。これに煽られ、扇動され、それをまともに受けて、そのままインターネットで用いられている文言を何ら段差なく、路上に持ち込んでというのが、現在の路上で行われているヘイトスピーチの内実だと思うわけです。そうした意味において、ネット上のヘイトスピーチというのは深刻な問題ですね。まさにおっしゃったように特定の個人ではなく、あるいは特定の民族とか、特定の集団に対するヘイトスピーチ。これはインターネット上に蔓延しているわけですよ。たとえば、被害当事者、ある特定の国籍を持った人がこれだけ酷いことを言われている、酷い被害を受けているということを警察に持ち込んでも、あるいはプロバイダーに持ち込んでも、なかなか対応が進まなかったという現実があるわけです。これは、逆に平沢さんに伺いたいですね。たとえば、警察に訴えても、民事の案件だから警察としてはどうにも動けない、あるいは個人を特定しているわけではないから、被害届を受けつけることはできないと言われて、警察から帰されてしまった人を私はたくさん知っているわけです。この対応というのは、法令ができることによって、何か変化はあるのでしょうか?」
平沢議員
「ヘイトスピーチに特化した形で、もっとそういったところに警察官が関心を持って真剣に取り組むということは、私は変わると思いますけどね。」
安田氏
「それは、警察としてはそうした書き込み、たとえば、酷い書き込み、いくらでもあるわけですよ。いわばこれを根拠法として、何らかの形で、たとえば、訴訟に何らかの役に立つような、促進させるような動きを警察が見せてくれるということはあるのですか?」
平沢議員
「現行法で何かできないかどうかというのをいろいろと精査をするということはやると思いますけどね」
反町キャスター
「もう1つ、殷さんに聞きたいですけれど、附帯決議でなく附則があるんですよ。『不当な差別的言動に係る取組については、この法律の施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする』と。この附則を殷さん、どのように読み込まれますか?」
殷氏
「まず附則というのは一応、附帯決議とは違って法的拘束力があるんですね。この附則の内容というのは今後施行したあとも法律をつくりっぱなしにしないで、きちんと管理をして、調査して、もしこの法律をつくったけれども、やめさせることができなかった場合はさらに検討すると。とにかくヘイトスピーチが残念なことであるというのは、ここ4人の間でも全然、反対のことを言う人がいませんし、どうやめさせるかだったわけですけれども、1つのポイントは先ほどから出ているように違法とか、禁止ということを入れるべきだったんですね。今回、もし違法とか、禁止というのが入っていれば、たとえば、裁判所を使って差し止めをしたりとすることができたのに、それが残念ながら入らなかったので、下手をするとこの法律はせっかくできたけど、全然使えないもので終わってしまうかもしれない」
反町キャスター
「裁判所が止めることができると言っても、たとえば、ヘイトスピーチを受けた人がすぐに裁判所に訴えて、すぐに裁判官が来て、やめさせるという、そんなクイックな反応はないですよね。裁判所が止めることができるというのはどういうケースなのですか?」
殷氏
「たとえば、数年前の京都の朝鮮学校が襲撃された時、裁判所の決定が出ているのですけれども、何回も何回も繰り返しその団体が押しかけてくるので、学校から半径何百メートル以内は立ち入るなという、そういう判決はあるんですね。そういうのに違法とか入れば使えたし、それから、プロバイダーに民間人が言ったりする時にも削除をしやすくなる。ところが違法というのが入らなかったので、また誤解をする人が出るのではないかと。実際には日本が入っている人種差別条約というのがあるわけですが、そこでは人種差別というのは違法だと宣言されているので、条約というのは当然法的拘束力が日本国内であるわけですね。それは法律よりも上ですよ。その法律より上の条約で人種差別というのは違法だと宣言をされているのに、その下にある法律の方で、いいのではないのかみたいな、下手をすると、何か矛盾しているような法律に今回なっちゃった。それを含め、この附則で今後2年なり、3年なり、よく見て、あまり効果がないのであれば、やめさせることができないのであれば、さらに見直していこうということが法的拘束力として、附則として入ったと」
反町キャスター
「逢坂さんに聞きたいのですけれども、『不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする』。これはどういう思いで加えたのですか?」
逢坂議員
「本邦外出身者、要するに、国内にいる人とか、あるいは適法に在留している、非合法に在留をしていることも含めて、検討を加えようということだと思います。ただし、この附則はちょっと最後の言葉が弱くて、検討が加えられるものとすると。検討しなければならないとか、検討するものとするよりは多少弱いですね、法律の用語としては。若干、これは弱いです」
反町キャスター
「必要に応じ検討する、というように言い切るのと、必要に応じ、検討が加えられるものとすると言うと、加えられるものとするという方が決意が弱いのですか?」
逢坂議員
「弱いです」
反町キャスター
「弱いのですか?平沢さん」
平沢議員
「弱いです」
反町キャスター
「自民党がこの加えられるものとするというのを加えたのですか?」
平沢議員
「いや、そこは私は参議院ではないので関与はしていません。ただ、もともとこれは理念法ですね。理念法にこの附則をつけるというのは極めて異例です。普通、附則はつけないです。だけれども、今回いろんな野党とのやり取りの中で、この法律について、実効性とか、いろんなことがあると言われている。ただ、その一方、表現の自由とか、憲法上の要請もある。その中でどうしようかということで、いろいろやる中で一応やってみて、スタートしてみて、その経過を見ながら万が一の場合にはこういった形を入れておいて、見直しを考えようと」
反町キャスター
「これは何年以内にとかは書いてあるのですか?」
逢坂議員
「本来、こういう附則が入る時は、たとえば、施行後3年以内とか、施行後5年以内にと書くのが普通です。ところが、これは理念法だということもあって、相当無理をして、これを与野党協議の中で入れているものですから、そこまで入っていないということです。だから、非常に漠然とした言葉ではあるんですけど、ただ、この1項目が入ったことで何らかの検討はしなければいけないと」
反町キャスター
「この文言は、理念法が、禁止とか、ダメと踏み込んだ法律に変わる可能性を、ここに見ていいのですか?」
逢坂議員
「否定はしていないですね。ただ、そこは議論ですから」
平沢議員
「これは私達が反対というより、憲法上との規定をどう考えるかということですから、そこは無理だと思います。ただ、大阪市の条例がやったような形で、たとえば審査会をつくって、そこで判断をさせて、ヘイトスピーチだとなったらそれを公開させるとか、あるいは訴訟の時に一部費用を補助するとか、そういった何か別の形での対応ができることはあると思いますけど、基本的なところ、ヘイトスピーチそのものに対する基本的なコアな部分については、これは憲法上の問題ですから、私はできないと思いますよ」

ヘイトスピーチとは何か?
秋元キャスター
「ヘイトスピーチの実態はどういうものなのでしょうか?」
安田氏
「これまでは毎週日本各地のどこかで必ずヘイトスピーチを伴ったデモ、集会、凱旋といったものが行われているんです。数としては減っているし、実際に動員力も落ちてはいます。1回のデモに加わる人数は減ってはいるわけですね。とはいえ、それはヘイトスピーチがなくなったとか、ヘイトスピーチに対する関心が高まっただけではなく、いわば分散化しているということ。ネット上でそれを支援し、ネットでそれを見て新たにデモに加わる人も決して少なくはないわけです。ですから、こうした路上における状況というのは未だ深刻なものが続いていると。先ほどおっしゃった通り、インターネットにおいて様々な情報が、デマが流れ、他者への憎悪を煽る。言ってみれば、マイノリティーに対する人権侵害、差別先導表現なわけです、ヘイトスピーチというのは。そうしたネガティブキャンペーンというものは常時行われているわけです。それに煽られた人々がネットに、路上に、様々なところに飛び出していく状況は昔とほとんど変わっていない。変わった状況はあるんですよ。差別者が変わったのではなく、差別者を取り巻く環境が変わってきた。今回のこの法案だって、何で法案ができたかというのは様々な経緯はあるにせよ、社会的な圧力はあったわけです。これはいけないのだとする人々が多く立ち上がっていると。多くの人が批判の目を向けている。この差別に対して何らかの形で対抗していこうという動きがある。そういう人が、議論を押し上げたということはあるかもしれませんけれど、ただ、現実の状況として未だにそうした団体が分散化しながら、人数は減らしながら、動員力は落としながらも各地でデモをやっている状況に変わりはないということだと思います」
反町キャスター
「デモの中で言われる特権というものは実際にあるのですか?」
平沢議員
「在日特権というのは、日本が戦争に負けて、その時に朝鮮半島とか台湾を植民地にしていて、その国の人達が日本に当然おられて、朝鮮の在外の方は確か200万人ぐらいおられて、そのうち150万人の方は帰られたんです。ところが、50万人の方は日本に残られて、それでその残られた方、その子孫の方々には特権が与えられているんです。その特権は、たとえば、籍は外国籍、韓国籍ですけれど、再入国だとか、あるいはパスポートは外国人でありながら、外国人登録書を常時携帯しなくてもいいとか、いろんな特権が与えられているんです。そのことを言っているのだろうと思いますけれども、これは戦争の時の経緯からして、私達は特権とは全然思っていません。これは当然、私達は与えなければならないものであって、特権でも何でもない。ところが、デモしている人達はそれが特権だ、特権だということを言っているわけです」

世界のヘイトスピーチ対策
秋元キャスター
「表現の自由と規制の兼ねあいについて、日本の法曹界はどのように考えているのでしょうか?」
殷氏
「日本の法曹界はもともとは国会議員のお二人のようなご意見が強かった。基本的に表現の自由はすごく大事なので、規制は難しいのではないかと」
反町キャスター
「各国のヘイトスピーチ規制というのはちょっと踏み込み過ぎで、そこまでとてもいけない雰囲気だったのですか?」
殷氏
「というか、そういう実態があることが知られていなかったんです。この問題が起こってから、各国を調べてみたら、実際には各国規制しているのがわかったわけですけど、それまではあまり関心がなかったので」
反町キャスター
「全てはこの2、3年の間で急激に日本の中でも、海外からの指摘やら法曹界の認識やらもきている話だと、こういう理解でいいのですか?」
殷氏
「2009年ぐらいからです。2009年にそういう襲撃事件というのがあったんですね。右翼団体で外に出て、学校を襲撃したとか。それから、問題ではないかという話になったけれども、それをアメリカは全然規制してないではないかという話になった。しかし学者さん達がいろいろ調べていくと、実際にはアメリカが特殊なのではないかと。」
反町キャスター
「アメリカはヘイトスピーチは規制しないけれども、ヘイトクライムを規制するというのは、どう理解したらいいのですか?」
殷氏
「ヘイトスピーチとヘイトクライムと公民権法という3つの法規制があります。ヘイトスピーチはアメリカでも1960年ぐらいまでは規制されていたのですが、ちょっと考え方が変わって。実際の事例では黒人の議員に十字架を立てて火をつけるんですね。それは脅迫ですけれどそれは我慢しろと、判例がひっくり返った。ただ同じ事例でややこしいのですが、アメリカの最高裁の判決で十字架に火をつけたけれど、それは規制していいという矛盾した判決が2つある。ヘイトクライムというのは人を殴ったり、モノを壊したりしたときに、人種差別が動機に入っている時には刑が重くなるということ。ヘイトスピーチともちょっと違うんです、実際に手が出ている。新大久保の事例は結構、蹴ったり、殴ったりもしていますから、それはヘイトクライムでもあったと。公民権法というのは人を人種差別を理由にクビにするとか、労働上で不利益を与えるとかすると、法的規制を受けると。法的規制と言っても刑事か民事だけではなく、いろいろバリエーションがあるということが、この5、6年調べてみるとよくわかってきた。かつヨーロッパでは基本的に全部規制をしていて、ヨーロッパのヘイトスピーチの定義というのは基本的に今回の与党案の定義とほぼ一緒です。だいたい定義はできている」
反町キャスター
「ヨーロッパも理念法なのですか?」
殷氏
「ヨーロッパは、刑罰はあるけれども、ほとんど発動していない。しかし民事規制を超えて刑事規制まで行っている。」

部落差別解消へ新法案 成立への進捗状況は?
秋元キャスター
「この時期にこの法案をまとめたのは?」
平沢議員
「私は現在、自民党の差別問題に関する特別委員会の委員長をやっているのですが、差別にはいろいろありまして、ヘイトスピーチに特化した形で1つの法律を出していますけれども、もう1つは部落、この法律も現在出しているわけで。なぜこの法律を出しているかというと、部落差別はこれまで同和の法律とか、地域改善対策の法律とかはあったんですけれども、これが全部なくなって現在、根拠法がなくなった。しかし現実に差別がなくなっているかというと、いろいろ聞いてみると、関東とかこちらの方ではそれほど意識しないんですけれども、関西の方、あるいは関西から以西の出身の国会議員から、地域によってこういった根拠法を是非つくってほしいという声がかなり強くありました。地域差がかなりあるわけです。ですから、そういう地域の方、特に関西以西の方のそういった声を聞きまして、それで何とか法律をつくろうと。しかし、これもちょっとヘイトスピーチと同じで、あまり踏み出しちゃいますとこれは憲法の問題が出てきますので、あくまでも理念法にしようということで、理念法でこういった差別があってはならないということにして、教育とか、啓発とか、相談対策の充実と。こういった形での法律を現在、国会に出そうということです」

平沢勝栄 自由民主党 差別問題に関する特命委員長の提言:『ユーモアの心を持つこと』
平沢議員
「イギリスの警察官の募集広告は、ロンドン警視庁はユーモアのある警察官を求むと。ユーモアのある警察官というのはどういう人かと聞いたんです。それは心に余裕のある人だと。要するに、自動車のハンドルの遊びみたいなものがなかったら人間はダメだということです。ですから、現在ヘイトスピーチでギスギスし、いがみ合っていますが、ユーモアの心を、心の余裕、自動車のハンドルの遊び、これを是非持ってもらいたいなと思います」

逢坂誠二 民進党衆議院議員 法務委員会筆頭理事の提言:『心』
逢坂議員
「心に余裕がないと、この問題は対応できない。ピンポイントで物事だけを見ていると、どうしてもあいつはおかしいとか、これはおかしいという気持ちになっちゃうので、心に余裕を持ってやるということ。その意味で啓発とか、教育とか、そういうのが大事だということです。心です」

ジャーナリスト 安田浩一氏の提言:『法に魂を入れる』
安田氏
「法律ができて終わりではないということですね。この法律に魂を入れるのは、私達であり、日本社会であるということ。ヘイトスピーチがなぜダメかと言うと、そこに被害者が必ず生まれるからです。被害が生まれるということは、人間の心を壊す、人間を壊す、地域を壊す、社会を壊すんです。私達は社会を守るために、社会を壊さないためにこそヘイトスピーチに反対しなければならない。今回は理念法です。その理念を皆でまずは共有しましょう。差別は人を壊します。地域を壊す、社会を壊す。私達は社会を壊さないために、この法律に私達社会が魂を入れて、被害をなくす。そうした理念を共有したいと思っています」

弁護士 殷勇基氏の提言:『個人通報』
殷氏
「先進国の人種差別の順位なのですが、1位カナダ、2位アメリカ、日本は先進国の38か国中37位。結局、先進国はどこでも法的に規制はしています。ただ法的規制は一通りではないので、何通りもあると思います。啓発とか、教育も大事だと思いますが、法的に規制しないと心だけではなくならないというのが、どこの先進国でも共通していると思います。法制度の中で1つというと個人通報制度というのが国連の方にあるのですけれども、国連の個人通報制度にすると、条約を国連機関がそのまま審査しますので、もう少し人種差別はダメですよという、日本が入っている条約に魂が入ることになるのではないかと思います」