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2016年5月16日(月)
オバマの夢・広島の夢 核なき世界理想と現実

ゲスト

湯崎英彦
広島県知事
岡本行夫
外交評論家
神保謙
慶応義塾大学准教授

オバマ大統領 広島訪問へ 初『現職米大統領』訪問の意義
秋元キャスター
「5月10日に発表されましたアメリカのオバマ大統領の広島訪問ですが、5月26日から27日にかけて開催されるG7伊勢志摩サミットに出席し、27日のサミット終了後に安倍首相と共に広島を訪れる予定になっています。広島では平和記念公園訪問や、原爆資料館などの視察などが検討されています。今回のオバマ大統領の広島訪問に関して、ライス大統領補佐官は『第二次世界大戦の全犠牲者への追悼と核なき世界への取り組みを訴えるのが目的』と。『興味深いことに日本は謝罪を求めていないし、私達はどちらにしても謝罪しない。被爆者との面会は時間の制約があり難しい』と発表しています。また、安倍首相は今回の訪問決定を受けまして、『原爆や戦争を恨まず、人の中に巣くう争う心と決別する、そのような歴史的な訪問としなければならない』としています。まず岡本さん、現職のアメリカ大統領が初めて被爆地である広島を訪問することになりましたが、今回の発表をどう受け止められましたか?」
岡本氏
「歴史的なことで、とても素晴らしいことではないですか。こうやって一歩一歩、両国の間の、心のわだかまりを解いていく。オバマ大統領が来て、犠牲者に心からの哀悼の意を捧げるわけですから。日本の総理大臣もいつか我々が攻め込んだ真珠湾、アリゾナ記念碑へ、そこには行っていないですよね、日本の総理大臣もそこへ行けるようになってほしいし、少しずつこうやって両国のわだかまりが解けていくことを願います。だって、まだ70年経っても残っていますからね。それを本当に希望します」
神保准教授
「2009年の4月にプラハ演説で核兵器のない世界という目標を標榜してから、もう7年経つわけですけれども、ここ数年の核軍縮の歩みというのは停滞していたと思うんですね。昨年のNPT(核拡散防止条約)の再検討会議も事実上、最終合意ができず決裂してしまいましたし、北東アジアにおける核拡散の状況というのも必ずしも良い状況ではないという中で、オバマ大統領が7年前のアジェンダに戻って、広島に訪問し核軍縮の歩みを再び印象づけるという意味では大変重要なステップになるのではないかと思います」

広島県の受け止めは?
秋元キャスター
「湯崎さん、広島ではどのように受け止められているのですか?」
湯崎広島県知事
「率直に言って、我々は歓迎したいと思っていますし、多くの人がそう感じているのではないかなと思います。もちろん、被爆者の中には、いろんな感情とか、気持ちもあると思うんですけれど、多くの方々はそれを乗り越えて、核兵器の廃絶という、2度と誰にもこういう思いをさせたくないという気持ちが非常に強く持っておられますので、そういう気持ちから、皆さん、歓迎されていると思いますね」
反町キャスター
「謝罪は求めないのですか?」
湯崎広島県知事
「そうですね。先ほども申し上げたように、いろんな気持ちは正直あると思います。しかし、それをグッと我慢をしても、この核兵器廃絶に向けた動きが前に進むのであれば、それを求めていきたいというご意見が多いのではないかなと思いますね」
反町キャスター
「被爆者の皆さんの中でもいろいろな意見があると思うんですけれども、いわゆる軍人相手の攻撃ではなくて一般市民の大量虐殺、一発でということを考えた時に、そこに何らかの謝罪を求める。要するに国レベルで、たとえば総理がこれは国と国、ないしはグローバルアジェンダとして非核の話、反核の話を盛り上げていきたいということから言えば、広島に対して、今回はすまないけれども、謝罪はちょっと我慢をしてくれと、こう言ってというのならうーんという部分があっても、その部分においての70年経ってからというところにおける乗り越え方がまだ少なくとも僕には見えにくい部分もあるんですけれども、そこは、葛藤はないのですか?」
湯崎広島県知事
「もちろん、原爆が落とされてから、その直後、何回かに渡って、たとえば、手記を皆さん集めるとか、いろんなことをしていますね。調査もされていますし。投下直後はアメリカを恨む気持ちというのが非常に強いものがありました。これが戦後、だんだんと時間が経っていく中でアメリカを恨む、原爆を落とした人を恨むという気持ちから先ほど申し上げたような2度とそういう想いをさせたくないと。そのために何が必要なのだというところに被爆者の気持ちというもの、あるいは被爆者の方々の考え方というものの多くが昇華されていった部分があるんですね。そういう70年、71年の時を経た変化というものもあると思いますし、頭の中で考えても現在オバマ大統領がこうやって、世界の核兵器のない世界による平和というのを実現していくということを公に言っているわけですよね。そこに対する期待、それをもっと進めてほしいという期待です。これは大きなものがあると思います」

『謝罪』をめぐる日米の想い
反町キャスター
「原爆投下に対するアメリカ世論の評価。時系列で辿っていくと、終戦直後、1945年には正当だったというのが85%。1995年、20年前には正当だったというのが59%。それで昨年の段階で正当だったというのが56%。原爆投下が正当だったという人が徐々に、データとして減っているということと。いつの日かアメリカが原爆投下に対して日本に謝罪する時が来るかもしれない。別にそれを待っている意味ではないですけれども、そんな感触も持つ。そういう理解でよろしいのですか?」
岡本氏
「シニア層の間では正当だったという人が70%です、現在ね。これは平均値ですからね。若い人は40%台。47%ですよ。ですから、若い人達は既に自分達がやったことに対して批判的に見ているわけですね。時間が経てば、もっとそうなっていくでしょう。だって、誰が考えたって核兵器を人間に対いて用いるということは良くないことだという、それは常識的な感覚の方が強くなっていくと思いますよ」
反町キャスター
「それまでは一般市民大量殺害と、軍人と軍人の間の戦いというものの、その区別とか、そこをグジグジ言うというのはあまり得策ではないと、こう思った方がよろしいのですか?おそらくは」
岡本氏
「戦争の全ての総括を総ざらいしてやらなければいけませんから、それはまだ、そこまで両国の国民感情も70年経っても成熟していないと思いますし。それから、中国との関係どうなるのか、韓国との関係どうなるのかということになってきますし。まずアメリカの大統領が広島に行き、ここで心からの哀悼の意を表する。実際にあそこへ来て、そこで大きな想いを持って帰るというのは、これは核政策に対する方向性が変わることにもつながっていくと思います」
反町キャスター
「今回のオバマ大統領、現在のところ、僕らが聞いているところでは、被爆者との面会は行われない見通しだと聞いています。それについては直接の謝罪はないにしても、たとえば、被爆者と言葉を交わす、言葉を交わしたら謝罪になっちゃうのですか?」
湯崎広島県知事
「我々が期待しているのは、これは外務省にも、アメリカ側にも伝えているところですけれども、資料館の訪問と献花ですね。それから、被爆者の証言を聞く。それから、スピーチ。これは7年前のプラハ演説からの、どういう形になるか別として、現在、停滞している核軍縮、核兵器廃絶に向けた動きを、さらに前に動かしていくような、そういうスピーチをしていただきたいなと思っています。そういう中の一環として被爆者とは会っていただければなと思います」

『核なき世界』理想と現実
秋元キャスター
「オバマ大統領は就任当初から核廃絶を訴えてきました。その取り組みについて見ていきたいと思います。2009年チェコの首都プラハで演説を行い、『核兵器のない平和で安全な世界を追及する』『敵国を抑止するため、効果的な保有量は維持する』『安全保障戦略上、核兵器の役割を小さくする』『核弾頭を減らすためロシアと交渉を進める』ということなど核なき世界を訴えまして、この年、オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞しました。さらに核セキュリティサミットの提唱、開催。2018年までにアメリカとロシアで戦略核を30%削減するという、米ロ戦略兵器削減条約、新STARTの発効。さらにはイランの核開発に歯止めをかけたイラン核合意など。核軍縮、核廃絶を目指して、国際社会に働きかけてきています」
神保准教授
「2007、2008年ぐらいですね。ブッシュ政権後期からオバマ政権に移行する過程の中で核兵器の役割がアメリカの安全保障政策の中で低下してきているというのは、実は共和党、民主党をまたぐ、超党派的な理解になってきたのだと思います。当時有名なのは、ヘンリー・キッシンジャーとか、ウィリアム・ペリーを中心とする歴代の国務、国防長官が共同でオピニオンを出して、核兵器は将来廃絶するべきであるということを出した、非常に象徴的な運動が実は大統領選を支えて、当時のオバマ氏と共和党のマケイン氏も、両方の将来は核兵器を廃絶するべきだという理解がアメリカでアジェンダとして成立したという画期的な年だったと思います。それは当然、核兵器のメンテナンスコストが非常に大きく、現代の通常戦力が極めて発達して世の中がこんなことにお金を使うというような理解が膨らんできた。それは軍人の中にもあるわけですよね。それと、9.11の影響というのが非常に大きかったと思います。世界大の反テロ戦略をやらなければいけない世の中において核兵器で対テロ戦略はできませんから。新しい技術を導入して、より小さな敵にどのような形で適応させるかという、資源の配分の要素が非常に大きかった。だから、決して核をなくすべきだという理想主義だけではなくて、現実的な安全保障戦略の中でも、核兵器の比重を減らすべきだというのが理解として成熟したというのが、当時のアメリカの状況だったと思います」
反町キャスター
「と、神保さんは言いますけれども、アメリカの核兵器関連予算、これは明らかに2016年までにかけてどんどん増えてきて、現在は88.5億ドル、ほぼ1兆円、9000億円強ですね。これは、右肩で下がってきているのであれば現在の話、わかるのですが、明らかに右肩上がりになっている。この状況を考えると、オバマ大統領の非核の話とか聞いていると、下劣な言い方ですと、口先だけでそう言いながら軍拡しているではないかという話と、まさに国を挙げてアメリカは先ほど言われたように国防長官の様々なコメントがありながらも、核兵器関連予算を増やしているではないですか、ここはどう感じていますか?」
神保准教授
「これがエネルギー省の資料ですと、おそらくメンテナンスが中心だと思うんですけれど、オバマ政権はこの新規の核開発というのを基本的にはしないと。いくつか例外があるのですけれど、その代わりいくつか老朽化している様々なプラットフォームをメンテナンスするコストというのはどんどん増えていくということだと思うので、当然、これが実際のインフラも含めて減っていけば、将来的には母数が減ってくるかもしれないですけれども、現在の段階ではこれだけの予算がかかっているということだと思いますね。大事なのはオバマ氏のこのプラハの演説というのは遠い将来にはもちろん、核のない世界を目指しますけれども、ところが、核兵器が存在をしている間は、効果的な抑止力を維持するという方針とセットですね。ですから、効果的な抑止力を維持するというのは当然、そこにメンテナンスコストがかかるわけでありまして、そういったところで判断すると、この核兵器廃絶の長い道のりというのは、核兵器の実際の抑止力維持というのと両輪で成り立っているという理解が正確だと思いますね」
反町キャスター
「難しいですね。何ですか、核の抑止力を使いながら、核軍縮をはかるという意味ですか?」
神保准教授
「実際には、これは荒野のガンマンみたいに、実際には撃つ準備をしながら、あとずさりして距離をとっていかないと安全が保てないと同時に、ピストルを出すわけにはいかないわけなので、実際、いざとなったら撃てるという状況を維持したまま、軍縮を行うというのが実は核軍縮論の本質なのだと思いますね」

世界の『核兵器』の現状
反町キャスター
「神保さん、アメリカが現在7500発を維持するために、年間9000億円を使っている。ロシアも同じぐらいの数を持っていて、ロシアが同じクオリティでメンテナンスをしているかどうか、たぶん違うのでしょう。ただ、莫大な、維持だけでもそれだけのお金がかかっている。ロシアというのは、国家予算、アメリカと比べて時に何分の1かになるわけで、あの国でそれだけの7500発以上の核の管理、安全で適正な管理ができているかどうか、僕にはすごく心配ですけれど、そこはどう見ていますか?」
神保准教授
「現在、実は逆の現象が起っていて、かつては冷戦期、通常戦力で言うと、西側の方が東より劣っていたわけです。つまり、東側の大戦車軍団、歩兵軍団というのは、東側のソ連と旧中東諸国というのは、NATO(北大西洋条約機構)諸国よりも、通常戦力で優位に立っていたわけですね。かつてはNATOが核兵器の第1撃の使用をもって、それで相殺するという戦略をとっていて、現在は逆の立場で、ロシアの方が圧倒的にNATOの通常戦力で劣るものをどう相殺をしようかというところで、核戦力の柔軟利用化というドクトリンを、積極的に採用しているわけです。従って、どうして米ロの核削減が進まないか。その最大の原因はロシアにあって、ロシアが現在の1550から下げていくということに対して、極めて消極的だということになるわけですね。従って、なかなかこの数字が落ちてこないということは、そういう背景があるということです」
反町キャスター
「岡本さん、ロシアが核を手放したがらない状況。ここから先、どこまで減らしていけるかという部分で非常に難しいのではないかという印象を、僕は受けたのですけれども、どう見ていますか?」
岡本氏
「ロシアは一時期、1550より下まわっていました。現在また増やしてきていますね、少しですけれどね。ロシアにしてみれば思った以上にNATOの結束というのは強くて、自分達とNATOとの間の緩衝国もなくなってきた。ウクライナ、彼らにNATOに行かれたら自分達の下腹に匕首を突きつけられる格好になるから、あれだけウクライナにチョッカイを出し、自分達のところへ取り込もうとしているわけですけれど。明らかにソ連邦からロシア共和国になってしまって、自分達の戦略的重視性というか、緩衝地帯がNATOとの間で少なくなってきていることに対する彼らの危機意識というのはだんだん強くなってきています。そこへナショナリズムがプーチン氏を押しているわけでしょう。ですから、彼らの方から現在この人道的な理念に基づいて、核削減をしようという気にはなかなかならないのでしょうね。やったって、自分達が得るものがないですよと。どうせまた中央アジアを自分達が譲ったところで、必ず西側が、旧西側が攻め込んでくるのではないか。攻め込むというのは政治的にね。だから、もうこれ以上一歩も下がれないというのが現在、プーチン氏を捉えている意識だと思いますよ」
反町キャスター
「湯崎さん、どうですか?これまで世界の核の状況。実際こういう話ではないかという話を聞いてきました。どんなふうに感じますか?」
湯崎広島県知事
「まさに現在、核軍縮、廃絶と軍縮がありますけれど、軍縮という観点から米ロが中心で様々な国際情勢が、アメリカ側から見ても今回のクリミアの問題とか、そういうことから核軍縮を進めていこうという力が、なかなかかけられないような状況になっているんだと思うんですね。だからこそ、あらためて今回のオバマ大統領のメッセージ性であるとか、シンボル性というのは重要になってくると思います。その中で考えていかなければいけないのは、それこそヨーロッパにおける通常戦力との関係とか、そういうものもあるわけですよね。でも具体的にアメリカとしてもこれをさらに進めるあるいはヨーロッパや、日本や非核兵器国を含めて、どうすればロシアがそういうつもりになれるのかということを真剣に考えていくということですね。考えているだけでもダメで、それを実行に移していかなければならないと思うんですね。そこの根底には、たとえば、安全保障の問題もあるわけで、その中で通常の兵力でのアンバランス、あるいは通常の抑止力ということが問題なのであれば、それをどういうふうに考えていくのか、実践していくのか、あるいはミサイル防衛の問題もありますよね。本当に真剣にどういうふうにそういうものを管理してくべきなのかと。西側だけで現在、進んでいるのもありますけれども、それをロシアとの関係でどう扱っていくのかというのを、そういうことを含め、真剣に議論というのか、ソリューションを見つけるために力を合わせていくべきだと思いますね」

『核の傘』による抑止
秋元キャスター
「トランプ氏は、『米国は日韓の防衛に莫大な労力、エネルギー、兵器を投じている。かかった費用は返済してもらいたい』『(北朝鮮の核・ミサイル開発に対して)もしアメリカに適切に対処しなければ、どうなるのかわかるだろう。日韓は自力で防衛しなければならなくなる』と。CNNのインタビューに答えているのですが、トランプ氏のこの発言をどう見ていますか?」
岡本氏
「まったく無知から言っているわけで、現在の段階でそんなに深刻に捉えなくていいのかなと思います。つまり、日本に兵隊さんを派遣しているから自分達は多大な財政的な負担を背負っている、本当は日本が接受国支援と言いますけれど、思いやり予算とか、いろいろな在日米軍経費を持っていることによって、アメリカは自国に部隊を置くよりも日本に置いておく方が安く済むんですね。だから、日本から引き揚げれば、余計にもっとコストがかかります。日本がどのぐらいのお金を負担しているかというのを彼は知らないでしょう。現在の段階では彼の周りにろくなアドバイザーもいないし、第一あんなことを言えば、最初に反対するのはアメリカの国防関係者、それから、軍ですよ。日米安保体制というのは日本にとってもちろん、メリットがあるけれど、同じようにアメリカにとってもメリットがあるわけです。部隊が安定的にここに居られるからアメリカは日本をベースに西太平洋全域からインド洋まで第七艦隊なんかがカバーすることができるわけですからね。トランプ氏のような乱暴な発言によって、我々も核武装するのかとか、国内で議論がいろいろ出ることは、私は決して悪いことではないと思います。もう1度、基本的に考え直すと。もちろん、核武装というのは日本で通るわけもないですけれども、ただアメリカでそういう極論が出てきた時に日本がどう対応するのかという、考え方のトレーニングになると思いますね」
神保准教授
「私は岡本さんほどまだ楽観的になれなくて、最近のロイター等の世論調査でも本選におけるヒラリー・クリントン氏との勝負においてトランプ氏の数字が悪くないという調査が幾つか出始めてきて、かつアメリカも人口が増えて、様々な形で中間所得層層と低所得者層の、あまりこれまで政治に積極的ではなかった人達が、この人だったら、僕達の声を聞いてくれるというような新しい運動がアメリカ社会の中で起きているのが事実だと思うんですね。これが大きな対流になって新しい動きを起こした場合にトランプ氏が必ずしも勝てないとは言えないというような現実味を持つ段階にいよいよ入ってきたのではないかと思います。日本の安全保障にとって私はヒラリー・クリントン一択だと思っていますけれども、ただ、コンティンジェンシープランニングというか、いざとなった時の備えをしなければいけないということは事実だと思いますね」

『非核三原則』のあり方
反町キャスター
「非核三原則について現在のままでいいのか、どこか見直すべきなのでしょうか?」
岡本氏
「核廃絶という大方向は、このまま維持するわけです。それはもう絶対に必要なことです。難しいのはもう一方で、日本は核の抑止力のもとに、特に北朝鮮のような乱暴者が隣にいて、中国だってあれは1998年でしたか、クリントン大統領が中国を訪問した時に、アメリカに向けて照準を定めているのは全部外しますということだけ言ったけれども、日本に向けて照準を定めているミサイルについては言及が全然ないということは未だに中国の核ミサイルは日本を向いているということですよね。そういう中で、皆で1、2、3で中国も全部核を廃絶してくれれば、我々もアメリカの核の傘に入る必要がなくなりますが、もちろん、北朝鮮もね。でも、それは現実的にはなかなか考えられないことですから、そうしたらまだ当面は核の抑止力の信頼性というものを高める方向に日本はいかなければいけない。そこで非核三原則をどう考えるかですが、持たず、つくらずというのは、これはもう問題がない話ですね。それはもうこれからも守る。持ち込ませず、も日本の陸上にアメリカの核兵器を持ち込むということはあってはならないと思いますが、専門的に1番難しいのは海上核ですね。海上核というのは潜水艦が持っている核ミサイルです。もともといろいろな人が暴露し始めちゃっていますけれども、もともと艦艇が積んでいる核ミサイルが日本に寄港するのは持ち込ませずに当たらないという了解が日米にあったと。英語で言うと持ち込むというのをイントロダクションと言うんですけれども、日本の港への一時寄港はトランジット。トランジットとイントロダクションは違うという了解が日米両国の間にあったということはいろんな人達が、現場に携わった人達が言い始めて、アメリカの公文書簡で、そういう書類も見つかっているので、さあ、どうなのでしょうかという。その状況の下で、現在、日本は原子力潜水艦、戦略原潜が、戦略原潜というのは攻撃型の原潜というのは、核ミサイルを積んでいるかどうかわかりませんが、オハイオ級とか、それを一目見ただけでこれは核ミサイルを積んでいるという潜水艦があるわけです。これが日本の領海を一海里でもかすったら、これは認めない、ということを自民党の弱い政権の時に野党に押し込まれて言ってきているわけですね。例え、そういう潜水艦が日本の近海で火災を起こしても日本の港には入れない、よくアメリカはこれで怒らないと思いますけれど、それをいつまで続けるべきなのか、つまり、現在は非核三原則ではなくて非核三・五原則になっているのではないか、これは日本が余計なものをくっつけ、本来持ち込ませず、の概念に該当しないものまで野党に言われてくっつけちゃってという考え方もあるわけですし、真面目に議論していくとすると、そのあたりですよね」
神保准教授
「私も岡本さんが言うように、日本は核廃絶という究極の目標を掲げつつも、北朝鮮や中国の核に囲まれている中ではアメリカの信頼ある核の抑止、核の傘を維持していくということですけれど、その方法が問題で、現代の核戦力の構成から言うと2010年の核体制見直しで、いわゆる東アジア向けと言われていた潜水艦搭載のトマホーク、核つきのトマホークですね。これが完全に廃棄されているという状態で、結局、核兵器の役割を低下させているわけですから、冒頭、オバマ政権はこれを、いわゆるICBM(大陸間弾道ミサイル)、アメリカの本土から発射するICBMや、SLBMと言われる戦略原潜ですけど、これも8000km以上のものですから、遠くから発射するわけですね。これで担保できると言っていたのですが、北朝鮮の認識からすると、そんなに遠くから撃つような核、しかも、非常にフィールドの高い核爆発ですから、その面で我々に第2撃をするなんて信じられないと思ったなら、核の傘はうまく機能しないわけですね。ということは、日本をしっかり防衛しているのだというカスタマイズされた核の体系というのは極めて重要だと思っていて、現在それを担保しているのは何かと言うと実は航空戦力です。それはグアム等にローテーション配備されているB52やB2の戦略爆撃機ですけれど、これたまに米韓合同軍事演習で飛んできますよね。あれは極めて重要な核の傘を担保するという意味を持っていて、あれをしっかりとシグナリングと言うんですけれど、北朝鮮に見せつけることによって、もし紛争がエスカレートした時に核の反撃をこの航空アセットで担保するということになっているわけなのですが、これをどのような形で信頼性ある形で維持するかという議論はこれからもしていかなければいけない。たとえば、中国がこれから戦術ミサイルを伸ばしてグアムを射程圏内に含めました、当然、嘉手納基地も撃てますという時期に、航空アセットが本当に信用あるのですかというようなことにもなりかねないので、本当に真剣に考える人はもう1度核トマホークを再配備するべきだという人もいるぐらい、核戦略というのは非常にプロの世界では何か機微に触れる議論が随分あるということだと思いますね」

日本の核との向き合い方
湯崎広島県知事
「そもそも、これはまったくたぶん我々は違う立場だと思うんですけど、私は安全保障の専門家でも、核兵器の専門家でもありませんけれども、いわゆる核抑止と言われますけれども、これが本当にどこまで必要なのかという精査が私はどこまでされているかというか、あるいはそれをオープンな議論をベースに本当に必要なのかということを問い直すべきだと思うんですね。日本は唯一の戦争被爆国であり、他方で、アメリカの核の傘に入っているという矛盾した立場があるわけですけれども、これは解消する努力をしなければならない」
反町キャスター
「どちらを解消するのですか?」
湯崎広島県知事
「それは当然、核の傘から離脱するということだと我々は思っています。これは決して私が勝手に1人で言っているわけではありませんし、たとえば、現在広島ラウンドテーブルというのを行っているんですけれど、これは安全保障や核に関する専門家に集まっていただいて、これは日米韓、中国も入っています。その中で現在の拡大抑止と核拡大抑止、これを厳密に区別するべきだという議論になっていますし、実際にこれを素人的に考えて、北朝鮮の核の脅威があると言われていますけれども、本当に北朝鮮は核抑止がなければ、日本に対し核兵器を使う恐れというのは本当にどこまであるのかと。つまり、先制をするということですから、それはイコール何のために北朝鮮が核兵器を持っているかということですけれども、これはもうゲーム理論の均衡の話ですよね。その中で彼らの目的はある意味はっきりしていて、現在の金体制を維持するのが究極の目的なわけですよね。その中で核兵器を使ってしまえばイコール崩壊なわけです。それが本当にどこまで現実的な脅威としてあるのかと。これは素人的に考えるとそう思うわけですけれども、韓国の外交専門家なり、安全保障の専門家と議論しても、彼らも同じような見方をしている部分もあるわけですね。北朝鮮が何のために核兵器を持っているかというところで言えば、そういう1つ1つの日本が実際に核兵器で守られなければならないようなシチュエーション、逆に言うと他国、中国なり、北朝鮮が日本に対して核兵器を使うというのが真剣な脅威になるというのはいったい具体的にどういう場面なのか。これはもっとオープンに議論して、通常戦力で十分ではないのかという結論をつくっていくというか、そのために必要な環境整備みたいなことも出てくると思うのですけれども、そういう方向に向かうべきではないかと」

湯崎英彦 広島県知事の提言:『核廃絶に向けて全人類の知恵と力を』
湯崎広島県知事
「知恵と力を結集をすべきだということですけれども、現在様々な地球的な課題がある中で、核兵器の問題というのは間違いなく、その1つだと思うんですね。ところが、たとえば、環境問題であるとか、あるいは病気、飢餓。これについては非常に多くの投資もあるし、知恵も皆集めている。核兵器の問題は割とアンタッチャブルな感じがして、なおかつ十分な投資がなされてないと思うんですね。廃絶に向けての投資が。それを皆で力を合わせて進めるべきだと。日本がそのリーダーになるべきだと思います」

外交評論家 岡本行夫氏の提言:『独自の立場に自信を持て』
岡本氏
「日本は非常に難しい立場です。中国、北朝鮮、ロシアに囲まれ、しかし一方では日本は唯一の被爆国として誰よりも核兵器を憎んでいます。その間で、日本はメキシコやオーストリアやスイスのように完全にピューリタンな立場をとることはできない。その中で、日本はよくやっていると思います。核廃絶決議を国連で22年間通してきました。その立場に自信を持つべきだと思います」

神保謙 慶応義塾大学准教授の提言:『核軍縮と核の傘の両立』
神保准教授
「日本にとって核のない世界を実現する、自らの役割というのは、第1に北朝鮮の非核化。そのあとに、中国の核軍縮の枠組みへの参加を促すということだと思うんですけれども、そのためには北朝鮮に核兵器の役割自体がもう無意味であるということを示すことが非常に重要で、1つは知事と立場が違うかもしれませんけれど、抑止を明確化すること。そのあとに、核を使っても意味がないというような防衛体制のもとでお互いに緊張を下げていくという努力が必要だと思います」