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2016年4月29日(金)
政府&自民が北京集合 日中韓の本音と建前は

ゲスト

武見敬三
自由民主党参議院議員
興梠一郎
神田外語大学教授
木宮正史
東京大学大学院教授

政府&自民党が北京に集結 相次ぐ会談の目的と意義
松村キャスター
「今日、北京入りした岸田外務大臣に先立ち、中国に豊富な人脈を持つ、自民党の二階俊博総務会長も北京入りをしています。二階総務会長は昨日、北京入りして、楊潔篪国務委員と会談しました。その後、李肇星元外相主催の晩餐会にも参加しています。今日は日中韓国際フォーラムに出席して、基調講演を行ったあと、胡耀邦元総書記の長男で、習近平国家主席とも近いとされる胡徳平氏の昼食会にも参加しています。一方、今日、北京入りした岸田外務大臣なのですが、明日、午前中に王毅外相と会談します。楊潔篪国務委員、李克強首相との会談も予定されている。このようなスケジュールとなっていますが、興梠さん、まずは二階総務会長と岸田外務大臣のこの動きから、どのようなことが読み取れるのでしょうか?」
興梠教授
「最初は中国側があまり積極的でなかったという話を聞いているけれど、結局は大サービスというか、かなり積極性を見せていますよね。それを見ていると、1つには、日本側は当然G7がありますし、サミット。中国はG20があるではないですか。これは、習近平さんにとっては非常に大事なイベントで、成功させたいというのもあると思うし、日中韓もありますので、とりあえずはこういったことの地均しというか、それもあったと思うんですけれど、南シナ海の件とかでこの間、G7の外相会談で南シナ海の話を引っ張り出されて、中国は相当嫌がっていたのに、それでも敢えて会うということですから」
反町キャスター
「岸田さんが、広島でやったやつですね?」
興梠教授
「そうですね。私は現在、国際的に中国外交が、習近平さんになってから孤立している感じがあるんですよね。いろんなところでちょっとやり過ぎちゃって、ちょっと四面楚歌の状況にあるので、日本とこうやって関係改善をすることによって、ある程度、突破口をつくっていきたいと。それはロシアもそうだと思うんですね。ですから、全体的に見ると、中国の現在の置かれている状況が厳しいので、経済も含め、そこにかなり積極性が見えているような感じがする」
武見議員
「中国の場合には、誰と会うかというのが、実はどこまで重視をしているのかというものの最大のバロメーターになってきていて、今回は、李克強首相とも会うというところまでで、中国側が外交日程を設定したということ自体がある意味で、全てを表しているところもあって、もともと日中韓の枠組みというのはその協調関係を強化するためにつくられたものですから、協調関係を強化することを敢えてここできちんとやりましょうという意思を、ここではっきりと示したということが読み取れます。そういう点で、大変結構な話だなと。また、日本側もG7の外相会談などでは、南シナ海等にかかわる、中国の海洋進出は力で現状を変更しようとする受け入れ難いものがありますから、こういう点に関してはこれまでアジアの問題に対して、対岸の火事のように見ていたヨーロッパの主要国に対してもきちんと共通認識を持たせるということをやる枠組みで使っているわけですから、こうした立場をきちんとやって、立場を確認しながら、なおかつこうした近隣諸国との協調関係を確実に強化をしていくという、まさに二刀流をしているわけ、日本外交は。その仕組みを協調レベルでしっかりと実現をするツールが日中韓のこの枠組みだと」
反町キャスター
「楊潔篪国務委員は、二階さんに対して昨日、こういう発言していますね。中国は、韓国、日本とともに、日中韓首脳会談の共通認識を着実に実行していきたい。『歴史を直視し未来に向き合う』、この言葉というのは日中韓の前回のサミット時、日中韓、だから、この場合は、李克強首相と朴槿恵大統領と安倍首相ですよね。その時にもこの文言が1つの共同宣言のテーマになっていたんですけれども、『歴史を直視し未来に向き合う』ことを徹底し、政治的相互信頼を深め、歴史などのセンシティブな問題を着実に処理していきたい。楊潔篪さんの二階さんへの発言、たぶん明日、岸田さんにも同じことを言うのではないかなと」
武見議員
「そうでしょうね。1番基本は最初のところなんです。要は、日中韓の共通認識。これは昨年11月に開かれた、日中韓の首脳会談の中でも、こうした協調関係をこの3か国できちんと強化をしていこうと。そのために、この枠組みは定期的にしっかりと実行していこうと。日本があらためて、2016年には幹事国としてその役割を担う、これは共通認識ですよ。これを楊潔篪さんがきちんと最初におっしゃったということは、私は非常に重要な点だと思います。そのうえで歴史認識云々の件に関しては、中国側は日本側と協調する際にもできるだけ中国側に有利に協調関係を進めたいわけです。そういう時、歴史カードというのを中国側はいつも必ず出してくる。それをまさに今回もこれまで通り、おやりになっていると。こういう理解でよろしいのではないでしょうかね」
反町キャスター
「それに対して今度、岸田さんですけれど、岸田さんはこういう発言を昨日25日の講演で言っているんです。中国側と『率直に対話し、新しい時代にふさわしい日中関係を築いていくための歯車を回したい』。この『歯車を回したい』というのをどういうふうに我々は理解したらいいですか?」
武見議員
「なかなかこれまではこうした安全保障とか、その歴史、政治問題で、非常に、対立関係というものが深刻化されていて、外相の訪中も4年半なかった。首脳間の関係も、首脳会談は開かれるようになったけれども、まだぎくしゃくしている。こういう中で日本側としては、こうした協調する要素というものを最大限、これから拡張をしていこうと。少なくとも経済という分野に関しては、日中というのはお互いに相互依存の関係にあって、協調関係が最も発揮しやすい分野だろうと。中国が特にそこを重視するようになっている機会を捉えて、日中の経済関係の安定化と発展。さらにそうしたことをテコにしながら、お互いに協調関係を国民レベルでも強化していくためのそういう政治的なイニシアティブをこうした場を通じて発揮していこうではないかと。そういう意思がここに見られるわけですね」

メディアと『国民感情改善』
松村キャスター
「さて、今日、二階総務会長が出席した日中韓国際フォーラムですが、その中では政治分科会、経済分科会、さらには人文メディア分科会という、3つの分科会が行われました。特にこの3つ目の人文メディア分科会は今回、初めて開かれたものでして、国民感情の改善について話し合われたということですね。興梠さん、今回初めて開かれた、人文メディア分科会。これが初めて開かれた狙いをどのように見ていますか?」
興梠教授
「世論ですよね。これに参加された方の発言を見ても、メディアがどうお互いに報道しているかという議論になっているので」
反町キャスター
「中国側の陽光メディアグループ会長の楊瀾さんという方の発言ですが」
興梠教授
「そうですね。ざっと見ると結構、面白いことを言っているんですね。これもそうなのですが、視聴率を優先してしまうとか、これだけ見ると何かかなり中国政府寄りの発言かなと思ったんですよ。ところが、他の部分も見てみると、アニメの話が出てきて、私はよくこれを言ったなと思うのが、自分の子供が宮崎駿夫監督の『ハウルの動く城』、『千の千尋の神隠し』とかが大好きだと、面白いことを言っているんです。最近の中国の若者はアニメ世代が増えており、歴史とか、難しい話からは離れていると言っちゃっているんです。つまり、歴史認識がどうとか、中国政府はそういう立場ですよね。先ほど、楊潔篪さんも歴史、あるいは歴史カードというのを、現在の問題は南シナ海とか、いろんな問題があって、中国が割と不利なので歴史を引っ張り出してくると割と有利、優位に立てるというやり方ですよね。ところが、この楊瀾さんは歴史とか、そういう難しい話は、現在の中国の若者はあまり関心がなくて、むしろ日本のアニメの方が好きだと言い切っちゃっている。話の流れの中で出てきたと思うんだけれども、実はこれが本当の話」
反町キャスター
「そうすると、これはメディアが意図的な編集をしているのではないかと言われる典型みたいな切り取りになってしまうんですけれども、楊瀾さんの今日の発言で、僕らが、要するに、気になってしまうのは、こういう部分で、視聴率の圧力の下にとか、責任感のあるメディアは本来、こうした群集心理に影響を受けずに、客観的な内容のある情報を発信するべきだと思いますと、中国のメディア人の人が国民世論とか、国民感情をテーマにした中で、こういうことを言うのは中国のテレビとか、新聞というのはそもそも視聴率を気にしていますか。要するに、中国の新聞やテレビが、客観的な情報を発信していると思いますかというのを、興梠さんに聞こうかと思っていたのですが」
興梠教授
「別に矛盾はしていないです。かなり公の場所でこういうことを発言しているわけでしょう。当然、これは中国当局も皆見ていると。知っていますよね。これだけの元有名キャスターですから。そうすると、このあたりというのは全部見てみると、要するに、日本の外交世論調査ですよね。外交意識、相手の国をどう見ているか。毎年出るではないですか。あれが日本は確か中国に対してあまり良いイメージを持っていないというのが、80何パーセントかな。83%。それを受けて喋っているわけですね。そうすると、これを見ると、たとえば、視聴率優先主義で、マイナス要因ばかりを報道するのではないかと。ここだけ見ると、よく言っている、いいことを報道しなさい、という中国当局の指導には似ているわけですよ。中国のメディアは視聴率がまったく関係ないかというと、メディアもいろいろあるわけですよ。インターネットもあれば、新聞もあれば、地方紙もあれば、それは多少、売れるものを書いていくというのはあります。あとはここで言いたくても言えないというのがあって、それは、中国のメディアは視聴率と別に中国共産党の宣伝部の指導というのがあるわけでしょう。だから、これは日中韓を3つ並べて、喋ってもしょうがないですよ、本当は。中国は、要するに、体制が違うわけですから。メディアは、共産党の喉の下と言われている。政策を宣伝する機関だけれど、しかし、私は、面白いと思ったのは、彼女はこういうことを言いながらも、最後の方で自分の子供の話を出してね」
反町キャスター
「アニメの話とか、歴史離れの話をしてね」
興梠教授
「歴史認識より漫画、日本のアニメの方が好きだと言っちゃっているわけです。これが実は最近の綻びですよ。綻びです」
反町キャスター
「楊瀾さんの発言。いわゆるステレオタイプの公式的な発言を言う一方で、現在言われたみたいに、いや、実は私の娘はアニメが好きでと」
興梠教授
「そういうことが出ちゃうんですよ。だから、表と裏ですよ」
反町キャスター
「これは両方とも表の発言では?」
興梠教授
「ですけれども、いくらこういう情報統制をしても政府ではどうしようもない部分というのがあるわけですよ。日本のアニメを皆、観ていたり、そうすると、だんだん意識が変わってきたりしているということです、意識が」
反町キャスター
「そうすると、楊瀾さんという方は、興梠さんが言われたみたいに中国では非常に著名なキャスターの人で、そういう人が日中韓の国際フォーラムの、国民感情とか、メディア部会みたいなところに中国側の代表で来るということは、中国政府として、この人達は間違ったことを言わないよねと当然、思って出しているわけではないですか」
興梠教授
「だと思いますよ」
反町キャスター
「にもかかわらず、こういう公式的な発言プラス、私も子供がねとか、現在の若者は歴史の話なんて興味がないんだよということを言ってしまうというところが、現在の中国の危うさと言っていいですか?」
興梠教授
「だから、統制しようとしているわけです」
反町キャスター
「一方、木宮さん、その韓国の代表者の方、その方も人文メディア分科会に出ていて、KBSは、韓国国営放送のプロデューサーの方なのですが、こういう発言をしているんですね。今日、北京での発言ですけれども、『マスコミの報道のあり方を変えるべきです。自国民の一方的な感情だけに訴え、相手国民の感情を刺激しうる内容はもっと慎重な態度でアプローチすべきです』。これをどういうふうに我々は受け取ったらいいのか。KBSと言ったら韓国の国営放送ですから、その人がこういうことを言うというのは、これは韓国の報道、新聞やテレビの報道を自ら反省する自制の言葉として見たらいいか。これは韓国のメディアも日本のメディアも知っている木宮さんに聞きたいんですけれど、韓国のメディア、これを自制の言葉として受け止めた方がいいのか、ないしは日本に対して、あまり煽るような記事を書くなよと言っていると見たらいいのか。どう感じますか?」
木宮教授
「1つは、国営放送というのは若干語弊があるかなと思います。それから、これは文章を読んでみますと、主語は日中韓のマスコミと書いてありますので、一応特定の国を対象としたものではないと思うんですけれども、私は、2つあると思うんですね。1つは、これはちょっと我々にとって耳の痛いことだと思うんですけれども、最近、日本の言論の自由に対して国際的な評価が、言論の自由が若干ちょっと低くなっているのではないかと。そういう調査がありましたけれども、そういう議論がありますし、それから、日本国内においても、そういう日本のジャーナリストの方達がそういう問題提起をしているわけですね。それを見ていると、日本の言論の自由に対するある種の批判というか、危惧というか。そういうものが1つあるかと思います。それから、もう1つは、だいたいこれは、我々、人間というのは自分のことを、自分とだいたい他人が似ているということを、前提として、いろんなことを見る傾向にあるんですけれども、韓国における言論の状況というものを踏まえたうえで、日中韓にそれを投影するわけですけれども、私は韓国における言論状況においても、この方は若干、自分の国の言論状況に対して、ある種の危機感を持っていると。それがもちろん、韓国だけの問題にするわけにはなかなかいかないので、要するに、KBSの、責任ある人が海外に出て、自分の国の政府を批判するというのはなかなか難しいので、それを日中韓というある種オブラートに包む形で、自制の意味というより、韓国における言論状況に対しても若干、危惧を持っている。そういうことの表れではないかという印象を持ちました」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、たとえば、人文メディア分科会というのは、木宮さん、国民感情の改善を目指したものであるという建てつけで、今回初めて設けられたんですけれども、こういう発言が出ること。少なくとも、ずっと辿っていくと、日中韓のメディアはというところで、このコンテクストと流れが出てくる前提に立った場合には、こういう発言が飛び交うような部会というのは、今後、この3か国の間の国民感情の改善に寄与する期待感というか、可能性というのはあり得ますか?」
木宮教授
「もちろん、我々から見るとそれぞれの国の言論の自由度というのは、歴史も違うわけですし、違うではないかと。それをわきまえて、発言していほしいという、そういう要請は一方でもちろん、あるわけですけれども、他方で先ほど言ったようになかなか自分の国の状況というものをある種、物差しとして他の国の言論状況を推し測ると。そういうところもあるので、そこは、私はこういうフォーラムに集まることによって、1つは、自分が相手の国の言論状況について持っているようなある種のイメージ。固定観念というものを、もう少しそれをある程度、克服して、どうお互いの国の言論の自由度が違うのか。逆に言えば、お互いの国のある意味で言論の自由が優れているところをお互いに学びあうと。そういうような機会として位置づけることができるのであれば、私は十分意味があると思います」

『暴走』北朝鮮への対応
松村キャスター
「中国は北朝鮮の最近の挑発をどのように見ているのでしょうか?」
興梠教授
「私はちょっと変わってきているかなという印象を持っていまして、南シナ海を巡ってアメリカと中国はここまでぎくしゃくする前と、現在と若干変わってきたのかなと思うんですね。基本的に北朝鮮は中国のカードでもあるわけです。アメリカを揺さぶるね。北朝鮮との橋渡しをすることによって自分も交渉力を見せつけるという、東アジアは俺がまとめていくのだとか、いろんな意味があるではないですか。ところが、若い北朝鮮のリーダーがなかなか言うことを聞かない。本当は宗主国として振る舞って朝貢させたいわけでしょう。なかなか朝貢にも来ない、という関係がずっと続いている。だから、本当は中国がばしっと言うことを聞かせて、引っ張り出してこられれば面子が立ちますよね、習近平さんの権威も。ところが、それができないので本当はもうイライラしていると思うんですよ。ところが、制裁は、決定的な制裁はできないですね。やれないと僕は見ているんですよ。それは2つ理由があって、1つは東北のあのあたりの経済は、北朝鮮との貿易で非常に潤っている地域、非常に経済的にも苦しい地域ですよね。だから、北朝鮮との交易が止まってしまうと、中国の地域経済にインパクトが出るという問題が1つ。もう1つは、北朝鮮が崩壊すると困るとよく言われますよね。難民が入って来るとか。それはあるでしょうけど、私が思うに北朝鮮を怒らせたら、アメリカのところに行っちゃうという怖さがもっとあると思います。アメリカから圧力をかけろと中国はいつも言われるではないですか、日本からも。それは、本当嫌がっているわけです。私1人の責任ではないでしょうと。なぜ言っているかというと、わかりましたと自分がやった結果、北朝鮮がカンカンに怒って中国を敵視するようになる。と言うことは最悪なわけですよね。だから、どっちつかずに、のらりくらりの玉虫色の制裁を繰り返している。決定的な相手にダメージを与えるということができない。自分の国益として、それができない。もう1つは北朝鮮という自分と似たような体制、一党独裁体制。それを維持することによって、私はベルリンの壁と言っているんだけれど、あそこにベルリンの壁が永遠に存在する。それが崩れてしまうと、韓国の影響力、アメリカの影響力、文化的な影響力も含め、イデオロギーも一挙に入ってくる。これもまた悪夢なわけですよ。ですから、いろんな要因があって、結局は決定打が打てない」
反町キャスター
「北朝鮮による核開発、ミサイル開発、それに対する中国の懸念、韓国の懸念、アメリカの出方、今後どういう展開になると思いますか?」
武見議員
「これは中国にとって戦略的な緩衝地帯として、北朝鮮というその体制が存続することは、おそらく死活的なのでしょう。ただし、その体制が逆にミサイルを持って、核弾頭を持って、またその存続のためにですよ、アメリカとつくことになったら、これは悪夢でしょうね。しかし、もう1つの悪夢はアメリカの軍事基地がそのまま存続する形で、南主導で統一される。この2つをおそらく中国は避けようとする。そのために、その現状の中でどういう交渉の仕方があり得るかと言えば、米国の立場から言えば、北朝鮮の現状というものをできる限り保障する形で中国側により強い干渉をして、中国側の体制がこうした核開発やミサイルの開発をしないように働きかけると。おそらくそういう話は水面下でやっているのではないかと思いますけれど。ただ、実際に結果として表に出てくる時には違った姿になっているかもしれません」

中国『海洋進出』への対応
松村キャスター
「日中外相会談で様々な話がされる中で、岸田外務大臣は南シナ海問題について何か言いますか?」
武見議員
「どういう言い方をするのかは、私はわかりませんけれど、まったく言わないということはないだろうと思います。しかし、面白いのは、同じ時期にロシアのラブロフ外務大臣が北京を訪問して、中露の外相会談もしている。果たしてラブロフ外務大臣が、李克強首相とか、あるいは習近平主席と会うのかどうかはわかりませんけれど、この動きは明らかに中国にとって見れば、自分達は孤立しているわけではない、ロシアという大変頼りになる味方がいて、自分達と同じようなことをやっても、きちんとお互い助け合うという、そういう立場を共有できると。こうした北京の外交の日程をこういう形で調整して、それをおそらく世界に発信しようとしているのではないですか?」

中露外相会談も開催 南シナ海で『共闘』
反町キャスター
「中露外相会談で王毅外相は『域外国は南シナ海の平和・安定のために建設的な役割を果たすべきで、情勢をかき乱すべきではない』。ラブロフ外相は『ロシアは当事国が協議と交渉を通じて南沙諸島の領有権と海洋権益の争いを平和的に解決することを支持し、南シナ海の問題を国際化することに反対する』と発言し、これもアメリカに口を出さないように言っている。この二人の発言をどう感じましたか?」
武見議員
「まさにアメリカ外し」
反町キャスター
「アメリカは南シナ海の問題に口を出すべきではないということで中露が握りあった?」
武見議員
「それははっきりと、これはお互いにその点に関しての確認をし合ったということでしょう」
反町キャスター
「これはそれぞれの思惑が、ウクライナにおける問題とか、南シナ海における問題というのが、それぞれ中露両国がアメリカに対して、外交において共同で対応していこうという」
武見議員
「それが共同で対応するところまでいくのかどうかはわかりません。それからまた同時に、現在の中国と現在のロシアがこういう形で、力で現状変更しようとすることに対して一定の連携をとったとしても、国際的な外交舞台でこの2国が孤立する現状を克服できるという見通しがあるとはとても思えません。外交的にはこのカードはお互いに限界がある」

中露外相会談も開催 『THAAD』で『共闘』
反町キャスター
「中露外相会談で王毅外相は『我々はTHAAD(弾道弾迎撃ミサイル)配備について厳重な懸念を表明する』、ラブロフ外相は『我々はアメリカが平壌のそのような行動を口実にTHAAD配備を進めてはいけないと認識している』と言っています。中露の想いが一致している点をどう感じますか?」
興梠教授
「これは中国が1番最近気にしていることでしょう。これでちょっと中国と韓国の関係にヒビが入ったわけですけれど、そこから韓国と日本の接近も起きたのではないかと。ある意味では、中国がこれで韓国にすごい圧力をかけたことで北朝鮮との関係もなかなかやりにくくなった。つまり、韓国カードというものは対日に使えなくなってきているし、対北朝鮮も使えなくなっちゃったんですよ。でも、それだけ死活問題ということですね。全て投げ捨ててこれに集中したというのは。ですから、それにロシアが同意しますよ、これを言ってほしかったわけですよね。ロシアはいいですよ、その代わりに何かをお願いしますねという、それはタダでは言わないです」
反町キャスター
「韓国の世論というものは、ロシアからも、中国からも言われること。これくらいになってくると腰が引けてくるのか?流れとしては引き返せないようになっている?」
木宮教授
「それほどこの問題で韓国の世論が刺激を受けているということではないと思います。いわゆる北朝鮮の核ミサイル開発に対する、安全保障上の対抗措置としてこれが必要だと、それがあれば、これが正当性を持つわけです。もちろん、これまで韓国は中韓関係を考えて配慮して、それに対してある種、慎重であったわけですね。ただ、今年の年始あたりの北朝鮮の核実験、ミサイル発射という挑発行為に対し、韓国の中では中国はなかなか北朝鮮を押さえてくれないのではないかと、ある種の期待はずれというのか、幻滅感みたいなものができて、そうであれば必ずしも中韓関係にそれほど配慮する必要性もないのではないかと。他方で、韓国はTHAADミサイルの問題をある種カードとして中国に対し、もうちょっと北朝鮮の挑発を抑えるよう、もっと真摯な政策をとらせるためのカードとしても利用できるという可能性をおそらく模索しているのではないかなと思います」

今後の『日中韓』外交
松村キャスター
「国際会議で国益のために日本がもっとも大事にすべきことはどういうことなのでしょうか?」
武見議員
「これは南シナ海、東シナ海を含めて、日本の安全保障上の立場というものを国際的な枠組みの中でしっかりと確立していくこと。これが第1でしょう。そのうえで、これを1つの外交上のテコとして、こうして対立していたような中国、あるいはロシアとむしろ協調関係を進めていく。そういう舞台設定をする場所がまさに今回のこうした国際的な会議になっていくという理解を私はしています。ただ、これは中国側も同じですよ。中国側の場合には、先ほど、楊さんという女性のキャスターの方が日中韓のフォーラムで発言した中の最後に、女性の交流をこれからもっとやりましょうと言っているんです。実は、かつて北京女性会議というのが開かれていて、今年でちょうど30周年になるのかな。だから、今度の北京でのG20のテーマを女性の問題に中国は現在しようとしているんです。こうした切り口で中国は新しい形の、中国の外交上の立場をつくろうとしている。先ほどの楊さんの発言というのを読んで見て、最後のところにそれが書いてあったので、彼女はちゃんとそういうことを、指示を受けて行っているのだと私は感じましたね」
反町キャスター
「中国はどう攻めてくるのか?」
興梠教授
「中国はバイには結構、強い国ではないですか。ASEAN(東南アジア諸国連合)も分断してね。今回は苦手ですよ、マルチでやられちゃうというのは。多国間でいろんなことを議論されてしまいますと、もともと苦手なんですよ。特にG7が大きいと思うんですよ。そこでG7の外相会談で南シナ海、遂にヨーロッパが発言したと。相当なダメージを受けていると思うんですよ。味方についてくれると思ったのに、ヨーロッパが距離を置いてきた。今後、5月のサミットにも、もし出たとしたら、これは相当包囲されているイメージですね。それがG20で切り返せるかというとそれはちょっと難しいですよね。だから、この流れを見ていると今年はなかなか習近平外交は大変ですね。韓国とも関係に亀裂が入っちゃったし、日中韓でも対日カードを切れませんから、その意味で、外交調整を彼らがしなければいけない。習近平さんの調整をしなければいけないのではないですか」

興梠一郎 神田外語大学教授の提言:『ベルリンの壁』
興梠教授
「東アジアにはまだベルリンの壁があるという。要するに、中国です。中国の体制が転換しないと、平和的に民主化をするということですよね。ソ連が変わって、党が影響を受けたようにそうしないと北朝鮮も変わらない。緩衝地帯が永遠に必要ということになるので、中国が経済力に見合った政治体制、国民の意見にももっと自由に、メディア統制もやめて、もうそういう時期にきているわけですよ。そうでないと中進国の罠と言われますけれども、実は先進国に入れないわけですよね。それでG7の外に置かれている。だから、政治体制の民主化というのは中国の21世紀最大の課題で、それがもしできれば、安全保障の圧力もかなり弱まるかなと思います」

武見敬三 自由民主党参議院議員の提言:『協調>対立の機能強化』
武見議員
「日中韓の首脳会談というものを実現するための下準備は、今回の日中の外相会談、これで私は相当できるだろうと思います。こうした日中韓の枠組みを使って、本来の日中韓の協調関係というものを、対立関係よりもより大きなものにしていくための外交努力を日本はこの際しっかりやるべきであって、そのための機能強化というものがまさにこうした日中韓の枠組みの役割だと、こう思っています」

木宮正史 東京大学大学院教授の提言:『北朝鮮問題での日米中韓協力』
木宮教授
「北朝鮮問題における日米中韓の協力ということです。先ほど、北朝鮮問題を巡って、それぞれ各国の思惑が異なるということをお話しましたけれども、ただ、私は北朝鮮の非核化に関してはかなり利害が共有されているわけですね。そういう協力を積み重ねることによって、おそらく朝鮮半島、北朝鮮問題、朝鮮半島の将来に関する互いの思惑の違いも解消していく、そういうチャンスがあるのではないかと思います」