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2016年5月13日(金)
『アジアの海』攻防戦 引かぬ中国照準とワナ

ゲスト

森本敏
元防衛大臣 拓殖大学総長
山田吉彦
東海大学海洋学部教授
小原凡司
東京財団研究員・政策プロデューサー

アジアの海の攻防戦 どう守る?『沖ノ鳥島』
松村キャスター
「アジアの海を巡る攻防戦、まず日本の主権を巡って現在、台湾と対立をしています沖ノ鳥島の問題です。その動きを詳しく見ていきましょう。4 月25日です。横浜の海上保安本部が沖ノ鳥島周辺の日本のEEZ、排他的経済水域内で違法操業していた台湾漁船を拿捕。船長を現行犯逮捕しました。4月27日です。台湾の馬英九総統はこれに強く抗議し、沖ノ鳥島は島ではなく岩礁と主張しています。翌日4月28日、岸田外務大臣は、台湾独自の主張は受け入れられないと台湾に抗議をしました。29日、中国の報道官は、日本の不法な主張は認めないとしています。かねてから今回の台湾と同じ主張を、中国はしていました。5月1日です。台湾が巡視船を沖ノ鳥島近海に派遣し、6日には排他的経済水域内に到着をしました。10日です。岸田外務大臣は、極めて遺憾と抗議。巡視船を直ちに域外に出すように求めました。まず山田さん、沖ノ鳥島は島ではなく岩礁という台湾の主張、どのように見ていますか?」
山田教授
「これは台湾の主張というよりも、馬英九政権の主張だとお考えいただきたいと思います。これまで馬英九政権自体、沖ノ鳥島の件に関しては何も言ってこなかった。なぜ敢えてこの時期を選んで言ってきたのかというともう末期症状、最期の段階で馬英九氏、本来であれば、海洋法の知見を持っているはずの男ですので、この時期に言ってくるというのはあり得ない話。となると、民進党に政権を渡す前に非常に中国寄りのスタンスで終わっていくと。あとにつなげていくという戦略が考えられます」
反町キャスター
「島か岩かと、この話で、理屈っぽい話ではあるんですけれど、一応、国連海洋法条約を持ってきました。自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にある。人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。つまり、潮が高い時でも水面上にあり、そこで人の生活ができるようなところじゃないものは、いわゆる200カイリ、EEZの根拠とならないという話だと思うんですけれども、沖ノ鳥島。これは、要するに、ここにあるこの条件、潮が高い時でも水面上にあって人間の居住、また独自の経済的生活を満たしているのですか?」
山田教授
「はい。高潮時というのは、大潮の日の満潮時。少しでも陸地が出ていれば、もうこれは島です。実際に現在、沖ノ鳥島、だいたい16cmぐらい残るんです。国際法上では明らかに、これでも島なのですが、ただ、人の居住ということにこだわると、そこには住めないではないかという言い方をされるかもしれないですが、独自の経済的生活というのは経済行為ということになります。島を何もないところにつくってはいけないのですが、島があるところだから堤防の防波堤を延ばすことも認められています。現在、その防波堤の先に港をつくって、そこから、太平洋上の海底資源開発を進めていこうと。これは明らかに経済行為であると。これまでこの南の島特有の気象、海象。あるいは波の浸食等の実験をやってきました。これをもって我々は明らかに経済行為であると。これが経済行為と言わないのであれば、南シナ海の島々はほとんど認められないものになってしまうと。明らかに私どもは経済行為を行っていると。現在、しっかりとした港をつくって海底資源の調査、海洋調査を進めていく段階に入っています」
反町キャスター
「自分の国の領土なので、島だとはっきり言いたいんだけれど、あまりに小っちゃいと弱いかなと、本当に言い切って大丈夫ですよねと、ここですよ。はっきり言ってしまうと」
山田教授
「これは、言い切って大丈夫なのは、まずは経済的行為をどうするかは主権の問題で、どこかが言う話ではないです。日本人がしっかりと管理して、しっかりと使う。あくまでも島が出ている以上、そこから領海が認められるわけですから。12カイリ、約22.2kmの領海が認められるわけですから、しっかりと管理し、使っていくという方向を示していく」

『沖ノ鳥島』めぐる中台の思惑
松村キャスター
「小原さん、台湾は政権交代の時代でして、馬英九総統から蔡英文氏になるまでちょうどあと1週間ということなのですが、この時期にこのタイミングで強い主張をしてくるというのは、あらためてどんな意図が感じられますか?」
小原氏
「馬英九氏は次、民進党に政権が移るということはわかっているわけですから、最初から蔡英文政権になった時に、民進党、あるいは蔡英文政権の思い通りにはさせたくないわけですよ。最初から足を引っ張っておきたい。これは中国と、現在の台湾の政権が協力的な姿勢をどんどん強めて、さらに、それで日本に対抗する。これを蔡英文氏が急に全部ひっくり返すということは難しいでしょうからね。最初はどうしてもマイナスからの出発になるということを狙っているのだろうと思います」
反町キャスター
「そうした中、4月25日、違法操業をしていた台湾漁船を拿捕し、逮捕してしまったという、この件。これは、要するに、政権交代まで、そんなことはやらなくなるよという想定がもし働くのであれば、放っておけばよかったのにと、こういう判断については小原さん、どう感じますか?」
小原氏
「漁船の操業についてはすぐに変わるか、変わらないかというのは、なかなか難しいと思います。特に台湾はもちろん、禁輸措置などあるにしても、漁船というのは割合、漁場が良ければどこでも獲ろうとするのだろうと。これは他の地域を見てもですけれども。ですから、日本としてはこの排他的経済水域の中での、違法操業を取り締まるということは正当な行為だろうとは思います」
反町キャスター
「山田さん、いかがですか?この台湾漁船の拿捕、逮捕。どういうふうに見ていますか?」
山田教授
「沖ノ鳥島というのは、ちょうど富士山の頂上が、沖ノ鳥島の出ているところの状況ですね。だいたい40kmで4000mぐらい沈降していくんです」
反町キャスター
「この丸い部分が富士山の頭のカルデラみたいな感じ?」
山田教授
「一気にいくので周辺にあまり魚影は濃くない。まず東京都も以前、この周辺での漁業を考えたのですが、採算が取れないです。むしろ、私は何でこの時期に1隻来て…」
反町キャスター
「そもそも、魚がいないところに来ること自体が政治的であると?」
山田教授
「政治的であった可能性があると。この沖ノ鳥島の警備をしている海上保安庁も通常では来ない船が来て、漁業をあからさまに行ったということで警告をしても、おそらく通常であれば、台湾漁船は慣れているので、警告をして追い出していくという方法をとるのですが、おそらく抵抗をしてきたのだろうと。海上保安庁が、翌日に逮捕をしていますから。これは確実に抵抗もあって、根が深い問題であって、逮捕をしていると。そういう判断が海上保安庁の中に働いたのだろうと思います。少し、私がこの話を聞いた時、なぜここで漁業をやっているのか、ちょっと不自然に感じました」
反町キャスター
「そう考えると、逮捕をして良かったのですか?僕はすぐ尖閣の時の、中国漁民を逮捕して、時の民主党政権がガタガタになって、仙石官房長官の様々な発信がある中で、地方の司法の判断として逮捕をしたあと、釈放し、いろいろなことがあって、結局ギシギシしたではないですか。それを考えると、こういう形ですぐ逮捕して、翌日、保釈したというこの流れというのは日台関係を考えた時、しかも、台湾の政権交代を目前した時に、これはアリだったのだろうか。そこはどうですか?」
山田教授
「ある程度、海岸巡防という台湾のコーストガードとの間でのやり取りは当然、あると思います。一瞬騒いだとしてもその先、長期の流れでいくとどこを落ち着かせていくか。この取引材料としては当然、尖閣沖、あるいは与那国周辺の台湾漁船といういものがありますから、決して台湾側も、ここで突っ張って、得はない。将来的な展望も踏まえたうえで線はしっかり引いていくという、海上保安庁のスタンスを見せたんだという可能性は高いと思います。
反町キャスター
「逮捕して良かったと見ているのですか?」
山田教授
「これを見逃したことで、逆に馬英九政権のプロパガンダになるよりは、法執行をするという方が、そこまで読めていたとしたら、執行をしておく必要はあるのだと思います」
反町キャスター
「森本さん、これは何か政治的な技術論的な感じにもなるんですけれど、森本さん、この場合の漁船、漁民の拿捕、逮捕、翌日の保釈という台湾との流れを、どう見ていますか?」
森本氏
「先ほどのお話のように、日本が実効支配をして、これが島であるということを国際法上、確定している立場を維持しているわけですから、違法行為を黙認することをやってはいけないし、やるべきでないと。きちんとした措置をとる。しかしながら、そこからあとは、もう新しい政権ができるということはわかっているわけですから、そこは難しくしないで、きちんとした法執行をしたということだけを見せて釈放をするということにして、フリクションといいますか、これから台湾の新しい政権との間を、できるだけ難しくしないように措置をするということなので、随分いろいろな議論があったと思いますが、私は適切な措置だったと思います」

『南シナ海』と日本の国益
松村キャスター
「アジアの海をめぐる攻防戦、続いて南シナ海です。中国、フィリピン、アメリカなどに加えて、日本も東南アジア諸国との連携を深めるなど、この海域を巡って、各国の攻防が繰り広げられています。山田さん、この南シナ海、日本にとってはちょっと距離があって直接、関係がない海域にも思えるんですけれども、日本にとっての重要性、どう見ていますか?」
山田教授
「重要な海域であるのは間違いないと思います。南シナ海を通過しなければ、日本と貿易ができない東南アジアの国々。たとえば、ベトナム、タイ、あるいはマレーシア、インド、シンガポール、ブルネイ、インドネシアを含めまして、それでだいたい20兆円ぐらいに達する。しかも、両方ですね、輸出も多いし、輸入も多い。日本から原材料を持っていって加工をする。あるいは高度な機械製品、IT(情報技術)製品を持ち出して、向こうで加工をして、また持ってくると。投資もだいぶ進んでいますので、この南シナ海の安全、また当然、オイルルートでもあるということを考えますと、南シナ海は日本の生命線であるということは言えます」
松村キャスター
「安全保障面ではどうでしょうか?」
山田教授
「当然、これは南にずっとつなぐシーレーン防衛自体、日本の安全保障というのは、この海の道を守ることも含めてだと私は考えていますので、そこは日本の船、日本人の生命、財産が通過している海域ですので、これは日本が責任を持って、国として責任を持って、守らなければいけない海域だと思います」

中国・新拠点構築で何描く?
松村キャスター
「日本にとっても、重要な海域で特に活発な動きを見せているのが中国です。最近の中国の動きをまとめました。こちらのスプラトリー諸島で軍事拠点化を進め、ファイアリークロス礁の滑走路に軍用機を着陸させるなど実運用を始めています。さらに、パラセル諸島のウッディー島では地対空ミサイルや戦闘機を配備しています。フィリピンと領有権をめぐって対立しているスカボロー礁では、中国が測量を始めたとされていて、新たな埋め立ての準備が見られています。国際社会の非難が高まっているにもかかわらず、このスカボロー礁、さらに新たな埋め立ての動きを見せている中国の狙いは何だと思いますか?」
小原氏
「中国の意図として、民間船に手を出すことはないと思います。これは国際社会から孤立をすると、国際社会のルールを変えてやると言っている、そもそもの目的は達成できなくなるからですね。ただ、アメリカが航行の自由と言った時には、非常に軍事的な意味を含むんですね。アメリカか海軍にしろ、実は海上自衛隊にしろ、インド洋から西の海域に軍艦が派遣される時は、南シナ海を通るわけですね。中国は国連海洋法条約に加盟していて、実は国連海洋法条約では軍艦にも無害通航権というのが認められているのですが、中国は1992年に自分の国の中で成立をさせた領海法、ここで軍艦の無害通航権を拒否しているんです。と言うことは、この海域を領海化したい。ここを通る時には中国の了解を得ろということになるわけですね。これは日本やアメリカが自由にこの活動をすることを妨げることになる。安全保障上の非常に大きな問題になる。実は、中国は領海化を実質的にはしたいのですが、領海という言葉は非常に慎重に避けているんです。領海と言うと、これは領土から12マイルと明確な規定がありますけれども、そうすると中国が主権を主張できるのは、南シナ海でも一部になってしまうんですね。ところが、中国は南シナ海全部を自分のものだと言いたい。ですから、ここの島嶼と、ここの付近の海域という言い方をするんです。その付近の海域というのはこの南シナ海の九段線で囲まれる全てということになるわけですが、現在、開発をすすめているのがパラセルの方のウッディーアイランドに長い滑走路をつくりますと、スプラトリー諸島のファイアークロスにもつくりますと。ところが、ここだといくら戦闘機を配置しても線でしか押さえられない。中国は南シナ海全てを押さえたいとすると、もう1つ、ここ(スカボロー)に滑走路を作ると、実は相互支援が可能になる。これで南シナ海を面で押さえられるということになります。こうすると実はここでの、平時に限ってですけれども、軍事力の優勢というのは中国が保ちやすくなる。アメリカにしろ、日本にしろ簡単に入りにくくなるという状況をつくり出すことができるということだと思います」
反町キャスター
「スカボロー礁に滑走路をつくると見た方がいいということですね?」
小原氏
「中国としてはつくりたいと」
反町キャスター
「南シナ海における中国の狙いというのは別に、民間、つまり、日本にとってのシーレーン。この3つの島に軍事拠点をつくるのと、シーレーンを分断しようというのではなくて、あくまでも軍事的な勢力圏として、この南シナ海を内海化し、それを中国の軍事的な勢力圏内に置きたいのだという、軍事的なことだけに特化しているという話だったように思うんですけれども、それはもっとわかりやすく言ってしまうと、日本にとっては、ここはアメリカがキープしているよと、中国がキープしているよと、ちゃんと日本に来る船が無事に通れるのだったら、いいのではないのという議論になるのか、ならないか、ここですよ」
森本氏
「それは全然、おかしいでしょう。と言うのは、民間の船と言ったってタンカーだとか、重要な貿易に必要な船舶というのを守るというのが、海軍艦艇の目的ですから。つまり、民間の船が通ればいいというのではなくて、それに必要なシーレーンを、まさに防護するための海軍の艦艇が自由に入れないのであれば、自由航行と言っても、いつ脅威を受けるかわからないという状態ですよね。いつも、たとえば、機雷とか、潜水艦で脅威を受けるような状態になってしまうと、いつ何時、日本の生命線が絶たれるかわからない。それは全然ダメでしょう。現在、小原さんが説明したように、まず中国は、優先度がおそらく、あるのではないかと思うんです。西沙の方の軍事的な位置というのを、確実にして、この西沙諸島の周辺を、まず中国のパイの中に入れて、ここに軍事力を展開して、ここにできれば防空識別圏を引く。ところが、南シナ海までの距離はちょっとありすぎるんです。だから、ここに戦闘機を持っていってもここを完全にカバーすることができないです。ところが、現在アメリカとフィリピンの関係で、アメリカとフィリピンの防衛協力協定ということで、また在比米軍が戻ってくるという状態になろうとしている。そこに対する牽制をするためにはスカボロー礁を獲って、ここに軍事力を展開し、アメリカが来るのを牽制してしまう。ここの2つが自由に使えれば、南シナ海もいずれ自由になるということなので、そういう意味では、アメリカに対する牽制という面もあるし、全域を中国の内海化、中国として内海化するためには、西沙と南沙だけでは足らないですね」
反町キャスター
「中国側が、よく我々は航行の自由を阻害するものではない、そういうような説明をするではないですか。あれは現在の森本さんの話を聞いていると、そうは言いながらも軍事拠点をつくっていくということに関しては、我々は根本的なところから、既に疑ってかかって、脅威を感じなくてはいけない。こういう理解でよろしいですね?」
森本氏
「先ほど、小原さんが説明になりましたけど、中国が実効支配した島の12カイリの中、一般国際法上は軍用でも、商用船舶でも、いわゆる無害通航はできることになっているのですが、中国は国連海洋法条約を署名する時、あるいは1992年の領海法で、先ほどのお話のように、12カイリを軍用艦艇が航行する時に限って、中国当局の承認を得る必要があるという、非常に独自の解釈をとっているので、従って、それを打ち破るためにアメリカがやっている作戦が航行の自由作戦ということですね」

攻める中国vs譲れぬ米国
松村キャスター
「アメリカの南シナ海での動き、本気度をどのように見ていますか?」
森本氏
「基本的に南シナ海に中国が出て来たのは、ベトナム戦争が終わって、アメリカが引き、それから、カムラン湾から当時のソ連が引き、米比基地協定が更新されずにアメリカが引き、その力の空白を埋めるという形で入って来たとアメリカは考えているので、フィリピンは非常に困って、はっきり言うともう1度戻ってきてくれという動きをして、今回の米比協力協定という新しい協定をつくって、少しずつですが、米軍がフィリピンに戻ることによって中国を牽制するということだけではなくて、装備品も共用する、能力も向上する。それから、アメリカだけでやるのではなくて、日本や豪州や他の国が協力して。フィリピンだけではなくて、ASEAN(東南アジア諸国連合)の全体の能力を向上するという、その1つの代表的な手順として最初にフィリピン、できればその次にベトナム、それから、肝心なインドネシア、マレーシアとできるだけASEANの国々を、アメリカは価値観を共有できる側につけていきたい。その手始めがまさにフィリピンですね。だからこそ、中国はスカボローに出て来ようとしているということです。アメリカの本気度というのは軍事的に事を構える考えはないですけれども、南シナ海をいわゆる核心的利益ということで中国が占有して、領域を自分の国の内海のような状態にするということはどうしても防ぎたい。何十年かかっても防ぎたいと。そこはアメリカもキチッと考えていると思います。だから、そういう意味で、この緊張関係はこれからも相当長く続くということで、場合によっては小さな事故が起こったりするということですが、しかし、本格的に双方が戦うという考え方は中国にもアメリカにもない。アメリカが新しい政権になってもそれはないと思います」
反町キャスター
「中国は、アメリカの本気度にタカをくくって、どうせ来やしないから埋め立ててしまえというところはあったのですか?」
小原氏
「あったと思います。アメリカというよりオバマ大統領をみくびっている。ただ、国防総省が昨年の12月もオバマ大統領の許可を得ないB52という戦略爆撃機、核爆弾を落とせる爆撃機ですが、これがクアテロン礁のほぼ真上を飛んだんです。国防総省はごめんなさい、間違えました、と言ったんですけれど。航行の自由作戦ではないと言っています。しかも、そもそもそこは飛ぶはずではなかったと言っている。それとアメリカは、3月と4月にアメリカ海軍の人達とも会って来ましたけれど、ここまでやられたらどうするのだという話を聞くと、中国の主張は無視する、中国がここは領海化すると言ったところで、アメリカはそんなもの領海ではないと。もちろん、そこを通る時に中国の承認を得ないと。勝手に通ってやるというのが航行の自由作戦になっていく。ですから、それで中国は手を出せるなら出してみろというのが、米海軍はそういう勢いのいいことは言いますですね」
森本氏
「アメリカ政府が決定権を持っている限り、国防総省ができる軍事作戦には限界があると思うんです。そういう意味では、現在の政権が終わるまで、現在の状態から大きく変化することはない。これで政権は終わると思います。だからこそ、アメリカの次の政権が来年1月20日に誕生しても新しい政策をつくるまで、来年の今頃までかかる。現在から1年の余裕がある。そこを中国はちゃんと計算に入れ、できるだけ既成事実を固めてしまう。身動きできない状態にしてしまうと。おそらくそういうことを考えていると思います」

『トランプ発言』と日米同盟
松村キャスター
「トランプ氏の発言で、『米国に世界の軍隊、警察でいられる余裕はない。駐留米軍の撤退。同盟国に米軍駐留経費の全額負担を求める。日本と韓国は米国の核の傘に依存するよりも独自の核兵器保有を容認』というのがありますが、トランプ氏の姿勢をどう見ていますか?」
森本氏
「まだトランプ氏の外交政策、安全保障政策の全貌が見えないし、誰をスタッフに使っているのかも明確でないのですが、最近トランプ氏が自ら行ったスピーチがニューヨークタイムスに要約されて載っているのですが、それを見ると、ちょっと言い過ぎですけれども、トランプ氏が強調しているのは同盟国、友好国はアメリカに必要な貢献をしていないと。だから、アメリカにのみ依存して自分達の努力をしていない。していないのであれば、自ら努力をさせるぞという考え方です。米軍は不要なところには派遣しない。勝てると思ったところには勝てる時に派遣する。つまり、常時米軍を世界に出し、アメリカが役割を果たすということはしないと。同盟国はもっと自分でやれるべきことをやれと。アメリカに必要な協力をするべきこと、貢献をキチッとしてくださいということですね。だったら、たとえば、駐留米軍については撤退するとは言っていないです。日本が果たすべき役割。この場合、駐留経費を現在よりもたくさん出すということにしないのであれば、アメリカ軍を引き揚げるかもしれない、ということは確かに言っています。それは、どういうことを言っているのかというと、アメリカが1国で、アメリカファーストですけれど、経済と軍事の力をもう1度再生するということです。これはある種の孤立主義でありますし、極端に言うと、経済と軍を強くするのは富国強兵策ですね。だから、アメリカが自らの技術優位を活用して、自らの力をこれから蓄える。同盟国はアメリカにのみ依存せずに自分でもう少し努力をしろという、かなり突き放した孤立主義的な独自の政策をとろうとしていて、これをアメリカの白人の、どちらかと言うと、低所得者、教育レベルの比較的低い人の大変強い支持を得ているということです。だから、彼が大統領になるのかどうかというよりかは、アメリカの国民が持っている不満というのを考えると、これは誰が政権を獲ろうが、アメリカの国内で起こっている不満の状態というのを我々は非常に重く受け止めないといけないと」
反町キャスター
「中国は、アメリカのそういう変化を歓迎するのですか?それとも警戒するのですか?」
小原氏
「中国は相手が合理的な時は、それに対する対処を考えられますが、トランプ氏が嫌いだと思うのは、ポピュリストからどう振れるかがわからないことです。実はトランプ氏は核戦争にも言及しましたけれど、毛沢東と一緒ですね、毛沢東は世界核戦争をやっても構わないと言ったんですね。中国は半分死んでも3億残っているのだから怖くないと。こういった狂気を示すことによって相手を怖がらせる。実はトランプ氏も、軍事力をいったん引くかもしれないけれど、何かあったら核戦争だとまで言われ、しかも、その線がどこにあるかわからないとなると中国はもっと怖いわけですね」

森本敏 元防衛大臣の提言:『中国がルールを守るメリットを見出せるように』
森本氏
「議論してきたように、南シナ海は、中国が下がっていかない、断念もしない、決心も変えないと思います。どうやって中国にそれを悟らせるかというと、現在の状態をずっと続けると中国は損だろうということを自ら思い知らせる、という方法しかないと思うんです。つまり、このままずっと南シナ海を埋め立てて、南シナ海を自分の海にし、そのことによって失うものがあまりにも大きいと言うことを中国にわからせるためにどうしたらいいか。それが我々の取るべき道ということなのではないかと思います」

山田吉彦 東海大学海洋学部教授の提言:『アジア・コーストガード連合船隊創設』
山田教授
「現在フィリピン南部のスルー諸島という場所ですが、ここで海賊が多発していると。これはイスラム過激派のアブサヤフです。3月には10人、4月にはマレーシア人、インドネシア人8人、誘拐されています。また、フィリピン南部のリゾートアイランド、リゾートの島を襲って、カナダ人を誘拐しまして、身代金要求に応えなかったために首を切って町に捨てに行ったと。それはネット上で公開されている。IS(イスラム国)と同じようなやり方で、アブサヤフがかなり激しく動き出したと。このタイミングでアブサヤフが動き出してくるとなると南シナ海の警備というのがまた様相が変わってくる。中国問題だけでなく、海賊も現れてくるとなると、それこそアジアは力を合わせて、南シナ海を守らなければいけない。東シナ海も考えていかなければいけないということになろうかと思います」

小原凡司 東京財団研究員・政策プロデューサーの提言:『“アジアの海”国際社会で護る』
小原氏
「まず脅威をどのように捉えるかというのが問題だと。単なる領土問題でもない、単なるシーレーンの防衛でもない。これは力があれば大国は国際秩序を自分の都合のいいように変えていいのかという問題だと。そうだとすれば、それによって被害を受けている国というものが結束できる。そうした実力による現状の変更は許さない、日本は許さないのだと。国際社会が許さないということを他の国と一緒に、アメリカを中心とした国と一緒に自分達のできることをそれぞれやっていくことが必要だと思います」